(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
A.偏光子の検査方法
本発明の検査方法は、長尺方向および幅方向に所定の間隔で配置された非偏光部を有する長尺状偏光子を検査する方法であり、該長尺状偏光子を搬送しながら、該非偏光部を撮影部(非偏光部撮影用カメラ)により撮影することを含む。本明細書において「長尺状」とは、幅に対して長さが十分に長い細長形状を意味し、例えば、幅に対して長さが10倍以上、好ましくは20倍以上の細長形状を含む。
【0010】
非偏光部の配置パターンは、目的に応じて適切に設定され得る。長尺状偏光子において、非偏光部の配置パターンは、長尺方向所定の範囲内で幅方向に配置された複数の非偏光部を含む非偏光部群を長尺方向に複数群配列することにより、長尺方向に延びる非偏光部の縦列の集合として構成され得る。また、非偏光部は、偏光子を所定サイズの画像表示装置に取り付けるために所定サイズに裁断(例えば、長尺方向および/または幅方向への切断、打ち抜き)した際に、該画像表示装置のカメラ部に対応する位置に配置され得る。1つの実施形態においては、非偏光部は長尺方向および幅方向のいずれにおいても実質的に等間隔で配置される。なお、「長尺方向および幅方向のいずれにおいても実質的に等間隔」とは、長尺方向の間隔が等間隔であり、かつ、幅方向の間隔が等間隔であることを意味し、長尺方向の間隔と幅方向の間隔とが等しい必要はない。別の実施形態においては、非偏光部は、長尺方向に実質的に等間隔で配置され、かつ、幅方向に異なる間隔で配置されてもよい。幅方向において非偏光部が異なる間隔で配置される場合、隣接する非偏光部の間隔はすべて異なっていてもよく、一部(特定の隣接する非偏光部の間隔)のみが異なっていてもよい。
【0011】
図1は、本発明の検査方法に供される偏光子における非偏光部の配置パターンの一例を説明する概略平面図である。なお、本明細書においては、便宜上、非偏光部10の位置をL
Y−W
Xにより表す。L
Yは、非偏光部の位置が、搬送方向最前(紙面下側)から長さ方向にY番目であることを意味し、W
Xは、非偏光部の位置が、搬送方向に向かって最右側(紙面左側)から幅方向にX番目であることを意味する。したがって、長尺状偏光子の搬送方向最前、かつ、搬送方向に向かって最右側に位置する非偏光部の位置は、L
1−W
1となる。また、L
1−W
1と幅方向同列に属する非偏光部を横列L
1に属する非偏光部とし、それらの位置は、L
1−W
1から順に、L
1−W
1、L
1−W
2、L
1−W
3、・・・・・L
1−W
X、L
1−W
X+1、・・・・・とする。さらに、L
1−W
1と長尺方向同列に属する非偏光部を縦列W
1に属する非偏光部とし、それらの位置は、L
1−W
1から順に、L
1−W
1、L
2−W
1、L
3−W
1、・・・・・L
Y−W
1、L
Y+1−W
1、・・・・・とする。また、横列L
Yに属する非偏光部のグループを非偏光部群L
Yとする。なお、本明細書において、「長尺方向同列に属する非偏光部」は、幅方向所定の範囲において、長尺方向に配列している非偏光部を意味する。すなわち、「長尺方向同列に属する非偏光部」は、必ずしも一直線上に配列している必要はない。
【0012】
1つの実施形態においては、非偏光部10は、
図1に示すように、長尺方向において隣接する非偏光部を結ぶ直線が、長尺方向に対して実質的に平行であり、ならびに、幅方向において隣接する非偏光部を結ぶ直線が、幅方向に対して実質的に平行であるように配置される。
【0013】
非偏光部の配置パターンが図示例に限定されないことは言うまでもない。例えば、非偏光部10は、幅方向所定の範囲内で長尺方向に配列する非偏光部を結ぶ直線が、長尺方向に対して所定の角度θ
Lを有し、ならびに、幅方向において隣接する非偏光部を結ぶ直線が、幅方向に対して実質的に平行であるように配置されてもよい。
【0014】
上記のとおり、非偏光部は幅方向において異なる間隔で配置されていてもよいが、幅方向に隣り合う1組の非偏光部10の間隔、すなわち、同じ横列内でのW
XとW
X+1との間隔は、すべての横列で実質的に同じであることが好ましい。より具体的には、L
Y−W
X/L
Y−W
X+1間の距離とL
Y+1−W
X/L
Y+1−W
X+1間の距離とは、実質的に等しいことが好ましい。このようにすれば、非偏光部撮影用カメラの制御を単純化することができる。詳細は後述する。
【0015】
