(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555879
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】機上不活性気体生成システムおよび機上不活性気体生成方法
(51)【国際特許分類】
B64D 37/32 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
B64D37/32
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-247024(P2014-247024)
(22)【出願日】2014年12月5日
(65)【公開番号】特開2015-113113(P2015-113113A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2017年11月30日
(31)【優先権主張番号】1321614.8
(32)【優先日】2013年12月6日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514133612
【氏名又は名称】イートン リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Eaton Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アラン アーネスト マッシー
【審査官】
諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/079454(WO,A1)
【文献】
特開2004−197737(JP,A)
【文献】
特表2015−533701(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0324397(US,A1)
【文献】
特開平11−200886(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102008024503(DE,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0310392(US,A1)
【文献】
特開2010−142801(JP,A)
【文献】
特開平11−050809(JP,A)
【文献】
特表2011−516344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 37/32
F02C 6/06− 6/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機用の機上不活性気体生成システムであって、
キャビンの余分な空気を受け取り、圧縮された空気を空気分離モジュール(12)に供給するように構成された圧縮機(10)を備えており、
前記空気分離モジュール(12)は、前記圧縮された空気を、窒素富化空気画分と酸素富化空気画分とに分離するように構成されており、
前記圧縮された空気は、能動的な冷却を行うことなしに、前記圧縮機から、前記空気分離モジュールに直接送られ、
前記圧縮機(10)は、圧縮された所定の空気を、所定の温度で、前記空気分離モジュール(12)に送出するように動作する、機上不活性気体生成システムにおいて、
前記機上不活性気体生成システムは、前記キャビンの余分な空気の温度の変化に応じて、前記空気分離モジュール(12)に供給される前記圧縮された空気を、前記所定の温度に維持するように、前記圧縮機の動作速度および圧力比のうちの少なくとも一方を調整する制御装置(22)を含む、
機上不活性気体生成システム。
【請求項2】
前記圧縮機は、ハウジングと、前記ハウジング用の冷却装置とを含む、請求項1記載の機上不活性気体生成システム。
【請求項3】
前記圧縮機(10)は、1.5乃至3.5の圧力比で動作する、請求項1または2記載の機上不活性気体生成システム。
【請求項4】
前記圧縮機(10)は、約2.5の圧力比で動作する、請求項3記載の機上不活性気体生成システム。
【請求項5】
前記キャビンの余分な空気の前記温度をモニタリングするための温度センサ(20)と、前記温度センサに応じて、前記空気分離モジュール(12)に供給される前記圧縮された空気を、前記所定の温度に維持するように、前記圧縮機(10)の前記動作速度および前記圧力比のうちの少なくとも一方を制御するための、制御装置(22)とを含む、請求項1記載の機上不活性気体生成システム。
【請求項6】
前記窒素富化空気画分を冷却するための冷却装置(18)を含む、請求項1から5までのいずれか一項記載の機上不活性気体生成システム。
【請求項7】
前記冷却装置(18)は、航空機燃料を受け取るための冷却材経路を有する熱交換器を備えている、請求項6記載の機上不活性気体生成システム。
【請求項8】
前記冷却装置(18)は、キャビンの空気を受け取るための冷却材経路を有する熱交換器を備えている、請求項6記載の機上不活性気体生成システム。
【請求項9】
航空機の機上で使用する機上不活性気体生成システムであって、
キャビンの余分な空気を受け取り、圧縮された空気を空気分離モジュール(12)に送出するように構成された圧縮機(10)と、
前記キャビンの余分な空気の温度に応じて、前記空気分離モジュール(12)に供給される前記圧縮された空気を、所定のレベルに維持するように、前記圧縮機の動作速度および圧力比のうちの少なくとも一方を調整する制御装置(22)と
を備えている、機上不活性気体生成システム。
【請求項10】
