特許第6555874号(P6555874)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555874
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】電磁式ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 45/047 20060101AFI20190729BHJP
   F04B 45/04 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   F04B45/047 A
   F04B45/04 H
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-235969(P2014-235969)
(22)【出願日】2014年11月20日
(65)【公開番号】特開2016-98718(P2016-98718A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】390021348
【氏名又は名称】フジクリーン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105120
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 哲幸
(74)【代理人】
【識別番号】100106725
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 敏行
(74)【代理人】
【識別番号】100177677
【弁理士】
【氏名又は名称】玉田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】土井 幸夫
【審査官】 原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−173566(JP,U)
【文献】 特開2011−140937(JP,A)
【文献】 特開平11−050965(JP,A)
【文献】 実開昭54−017207(JP,U)
【文献】 実開平02−078781(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 45/047
F04B 45/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を吐出する電磁式ポンプであって、
所定の第1方向に延在するとともに、前記第1方向に交差する第2方向に関する所定の断面積を有する芯部材と、前記芯部材に巻かれたコイルとを備えた電磁石と、
前記第1方向に関して、前記芯部材から離間して配置され、前記電磁石によって前記第2方向に往復状に駆動される振動子と、
前記電磁石と前記振動子の間に設定された中間空間と、
前記第2方向に関する前記振動子の駆動によって、内部の流体の圧力が変動される圧力室と、を有し、
前記圧力室内の流体の圧力変動に基づいて、当該流体が前記圧力室から吐出されるように構成されており、
さらに、前記電磁石の磁力によって、前記第1方向に関して前記振動子が前記芯部材に向かって移動された場合に、前記振動子と前記芯部材の接触面積が前記芯部材の前記断面積よりも小さくなるように、前記中間空間に配置された接触面積低減機構を有し、
前記芯部材は、前記振動子に対向する端面を有し、
前記接触面積低減機構は、前記端面に設けられ、前記振動子に向かって突出する突部として構成されており、
前記振動子が前記芯部材に向かって移動された場合に、前記振動子と前記突部が当接するように構成されており、
前記芯部材と前記突部は、一体状に構成されることを特徴とする電磁式ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁式ポンプであって、
前記電磁石は、前記第1方向に関して、所定の間隔を空けて対向状に配置された第1電磁石と第2電磁石を有し、
前記振動子は、前記第1電磁石と前記第2電磁石の間に配置されており、
前記中間空間は、前記振動子と前記第1電磁石の間の第1中間空間と、前記振動子と前記第2電磁石の間の第2中間空間で構成されており、
前記突部は、前記第1中間空間と前記第2中間空間に配置されていることを特徴とする電磁式ポンプ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電磁ポンプであって、