非偏光部の平面視形状は、目的に応じて任意の適切な形状が採用され得る。例えば、非偏光部の平面視形状は、偏光子が用いられる画像表示装置のカメラ性能に悪影響を与えない限りにおいて、任意の適切な形状が採用され得る。図示例の非偏光部は円形であるが、例えば、楕円形、正方形、矩形、ひし形等に形成されていてもよい。
【0016】
非偏光部の透過率(例えば、23℃における波長550nmの光で測定した透過率)は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは75%以上であり、特に好ましくは90%以上である。このような透過率であれば、例えば、非偏光部が画像表示装置のカメラ部に対応するよう偏光子を配置した場合に、カメラの撮影性能に対する悪影響を防止することができる。
【0017】
非偏光部は、任意の適切な形態であり得る。1つの実施形態においては、非偏光部は、部分的に脱色された脱色部である。脱色部は、例えば、レーザー照射または化学処理により形成される。別の実施形態においては、非偏光部は貫通穴である。貫通穴は、例えば、機械的打ち抜き(例えば、パンチング、彫刻刃打抜き、プロッター、ウォータージェット)または所定部分の除去(例えば、レーザーアブレーションまたは化学的溶解)により形成される。
【0018】
本発明の検査方法は、幅方向同列に配列される非偏光部のうちのひとつの非偏光部の位置を基準にして、撮影部の幅方向における位置決めを行い、該撮影部により、基準にした非偏光部と幅方向同列に配列される該非偏光部を撮影することを含む。すなわち、各非偏光部群(各横列)ごとに、幅方向同列に配列された非偏光部のうちの1つの非偏光部(以下、基準非偏光部ともいう)の位置を基準にして、上記非偏光部撮影用カメラの位置決めを行い、幅方向に配列された非偏光部を、非偏光部撮影用カメラにより、撮影する。以下、
図2を用いて、本発明の検査方法を説明する。
【0019】
まず、
図2(a)に示すように、任意の適切なカメラ1(以下、基準検知カメラともいう)を用いて、長尺状偏光子100の最前(すなわち非偏光部群L
1)に配置された基準非偏光部10’の幅方向における位置を検知する。基準非偏光部10’の検知は、上記長尺状偏光子100を長尺方向(
図2においては、紙面上側から下側に向かって)に搬送させながら行われる。なお、
図2においては、搬送される長尺状偏光子100の搬送方向に対して非偏光部10が蛇行している場面を表している。
【0020】
基準非偏光部10’は、幅方向同列に配列される非偏光部のうちのひとつである。すなわち、各非偏光部群は、それぞれ、幅方向同列に配列される非偏光部10のうちのひとつである基準非偏光部10’を有する。好ましくは、基準非偏光部10’は、長尺方向において、同じ縦列に配置される。
図2(a)においては、各非偏光部群(横列)において縦列W
1に位置する非偏光部が、基準非偏光部10’である。好ましくは、図示例のように、幅方向最外側(図示例では、搬送方向に向かって最右側)にある非偏光部10を基準非偏光部10’とする。幅方向最外側の非偏光部を基準非偏光部10’とすれば、基準検知カメラ1の設置に要するスペースを小さくすることができる。
【0021】
基準検知カメラ1は、非偏光部撮影用カメラの長尺方向上流側において、基準非偏光部10’を検知し得る位置に固定設置される。長尺方向において隣接する基準非偏光部10’を結ぶ直線が長尺方向と平行ではない場合、または偏光子および/または基準非偏光部の配列が蛇行している場合にも、基準非偏光部10’をもれなく検知できるように、基準検知カメラ1の検知範囲は設定される。また、基準非偏光部以外の非偏光部は、基準検知カメラ1の検知範囲外となることが好ましい。基準検知カメラ1の検知面積は、例えば、50cm
2〜500cm
2であり、好ましくは200cm
2〜400cm
2である。また、基準検知カメラ1の検知面積は、基準非偏光部10’の面積の2倍〜30倍であることが好ましく、20倍〜30倍であることがより好ましい。
【0022】
次いで、
図2(b)および
図2(c)に示すように、基準検知カメラ1が検知した基準非偏光部10’を基準にして、上記非偏光部撮影用カメラ2の位置決めを行う。好ましくは、基準非偏光部10’の中心または重心の位置を基準にして、上記非偏光部撮影用カメラ2の位置決めを行う。
【0023】
非偏光部撮影用カメラ2は、基準検知カメラ1の長尺方向下流側、かつ、偏光子100の厚さ方向上方または厚さ方向下方に設置される。好ましくは、前記非偏光部群を構成する非偏光部が直線状に配列され、非偏光部撮影用カメラ2は、非偏光部群を構成する非偏光部を結ぶ直線(幅方向において隣接する非偏光部を結ぶ直線)と平行に移動可能なように設置される。
【0024】
