特許第6555943号(P6555943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6555943切りくず吸引装置を備えた板金加工機、および、切りくず吸引装置における不具合を検出する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555943
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】切りくず吸引装置を備えた板金加工機、および、切りくず吸引装置における不具合を検出する方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 45/00 20060101AFI20190729BHJP
   B21D 28/34 20060101ALI20190729BHJP
   B21D 28/36 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   B21D45/00 E
   B21D45/00 A
   B21D28/34 D
   B21D28/36 Z
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-121928(P2015-121928)
(22)【出願日】2015年6月17日
(65)【公開番号】特開2016-2596(P2016-2596A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2018年4月11日
(31)【優先権主張番号】10 2014 211 567.1
(32)【優先日】2014年6月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502300646
【氏名又は名称】トルンプフ ヴェルクツォイクマシーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Trumpf Werkzeugmaschinen GmbH + Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】フランク バルト
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン アッペル
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−038230(JP,A)
【文献】 実開昭59−084259(JP,U)
【文献】 特開2007−190303(JP,A)
【文献】 特開2001−300653(JP,A)
【文献】 特開昭62−093035(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0245201(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 45/00
B21D 28/34
B21D 28/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切りくず吸引装置(14)と制御装置とを備えた板金加工機(1)であって、
前記切りくず吸引装置(14)は、
打抜きダイ(19)のダイ開口部(20)に連通された、切りくずを収集するための切りくず室(16)
を有し、
前記切りくず室(16)には、切りくずフラップ(21)と吸引路(15)とが設けられており、
前記吸引路(15)は少なくとも1つのふるい(23,24)を有し、
前記切りくず吸引装置(14)はさらに、
前記吸引路(15)に連通された、前記切りくず吸引装置(14)内に負圧を生成するための吸引ファン(26)と、
流れ方向で見て最後のふるい(24)と前記吸引ファン(26)との間に設置されて前記吸引路(15)に接続された、信号を前記制御装置へ送信する負圧センサ(25)と
を有し、
前記制御装置は、前記負圧センサ(25)の信号から、少なくとも1つの閾値を検知するように構成されており、
前記閾値は、前記ふるい(23,24)の汚れが許容範囲外であることを示し、
前記制御装置は、前記負圧センサ(25)の信号から、前記切りくずフラップ(21)が封止不足であることを示す閾値を検知する、
ことを特徴とする板金加工機(1)。
【請求項2】
前記切りくず吸引装置(14)は少なくとも2つのふるいを有し、
少なくとも1つのふるいは、目の粗いふるいであり、少なくとも1つのふるいは、目の細かいふるいである、
請求項1記載の板金加工機(1)。
【請求項3】
前記制御装置は、前記負圧センサ(25)の信号から、少なくとも2つの閾値を検知するように構成されており、
第2の閾値は、前記ふるい(23,24)の汚れが重大であることを示す、
請求項1または2記載の板金加工機(1)。
