特許第6555887号(P6555887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555887
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】草刈機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/74 20060101AFI20190729BHJP
   A01D 34/64 20060101ALI20190729BHJP
   A01D 34/66 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   A01D34/74
   A01D34/64 A
   A01D34/66 Z
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-997(P2015-997)
(22)【出願日】2015年1月6日
(65)【公開番号】特開2016-123377(P2016-123377A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年6月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】高岡 将樹
(72)【発明者】
【氏名】浅原 将人
(72)【発明者】
【氏名】汐月 資純
(72)【発明者】
【氏名】青木 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】野上 和昭
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 章
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−236616(JP,A)
【文献】 特開2003−230311(JP,A)
【文献】 特開2004−187515(JP,A)
【文献】 特開2008−228708(JP,A)
【文献】 特開2003−291674(JP,A)
【文献】 特開2013−243962(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0285753(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/00−34/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体前後方向中心線に沿って延びる機体フレームと、
前記機体フレームに設けられた左前輪と右前輪を含む前輪ユニットと、
前記機体フレームに設けられた左後輪と右後輪を含む後輪ユニットと、
前記前輪ユニットと前記後輪ユニットとの間で前記機体フレームの下方に配置されるとともに、機体横断方向に並設された左側ブレードと右側ブレードとを少なくとも有する回転ブレードユニットを含むモーアユニットと、を備えた草刈機であって、
平面視で前記左前輪の踏み付け軌跡が前記左側ブレードの前方から後方への回転軌跡部分のうちの前記左側ブレードの中心に対して径方向外側部分と重なると共に平面視で前記右前輪の踏み付け軌跡が前記右側ブレードの前方から後方への回転軌跡部分のうちの前記右側ブレードの中心に対して径方向外側部分と重なるように、かつ、前記左前輪の走行軌跡の幅が前記左後輪の幅内に入ると共に前記右前輪の走行軌跡の幅が前記右後輪の幅内に入るように、前記前輪ユニットと前記回転ブレードユニットとの夫々が配置されて、前記左前輪と前記右前輪との間の中心位置が機体前後方向中心線からオフセットしている草刈機。
【請求項2】
前記左前輪と前記右前輪とを連結する機体横断方向に延びた前輪連結アームを揺動させる機体前後方向に延びた前輪揺動軸が前輪ユニットを揺動する機体前後方向中心線上に配置されている請求項1に記載の草刈機。
【請求項3】
前記モーアユニットには前記左側ブレードと前記右側ブレードとの間に中央ブレードが含まれ、前記中央ブレードの回転軸は前記機体前後方向中心線からオフセットしており、前記中央ブレードの回転軸と前記左側ブレードとの距離は前記中央ブレードの回転軸と前記右側ブレードとの距離と同じである請求項1または2に記載の草刈機。
