特許第6555876号(P6555876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イビデン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6555876-複合部品 図000002
  • 特許6555876-複合部品 図000003
  • 特許6555876-複合部品 図000004
  • 特許6555876-複合部品 図000005
  • 特許6555876-複合部品 図000006
  • 特許6555876-複合部品 図000007
  • 特許6555876-複合部品 図000008
  • 特許6555876-複合部品 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555876
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】複合部品
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/88 20060101AFI20190729BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20190729BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20190729BHJP
   C04B 37/02 20060101ALI20190729BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20190729BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20190729BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   B01D53/88ZAB
   B01J32/00
   B01J35/04 301F
   B01J35/04 301P
   C04B37/02 B
   B01D46/00 302
   B01D39/20 D
   F01N3/28 311H
   F01N3/28 311S
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-239070(P2014-239070)
(22)【出願日】2014年11月26日
(65)【公開番号】特開2016-97392(P2016-97392A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 祥啓
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 建人
【審査官】 小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−301610(JP,A)
【文献】 特開2002−168586(JP,A)
【文献】 特開2001−033187(JP,A)
【文献】 特開2005−055270(JP,A)
【文献】 特開平07−308545(JP,A)
【文献】 特開2006−188428(JP,A)
【文献】 特開平06−219858(JP,A)
【文献】 実開昭63−113711(JP,U)
【文献】 米国特許第06667011(US,B1)
【文献】 特開2015−145321(JP,A)
【文献】 特開2013−193094(JP,A)
【文献】 特開2011−195378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/20、46/20、53/86
B01J 32/00、35/04
C04B 37/02
F01N 3/28
F28F 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の開口面と側壁とを有するハニカム体と、前記ハニカム体を包囲するケーシングと、前記ハニカム体と前記ケーシングとを接合するための接合部とを備えた複合部品であって、
前記接合部は、前記ハニカム体の前記側壁の周回に備えられた鍔部と、前記ケーシングの内面に前記鍔部の前記開口面側の端面に対向するように備えられた係止部と、前記鍔部と前記係止部に挟まれたロウ材層とからな複合部品であって、
前記鍔部は、セラミック多孔質体と前記セラミック多孔質体の気孔に含浸させる含浸体とからなり、前記含浸体はさらに前記ハニカム体の前記側壁に到達し、前記鍔部と前記ハニカム体とを接合していることを特徴する複合部品
【請求項2】
前記セラミック多孔質体は、SiC繊維の成形体又は気孔を有するセラミック焼成体である請求項1に記載の複合部品。
【請求項3】
前記含浸体は、前記ロウ材層を構成するロウ材よりも融点の高い金属又はシリコンである請求項1又は2に記載の複合部品。
【請求項4】
前記係止部は、前記ケーシングを屈曲させることにより形成された段差からなる請求項1〜3のいずれかに記載の複合部品。
【請求項5】
前記係止部は、前記ケーシングに溶接されたリブ状構造体からなる請求項1〜3のいずれかに記載の複合部品。
【請求項6】
前記係止部は、前記ケーシングの端部の一部が内側に曲げられることにより形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の複合部品。
【請求項7】
前記鍔部の前記端面は、前記ハニカム体に沿って周回する溝を有し、
前記係止部は、前記ハニカム体に沿って周回し前記溝に挿入が可能な凸部を有し、