【請求項4】
前記切りくずフラップ(21)に、当該切りくずフラップ(21)の振動運動を行うように構成された駆動装置(22)が設けられており、
前記制御装置は、前記切りくずフラップ(21)が封止不足であることを示す前記閾値を検知した場合に、前記振動運動を作動させるように構成されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の板金加工機(1)。
【請求項5】
前記負圧センサ(25)には、前記閾値に対応するそれぞれ複数の切替点が設けられている、
請求項からまでのいずれか1項記載の板金加工機(1)。
【請求項6】
前記負圧センサ(25)は、検出した負圧に応じた圧力信号を出力するように構成されており、
前記制御装置は、前記圧力信号がとる値が前記少なくとも1つの閾値を超えているか否かを判定するように構成されている、
請求項からまでのいずれか1項記載の板金加工機(1)。
【請求項7】
請求項1からまでのいずれか1項記載の板金加工機(1)の切りくず吸引装置(14)において不具合を検出する方法であって、
・前記吸引ファン(26)と前記流れ方向で見て最後のふるい(24)との間の負圧を検出するステップと、
・前記負圧に基づき、実験により求めた値を用いて、前記切りくず吸引装置(14)において不具合が生じているか否かを判断するステップと、
・前記不具合をシグナリングするステップと
を有し、
前記少なくとも1つのふるい(23,24)の汚れを検出するために、前記切りくずフラップ(21)が開いた状態で前記負圧を検出する、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
記切りくずフラップ(21)の封止不足を検出するため、前記切りくずフラップ(21)が閉じた状態で前記負圧を検出する、
請求項記載の方法。
【請求項9】
前記吸引路(15)における負圧の閾値を用いて、前記ダイ開口部(20)の領域における負圧の閾値を検出するため、前記吸引路(15)内の負圧と前記ダイ開口部(20)の領域における負圧との比を、実験により検出する、
請求項記載の方法。
【請求項10】
前記板金加工機(1)は、請求項記載の板金加工機(1)であり、
前記切りくずフラップ(21)の封止不足を検知する際に、当該切りくずフラップ(21)が振動運動を行うように、前記制御装置は前記駆動装置(22)を制御する、
請求項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切りくず吸引装置を備えた板金加工機に関し、特に、不具合検出装置を有する、切りくず吸引装置付の板金加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
打抜き機上にて、または、打抜きレーザ切削複合機上にて板金の打抜きを行う際には、切りくずや打抜きくずを吸引する必要がある。そうしないと、切りくずや打抜きくずが板金に付着したままとなり、並進移動時に衝突または突起が生じることにより、板金を損傷してしまうことがある。それゆえ、打抜き機または打抜きレーザ切削機に切りくず吸引装置を設けなければならない。
【0003】
しかし、切りくず吸引装置が設けられていても、吸引路内のふるいの汚れや切りくずフラップの封止不足等の不具合が生じるおそれがあり、これも、上記と同じ問題の原因となる。
【0004】
それゆえ従来は、ふるいを頻繁に洗浄し、かつ、たとえば打抜き機または打抜きレーザ機等の板金加工機が静止した状態で、別個の装置を用いて切りくず吸引装置の封止性を検査しなければならなかった。しかし、このことは非常に面倒であるため、上述の措置はしばしば、衝突や板金突起が生じて初めて行われることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の基礎となる課題は、上述の問題を解消し、かつ、打抜き機の、高いプロセス確実性でありかつ操作容易性の動作を保証する、切りくず吸引装置付の板金加工機を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、請求項1に記載の板金加工機と、請求項9に記載の方法とにより解決される。従属請求項に本発明の他の実施形態が記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の切りくず吸引装置を備えた打抜き機を示す。
図2】一実施例の切りくず吸引装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
請求項1に記載の板金加工機を設けることにより、特に、吸引路内において、流れ方向で見て最後のふるいと吸引ファンとの間に負圧センサを設けることにより、複数の不具合原因を1つのセンサだけで検出することができ、それと同時に、切りくず室において負圧センサを配置するのにかかる手間が増大するのを回避することもできる。
