(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
2層型皮膚用ローションは、液/固などの2層を呈しており、液層に紫外線防止粉体を含有したサンスクリーンローションや、粉体の持つ皮脂吸着効果や収れん効果を利用したカラミンローションなどが知られている。このような液/固タイプの2層型皮膚用ローションは、使用時に容器を上下に振ることによって紛体を分散して用いられることから、分散状態が確認できるように透明又は半透明容器に充填されていることが一般的である。また、透明又は半透明容器に充填することで、分散時の審美性のみならず、2層分離時の審美性も発揮させることが可能となる。
【0003】
しかしながら、液/固タイプの2層型皮膚用ローションは、長期間保管すると、紛体が容器底面にて固化し易くなる、所謂、ケーキングといった問題がある。このようなケーキングは、一旦生じると再び振っても粉体が再分散し難くなり、粉体含有化粧料のサラサラとした優れた使用感を最大限に発揮させることができないといった問題もある。そのため、従来から紛体の再分散性を高める試みがなされている。具体的には、疎水性粉末と揮発性油分および/又はエステル油とを配合した2層型化粧水(特許文献1を参照)、水膨潤性粘土鉱物、粉体、電解質、水を含有した二層型化粧料(特許文献2を参照)、粉末と、粉末を除く特定の水不溶性物質と、高分子を配合した2層型化粧水(特許文献3を参照)などが提案されている。
【0004】
しかしながら、これら紛体の分散性を高める試みでは、紛体の分散状態が長時間続くため、長時間静置保管しても沈降しない浮遊紛体が多く存在し、沈降紛体層と紛体分散液層の2層状態が長時間続き審美性に劣るといった欠点がある。このように従来の技術では、綺麗な2層系に分かれるまでに時間を要し、外観の審美性に劣るといった問題がある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の2層型皮膚用ローションは、成分A:エタノール、成分B:ベントナイトおよび/又はラポナイト、成分C:ナイロン末、成分D:アクリレーツクロスポリマー紛体、並びに成分E:水を必須成分として含む。
【0010】
本明細書において、「ローション」とは、25℃における粘度が1000mPa・s以下の組成物を表し、0.1〜500mPa・sであることが好ましく、0.1〜100mPa・sであることがより好ましい。上記粘度は、例えば、B型粘度計:VISCOMETER TV−25(東機産業社製)、若しくは、音叉式振動粘度計:SV−10A(北浜製作所社製)により測定することができる。
【0011】
用いられる成分Aは、エタノールである。本発明の2層型皮膚用ローションにおいて、上記成分Aを含有させることにより、紛体の浮遊を抑え、下層紛体層と上層液層の2層状態とすることができる。
【0012】
成分Aの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、2層状態とする観点、並びに防腐力を付与する観点から、2層型皮膚用ローション100質量%中、10〜35質量%とすることが好ましく、15〜30質量%とすることがより好ましい。10質量%未満では紛体の浮遊を抑えることに劣り、35質量%を越えると肌への刺激の点で好ましくない。
【0013】
用いられる成分Bは、ベントナイトおよび/又はラポナイトである。上記成分Bは、天然物であっても、合成物であってもいずれでもよい。本発明の2層型皮膚用ローションにおいて、上記成分Bを含有させることにより、紛体の沈降性を高めるだけでなく、分散性をも良好にすることができる。これら成分Bは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。
【0014】
上記成分Bは、市販品を用いることができる。具体的には、ベントナイトの市販品としては、日本有機粘土社製、商品名「ベンゲル」;クニミネ工業社製、商品名「クニピア−F」などが挙げられる。ラポナイトの市販品としては、Rockwood Additives社製、商品名「Laponaite XL21」などが挙げられる。
【0015】
成分Bの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、粉体を速やかに沈降させる観点、並びに再分散時の紛体の分散性を良好にする観点から、2層型皮膚用ローション100質量%中、0.01〜1質量%とすることが好ましく、0.03〜0.5質量%とすることがより好ましい。0.01質量%未満では粉体の沈降性、分散性に劣り、1質量%を越えるときしみ感の発生など使用性の面から好ましくない。なお、上記成分Bの含有量は、本発明に係る2層型皮膚用ローション中に配合される成分Bの合計量である。
【0016】
用いられる成分Cは、ナイロン末である。本発明の2層型皮膚用ローションにおいて、上記成分Cを含有させることにより、塗布後にサラサラとした感触、所謂、サラサラ感を付与するという効果を発揮させることができる。
【0017】
上記成分Cの平均粒径は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、1〜20μmであることが好ましく、3〜10μmであることがより好ましい。なお、平均粒径は、レーザ回折散乱法により測定することができる。具体的には、例えば、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(LA950V2,HORIBA社製)を用いて測定することができる。
【0018】
上記成分Cは、市販品を用いることができる。具体的には、アイカ工業社製、商品名「ガンツパール GPA−550」(平均粒径:5±1μm);アルケマ社製、商品名「Orgasol(R) 2002 EXD NAT COS」(平均粒径:10μm)などが挙げられる。これら成分Cは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。
【0019】
成分Cの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、使用感の観点から、2層型皮膚用ローション100質量%中、0.5〜4質量%とすることが好ましく、1〜3質量%とすることがより好ましい。0.5質量%未満ではさらさらとした感触に劣り、5質量%を越えると不快なきしみ感が生じるなど使用性の面から好ましくない。
