【実施例】
【0011】
図1には、更生管用セグメント1(以下、単にセグメントという)の構造が図示されている。セグメント1は、更生管の内周面を構成する内面板101と、該内面板101の周方向に延びる両側に垂直に立設された同形状の側板102、103と、内面板101の管長方向に延びる両端に垂直に立設された同形状の端板104、105とからなるプラスチックでできた一体成形のブロック状の部材である。
【0012】
セグメント1は、本実施例では、円周を複数等分する所定角度、例えば6等分する60度の円弧状に湾曲した形状となっている。ただし、セグメントは円弧形ないし扇形に限定されず、既設管の断面形状、あるいはその大きさ、あるいは既設管の補修箇所に応じて、直方体あるいは直角に丸みを付けて折り曲げた形等にすることもできる。
【0013】
内面板101の上面にはセグメント1の機械的強度を補強するために、側板102、103の内側に、側板と同様な形状の複数、本実施例では4個の内部板106、107が側板102、103と平行に等間隔に立設される。側板102、103、内部板106、107の管長方向板厚はそれぞれ等しくなっている。
【0014】
側板102、103には、セグメント1を管長方向に連結するためにボルトとして構成された連結部材11及びナット12(
図3)を通すための円形の挿通穴102a、103aが周方向に等間隔に複数形成される。内部板106にも、連結部材11を通すための円形の挿通穴106aが等間隔に複数形成され、内部板107には、連結部材が挿入できる切り欠き107aが等間隔に複数形成される。これらの挿通穴102a、挿通穴103a、挿通穴106a、並びに切り欠き107aは、それぞれ周方向の位置が一致している。
【0015】
端板104、105は、側板102と側板103の間に配置される部材で、端板104、105には、セグメント1を周方向に連結するボルト等の連結部材を通すための円形の挿通穴104a、105aが複数形成される。
【0016】
内面板101、側板102、103、端板104、105、内部板106、107は、何れも透明、半透明あるいは不透明な同じプラスチックでできており、公知の成形技術を用いて一体に成形される。
【0017】
セグメントはその端板105と他のセグメントの端板104を当接させ、ボルト6とナット7を側板102と103に形成された作業穴102b、103bを介して挿入し、ボルト6、ナット7を螺合させることにより周方向に連結させることができる(
図3)。
【0018】
セグメントを順次周方向に一周分連結させると、
図2に示すようなリング状の管ユニット10を組み立てることができる。管ユニット10は、円管を管長方向Xに垂直に所定幅Dで輪切りに切断したときに得られる形状となっており、その外径が更生すべき既設管の内径より少し小さな値となっている。セグメントは、この管ユニット10を、径方向Rに沿った切断面で周方向Cに複数個に分割(好ましくは等分)したときに得られる部材に相当する。
【0019】
なお、
図3では、セグメント1の主要な構造部材である内面板101、側板102、103、端板104、105が図示されていて、内部板106、107等の補強構造は、煩雑さを避けるために、図示が省略されている。
【0020】
このような管ユニット10の各セグメントは、
図3に示したように、管長方向に延びる連結部材11とナット12を用いて他の管ユニットのセグメントと連結され、管ユニット10が順次管長方向に連結される。
【0021】
セグメントを管長方向に連結する際には、セグメントの一方側の側板に複数の金属製ナット12がボルト13を用いて固定される。ナット12の管長方向の長さは、側板102と内部板106の間隔より長く、側板102からはみ出て他のセグメントの側板103の厚さと同等あるいはそれ以上となっている。連結部材11は、一端にナット12と螺合するネジ部11aが形成され、他端につば14aを有する頭部14が固定された金属製のボルトとして構成される。
【0022】
図3に示したように、セグメント1bにセグメント1aを連結する場合、セグメント1bの側板102からはみ出ているナット12を、セグメント1aの側板103の穴103aに通過させ、両セグメント1a,1bの側板103、102を突き合わせる。続いて、連結部材11を、セグメント1aの側板102の挿通穴102a、内部板106の挿通穴106a、内部板107の切り欠き107aに通し、ネジ部11aをセグメント1bに固定されているナット12にねじ込む。これにより、連結部材11とナット12が連結される。その後、頭部14のつば14aがセグメント1aの最左端の内部板106に圧接するまで連結部材11をナット12にねじ込み、両セグメント1a、1bをボルト締めして固定する。