前記鍔部の前記溝に前記係止部の前記凸部が挿入されるとともに、前記溝と前記凸部との間に前記ロウ材層が介在している請求項1〜6のいずれかに記載の複合部品。
【請求項8】
前記接合部を複数有し、前記ケーシングと前記接合部と前記ハニカム体の側壁とに囲まれ、前記開口面に面する開口面側空間と隔離された側壁側空間を有する請求項1〜7のいずれかに記載の複合部品。
【請求項9】
前記側壁側空間に面するハニカム体の側壁には開口を有する請求項8に記載の複合部品。
【請求項10】
前記ハニカム体を構成するセルは、側壁に形成された開口により前記側壁側空間とつながる第1のセルと、前記開口面側空間とつながる第2のセルと、により構成され、
前記第1のセルおよび前記第2のセルは、セル間を隔てるセル隔壁により隔離されている請求項8又は9に記載の複合部品。
【請求項11】
前記側壁側空間に面するハニカム体の対向する2つの側壁にはそれぞれ開口が設けられ、
前記ケーシングには、前記2つ側壁に設けられた開口に流体を導入するための流体導入通路と、流体を排出するための流体排出通路と、が設けられている請求項8〜10のいずれかに記載の複合部品。
【請求項12】
前記流体導入通路と前記流体排出通路との間にさらに前記接合部を有する請求項11に記載の複合部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器の内部にハニカム体を収容する際の固定方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の触媒保持体(ハニカム体)は、円筒形状のハニカム体の側面ほぼ全体に無機繊維(結晶質アルミナ繊維)からなるマットを巻き付け、さらに外側に有機シートを巻き付けて、金属製パイプ(容器)の内部に圧入することにより触媒保持体を収納する。このとき、無機繊維マットの圧入前の嵩密度および圧入後の嵩密度を所定の範囲に限定している。
【0003】
すなわち、上記マットの圧入後の嵩密度を、圧入前の嵩密度よりも大きくなるように、金属製パイプに圧入することにより、ハニカム体と上記マットとの間で生じる摩擦力と、上記マットと金属製パイプとの間で生じる摩擦力によって、ハニカム体を金属製パイプ内部に固定している。
この技術は、触媒保持体の他、ディーゼルエンジンの排ガスを浄化するフィルタ(DPF)を金属製パイプ内部に固定する技術として、広く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−98059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術では、排ガス浄化触媒担体、排ガス浄化フィルタの形状に合わせて金属製パイプ内部に保持、固定することができるが、高い密閉性が求められる部位、例えば熱交換器等の異なる2つの気体もしくは気体−液体が隣り合って流れるもの等には、繊維間に連通する空隙が存在するため、使用できない。
【0006】
本発明では、前記課題を鑑み、ハニカム体を固定するとともに封止することができる複合部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の複合部品は、一対の開口面と側壁とを有するハニカム体と、上記ハニカム体を包囲するケーシングと、上記ハニカム体と上記ケーシングとを接合するための接合部とを備えた複合部品であって、上記接合部は、上記ハニカム体の上記側壁の周回に備えられた鍔部と、上記ケーシングの内面に上記鍔部の上記開口面側の端面に対向するように備えられた係止部と、上記鍔部と上記係止部に挟まれたロウ材層とからなることを特徴とする。
【0008】
上記複合部品によれば、上記接合部は、上記ハニカム体の前記側壁の周回に備えられた鍔部と、上記ケーシングの内面に上記鍔部の上記開口面側の端面に対向するように備えられた係止部と、上記鍔部と上記係止部に挟まれたロウ材層とからなり、上記した構成の上記複合部品を作製する際には、上記ケーシングに設けられた係止部で半溶融状態のロウ材層を押えるように圧力を加えて接合することにより、ロウ材の流出を防止することができ、ロウ材の流出による隙間の発生を防止することができる。また、係止部を押し付けるようにして接合することにより、しっかりと接合することができるので、係止部と鍔部との間に接合不良による隙間等が発生しにくい。その結果、上記鍔部と上記係止部の接合力を充分に高く保つことができ、ケーシング内を流通する流体が接合部から漏れるのを防止することができる。さらに、上記ハニカム体の開口面へ流体が流入出する際、流体が上記係止部や上記鍔部に衝突するが、直接ロウ材層に衝突しないため、ロウ材層の信頼性が向上する。また、流体の衝突の際、ロウ材層はクッション材の役割を果たし、鍔部や係止部の破損を軽減することができる。
なお、一対の開口面とは、所定の長さを有する四角柱形状等の柱形状のハニカム体の長さ方向(長手方向)の両端部に形成された端面をいう。
【0009】
本発明の複合部品では、上記鍔部は、セラミック多孔質体と上記セラミック多孔質体の気孔に含浸させる含浸体とからなり、上記含浸体はさらに上記ハニカム体の上記側壁に到達し、上記鍔部と上記ハニカム体とを接合していることが望ましい。
【0010】
上記複合部品では、上記鍔部を含浸する含浸体が上記ハニカム体の上記側壁に到達して上記鍔部と上記ハニカム体とを接合しており、このような構成の鍔部を形成することにより、ハニカム体そのものを加工することなく鍔部を形成することができ、鍔部は緻密な部材となり、上記鍔部と上記ハニカム体との間に隙間が発生して、ケーシング内を流通する流体が接合部から漏れるのを容易に防止することができる。
【0011】
