特許第6555985号(P6555985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6555985-クロスメンバ取付構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6555985
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】クロスメンバ取付構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
   B62D25/20 E
   B62D25/20 F
   B62D25/20 G
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-168884(P2015-168884)
(22)【出願日】2015年8月28日
(65)【公開番号】特開2017-43288(P2017-43288A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】田辺 高広
(72)【発明者】
【氏名】稲岡 繁孝
(72)【発明者】
【氏名】井頭 健治
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−159148(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1189419(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のフロアの中央に前後方向に設けられたフロアトンネルと、車体左右のロッカそれぞれとの間に車幅方向のクロスメンバを設け、前記クロスメンバの両端を前記フロアトンネルおよび前記ロッカに取り付けるクロスメンバ取付構造において、
閉断面を有し前記車幅方向に長尺のクロスメンバ本体と、
前記クロスメンバ本体の前記フロアトンネル側の端部に、前記フロアトンネル方向に延出して形成された平面状の取付部とを備え、
前記取付部が、前記クロスメンバ本体の前記車幅方向の中心線より上の位置で前記フロアトンネルへの取り付け面に結合された先端部分と、該先端部分および前記クロスメンバ本体の間にあって前記取り付け面に接触しない部分とを有することを特徴とするクロスメンバ取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体のフロアの中央に前後方向に設けられたフロアトンネルに、車幅方向のクロスメンバを取り付けるクロスメンバ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、特許文献1に記載のように、車体のフロアの中央に前後方向に設けられたフロアトンネルに、補強のための車幅方向のクロスメンバが、例えば図5に示すように取り付けられる。すなわち、車体のフロアを構成するフロアトンネル51を挟んで設置される左右のシート52,52下方に車幅方向のクロスメンバ53,53がそれぞれ配置され、両クロスメンバ53,53の一端がフロアトンネル51に接合され、他端が左右のサイドシル(サイドフレーム)54,54に接合されて取り付けられ、両クロスメンバ53,53によりフロアトンネル51と左右のサイドシル54,54とが連結される。
【0003】
このとき、両シート52,52の下面にそれぞれ設けられたブラケットが両クロスメンバ53,53それぞれに結合され、シート52,52がクロスメンバ53,53に取り付けられるようになっている。なお、図5中、55,55は左右のドアである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−32989号公報(第2頁右上欄第3行第3頁左上欄第15行および図1図5参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、フロアの高さを変えずに車高を高くした車両の場合、シートの高さを上げなければならず、従来例えばフロアトンネル近傍に嵩上げ部材を配置して、この嵩上げ部材とサイドメンバ或いはロッカとをクロスメンバにより連結することが行われる。
【0006】
このとき、通常は嵩上げ部材にクロスメンバの端部が溶接されるが、クロスメンバ自体がフロアから浮き上がった状態で取り付けられるため、側突の衝撃によってクロスメンバのフロアトンネル側の嵩上げ部材との結合部が上向きに移動し、クロスメンバが嵩上げ部材に乗り上げるように変形することがあり、このようにクロスメンバが嵩上げ部材に乗り上げてしまうと、側突時にクロスメンバにより嵩上げ部材やフロアトンネルに確実に力を伝達することができなくなって側突の衝撃を十分に吸収できないおそれがある。
【0007】
本発明は、クロスメンバがフロア面よりも上方に位置する車両であっても、側突時にクロスメンバを確実に下向きに移動させてフロアトンネルに確実に力を伝達できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係るクロスメンバ取付構造は、車体のフロアの中央に前後方向に設けられたフロアトンネルと、車体左右のロッカそれぞれとの間に車幅方向のクロスメンバを設け、前記クロスメンバの両端を前記フロアトンネルおよび前記ロッカに取り付けるクロスメンバ取付構造において、閉断面を有し前記車幅方向に長尺のクロスメンバ本体と、前記クロスメンバ本体の前記フロアトンネル側の端部に、前記フロアトンネル方向に延出して形成された平面状の取付部とを備え、前記取付部が、前記クロスメンバ本体の前記車幅方向の中心線より上の位置で前記フロアトンネルへの取り付け面に結合された先端部分と、該先端部分および前記クロスメンバ本体の間にあって前記取り付け面に接触しない部分とを有することを特徴としている。
【0009】
係る構成によれば、クロスメンバ本体のフロアトンネル側の端部に、フロアトンネル方向に延出して形成された平面状の取付部が、クロスメンバ本体の車幅方向の中心線より上の位置で、フロアトンネルへの取り付け面に結合されるため、側突時の衝撃により、取付部がクロスメンバ本体との境界部分において容易に下向きに変形し易く、その結果、クロスメンバがフロアトンネルを変形する方向に向かって移動し、クロスメンバによりフロアトンネルが押圧されてフロアトンネルに確実に力を伝達することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、側突時の衝撃により、取付部がクロスメンバ本体との境界部分において下向きに変形するため、クロスメンバをフロアトンネル方向に向かって移動させることができ、クロスメンバによりフロアトンネルを押圧してフロアトンネルに確実に力を伝達することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る車両のクロスメンバ取付構造の一実施形態の分解斜視図である。