【0023】
このようにして、管ユニットのセグメントを、他の管ユニットのセグメントと管長方向に連結することにより、管ユニットを管長方向に任意の長さに連結することができる。
【0024】
このように構成されたセグメント1を用いて既設管を更生するために、まず、
図4に示すように、マンホール20を介して既設管21内にセグメント1を搬入し、セグメントを周方向に順次連結して管ユニット10を組み立てる。続いて、管ユニット10を、
図3に示す方法で、連結部材11とナット12を用いて順次管長方向に連結し、既設管21内に更生管40を敷設する。既設管21と更生管40間には、グラウトなどの充填材30が注入され、充填材30が硬化した後には、
図5に示したような、既設管21、充填材30、更生管40からなる複合管が構築される。
【0025】
上述した更生工事において、更生管40が既設管21内に敷設された後、
図6に示したように、セグメント1に注入孔41aが穿孔され、この注入孔41aを介して注入ホース41を用いて充填材30が更生管40と既設管21間の隙間に注入される。このとき、更生管40の位置調整を行うために、更生管40と既設管21間にスペーサー50が設置される。
【0026】
スペーサー50は、
図7(a)に上面側を示す第1のクサビ状部材51と
図7(b)に下面側を示す第2のクサビ状部材52を
図8に示すように上下に重ねて構成される。なお、スペーサー50の高さが不足である場合には、スペーサー50全体の高さを高くするために、かさ上げ部材53が用いられる。
【0027】
このようなスペーサー50は、特許文献1に記載されたものと同様であり、第1のクサビ状部材51には、中央部に溝51aが形成され、その底部には多数の歯51bが傾斜線方向に沿って例えば数mm程度の短い所定ピッチで鋸歯状に形成されている。また、溝51aと両側の側壁51e、51f間には6個の長穴51cが形成される。
【0028】
第2のクサビ状部材52には、溝51aと嵌合する凸部52aとそれに続く弾性変形片52bが形成される。弾性変形片52bの下面には複数(
図7(b)の例では2つ)の歯52cが第1のクサビ状部材51の歯51bのピッチの整数倍の大きなピッチ(例えば10〜20mm程度)で形成されている。また、歯51bと52cは、それぞれ傾斜面と垂直面を有する鋸歯状であり、傾斜面同士が係合すると移動できるが、垂直面が係合すると移動できなくなる、いわゆる一方向クラッチとなるような歯面となっている。また、凸部52aと両側の側壁間には、長穴51cと位置が合う6個の長穴52dが形成される。
【0029】
第1と第2のクサビ状部材51、52は逆クサビ形状となっているので、第1のクサビ状部材の溝51aに第2のクサビ状部材52の凸部52aを嵌合させて重ねると、
図8(a)、(b)に示したように、それぞれの底面51dと上面52eは平行になる。
【0030】
また第2のクサビ状部材52をA方向に押すと、歯51b,52cは傾斜面が係合してA方向には移動するが、逆方向には垂直面が係合して移動が阻止される。それにより、第2のクサビ状部材52をA方向に押すことにより、両部材の高さをH1〜H2のように小さなピッチで段階的に増大させることができる。また弾性変形片52bは弾性変形するので、それを持ち上げると、歯51bと52cの係合がはずれるので、第2のクサビ状部材52をA方向とは逆方向に移動させることができる。
【0031】
このようなスペーサー50の設置状態が良好でないと、スペーサー50が落下したり、位置がずれたりして、更生管の位置調整を良好に行うことができない。そこで、本実施例では、
図9に示したような、スペーサー保持部材60が設けられる。
図9において、(a)はスペーサー保持部材60の斜視図、(b)はその上面図、(c)はその正面図、(d)はその底面図、(e)はその側面図である。
【0032】
スペーサー保持部材60は直方体形状のプラスチックからなるブロック部材で、管長方向(前後方向)に平面60a、60bを有し、その下方で中央部に幅t1の溝60cが周方向(左右方向)全長に渡って形成される。溝60cの幅t1は、セグメント1の側板102、103、内部板106、107の各板厚と同じ値に設定される。このような設定により、
図11に図示したように、スペーサー保持部材60の溝60cに、例えば内部板107を圧入することによりスペーサー保持部材60を内部板107に取り付けることができる。圧入を容易にするために、スペーサー保持部材60の圧入端部には傾斜面が形成される。
【0033】