本発明の複合部品では、上記セラミック多孔質体は、SiC繊維の成形体又は気孔を有するセラミック焼成体であることが望ましい。
上記複合部品では、SiC繊維の成形体又は気孔を有するセラミック焼成体は、耐熱性を有しているので、接合部の形成(ロウ付)時や複合部品の使用時に、熱等に起因して損傷するおそれがなく、安定して使用することができる。
上記セラミック多孔体の構成材料としてSiC繊維を用いると、目的の形状を容易に得ることができるので、所望の形状の鍔部を得ることが可能となる。具体的には、SiC繊維の長繊維を上記ハニカム体に巻き付けることも可能であり、長繊維を巻き付けながら形状を調節することで、容易に鍔部を形成することが可能となる。一方、気孔を有するセラミック焼成体を用いると、次のような利点がある。気孔を有するセラミック焼成体は、プレス成形、後加工など目的の形状を得ることが容易である上に、ハニカム体への接合と、気孔の封止を、含浸体の含浸によって同時に行うことができる。含浸は、金属、シリコンなどを気孔を有するセラミック焼成体に接触させ、加熱溶融することで行うことができる。
【0012】
本発明の複合部品では、上記含浸体は、上記ロウ材層を構成するロウ材よりも融点の高い金属又はシリコンであることが望ましい。
上記複合部品では、上記含浸体は、上記ロウ材層を構成するロウ材よりも融点の高い金属又はシリコンであるので、ロウ付けの際に鍔部が動くことはなく、圧力を加えながら容易に接合部を形成することができる。
【0013】
本発明の複合部品では、上記係止部は、上記ケーシングを屈曲させることにより形成された段差からなることが望ましい。
上記複合部品では、上記段差を利用した係止部と上記鍔部の側面とを対向させ、その間にロウ材を介在させ、上記段差をロウ材に押し付けることにより、上記ケーシングに係止部を溶接等により設けることなく、容易に本発明の複合体を作製することができる。また、上記ハニカム体の開口面へ流体が流入出する際、接合部の付近に到達する流体は、ケーシングが屈曲して流路が絞られるので流体の速度が緩和し、接合部に加わる流体からの衝撃を軽減することが可能となる。
上記段差は機械的な力でロウ付け直前に形成することも可能であり、ロウ付けの予備加熱時に上記段差を形成することでケーシングが室温よりも軟化するので加工精度が向上する。
【0014】
本発明の複合部品では、上記係止部は、上記ケーシング部に溶接されたリブ状構造体からなることが望ましい。
上記複合部品では、上記リブ状構造体の上記ケーシング内面と隣接する側面と上記鍔部と側面とを対向させ、その間にロウ材を介在させ、上記突起をロウ材に押し付けることにより、容易に本発明の複合体を作製することができる。また、リブ状構造体にすることで、係止部はロウ材層と平面でしっかりと接合することでき、ケーシングとハニカム体の間に生じる熱膨張差による応力を、ロウ材層が平面でしっかり緩和することができる。
なお、溶接とロウ付けの順序は、どちらから行ってもよく、ケーシングの取り付け性や寸法ばらつきを考慮すると、ロウ付けを行った後に溶接を行うことが好ましい。
【0015】
本発明の複合部品では、上記係止部は、上記ケーシング部の端部の一部が内側に曲げられることにより形成されていることが望ましい。
上記複合部品では、上記ケーシングの端部の一部が内側に曲げられることにより形成された係止部と上記鍔部の側面とを対向させ、その間にロウ材を介在させ、上記突起をロウ材に押し付けることにより、上記ケーシングに係止部を溶接等により設けることなく、容易に本発明の複合体を作製することができる。また、端部に係止部を利用することで、係止部はロウ材層と平面でしっかりと接合することでき、ケーシングとハニカム体の間に生じる熱膨張差による応力を、ロウ材層が平面でしっかり緩和することができる。
【0016】
本発明の複合部品では、上記鍔部の上記端面は、上記ハニカム体に沿って周回する溝を有し、上記係止部は、上記ハニカム体に沿って周回し上記溝に挿入が可能な凸部を有し、上記鍔部の上記溝に上記係止部の上記凸部が挿入されるとともに、上記溝と上記凸部との間に上記ロウ材層が介在していることが望ましい。
上記鍔部の上記溝に上記係止部の上記凸部が挿入されるとともに、上記溝と上記凸部との間に上記ロウ材層が介在しているので、上記鍔部と上記係止部との接合が強くなるとともに、ケーシング内を流通する流体が接合部から漏れるのを、確実に防止することができる。また、上記係止部の上記凸部の周囲にロウ材層で囲まれているため、ケーシングやハニカム体の熱膨張差によって発生する接合部への応力に対して、応力方向を問わずにロウ材層が応力を緩和でき、接合部の信頼性を向上させることができる。
【0017】
本発明の複合部品では、上記接合部を複数有し、上記ケーシングと上記接合部と上記ハニカム体の側壁とに囲まれ、上記開口面に面する開口面側空間と隔離された側壁側空間を有することが望ましい。
上記複合部品では、上記開口面に面する開口面側空間と隔離された側壁側空間を有するので、この空間を利用し、熱交換、物質交換(フィルター)を行う複合部品とすることができる。
【0018】
本発明の複合部品では、上記側壁側空間に面するハニカム体の側壁には開口を有することが望ましい。
上記複合部品では、上記開口面に面する開口面側空間と隔離された側壁側空間を有し、かつ、ハニカム体の側壁に開口を有するので、この空間及び開口を利用し、熱交換、物質交換(フィルター)を行う複合部品とすることができる。
【0019】
本発明の複合部品では、上記ハニカム体を構成するセルは、側壁に備えられた開口により上記側壁側空間とつながる第1のセルと、上記開口面側空間とつながる第2のセルと、により構成され、上記第1のセルおよび上記第2のセルは、セル間を隔てるセル隔壁により隔離されていることが望ましい。
