特許第6556044号(P6556044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556044
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】移動式生産設備室及び生産システム
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/00 20060101AFI20190729BHJP
   B61D 27/00 20060101ALI20190729BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20190729BHJP
【FI】
   B61B13/00 V
   B61D27/00 S
   G06Q50/04
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-243212(P2015-243212)
(22)【出願日】2015年12月14日
(65)【公開番号】特開2017-111485(P2017-111485A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】田村 圭二
(72)【発明者】
【氏名】仲山 賢治
【審査官】 諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−242419(JP,A)
【文献】 特開2005−262935(JP,A)
【文献】 特開2003−174073(JP,A)
【文献】 特開2001−354302(JP,A)
【文献】 特開2000−142211(JP,A)
【文献】 特開平05−310323(JP,A)
【文献】 特開平05−031353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/00
B61D 27/00
B65G 49/00
E04H 5/02
F24F 7/06
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産設備を収容したクリーンルームと、
前記クリーンルームを自走により移動させる移動部と、
前記移動部により製造室に移動した場合に、前記製造室及び前記クリーンルームの外部に対する気密性を保ちつつ、前記製造室の内部と前記クリーンルームの内部とが連通するように前記製造室と結合する結合部と、を備え、
前記結合部と前記製造室とが結合した場合に、前記結合部を介して、前記生産設備により処理される前の被処理物が前記製造室の内部から前記クリーンルームの内部に移動可能であり、前記生産設備により処理された後の処理物が前記クリーンルームの内部から前記製造室に移動可能である、移動式生産設備室。
【請求項2】
生産設備を収容したクリーンルームと、
前記クリーンルームを自走により移動させる移動部と、
前記移動部により製造室に移動した場合に、前記製造室及び前記クリーンルームの外部に対する気密性を保ちつつ、前記製造室の内部と前記クリーンルームの内部とが連通するように前記製造室と結合する結合部と、を有し、
前記結合部と前記製造室とが結合した場合に、前記結合部を介して、前記生産設備により処理される前の被処理物が前記製造室の内部から前記クリーンルームの内部に移動可能であり、前記生産設備により処理された後の処理物が前記クリーンルームの内部から前記製造室の内部に移動可能である、移動式生産設備室と、
汚染を防止しつつ前記被処理物及び前記処理物を収容可能であり、前記移動式生産設備室が前記移動部により移動してきた場合に、前記結合部と結合する前記製造室と、
を備えた生産システム。
【請求項3】
前記移動式生産設備室が前記移動部により移動してきた場合に、前記生産設備を洗浄する洗浄施設をさらに備えた、請求項2に記載の生産システム。
【請求項4】
第1工程を行う第1の生産設備を収容した第1のクリーンルームと、
前記第1のクリーンルームを自走により移動させる第1の移動部と、
前記第1の移動部により製造室に移動した場合に、前記製造室及び前記第1のクリーンルームの外部に対する気密性を保ちつつ、前記製造室の内部と前記第1のクリーンルームの内部とが連通するように前記製造室と結合する第1の結合部と、を有し、
前記第1の結合部と前記製造室とが結合した場合に、前記第1の結合部を介して、前記第1の生産設備の前記第1工程により処理される前の前記第1工程の被処理物が前記製造室の内部から前記第1のクリーンルームの内部に移動可能であり、前記第1の生産設備の前記第1工程により処理された後の前記第1工程の処理物が前記第1のクリーンルームの内部から前記製造室の内部に移動可能である、第1の移動式生産設備室と、
前記第1工程の後の第2工程を行う第2の生産設備を収容した第2のクリーンルームと、
前記第2のクリーンルームを自走により移動させる第2の移動部と、
前記第2の移動部により製造室に移動した場合に、前記製造室及び前記第2のクリーンルームの外部に対する気密性を保ちつつ、前記製造室の内部と前記第2のクリーンルームの内部とが連通するように前記製造室と結合する第2の結合部と、を有し、
前記第2の結合部と前記製造室とが結合した場合に、前記第2の結合部を介して、前記第2の生産設備の前記第2工程により処理される前の前記第2工程の被処理物である前記第1工程の処理物が前記製造室の内部から前記第2のクリーンルームの内部に移動可能であり、前記第2の生産設備の前記第2工程により処理された後の前記第2工程の処理物が前記第2のクリーンルームの内部から前記製造室の内部に移動可能である、第2の移動式生産設備室と、
汚染を防止しつつ前記第1工程の被処理物、前記第1工程の処理物及び前記第2工程の処理物を収容可能であり、前記第1の移動式生産設備室が前記第1の移動部により移動してきた場合に、前記第1の結合部と結合し、前記第2の移動式生産設備室が前記第2の移動部により移動してきた場合に、前記第2の結合部と結合する前記製造室と、を備え、
前記第1の移動式生産設備室が前記第1の移動部により前記製造室に移動し、前記第1の結合部と前記製造室とが結合し、前記第1の結合部を介して前記製造室に収容された前記第1工程の被処理物が前記製造室の内部から前記第1のクリーンルームの内部に移動させられ、前記第1の結合部を介して前記第1工程の処理物が前記第1のクリーンルームの内部から前記製造室の内部に移動させられ、前記第1工程の処理物が前記製造室の内部に収容され、
前記第1の結合部と前記製造室とが分離した後に、前記第2の移動式生産設備室が前記第2の移動部により前記製造室に移動し、前記第2の結合部と前記製造室とが結合し、前記第2の結合部を介して前記製造室に収容された前記第2工程の被処理物である前記第1工程の処理物が前記製造室の内部から前記第2のクリーンルームの内部に移動させられ、前記第2の結合部を介して前記第2工程の処理物が前記第2のクリーンルームの内部から前記製造室の内部に移動させられ、前記第2工程の処理物が前記製造室の内部に収容される、生産システム。
【請求項5】
前記第1の移動式生産設備室が前記第1の移動部により移動してきた場合に、前記第1の生産設備を洗浄し、前記第2の移動式生産設備室が前記第2の移動部により移動してきた場合に、前記第2の生産設備を洗浄する洗浄施設をさらに備えた、請求項4に記載の生産システム。
【請求項6】
生産設備を収容したクリーンルームと、
前記クリーンルームを自走により移動させる移動部と、
前記移動部により第1の製造室に移動した場合に、前記第1の製造室及び前記クリーンルームの外部に対する気密性を保ちつつ、前記第1の製造室の内部と前記クリーンルームの内部とが連通するように前記第1の製造室と結合し、前記移動部により第2の製造室に移動した場合に、前記第2の製造室及び前記クリーンルームの外部に対する気密性を保ちつつ、前記第2の製造室の内部と前記クリーンルームの内部とが連通するように前記第2の製造室と結合する結合部と、を有し、