図2図1のクロスメンバ取付構造の取付状態における正面図である。
図3図1のクロスメンバの斜視図である。
図4図2のクロスメンバ取付構造の一部の拡大図である。
図5】従来例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るクロスメンバ取付構造を、スライドドアを有する自動車に適用した一実施形態について、図1ないし図4を参照して詳細に説明する。ここで、本実施形態でいう前後、左右とはシートに着座した状態で見た前後、左右を意味する。
【0013】
図1に示すように、スライドドアを有する車両である自動車1では、フロア2の高さを変えずに車高を高くした状態で、シート3を通常よりも嵩上げして高い位置に設置することが行われ、そのためにシート3の下方の前後にシート3の嵩上げを兼ねるクロスメンバ4,5が配置される。
【0014】
シート3の前下方に配置されるクロスメンバ4は、シート3の嵩上げ量に相当する高さに形成され、中央部がフロアトンネル7を跨ぐように配置されて左右の両端が車体左右のロッカ8の上面に溶接されて固定され、クロスメンバ4のフロアトンネル7と左右のロッカ8との間はフロア2に当接して配置される。そして、このようなクロスメンバ4に、シート3の下面前側の左右に設けられたL字状の前ブラケット3aがボルト等により取り付けられる。
【0015】
一方、スライドドア用のロア駆動ユニットがユニット収容部9に収容され、このユニット収容部9がフロアトンネル7方向に張り出してロッカ8に設けられており、シート3の後下方に配置されるクロスメンバ5とユニット収容部9との干渉を避けるために、この後側のクロスメンバ5は、前側のクロスメンバ4のように、フロアトンネル7とロッカ8との間においてフロア2に当接されることはなく、後側のクロスメンバ5はフロア2から浮き上がった状態で配置され、シート3の高さを嵩上げするための断面ハット状の嵩上げ部材10がフロアトンネル7の側面に固定され、この嵩上げ部材10とロッカ8との間に後側のクロスメンバ5が設置され、クロスメンバ5の両端が嵩上げ部材10の上面およびロッカ8の上面にボルト等により固定されて取り付けられる。そして、後側のクロスメンバ5に、シート3の下面後側の左右に設けられたL字状の後ブラケット3bがボルト等により取り付けられる。
【0016】
ところで、後側のクロスメンバ5は、図3に示すように、左右の両端部に閉断面を有する車幅方向に長尺のクロスメンバ本体5aと、クロスメンバ本体5aの上面であってフロアトンネル7側の端部に延出して形成された平面状の取付部5bとを備えており、取付部5bが、クロスメンバ本体5aの車幅方向の中心線より上の位置で、フロアトンネル7の取り付け面を成す嵩上げ部材10の上面にボルト等により固定されるようになっている。なお、クロスメンバ5のロッカ8側の端部は、ロッカ8の上面に当接された状態でボルト等によりロッカ8に固定される。
【0017】
このように、クロスメンバ本体5aの上面であってフロアトンネル2側の端部に、フロアトンネル7の方向である水平方向に延出して形成された平面状の取付部5bが、クロスメンバ本体5aの車幅方向の中心線より上の位置で嵩上げ部材10の上面に結合されるため、図4中の黒塗り矢印に示すような側突の衝撃により、取付部5bが、図4中の1点鎖線の状態から実線に示すようにクロスメンバ本体5aとの境界部分において容易に下向きに変形し、クロスメンバ5が、従来のように嵩上げ部材10を乗り越える方向には移動せずに嵩上げ部材10およびフロアトンネル7を変形する方向に向かって移動することになり、クロスメンバ5により嵩上げ部材10およびフロアトンネル7が押圧されて嵩上げ部材10およびフロアトンネル7に確実に力が伝達される。
【0018】
したがって、上記した実施形態によれば、側突時の衝撃により、取付部5bがクロスメンバ本体5aとの境界部分において下向きに変形するため、クロスメンバ5を確実にフロアトンネル7の方向に向かって移動させることができ、クロスメンバ5により嵩上げ部材10およびフロアトンネル7を押圧して嵩上げ部材10およびフロアトンネル7に確実に力を伝達することができ、側突時のエネルギーを確実に吸収することができる。
【0019】
また、クロスメンバ5のロッカ8側の端部はロッカ8の上面に固定されており、ロッカ8の外側がスライドドアの移動のために開口しているため、側突が生じたときにロッカ8の上半部がクロスメンバ5のロッカ側端部と一緒に上向きに変形し易く、ロッカ8の上半部のこのような上向きの変形によってクロスメンバ5は水平ではなくフロアトンネル7側の端部が下がるように傾斜し、クロスメンバ5の取付部5bのクロスメンバ本体5aとの境界部分が下向きにより確実に変形し、側突時にクロスメンバ5を確実にフロアトンネル7に向かって移動させることができ、嵩上げ部材10およびフロアトンネル7に確実に力を伝達して側突時のエネルギーを確実に吸収できる。
【0020】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能である。
【0021】
例えば、上記した実施形態では、後側のクロスメンバ5のクロスメンバ本体5aが、左右の両端部に閉断面を有する場合について説明したが、クロスメンバ本体5aは全体にわたって閉断面を有する構成であってもよいのは勿論である。
【0022】
また、上記した実施形態では、スライドドアを有する車両(自動車)に本発明のクロスメンバ取付構造を適用した場合について説明したが、スライドドアを有するものに限らずその他の車両であって、例えば嵩上げ部材10を備えていない車両や、ロッカ8がなくサイドメンバのみを備える車両などにも本発明を適用することができ、この場合、フロアトンネル7の上面を取り付け面としてクロスメンバ5の取付部5bを溶接等により取り付ければよい。
【符号の説明】
【0023】
2 …フロア
5 …クロスメンバ
5a …クロスメンバ本体
5b …取付部
7 …フロアトンネル
図1
図2
図3
図4
図5