前記電磁石と前記振動子を収容するケーシングを有し、
前記振動子は、当接部を有し、
前記ケーシングは、前記当接部と当接可能な検知部を有し、
前記当接部と前記検知部は、異常状態検出手段を構成することを特徴とする電磁式ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁式ポンプの構築技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2009−057941号公報には、空気等の流体を吸入して圧縮し高圧化して吐出する電磁式ポンプが開示されている。この電磁式ポンプにおいては、電磁石コアに取り付けられた電磁コイル(励磁コイル)による極性変化に伴い振動子が往復運動し、この振動子に連結されたダイアフラムを弾性変化させることによって、当該ダイアフラムにより区画される圧縮室の容積変化が発生する。これにより、圧縮室内の空気を吐出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−057941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の電磁式ポンプにおいては、電磁石および永久磁石の磁力の強さ、あるいは電磁石と振動子の距離によっては振動子が電磁石に吸着される可能性があるため、振動子が電磁石に吸着されないように制御する必要があり、この点において更なる改善が見込める。本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、電磁式ポンプにおいて振動子の確実な駆動に関する改善技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は本発明により解決される。本発明に係る電磁式ポンプの好ましい形態によれば、各種の流体を吸入して所望の供給先へと吐出する電磁式ポンプが構成される。電磁式ポンプの具体例としては、曝気式浄化槽の曝気用エア供給用、養魚の酸素補給用、泡風呂等のエア噴気用などの電磁式ポンプがある。
【0006】
この電磁式ポンプは、所定の第1方向に延在するとともに、第1方向に交差する第2方向につき、当該第2方向に関する所定の断面積を有する芯部材と、芯部材に巻かれたコイルとを備えた電磁石と、第1方向に関して、芯部材から離間して配置され、電磁石によって第2方向に往復状に駆動される振動子と、電磁石と振動子の間に設定された中間空間と、第2方向に関する振動子の駆動によって、内部の流体の圧力が変動される圧力室を有する。芯部材は、電磁石を構成する各種磁性材料が用いられる。芯部材の所定の断面積は、電磁石の磁力を規定するための有効断面積として規定される。また、コイルは、芯部材に直接巻かれることに限られず、コイル保持部材に巻かれたコイルの内部を芯部材が貫通するように配置されることで、芯部材の外側に巻かれたコイルが配置されてもよい。この電磁式ポンプにおいては、圧力室内の流体の圧力変動に基づいて、当該流体が圧力室から吐出されるように構成されている。「流体」としては、液体、気体等の各種の圧縮性流体が包含される。
【0007】
さらに、電磁式ポンプは、電磁石の磁力によって、第1方向に関して振動子が芯部材に向かって移動された場合に、振動子と芯部材の接触面積が芯部材の断面積よりも小さくなるように、中間空間に配置された接触面積低減機構を有する。なお、「振動子と芯部材の接触面積」は、振動子と芯部材が接触しない場合には、接触面積がゼロとして定義される。
【0008】
本発明によれば、振動子を確実に駆動するように、電磁石が発生する磁力を高めること、または振動子と電磁石の距離を縮めることができる。これにより磁気効率を向上させた電磁式ポンプを構成することができる。さらに、電磁石の磁力によって振動子が電磁石に引き寄せられた場合であっても、接触面積低減機構によって振動子と電磁石の接触面積が低減されることで、振動子の駆動が維持される。すなわち、磁力の大きさによって振動子の駆動が阻害されることなく、振動子が確実に駆動される。また、接触面積低減機構が設けられているため、電磁石が磁力を発生する有効断面積として規定される芯部材の断面積よりも振動子と芯部材の接触面積が小さくなる。そのため、振動子が電磁石に引き寄せられて芯部材と接触するような場合であっても、芯部材の有効断面積である構成に比べて、振動子と芯部材の互いの摩耗が低減される。以上により、電磁式ポンプにおいて、磁気効率の向上と、振動子と電磁石の接触による影響の低減が両立される。
【0009】