前記結合部と前記第1の製造室とが結合した場合に、前記結合部を介して、前記生産設備により処理される前の第1品目の被処理物の被処理物が前記第1の製造室の内部から前記クリーンルームの内部に移動可能であり、前記生産設備により処理された後の第1品目の処理物が前記クリーンルームの内部から前記第1の製造室の内部に移動可能であり、前記結合部と前記第2の製造室とが結合した場合に、前記結合部を介して、前記生産設備により処理される前の第2品目の被処理物の被処理物が前記第2の製造室の内部から前記クリーンルームの内部に移動可能であり、前記生産設備により処理された後の第2品目の処理物が前記クリーンルームの内部から前記第2の製造室の内部に移動可能である、移動式生産設備室と、
汚染を防止しつつ前記第1品目の被処理物及び前記第1品目の処理物を収容可能であり、前記移動式生産設備室が前記移動部により移動してきた場合に、前記結合部と結合する前記第1の製造室と、
汚染を防止しつつ前記第2品目の被処理物及び前記第2品目の処理物を収容可能であり、前記移動式生産設備室が前記移動部により移動してきた場合に、前記結合部と結合する前記第2の製造室と、
前記移動式生産設備室が前記移動部により移動してきた場合に、前記生産設備を洗浄する洗浄施設と、を備え、
前記移動式生産設備室が前記移動部により前記第1の製造室に移動し、前記結合部と前記第1の製造室とが結合し、前記結合部を介して前記第1の製造室に収容された前記第1品目の被処理物が前記第1の製造室の内部から前記クリーンルームの内部に移動させられ、前記結合部を介して前記第1品目の処理物が前記クリーンルームの内部から前記第1の製造室の内部に移動させられ、前記第1品目の処理物が前記第1の製造室の内部に収容され、
前記結合部と前記第1の製造室とが分離した後に、前記移動式生産設備室が前記移動部により前記洗浄施設に移動し、前記洗浄施設が前記生産設備を洗浄し、
前記洗浄施設が前記生産設備を洗浄した後に、
前記移動式生産設備室が前記移動部により前記第2の製造室に移動し、前記結合部と前記第2の製造室とが結合し、前記結合部を介して前記第2の製造室に収容された前記第2品目の被処理物が前記第2の製造室の内部から前記クリーンルームの内部に移動させられ、前記結合部を介して前記第2品目の処理物が前記クリーンルームの内部から前記第2の製造室の内部に移動させられ、前記第2品目の処理物が前記第2の製造室の内部に収容される、生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式生産設備室及び生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、製造物を効率良く生産するためのシステムが提案されている。例えば、特許文献1には、ワークを一方向に搬送するコンベヤと、コンベヤの側方に配置され、コンベヤにより所定位置に搬送されたワークに対する作業を行う生産設備とを備えた生産ラインが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−191752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、生産ラインでは、生産ラインの一部の装置の保守等により当該生産ラインが停止する問題がある。このため、生産ラインの保守等における負担の軽減が望まれている。
【0005】
そこで本発明は、生産ラインの保守等における負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、生産設備を収容したクリーンルームと、クリーンルームを自走により移動させる移動部と、移動部により製造室に移動した場合に、製造室及びクリーンルームの外部に対する気密性を保ちつつ、製造室の内部とクリーンルームの内部とが連通するように製造室と結合する結合部とを備え、結合部と製造室とが結合した場合に、結合部を介して、生産設備により処理される前の被処理物が製造室の内部からクリーンルームの内部に移動可能であり、生産設備により処理された後の処理物がクリーンルームの内部から製造室に移動可能である移動式生産設備室である。
【0007】
この構成によれば、移動式生産設備室の移動部は、生産設備を収容したクリーンルームを自走により製造室に移動させる。結合部は、製造室及びクリーンルームの外部に対する気密性を保ちつつ、製造室の内部とクリーンルームの内部とが連通するように製造室と結合する。結合部と製造室とが結合した場合に、結合部を介して、生産設備により処理される前の被処理物が製造室の内部からクリーンルームの内部に移動し、生産設備により処理された後の処理物がクリーンルームの内部から製造室の内部に移動する。これにより、クリーンルームに収容された生産設備により処理を行う場合には、移動式生産設備室が製造室に自走により移動し、生産ラインの保守等を行う場合には、当該移動式生産設備室が任意の場所に自走により移動した後に、クリーンルームに収容された生産設備を交換するか、他の生産設備をクリーンルームに収容した他の移動式生産設備室が製造室に移動すればよいため、生産ラインの生産ラインの保守等における負担を軽減することができる。
【0008】
また、本発明は、生産設備を収容したクリーンルームと、クリーンルームを自走により移動させる移動部と、移動部により製造室に移動した場合に、製造室及びクリーンルームの外部に対する気密性を保ちつつ、製造室の内部とクリーンルームの内部とが連通するように製造室と結合する結合部とを有し、結合部と製造室とが結合した場合に、結合部を介して、生産設備により処理される前の被処理物が製造室の内部からクリーンルームの内部に移動可能であり、生産設備により処理された後の処理物がクリーンルームの内部から製造室の内部に移動可能である移動式生産設備室と、汚染を防止しつつ被処理物及び処理物を収容可能であり、移動式生産設備室が移動部により移動してきた場合に、結合部と結合する製造室とを備えた生産システムである。
【0009】
この構成によれば、生産システムにおいて、移動式生産設備室と、汚染を防止しつつ被処理物及び処理物を収容可能であり、移動式生産設備室が移動部により移動してきた場合に、結合部と結合する製造室とを備える。これにより、移動式生産設備室に搭載された生産設備の交換により、移動式生産設備室と製造室とが結合していない場合には、汚染を防止しつつ被処理物及び処理物を製造室に収容しておくことができ、生産ラインの生産ラインの保守等における負担を軽減することができる。
【0010】
上記本発明の生産システムにおいて、移動式生産設備室が移動部により移動してきた場合に、生産設備を洗浄する洗浄施設をさらに備えることが好適である。
【0011】
この構成によれば、生産システムにおいて、移動式生産設備室が移動部により移動してきた場合に、生産設備を洗浄する洗浄施設をさらに備える。これにより、製造室に収容された被処理物及び処理物の汚染を防止しつつ、生産設備の洗浄を行った際の影響を移動式生産設備室の当該生産設備及び当該生産設備が収容されたクリーンルームに限定することができる。
【0012】
また、本発明は、第1工程を行う第1の生産設備を収容した第1のクリーンルームと、第1のクリーンルームを自走により移動させる第1の移動部と、第1の移動部により製造室に移動した場合に、製造室及び第1のクリーンルームの外部に対する気密性を保ちつつ、製造室の内部と第1のクリーンルームの内部とが連通するように製造室と結合する第1の結合部とを有し、第1の結合部と製造室とが結合した場合に、第1の結合部を介して、第1の生産設備の第1工程により処理される前の第1工程の被処理物が製造室の内部から第1のクリーンルームの内部に移動可能であり、第1の生産設備の第1工程により処理された後の第1工程の処理物が第1のクリーンルームの内部から製造室の内部に移動可能である第1の移動式生産設備室と、第1工程の後の第2工程を行う第2の生産設備を収容した第2のクリーンルームと、第2のクリーンルームを自走により移動させる第2の移動部と、第2の移動部により製造室に移動した場合に、製造室及び第2のクリーンルームの外部に対する気密性を保ちつつ、製造室の内部と第2のクリーンルームの内部とが連通するように製造室と結合する第2の結合部とを有し、第2の結合部と製造室とが結合した場合に、第2の結合部を介して、第2の生産設備の第2工程により処理される前の第2工程の被処理物である第1工程の処理物が製造室の内部から第2のクリーンルームの内部に移動可能であり、第2の生産設備の第2工程により処