特許第6556029号(P6556029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6556029レジスト層付きマスクブランク、レジスト層付きマスクブランクの製造方法、及び、転写用マスクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556029
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】レジスト層付きマスクブランク、レジスト層付きマスクブランクの製造方法、及び、転写用マスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/40 20120101AFI20190729BHJP
   G03F 7/11 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   G03F1/40
   G03F7/11 501
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-225952(P2015-225952)
(22)【出願日】2015年11月18日
(65)【公開番号】特開2017-97021(P2017-97021A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年8月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣松 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 博明
(72)【発明者】
【氏名】芝山 聖史
【審査官】 今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2−252231(JP,A)
【文献】 特開平3−261953(JP,A)
【文献】 特開平7−152140(JP,A)
【文献】 特開2000−98582(JP,A)
【文献】 特開2003−107674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00−1/86
H01L 21/027
H01J 37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜を有する基板と、
前記薄膜の表面に形成されたレジスト層と、
前記レジスト層上に形成された導電性層と、を備え、
前記導電性層が、アルミニウムを主成分とする第1金属層と、アルミニウム以外の金属からなる第2金属層とを有し、
前記第1金属層が、前記第2金属層よりもレジスト層側に設けられている
レジスト層付きマスクブランク。
【請求項2】
前記第2金属層が、アルミニウムよりも酸化還元電位の高い金属からなる請求項1に記載のレジスト層付きマスクブランク。
【請求項3】
前記第2金属層が、モリブデン、タングステン、チタン、及び、クロムから選ばれる1種以上を含む請求項1に記載のレジスト層付きマスクブランク。
【請求項4】
前記第1金属層の厚さが5〜15nm、前記第2金属層の厚さが1〜5nm、前記導電性層の厚さが7〜20nmである請求項1に記載のレジスト層付きマスクブランク。
【請求項5】
前記導電性層と、前記レジスト層との間に、水溶性樹脂層が形成されている請求項1に記載のレジスト層付きマスクブランク。
【請求項6】
前記水溶性樹脂層が、有機導電性ポリマーからなる有機導電性層である請求項5に記載のレジスト層付きマスクブランク。
【請求項7】
薄膜を有する基板を準備する工程と、
前記薄膜の表面にレジスト層を形成するレジスト層形成工程と、
前記レジスト層上に、導電性層を形成する導電性層形成工程と、を有し、
前記導電性層形成工程が、アルミニウムを主成分とする第1金属層を形成する第1金属層形成工程と、前記第1金属層上に、アルミニウム以外の金属からなる第2金属層を形成する第2金属層形成工程と、を含む
レジスト層付きマスクブランクの製造方法。
【請求項8】
前記レジスト層形成工程と前記導電性層形成工程との間に、水溶性樹脂層を形成する水溶性樹脂層形成工程を有する請求項7に記載のレジスト層付きマスクブランクの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載のレジスト層付きマスクブランクを用いる転写用マスクの製造方法であって、
前記レジスト層付きマスクブランクの少なくとも薄膜に、凹凸パターンを形成するパターン形成工程を有する
転写用マスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト層付きマスクブランク、レジスト層付きマスクブランクの製造方法、及び、転写用マスクの製造方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
フォトマスクの加工工程は、遮光層や位相シフト膜等の光学膜が成膜されたフォトマスクブランク上にレジスト層を成膜し、電子線照射を行ってレジストパターンを形成し、更に、レジストパターンを上記遮光層や位相シフト膜にエッチングによって転写する方法で行われる。
【0003】
この加工工程中で行われる電子線照射によるレジストパターン形成は、極めて正確な位置に行われなければならないが、通常用いられるレジスト層は絶縁物であるため、レジスト層に電荷の蓄積(チャージアップ)が起こることがある。そして、このチャージアップの影響で、フォトマスクブランク表面に照射された電子線が歪められ、形成されたレジストパターンの位置が僅かにずれ、すなわちレジストパターンの位置精度低下の原因となる。
【0004】
この問題を回避するために、レジスト層の表面側に有機導電性層が形成される技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。レジスト層上に有機導電性層を設ける構成は、有機導電性層として水溶性の材料を選択することにより、現像液による剥離が可能となる利点を有している。