また本発明によれば、芯部材は、振動子に対向する端面を有している。典型的には、芯部材の端面の面積が、芯部材の所定の断面積として定義される。接触面積低減機構は、芯部材の端面に設けられ、振動子に向かって突出する突部として構成されている。そして、振動子が芯部材に向かって移動された場合に、振動子と突部が当接するように構成されている。この形態によれば、振動子と突部が当接することで、振動子と芯部材の端面の面接触が回避される。そのため、振動子と芯部材の接触面積は、芯部材の端面の面積よりも小さくなり、振動子と芯部材の摩耗が抑制される。以上の通り、接触面積低減機構は、振動子に当接することで、第1方向に関する振動子の芯部材に向かう移動を規制するため、振動子移動規制機構とも称する。この場合において、振動子と当接する突部は、先端部がR状に形成され、突部が芯部材あるいは振動子と面接触しないように構成されていることが好ましい。すなわち、接触面積低減機構は、芯部材の端面あるいは当該端面に対向する振動子の面との面接触を回避する構造を有することが好ましい。
なお、芯部材と突部は、一体状に構成される。
【0010】
本発明に係る電磁式ポンプの更なる形態によれば、電磁石は、第1方向に関して、所定の間隔を空けて対向状に配置された第1電磁石および第2電磁石を有する。そして、振動子は、第1電磁石と第2電磁石の間に配置されている。
中間空間は、振動子と第1電磁石の間の第1中間空間と、振動子と第2電磁石の間の第2中間空間で構成されている。そして、突部は、第1中間空間と第2中間空間に配置されている。好ましくは、突部は、第1中間空間に配置された複数の突状要素と、第2中間空間に配置された複数の突状要素で構成される。したがって、振動子が第1電磁石と第2電磁石のうちどちらの電磁石に近づくように移動された場合であっても、振動子と芯部材の端面の接触面積を芯部材の端面の面積よりも小さくすることができる。
【0011】
本発明に係る電磁式ポンプの更なる形態によれば、電磁石と振動子を収容するケーシングを有することができる。振動子は、当接部を有することができる。ケーシングは、当接部と当接可能な検知部を有することができる。当該構成にあっては、当接部と検知部は、異常状態検出手段を構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電磁式ポンプにおいて振動子の確実な駆動に関する改善技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る電磁式ポンプの全体構成を示す平断面図である。
図2】電磁式ポンプの側断面図である。
図3】電磁石、振動子および振動低減機構を示す側面図である。
図4】振動低減機構の別の形態を示す図3相当の側面図である。
図5】振動低減機構のさらに別の形態を示す図3相当の側面図である。
図6】振動低減機構のさらに別の形態を示す図3相当の側面図である。
図7】振動低減機構のさらに別の形態を示す図3相当の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態として、電磁式ポンプ100の構成を図1図7を参照して説明する。この電磁式ポンプ100は、流体としての空気を吸入し、圧縮して高圧化し、吐出する機能を有する。この電磁式ポンプ100は、典型的には、曝気式浄化槽の曝気するためのエアを供給するためのポンプ、養魚の酸素補給用のポンプ、泡風呂等のエア噴気用のポンプとして用いられる。
【0015】
(電磁式ポンプの構成)
図1には、電磁式ポンプ100の平断面図が示される。図1に示すように、電磁式ポンプ100は、ポンプ機構部110を収容するケーシング101を有する。ポンプ機構部110は、防振手段(防振ゴムなど)を介してポンプ基台プレート(図示省略)上に配置される。
【0016】
図1および図2に示すように、ポンプ機構部110は、電磁石ケース111、電磁石120,130、振動子140、およびダイアフラム機構部150を主体として構成されている。電磁石120,130は、図1の上下方向に関して所定の間隔を空けて対向状に電磁石ケース111に固定されている。なお、図2に示すように、電磁石120,130の下部領域(電磁石コア122,132の下部領域)においては、電磁石120,130は互いに連接されている。この電磁石120と電磁石130の間の領域には、振動子140が配置されている。この電磁石120,130が、本発明における「電磁石」に対応する実施構成例である。また、電磁石120および電磁石130がそれぞれ、本発明における「第1電磁石」および「第2電磁石」に対応する実施構成例である。
【0017】