【請求項4】
前記中央ブレードの回転軸の前記機体前後方向中心線に対するオフセット方向は、前記左前輪と前記右前輪との間の中心位置の機体前後方向中心線に対するオフセット方向の反対である請求項3に記載の草刈機。
【請求項5】
前記左後輪と前記右後輪との間の中心位置が機体前後方向中心線上に位置し、前記後輪ユニットより後方に位置するエンジンのエンジン出力軸が機体前後方向中心線上に位置する請求項3または4に記載の草刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
前輪と後輪とによって対地支持された機体フレームの下方で前輪と後輪との間にモーアユニットが装備された草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の草刈機は、例えば、特許文献1に示すように、左右一対の後輪の間の後輪間中心線及び左右一対の前輪の間の前輪間中心線が、ほぼ機体前後方向中心線上にくるように配置されている。特許文献1では、右ブレード回転軸は右前輪幅方向中心を通る前後方向線上に位置している。右ブレード回転軸は右前輪幅方向中心を通る前後方向線よりわずか外方に偏位している。このような構成の場合、右前輪で前方(草刈機の前進方向)に向けて押し倒されて前伏せ姿勢となっている草(芝)は左ブレードの左から右に回転移動するブレードによって横殴りに切断作用を受ける。また、左前輪で前方に向けて押し倒されて前伏せ姿勢となっている草(芝)も左ブレードのほぼ左から右に回転移動するブレードによってほぼ横殴りに切断作用を受ける。このように、前伏せ姿勢となっている草(芝)を左から右に回転移動するブレードによってほぼ横殴りに切断しようとした場合、ブレードが草(芝)を下向きに押し込むことで十分な切断性能を発揮できない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−205946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記実情に鑑み、本発明の目的は、前輪で押し倒されて前伏せ姿勢となっている芝などの草をできるだけ効率よく切断することができる草刈機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による草刈機は、機体前後方向中心線に沿って延びる機体フレームと、前記機体フレームに設けられた左前輪と右前輪を含む前輪ユニットと、前記機体フレームに設けられた左後輪と右後輪を含む後輪ユニットと、前記前輪ユニットと前記後輪ユニットとの間で前記機体フレームの下方に配置されるとともに、機体横断方向に並設された左側ブレードと右側ブレードとを少なくとも有する回転ブレードユニットを含むモーアユニットとを備え、平面視で前記左前輪の踏み付け軌跡(轍)が前記左側ブレードの前方から後方への回転軌跡部分のうちの前記左側ブレードの中心に対して径方向外側部分と重なると共に平面視で前記右前輪の踏み付け軌跡(轍)が前記右側ブレードの前方から後方への回転軌跡部分のうちの前記右側ブレードの中心に対して径方向外側部分と重なるように、かつ、前記左前輪の走行軌跡の幅が前記左後輪の幅内に入ると共に前記右前輪の走行軌跡の幅が前記右後輪の幅内に入るように、前記前輪ユニットと前記回転ブレードユニットとの夫々が配置されて、前記左前輪と前記右前輪との間の中心位置が機体前後方向中心線からオフセットしている。
【0006】
この構成によれば、左前輪の踏み付け軌跡(轍)を作り出している、左前輪によって前方に向けて押し倒されて前伏せ姿勢となっている草(芝)は、左側ブレードの前方から後方へ回転移動する回転軌跡の部分で、起き上がらせるような作用を受けながら、切断される。同様に、右前輪によって前方に向けて押し倒されて前伏せ姿勢となっている草(芝)は、右側ブレードの前方から後方へ回転移動する回転軌跡の部分で、起き上がらせるような作用を受けながら、切断される。これにより、前輪で押し倒されて前伏せ姿勢となっている芝などの草が効率よく切断され、刈り残しが抑制される。
【0007】