機上不活性気体生成方法であって、
キャビンの空気を単段圧縮機(10)に供給するステップと、
圧縮された空気を、所定の温度で、前記圧縮機から空気分離モジュール(12)に送るステップと、
前記圧縮機と前記空気分離モジュールとの間で前記圧縮された空気を能動的に冷却することなしに、前記空気分離モジュールから、前記圧縮された空気の窒素富化空気画分を得るステップと
を含み、
前記方法は、さらに、前記キャビンの余分な空気の温度の変化に応じて、前記空気分離モジュール(12)に供給される前記圧縮された空気を、前記所定の温度に維持するように、前記圧縮機の動作速度および圧力比のうちの少なくとも一方を調整するステップを含む、方法。
【請求項11】
航空機の機上での機上不活性気体生成システムのための方法であって、
圧縮機(10)に、キャビンの余分な空気を供給するステップと、
圧縮された空気を、前記圧縮機から空気分離モジュール(12)に送出するステップと、
前記空気分離モジュール(12)に供給された前記圧縮された空気を、所定の温度に維持するように前記圧縮機を制御するステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の機上で、燃料タンクおよび他の領域の不活性化を促進するために、航空機上で不活性気体の機上生成を行うための装置および方法に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本明細書においては、「不活性気体生成」という用語が、酸素が激減した雰囲気、または、「窒素富化雰囲気」(NEA)の生成を意味する、広く受け容れられた専門用語が採用される。インレットからの空気の供給を、窒素富化空気部分(NEA)と酸素富化空気部分(OEA)とに分離する、1つ以上のフィルタまたは「空気分離モジュール」(ASM)を使用することがよく知られている。
【0003】
キャビンの空気を昇圧する遠心圧縮機を含む現在の燃料タンク不活性化システムは、典型的に、空気分離モジュールへの供給のために、圧縮された空気を、71℃(160°F)の温度に低減するポストコンプレッション熱交換器を必要とする。この機構では、NACAインテーク、ダクト構造、ファン、温度制御弁、熱交換器、および、冷却空気を排出するアウトレットを含む、ラムエアー冷却システムを必要とする。キャビンの空気を空気源として使用する典型的な燃料タンク不活性化システムアーキテクチャは、添付の図面の
図1に示されている。この図は、中間冷却を伴う2つの圧縮機と、空気分離モジュールへの給気を約71℃未満に冷却するポストコンプレッション熱交換器とを備えた二段圧縮機を示している。中間冷却器と熱交換器とは共に、典型的に、NACAインテーク、ダクト構造、温度センサ、および、冷却空気を排出するアウトレットを含む、ラムエアー冷却回路を必要とする。この装備の重量およびこの装備を収容するために必要な体積は、複合的な外殻のペネトレーション(multiple hull penetrations)と共に、航空機の設計者に深刻な制約を与えている。さらに、上述のこれらの要因は、既存の航空機に、これらの装備を改装することの妨げとなっている。
【0004】
ASM技術は、入ってくる空気およびNEA画分の流動経路の再設計を用いること、および、さらに、空気分離モジュールを構成する構成要素に対して高温ファイバーおよび樹脂を使用することによって、進化し、その結果、約150℃(300°F)のインレット温度を有する空気をフィルタリングすることが可能な空気分離モジュールが得られる。
【0005】
本発明者らは、二段目の圧縮機、中間冷却器、および、ポストコンプレッション熱交換器、ならびに、それらの、従来の装置における冷却回路を必要とせずに、キャビンの空気を受け取り、その空気を単段圧縮機により圧縮し、その後、圧縮した空気をASMに供給する、不活性気体生成のための、より簡略化されたシステムを提供することが可能であることを発見した。結果として、このシステムは、従来使用していたシステムよりも、高い温度であるが、より低い圧力で動作する。より高い動作温度は空気分離モジュールの性能を向上させ、このことにより、より低い動作圧力が補償して、その結果、従来の分離性能が維持される。
【0006】
従って、一側面において、本発明は、航空機用の機上不活性気体生成システムを提供し、この機上不活性気体生成システムは、キャビンの余分な空気を受け取り、圧縮された空気を空気分離モジュールに供給するように構成されている圧縮機を備え、ここで上記空気分離モジュールは、上記圧縮された空気を窒素富化空気画分と酸素富化空気画分とに分離するように構成されており、ここで、上記圧縮された空気は、能動的な冷却を受けることなしに、圧縮機から空気分離モジュールへ直接送られる。
【0007】
用語「能動的な冷却を受けることなしに」は、圧縮機から空気分離モジュールへの下流への流れが、外部の供給源からの二次的な冷却流の供給を必要とする熱交換器を通過しないということを意味するために使用される。しかしながら、例えば、冷却フィン、キャビンの空気のさらなる部分のような冷却材流体の外部の経路、または、これらの特徴の混合物によって、圧縮機自体を冷却する可能性を除外しない。
【0008】
この装置において、二段圧縮機、中間冷却器、および、二段目の後の熱交換器はもはや必要ではない。このことは、不活性気体生成システムが、中間冷却器またはポストコンプレッション熱交換器に供給されるべきラムエアーの準備を必要とせず、その結果、複合的な外殻のペネトレーション、関連するインレットおよびアウトレット、ならびに、ダクト構造に対する必要性が取り除かれ、この装置を、改装に適したものにすることを意味する。