また、ウエハ基板上のレジスト層表面にアルミニウムや金属導電膜を形成する技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−9342号公報
【特許文献2】特開昭63−288017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、レジスト層上に有機導電性層を設ける構成では、有機導電性層の電気抵抗が金属導電性層よりも高く、有機導電性層による除電能力が充分ではない。また、レジスト層上に金属導電性層を設ける構成では、金属導電性層が水溶性等の溶媒への溶解性が低いため、剥離が困難となる。
また、金属導電性層の溶解性を考慮すると、アルカリ性の現像液に溶解可能なアルミニウムを用いることが考えられる。しかし、アルミニウム薄膜は、表面に自然酸化による深さ2〜5nm程度の絶縁体層が形成されてしまう。このため、アルミニウム薄膜を用いる構成では、除電能力が充分に得られない。さらに、自然酸化により、アルミニウム薄膜の表面粗さが増してしまう問題もある。
【0007】
上述した問題の解決のため、本発明においては、電子線照射の際のチャージアップの抑制が可能なレジスト層付きマスクブランク、及び、レジスト層付きマスクブランクの製造方法、並びに、このレジスト層付きマスクブランクを用いた転写用マスクの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述の課題を解決する手段として、以下の構成を有する。
【0009】
[構成1]
薄膜を有する基板と、
前記薄膜の表面に形成されたレジスト層と、
前記レジスト層上に形成された導電性層と、を備え、
前記導電性層が、アルミニウムを主成分とする第1金属層と、アルミニウム以外の金属からなる第2金属層とを有し、
前記第1金属層が、前記第2金属層よりもレジスト層側に設けられている
レジスト層付きマスクブランク。
【0010】
[構成2]
前記第2金属層が、アルミニウムよりも酸化還元電位の高い金属からなる構成1に記載のレジスト層付きマスクブランク。
[構成3]
前記第2金属層が、モリブデン、タングステン、チタン、及び、クロムから選ばれる1種以上を含む構成1又は2に記載のレジスト層付きマスクブランク。
【0011】
[構成4]
前記第1金属層の厚さが5〜15nm、前記第2金属層の厚さが1〜5nm、前記導電性層の厚さが7〜20nmである構成1から3のいずれかに記載のレジスト層付きマスクブランク。
【0012】
[構成5]
前記導電性層と、前記レジスト層との間に、水溶性樹脂層が形成されている構成1から4のいずれかに記載のレジスト層付きマスクブランク。
【0013】
[構成6]
前記水溶性樹脂層が、有機導電性ポリマーからなる有機導電性層である構成5に記載のレジスト層付きマスクブランク。
【0014】
[構成7]
薄膜を有する基板を準備する工程と、
前記薄膜の表面にレジスト層を形成するレジスト層形成工程と、
前記レジスト層上に、導電性層を形成する導電性層形成工程と、を有し、
前記導電性層形成工程が、アルミニウムを主成分とする第1金属層を形成する第1金属層形成工程と、前記第1金属層上に、アルミニウム以外の金属からなる第2金属層を形成する第2金属層形成工程と、を含む
レジスト層付きマスクブランクの製造方法。
【0015】
[構成8]
前記レジスト層形成工程と前記導電性層形成工程との間に、水溶性樹脂層を形成する水溶性樹脂層形成工程を有する構成7に記載のレジスト層付きマスクブランクの製造方法。
【0016】
[構成9]
構成1〜6のいずれかに記載のレジスト層付きマスクブランクを用いる転写用マスクの製造方法であって、
前記レジスト層付きマスクブランクの少なくとも薄膜に、凹凸パターンを形成するパターン形成工程を有する
転写用マスクの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電子線照射の際のチャージアップの抑制が可能なレジスト層付きマスクブランク、及び、レジスト層付きマスクブランクの製造方法、並びに、このレジスト層付きマスクブランクを用いた転写用マスクの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】レジスト層付きマスクブランクの断面概略図である。
図2】レジスト層付きマスクブランクの変形例の断面概略図である。
図3】レジスト層付きマスクブランクの製造方法を示す断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本実施形態においては、次の順序で説明を行う。
1.レジスト層付きマスクブランク
(1−A)薄膜付基板
(1−B)レジスト層
(1−C)導電性層
(1−D)水溶性樹脂層(有機導電性層)
2.レジスト層付きマスクブランクの製造方法
(2−A)薄膜付基板(マスクブランク)準備工程
(2−B)レジスト層形成工程
(2−C)水溶性樹脂層(有機導電性層)形成工程
(2−D)導電性層形成工程
3.転写用マスクの製造方法
【0020】
なお、以下の説明において記載が無い構成については、公知の構成(例えば、特開2013−257593号公報)を適宜採用することができる。例えば、薄膜等の具体的な構成等に関しては、特開2013−257593号公報の内容を適用することができる。
【0021】
〈1.レジスト層付きマスクブランクの形態〉
本実施形態におけるレジスト層付きマスクブランクの構成を、図1に示す。図1は、レジスト層付きマスクブランク10の断面概略図である。図1に示すように、レジスト層付きマスクブランク10は、基板11の主表面に薄膜12が形成され、薄膜12の上にレジスト層13が形成されている。さらに、レジスト層13上に、第1金属層14と第2金属層15とからなる導電性層16が形成されている。
【0022】