前輪によって踏み付けられた草(芝)をブレードの前方から後方へ回転移動する回転軌跡の部分で刈り取るためには、回転ブレードユニットを大幅に機体横方向にずらせない限り、前輪を機体横方向にずらせる必要がある。しかしながら、前輪の走行軌跡(轍)が後輪の走行軌跡(轍)内に入っていなければ、草刈機のトラックにトラックへの積み降ろし時に幅の広い傾斜板が必要となり、積み込み性が悪化する。この問題を回避するために、本発明による草刈機では、前記左前輪と前記右前輪との間の中心位置が機体前後方向中心線からオフセットしており、かつ前記左前輪の走行軌跡の幅は前記左後輪の幅内に入っているとともに、前記右前輪の走行軌跡の幅は前記右後輪の幅内に入っている。
【0008】
モーアユニットを前輪と後輪との間に配置している草刈機では、モーアユニットのメンテナンス等のために、左右の前輪を連結する前輪連結アームを機体フレームに機体横断方向に揺動可能に取り付け、一方の前輪を接地させながら、他方の前輪を上方に浮き上がらせることで、モーアユニットの下方に大きなメンテナンス空間を作り出す。その際、接地させる側の前輪と揺動軸心との距離が大きいほど、容易に大きなメンテナンス空間を作り出すことができる。本発明による実施形態の1つでは、前記左前輪と前記右前輪とを連結する機体横断方向に延びた前輪連結アームを揺動させる機体前後方向に延びた前輪揺動軸が前輪ユニットを揺動する機体前後方向中心線上に配置されている。この特徴と先に述べた、前記左前輪と前記右前輪との間の中心位置が機体前後方向中心線からオフセットしているという特徴とを組み合わせることで、前輪トレッド幅が同一であっても、容易に大きなメンテナンス空間を作り出すことができる。
【0009】
草刈機で良く用いられるモーアユニットは、3つのブレードが横並びしているタイプである。このようなモーアユニットでは、3つの回転ブレードの連係で効率的な草刈り作業を行うため、互いの中心間距離は同一にすることが好ましい。さらに、芝刈り作業などで、既刈地と未刈地との境界にブレードの外端を合わせるためには、運転者からモーアユニットの外端が見え易い構成が好ましい。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記モーアユニットには前記左側ブレードと前記右側ブレードとの間に中央ブレードが含まれ、前記中央ブレードの回転軸は前記機体前後方向中心線からオフセットしており、前記中央ブレードの回転軸と前記左側ブレードとの距離は前記中央ブレードの回転軸と前記右側ブレードとの距離と同じに配置されている。さらに、その際、前記中央ブレードの回転軸の前記機体前後方向中心線に対するオフセット方向は、前記左前輪と前記右前輪との間の中心位置の機体前後方向中心線に対するオフセット方向の反対にすることで、前記左前輪の踏み付け軌跡(轍)が前記左側ブレードの前方から後方への回転軌跡部分と重なるとともに、かつ前記右前輪の踏み付け軌跡(轍)が前記右側ブレードの前方から後方への回転軌跡部分と重なる、前輪とモーアユニットの配置が容易となる。
【0010】
エンジンを機体の後部、特に後輪より後方に配置する場合、機体の安定のためには、エンジンの出力軸を機体前後方向中心線に合わせるとともに、左右後輪間の中心も機体前後方向中心線に合わせることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による左右前輪と回転ブレードユニットとの基本的な配置を示す模式図である。
図2】本発明による草刈機の一例であるゼロターンモ−アの側面図である。
図3】ゼロターンモ−アの内部構造を見易くした概略側面図である。
図4】ゼロターンモ−アの平面図である。
図5】ゼロターンモ−アの底面図である。
図6】ゼロターンモ−アの正面図である。
図7】エンジンルームの側面図である。
図8】エンジンルームの平面図である。
図9】ボンネットの閉塞構造を示す分解斜視図である。
図10】モーアユニットの伝動ケースの斜視図である。
図11】伝動ケースのドレイン孔に沿って切断された縦断面図である。
図12】伝動ケースのドレイン孔に沿って切断された横断面図である。
図13】ゼロターンモーアの別実施形態を示す側面図である。