【0020】
用いられる成分Dは、アクリレーツクロスポリマー紛体である。アクリレーツクロスポリマー紛体とは、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第15版,第2巻,2014年,p.66):ACRYLATES CROSSPOLYMERで表記される化合物である。本発明の2層型皮膚用ローションにおいて、上記成分Dを含有させることにより、再分散後に成分Cであるナイロン末を速やかに沈降させるという沈降性に格段に優れた効果を発揮させるとともに、成分Cであるナイロン末に起因するケーキングをも抑制することができる。また、成分Cであるナイロン末と併用することにより、サラサラとした使用感を向上させることができる。
【0021】
上記成分Dは、市販品を用いることができる。具体的には、アイカ工業社製、商品名「ガンツパール GMP−0820」(平均粒径:6.5〜10.5μm)などが挙げられる。これら成分Dは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。
【0022】
成分Dの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、紛体を速やかに沈降させる観点、ケーキングを抑制する観点、並びに使用感を高める観点から、2層型皮膚用ローション100質量%中、0.05〜2質量%とすることが好ましく、0.1〜1.5質量%とすることがより好ましい。0.05質量%未満では沈降性に劣り、2質量%を越えると不快な肌滑り感が生じるなど使用性の面から好ましくない。
【0023】
本発明においては、上記成分Bと成分Dを質量含有比として、B:D=1:1〜1:12の範囲となるように調製することが好ましく、B:D=1:2〜1:10の範囲とすることがより好ましい。該質量含有比とすることにより、再分散後に紛体をより速やかに沈降させることが可能となる。
【0024】
また、本発明においては、上記成分Cと成分Dの総含有量を、1〜4質量%の範囲となるように調製することが好ましい。該質量範囲とすることにより、不快なきしみ感なく、さらさらとした良好な使用感を得ることができる。さらに、上記成分Cと成分Dは、質量含有比として、C:D=1:2〜10:1の範囲となるように調製することが好ましく、C:D=1:1〜8:1の範囲とすることがより好ましい。該質量含有比とすることにより、分散沈降制御をより容易に行えるようになる。
【0025】
用いられる成分Eは、水であり、特に限定されないが、精製水であることが好ましい。成分Eの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、水らしいさっぱりとした感触を付与する観点から、2層型皮膚用ローション100質量%中、50〜94質量%とすることが好ましく、55〜90質量%とすることがより好ましい。
【0026】
また、本発明の2層型皮膚用ローションには、ケーキングを抑制し、再分散性をさらに高める観点から、電解質を含有させることができる。用いられる電解質は、一価、二価、若しくは三価以上多価金属塩のいずれであってもよく、無機塩、有機塩などの別も問わない。用いられる塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムなどが挙げられる。具体的な電解質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、ミョウバン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、塩化アンモニウム、燐酸ナトリウム、燐酸水素2ナトリウム、燐酸2水素ナトリウムなどが挙げられる。これら電解質は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。本発明では、上記した電解質の中でも、塩化ナトリウム、燐酸ナトリウム、燐酸水素ナトリウム、塩化カルシウムを好適に用いることができる。
【0027】
電解質の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、再分散性をさらに高める観点から、2層型皮膚用ローション100質量%中、0.001〜1質量%とすることが好ましく、0.02〜0.8質量%とすることがより好ましい。
【0028】
さらに、本発明の2層型皮膚用ローションには、紛体の分散と沈降の制御を容易にする観点から、塩化γ‐グルコンアミドプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムを含有させることができる。塩化γ‐グルコンアミドプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムとは、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第15版,第2巻,2014年,p.3036):QUATERNIUM−22で表記される化合物であり、市販品としては、例えば、アイエスピー社製、商品名「CERAPHYL 60」などが挙げられる。
【0029】
塩化γ‐グルコンアミドプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムの含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、紛体の分散と沈降を制御する観点から、2層型皮膚用ローション100質量%中、0.001〜1質量%とすることが好ましく、0.003〜0.1質量%とすることがより好ましい。
【0030】
本発明の2層型皮膚用ローションには、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記に記した成分の他、グリセリン、濃グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グルコース、マルトース、マルチトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、グルコシルトレハロースなどの多価アルコール;l−メントール、メンチルラクテート、カンファ、l−メンチルグリセリルエーテル、ハッカ油、ペパーミント油などの清涼剤;アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、抗酸化剤、金属封鎖剤、シリコーン類、脂肪酸エステル油、ビタミン類、ミネラル類、動植物エキス、着色剤、各種香料、防腐剤、殺菌剤、抗炎症剤、紫外線吸収剤、美白剤などを目的に応じて適宜配合してもよい。