上記複合部品では、上記第1のセルおよび上記第2のセルは、セル間を隔てるセル隔壁により隔離されているので、上記複合部品の上記側壁側空間と上記開口面側空間との間で、熱交換、物質交換(フィルター)を行うことができる。
【0020】
本発明の複合部品では、上記側壁側空間に面するハニカム体の対向する2つの側壁にはそれぞれ開口が設けられ、上記ケーシングには、上記2つ側壁に設けられた開口に流体を導入するための流体導入通路と、上記流体を排出するための流体排出通路と、が設けられていることが望ましい。
【0021】
上記複合部品では、上記ケーシングには、上記2つ側壁に設けられた開口に流体を導入するための流体導入通路と、上記流体を排出するための流体排出通路が設けられているので、流体を流通させる際、スムーズに流通させることができ、熱交換等を行うことができる。
【0022】
上記複合部品では、上記流体導入通路と上記流体排出通路との間にさらに上記接合部を有することが望ましい。
【0023】
上記複合部品では、上記流体導入通路と上記流体排出通路との間にさらに上記接合部を有するので、導入する流体と、排出する流体の上記側壁側空間での混合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明のハニカム体を模式的に示す斜視図である。
図2図2(a)は、本発明の複合部品を模式的に示す断面図であり、図2(b)は、図2(a)に示す複合部品の接合部付近を拡大した拡大断面図である。
図3図3は、本発明の複合部品の別の一例(第二の例)を模式的に示した断面図である。
図4】本発明の複合部品のさらに別の一例(第三の例)を模式的に示す断面図である。
図5図5は、本発明の複合部品のさらに別の一例(第四の例)を模式的に示す断面図である。
図6図6は、本発明の複合部品のさらに別の一例(第五の例)を模式的に示した断面図である。
図7図7(a)は、本発明の複合部品を構成するハニカム体を模式的に示す斜視図であり、図7(b)は、上記ハニカム体を含む本発明の複合部品のさらに別の一例(第六例)を模式的に示す断面図である。
図8図8は、本発明とは異なる複合部品の一例を示す断面図である。
【0025】
[発明の詳細な説明]
本発明の複合部品は、一対の開口面と側壁とを有するハニカム体と、上記ハニカム体を包囲するケーシングと、上記ハニカム体と上記ケーシングとを接合するための接合部とを備えた複合部品であって、上記接合部は、上記ハニカム体の前記側壁の周回に備えられた鍔部と、上記ケーシングの内面に上記鍔部の上記開口面側の端面に対向するように備えられた係止部と、上記鍔部と上記係止部に挟まれたロウ材層とからなることを特徴とする。
【0026】
本発明の複合部品の一例(第一の例)について説明する。
本発明の複合部品を構成するハニカム体は、一対の開口面と側壁とを有する。
図1は、本発明のハニカム体を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、本発明のハニカム体10は、四角柱状のセラミック焼成体であり、ハニカム体10の長手方向Xに併設された流体の流路となる多数のセル11と、セル11を区画形成するセル隔壁12とを備えている。ハニカム体10は、セル11が開口している開口面15a、15bを備えるとともに、開口面以外の側面である側壁16とを備えている。なお、ここでは、ハニカム体10は、四角柱形状であるが、円柱形状や四角柱以外の多角柱形状であってもよい。
ハニカム体に形成されているセルの態様は、図1に示す態様に限定されるものではなく、図7に示すような長手方向に貫通するセルと上下方向に貫通するセルの両方のセルを備えるものであってもよい。
【0027】
ハニカム体10の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミック、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミック、アルミナ、ジルコニア、コージェライト、ムライト、チタン酸アルミニウム等の酸化物セラミックが挙げられる。
【0028】
ハニカム体10の側壁16の周回に鍔部18が設けられている。鍔部18は、ハニカム体10の長手方向Xに平行に切断すると矩形となる形状であり、全周に渡って設けられている。図1に示すハニカム体10では、鍔部18は、1つであるが、開口面15a、15bに近い領域の2個所に設けられていてもよい。鍔部18が2個所に設けられた具体例は、後で示す。
鍔部18の幅d1は、例えば、1〜10mm程度であり、鍔部18の高さh1は、例えば3〜15mm程度である。幅d1が1〜10mm程度であると、ロウ付けの際に加える荷重で鍔部18が破断、欠損が生じず、鍔部18からの流体の漏れを防ぐことができる。そして、ロウ付けの際の予備加熱も短くすむため、加工時間を短くできる。また、高さh1が3〜15mm程度であれば、係止部24の寸法誤差によってハニカム体10を傷付ける可能性が小さくなり、さらにロウ付けの際に加える力で発生するモーメント力による破断を抑制することができる。
【0029】
鍔部18は、セラミック多孔質体と上記セラミック多孔質体の気孔に含浸させた含浸体とからなり、上記含浸体はさらにハニカム体10の側壁16に到達し、鍔部18とハニカム体10とを接合している。
セラミック多孔質体を構成するセラミックとしては、上述したハニカム体10の材料と同じ材料が挙げられる。同じ材料にすることで、材料による熱膨張差を小さくすることができるので、熱ひずみを抑制し、破断や欠損を防ぐことができる。これらの材料の中では、耐熱性、熱伝導性に優れるSiCが好ましい。