図14図13によるゼロターンモーアのボンネット背面領域を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による草刈機の具体的な実施形態を説明する前に、図1を用いて、本発明を特徴付けている、垂直軸周りで回転するブレード(刈刃)と前輪との配置関係を説明する。図1で示された草刈機は模式化されており、機体前後方向に延びる機体フレーム(図1では図示されていない)を対地支持する左前輪11aと右前輪11b、左右一対の後輪12、ブレードユニットを構成する左側ブレード641と中央ブレード642と右側ブレード643、エンジン3、左前輪11aと右前輪11bとを連結する前輪連結アーム23が図示されているだけである。左前輪11aと右前輪11bとを区別する必要がない場合には、単に前輪11と表記する。
なお、この明細書において、原則的には、前後方向は草刈機の長手方向(走行方向)を意味し、横方向(左右方向)は草刈機の幅方向(前後方向に直交する方向)を意味し、上下方向は、地面(水平面)に対する鉛直方向を意味する。
【0013】
図1では前輪11が草(芝)を踏み付けながら転動する轍を踏み付け軌跡として、車線で表している。この踏み付け軌跡の幅はdで示されている。前輪11は機体前後方向中心線MLに対して横方向で右側にずれている。つまり、機体前後方向中心線MLから左前輪11aの中心までの長さF1は、機体前後方向中心線MLから右前輪11bの中心までの長さF2より短くなっており、左前輪11aと右前輪11bとの間の中心線FCLは機体前後方向中心線MLに対してオフセット量OS1だけ右側にずれている。左右一対の後輪12は、機体前後方向中心線MLに対して対称配置されており、それぞれの機体前後方向中心線MLからの距離RWは等しい。エンジン3もクランク軸が機体前後方向中心線MLに実質的に一致するように配置されている。ただし、前輪11の中心は、後輪12の幅内に入っており、実質的には、前輪11の走行軌跡は後輪12の走行軌跡に入っている。
【0014】
左前輪11aと右前輪11bとは前輪連結アーム23で連結され、この前輪連結アーム23は、機体前後方向中心線MLの位置で、図1では図示されていない機体に、前輪揺動ユニット24によって揺動可能に取り付けられている。前輪揺動ユニット24の機体前後方向に延びた揺動軸心は実質的に機体前後方向中心線ML上に位置している。このことから、前輪揺動ユニット24の揺動軸心から右前輪11bまでの距離は左前輪11aまでの距離より長く、同じ搖動角度であれば、右前輪11bを接地させた揺動姿勢の方が、機体を高く持ち上げることができる。
【0015】
3つのブレード641、642、643からなるブレードユニットは、前輪11とは逆に、機体前後方向中心線MLに対して横方向で左側にずれている。つまり、機体前後方向中心線MLから左側ブレード641の中心までの長さB1は、機体前後方向中心線MLから右側ブレード643の中心までの長さB2より長くなっており、中央ブレード642の中心は、機体前後方向中心線MLに対してオフセット量OS2だけ左側にずれている。
【0016】
3つのブレード641、642、643からなるブレードユニットと前輪11との横方向のずれは、実質的にはオフセット量OS1とオフセット量OS2とによって作り出されるが、本発明では、2つのオフセット量OS1、OS2は、平面視で左前輪11aの踏み付け軌跡(轍)が左側ブレード641の前方から後方への回転軌跡部分と重なるように、かつ右前輪11bの踏み付け軌跡(轍)が右側ブレード643の前方から後方への回転軌跡部分と重なるように、決定されている。これにより、図1で模式的に示しているように、前輪11で押し倒されて前伏せ姿勢となっている芝などの草が効率よく切断され、刈り残しが抑制される。
【0017】
次に、図面を用いて、本発明による草刈機の具体的な実施形態の1つであるゼロターンモ−アとも称される草刈機を説明する。この実施形態でも、図1を用いて説明したブレードと前輪11との間の配置関係が採用されている。図2は、ゼロターンモ−アの側面図であり、図3はその内部構造を説明しやすくした模式的な側面図である。図4はゼロターンモ−アの平面図、図5は底面図、図6は正面図である。
【0018】