理された後の第2工程の処理物が第2のクリーンルームの内部から製造室の内部に移動可能である第2の移動式生産設備室と、汚染を防止しつつ第1工程の被処理物、第1工程の処理物及び第2工程の処理物を収容可能であり、第1の移動式生産設備室が第1の移動部により移動してきた場合に、第1の結合部と結合し、第2の移動式生産設備室が第2の移動部により移動してきた場合に、第2の結合部と結合する製造室とを備え、第1の移動式生産設備室が第1の移動部により製造室に移動し、第1の結合部と製造室とが結合し、第1の結合部を介して製造室に収容された第1工程の被処理物が製造室の内部から第1のクリーンルームの内部に移動させられ、第1の結合部を介して第1工程の処理物が第1のクリーンルームの内部から製造室の内部に移動させられ、第1工程の処理物が製造室の内部に収容され、第1の結合部と製造室とが分離した後に、第2の移動式生産設備室が第2の移動部により製造室に移動し、第2の結合部と製造室とが結合し、第2の結合部を介して製造室に収容された第2工程の被処理物である第1工程の処理物が製造室の内部から第2のクリーンルームの内部に移動させられ、第2の結合部を介して第2工程の処理物が第2のクリーンルームの内部から製造室の内部に移動させられ、第2工程の処理物が製造室の内部に収容される生産システムである。
【0013】
この構成によれば、複数の工程による処理が行われる場合には、まず、第1の移動式生産設備室と製造室とが結合し、第1の移動式生産設備室と製造室との間で第1工程の被処理物及び第1工程の処理物の移動が行われ、第1工程の処理物が製造室に収容される。次に、第1の移動式生産設備室と製造室とが分離した後に、第2の移動式生産設備室と製造室とが結合し、第2の移動式生産設備室と製造室との間で第2工程の被処理物である第1工程の処理物及び第2工程の処理物の移動が行われ、第2の処理物が製造室に収容される。第1の移動式生産設備室と製造室とが分離した後には、第1の移動式生産設備室の第1の生産設備の保守等を行ったとしても、第1の生産設備の保守等を行った際の影響は、第1の移動式生産設備室の第1の生産設備及び第1の生産設備が収容された第1のクリーンルームに限定され、第2の移動式生産設備室の第2の生産設備による第2工程の処理は継続して行うことができる。従って、一部の工程の生産設備の保守等を行った際の影響を当該工程の生産設備に限定することができ、生産ラインの保守等における負担を軽減することができる。
【0014】
この場合、第1の移動式生産設備室が第1の移動部により移動してきた場合に、第1の生産設備を洗浄し、第2の移動式生産設備室が第2の移動部により移動してきた場合に、第2の生産設備を洗浄する洗浄施設をさらに備えることが好適である。
【0015】
この構成によれば、製造室に収容された複数の各工程の被処理物及び被処理物の汚染を防止しつつ、一部の工程の生産設備の洗浄を行った際の影響を移動式生産設備室の当該生産設備及び当該生産設備が収容されたクリーンルームに限定することができる。
【0016】
生産設備を収容したクリーンルームと、クリーンルームを自走により移動させる移動部と、移動部により第1の製造室に移動した場合に、第1の製造室及びクリーンルームの外部に対する気密性を保ちつつ、第1の製造室の内部とクリーンルームの内部とが連通するように第1の製造室と結合し、移動部により第2の製造室に移動した場合に、第2の製造室及びクリーンルームの外部に対する気密性を保ちつつ、第2の製造室の内部とクリーンルームの内部とが連通するように第2の製造室と結合する結合部とを有し、結合部と第1の製造室とが結合した場合に、結合部を介して、生産設備により処理される前の第1品目の被処理物の被処理物が第1の製造室の内部からクリーンルームの内部に移動可能であり、生産設備により処理された後の第1品目の処理物がクリーンルームの内部から第1の製造室の内部に移動可能であり、結合部と第2の製造室とが結合した場合に、結合部を介して、生産設備により処理される前の第2品目の被処理物の被処理物が第2の製造室の内部からクリーンルームの内部に移動可能であり、生産設備により処理された後の第2品目の処理物がクリーンルームの内部から第2の製造室の内部に移動可能である移動式生産設備室と、汚染を防止しつつ第1品目の被処理物及び第1品目の処理物を収容可能であり、移動式生産設備室が移動部により移動してきた場合に、結合部と結合する第1の製造室と、汚染を防止しつつ第2品目の被処理物及び第2品目の処理物を収容可能であり、移動式生産設備室が移動部により移動してきた場合に、結合部と結合する第2の製造室と、移動式生産設備室が移動部により移動してきた場合に、生産設備を洗浄する洗浄施設とを備え、移動式生産設備室が移動部により第1の製造室に移動し、結合部と第1の製造室とが結合し、結合部を介して製造室に収容された第1品目の被処理物が第1の製造室の内部からクリーンルームの内部に移動させられ、結合部を介して第1品目の処理物がクリーンルームの内部から第1の製造室の内部に移動させられ、第1品目の処理物が製造室の内部に収容され、結合部と第1の製造室とが分離した後に、移動式生産設備室が移動部により洗浄施設に移動し、洗浄施設が生産設備を洗浄し、洗浄施設が生産設備を洗浄した後に、移動式生産設備室が移動部により第2の製造室に移動し、結合部と第2の製造室とが結合し、結合部を介して製造室に収容された第2品目の被処理物が第2の製造室の内部からクリーンルームの内部に移動させられ、結合部を介して第2品目の処理物がクリーンルームの内部から第2の製造室の内部に移動させられ、第2品目の処理物が製造室の内部に収容される生産システムである。
【0017】
この構成によれば、第1品目を処理してから他の第2品目を処理する場合には、まず、移動式生産設備室と第1の製造室とが結合し、移動式生産設備室と第1の製造室との間で第1品目の被処理物及び第1品目の処理物の移動が行われ、第1品目の処理物が第1の製造室に収容される。次に、移動式生産設備室と第1の製造室とが分離した後に、移動式生産設備室が洗浄施設に移動し、洗浄施設が移動式生産設備室の生産設備を洗浄する。さらに、移動式生産設備室が第2の製造室に移動して、移動式生産設備室と第2の製造室とが結合し、移動式生産設備室と第2の製造室との間で第2品目の被処理物及び第2品目の処理物の移動が行われ、第2品目の処理物が第2の製造室に収容される。移動式生産設備室と第1の製造室とが分離した後には、仮に移動式生産設備室の生産設備の洗浄に加えて第1の製造室の洗浄を行ったとしても、第1の製造室の洗浄を行った際の影響は当該第1の製造室に限定され、移動式生産設備室の生産設備の交換、洗浄等の後に、移動式生産設備室の生産設備及び第2の製造室による第2品目の処理は継続して行うことができる。従って、処理される品目の変更が行われた場合に製造室の洗浄を行った際の影響を当該製造室に限定することができ、生産ラインの組み換えにおける負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の移動式生産設備室及び生産システムによれば、生産ラインの保守等における負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る生産システムを示す平面図である。
図2】(A)は実施形態に係る移動式生産設備室を示す平面図であり、(B)は実施形態に係る移動式生産設備室を示す側面図である。
図3図2(B)の移動式生産設備室の内部を示す側面図である。
図4】他の生産設備を収容した移動式生産設備室の内部を示す側面図である。
図5】移動式生産設備室が製造室と接続された状態を示す平面図である。
図6】移動式生産設備室が製造室と接続された状態を示す側面図である。
図7】被処理物を収容したコンテナが製造室から移動式生産設備室に搬送される状態を示す側面図である。
図8】被処理物を取り出されて空になったコンテナが移動式生産設備室から製造室に搬送される状態を示す側面図である。
図9】処理物を収容するための空のコンテナが製造室から移動式生産設備室に搬送される状態を示す側面図である。
図10】処理物を収容したコンテナが移動式生産設備室から製造室に搬送される状態を示す側面図である。
図11】処理が終了した工程の移動式生産設備室が洗浄室に接続され、次の工程の移動式生産設備室が製造室に移動する状態を示す平面図である。