なお、レジスト層付きマスクブランクの構成において、「レジスト層上」や「第1金属層上」といった「上」の表現は、各層の主表面と接するように対象となる膜が形成される構成だけでなく、各層の主表面と接するように別の膜が形成された後、この別の膜の主表面に対象となる膜が形成された構成も含む。以下、各構成について説明する。
【0023】
(1−A)薄膜付基板(マスクブランク)
薄膜付き基板(マスクブランク19)は、基板11と、この基板11上に設けられた遮光層18や光半透過層17等からなる薄膜12とから構成されている。この基板11と薄膜12とがマスクブランク19の主体であり、主に薄膜12が加工されることによりマスクブランク19が転写用マスクとして供される。
【0024】
レジスト層付きマスクブランク10における基板11としては、ガラス基板を用いることができる。透過型マスクの場合、基板11は、ウエハ上にパターンを形成するときの露光光に対して高い透過率を有するガラス材が選択される。反射型マスクの場合、露光光のエネルギーに伴う基板11の熱膨張が最小限にできる低熱膨張ガラスが選択される。
【0025】
具体的には、透過型マスク(例えば、バイナリマスク、位相シフトマスク及びグレートーンマスク)の場合、基板11の材質としては、合成石英ガラス、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、無アルカリガラスなどが挙げられる。詳しい例として、波長193nmのArFエキシマレーザーや波長254nmのKrFエキシマレーザーを露光光として用いる転写型マスクの基板11には、波長300nm以下の光に対して高い透過率を有する合成石英ガラスを好ましく用いることができる。
また、反射型マスクであるEUVマスクの場合、基板11には、露光時の熱による被転写パターンの歪みを抑えるために、約0±1.0×10−7/℃の範囲内、より好ましくは約0±0.3×10−7/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するガラス材料であるSiO−TiO系ガラスを好ましく用いることができる。
【0026】
また、レジスト層付きマスクブランク10は、図1に示すように、基板11の主表面に薄膜12を備える。薄膜12の具体的な構成としては、以下の(1)〜(4)が挙げられる。なお、以下の説明において数値範囲を示す「〜」は、所定数値以上かつ所定数値以下を意味する。
【0027】
(1)バイナリマスクの薄膜
レジスト層付きマスクブランク10がバイナリマスクブランクである場合、露光波長の光に対して透過性を有する基板11上に、遮光層18を有する薄膜12が設けられる。
【0028】
この遮光層18は、クロム、タンタル、ルテニウム、タングステン、チタン、ハフニウム、モリブデン、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、ロジウム等の遷移金属単体あるいはその化合物を含む材料からなる。例えば、クロムや、クロムに酸素、窒素、炭素などの元素から選ばれる1種以上の元素を添加したクロム化合物で構成した遮光層18が挙げられる。また、例えば、タンタルに、酸素、窒素、ホウ素などの元素から選ばれる1種以上の元素を添加したタンタル化合物で構成した遮光層18が挙げられる。
【0029】
また、薄膜12は、遮光層18の構造を、遮光層と主表面反射防止層の2層構造や、さらに遮光層と基板11との間に裏面反射防止層等を加えた3層以上の構造としてもよい。また、遮光層18の膜厚方向における組成が連続的又は段階的に異なる組成傾斜膜としてもよい。
【0030】
また、薄膜12は、遮光層18上にエッチングマスク膜を有する構成であってもよい。このエッチングマスク膜は、遷移金属シリサイドを含む遮光層18のエッチングに対してエッチング選択性(エッチング耐性)を有する、クロムや、クロムに酸素、窒素、炭素などの元素を添加したクロム化合物からなる材料で構成することが好ましい。このとき、エッチングマスク膜に反射防止機能を持たせることにより、遮光層18上にエッチングマスク膜を残した状態で転写用マスクを作製してもよい。
【0031】
(2)他の構成を有するバイナリマスクの薄膜
また、バイナリマスクの薄膜12の他の例としては、遷移金属及びケイ素(遷移金属シリサイド、特にモリブデンシリサイドを含む)の化合物を含む材料からなる遮光層18を有する構成も挙げることができる。
【0032】
この遮光層18は、遷移金属及びケイ素の化合物を含む材料から構成される。例えば、遷移金属及びケイ素と、酸素及び/又は窒素を主たる構成要素とする材料が挙げられる。また、遮光層18は、遷移金属と、酸素、窒素及び/又はホウ素を主たる構成要素とする材料が挙げられる。遷移金属としては、モリブデン、タンタル、タングステン、チタン、ハフニウム、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、クロム等が適用可能である。
【0033】
特に、遮光層18をモリブデンシリサイドの化合物で形成する場合であって、遮光層(MoSi等)と主表面反射防止層(MoSiON等)の2層構造や、さらに遮光層と基板11との間に裏面反射防止層(MoSiON等)を加えた3層構造とすることができる。
また、遮光層18の膜厚方向における組成が連続的又は段階的に異なる組成傾斜膜としてもよい。
【0034】
(3)ハーフトーン型位相シフトマスクの薄膜
レジスト層付きマスクブランク10がハーフトーン型位相シフトマスクである場合には、転写時に使用する露光光の波長に対して透過性を有する基板11上に、遷移金属及びケイ素(遷移金属シリサイド、特にモリブデンシリサイドを含む)の化合物を含む材料からなる光半透過層17を有する薄膜12が設けられる。
【0035】