このゼロターンモーアは、左右一対の前輪11を有する前輪ユニットと、回転駆動される左右一対の後輪12を有する後輪ユニットとによって対地支持された走行機体10を備えている。走行機体10は、ベース部材として機体フレーム2を有しており、前輪11と後輪12との間で、モーアユニット6がリンク機構14を介して機体フレーム2から吊り下げられている。走行機体10の機体前後方向中央領域に運転部5が配置されている。このため、運転部5では機体フレーム2の上に座席支持体52が固定されており(図1参照)、座席支持体52の上面に運転座席53が設けられている。座席支持体52の左右側面にはフェンダ17が形成されている。フェンダ17の上面には操作パネル8が設けられている。フェンダ17の下方には燃料タンク18がそれぞれ配備されている。運転座席53の足元領域にはステップ50が、前フレーム21の上に敷設されている。ステップ50の前領域の中央近くにはブレーキペダル191が配置されている。ブレーキペダル191の横側には、ブレーキペダル191を踏込み位置に保持する駐車用のブレーキロックペダル192が配置されている。
【0019】
ロプス装置13は、図2図6とに示されているように、左右一対の支柱13aと支柱13aの上端をつなぐ横部材13bとを有する。支柱13aは中間で揺動式に折り曲げ可能となっている。支柱13aの下半分である脚部131は、後フレーム22の上端とほぼ同じ高さ位置で内側に屈曲し、前フレーム21の後端に達するまで延びている。前フレーム21の後端とロプス装置13の脚部131とは連結ブラケットを介して連結されている。支柱13aの上半分である直線状の支柱部132は、脚部131と、揺動連結部を介して垂直姿勢と横向き(または下向き)姿勢との間で揺動可能に連結されている。
【0020】
運転部5の後部にはロプス装置13が設けられている。走行機体10の後端領域にはエンジン3が配置され、エンジン3の前方やや下側にトランスミッション4が配置されている。トランスミッション4には、左後車軸伝動部4aと右後車軸伝動部4bが含まれている。図3では左後車軸伝動部4aだけが点線で示されているが、図5に示すように、機体右側には左後車軸伝動部4aと線対称となる位置に右後車軸伝動部4bが配置されている。左後車軸伝動部4aと右後車軸伝動部4bのそれぞれには、独立して操作可能な静油圧式変速機構(HST)が無段変速機構の一例として内装されている。静油圧式変速機構は、エンジン動力を正転(前進)状態及び逆転(後進)状態で、低速から高速まで無段階に変更して、後輪ユニットの左右それぞれの後輪12に伝達することができる。これにより、左右の後輪12の両方が同じまたはほぼ同じ速度で前進方向に駆動することで直進前進が作り出され、左右の後輪12が同じまたはほぼ同じ速度で後進方向に駆動することで直進後進が作り出される。さらに、左右の後輪12の速度を互いに異ならせることで、走行機体10を任意の方向に旋回移動させることができ、例えば、左右の後輪12のいずれか一方を零速に近い低速にさせ、他方の後輪12を高速で前進側あるいは後進側に操作することで小回り旋回させることができる。さらに、左右の後輪12を互いに逆方向に駆動することで、走行機体10を左右の後輪12のほぼ中央部を旋回中心としてスピンターンさせることもできる。前輪11は、左右一対のキャスタ輪として構成され、縦軸芯周りで向きを自由に変更することができるので、左右の後輪12駆動による走行方向に応じて向きが修正されることになる。
【0021】
トランスミッション4に対する変速操作、特に左後車軸伝動部4aと右後車軸伝動部4bに対する変速操作は、運転座席53の両側に配置された左右一対の変速レバー51によって行われる。変速レバー51を前後中立位置に保持すると無段変速装置が中立停止状態となり、変速レバー51を中立位置から前方に操作することで前進変速が実現し、後方に操作することで後進変速が実現する。
【0022】
図4図5に示すように、前記走行機体10の機体フレーム2は横幅の広い前フレーム21と横幅の狭い後フレーム22とで構成されている。前フレーム21及び後フレーム22は、機体前後方向に延びる左右一対の縦ビームと縦ビームを連結するクロスビームとからなる。前フレーム21の横幅(左右の縦ビームの間隔)は後フレーム22の横幅より大きく、平面視で後フレーム22の前部は前フレーム21の後部に入り込んでおり、図示されていない連結部材によって互いに連結されている。後フレーム22の後端には、エンジン3の後方に空間を作り出すように箱状に形成された後端フレーム220が固定されている。