図12】次の工程の移動式生産設備室が製造室に接続された状態を示す平面図である。
図13】第1品目の処理が終了した移動式生産設備室が洗浄室に接続された状態を示す平面図である。
図14】移動式生産設備室が第2品目の処理のために次の製造室に接続された状態を示す平面図である。
図15】移動式生産設備室が第2品目の処理のために次の製造室と接続された状態を示す側面図である。
図16】他の実施形態に係る生産システムの一階フロアと二階フロアとを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。本実施形態は、医薬品の固形剤の生産を行う移動式生産設備室及び生産システムである。図1に示すように、本実施形態の生産システム1は、複数階層を有する建物の例えば二階の一階層に形成されている。図1において、陰影を付された区域は清浄度管理が行われているクリーンルームであり、陰影を付されていない区域は清浄度管理が行われていない。なお、クリーンルームとは、清浄度管理が行われている限られた空間であって、空気中における浮遊微小粒子、浮遊微生物が限定された清浄度レベル以下に管理され、また、その空間に供給される材料、薬品、水などについても要求される清浄度が保持されている空間を意味する。本実施形態の生産システム1の階層では、医薬品の固形剤を生産するための複数の工程が無人の移動式生産設備室の内部で行われるため、清浄度管理が行われている区域の面積は従来の生産施設に比べて小さくされている。
【0021】
生産システム1は、生産システム1の階層の清浄度管理が行われている区域に、後述する製造室70a〜70n及び洗浄室80a〜80dを備え、生産システム1の階層の清浄度管理が行われていない区域に、後述する移動式生産設備室100a〜100eを備えている。なお、生産システム1は、必ずしも洗浄室80a〜80dを備えていなくとも、少なくとも、一つの移動式生産設備室100aと、一つの製造室70aとを備えていればよい。また、生産システム1は、一つの移動式生産設備室100aと、一つの製造室70aとに加えて、一つの洗浄室80aを備えていてもよい。また、生産システム1は、それぞれ異なる生産設備を有する二つの移動式生産設備室100a,100bと、一つの製造室70aとを備えていてもよい。また、生産システム1は、二つの移動式生産設備室100a,100bと、一つの製造室70aとに加えて、一つの洗浄室80aを備えていてもよい。さらに、生産システム1は、一つの移動式生産設備室100aと、二つの製造室70a,70bとを備えていてもよい。
【0022】
生産システム1は、生産システム1の階層の清浄度管理が行われている区域に通じる階段11と、生産システム1の階層の清浄度管理が行われていない区域に通じる階段12とを備える。生産システム1は、生産システム1の階層の清浄度管理が行われている区域に、エレベータ15を備える。生産システム1は、生産システム1の階層の清浄度管理が行われている区域であって、階段11及びエレベータ15の周辺に、移動式生産設備室100a〜100e、製造室70a〜70n及び洗浄室80a〜80d等の部品を収容する部品室21,22を備えている。平面視で長方形状を有する生産システム1の階層において、階段11、エレベータ15及び部品室21,22は、一方の短辺の位置に沿って配置されている。
【0023】
生産システム1は、生産システム1の階層の清浄度管理が行われていない区域に、生産システム1の階層の空調、照明等を制御する機械室30を備えている。上述したように、本実施形態の生産システム1の階層では、清浄度管理が行われている区域の面積が従来の生産施設に比べて小さい。また、後述するように移動式生産設備室100a〜100eは無人で動作可能であるため、生産システム1の階層の清浄度管理が行われていない区域では、移動式生産設備室100a〜100eの中の清浄度さえ保たれていれば、空調や照明などについて作業員に対する配慮が不要である。移動式生産設備室100a〜100eの運転条件さえ許せば、例えば、夏季等の人間には不快で耐えられない状況でも温度調整は不要である。そのため、本実施形態の生産システム1の階層では、空調負荷は従来の生産施設に比べて低減されている。
【0024】
機械室30は、移動式生産設備室100a〜100e、製造室70a〜70n及び洗浄室80a〜80dの後述する動作を制御する中央制御部31を有している。中央制御部31は、移動式生産設備室100a〜100e、製造室70a〜70n及び洗浄室80a〜80dの動作を任意のコンピュータプログラムに従って自動的に制御する電子計算機を含む。平面視で長方形状を有する生産システム1の階層において、機械室30は、階段11等が配置された側とは反対側の短辺の位置に沿って配置されている。
【0025】
生産システム1は、生産システム1の階層の清浄度管理が行われていない区域に、自動倉庫(製品)41を備える。自動倉庫41は、包装がなされ出荷される前の製品を収容する。製品の包装は、生産システム1の階層とは別の階層であって、例えば、一階の階層の施設により行われる。平面視で長方形状を有する生産システム1の階層において、自動倉庫41は、一方の長辺の位置に沿って配置されており、複数階層を有する建物の全階層にわたって吹き抜けとなっている。
【0026】
生産システム1は、生産システム1の階層の清浄度管理が行われている区域に、クリーン廊下50を備えている。平面視で長方形状を有する生産システム1の階層において、クリーン廊下50は、自動倉庫41が配置されている側とは反対側の長辺の位置と、階段11、エレベータ15及び部品室21,22の建物内側の位置と、自動倉庫41の建物内側の位置とに沿って配置されている。
【0027】
生産システム1は、生産システム1の階層の清浄度管理が行われている区域であって、自動倉庫41に沿ったクリーン廊下50の建物内側に沿った位置に、製造室70a〜70eと、洗浄施設である洗浄室80a〜80dとを備えている。平面視で長方形状を有する生産システム1の階層において、生産システム1は、生産システム1の階層の清浄度管理が行われている区域であって、自動倉庫41が配置されている側とは反対側の長辺の位置に配置されたクリーン廊下50の建物内側の位置に、製造室70f〜70nを備えている。
【0028】
製造室70a〜70nのそれぞれは、汚染を防止しつつ、移動式生産設備室100a〜100eの被処理物及び処理物を収容する。汚染とは、被処理物及び処理物に何らかの物質が付着、混入、発生することなどによって、被処理物及び処理物が本来持っている機能、性能に好ましくない影響が与えられる状態を意味する。また、製造室70a〜70nのそれぞれは、移動式生産設備室100a〜100eが近傍に移動してきた場合に、移動式生産設備室100a〜100eと結合する。製造室70a〜70nのそれぞれは、移動式生産設備室100a〜100eと結合及び接続する部位に関しては、互いに同じ構造を有する。
【0029】
洗浄室80a〜80dのそれぞれは、移動式生産設備室100a〜100eが近傍に移動してきた場合に、移動式生産設備室100a〜100eを洗浄する。例えば、洗浄室80a〜80dのそれぞれは、後述するように、待機エリア92等で型替えを含む改変等が行われる前後の移動式生産設備室100a〜100eを洗浄する。なお、洗浄室80a〜80dのそれぞれは、原則として移動式生産設備室100a〜100eの洗浄を行うが、後述するように、第1品目の処理を終了した移動式生産設備室100a〜100eが第2品目の処理を開始するために洗浄室80a〜80dの近傍に移動してきた場合に、洗浄室80a〜80dのそれぞれは、第1品目の処理から第2品目の処理を行うための移動式生産設備室100a〜100eの生産設備の型替えを含む改変を行ってもよい。洗浄室80a〜80dのそれぞれは、移動式生産設備室100a〜100eと結合及び接続する部位に関しては、互いに同じ構造を有する。
【0030】