セラミック多孔質体の具体例としては、例えば、SiCの繊維状集合体を成形したものや、気孔率が35〜65%の多孔質のSiC焼成体等が挙げられる。
上記したセラミック多孔質体にSiを溶融含浸させて鍔部18とする。その際、上記したセラミック多孔質体にSiを溶融含浸させた後、ハニカム体の側壁の周回に、含浸体であるSiを溶融含浸させたセラミック多孔質体を設け、鍔部18としてもよいが、ハニカム体の側壁の周回にセラミック多孔質体を設け、その後、含浸体であるSiを溶融含浸させてもよい。
【0030】
SiCの繊維状集合体を成形したものやSiC多孔質体にSiを含浸させて鍔部18としたものを用いる場合、高い耐熱性、耐食性を維持したまま熱伝導性を高めることができ、発生する熱応力を低減することができる。またシリコンは、金属的な性質を持っているので、ロウ材層との接合力も強くすることができると考えられる。このため係止部と接合すると強い接合力を得られると考えられる。さらに、ロウ付けの際にロウ材の鍔部18への必要以上の侵入を防ぐことができる。ロウ付けで溶融したロウ材が必要以上に鍔部18に吸収されにくいので、充分な厚さのロウ材層を形成することができ、鍔部18と係止部24との間に強い結合力を得ることができる。このため、接合部19は、耐熱性、耐蝕性及び高い接合強度を発揮することができると考えられる。
【0031】
含浸体としては、上記したSiのほか、ロウ材層を構成するロウ材よりも融点の高い金属であれば、特に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム、マグネシウム、銅等の金属合金等が挙げられる。
【0032】
ハニカム体10の側壁16の周回にセラミック多孔質体を設け、その後、含浸体であるSiを溶融含浸させて鍔部18とする際には、溶融Siはハニカム体10の側壁16にも到達し、鍔部18とハニカム体10の側壁16とを接合する。
ハニカム体10の側壁16の周回に、鍔部18として、含浸体であるSiを溶融含浸させたセラミック多孔質体を設けた場合には、Siからなる含浸体を含むセラミック多孔質体(鍔部18)を加熱し、溶融Siをハニカム体10の側壁16に到達させ、鍔部18とハニカム体10の側壁16とを接合する。
接合をしっかりと行うため、鍔部18を設ける領域に該当するハニカム体10の側壁16に、予めSiを溶融含浸させておいてもよい。
【0033】
次に、ハニカム体10を包囲するケーシングについて説明する。
図2(a)は、本発明の複合部品を模式的に示す断面図であり、図2(b)は、図2(a)に示す複合部品の接合部付近を拡大した拡大断面図である。
図2(a)に示すように、ケーシング21は、ハニカム体10を収容する金属製容器の一部であり、ハニカム体10の長手方向に垂直な断面は、ハニカム体10より一回り大きい略四角形の筒形状である。ケーシング21の形状は、略四角形の筒形状に限られるものではなく、ハニカム体10の形状に合わせ、ハニカム体10の長手方向に垂直な断面が円筒形状や多角形からなる筒形状であってもよい。ケーシング21を構成する金属製の材料としては、ステンレスが好ましい。
ステンレスは、金属の中でも耐蝕性、耐熱性を備えた素材であるので、ハニカム体10と組み合わせることにより、様々な用途で利用することができる。また、ステンレスは、金属の中でも、融点が高く、硫化水素や硝酸などの耐薬品性が高いため、ロウ付けの際に受ける金属体へのダメージが小さくすみ、信頼性が高い。
【0034】
ケーシング21の一方の端部には、ケーシング21に流体を供給する流入路(図示せず)が、漏斗状の接続部22を介して接続されている。また、ケーシング21の他方の端部には、ケーシング21から流体を排出する流出路(図示せず)が、漏斗状の接続部23を介して接続されている。
【0035】
ケーシング21の内面には、ハニカム体10に設けられた鍔部18と接合するための係止部24が設けられている。係止部の設け方に関し、図2に示したような完成した複合部品20を例にとって説明していくこととする。
図2に示した複合部品20では、係止部24は、リブ状構造体をケーシング21の内周に溶接したものであり、係止部24のハニカム体10の長手方向に平行な断面は矩形となっている。係止部24の材料は、金属であり、ケーシング21の場合と同様、ステンレスが好ましい。係止部の幅は、鍔部18の高さh1と同じ程度が好ましい。なお、係止部24とセラミック体10とは接していなことがのぞましい。接していないことで、各部の熱膨張差によって係止部24がセラミック体10を傷付けることがなく、信頼性の高い複合部品となる。
係止部24は、ケーシング21の内面に鍔部18の開口面側の端面18aに対向するように設けられ、ロウ材層26は、鍔部18と係止部24とに挟まれている。
【0036】
次に、鍔部18と係止部24とロウ材層26とからなる接合部19について説明する。
接合部19を構成するロウ材層の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、一般的に市販されている金属ロウ材や、Ag−Cu−Sn−Ti系等のTi系ロウ材、Ag−Cu−In−Ag系のロウ材等の活性金属ロウ材等が挙げられる。上記金属ロウ材のなかでは、特にTi系ロウ材が好ましい。
Ti系ロウ材は、セラミック多孔質体からなる鍔部18の表面を活性化させ、鍔部18との接合界面に鍔部18の材料特有の反応物が生成されるため、鍔部18に対する接合能力を有する。例えば、鍔部18を構成するセラミック多孔質体が窒化物ではTiN、セラミック多孔質体が酸化物ではTiO、セラミック多孔質体が炭化物ではTiCがセラミック多孔質体との接合界面に生成される。このため、セラミック多孔質体からなる鍔部18と係止部24とを接合する部分に適用することにより、接合部19の接合強度を高めることができる。