【0023】
後フレーム22の中央にエンジン3が防振搭載されている。エンジン3の前壁の下部から前方に突き出しているクランク軸の延長部と同軸でトランスミッション4にエンジン動力を伝達する入力軸30がほぼ水平延びている。左前輪11aや右前輪11bの乗り上げ可能高さをできるだけ大きくするために走行機体10の後部の地上高さを高くすることが要求されることから、エンジン3は、トランスミッション4より地上から高い位置に配置されている。図3に示すように、トランスミッション4のミッションケース40の前壁からはモーアユニット6に動力を伝達するPTO軸41が前方に突き出している。このPTO軸41とモーアユニット6のPTO入力軸61とを接続するPTO中継軸62の傾斜角が大きくならないように、トランスミッション4の地上高さは低くなっている。
【0024】
図3に示されているように、冷却ファン33は、エンジン3の前方で、その上端がエンジン3の上端とほぼ同じ高さになるように配置されている。冷却ファン33は、エンジン3の前壁の上部に設けられ、クランク軸の延長部からベルト伝動で動力が伝達される前後方向に延びた回転軸33aを有する(図4参照)。冷却ファン33の前方にはラジエータ31が配置されている。ラジエータ31は、その冷却面を冷却ファン33の回転軌跡面に対向させて、直立姿勢で、つまり鉛直方向に延びるように設けられている。ラジエータ31の下端は入力軸30に接近しており、その下端高さは、トランスミッション4の上端と入力軸30との間のほぼ中間高さの位置となっている。冷却ファン33とラジエータ31との間にはシュラウド330が形成されている。図6図7に示されているように、シュラウド330の左右の側部はボンネット16の側板部まで延ており、エンジンルームをエンジン側空間とラジエータ側空間とに区分けする隔壁としても機能している。
【0025】
図3に示されているように、エンジンルームを作り出すボンネット16は、後端フレーム220に固定されている後ボンネットである固定ボンネット16Bと、後側に位置する横軸心周りで前に向かって開閉する前ボンネットである可動ボンネット16Aとからなる。
【0026】
図7図8に示すように、エンジン3の上方には、円筒状のエアクリーナ32が横置き(円筒軸が機体横断方向に沿っている)されている。排出ガス浄化装置36はエンジン3の後方で、ほぼエンジン3の高さレベルに、横置き(円筒軸心が機体横断方向に沿っている)で配置されている。この排出ガス浄化装置36は、エンジン3から排出された排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集する、DPFと呼ばれるフィルタを内蔵している。排出ガス浄化装置36は、エンジン3の排気管システムに介装されている。排気管システムは、排出ガスを機体外に放出する放出口390を形成する排気終端部39と、エンジン3の排気マニホールドと排出ガス浄化装置36の流入口361とを接続する流入側排気流路37と、排出ガス浄化装置36の流出口362と排気終端部39とを接続している流出側排気流路38とからなる。放出口390は、後端フレーム220の左側方から横方向に向かって排気ガスを放出するように配置されている。
【0027】
モーアユニット6は、天井壁と天井壁の外周から下方の延びている周壁とからなるモーアデッキ60を備えている。モーアデッキ60は、左側ブレード641、中央ブレード642、右側ブレード643とからなるブレードユニット64を備えている。このため、モーアデッキ60には、横方向に並設された垂直軸心を有する第1回転軸631、第2回転軸632、第3回転軸633にPTO入力軸61によって受け取られた動力を分配するベルト式の伝動ユニット63が設けられている。第1回転軸631には左側ブレード641が、第2回転軸632には中央ブレード642が、第3回転軸633には右側ブレード643が取り付けられている。左側ブレード641と中央ブレード642と右側ブレード643とは、それぞれ平面視で、時計方向に回転する。ブレードユニット64の回転軌跡の外側にはバッフル65が設けられており、左側ブレード641と中央ブレード642と右側ブレード643とで刈り取られた草は、モーアデッキ60の右側端部に形成された刈草排出部66から放出される。したがって、未刈地と既刈地との境界線は、モーアデッキ60の左側に現れることになり、運転者は、左側ブレード641を未刈地と既刈地との境界線に合わせるように草刈走行を行う。