薄膜12に含まれる光半透過層17は、実質的に露光に寄与しない強度の光(例えば、露光波長に対して1%〜30%)を透過させ、所定の位相差(例えば180度)を有する。なお、ハーフトーン型位相シフトマスクは、この光半透過層17をパターニングした光半透過部と、光半透過層17が形成されていない実質的に露光に寄与する強度の光を透過する光透過部とを有する。そして、光半透過部を透過した光の位相が、光透過部を透過した光の位相に対して実質的に反転した関係となるように構成される。さらに、光半透過部と光透過部との境界部近傍を通過し回折現象によって互いに相手の領域に回り込んだ光が互いに打ち消しあうように構成される。これにより、境界部における光強度をほぼゼロとし、境界部のコントラスト、即ち解像度を向上させるができる。
【0036】
この光半透過層17は、例えば遷移金属及びケイ素(遷移金属シリサイドを含む)の化合物を含む材料からなり、これらの遷移金属及びケイ素と、酸素及び/又は窒素を主たる構成要素とする材料が挙げられる。遷移金属には、モリブデン、タンタル、タングステン、チタン、ハフニウム、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、クロム等が適用可能である。
【0037】
また、光半透過層17上に遮光層18を有する形態の場合、上記光半透過層17の材料が遷移金属及びケイ素を含むので、遮光層18の材料としては、光半透過層17に対してエッチング選択性を有する(エッチング耐性を有する)特にクロムや、クロムに酸素、窒素、炭素などの元素を添加したクロム化合物で構成することが好ましい。
【0038】
(4)反射型マスクの薄膜
レジスト層付きマスクブランク10が反射型マスクである場合、薄膜12は、基板11上に露光光を反射する多層反射膜が形成され、多層反射膜上に露光光を吸収する吸収体膜がパターン状に形成された構造を有する。反射型マスクに入射した光(EUV光)は、吸収体膜のある部分では吸収される。また、吸収体膜のない部分では、多層反射膜で反射された光像が、反射光学系を通して半導体基板上に転写される。
【0039】
多層反射膜は、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層して形成される。多層反射膜の例としては、Mo膜とSi膜を交互に40周期程度積層したMo/Si周期積層膜、Ru/Si周期多層膜、Mo/Be周期多層膜、Mo化合物/Si化合物周期多層膜、Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜、Si/Ru/Mo/Ru周期多層膜などがある。露光波長により、材質を適宜選択することができる。
【0040】
また、吸収体膜は、露光光である例えばEUV光を吸収する機能を有し、例えばタンタル(Ta)単体又はTaを主成分とする材料を好ましく用いることができる。このような吸収体膜の結晶状態は、平滑性、平坦性の点から、アモルファス状又は微結晶の構造を有することが好ましい。
【0041】
(1−B)レジスト層
レジスト層13は、従来公知のレジスト組成物を用いて、公知の手法で形成することができる。例えば、公知のジ型のレジスト、ネガ型のレジスト、及び、化学増幅型レジストを使用することができる。また、レジスト組成物としては、感光性樹脂、光酸発生剤(PAG)、塩基性化合物、界面活性剤、及び、溶媒である有機溶剤等が含まれていてもよい。
【0042】
(1−C)導電性層
導電性層16は、アルミニウムを主成分とする第1金属層14と、アルミニウム以外の金属からなる第2金属層15とから構成される。また、レジスト層付きマスクブランク10において、導電性層16は、レジスト層13側に第1金属層14が設けられ、この第1金属層14上に第2金属層15が設けられる。これにより、レジスト層付きマスクブランク10の表面において、アルミニウムを主成分とする第1金属層14が露出しない構成とする。
【0043】
導電性層16は、全体の厚さが7〜20nmであることが好ましい。導電性層16が薄すぎると、電子線照射によるチャージアップの抑制に充分な導電性を確保することが難しい。導電性層16が厚すぎると、レジスト層付きマスクブランク10を用いて転写マスクを作製する工程において、導電性層16を除去する際に残渣が発生しやすく、異物として残存する可能性が高くなる。
【0044】
また、導電性層16は、シート抵抗が10〜1.0×10Ω/sq.であることが好ましく、100〜1.0×10Ω/sq.であることがより好ましい。なお、シート抵抗は、JIS K 7194:1994に規定された4探針法により測定される値である。シート抵抗が1.0×10Ω/sq.を超えると除電効果が不足し、パターン位置精度が悪くなる。10Ω/sq.を下回ると導電性膜16を流れる電子がレジスト膜に影響を及ぼし感度を低下させるおそれが生じる。
【0045】
また、導電性層16は、表面の粗さが、Raが、2nm以下であることが好ましい。なお、粗さは、JIS B 0601:2001に規定された方法により測定される値である。
【0046】
(第1金属層)
第1金属層14は、アルミニウムを主成分として構成されている。なお、主成分とは、構成内において占める割合が最も高い成分を意味し、第1金属層14においては、アルミニウムが組成比率(原子比)の最も高い成分であることを意味する。
【0047】
好ましくは、第1金属層14において、アルミニウムが80%以上含まれることが好ましく、90%以上含まれることがさらに好ましい。特に、不可避不純物を除き、すべてアルミニウムにより形成されていることが好ましい。
【0048】
アルミニウムは、アルカリ可溶であるため、現像前の純水(イオン交換水)又はアルカリ性溶液によるプレリンスやアルカリ性の現像液によって容易に除去することができる。このため、第1金属層14を剥離するための工程を追加することなく、マスクブランクから転写マスクを作製することができる。
【0049】
第1金属層14は、厚さが5〜15nmであることが好ましく、7〜10nmであることが好ましい。第1金属層14が薄すぎると、電子線照射によるチャージアップの抑制に充分な導電性を確保することが難しい。また、第1金属層14が厚すぎると、レジスト層付きマスクブランク10を用いて転写マスクを作製する工程において、導電性層16や第1金属層14を除去する際にアルミニウムの残渣が発生しやすく、異物として残存する可能性が高くなる。