生産システム1は、生産システム1の階層の清浄度管理が行われている区域であって、階段11、エレベータ15及び部品室21,22に沿ったクリーン廊下50の建物内側に沿った位置に、自動倉庫(中間製品)42及び準備室60を備えている。自動倉庫42は、包装される前の中間製品を収容する。自動倉庫42は、自動倉庫41と同様に複数階層を有する建物の全階層にわたって吹き抜けとなっている。なお、本実施形態の生産システム1では、原料から中間製品となる前の中間製品は、後述するように、製造室70a〜70nに収容されて、順次処理されるため、中間製品のための倉庫の面積は従来の生産施設に比べて低減されている。準備室60は、例えば、作業員が作業の準備を行うために使用される。
【0031】
平面視で長方形状を有する生産システム1の階層において、生産システム1は、製造室70a〜70n、洗浄室80a〜80d、自動倉庫42及び準備室60によって囲われた区域に、清浄度管理が行われていない移動エリア91を備えている。移動エリア91は、移動式生産設備室100a〜100eが自在に移動できる区域である。
【0032】
生産システム1は、清浄度管理が行われておらず、移動式生産設備室100a〜100eが移動エリア91から移動可能な待機エリア92及び搬出入エリア93を備えている。待機エリア92は、機械室30の近傍の区域である。待機エリア92は、移動式生産設備室100a〜100eの型替えを含む改変、洗浄、点検、交換、追加等のために、移動式生産設備室100a〜100eを一時待機させるための区域である。
【0033】
搬出入エリア93は、階段12の近傍の区域である。搬出入エリア93は、生産システム1の階層に移動式生産設備室100a〜100eを搬入し、生産システム1の階層から移動式生産設備室100a〜100eを搬出するための区域である。例えば、搬出入エリア93は、搬出入エリア93近傍の建物の壁面に搬出入口94を有する。移動式生産設備室100a〜100eは、例えば、搬出入口94から起重機等によって搬出入される。あるいは、移動式生産設備室100a〜100eは、例えば、搬出入口94から地表面に通じるスロープによって搬出入されてもよい。なお、搬出入エリア93には、移動式生産設備室100a〜100eを生産システム1の階層以外の階層に昇降移動させることが可能なエレベータを備えていてもよい。また、搬出入エリア93は、移動式生産設備室100a〜100eの全体の搬出入だけではなく、移動式生産設備室100a〜100eに収容された生産設備等の移動式生産設備室100a〜100eの部品の搬出入に用いられてもよい。
【0034】
生産システム1は、移動エリア91、待機エリア92及び搬出入エリア93に、5種類の移動式生産設備室100a〜100eをそれぞれ複数台備える。5種類の移動式生産設備室100a〜100eは、それぞれ異なる生産設備を収容している。
【0035】
以下、本実施形態の移動式生産設備室100a〜100eについて説明する。以下の説明では、代表例として、移動式生産設備室100cについて主に説明する。図2(A)及び図2(B)に示すように、移動式生産設備室100cは、クリーンルーム101、結合部102、配管103、移動部104及び駆動輪105を備えている。移動式生産設備室100cは、中央制御部31からの無線通信による指令に従って、無人で動作する。
【0036】
移動部104は、クリーンルーム101の下部に配置されている。移動部104は、4つの駆動輪105によりクリーンルーム101を自走により移動させる。移動部104は、駆動輪105を回転動させるための動力モータと、駆動輪105の進行方向を変更するためのサーボモータと、動力モータ、サーボモータ及び移動式生産設備室100cの各部に電力を供給するバッテリと、中央制御部31との無線通信を行う無線通信機を有する。4つの駆動輪105のそれぞれは、各方向に進行方向を向けつつ、異なる回転方向及び回転数で回転可能である。これにより、移動部104は、クリーンルーム101を移動エリア91、待機エリア92及び搬出入エリア93の任意の位置に移動させることが可能である。また、移動部104は、クリーンルーム101の移動を伴わず、クリーンルーム101を垂直軸周りに回転動させることが可能である。
【0037】
図3に示すように、クリーンルーム101は、伸縮式ベルトコンベヤ110、リフター120及び生産設備130cを収容している。伸縮式ベルトコンベヤ110は、処理物及び被処理物を搬送する搬送路115を有する。伸縮式ベルトコンベヤ110は、移動式生産設備室100cが製造室70a〜70nと結合した場合に、結合部102を介して製造室70a〜70nの内部までその搬送路115を伸長させる。製造室70a〜70nの内部まで伸びた伸縮式ベルトコンベヤ110の搬送路115は、結合部102を介して、生産設備130cにより処理される前の被処理物を製造室70a〜70nの内部からクリーンルーム101の内部に移動させ、生産設備130cにより処理された後の処理物をクリーンルーム101の内部から製造室70a〜70nの内部に移動させる。
【0038】
リフター120は、伸縮式ベルトコンベヤ110により製造室70a〜70nから移動させられた被処理物を持ち上げて生産設備130cに投入し、生産設備130cにより処理された処理物を伸縮式ベルトコンベヤ110の搬送路115に載置する。リフター120は、例えば、処理物及び被処理物のコンテナを把持しつつ上下動及び回転動させることが可能なロボットアームを有する装置を適用することができる。生産設備130cは、医薬品の固形剤の生産における打錠工程を行う。
【0039】
結合部102は、移動式生産設備室100cが移動部104により製造室70a〜70nの近傍に移動した場合に、製造室70a〜70n及びクリーンルーム101の外部に対する気密性を保ちつつ、製造室70a〜70nの内部とクリーンルーム101の内部とが連通するように製造室70a〜70nと結合する。
【0040】
図2(A)及び図2(B)に示すように、配管103は、移動式生産設備室100cが移動部104により製造室70a〜70nの近傍に移動した場合に、製造室70a〜70nの配管と接続される。製造室70a〜70nの配管と接続された配管103は、クリーンルーム101の清浄度管理に必要な吸気及び排気や、生産設備130cの動作に必要な物質の補給及び排出のために用いられる。
【0041】
また、配管103は、移動式生産設備室100cが移動部104により洗浄室80a〜80dの近傍に移動した場合に、洗浄室80a〜80dの配管と接続される。洗浄室80a〜80dの配管と接続された配管103は、クリーンルーム101及び生産設備130cの洗浄に必要な洗浄液等の注入及び排出のために用いられる。なお、図2(A)及び図2(B)に示す配管103の数量や配置等の構成はあくまでも例示であり、適宜変更してもよい。また、移動式生産設備室100a〜100eのそれぞれの配管103は、製造室70a〜70n及び洗浄室80a〜80dと互いに接続する部位の構成を共通化するために同じ数量、配置等の構成とし、移動式生産設備室100a〜100eのそれぞれにおいて、実際には使用されない配管103を含んでいてもよい。
【0042】
なお、配管103は、製造室70a〜70n及び洗浄室80a〜80dの配管と接続される際に、製造室70a〜70n及び洗浄室80a〜80dから、移動式生産設備室100cの動作のための電力を供給するためや、移動部104のバッテリに充電を行うための導電路としても用いられる。あるいは、配管103は、製造室70a〜70n及び洗浄室80a〜80dから電力を供給されるためのコネクタ等を別途備えていてもよい。
【0043】
他の移動式生産設備室100a,100b,100d,100eのぞれぞれは、クリーンルーム101に収容される生産設備やリフターを除いて移動式生産設備室100cと互いに同様の構造を有する。図4に示すように、移動式生産設備室100dのクリーンルーム101には、生産設備130dが収容されている。生産設備130dは、医薬品の固形剤の生産における打錠工程の後に行われるコーティング工程を行う。
【0044】
本実施形態では、移動式生産設備室100aのクリーンルーム101には、医薬品の固形剤の生産における造粒工程を行う生産設備が収容されている。移動式生産設備室100bのクリーンルーム101には、医薬品の固形剤の生産における造粒工程の後に行われる混合工程を行う生産設備が収容されている。移動式生産設備室100eのクリーンルーム101には、医薬品の固形剤の生産におけるコーティング工程の後に行われる印刷・検査工程を行う生産設備が収容されている。なお、移動式生産設備室100a〜100eのそれぞれは、製造室70a〜70n及び洗浄室80a〜80dと結合する部位に関しては、互いに同じ構造を有していればよく、それ以外の部位については、互いに異なる構造を有していてもよい。