【実施例】
【0009】
以下、複数の実施例に基づき、添付の図面を参照して、本発明を説明する。
【0010】
図1に、板金加工機の一実施例として打抜き機1を示す。打抜き機1の重要な構成要素はCフレーム2である。Cフレーム2は、鋼製のねじり耐性の溶接加工品から成る。
【0011】
Cフレーム2の後端部には、図中に示されていないスライドアクチュエータを介してスライド5を流体力により駆動するための流体ユニット3が設けられている。
【0012】
Cフレーム2の下部の内側には、打抜工具の工具下部分を固定するための下部工具固定部4がコンソール室内に設けられている。工具下部分は回転アクチュエータを介して360°回転可能であり、どのような任意の角度位置にも固定することができる。
【0013】
Cフレーム2の上部の内側に前記スライド5が設けられている。このスライド5は上部工具固定部を有し、打抜工具の工具上部分を形状接続的に遊び無しで固定する。スライド5も360°回転可能であり、かつ、どのような任意の角度位置にも固定することができる。こうするために、第2の回転アクチュエータが設けられている。
【0014】
上述の両回転アクチュエータは、図中には示されていない機械制御装置によって制御され、この機械制御装置は別個のスイッチキャビネット内に設けられている。さらに、スライドコントローラと、板金プレート6を移動させるための全てのリニアアクチュエータと、たとえば小片フラップ7の上下運動等の特殊機能のためのアクチュエータも、前記機械制御装置によって制御される。前記制御装置は、入力手段および出力手段としてキーボードおよびモニタを有する。その制御機能はマイクロコントローラにより実行され、加工プログラムおよび動作パラメータは前記制御装置の記憶領域に記憶されている。
【0015】
Cフレーム2の下部内側には機械作業台8が配置されており、この機械作業台8は、工具マガジン10を有するクロスレール9を備えている。このクロスレール9に、板金プレート6を固定するためのクランプ鉤爪11が設けられている。クランプ鉤爪11はクロスレール9上の適切な場所に固定することができ、板金6を確実に保持するように、かつ、板金6の加工面を把持しないように、複数のこのクランプ鉤爪11をずらすことができる。工具マガジン10内には、複数の打抜工具13に対応して複数の工具固定部12が、ここでは2つの打抜工具13に対応して3つの工具固定部12が設けられている。下部工具固定部4の前方には、比較的小さい板金部品を出すための小片フラップ7が中央に配置されている。
【0016】
Cフレーム2には、本発明の切りくず吸引装置14が機械作業台8の下方に設けられている。
【0017】
動作中には、打抜きを行うために機械作業台8は、クランプ鉤爪11が取り付けられたクロスレール9と共にY方向に移動し、機械作業台8上にて板金6を摺動させながら、クロスレール9はX方向に、プログラミングされた位置まで移動する。その後、スライド5によって打抜き往復移動を行う。次に、同じ原理によって次の打抜き位置まで移動する。
【0018】
図2は、打抜き機1に設けられた、一実施例の切りくず吸引装置14の側面図である。この切りくず吸引装置14は、図中に示されていない真空発生器を、つまり吸引ファン26を備えている。吸引ファン26は、少なくとも300ミリバールの負圧を生成するように構成されている。吸引ファン26は吸引路15を介して切りくず室16に連通されている。この切りくず室16から上方向に向かって吸引管17が設けられている。この吸引管17の上端部にコンソール18が接続されている。コンソール18には下部工具固定部4(図1)が設けられており、この下部工具固定部4内に打抜きダイ19が配置されている。打抜きダイ19はダイ開口部20を有し、このダイ開口部20は前記吸引管17を介して切りくず室16に連通されている。
【0019】
切りくず室16は切りくずフラップ21を有し、切りくずをこの切りくずフラップ21に通過させて切りくず室16内から排出することができる。切りくずフラップ21には、当該切りくずフラップ21を開閉させるための駆動装置22が備えつけられている。駆動装置22は制御装置に接続されている。オプションとして駆動装置22は、切りくずフラップ21の振動運動を行うように駆動制御可能に構成されている。
【0020】
吸引路15内にはふるい23が設けられている。このふるい23はここでは、切りくず室16に設けられた吸引路15の管継手に設けられている。これに代えて択一的に、ふるい23を吸引路15の他の場所に配置することも可能である。オプションとして、第2のふるい24が吸引路15内に設けられている。この場合、前記管継手に設けられるふるい23は目の粗いふるいであり、流れ方向で見て吸引ファン26の方向に設けられたふるいは目の細かいふるいである。
【0021】