【0028】
図4図5図6に示されているように、このゼロターンモーアにおいても、左右一対の前輪11は機体前後方向中心線MLに対して横方向で右側にずれており、3つのブレードからなるブレードユニットは、前輪11とは逆に、機体前後方向中心線MLに対して横方向で左側にずれている。つまり、左前輪11aと右前輪11bとの間の中心線FCLは機体前後方向中心線MLに対してオフセット量OS1だけ右側にずれているとともに、左側ブレード641と右側ブレード643との略中間位置で前方にとび出している中央ブレード642の中心は、機体前後方向中心線MLに対してオフセット量OS2だけ左側にずれている。ここでは、オフセット量OS1は前輪幅dの約1/3であり、オフセット量OS2はブレード半径の1/3から1/2である。
【0029】
これにより、平面視で左前輪11aの踏み付け軌跡(轍)が左側ブレード641の前方から後方への回転軌跡部分と重なり、かつ右前輪11bの踏み付け軌跡(轍)が右側ブレード643の前方から後方への回転軌跡部分と重なり、その結果、前輪11で押し倒されて前伏せ姿勢となっている芝などの草が左側ブレード641及び右側ブレード643の前方から後方に移動する回転軌跡部分によって効率よく切断される。
【0030】
図5図6とから明らかなように、このゼロターンモーアにおいても、左前輪11aと右前輪11bとは前輪連結アーム23で連結され、この前輪連結アーム23は、機体前後方向中心線MLの位置で、前輪揺動ユニット24によって揺動可能に取り付けられている。前輪揺動ユニット24の前輪揺動軸25は、機体前後方向中心線ML上に位置している。
【0031】
図9に示されているように、可動ボンネット16Aは、側面を形成する左右一対の側板161と上面を形成する天板162と前面を形成する前板163とからなり、後面は開口されている。前板163の全体にわたって複数の開口部165が設けられており、側板161と天板162の前端領域には、それぞれ複数の開口部167と168が設けられている。各開口部165、167、168には防塵ネットが装着されている。側板161の前側の下半分に長方体形状の凹部164が形成されており、その凹部164の壁面(側面や上面)にも防塵ネット付きの開口部166が形成されている。したがって、図8に示すように、冷却ファン33は、可動ボンネット16Aの上面及び側面からも冷却風を作り出すため吸い込むことができる。
【0032】
可動ボンネット16Aの前側部分の下端縁には、平面視でU字形状のクッショントリム169が嵌め込まれている。このクッショントリム169を機体下方空間に対して閉鎖するように受け止めるために、1つの第1受け板341、2つの第2受け板342、2つの第3受け板343(図9では右側の1つしか図示されていない)が設けられている。図9に示されているように、前フレーム21の後端はロプス装置13の脚部131に左右一対の第1ブラケット133を介して固定された補助フレーム211と連結されている。第1ブラケット133には、第1受け板341を取り付けるための取付座が形成されている。これにより、第1受け板341は、ロプス装置13の脚部131の間を橋渡しするように取り付けられる。脚部131には第1ブラケット133の後側に第2ブラケット134が固定されている。第1ブラケット133と第2ブラケット134とにわたって、第2受け板342が取り付けられる。横方向に延びた第1受け板341の左端及び右端から第2受け板342が後方に延びるように配置されている。この第1受け板341と第2受け板342とによって規制される区画を通り抜けるようにラジエータ31が立設している。第3受け板343は隙間を閉塞するための補助閉塞板である。つまり、可動ボンネット16Aの前側部分のクッショントリム169による閉塞区間をラジエータ31の前方領域と後方領域とに分割されている。この構成により、第1受け板341を取り外すだけで、トランスミッション4やエンジン3とトランスミッション4とを接続するユニバーサルジョイントの保守点検が可能となる。