電磁石ケース111は、電磁石120,130を保持するように設けられている。また、電磁石ケース111の外側面(図1における電磁石ケース111の右側と左側)には、ダイアフラム機構部150を保持する弁ケース体112が取り付けられている。この電磁石ケース111は、典型的には鉄材料(金属材料)によって構成され、電磁石120,130に接続されて電磁石120,130による磁気経路の一部を形成する。
【0018】
電磁石120,130は、電磁石コア122,132、および電磁コイル(励磁コイル)124,134が巻かれた電磁石ボビン123,133を主体として構成されている。この電磁石コア122,132がおよび電磁コイル124,134が、それぞれ本発明における「芯部材」および「コイル」に対応する実施構成例である。電磁石コア122,132は、図1の上下方向に延在する磁性体材料で形成されており、電磁石ボビン123,133に挿入され、電磁石ボビン123,133に巻かれた電磁コイル124,134を保持する。電磁石コア122,132の端面122a,132aは、振動子140の移動方向(図1の左右方向)に平行な面として定義される。すなわち、電磁石コア122の端面122aと電磁石コア132の端面132aが互いに平行に対向するように電磁石コア122,132が配置されている。電磁コイル124,134には交流電源(図示省略)が接続され、交流電源の周波数と同一回数の磁極の変化(極性変化)が生じるようになっている。この電磁石120,130は、振動子140に対してダイアフラム機構部150を駆動するための磁力を付与する。この電磁石コア122,132が延在する図1の上下方向が、本発明における「第1方向」に対応する実施構成例である。
【0019】
図3に示すように、電磁石コア122,132は、2つの電磁石コア122および電磁石コア132が互いに分離可能であるとともに、装着状態ではこれら2つの電磁石コアが下方側(図3の下側)の端部が互いに当接することによって一体状に構成される。これら2つの電磁石コア122及び電磁石コア132によって一体状に構成される電磁石コアは、上方側(図3の上側)の端面122a,132aが互いに対向するように構成され、両端面122a,132aの間に振動子140が配置される。この電磁石コア全体としての側面視が「C字形状」を形成する。この電磁石コアは、平面視「C字形状」の珪素鋼板を、複数積層した積層構造であり、全体としてブロック状となるように構成されている。このように電磁石コア122と電磁石コア132の下側領域が互いに突き当たる突き当て構造を採用することによって、電磁石120,130による効率的な磁気経路が維持されることとなり、突き当て構造を有していない構成の電磁石に比して消費電力が抑えられる。この電磁石コア122,132の端面122a,132aが、本発明における「端面」に対応する実施構成例である。
【0020】
また、図2に示すように、電磁石120,130を保持する電磁石ケース111の上側及び下側は開放されている。具体的には、図1に示すように、電磁石120,130は、電磁石コア122,132のうち、上側領域と下側領域を繋ぐ側方領域が電磁石ケース111に保持されている。したがって、図2に示すように、電磁石コア122,132の上方領域および下側領域は電磁石ケース111に当接せず、電磁石コア122,132より上方および下方が電磁石ケース111によって遮蔽されないように構成されている。このような構成により、電磁石120,130の電磁コイル124,134から発生した熱は、電磁石120,130の上方および下方に排出され、電磁石コイル124,134が効率的に冷却される。このような作用効果は、少なくとも、電磁石コア122,132の各々を、全体として側面視が「C字形状」となるように構成し、また電磁石コア122,132の下側領域が互いに突き当たるように構成することによって得られる。
【0021】
振動子140は、電磁石コア122,132の端面122a,132aの間に、両端面122a,132aに平行に図1の左右方向に延在する板状部材である。振動子140には、極性の異なる永久磁石141a,141b(N極及びS極)が埋設されており、電磁石120,130の極性変化に伴い、振動子140が図1の矢印A方向および矢印B方向へ往復動作(振動)する。振動子140の右側端部および左側端部には、それぞれダイアフラム機構部150が連結されており、振動子140の図1の左右方向の振動によってダイアフラム機構部150が駆動される。この振動子140が、本発明における「振動子」に対応する実施構成例である。また、振動子140が延在する図1の左右方向が、本発明における「第2方向」に対応する実施構成例である。