さらに、吸引路15に負圧センサ25が取り付けられている。この負圧センサ25は、吸引ファン26と、流れ方向で見て最後のふるい24との間に配置されている。これにより、ふるいすべてにおける圧力降下を検出することができ、これにより、使用されている全てのふるいの詰まりを検出することができる。
【0022】
これに代わる択一的な実施形態では、負圧センサは吸引路15には取り付けられず、管またはホースを介して吸引路15に接続されている。他の1つの実施形態では、負圧センサは吸引路内部に設けられる。
【0023】
負圧センサ25は、検出した負圧に関する出力信号を制御装置へ出力する。負圧センサ25は少なくとも1つの切替点を有し、この切替点で、出力信号が前記検出した負圧に依存して変化する。この切替点は、ふるいの汚れが許容範囲外であることを示す閾値である負圧値付近に設けられている。このような構成により、板金プレートの加工の継続が制御装置により中止され、このことにより不具合がシグナリングされる。更に、ふるいの汚れが重大であることを示す閾値付近に、他のオプションとしての切替点もある。その際には制御装置によって、ふるい23,24の洗浄または交換が必要であることが、オペレータに表示される。
【0024】
他の択一的な実施形態では、閾値に対応する切替点を前記負圧センサ25に設けるのではなく、負圧センサ25は、検出した負圧に応じた電気的圧力信号を前記制御装置へ送信する。この圧力信号は、アナログまたはデジタルとすることができる。その際には制御装置は、圧力信号が、当該制御装置に記憶された閾値を上回るほどの値になっているか否かを判定する。
【0025】
負圧センサ25または制御装置に更に他のオプションの閾値を設けることにより、制御装置は、閉じた状態の切りくずフラップ21が封止不足であるか否かを判断することができる。
【0026】
動作中には、前記負圧センサは切りくず吸引装置14における不具合を検知するため、流れ方向で見て最後のふるい24と吸引ファン26との間の吸引路15内の負圧を検出する。
【0027】
吸引路15内の負圧を用いてコンソール室内の負圧を求めることができるようにするためには、流れ方向で見て最後のふるい24と吸引ファン26との間の吸引路15内の負圧を、一連の複数の実験により、コンソール室内の負圧に実験により対応付ける。すなわち、ダイ開口部20の領域内の負圧に実験により対応付ける。このようにして、流れ方向で見て最後のふるい24と吸引ファン26との間の吸引路15内の負圧を検出することにより、実験により求められた、障害無しで動作を行うのに必要な負圧が、コンソール室内に存在するか否かを判断することができる。
【0028】
ふるいの汚れを検出するためには、切りくずフラップ21を開け、吸引ファン26を作動させる。こうすることにより、切りくず室16内部は周辺空気圧となり、このようにして、吸引路15内の負圧を検出することにより、ふるい23,24における圧力降下を検出することができ、これによりふるい23,24の汚れを検出することができる。
【0029】
本実施例では、吸引路15内の負圧が0ミリバールから−60ミリバールであることにより、打抜きダイ19における吸引パワーが十分であることが保証されていることが分かる。実験により、上記実施例では−60ミリバールの負圧は、ふるい23,24の70%の汚染度に相当することが判明した。また、−60ミリバールから−150ミリバールまでの負圧値は、上記実施例では70%から90%までの汚染度に相当する。上記検出値の場合、制御装置により、1つまたは複数の前記ふるいを洗浄または交換しなければならないという信号が出力される。−150ミリバールを越える値(−150ミリバールより小さい圧力)の場合には、コンソール内の吸引パワーは十分でなくなっており、突起による損傷の危険性が過度に大きくなるので、製造動作を継続することが不可能となり、打抜き機1の制御装置は動作を停止する。
【0030】
切りくずフラップ21が閉じた状態において封止不足であるか否かを判定するためには、まず最初に切りくずフラップ21を閉鎖し、たとえば約1mmの厚さの薄い板金プレート6を用いてダイ開口部20を完全に覆う。次に吸引ファン26を作動させ、吸引路15内の負圧センサ25を用いて負圧を求める。切りくず吸引装置14が封止不足であることを表す閾値の値は−150ミリバールであることが、実験により特定された。この値を下回ると(0ミリバールから−150ミリバールまでの間の値)、製造動作を継続することができないことが表示され、制御装置は動作を停止する。というのも、そうしないと、突起による損傷の危険性が過度に大きくなるからである。
【0031】
この場合にはオプションとして、切りくずフラップ21から切りくずまたは打抜きくずを除去して切りくずフラップ21を再び封止できるようにするために、振動運動を行うように切りくずフラップ21の駆動装置22を制御する。
【0032】
上記の各オプションや実施例を組み合わせて別の実施形態を成すこともできる。
図1
図2