非偏光部撮影用カメラ2は、上記非偏光部を撮影する機能を有する。このような機能を有する限り、非偏光部撮影用カメラ2は、任意の適切な形態をとり得る。好ましくは、非偏光部撮影用カメラ2は、ひとつの非偏光部群(すなわち、幅方向に配列された複数の該非偏光部)を、一度に撮影する。
図2においては、非偏光部群L
1(横列L
1)に属する非偏光部が、非偏光部撮影用カメラ2により、一度に撮影される例を示す。
【0025】
複数台の非偏光部撮影用カメラ2により非偏光部を撮影してもよく、1台の非偏光部撮影用カメラ2により非偏光部を撮影してもよい。また、1台の非偏光部撮影用カメラ2により、1個の非偏光部を撮影してもよく、複数個の非偏光部を撮影してもよい。好ましくは、撮影される非偏光部の縦列の数と同数の非偏光部撮影用カメラ2を用い、1台の非偏光部撮影用カメラ2による1回の撮影により、1個の非偏光部が撮影される。
【0026】
1つの実施形態においては、非偏光部撮影用カメラ2は、同一の横列に属する非偏光部すべてを撮影する。すなわち、基準非偏光部を含めた非偏光部すべてが撮影される。このような実施形態は、基準非偏光部を含めた非偏光部が、最終製品に含まれる場合に採用され得る。別の実施形態においては、図示例のように、非偏光部撮影用カメラ2は、同一の横列に属する非偏光部のうち、基準非偏光部以外の非偏光部を撮影する。このような実施形態は、基準非偏光部が最終製品に含まれない場合、すなわち、基準非偏光部が、非偏光部撮影用カメラ2を位置決めするための基準としてのみ用いられる場合に採用され得る。
【0027】
非偏光部撮影用カメラ2の位置決めは、基準非偏光部10’が基準検知カメラ1により検知された後、該基準非偏光部10’と同じ横列に属する非偏光部群が、非偏光部撮影用カメラ2の撮影領域に到達するまでに行われる。例えば、(i)
図2(a)に示すように、L
1−W
1の位置にある基準非偏光部10’の幅方向における位置を基準検知カメラ1により検知し、(ii)
図2(b)に示すように、横列L
1が前方へ移動している間、非偏光部撮影用カメラ2が、横列L
1を構成する非偏光部を結ぶ直線と平行な方向に移動し、(iii)
図2(c)に示すように、横列L
1が、非偏光部撮影用カメラ2の下方に到達するまでに、非偏光部撮影用カメラ2は、横列L
1の各非偏光部を撮影することが可能な位置に、位置決めされ、(iv)
図2(d)に示すように、横列L
1の非偏光部が非偏光部撮影用カメラ2の下方に到達したときに、非偏光部撮影用カメラ2は該非偏光部を撮影する。このとき、非偏光部撮影用カメラ2は、基準検知カメラ1により検知された基準非偏光部10’の位置(好ましくは、中心または重心の位置)を基準にして、位置決めされる。より具体的には、撮影対象となる非偏光部と基準非偏光部10’との距離は検査前(偏光子を搬送させる前)に測定等により知ることができ、当該距離に関する情報と、検知された基準非偏光部10’の幅方向における位置の情報とから、非偏光部撮影用カメラ2の撮影位置が決められる。このような方法によれば、搬送する長尺状偏光子が蛇行した場合にも、蛇行の度合いに応じて、非偏光部撮影用カメラ2を移動させることができ、非偏光部10を確実に撮影することができる。
【0028】
上記のとおり、幅方向に隣り合う1組の非偏光部の間隔、すなわち、同じ横列内でのW
XとW
X+1との間隔は、すべての横列で実質的に同じであることが好ましい。このように、非偏光部が配置されていれば、複数台設置される非偏光部撮影用カメラ2の間隔は一定とすることができ、非偏光部撮影用カメラ2の制御を単純化することができる。
【0029】
非偏光部撮影用カメラ2の撮影のタイミングは、自動化され得る。非偏光部撮影用カメラ2の撮影のタイミングは、基準検知カメラ1と非偏光部撮影用カメラ2との長尺方向の間隔に基づいて設定され得る。また、非偏光部撮影用カメラ2は、非偏光部撮影用カメラ2の撮影範囲への非偏光部の侵入を検知し、検知後瞬時に該非偏光部10を撮影し得る構成であってもよい。
【0030】
なお、基準検知カメラ1および非偏光部撮影用カメラ2の制御、すなわち、基準非偏光部10’の位置検知、位置検知に応じた非偏光部撮影用カメラ2の移動、非偏光部撮影用カメラ2による撮影等の制御は、任意の適切な方法により行うことができる。
【0031】