【0050】
第1金属層14は、シート抵抗が1.0×10〜5.0Ω/sq.の範囲であることが好ましい。シート抵抗値が5.0Ω/sq.よりも低い場合には、電子線照射位置から第1金属層14を介して周辺部分に電子の広がりが生じ、レジストパターンの形状が悪くなる恐れがある。また、1.0×10Ω/sq.よりも高い場合には除電効果が乏しくなる恐れがある。
【0051】
第1金属層14は、表面の粗さが、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定し、10nm角範囲の高さデータをもとにRa(中心線表面粗さ)を求める場合に、Raが0.7nm以下であることが好ましい。Raが0.7nmを超えると第1金属層の表面積が増してしまい、第1金属層14と第2金属層15の界面の酸化が起きやすいという問題点を有している。
【0052】
(第2金属層)
第2金属層15は、アルミニウム以外の金属からなる。アルミニウム以外の金属からなる第2金属層15は、実質的にアルミニウムを含まない構成である。実質的にアルミニウムを含まないとは、不可避不純物や第1金属層14からの拡散分を除いてアルミニウムを含まない構成であり、具体的には、アルミニウムが1%未満であることをいう。また、アルミニウム以外の金属としては、第1金属層14のアルミニウム膜の形成から、同一真空下を維持し状態で成膜可能な材料を用いることが好ましい。特に、緻密性の高い膜が形成可能な、スパッタ成膜が可能な材料を用いることが好ましい。
【0053】
第1金属層14上に第2金属層15を設けることにより、第1金属層14が気密状態となり、例えば、保管中の雰囲気に存在する酸素等による第1金属層14の変質が生じない状況となる。すなわち、第2金属層15が第1金属層14の保護層として機能する。このため、第2金属層15により第1金属層14を構成するアルミニウムの酸化が抑制される。さらに、第2金属層15が実質的にアルミニウムを含まないことにより、アルミニウムの酸化に起因するシート抵抗の増加、及び、表面粗さの増加を抑制することができる。
【0054】
なお、第2金属層15を構成する材料によっては、表面に自然酸化による金属の酸化物が形成される場合がある。特に、貴金属以外の金属を用いた場合には、レジスト膜付きマスクブランク10の表面に露出する表面に、第2金属層15を構成する金属の酸化膜が形成される。本例においては、このような第2金属層15の表面に、第2金属層15を構成する金属の酸化膜が形成されている構成、或いは、第2金属層15を構成する金属がすべて酸化されている構成も含まれる。
【0055】
第2金属層15を構成する金属は、遷移金属であることが好ましい。遷移金属層は、標準電極電位が低い金属であっても、自然酸化では絶縁体になるほどの酸化数が上がらずに導電性が維持される。例えば、Mo(III、IV)やW(IV)の酸化物は良好な導電性を有している。このため、第2金属層15の表面が酸化しても導電性が確保され、電子線照射によるチャージアップの抑制が可能となる。
【0056】
また、第2金属層15は、酸化還元電位がアルミニウムよりも高いことが好ましい。第2金属層15を構成する金属の酸化還元電位がアルミニウムよりも高いことにより、第1金属層14を構成するアルミニウムよりも第2金属層15を構成する金属の方が酸化されやすい構成となる。このため、第2金属層15が酸化の犠牲層となることにより、第1金属層14を構成するアルミニウムの酸化を抑制することができる。
【0057】
第2金属層15が酸化した場合においても、第1金属層14を構成するアルミニウムが酸化しなければ、導電性層16に要求される導電性を維持することができる。具体的には、第1金属層14を構成するアルミニウムは非常に導電性が高いため、第2金属層15の抵抗が第1金属層14よりも高い場合にも、導電性層16全体の導電性がアルミニウムによって担保されるため、導電性層16の導電性を充分に確保することができる。
【0058】
一方で、第1金属層14を構成するアルミニウムが酸化すると、導電性層16の導電性を充分に確保することが困難となり、第1金属層14のシート抵抗が増加するため、電子線照射によるチャージアップの抑制に不利となる。さらに、アルミニウムが酸化すると、第1金属層14の表面粗さが大きくなり、後述するマスクブランクの品質面において不利となる。
【0059】
また、導電性層16は、表面に平滑性の高い層が形成されていることが好ましい。導電性層16の表面において粗さが大きい場合には、マスクブランクとしての検査において、厚さの測定ができない場合がある。このため、マスクブランクとしての検査が可能な程度の平滑性が導電性層16には要求される。
【0060】
一方、上述の第1金属層14を構成するアルミニウムのような低融点金属では、層形成の際に、金属の粒塊が発生し、この粒塊が成長することにより、表面の凹凸が大きい層が形成されやすい。従って、第1金属層14が表面に形成されたマスクブランクでは、導電性層の厚さの検査ができない場合があり、マスクブランクとしての品質に問題が発生する場合がある。
【0061】
このため、導電性層16において、アルミニウムからなる第1金属層14上に、平滑性の高い第2金属層15を形成することが好ましい。すなわち、粗さの大きい第1金属層14上に、平滑性の高い第2金属層15が形成されることにより、膜厚検査における不良発生を抑制することができ、マスクブランクの品質の低下を抑制することができる。
【0062】
第2金属層15の表面の好ましい粗さは、上述の導電性層16の表面粗さ同様に定義され、Raが0.7nm以下であることが好ましい。導電性層16の表面に第2金属層15が形成される構成の場合には、第2金属層15の粗さが導電性層16の粗さとなる。
【0063】
なお、導電性層16において、第2金属層15上に他の層が形成される場合には、導電性層16の厚さは他の層の表面形状に依存する。このため、導電性層16の表面に第2金属層15以外の他の層が形成される場合には、第2金属層15の表面の粗さは特に問わない。但し、この構成の場合にも、第2金属層15の表面が平滑な程この上層の表面も平滑になりやすいため、第2金属層15も平滑に形成されていることが好ましい。