【0022】
図1および図2に示すように、ダイアフラム機構部150は、ダイアフラム152、センタープレート153を主体として構成されている。ダイアフラム152は、振動子140が延在する図1の左右方向と直交する方向に延在する円盤状の部材であり、弾性変形可能なゴム材料によって形成されている。ダイアフラム152の外周縁は、弁ケース体112に固定されて保持されている。このダイアフラム152は、振動子140に接続された円盤状のセンタープレート153に挟持されている。
【0023】
図2に示すように、弁ケース体112には、吸入弁113、吐出弁114が設けられている。弁ケース体112内部には、吸気弁113、吐出弁114、およびダイアフラム152で囲まれる圧縮室115が形成されている。また、弁ケース体112には、圧縮室115から吐出弁114を通じて供給対象(例えば、浄化槽)に対して供給される空気が通過する空気供給路116が形成されている。圧縮室115は、本発明における「圧縮室」に対応している。
【0024】
吸入弁113および吐出弁114は、弾性材料であるゴムによってそれぞれ形成されている。吸入弁113は、圧縮室115と電磁式ポンプ100の外部を連通する連通孔を開放および閉鎖する弁体を構成する。吸入弁114は、圧縮室115と空気供給路116を連通する連通孔を開放および閉鎖する弁体を構成する。吸入弁113が開放された状態では、電磁式ポンプ100の外部と圧縮室115とが連通され、吸入弁113が閉鎖された状態では、電磁式ポンプ100の外部と圧縮室115との連通が遮断される。吐出弁114が開放された状態では、圧縮室115と空気供給路116が連通され、吐出弁114が閉鎖された状態では、圧縮室115と空気供給路116の連通が遮断される。
【0025】
(電磁式ポンプの動作)
図1において、交流電源に接続された電磁石120,130の極性変化に伴い振動子140は、交流電源と同じ周波数で図1の左右方向に往復動作する。振動子140の往復動作に伴って、ダイアフラム152は、その中央部が振動子140のストロークと同じ変位量で左右方向に弾性変形する。このダイアフラム152の弾性変形によって、圧縮室115内の空気に圧力変動が生じる。この圧縮室155が、本発明における「圧力室」に対応する実施構成例である。
【0026】
図2における左右方向に関するダイアフラム152の弾性変形によって、圧縮室115内の空気の圧力が大気圧よりも低くなると、吸入弁113が開放されて、外部から圧縮室115内に空気が供給される。これにより、圧縮室115内の空気の圧力が大気圧と等しくなり、吸入弁113の復元力によって吸入弁113が閉じられる。その後、ダイアフラム152の反対方向への弾性変形によって、圧縮室115内の空気が圧縮されることで、吐出弁114が開放されて、圧縮室115内の空気が空気供給路116に排出される。これにより、空気供給路116の先端に配置された空気供給対象(浄化槽等)に向かって吐出される。その後、吐出弁114の復元力によって吐出弁114が閉じられて、一連の吐出動作が完了する。この吐出動作は、右側のダイアフラム機構部150と左側のダイアフラム機構部150によって交互に行われる。また、それぞれのダイアフラム機構部150による吐出動作は、図2の左右方向に関するダイアフラム152の往復弾性変形(振動子140の往復移動)に伴って、複数回に繰り返される。
【0027】
振動子140は、所定の範囲内で移動するように構成され、例えば、ダイアフラム152のゴムの劣化等によって振動子140の可動範囲が所定の範囲を超えた場合には、電磁式ポンプ100の異常状態であると判断される。この異常状態を判別するために、図2に示すように、振動子140には、当接部145が設けられている。一方、ケーシング101(図示省略)には、異常状態検出手段190が取り付けられている。異常状態検出手段190は、当接部145と当接可能な検知部191を有し、電磁式ポンプ100が通常状態である場合には、当接部145と検知部191は当接しない。一方、電磁式ポンプ100が異常状態である場合には、振動子140の可動範囲が所定の範囲を超えて、当接部145が検知部191に当接する。これにより、電磁式ポンプ100が異常状態であることが検出され、電磁式ポンプ100の駆動が停止される。
【0028】
(接触面積低減機構の構成)