本発明の検査方法においては、非偏光部撮影用カメラ2による撮像を、任意の適切な方法により画像処理して、非偏光部およびその近傍の検査が行われる。本発明の検査方法では、非偏光部およびその近傍の外観を検査することができ、例えば、非偏光部の形状(例えば、真円度等の形状整合度、輪郭のラフネス等)、非偏光部の光透過性、非偏光部部分における異物有無等が検査される。非偏光部撮影用カメラ2としては、上記検査が可能なカメラである限り、任意の適切なカメラが採用され得る。非偏光部撮影用カメラ2としては、高精度かつ高解像度なカメラを用いることが好ましい。このようなカメラは、通常、撮影範囲が狭い。本発明においては、基準非偏光部10’を基準にして、非偏光部撮影用カメラ2の位置決めを行うことにより、非偏光部撮影用カメラ2の撮影範囲が狭くとも、非偏光部を確実に検査することができる。
【0032】
上記のようにして、最前列の非偏光部の撮影および検査が完了する。本発明においては、基準非偏光部10’の位置検知〜非偏光部撮影用カメラ2の移動〜非偏光部撮影用カメラ2の位置決め〜非偏光部撮影用カメラ2による撮影および検査を、非偏光部群(横列)ごとに繰り返し、非偏光部が撮影および検査される。
【0033】
本発明の検査方法においては、上記のように、非偏光部撮影用カメラを移動可能に設置し、幅方向同列に配置された非偏光部のうちの1つの非偏光部(基準非偏光部)の位置を基準にして、該非偏光部撮影用カメラの位置決めを行うことにより、長尺状偏光子の長尺方向に対して非偏光部が蛇行形成されていたとしても、非偏光部撮影用カメラが非偏光部を的確に捉えることができる。また、基準非偏光部の位置検知と非偏光部撮影用カメラの移動とを繰り返し、連続的に行うことができるため、長尺状偏光子をインラインにて検査することができる。すなわち、本発明の検査方法によれば、高効率および高精度に非偏光部を検査することができる。なお、長尺状偏光子自体の幅方向端部の位置を検出(エッジ検出)して、その位置を基準に、非偏光部撮影用カメラを位置決めするという方法では、該幅方向端部と非偏光部との距離が一定とはなり得ず、非偏光部撮影用カメラは非偏光部を的確に捉えることができない。例えば、長尺状偏光子の幅方向端部に鋸刃状の箇所が発生した場合、該箇所において、基準となる幅方向端部と非偏光部との距離が変化するため、非偏光部撮影用カメラを正確に位置決めすることができなくなる。
【0034】
B.非偏光部を有する長尺状偏光子の製造方法
本発明の非偏光部を有する長尺状偏光子の製造方法は、長尺状の偏光子に非偏光部を形成すること、および、上記検査方法により非偏光部を検査することを含む。
【0035】
B−1.偏光子
偏光子は、代表的には、二色性物質を含む樹脂フィルムから構成される。二色性物質としては、例えば、ヨウ素、有機染料等が挙げられる。これらは、単独で、または二種以上組み合わせて用いられ得る。好ましくはヨウ素が用いられる。
【0036】
上記樹脂フィルムを形成する樹脂としては、任意の適切な樹脂が用いられ得る。好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂が用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。
【0037】
偏光子(非偏光部を除く)は、好ましくは、波長380nm〜780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子(非偏光部を除く)の単体透過率(Ts)は、好ましくは39%以上、より好ましくは39.5%以上、さらに好ましくは40%以上、特に好ましくは40.5%以上である。なお、単体透過率の理論上の上限は50%であり、実用的な上限は46%である。また、単体透過率(Ts)は、JIS Z8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値であり、例えば、顕微分光システム(ラムダビジョン製、LVmicro)を用いて測定することができる。偏光子の偏光度(非偏光部を除く)は、好ましくは99.9%以上、より好ましくは99.93%以上、さらに好ましくは99.95%以上である。
【0038】
偏光子の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。厚みは、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm以下である。一方で、厚みは、好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。
【0039】