【0037】
このような構成の複合部品20を作製する際には、ケーシング21の内部にハニカム体10を挿入した後、ケーシング21に設けられた係止部24とハニカム体10に設けられた鍔部18を所定の距離を隔てて対向させる。その際、係止部24の鍔部18と対向する側面24a、及び、鍔部18の係止部24と対向する端面18aのうちの少なくとも一方の面にロウ材を付着させておく。
この後、ロウ材を溶融させ、係止部24で半溶融状態のロウ材層を押えるように圧力を加え、冷却することにより接合部19を形成することができる。このように係止部24でロウ材層を押える圧力を加えて接合するため、ロウ材の流出を防止することができ、ロウ材の流出による隙間の発生を防止することができる。また、係止部24を押し付けるようにして接合することにより、しっかりと鍔部18と係止部24とをロウ材層26により接合することができるので、鍔部18と係止部24との間に接合不良による隙間等が発生しにくい。その結果、鍔部18と係止部24の接合力を充分に高く保つことができ、ケーシング21内を流通する流体が接合部19から漏れるのを防止することができる。
【0038】
図8は、本発明とは異なる複合部品の一例を示す断面図である。
図8に示す複合部品では、ケーシング121の内面にハニカム体100の長手方向に平行な断面が横長矩形の突起部124を形成し、ハニカム体100の側壁106の周回に、突起部124と同様の形状の鍔部108を形成する。そして、突起部124の下面124bと鍔部108の上面108bとをロウ材層126を介して接合させ、接合部129を形成する。この場合、突起部124の下面124bと鍔部108の上面108bとの距離は、ケーシング121、突起部124、ハニカム体100及び鍔部108の寸法により決まってしまう。従って、突起部124の下面124bと鍔部108の上面108bとの距離を一定にするためには、ケーシング121、突起部124、ハニカム体100及び鍔部の寸法を厳密に設定する必要があり、その寸法が少しでも狂い、間が開きすぎると、突起部104と鍔部108との接合がうまくいかないという問題がある。また、このような構成では、筒状に形成されているケーシングにおいて、突起部124をロウ材層に押し付けることができない個所が生じ、ロウ材を溶融させた際、ロウ材がハニカム体100の側壁106に流れ、開口面に到達すると、セルを塞いでしまうという問題が発生するが、本発明の複合部品の場合には、上記したような問題点は発生しない。
【0039】
図3は、本発明の複合部品の別の一例(第二の例)を模式的に示した断面図であり、図3に示す複合部品では、係止部の構成は異なっているが、ハニカム体、ケーシング及び鍔部の構成は、図2に示した複合部品と同様である。
【0040】
図3に示す複合部品30では、係止部34は、ケーシングを2度折り曲げて屈曲させることにより段差を設け、ハニカム体10の長手方向に垂直な断面の面積が異なる、2つのケーシング31a、31bを形成している。そして、ケーシング31aとケーシング31bとの間に形成されたケーシング31a及びケーシング31bに垂直に形成された段差部分を係止部34としている。このため、係止部34を形成する方法が、図2に示す複合部品20と比べると容易になる。
【0041】
このように構成された複合部品30では、図2に示した複合部品20と同様、係止部34は、ケーシング31の内面に鍔部18の開口面側の端面18aに対向するように設けられ、ロウ材層26は、鍔部18と係止部34とに挟まれている。
【0042】
このような構成の複合部品30を作製する際には、ケーシング31の内部にハニカム体10を挿入した後、ケーシング31に設けられた係止部34とハニカム体10に設けられた鍔部18を所定の距離を隔てて対向させる。その際、係止部34の鍔部18と対向する側面34a、及び、鍔部18の係止部34と対向する端面18aのうちの少なくとも一方の面にロウ材を付着させておく。
この後、ロウ材を溶融させ、係止部34で半溶融状態のロウ材層を押えるように圧力を加え、冷却することによりロウ材層26を形成することができる。このように係止部34でロウ材層を押える圧力を加えて接合するため、ロウ材の流出を防止することができ、ロウ材の流出による隙間の発生を防止することができる。また、係止部34を押し付けるようにして接合することにより、しっかりと鍔部18と係止部34とをロウ材層26により接合することができるので、鍔部18と係止部34との間に接合不良による隙間等が発生しにくい。その結果、鍔部18と係止部34の接合力を充分に高く保つことができ、ケーシング内を流通する流体が接合部29から漏れるのを防止することができる。
【0043】
図4は、本発明の複合部品のさらに別の一例(第三の例)を模式的に示す断面図であり、図4に示す複合部品では、係止部の構成は異なっているが、ハニカム体、ケーシング及び鍔部の構成は、図2に示した複合部品と同様である。
【0044】
図4に示すように、複合部品40では、係止部44は、ケーシング41の端部の一部が、ケーシング41に垂直となるように内側に曲げられることにより形成されている。このため、係止部44を形成する方法が、図2に示す複合部品20と比べると容易になる。
【0045】
このように構成された複合部品40では、図2に示した複合部品20と同様、係止部44は、ケーシング41の内面に鍔部18の開口面側の端面18aに対向するように設けられ、接合部39を構成するロウ材層26は、鍔部18と係止部44とに挟まれている。
【0046】