【0045】
以上に説明した生産システム1の階層において、作業員は、主に移動式生産設備室100a〜100eを除いた清浄度管理が行われている区域で通常の製造ラインに関する作業を行い、移動エリア91、待機エリア92及び搬出入エリア93等の清浄度管理が行われていない区域では通常の製造ラインに関する作業を行わず、移動式生産設備室100a〜100e等の機械的なメンテナンスに関する作業を行う。
【0046】
以下、本実施形態における移動式生産設備室100a〜100e及び生産システム1の動作について説明する。以下の説明では、説明の簡略化のため、製造室70cと、第1の移動式生産設備室である移動式生産設備室100cと、第2の移動式生産設備室である移動式生産設備室100dとによって、任意の品目(第1品目)の固形剤の製造における打錠工程とコーティング工程とを行う動作について説明する。図5に示すように、移動式生産設備室100cが、第1の移動部である移動部104により、製造室70cの近傍に移動する。移動式生産設備室100cの第1の結合部である結合部102と製造室70cとが結合する。
【0047】
図6に示すように、製造室70cには、制御盤74と、制御盤74を操作する作業員200とが配置されている。製造室70cには、移動式生産設備室100cの第1の生産設備である生産設備130cの打錠工程(第1工程)により処理される前の被処理物(第1工程の被処理物)を内部に収容したステンレス製のコンテナ310が汚染を防止しつつ収容されている。また、製造室70cには、生産設備130cの打錠工程により処理された後の処理物(第1工程の処理物)を内部に収容するための空のステンレス製のコンテナ311が汚染を防止しつつ収容されている。製造室70c及び第1のクリーンルームであるクリーンルーム101の外部に対する気密性を保ちつつ、製造室70cの内部とクリーンルーム101の内部とが連通するように、移動式生産設備室100cの結合部102と製造室70cの結合部72とが互いに結合する。移動式生産設備室100cの配管103と製造室70cの配管73とが互いに結合する。
【0048】
図7に示すように、移動式生産設備室100cの伸縮式ベルトコンベヤ110の搬送路115が、結合部102及び結合部72を介して製造室70cの内部まで伸びる。伸縮式ベルトコンベヤ110の搬送路115により、結合部72及び結合部102を介して、製造室70cの被処理物を収容したコンテナ310が製造室70cの内部からクリーンルーム101の内部に移動させられる。リフター120により生産設備130cにコンテナ310に収容された被処理物が投入される。図8に示すように、伸縮式ベルトコンベヤ110の搬送路115により、結合部102及び結合部72を介して、被処理物を取り出されて空になったコンテナ310がクリーンルーム101の内部から製造室70cの内部に移動させられる。リフター120により生産設備130cに投入された被処理物は、生産設備130cの打錠工程により処理される。
【0049】
図9に示すように、伸縮式ベルトコンベヤ110の搬送路115により、結合部72及び結合部102を介して、空のステンレス製のコンテナ311が製造室70cの内部からクリーンルーム101の内部に移動させられる。生産設備130cの打錠工程により処理された後の処理物はコンテナ311に収容される。図10に示すように、伸縮式ベルトコンベヤ110の搬送路115により、結合部102及び結合部72を介して、打錠工程により処理された後の処理物を収容したコンテナ311がクリーンルーム101の内部から製造室70cの内部に移動させられる。打錠工程により処理された後の処理物を収容したコンテナ311が製造室70cの内部に収容される。
【0050】
図11に示すように、移動式生産設備室100cは、移動部104により洗浄室80dの近傍に移動する。配管103が洗浄室80dと接続される。配管103を介して洗浄液等が注入及び排出されることにより、移動式生産設備室100cの生産設備及びクリーンルーム101が洗浄される。なお、移動式生産設備室100cが製造室70c等と結合する際と同様に、結合部102が洗浄室80dと結合され、結合部102を介して移動式生産設備室100cの洗浄が行われてもよい。また、移動式生産設備室100cの結合部102と製造室70cとが分離した後に、第2の移動式生産設備室である移動式生産設備室100dが第2の移動部である移動部104により製造室70cに移動する。
【0051】
図12に示すように、移動式生産設備室100dの第2の結合部である結合部102と製造室70cとが結合する。その後は、上述した移動式生産設備室100cと同様に、結合部102を介して製造室70cに収容されたコーティング工程(第2工程)の被処理物である打錠工程の第1品目の処理物が製造室70cの内部から第2のクリーンルームである移動式生産設備室100dのクリーンルーム101の内部に移動させられる。第2の生産設備である移動式生産設備室100dの生産設備130dにより、コーティング工程が行われる。結合部102を介してコーティング工程の処理物が移動式生産設備室100dのクリーンルーム101の内部から製造室70cの内部に移動させられ、コーティング工程の処理物が製造室70cの内部に収容される。
【0052】
上述した打錠工程を行う移動式生産設備室100cと同様の動作が、打錠工程の前段の混合工程を行う移動式生産設備室100bによっても行われる。また、同様の動作が、混合工程の前段の造粒工程を行う移動式生産設備室100aによっても行われる。さらに、同様の動作が、上述したコーティング工程の後段の印刷・検査工程を行う移動式生産設備室100eによっても行われる。つまり、移動式生産設備室100a〜100eのそれぞれは、順次、製造室70cに移動して各工程を行った後に洗浄室80dに移動し、洗浄を行う。製造室70cでは、造粒工程、混合工程、打錠工程、コーティング工程及び印刷・検査工程が順次行われて、第1品目の固形剤が製造される。
【0053】
それぞれ複数台備えられた移動式生産設備室100a〜100eにより、他の製造室70a,70b,70d〜70nにおいて、上述した動作が行われて医薬品が製造されてもよい。また、製造室70a〜70nにおいて、それぞれ異なる品目の医薬品が製造されてもよい。また、移動式生産設備室100a〜100eの洗浄は、他の洗浄室80a〜80cにおいて行われてもよい。移動式生産設備室100a〜100eの型替えを含む改変及び洗浄は、任意のタイミングで行ってもよい。なお、移動式生産設備室100a〜100eは無人で動作可能であるため、例えば、生産設備130cの打錠工程及び生産設備130dのコーティング工程等が行われている時間に、作業員200は必ずしも製造室70cに常駐している必要は無い。
【0054】
次に、任意の品目(第1品目)を製造してから他の品目(第2品目)の製造に切り替える際の動作について説明する。以下の説明では、説明の簡略化のため、移動式生産設備室100cと、第1の製造室である製造室70cと、第2の製造室である製造室70dとによって、任意の品目(第1品目)の固形剤の製造における打錠工程を行ってから、他の品目(第2品目)の固形剤の製造における打錠工程を行う動作について説明する。
【0055】
図13に示すように、上述した動作と同様に、移動式生産設備室100cが移動部104により第1の製造室である製造室70cに移動し、結合部102と製造室70cとが結合し、結合部102を介して製造室70cに収容された第1品目の被処理物が製造室70cの内部からクリーンルーム101の内部に移動させられ、結合部102を介して第1品目の処理物がクリーンルーム101の内部から製造室70cの内部に移動させられ、第1品目の処理物が製造室70cの内部に収容される。
【0056】