偏光子の吸収軸は、目的に応じて任意の適切な方向に設定され得る。吸収軸の方向は、例えば、長尺方向であってもよく幅方向であってもよい。長尺方向に吸収軸を有する偏光子は、例えば、製造効率に優れるという利点がある。幅方向に吸収軸を有する偏光子は、例えば、長尺方向に遅相軸を有する位相差フィルムとロールトゥロールで積層できるという利点がある。1つの実施形態においては、吸収軸は長尺方向または幅方向に実質的に平行であり、かつ、偏光子の幅方向両端は長尺方向に平行にスリット加工されている。このような構成によれば、偏光子の端辺を基準に裁断でき、所望の位置に非偏光部を有し、かつ適切な方向に吸収軸を有する複数の偏光子を、容易に製造することができる。なお、偏光子の吸収軸は、後述の延伸処理における延伸方向に対応し得る。
【0040】
偏光子は、代表的には、上記樹脂フィルムに膨潤処理、延伸処理、上記二色性物質による染色処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等の各種処理を施すことにより得られる。各種処理を施す際、樹脂フィルムは、基材上に形成された樹脂層であってもよい。上記非偏光部の形成は、偏光子の作製工程の途中でも行い得る。
【0041】
B−2.非偏光部の形成
好ましくは、非偏光部は、脱色部である。このような構成によれば、機械的に(例えば、彫刻刃打抜き、プロッター、ウォータージェット等を用いて機械的に抜き落とす方法により)、貫通穴が形成されている場合に比べて、クラック、デラミ(層間剥離)、糊はみ出し等の品質上の問題が回避される。脱色部は、好ましくは、偏光子(二色性物質を含む樹脂フィルム)の所望の位置に塩基性溶液を接触させることにより形成される。このような方法により形成される非偏光部は、他の部位(非接触部)よりも二色性物質の含有量が低い低濃度部とされ得る。低濃度部は二色性物質自体の含有量が低いので、レーザー光等により二色性物質を分解して脱色部が形成されている場合に比べて、非偏光部の透明性が良好に維持される。
【0042】
上記低濃度部の二色性物質の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.2重量%以下である。低濃度部の二色性物質の含有量の下限値は、通常、検出限界値以下である。上記他の部位における二色性物質の含有量と低濃度部における二色性物質の含有量との差は、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上である。二色性物質としてヨウ素を用いる場合、ヨウ素含有量は、例えば、蛍光X線分析で測定したX線強度から、予め標準試料を用いて作成した検量線により求められる。
【0043】
上記塩基性溶液に含まれる塩基性化合物としては、任意の適切な化合物が用いられ得る。塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム等の無機アルカリ金属塩、酢酸ナトリウム等の有機アルカリ金属塩、アンモニア水等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水酸化物が用いられ、さらに好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムが用いられる。二色性物質を効率良くイオン化することができ、より簡便に脱色部を形成することができる。これらの塩基性化合物は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
塩基性溶液の溶媒としては、水、アルコールが好ましく用いられる。塩基性溶液の濃度は、例えば0.01N〜5Nであり、好ましくは0.05N〜3Nであり、さらに好ましくは0.1N〜2.5Nである。塩基性溶液の液温は、例えば20℃〜50℃である。塩基性溶液の接触時間は、偏光子の厚み、塩基性溶液に含まれる塩基性化合物の種類や濃度に応じて設定され得る。接触時間は、例えば5秒〜30分であり、好ましくは5秒〜5分である。
【0045】
塩基性溶液の接触方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、偏光子に対し、塩基性溶液を滴下、塗工、スプレーする方法、偏光子を塩基性溶液に浸漬する方法が挙げられる。塩基性溶液の接触に際し、所望の部位以外に塩基性溶液が接触しないように、任意の適切な保護材で偏光子を保護してもよい。このような保護材としては、例えば、保護フィルム、表面保護フィルムが用いられる。保護フィルムは、偏光子の保護フィルムとしてそのまま利用され得るものである。表面保護フィルムは、偏光子の製造時に一時的に用いられるものである。表面保護フィルムは、任意の適切なタイミングで偏光子から取り除かれるため、代表的には、偏光子に粘着剤層を介して貼り合わされる。保護材の別の具体例としては、フォトレジスト等が挙げられる。また、上記偏光子の作製工程で用いられる基材も保護材として用い得る。
【0046】