【0031】
本発明の2層型皮膚用ローションの製造方法は、公知の方法で調製することができる。例えば、液体成分が投入された容器に粉体成分を添加し、ディスパー等で攪拌・均一化することによって本発明品を製造することができる。
【0032】
なお、本発明の2層型皮膚用ローションは、体用のボディーローション、デオドラントローション;顔用の収れんローション、オイルコントロールローションなどの皮膚の何れの部位にも使用することができる。中でも、使用時のさっぱり感に優れ、かつ皮脂の抑制効果に優れる観点から、顔用のローション(化粧水)として使用されるのがより好ましい。また、本発明の2層型皮膚用ローションは、化粧品、医薬部外品、医薬品、雑貨の何れの形態であってもよい。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。尚、配合量は特記しない限り「質量%」を表す。また、配合成分は全て純分に換算した。
【0034】
(試料の調製)
表1に記した組成に従い、実施例1〜8および比較例1〜6の2層型皮膚用ローションを常法により調製し、下記評価試験に供した。なお、保管は振動のないデスク上で、25℃の室温下に静置することにより行なった。結果を表1に併記する。
【0035】
(試験例1;沈降性の評価)
各実施例および各比較例で得られた試料を、口内径25mm、長さ250mmのネスラー管に100mL充填後、スクロール20cm、3往復/秒のスピードで15回振とうした。なお、振とう回数は、1往復で1回と計算する。次いで、25℃の室温で6時間静置した後の外観の状態を目視で確認し、以下の評価基準に従って評価した。
【0036】
<沈降性の評価基準>
○:液層と粉体層とがきれいに2層に分離し、液層に粉体が分散していない(審美性に優れる)
×:液層と粉体層とが2層に分離したが、液層上部に浮遊粉体が認められる(審美性に劣る)
×:2層に分離はしたが、液層に明らかに粉体が分散している(審美性に劣る)
×:粉体が液層に均一分散され沈降していない(審美性に劣る)
【0037】
(試験例2;再分散性の評価)
各実施例および各比較例で得られた試料を透明PET容器に充填後、スクロール20cm、3往復/秒のスピードで15回振とうした。なお、振とう回数は、1往復で1回と計算する。次いで、25℃の室温下で1週間静置した後、再びスクロール20cm、1往復/秒の条件下で振とうさせたときの再分散性を、以下の評価基準に従って目視評価した。但し、試験例1において沈降性の評価結果が「×」の試料については、再分散性の評価を行っていない。
【0038】
<再分散性の評価基準>
○:10回以下の振とうにより紛体が再分散する
△:11〜20回の振とうにより紛体が再分散する
×:21回以上の振とうにより紛体が再分散する、若しくは紛体が再分散しない
【0039】
(試験例3;使用感の評価)
官能評価パネル10名により、各実施例および各比較例で得られた試料2mLを顔面に塗布してもらい、延展後の肌の「サラサラ感」について、以下の評価基準に従って官能評価した。
【0040】
<使用感の評価基準>
○:10名中8名以上が、「サラサラ」とした感触があり使用感に優れると回答
△:10名中5〜7名が、「サラサラ」とした感触があり使用感に優れると回答
×:10名中4名以下が、「サラサラ」とした感触があり使用感に優れると回答
【0041】
【表1】
【0042】
表1の結果から、本発明の2層型皮膚用ローションは、各比較例と対比して、分散後に紛体が速やかに沈降し、きれいな2層状態に戻っており、審美性に優れていることが分かる。また、本発明の2層型皮膚用ローションは、容易に紛体が分散し、再分散性に優れた効果を発揮していることが分かる。さらに、本発明の2層型皮膚用ローションは、塗布後のサラサラとした使用感に優れた効果を発揮していることが分かる。
【0043】
下記組成に従い、実施例9〜10の2層型皮膚用ローションを常法により調製し、同評価試験に供した。尚、配合量は特記しない限り「質量%」を表す。また、配合成分は全て純分に換算した。
【0044】
(実施例9:2層型皮膚用ローション)
塩化γ‐グルコンアミドプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム
0.05
ベントナイト 0.2
塩化ナトリウム 0.15
燐酸ナトリウム 0.3
ナイロン末 2.0
アクリレーツクロスポリマー紛体 0.4
エタノール 20.0
1,2−オクタンジオール 0.15
グルコシルトレハロース 1.0
ジプロピレングリコール 8.0
l−メントール 0.1
サリチル酸 0.1
精製水 残 余
合計 100.0
【0045】
(実施例10:2層型皮膚用ローション)
塩化γ‐グルコンアミドプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム
0.08
ラポナイト 0.1
塩化ナトリウム 0.1
燐酸ナトリウム 0.5
ナイロン末 1.2
アクリレーツクロスポリマー紛体 0.8
エタノール 30.0
1,2−オクタンジオール 0.1
グルコシルトレハロース 2.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
l−メンチルグリセリルエーテル 0.1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
精製水 残 余
合計 100.0
【0046】
評価試験の結果、実施例9〜10の2層型皮膚用ローションはともに、紛体を容易に分散することができ、再分散性に優れた効果を発揮するものであった。さらに、再分散後は紛体が速やかに沈降し、きれいな2層状態に戻すことができ、沈降性に優れた効果を発揮するものであった。また、サラサラとした感触があり優れた使用感を発揮するものであった。