また、スペーサー保持部材60の左右方向の両端部には、幅t2の溝60d、60eが形成される。溝60d、60eの幅t2は、第1のクサビ状部材の側壁51e、51fの壁厚と同じ値に設定され、スペーサー保持部材60の溝60d、60eの外側面間の距離t3は、スペーサー50の第1のクサビ状部材51の横幅に等しく設定される。このような設定により、第1のクサビ状部材51は、
図12、
図13に示したように、スペーサー保持部材60の溝60d、60e内に圧入することができる。圧入を容易にするために、溝60d、60eの圧入端部には傾斜面が形成される。
【0034】
このような構成において、管ユニット10を組み立てるときに、
図11に図示したように、スペーサー保持部材60を、例えばセグメントの内部板107に取り付ける。この取り付けは、スペーサー保持部材60の溝60cにセグメントの内部板107を圧入することにより行われる。内部板107は湾曲しているので、取り付けたときその湾曲面107bは溝60cから僅かに上方に突出する。
【0035】
このようなスペーサー保持部材60は、スペーサー50の設置数に応じて内部板107に複数個取り付ける。なお、スペーサー保持部材60は、他方の内部板107、内部板106あるいは側板102に取り付けるようにしてもよい。
【0036】
スペーサー保持部材60を内部板107に取り付けた後に、
図12に図示したように、スペーサー50の第1のクサビ状部材51をスペーサー保持部材60に保持する。この保持は、第1のクサビ状部材51の側壁51e、51fをスペーサー保持部材60の溝60d、60e内に圧入することにより行われる。なお、第1のクサビ状部材51のセグメントへの取り付けは、
図14に示したように、第1のクサビ状部材51の下方に突出する突起51gが内部板106の外側面と係合するように、行われる。
【0037】
第1のクサビ状部材51のスペーサー保持部材60への保持は、セグメントを周方向に連結して管ユニットを組み立てる前に、あるいは管ユニットを組み立てた後に行われる。管ユニットを所定長さ(例えば1m位)連結する毎に、上述した第1のクサビ状部材51とスペーサー保持部材60を取り付けた管ユニット10を、第1のクサビ状部材51が上方の位置にくるように、連結する。この状態が
図14に図示されている。第2のクサビ状部材52の凸部52aを第1のクサビ状部材51の溝51aに嵌合させて、第2のクサビ状部材52をA方向に押圧することにより、スペーサー50の高さが増大し、第2のクサビ状部材52の上面52eが既設管21の内面に押圧され、その反力により更生管40が下方に押圧されて既設管21の底部に当接し更生管の位置決めが行われる。このような更生管の位置調整は、管ユニットを所定長さ(例えば1m位)連結する毎に行われ、更生管40が既設管21の更生すべき全長に渡って敷設された後には、すべての管ユニット10が既設管21の底部に当接した状態になっている。
【0038】
なお、本実施例において、スペーサー保持部材60に直接保持されるのは、第1のクサビ状部材51であるが、第2のクサビ状部材52が第1のクサビ状部材51から外れて落下しないように、第2のクサビ状部材52の凸部52aを第1のクサビ状部材51の溝51aに嵌合させることができる場合には、第1のクサビ状部材51をスペーサー保持部材60に取り付けた後、両部材51、52を嵌合させてスペーサー保持部材60に保持することができる。このように、本実施例では、スペーサー保持部材60に保持されるスペーサーはスペーサーの一部(第1のクサビ状部材51)あるいは全体(第1のクサビ状部材51と第2のクサビ状部材52)を意味する。
【0039】
このようにすべての管ユニット10を管長方向に連結し、更生管40が既設管21の更生すべき全長に渡って敷設された後、
図6に示したように、セグメント1に注入孔41aが穿孔され、この注入孔41aを介して注入ホース41を用いて充填材30が更生管40と既設管21間の隙間に注入される。このように、更生管40はスペーサー50により下方に押圧されて既設管21の底部に当接しているので、更生管40は、注入された充填材30上に浮かぶことなく、既設管21内に適切に位置決めされており、充填材30が硬化した後には、
図5に示したような、既設管21、充填材30、更生管40からなる堅固な複合管が構築される。
【0040】
上述した実施例では、スペーサー保持部材をセグメントに取り付けてからスペーサーをスペーサー保持部材に取り付けたが、スペーサーをスペーサー保持部材に取り付けた後、スペーサーを取り付けたスペーサー保持部材をセグメントに取り付けるようにしてもよい。
【0041】
このように、スペーサーは、スペーサー保持部材を介してセグメントに取り付けられるので、更生工事中に、スペーサーが落下したり、あるいは位置ずれを起こすことはなく、更生管が既設管に対して適切に位置決めされ、既設管と更生管間に充填材を確実に注入することができる。