以上の構成の電磁式ポンプ100において、電磁石120,130によって生じる磁力は、電磁石コア122,132の断面積に比例する。そのため、振動子140の駆動させるための磁力を大きくすることで、振動子140が確実に往復移動し、ダイアフラム機構部150が駆動される。一方で、電磁石120,130によって生じる磁力を大きくするために、電磁石コア122,132の断面積を大きくすると、磁力によって振動子140が電磁石コアにくっつき、振動子140の往復移動を阻害してしまう。また、例えば、ダイアフラム152のゴムの劣化等によって、ダイアフラム152に不具合が生じた場合には、振動子140が所定の位置(初期設定位置)に保持されなくなってしまう。特に、振動子140が電磁石120,130にくっついた場合には、異常状態検出手段190によって振動子140やダイアフラム152の異常状態を検出することができなくなってしまう。
【0029】
また、振動子140が電磁石コアにくっついた状態で振動子140を駆動させると、振動子140と電磁石コアとの摩擦により、振動子140および電磁石コア122または電磁石コア132が摩耗してしまう可能性がある。すなわち、振動子140を確実に往復移動させるために、電磁石120,130が発生する磁力は大きい方が好ましいが、振動子140と電磁石120,130が接触しないあるいは接触しても摩耗を低減するように構成することが望まれる。そこで、本実施形態においては、振動子140が所定の位置から外れた場合であっても、振動子140と電磁コアの接触面積が電磁石コア122,132の有効断面積(端面122a,132aの面積)よりも小さくなるように、接触面積低減機構が設けられている。なお、振動子140と電磁コアが接触しない場合には、振動子140と電磁コアの接触面積はゼロと定義される。この接触面積低減機構は、振動子140と電磁石120,130の間の空間に配置されている。この接触面積低減機構は、説明の便宜上、図1および図2においては図示が省略されている。
【0030】
具体的には、図3に示すように、電磁石コア122,132の端面122a,132aには、端面122a,132aから振動子140に向かって突出する突出部125,135が設けられている。この突出部125,135は、側面視で三角形状に形成された、振動子140の移動方向に延在する三角柱として構成されている。この突出部125,135は、電磁石コア122,132と同じ鋼板によって一体状に構成され、電磁石コア122,132の一部として形成されている。したがって、突出部125,135は、電磁石コア122,132を形成する際に、同時に形成される。
【0031】
振動子140が初期設定位置から電磁石120または電磁石130の磁力によって引き寄せられて振動子140の法線方向に移動した場合であっても、振動子140は、突出部125または突出部135の頂部に線接触し、振動子140が電磁石コア122,132の有効断面積を有する端面122a,132aと面接触することが回避される。その結果、振動子140と電磁石コア122,132の摩耗が抑制される。なお、突出部125,135の頂部には、円弧状のR部分が設けられており、振動子140と接触による突出部125,135の摩耗を低減する。
【0032】
なお、突出部の形状は、側面視で三角形状に限られず、例えば、図4に示すように、突出部126,136の外表面が側面視で円弧状に形成されていてもよい。また、図5に示すように、複数の突出部127,137が形成されていてもよい。図3図5に示すいずれの構成においても、突出部125,126,127,135,136,137は、電磁石コア122,132と一体状に形成されるため、突出部を形成することによって部品点数が増加することがない。なお、突出部127,137の頂部には、円弧状のR部分が設けられており、振動子140と接触による突出部127,137の摩耗を低減する。この突出部125,126,127,135,136,137が、本発明における「突部」に対応する実施構成例である。
【0033】
一方で、接触面積低減機構としては、振動子140側に設けられていてもよい。具体的には、図6に示すように、振動子140の電磁石120に対向する面には、当該面から突出する突出部142が設けられており、振動子140の電磁石130に対向する面には、当該面から突出する突出部143が設けられている。この突出部142,143は、振動子140と一体状に振動子140の一部として形成される。なお、突出部142,143の形状は、側面視で三角形状に形成されているが、これには限られず、突出部142,143の外表面が側面視で円弧状に形成されていてもよい。また、振動子140の各面に複数の突出部がそれぞれ形成されていてもよい。この突出部142,143によって、振動子140と電磁石コア122,132の端面122a,132aの面接触が回避され、振動子140と電磁石コア122,132の摩耗が抑制される。また、突出部142,143は、振動子140と一体状に形成されるため、突出部を形成することによって部品点数が増加することがない。なお、突出部142,143は、永久磁石141a,141bの少なくともいずれか一方に当該永久磁石の一部として形成されていてもよい。