【0009】
圧縮機は、航空機電気システムから供給を受ける電気モーターなどの任意の適切な原動機、またはタービンによって、あるいは軸動力によって駆動される。
【0010】
好適には、圧縮機は、1.5乃至3.5の圧力比で動作し、理想的には約2.5で動作し、その結果、送出温度は、空気分離モジュールの最大動作温度を超えない。
【0011】
好適には、使用時、圧縮機は、80℃を超えて150℃(300°F)までの温度で、圧縮された空気をASMまで送出するように動作する。
【0012】
1つの実施形態は、キャビンの余分な空気の温度変化に応じて、空気分離モジュールに供給される圧縮された空気を、所定の温度に維持するように、圧縮機の動作速度および圧力比のうちの少なくとも一方を調整する制御装置を含む。この実施形態は、キャビンの余分な空気の温度をモニタリングするための温度センサと、上記温度センサに応答する、空気分離モジュールに供給される圧縮された空気を、所定の温度に維持するように、上記圧縮機の動作速度および圧力比のうちの少なくとも一方を制御するための制御装置とを含む。
【0013】
機上不活性気体生成システムは、NEA画分を冷却するための手段を含み、この手段は、例えば、航空機燃料またはキャビンの空気を含む適切な冷却材によって冷却された熱交換器を備えている。
【0014】
別の側面において、本発明は、航空機の機上で使用する機上不活性気体生成システムを提供し、この機上不活性気体生成システムは、キャビンの余分な空気を受け取り、かつ、圧縮された空気を空気分離モジュールへと送出するように構成された圧縮機と、キャビンの余分な空気の温度に応じて、上記空気分離モジュールへと供給される圧縮された空気を、所定のレベルに維持するように、圧縮機の動作速度および圧力比のうちの少なくとも一方を調整する制御装置とを備えている。
【0015】
別の側面において、本発明は、機上で不活性気体を生成する方法を提供し、上記方法は、キャビンの空気を単段圧縮機に供給するステップと、圧縮された空気を上記圧縮機から空気分離モジュールに送るステップと、上記圧縮機と上記空気分離モジュールとの間で上記圧縮された空気を能動的に冷却することなしに、上記空気分離モジュールから、上記圧縮された空気のNEA画分を得るステップとを含む。
【0016】
さらに別の側面において、本発明は、航空機の機上での機上不活性気体生成システムの方法を提供し、上記方法は、圧縮機にキャビンの余分な空気を供給するステップと、圧縮された空気を、上記圧縮機から空気分離モジュールに送出するステップと、上記空気分離モジュールに供給された上記圧縮された空気を、所定の温度に維持するように上記圧縮機を制御するステップとを含む。
【0017】
本発明が上記のように説明されてきたが、本発明は、上述された、または、以下の説明もしくは特許請求の範囲で記載される、任意の特徴または特徴の発明を含む組み合わせまで拡張される。
【0018】
ここで、本発明が、以下の図面を参照しながら、単なる例示として以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、航空機燃料タンク不活性化システムの先行技術の装置のブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明に従う、航空機の燃料タンク不活性化システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図2を参照すると、選別されたキャビンの余分な空気が、航空機のキャビンから、単段圧縮機10に供給される。単段圧縮機は、典型的に、24℃までの温度のキャビンの空気を受け取り、70%の断熱効率で2.5の圧力で動作可能である。単段圧縮機は、圧縮された空気を150℃までの温度で空気分離モジュール(ASM)12に送出する。ASM12からのNEA画分は、制御弁14を介して、航空機燃料タンク16に送られる。必要に応じて、空気分離モジュールからのNEA画分は、18で概略的に示されている適切な手段によって冷却される。例えば、NEA画分は、適切な熱交換器を使用して、航空機燃料によって冷却される。NEAから航空機燃料へと伝達された熱は、航空機燃料が、航空機エンジンへと送るためにタンクから出るときに、航空機燃料を予熱するために有益に使用される。このことは、エンジン性能を向上させ、さらに、氷結を防止する。
【0021】
別の装置において、NEAは、適切な冷却材(例えばキャビンの空気のさらなる部分)を用いて、燃料タンクの外部の適切な熱交換器によって冷却される。
【0022】
圧縮機10は、また、8で概略的に示されるように、全体冷却も含む。
【0023】
圧縮機から出て行く流体の温度が、一定レベル(典型的には150℃)に制御されることを確実にするために、温度センサ20が、圧縮機インレットに設けられ、かつ、温度信号を、圧縮機を駆動するモーター24の速度を制御する制御装置22に供給する。動作中、圧縮機に供給されるキャビンの空気の温度が変化した場合、ASM12に対して実質的に一定の温度を維持するように、圧縮機の速度および結果としてその圧力比が制御装置によって調整される。代替的な制御システムが、圧縮機のアウトレットにおいて温度を検出し、圧縮機を駆動するモーターの速度を相応に調整することが認識される。
【0024】
上記の実施形態において、圧縮機は、遠心圧縮機、回転容積式圧縮機、または、任意の他の適切な圧縮機である。
【0025】
本明細書において説明された実施形態は、システムコスト、重量、および空間エンベロープの大きな低減をもたらし、システム効率、信頼性および利用可能性を増大させる。