【0064】
平滑性の高い第2金属層15を形成するためには、第2金属層15をアルミニウムよりも高融点の金属で形成することが好ましい。このような高融点金属は、スパッタ等による成膜時に、クラスタではなく、さらに細かい微粒子として基板上に堆積される。このため、成膜面において金属の粒塊が発生しづらく、アルミニウムからなる第1金属層14よりも、面方向に均一な厚さの膜が形成されやすい。
【0065】
そこで、アルミニウムからなる第1金属層14上に、アルミニウムよりも高融点の金属からなる第2金属層15を設けることにより、アルミニウムからなる第1金属層14の表面の凹凸を、高融点の金属からなる第2金属層15で平滑化することができる。このように、高融点の金属からなる第2金属層15を用いて導電性層16の表面を平滑化することにより、マスクブランクの検査において、導電性層16の厚さの測定を容易にし、マスクブランクの品質の低下を抑制することができる。
【0066】
このような第2金属層15としては、アルミニウムを主成分とする第1金属層14の保護層として機能する金属材料であれば、特に限定されることなく使用することができる。特に、成膜性等を考慮すると、第4属元素から第6属元素から選ばれる1種以上の金属を含むことが好ましい。
また、同一真空下を維持し状態でスパッタ成膜が可能な金属材料という観点からは、例えば、モリブデン、タングステン、チタン、及び、クロムを用いることが好ましい。
さらに、アルミニウムよりも融点が高い金属材料という観点からは、第2金属層15がモリブデン、タングステン、タンタル、及び、ニオブから構成されることが好ましい。
特に、上記の成膜性、酸化防止性能、及び、平滑性等を考慮すると、第2金属層15をモリブデンで形成することが好ましい。
これらの材料を用いて第2金属層15を形成することにより、第1金属層14を構成するアルミニウムの酸化を防ぐことができるとともに、導電性層16の表面の平滑性を高めることが可能となる。
【0067】
第2金属層15の厚さは、1〜5nmであることが好ましい。第2金属層15が薄すぎると、第1金属層14の酸化抑制と、導電性層16の表面の平滑化が不十分となる可能性がある。また、第2金属層15が厚すぎると、導電性層16を除去する際に、導電性層16の残渣が発生しやすくなる。また、導電性層16の厚さが大きくなりすぎるため、マスクブランクの微細なパターンの形成に不利となる。
【0068】
第2金属層15の表面には自然酸化による金属の酸化物が形成される。しかしながら、モリブデン、タングステン、チタン、及び、クロム等の金属であれば酸化物が導電性を有するため、また、表面の自然酸化膜以外の部分は酸化されていない金属の状態が維持されるため、5nm以下の厚さであっても充分な導電性が維持できる。
【0069】
[効果]
上述の導電性層16の構成によれば、まず、レジスト層の上にアルミニウムからなる第1金属層14が設けられる。第1金属層に適用されるアルミニウムは、導電性が高いため、薄く形成しても充分な導電性を得られる。例えば、5nm以下の層であっても導電性が十分に確保される。このため、第1金属層14が薄い層である場合にも、電子線照射の際に生じるレジスト層の帯電を効果的に除電することが可能となり、電子線照射によるチャージアップを抑制することが可能となる。
【0070】
また、第1金属層としてアルミニウムを主成分とする層を有することにより、チャージアップを抑制するための導電性層として有機導電性層を用いた場合よりも、導電性層を薄く形成することが可能となる。このため、有機導電性層等が形成されている場合に比べて、マスクブランクに微細なパターンを良好に施しやすくなり、電子線照射によるパターン描画の際の導電性を飛躍的に向上させられる。
【0071】
[レジスト層付きマスクブランクの変形例]
次に、レジスト層付きマスクブランクの変形例について説明する。図2に、レジスト層付きマスクブランク変形例の概略断面図を示す。図2に示す、レジスト層付きマスクブランク20は、基板11の主表面に薄膜12が形成され、薄膜12の上にレジスト層13が形成されている。さらに、レジスト層13上に、水溶性樹脂層21が形成され、水溶性樹脂層21上に第1金属層14と第2金属層15とからなる導電性層16が形成されている。
【0072】
なお、このレジスト層付きマスクブランク20は、水溶性樹脂層21が形成されていることを除き、上述の図1に示すレジスト層付きマスクブランク10と同様の構成である。このため、以下の説明では、水溶性樹脂層21に係わる構成のみを説明し、図1に示すレジスト層付きマスクブランク10と同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0073】
(1−D)水溶性樹脂層(有機導電性層)
水溶性樹脂層21はレジスト層13の主表面に形成される。水溶性樹脂層21は、水溶性を有することにより、水溶性樹脂層21の上に形成された導電性層16が、水やアルカリ性溶液等を用いたプレリンスや現像よる除去性を高めることができる。
【0074】
水溶性樹脂層21としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリエチレンオキシド(PEO)、導電性ポリマーであるポリアニリン等が挙げられる。
【0075】
なお、上記の水溶性樹脂層21はレジスト層13の主表面を覆うように形成することが好ましく、さらに、側面まで覆うように形成することが好ましい。導電性層16も同様に、レジスト層13や水溶性樹脂層21の主表面、さらに側面まで覆うように形成することが好ましい。このように水溶性樹脂層21や導電性層16を形成することにより、主表面以外の部分においてアースと接触させて除電を行うことが可能となり、作業性が向上する。
【0076】
〈2.レジスト層付きマスクブランクの製造方法〉