【0034】
さらに、他の形態の接触面積低減機構が図7に示される。図7に示すように、電磁石ボビン123,133に突出部128,138が振動子140に向かって突出するように設けられている。この突出部128,138によって、振動子140と電磁石コア122,132の端面122a,132aの面接触が回避され、振動子140と電磁石コア122,132の摩耗が抑制される。
【0035】
以上の実施形態によれば、接触面積低減機構として電磁石120と振動子140の間の空間に配置された突出部および電磁石130と振動子140の間の空間に配置された突出部が設けられていることで、振動子140と電磁石120,130の電磁石コア122,132の電磁石としての有効な断面は、平行に保持されつつ、振動子140と電磁石コア122,132(端面122a,132a)の面接触が回避される。そのため、振動子および電磁石コアの端面が互いに平行な平面として構成されており、振動子と電磁石コアの端面が面接触する可能性がある従来の電磁式ポンプに比べて、振動子140および電磁石コア122,132の接触面積が低減され、これにより振動子140および電磁石コア122,132の摩耗が抑制される。
【0036】
以上の実施形態では、接触面積低減機構は、電磁石コア122,132、振動子140、または電磁石ボビン123,133と同じ材質で一体状に形成されていたが、これには限られない。例えば、接触面積低減機構としての突出部は、非磁性体の金属等や樹脂材料等で形成されており、電磁石コア122,132、振動子140、または電磁石ボビン123,133に対して接着やネジ等の固定手段を用いて固定されていてもよい。
【0037】
また、以上の実施形態では、左右一対の電磁石ボビン123,133(電磁コイル124,134)が設けられていたが、これには限られない。例えば、片方の電磁石ボビンのみを設けてもよい。この場合、電磁石コア122,132は、一体状に連結される。また一方で、電磁石コア122,132が一体状に連結され、側面視で「C字形状」に構成されていたが、これには限られず、例えば、電磁石コア122,132が連結されておらず、離間して配置されていてもよい。この場合には、それぞれの電磁石コア122,132に対して電磁石ボビン123,133(電磁コイル124,134)が設けられる。
【0038】
また、以上の実施形態では、複数の鋼板を積層させた電磁石コア122,132を適用したが、必要に応じて塊状の電磁石コアを適用してもよい。
【0039】
また、以上の実施形態では、振動子130の両端部にダイアフラム152を配置した構成の電磁式ポンプ100について記載したが、振動子130の一端部にのみダイアフラム152が配置された構成の電磁式ポンプに対し本発明を適用することもできる。
【0040】
また、以上の実施形態では、流体として空気を吸入し、圧縮して高圧化し、吐出する電磁式ポンプ100について記載したが、本発明を空気以外の気体や液体を扱う電磁式ポンプの構成に適用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
100 電磁式ポンプ
101 ケーシング
110 ポンプ機構部
111 電磁石ケース
112 弁ケース体
113 吸入弁
114 吐出弁
115 圧縮室
116 空気供給路
120 電磁石
122 電磁石コア
122a 端面
123 電磁石ボビン
124 電磁コイル
125 突出部
126 突出部
127 突出部
128 突出部
130 電磁石
132 電磁石コア
132a 端面
133 電磁石ボビン
134 電磁コイル
135 突出部
136 突出部
137 突出部
138 突出部
140 振動子
141a 永久磁石
141b 永久磁石
142 突出部
143 突出部
145 当接部
150 ダイアフラム機構部
151 本体部
152 ダイアフラム
153 センタープレート
154 センタープレート
190 異常状態検出手段
191 検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7