好ましくは、塩基性溶液の接触に際し、偏光子表面は、その少なくとも一部が露出するように表面保護フィルムで被覆されている。図示例のような非偏光部の配置パターンを有する偏光子は、当該配置パターンに対応する位置に、所望の非偏光部サイズに対応する小円形の貫通孔が形成された表面保護フィルムを偏光子の片側に貼り合わせて偏光フィルム積層体を準備し、これに塩基性溶液を接触させることで製造される。その際、偏光子のもう片側(貫通孔が形成された表面保護フィルムが配置されていない側)も保護されていることが好ましい。保護フィルムや表面保護フィルムの貼り合わせは、
図3に示すように、ロールトゥロールにより行われるのが好ましい。本明細書において、「ロールトゥロール」とは、ロール状のフィルムを搬送しながら互いの長尺方向を揃えて積層することをいう。
【0047】
図4は、本発明の1つの実施形態による偏光フィルム積層体の部分断面図である。偏光フィルム積層体101は、偏光子100と偏光子100の一方面側(図示例では上面側)に配置された第1の表面保護フィルム20と、偏光子100の他方面側(図示例では下面側)に配置された保護フィルム30および第2の表面保護フィルム40とを備える。偏光フィルム積層体101は、その一方面側(図示例では上面側)に偏光子100が露出した露出部11,11…を有する。露出部11は、第1の表面保護フィルム20に貫通孔21を形成することにより設けられている。
【0048】
上記表面保護フィルムの形成材料としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重合体樹脂等が挙げられる。好ましくは、エステル系樹脂(特に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂)である。弾性率が十分に高く、例えば、搬送および/または貼り合わせ時に張力をかけても貫通孔の変形が生じにくいからである。表面保護フィルムの厚みは、代表的には20μm〜250μmであり、好ましくは30μm〜150μmである。
【0049】
第1の表面保護フィルムは、所定のパターンで配置された貫通孔を有する。貫通孔の位置は、非偏光部が形成される位置に対応する。貫通孔の形状は、所望の非偏光部の形状に対応する。貫通孔は、例えば、機械的打ち抜き(例えば、パンチング、彫刻刃打抜き、プロッター、ウォータージェット)またはフィルムの所定部分の除去(例えば、レーザーアブレーションまたは化学的溶解)により形成される。
【0050】
表面保護フィルムは、例えば、塩基性溶液の接触後、任意の適切なタイミングで剥離除去される。
【0051】
上記保護フィルムの形成材料としては、例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重合体樹脂等が挙げられる。保護フィルムの厚みは、好ましくは10μm〜100μmである。
【0052】
保護フィルムの偏光子を積層させない面には、表面処理層として、ハードコート層や反射防止処理、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理が施されていてもよい。保護フィルムは、代表的には、接着剤層を介して偏光子に貼り合わされる。
【0053】
1つの実施形態においては、上記塩基性溶液は、偏光子と接触後、任意の適切な手段により偏光子から除去される。このような実施形態によれば、例えば、偏光子の使用に伴う非偏光部の透過率の低下をより確実に防止することができる。塩基性溶液の除去方法の具体例としては、洗浄、ウエス等による拭き取り除去、吸引除去、自然乾燥、加熱乾燥、送風乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。好ましくは、塩基性溶液は洗浄される。洗浄に用いる洗浄液としては、例えば、水(純水)、メタノール、エタノール等のアルコール、および、これらの混合溶媒等が挙げられる。好ましくは、水が用いられる。洗浄回数は特に限定されず、複数回行ってもよい。塩基性溶液を乾燥により除去する場合、その乾燥温度は、例えば20℃〜100℃である。
【0054】
好ましくは、上記塩基性溶液との接触後、塩基性溶液を接触させた接触部において、樹脂フィルムに含まれるアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を低減させる。アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を低減させることにより、寸法安定性に優れた非偏光部を得ることができる。具体的には、加湿環境下においても、塩基性溶液との接触により形成された非偏光部の形状をそのまま維持することができる。