移動式生産設備室100cの結合部102と製造室70cとが分離した後に、移動式生産設備室100cが移動部104により洗浄室80dに移動し、洗浄室80dが移動式生産設備室100cの生産設備130c及びクリーンルーム101を洗浄する。第1品目の固形剤の製造は終了するため、製造室70cの内部の洗浄は適宜行うことができる。また、移動式生産設備室100cが移動部104により洗浄室80dに移動した場合に、洗浄室80は、必要に応じて、第1品目の固形剤の製造から第2品目の固形剤の製造に切り替えるための移動式生産設備室100cの型替えを含む改変を行ってもよい。
【0057】
図14に示すように、洗浄室80dが移動式生産設備室100cの生産設備130c及びクリーンルーム101を洗浄した後に、移動式生産設備室100cが移動部104により第2の製造室である製造室70dに移動し、移動式生産設備室100cの結合部102と製造室70dとが結合する。図15に示すように、製造室70dには、移動式生産設備室100cの生産設備130cの打錠工程により処理される前の被処理物(第2品目の被処理物)を内部に収容したステンレス製のコンテナ320が汚染を防止しつつ収容されている。また、製造室70dには、生産設備130cの打錠工程により処理された後の処理物(第2品目の処理物)を内部に収容するための空のステンレス製のコンテナ321が汚染を防止しつつ収容されている。
【0058】
上述した製造室70cでの処理と同様に、結合部102を介して製造室70dに収容された第2品目の被処理物が製造室70dの内部からクリーンルーム101の内部に移動させられ、結合部102を介して第2品目の処理物がクリーンルーム101の内部から製造室70dの内部に移動させられ、第2品目の処理物が製造室70dの内部に収容される。他の移動式生産設備室100a,100b,100d,100eにより、同様の動作が行われてもよい。また、他の製造室70a,70b,70e〜70nにおいて同様の処理が行われてもよい。
【0059】
なお、上述した移動式生産設備室100a〜100eの生産設備の型替えを含む改変、洗浄、点検、交換、追加等を行う場合には、移動式生産設備室100a〜100eを待機エリア92に移動させ、待機エリア92において、移動式生産設備室100a〜100eの生産設備の型替えを含む改変、洗浄等を行ってもよい。あるいは、移動式生産設備室100a〜100eの生産設備の型替えを含む改変、洗浄等を行う場合には、移動式生産設備室100a〜100eを搬出入エリア93から搬出し、生産システム1の階層の外部において、移動式生産設備室100a〜100eの型替えを含む改変、洗浄等を行ってもよい。移動式生産設備室100a〜100eの型替えを含む改変、洗浄、点検、交換、生産設備の追加等を行う際には、待機エリア92又は搬出入エリア93から、新たな移動式生産設備室100a〜100eを製造室70a〜製造室70nの近傍に移動させることにより、医薬品の生産を中断せずに行うことができる。
【0060】
上述したように、医薬品の生産では、多数の品目ごとに医薬品が生産されるため、生産される医薬品の品目が変わるたびに、生産ラインの組み換えのために大きな負担が生じる。また、生産ラインの組み替えの際には、生産設備の洗浄が必要となる。生産設備の洗浄の際には、当該生産設備だけではなく、当該生産設備が収容されているクリーンルームも洗浄する必要がある。このような一部の生産設備の洗浄によりクリーンルームの清浄度が低下した場合は、当該クリーンルーム近傍の他の生産設備についても、清浄度が復旧し、復旧した清浄度が検証されるまでは生産を停止する必要がある。
【0061】
例えば、一般の医薬品の生産施設では、クリーンルームとクリーンでない部屋の間には機器(材料)の受け渡し用の部屋(前室)がある。前室に入りきれないほど大きな機材の搬出入では、前室の入り口と出口を両方開放(ブレイク)しなければ大きな機材を通過させることができない。その場合、目的のクリーンルームまでの通路が全て汚染される。このため、一部の生産設備の洗浄等が行われた場合でも、生産システムの全体に与える影響が大きい。
【0062】
一方、本実施形態においては、移動式生産設備室100cの移動部104は、生産設備130cを収容したクリーンルーム101を自走により製造室70cの近傍に移動させる。結合部102は、製造室70c及びクリーンルーム101の外部に対する気密性を保ちつつ、製造室70cの内部とクリーンルーム101の内部とが連通するように製造室70cと結合する。結合部102と製造室70とが結合した場合に、結合部102を介して、生産設備130cにより処理される前の被処理物が製造室70cの内部からクリーンルーム101の内部に移動し、生産設備130cにより処理された後の処理物がクリーンルーム101の内部から製造室70cの内部に移動する。
【0063】
これにより、クリーンルーム101に収容された生産設備130cにより処理を行う場合には、移動式生産設備室100cが製造室70cに自走により移動し、生産ラインの保守、組み換え等を行う場合には、当該移動式生産設備室100cが任意の場所に自走により移動した後に、クリーンルーム101に収容された生産設備130cを交換するか、他の生産設備130cをクリーンルーム101に収容した他の移動式生産設備室100cが製造室70cに移動すればよいため、生産ラインの保守、組み換え等における負担を軽減することができる。
【0064】
また、本実施形態においては、生産システム1において、移動式生産設備室100cと、汚染を防止しつつ被処理物及び処理物を収容可能であり、移動式生産設備室100cが移動部により近傍に移動してきた場合に、結合部102と結合する製造室70cとを備える。これにより、移動式生産設備室100cに搭載された生産設備130cの交換等により、移動式生産設備室100cと製造室70cとが結合していない場合には、汚染を防止しつつ被処理物及び処理物を製造室70cに収容しておくことができ、生産ラインの保守、組み換え等における負担を軽減することができる。
【0065】
また、本実施形態においては、生産システム1において、移動式生産設備室100cが移動部104により移動してきた場合に、生産設備130cを洗浄する洗浄室80dをさらに備える。これにより、製造室70cに収容された被処理物及び処理物の汚染を防止しつつ、生産設備130cの洗浄を行った際の影響を移動式生産設備室100cの当該生産設備130c及び当該生産設備130cが収容されたクリーンルーム101に限定することができる。
【0066】
移動式生産設備室100cの型替えを含む改変や洗浄等が行われる移動エリア91、待機エリア92及び搬出入エリア93は、清浄度管理が行われていない区域であるため、生産設備130cの交換時に、清浄度管理が行われている区域をブレイクする必要がなくなる。また、移動式生産設備室100cは、遠隔操作等による自走により移動可能であるため、被処理物及び処理物の重量物の運搬等の作業負荷を低減することができる。また、移動式生産設備室100cは、任意の場所に自走により移動した後に生産設備130c及びクリーンルーム101内の洗浄を行うことができ、製造室70cの中では、各工程の処理は行われないため、洗浄等の作業の負担を低減することができる。加えて、移動式生産設備室100cには、作業員等の人が立ち入らないため、人に起因した発塵が減少する。さらに、移動式生産設備室100cの洗浄は洗浄室80dにより行うことができるため、洗浄及び清掃の作業を省力化することができる。
【0067】
さらに、造粒工程、混合工程、打錠工程、コーティング工程及び印刷・検査工程の前後の中間製品のそれぞれは、製造室70cの内部で汚染を防止しつつ収容され、外部には出さないで済むため、相互の中間製品のコンタミネーションの可能性を低減することができる。さらに、本実施形態の生産システム1では、原料から中間製品となる前の中間製品は、製造室70a〜70nに汚染を防止しつつ収容されて、順次処理されるため、中間製品のための倉庫の面積は従来の生産施設に比べて低減されている。加えて、本実施形態の生産システム1では、移動式生産設備室100cが自走により移動するため、生産システム1において、作業員が移動するための廊下、通路等を含む動線を削減することができる。したがって、生産システム1の省スペース化を図ることができる。また、上述したように、本実施形態の生産システム1では、生産ラインの組み換えや洗浄等における負担が軽減されるため、生産設備130cの稼働率が向上し、生産設備130cの削減を図ることができるため、生産システム1の省スペース化を図ることができる。