次に、上述のレジスト層付きマスクブランクの製造方法について、図3を用いて説明する。図3は、上述の図2に示すレジスト層付きマスクブランク20についての製造方法を示す断面概略図である。なお、上述の図1に示す構成のレジスト層付きマスクブランク10の製造においては、後述する水溶性樹脂層21の形成工程は行わない。図1に示す構成のレジスト層付きマスクブランク10の製造では、水溶性樹脂層21の形成工程を除く以外は、図2に示すレジスト層付きマスクブランク20の製造と同様に行なうことができる。
【0077】
また、以下のレジスト層付きマスクブランク10の製造方法では、基板11を準備し、この基板11の上に薄膜12を成膜する例を示すが、あらかじめ薄膜12が形成されたマスクブランク19を準備し、準備したマスクブランク19上にレジスト層13を形成してもよい。
【0078】
(2−A)薄膜付基板(マスクブランク)準備工程
まず、石英ガラス等からなる基板11を準備する。次に、基板11の主表面に対し、光半透過層17及び遮光層18からなる薄膜12を形成する。具体的な構成や準備の手法は、公知の手法を用いることができる。
【0079】
(2−B)レジスト層形成工程
次に、基板11上に形成された薄膜12の主表面に対し、ポジ型のレジスト液を用いてレジスト層13を形成する。具体的な手法は、公知の手法を用いることができる。例えば、レジスト液をスピンコートにより薄膜12の主表面に塗布し、ベーク処理を行う。これにより、薄膜12を覆うレジスト層13を形成することができる。
【0080】
(2−C)水溶性樹脂層形成工程
次に、レジスト層13の主表面に対し、有機導電性ポリマーを用いて水溶性樹脂層21を形成する。具体的な手法は、公知の手法を用いることができる。例えば、レジスト層13の主表面に水溶性樹脂原料液をスピンコートにより塗布する。そして、粗乾燥を行い、レジスト層13を覆うように水溶性樹脂層21を形成する。なお、図1に示す、レジスト層付きマスクブランク10のような水溶性樹脂層21を設けない構成の場合には、この水溶性樹脂層形成工程を行わなくてもよい。
【0081】
(2−D)導電性層形成工程
次に、水溶性樹脂層21の主表面に対し導電性層16を形成する。導電性層16の形成では、先にアルミニウムからなる第1金属層14を形成し、第1金属層14を形成した後、アルミニウム以外の金属からなる第2金属層15を形成する。第1金属層14の形成から、第2金属層15の形成までは、第1金属層14の表面にアルミニウムの酸化膜が形成されないように、大気曝露や、酸素ガス雰囲気への曝露を行なわずに、連続して形成することが好ましい。
【0082】
アルミニウムからなる第1金属層14は、公知の手法を用いて形成することができ、例えば、スパッタリング成膜により形成してもよく、また、真空蒸着法により形成してもよい。アルミニウム以外の金属からなる第2金属層15も同様に、上述の金属材料を用いて、公知の手法により形成することができる。例えば、スパッタリング成膜により形成してもよく、また、真空蒸着法により形成してもよい。好ましくは、第1金属層14及び第2金属層15共に、イオンビームスパッタ法を用いて形成することが好ましい。
【0083】
以上により、レジスト層付きマスクブランク10を作製することができる。なお、これらの工程に加えて、レジスト層付きマスクブランクの作製に必要な洗浄・乾燥工程等を適宜行うこともできる。
【0084】
〈3.転写用マスクの製造方法〉
上述の実施形態のレジスト層付きマスクブランクから転写用マスクを作製することもできる。転写用マスクは、上述のマスクブランクにおいて、少なくとも、所定の凹凸パターンが形成された薄膜を備える。
【0085】
転写用マスクの作製は、以下の方法で行なうことができる。
上記のレジスト層付きマスクブランクに対し、所定のパターンに対応する電子線照射による露光(描画)を行った後、現像によりレジストパターンを形成するパターン形成工程を行う。なお、除電の具体的な手法としては上記の手法に加え、公知の手法を用いても構わない。最終的には所定の凹凸パターンを有する薄膜を作製する。なお、ここでいうパターン形成工程は、レジストパターンを形成することを指しても構わないし、さらに、薄膜及び基板そのものに対して凹凸パターンを形成してもよい。この場合においても、転写用マスクの作製に必要な洗浄・乾燥工程等を適宜行うこともできる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例により、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。
【0087】
〈実施例1〉
[マスクブランクの製造]
(薄膜付き基板の作製)
まず、透光性基板として、サイズ6インチ角、厚さ0.25インチの合成石英ガラス基板を準備した。
【0088】
次に、準備した透光性基板上に、以下の方法で光半透過層を作製した。半透過膜の作製は、枚葉式スパッタ装置を用いて、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)との混合ターゲット(Mo:Si=10mol%:90mol%)と、アルゴン(Ar)、窒素(N)及びヘリウム(He)の混合ガス(ガス流量比 Ar:N:He=5:49:46)からなるスパッタリングガスとを用いて、ガス圧0.3Pa、DC電源の電力3.0kWで反応性スパッタリング(DCスパッタリング)を行なった。これにより、モリブデン、シリコン及び窒素からなるMoSiN膜を69nmの膜厚で形成した。
【0089】
さらに、上記MoSiN膜が形成された基板に対して、加熱炉を用いて、大気中で加熱温度を450℃、加熱時間を1時間として、加熱処理を行い、光半透過層を作製した。なお、このMoSiN膜は、ArFエキシマレーザーにおいて、透過率は6.16%、位相差が184.4度であった。
【0090】
次に、上記光半透過層の上に、以下の方法で遮光層を作製した。