このような構成の複合部品40を作製する方法は、図2に示した複合部品20を作製する方法とほぼ同様であるので、ここでは、その説明を省略する。上記構成の複合部品40は、図2に示した複合部品20と同様の効果を示す。
【0047】
図5は、本発明の複合部品のさらに別の一例(第四の例)を模式的に示す断面図であり、図5に示す複合部品では、係止部及び鍔部の構成が異なっており、一方、ハニカム体やケーシングの構成は、図2に示した複合部品と同様である。
【0048】
図5に示すように、この複合部品50では、鍔部58の端面は、ハニカム体10に沿って周回する溝58aを有し、ケーシング51の内面に設けられた係止部54は、ハニカム体10に沿って周回し、鍔部58の溝58aに挿入が可能な凸部54aを有している。鍔部58の溝部58aは、流体が流れ込む側の接続部52の方向を向いており、係止部54の凸部54aは、流体が流れ出る側の接続部(図示せず)の方向を向いており、鍔部58の溝58aに係止部54の凸部54aを挿入することができる構成となっている。
【0049】
そして、鍔部58の溝58aに係止部54の凸部54aが挿入されており、鍔部58の溝58aと係止部54の凸部54aとの間にロウ材層56が介在している。
【0050】
このような構成の複合部品50を作製する際には、ケーシング51の内部にハニカム体10を挿入した後、ケーシング51に設けられた係止部54とハニカム体10に設けられた鍔部58を所定の距離を隔てて対向させる。その際、係止部54の凸部54a、及び、鍔部58の溝58aの内部のうちの少なくとも一方にロウ材を付着させておく。この後、ロウ材を溶融させ、係止部54の凸部54aで半溶融状態のロウ材層を押えるように圧力を加え、係止部54の凸部54aを鍔部58の溝58aに挿入し、冷却することによりロウ材層56を形成することができる。
上記した態様で、係止部54と鍔部58とを接合するロウ材層56を形成するため、ロウ材の流出をより確実に防止することができ、ロウ材の流出による隙間の発生を防止することができる。また、しっかりと鍔部58と係止部54とをロウ材層56により接合することができる。その結果、鍔部58と係止部54との間に接合不良による隙間等が発生しにくく、鍔部58と係止部54の接合力を充分に高く保つことができ、ケーシング内を流通する流体が接合部49から漏れるのを確実に防止することができる。
【0051】
図6は、本発明の複合部品のさらに別の一例(第五の例)を模式的に示した断面図であり、図6に示す複合部品では、係止部が2個所及び鍔部が2個所設けられている点が、図2〜5に示す複合部品とは異なるが、ハニカム体及びケーシングの構成は、図2に示した複合部品と同様である。
【0052】
図6に示す複合部品60では、ケーシング61の内面の流体が流れ込む側の接続部62に近い部分、及び、流体が流れ出る側の接続部63に近い部分の2個所に係止部64が設けられており、一方、ハニカム体10にも、流体が流れ込む側の開口面15aに近い部分、及び、流体が流れ出る側の開口面15bに近い部分の2個所に鍔部18が設けられている。
【0053】
さらに、図6に示すように、2つの鍔部18は、いずれもハニカム体10の流体が流れ込む側の開口面15aに近い側の端面18aに接合部59を有し、一方、係止部64は、流体が流れ出る側の開口面15bに近い側の側面64aに接合部59を有している。
すなわち、ロウ材層26は、係止部64と鍔部18とに挟まれているが、係止部64とロウ材層26と鍔部18との位置関係は、2個所とも同じであり、係止部64は流体が流れ込む接続部62に近く、鍔部18は流体が流れ出る接続部63に近く、その間にロウ材層26が挟まれている位置関係となっている。
【0054】
このような構成の複合部品60では、ケーシング61と接合部59とハニカム体10の側壁16とに囲まれ、開口面に面する開口面側空間と完全に隔離された側壁側空間69が形成されている。このため、開口面に面する開口面側空間と隔離された側壁側空間69を利用することにより、本複合部品を熱交換器等として利用することができる。
【0055】
このような構成の複合部品60を作製する際には、先にケーシング61から分離した係止部64とハニカム体10に設けられた2つの鍔部18を、それぞれ所定の距離を隔てて対向させる。ここで、各係止部64は複数の部品で構成され、ハニカム体10を包囲するように係止部64を形成してある。その際、係止部64の鍔部18との対向する側面64a、及び、鍔部18の係止部64と対向する端面18aのうちの少なくとも一方の面にロウ材を付着させておく。
この後、ロウ材を溶融させ、2つの係止部64を一方向(流体が流れ出る接続部63の方向)に移動させて、半溶融状態のロウ材層を押えるように圧力を加え、冷却することにより同時に2つの接合部59を形成することができる。このように2つ係止部64でロウ材層を押える圧力を加えることにより、2個所の接合部59を同時に形成することができ、ロウ材の流出を防止することができ、ロウ材の流出による隙間の発生を防止することができる。また、しっかりと鍔部18と係止部64とをロウ材層26により接合することができるので、鍔部18と係止部64との間に接合不良による隙間等が発生しにくい。
その後、ケーシング61の内部にハニカム体10を挿入し、ケーシングの61外周面全体に力を加えることでケーシング61の内径を調整する。そして、ケーシング61と係止部64とを溶接することで複合部品60を作製する。ここで、ケーシングは四角柱や円筒などのような一体型でもいいし、L時型や半円型、三日月状型などの分割形状を組合せて一体型となるケーシング形状でも良い。その他、ケーシングを様々な形状に分離し、係止部との溶接をしながら、ケーシングを構成してもよい。
【0056】