【0068】
さらに、生産システム1の清浄度管理が行われている区域は、移動式生産設備室100a〜100e、製造室70a〜70n及び洗浄室80a〜80d等に限定され、移動式生産設備室100a〜100eは無人で動作するため、清浄度管理が必要な区域を小さくすることができ、生産システム1の建設コスト及びランニングコストを低減することができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、複数の工程による処理が行われる場合には、まず、移動式生産設備室100cと製造室70cとが結合し、移動式生産設備室100cと製造室70cとの間で打錠工程の被処理物及び打錠工程の処理物の移動が行われ、打錠工程の処理物が製造室70cに収容される。次に、移動式生産設備室100cと製造室70cとが分離した後に、移動式生産設備室100dと製造室70cとが結合し、移動式生産設備室100dと製造室70cとの間でコーティング工程の被処理物である打錠工程の処理物及びコーティング工程の処理物の移動が行われ、コーティング工程の処理物が製造室70cに収容される。移動式生産設備室100cと製造室70cとが分離した後には、移動式生産設備室10cの生産設備130cの保守、交換等を行ったとしても、生産設備130cの保守、交換等を行った際の影響は、移動式生産設備室100cの生産設備130c及び生産設備130cが収容されたクリーンルーム101に限定され、移動式生産設備室100dの生産設備130dによるコーティング工程の処理は継続して行うことができる。従って、一部の工程の生産設備の保守、交換等を行った際の影響を当該工程の生産設備に限定することができ、生産ラインの保守、組み換え等における負担を軽減することができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、第1品目を処理してから他の第2品目を処理する場合には、まず、移動式生産設備室100cと製造室70cとが結合し、移動式生産設備室100cと製造室70cとの間で第1品目の被処理物及び第1品目の処理物の移動が行われ、第1品目の処理物が製造室70cに収容される。次に、移動式生産設備室100cと製造室70cとが分離した後に、移動式生産設備室100cが洗浄室80dに移動し、洗浄室80dが移動式生産設備室100cの生産設備130cを洗浄する。さらに、移動式生産設備室100cが製造室70dに移動して、移動式生産設備室100cと製造室70dとが結合し、移動式生産設備室100cと製造室70dとの間で第2品目の被処理物及び第2品目の処理物の移動が行われ、第2品目の処理物が製造室70dに収容される。移動式生産設備室100cと製造室70cとが分離した後には、仮に移動式生産設備室100cの生産設備130cの洗浄に加えて製造室70cの洗浄を行ったとしても、製造室70cの洗浄を行った際の影響は当該製造室70cに限定され、移動式生産設備室100cの生産設備130cの交換、洗浄等の後に、移動式生産設備室100cの生産設備130c及び製造室70dによる第2品目の処理は継続して行うことができる。従って、処理される品目の変更が行われた場合に製造室の洗浄を行った際の影響を当該製造室に限定することができ、生産ラインの組み換えにおける負担を軽減することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。例えば、上記実施形態の生産システム1の階層の配置は一例であり、移動式生産設備室100a〜100e、製造室70a〜70n及び洗浄室80a〜80d等の配置は任意に変更することができ、種々の変形された実施形態が可能である。例えば、生産システム1は、一つの階層のみを有する建物に形成されてもよい。この場合、階段11,12及びエレベータ15等は不要となり、自動倉庫41の構成も適宜変更することができる。
【0072】
原則として、製造室70a〜70nが作業員を含む人間がアクセス可能な廊下、通路等を含む動線に接しており、製造室70a〜70nの結合部72が移動式生産設備室100a〜100eの結合部102と結合可能であれば、移動式生産設備室100a〜100e、製造室70a〜70n及び洗浄室80a〜80d等の配置は任意に変更することができる。例えば、製造室70a〜70nが互いに隣接して配置されていることにより、生産システム1の構成要素の集約化及び省スペース化を図ることができる。
【0073】
また、本発明の生産システムは複数の階層に亘って構成されていてもよい。例えば、図16の生産システム2に示すように、製造室70a〜70n及び洗浄室80a〜80dは二階フロア3に配置され、移動式生産設備室100a〜100eは一階フロア4に配置されている。製造室70a〜70nの結合部72は、二階フロア3の床面に設けられ、二階フロア3の床面から一階フロア4の天井に連通する。移動式生産設備室100a〜100eの結合部102は、移動式生産設備室100a〜100eの上部に設けられ、二階フロア3の製造室70a〜70nの結合部72に結合可能である。また、移動式生産設備室100a〜100eの配管103は、移動式生産設備室100a〜100eの上部に設けられ、二階フロア3の製造室70a〜70n及び洗浄室80a〜80dと接続可能である。生産システム2では、二階フロア3の製造室70a〜70n及び洗浄室80a〜80dと、一階フロア4の移動式生産設備室100a〜100eとの間で、コンテナ310等や洗浄液等の移動が上下方向に行われる以外は、上述した生産システム1と同様にして、生産を行うことができる。
【0074】
また、移動式生産設備室100a〜100eの移動部104は、駆動輪105以外にも、キャタピラ、レール等により、クリーンルーム101を自走により移動させてもよい。また、移動式生産設備室100a〜100eの動力は、移動式生産設備室100a〜100eの移動中においても、有線あるいは無線により外部から供給されてもよい。移動式生産設備室100a〜100eの動作の制御は、中央制御部31から有線通信により行われてもよい。移動式生産設備室100a〜100eの動作の制御は、移動式生産設備室100a〜100eのそれぞれにおいて自律制御により行われてもよい。また、移動式生産設備室100a〜100eの動作の制御は、移動式生産設備室100a〜100eに搭乗した操作員による操作により行われてもよい。また、中央制御部31は操作員が移動式生産設備室100a〜100eを遠隔操作するための操作部を有し、移動式生産設備室100a〜100eの動作の制御は、中央制御部31に配置された操作員による遠隔操作により行われてもよい。
【0075】
さらに、製造室70a〜70n及び洗浄室80a〜80dは、必ずしも内部に空間を有する部屋である必要はない。例えば、製造室70a〜70nは、移動式生産設備室100a〜100eと結合して被処理物及び処理物の移動及び収容が可能であれば、無人で動作する施設であってもよい。また、例えば、洗浄室80a〜80dは、移動式生産設備室100a〜100eが近傍に移動してきた場合に、移動式生産設備室100a〜100eの生産設備130a等の洗浄及び改変が可能であれば、移動式生産設備室100a〜100eと結合しなくともよく、無人で動作する施設であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1,2…生産システム、3…二階フロア、4…一階フロア、11,12…階段、15…エレベータ、21,22…部品室、30…機械室、31…中央制御部、41…自動倉庫(製品)、42…自動倉庫(中間製品)、50…クリーン廊下、60…準備室、70a〜70n…製造室、72…結合部、73…配管、74…制御盤、80a〜80d…洗浄室(洗浄施設)、91…移動エリア、92…待機エリア、93…搬出入エリア、94…搬出入口、100a〜100e…移動式生産設備室、101…クリーンルーム、102…結合部、103…配管、104…移動部、105…駆動輪、110…伸縮式ベルトコンベヤ、115…搬送路、120…リフター、130c,130d…生産設備、200…作業員、310,311,320,321…コンテナ。
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