【0055】
塩基性溶液を接触させることにより、接触部にアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水酸化物が残存し得る。また、塩基性溶液を接触させることにより、接触部にアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の金属塩(例えば、ホウ酸塩)が生成し得る。これらは水酸化物イオンを生成し得、生成した水酸化物イオンは、接触部周囲に存在する二色性物質(例えば、ヨウ素錯体)に作用(分解・還元)して、非偏光領域を広げ得る。したがって、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属塩を低減させることにより、経時的に非偏光領域が広がるのを抑制して、所望の非偏光部形状が維持され得ると考えられる。
【0056】
上記非偏光部は、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量が3.6重量%以下であることが好ましく、より好ましくは2.5重量%以下であり、さらに好ましくは1.0重量%以下であり、特に好ましくは0.5重量%以下である。アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量は、例えば、蛍光X線分析により測定したX線強度から予め標準試料を用いて作成した検量線により求めることができる。
【0057】
上記低減させる方法としては、好ましくは、塩基性溶液との接触部に酸性溶液を接触させる方法が用いられる。このような方法によれば、酸性溶液にアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を効率的に移行させて、その含有量を低減させることができる。酸性溶液との接触は、上記塩基性溶液の除去後に行ってもよいし、塩基性溶液を除去することなく行ってもよい。
【0058】
上記酸性溶液に含まれる酸性化合物としては、任意の適切な酸性化合物を用いることができる。酸性化合物としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素等の無機酸、ギ酸、シュウ酸、クエン酸、酢酸、安息香酸等の有機酸等が挙げられる。酸性溶液に含まれる酸性化合物は、これらの中でも、好ましくは無機酸であり、さらに好ましくは塩酸、硫酸、硝酸である。これらの酸性化合物は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
酸性溶液の溶媒としては、水、アルコールが好ましく用いられる。酸性溶液の濃度は、例えば0.01N〜5Nであり、好ましくは0.05N〜3Nであり、さらに好ましくは0.1N〜2.5Nである。酸性溶液の液温は、例えば20℃〜50℃である。酸性溶液の接触時間は、例えば5秒〜5分である。なお、酸性溶液の接触方法は、上記塩基性溶液の接触方法と同様の方法が採用され得る。また、酸性溶液は、偏光子から除去され得る。酸性溶液の除去方法は、上記塩基性溶液の除去方法と同様の方法が採用され得る。
【0060】
B−3.非偏光部の検査
非偏光部の形成後、上記検査方法により非偏光部の検査を行う。検査を行う際、偏光子に上記表面保護フィルムが積層された状態であってもよいし、表面保護フィルムが剥離された状態であってもよい。また、検査を行う際、偏光子は少なくとも片側に保護フィルムが貼り合わされて偏光板の状態であることが好ましい。
【0061】
1つの実施形態においては、非偏光部の形成後、連続して、非偏光部の検査を行う。具体的には、非偏光部の形成後、一旦、偏光子を巻き取ることなく、非偏光部の検査を行う。例えば、
図4に示すような偏光フィルム積層体に対して非偏光部を形成した後、そのままの状態で、非偏光部の検査工程に供する。このように、非偏光部の形成後に連続して検査を行うことにより(具体的には、形成された非偏光部のサイズが所定のサイズより大きいか小さいかを判別することにより)、例えば、上記塩基性溶液との接触工程における不具合(例えば、表面保護フィルムの貫通孔の状態、塩基性溶液の浸漬状態)を早期に検知することができる。
【0062】
検査後、偏光子は、実用的には偏光板として提供され得る。1つの実施形態においては、偏光板は、他の部材に貼り合わせるための粘着剤層を有する。好ましくは、この粘着剤層表面にはセパレーターが仮着されて、実際の使用まで粘着剤層を保護するとともに、
図5に示すようにロール形成を可能としている。