図7(a)は、本発明の複合部品を構成するハニカム体を模式的に示す斜視図であり、図7(b)は、上記ハニカム体を含む本発明の複合部品のさらに別の一例(第六例)を模式的に示す断面図である。
【0057】
図7に示す複合部品80は、熱交換器として機能する部材の一例を示している。
この複合部品80では、図6に示した複合部品60と同様に、係止部が2個所及び鍔部が2個所設けられており、係止部と鍔部との接合態様は図6に示した複合部品60の場合と同じである。
【0058】
本発明の複合部品を構成するハニカム体70は、熱交換器として機能するように構成されたハニカム体の一例である。すなわち、このハニカム体70は、ハニカム体70の長手方向に垂直な方向(かつ上下方向)に設けられた第1のセル73a、73bと、ハニカム体70の長手方向に設けられた第2のセル71と、これらのセル71、73a、73bを隔てるセル隔壁72とから構成されている。
【0059】
ハニカム体70の長手方向に設けられた第2のセル71に関し、ハニカム体70の長手方向に垂直な断面において、一定の幅で上下に伸びる第2のセル71が設けられていない部分(帯状部分)が存在し、第2のセル71が設けられている部分では、セル隔壁72を隔てて上下方向に整列して第2のセル71が設けられている。
【0060】
また、図7(a)に示すように、この第2のセル71が設けられていない部分に、上下に貫通する第1のセル73a、73bが設けられている。第1のセル73a、73bは、流体が流れ込む接続部82に近い部分と流体が流れ出る接続部83に近い部分の2個所に設けられており、第2のセル71と第1のセル73a、73bとは内部で繋がっておらず、セル隔壁72により隔離されている。
【0061】
図7に示す複合部品80では、図6に示す複合部品と同様、ケーシング81の内面の流体が流れ込む側の接続部82に近い部分、及び、流体が流れ出る側の接続部83に近い部分の2個所に係止部84が設けられており、一方、ハニカム体70にも、流体が流れ込む側の開口面75aに近い部分、及び、流体が流れ出る側の開口面75bに近い部分の2個所に鍔部78が設けられており、係止部84と鍔部78とはロウ材層26により接合されている。
【0062】
このような構成の複合部品80では、ケーシング81と接合部79とハニカム体70の側壁76とに囲まれ、開口面75a、75bに面する開口面側空間と隔離された側壁側空間89が形成されている。
また、ケーシング81の2つの係止部84の間の空間には、流体導入通路87a及び流体排出通路87bが設けられている。流体導入通路87aは、ケーシング81を貫通し、その端部は、ハニカム体70の第1のセル73bが形成されている部分の周囲の側壁76に密着している。また、流体排出通路87bも同様に、ケーシング81を貫通し、その端部は、ハニカム体70の第1のセル73aが形成されている部分の周囲の側壁76に密着している。
このため、流体導入通路87aから空気等の流体を流入させると、流体は、第1のセル73bを通過し、側壁側空間89に流れ出た後、第1のセル73aを通過して、流体排出通路87bから流出するようになっている。
【0063】
一方、他の排ガス等の流体は、接続部82を通過して、ハニカム体70の開口面75aから第2のセル71に流入し、開口面75bから流出するようになっている。
従って、例えば、ハニカム体70の第2のセル71を通過する流体が温度の高い流体であれば、流体導入通路87aから導入した常温の空気等の温度を上昇させることができ、熱交換器として機能する。
ここで、図7に記載のハニカム体および複合部品は一例であり、例えば第1のセル73aと73bがハニカム体の内部につながっていてもよい。さらに第1のセル73aと73bが繋がっている際は、第1のセルは貫通していなくも良く、流体導入通路から導入した空気等の流体を流体排出通路へと排出できればよい。
【0064】
上記流体導入通路と上記流体排出通路との間にさらに接合部を有していてもよい。上記流体導入通路と上記流体排出通路との間にさらに上記接合部を有する場合、導入する流体と、排出する流体の上記側壁側空間での混合を防止することができる。特に第1のセルがハニカム体を貫通していないとき、上記流体導入通路と上記流体排出通路との間にさらに接合部を有していることが好ましい。なぜならば、前記混合による流体温度の平均化がおこらず、効率よくハニカム体から流体への熱の受渡しが可能となり、結果として熱交換効率を向上させることができる。
【0065】
上記した構成の本発明の複合部品は、係止部を介してケーシングにしっかりとハニカム体を固定することができるので、排ガスフィルタや触媒担体として使用が可能な装置となる。
また、2個所に係止部と鍔部とを設け、接合することにより、二つの接合部分で仕切られた孤立空間を形成することができるため、図7に示した複合部品80のように、セルの形成方法や流体の流通方法を工夫することにより、熱交換器として使用が可能な装置となる。
【符号の説明】
【0066】
10、70 ハニカム体
11 セル
12、72 セル隔壁
15a、15b 開口面
16 側壁
18、58、78 鍔部
18a 端面
19、29、39、49、59、79 接合部
20、30、40、50、60、80 複合部品
24、34、44、54、64、84 係止部
26、56 ロウ材層
21、31a、31b、41、51、61、81 ケーシング
22、23、32、42、52、62、63、82、83 接続部
24a、34a、44a、64a 側面
54a 凸部
58a 溝
69、89 側壁側空間
71 第2のセル
73a、73b 第1のセル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8