【0033】
図10図11図12には、モーアユニット6の伝動ケース67が示されている。伝動ケース67は、天壁67a、底壁67b、側壁67cによって包囲された内室670を有する。天壁67aと底壁67bのそれぞれには垂直方向に延びる伝動軸のための上部ボス孔671と下部ボス孔674が形成され、対向する側壁67cには横方向に延びる伝動軸のための第1側部ボス孔672と第2側部ボス孔673が形成されている。伝動ケース67には図示されていない伝動ギヤセットが内蔵されるので、内室670にはオイルが充填される。この伝動ケース67では充填されたオイルを抜くためのドレイン孔676が、側壁67cと底壁67bとの境界領域となる底壁67bの上面に形成されたドレイン部675に設けられている。さらに、ドレイン部675の先端は側壁67cから突き出しており、ドレイン部675の先端に装着されるプラグを操作しやすい構造となっている。これにより、内室670に充填されたオイルを抜く作業が簡単となり、確実にオイルを抜き出すことができる。
【0034】
図13には、図2等で示された先の実施形態のゼロターンモーアとは一部が異なるゼロターンモーアを示している。このゼロターンモーアでは、排出ガス浄化装置36に代えて、通常型のマフラー360が設けられている。このマフラー360はその軸心を機体前後方向に沿うように配置されており、前方から流入した排気ガスを後方に流出させる。このため、排気終端部39の放出口390は機体後方に向けて開口している。
【0035】
ボンネット16は非分割構成であり、単一のボンネット16が後方下部の揺動横軸心周りに回動する。図14に示されているように、ボンネット16の後面は、後面下方領域をカバーする背面基部16aと、後面上方領域をカバーするこの背面板1600からなる。背面板1600は、取付ビスによって取り外し可能の固定されている。背面板1600にはほぼ全面に多数の流通孔群1602が形成されている。但し、排気終端部39の放出口390に対応する部分には排気用開口1601が設けられている。なお、排気用開口1601の付近は排気ガスの煤によって黒ずむ。しかしながら、背面板1600は他の部材とは独立した別部材として構成されているので、この背面板1600を黒塗装し、ボンネット16や背面基部16aを明るい色で容易に塗装することができる。また、排気終端部39の位置が異なる仕様のゼロターンモーアに対しても背面板1600だけを取り換えることで、ボンネット16や背面基部16aを共通部材化することができる。
【0036】
〔別実施の形態〕
(1)上述した具体的な実施形態では、草刈機として、左右の後輪12が独立して駆動制御可能なゼロターンモーアと呼ばれる草刈機が取り上げられたが、前輪11を操向輪として左右の後輪12がディファレンシャル機構で連結されている草刈機にも本発明は適用できる。
(2)上述した具体的な実施形態では、モーアユニット6には3つのブレードが備えられていたが、2つまたは4つ以上であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、前輪と後輪との間にモーアユニットを装備した草刈機に適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 :走行機体
11 :前輪
11a :左前輪
11b :右前輪
12 :後輪
2 :機体フレーム(機体)
21 :前フレーム
22 :後フレーム
23 :前輪連結アーム
24 :前輪揺動ユニット
25 :前輪揺動軸
3 :エンジン
4 :トランスミッション
5 :運転部
6 :モーアユニット
60 :モーアデッキ
63 :伝動ユニット
64 :ブレードユニット
66 :刈草排出部
67 :伝動ケース
67a :天壁
67b :底壁
67c :側壁
641 :左側ブレード
642 :中央ブレード
643 :右側ブレード
670 :内室
675 :ドレイン部
676 :ドレイン孔
FCL :中心線
ML :機体前後方向中心線
OS1 :オフセット量
OS2 :オフセット量
RW :距離
d :前輪幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14