まず、クロム(Cr)のスパッタターゲットと、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO)、窒素(N)及びヘリウム(He)の混合ガス(ガス流量比 Ar:CO:N:He=20:35:10:30)からなるスパッタリングガスとを用いて、ガス圧0.2Pa、DC電源の電力1.7kWで反応性スパッタリング(DCスパッタリング)を行なった。これにより、膜厚30nmのCrOCN膜を形成した。
さらに、スパッタリングガスをアルゴン(Ar)と窒素(N)との混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:N=25:5)とし、ガス圧0.1Pa、DC電源の電力1.7kWで反応性スパッタリング(DCスパッタリング)を行い、膜厚4nmのCrN膜を形成した。
最後に、スパッタリングガスをアルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO)、窒素(N)及びヘリウム(He)の混合ガス(ガス流量比 Ar:CO:N:He=20:35:5:30)とし、ガス圧0.2Pa、DC電源の電力1.7kWで反応性スパッタリング(DCスパッタリング)を行い、膜厚14nmのCrOCN膜を形成した。
以上の工程により、合計膜厚48nmの3層積層構造のクロム系遮光層を作製した。なお、光半透過層と遮光層とを合わせたときの光学濃度を3.0(λ=193nm)とし、露光光の波長(λ=193nm)に対する遮光層の表面反射率は20%であった。
【0091】
(レジスト層形成)
上述の方法で作製した薄膜の表面に、化学増幅型ポジレジスト(富士フイルムエレクトロマテリアル社製 PRL009S)をスピンコート法により塗布し、ベーク処理(プリベイク)を140℃で600秒間行い、膜厚120nmのレジスト層を形成した。
【0092】
(導電性層の形成)
ベーク処理(プリベイク)後のレジスト層上に、アルミニウムターゲットを用いたイオンビームスパッタリング法により、アルミニウムからなる第1金属層を厚さ7nmで形成した。
さらに、第1金属層上に、モリブデンターゲットを用いたイオンビームスパッタリング法により、モリブデンからなる第2金属層を厚さ3nmで形成した。
以上の工程により、第1金属層と第2金属層とからなる、表面抵抗がおよそ50×10Ω/sq.の導電性層を作製した。
また、以上の工程により、薄膜付き基板上に、レジスト層と導電性層とを備える実施例1のマスクブランクを作製した。
【0093】
〈実施例2〉
[マスクブランクの製造]
上述の実施例1と同様の方法で薄膜付き基板、レジスト層を形成した後、下記の方法で水溶性樹脂層を形成した。さらに、レジスト層上に形成するアルミニウムからなる第1金属層の厚さを6nmとした以外は、上述の実施例1と同様の方法で導電性層を作製し、薄膜付き基板上に、レジスト層と導電性層とを備える実施例2のマスクブランクを作製した。
【0094】
(水溶性樹脂層の形成)
ベーク処理(プリベイク)後のレジスト層上に、ポリアニリン系の有機導電性樹脂膜(三菱レイヨン社製 アクアセーブ)をスピンコート法により塗布し、70℃で粗乾燥を行い、有機導電性樹脂からなる、表面抵抗がおよそ10×10Ω/sq.膜厚10nmの水溶性樹脂層を形成した。
【0095】
〈比較例1〉
[マスクブランクの製造]
上述の実施例2と同様の方法で薄膜付き基板、レジスト層、及び、水溶性樹脂層を形成した後、下記の方法で第1金属層のみからなる導電性層を形成し、比較例1のマスクブランクを作製した。
【0096】
(導電性層の形成)
粗乾燥後の水溶性樹脂層上に、アルミニウムターゲットを用いたイオンビームスパッタリング法により、アルミニウムからなる第1金属層を厚さ10nmで形成し、第1金属層のみからなる導電性層を作製した。
【0097】
<評価>
実施例1、実施例2及び比較例1のレジスト層付きマスクブランクのレジスト層に対し、エリオニクス社製の電子線描画装置を用いてパターンを描画した。なお、パターンは、レジストパターンの凸部(ライン)の幅(ハーフピッチ)が30nm〜90nmの範囲の各々の値、ラインとスペースの比が1:1となるように露光した。描画後にベーク処理(ポストベーク)を110℃で600秒間行なった。
【0098】
その後、実施例1及び実施例2については、プレリンスを行い、導電性層を純水(イオン交換水)又はアルカリ溶液により除去した。それに続いて現像を行った。現像は、5mL/秒で現像液(THAM:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)を基板に供給して行った。
その後、高速回転で60秒間の乾燥回転を行い、自然乾燥させた。なお、レジストパターンの除去以降の工程は行わなかった。
【0099】
得られたレジストパターンについて電子顕微鏡にて観察しところ、実施例1及び実施例2では全てサイズのハーフピッチにおいて良好に所定の位置にパターンを形成することができていた。このことから、実施例1及び実施例2では、レジストパターン形成時の帯電が速やかに解消されていることが分かった。
【0100】
一方、比較例1では、ハーフピッチが70nmよりも小さい場合に描画されるべき所定位置から実際に形成したパターンの位置がずれる現象が生じた。また、導電性層の表面状態を確認したところ、表面にアルミニウムの酸化物層が形成され、表面粗さが増していた。
【0101】
このことから、マスクブランクの表面にアルミニウム層が露出する構成の場合には、アルミニウムの酸化により、電子線描画時の帯電を解消できず、電子線描画によるパターニングが適用できない。
【0102】
なお、本発明は上述の実施形態例において説明した構成に限定されるものではなく、その他本発明構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0103】
10 レジスト層付きマスクブランク、11 基板、12 薄膜、13 レジスト層、14 第1金属層、15 第2金属層、16 導電性層、17 光半透過層、18 遮光層、19 マスクブランク、20 レジスト層付きマスクブランク、21 水溶性樹脂層
図1
図2
図3