(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556058
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】調節可能な内部部材を有するバルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20190729BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
A61M25/10 530
A61M25/10 550
A61M25/00 600
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-550856(P2015-550856)
(86)(22)【出願日】2013年12月31日
(65)【公表番号】特表2016-501689(P2016-501689A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】US2013078427
(87)【国際公開番号】WO2014106226
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2016年12月2日
(31)【優先権主張番号】61/747,448
(32)【優先日】2012年12月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591018693
【氏名又は名称】シー・アール・バード・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】C R BARD INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100167243
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 充
(72)【発明者】
【氏名】ステープルトン,コーリー・イー
【審査官】
川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−503963(JP,A)
【文献】
特表2009−526610(JP,A)
【文献】
特開2001−124250(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0036829(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0024087(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーンカテーテルであって、
長手方向に延在するとともに、近位端と遠位端とを有するシャフトと、
前記シャフトに沿って位置決めされる膨張可能なバルーンと、
前記シャフトを前記バルーンに連結する移動手段と
を備え、
前記バルーンは、前記移動手段を介して前記シャフトの前記遠位端または前記近位端に連結される少なくとも1つの部分であって、前記バルーンが膨張されるときに前記シャフトの前記近位端または前記遠位端に向けて移動するように構成された少なくとも1つの部分を有し、
前記移動手段は、前記バルーンに取り付けられる第1の部分と、前記シャフトに取り付けられる第2の部分と、を有する嵌め込み部材を備え、
前記シャフトの前記遠位端が直接的に、または、前記移動手段を介して、前記バルーンに接続された状態に留まり、前記嵌め込み部材の前記第1の部分および前記第2の部分が、膨張流体が前記バルーン内に収容されるようにシール係合した状態に留まった状態で、前記嵌め込み部材は、前記第1の部分と前記第2の部分とが互いに対して入れ子式に移動されるように構成された
バルーンカテーテル。
【請求項2】
請求項1に記載のカテーテルであって、
前記移動手段は、
前記バルーンの収縮状態に対応する、前記シャフトの前記遠位端側の第1の位置と、
前記バルーンの膨張状態に対応する、前記シャフトの前記近位端側の第2の位置と
を備える
カテーテル。
【請求項3】
請求項1に記載のカテーテルであって、
前記第1の部分および前記第2の部分のうちの一方は、突出部を備え、
他方は、前記突出部を受け入れるための凹部を備える
カテーテル。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記移動手段は、さらに、ばねを備え、
前記ばねは、前記バルーンが膨張されるときに前記シャフトを短くするように構成された
カテーテル。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記移動手段は、前記バルーンの前記少なくとも1つの部分の相対位置を手動操作によって調節するためのねじ部を備える
カテーテル。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記シャフトに連結される前記バルーンの前記部分は、前記バルーンの遠位端部分である
カテーテル。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記バルーンの近位端部分は、前記バルーンが膨張されるときに前記シャフトの前記遠位端に向けて移動するように構成される
カテーテル。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のカテーテルであって、
さらに、前記シャフトに連結されるハブを備え、
前記ハブは、長手方向における前記ハブと前記シャフトとの相対移動を許容するように前記シャフトに連結される
カテーテル。
【請求項9】
請求項8に記載のカテーテルであって、
前記ハブは、ばねによって前記シャフトに連結される
カテーテル。
【請求項10】
請求項9に記載のカテーテルであって、
前記ハブは、ねじ係合によって前記シャフトに連結される
カテーテル。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記第1の部分と前記第2の部分とは、前記バルーンの膨張時に互いに対して近づく
カテーテル。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記シャフトは、少なくとも1つの圧縮ばねを備える
カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮特許出願第61/747,448号の利益を主張し、この出願の開示は、参照によって本明細書に組み入れられる。
【0002】
本開示は、概して、血管形成術などの医療処置を行うためのバルーンに関し、より詳細には、調節可能な内部部材を有するバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0003】
バルーンは、通常、身体の管状領域(例えば、動脈、静脈)の流通制限、あるいは、おそらくは完全な閉塞さえも解消または解決するために使用されている。多くの臨床場面では、制限は、硬質の固体(例えば、石灰化プラーク)によって生じ、そのような閉塞を圧縮するために高圧を使用することが必要になる。市販されているバルーンは、複雑な技術を使用して、バルーンのプロファイルを犠牲にすることなく高圧条件を達成している。高圧条件に加えて、バルーンは、特に、血管形成術に使用される場合には、耐穿刺性を有し、進行や押すことが行いやすく、低プロファイルを提供するべきである。
【0004】
臨床行為では、血管形成カテーテルは、
図1および
図2に示すように、対象領域(例えば、血管Vの内周壁Iの一部分)を治療するために、血管内において収縮した折り畳み状態から拡張状態に拡張される。膨張は、従来、
図3および
図4に示すように、インターベンション処置中に、X線または他の形態の放射線写真でのより良い視認性を提供するために、X線造影剤を使用して達成されている(放射線Rが衝突される、バルーン12の壁部28内の幅DXを有する造影剤CMに注目されたい)。典型的には、造影剤と生理食塩水との70%/30%の混合物が使用されて、血管形成処置中にバルーンが膨張される。
【0005】
血管形成処置を行う外科医は、膨張していないバルーンの位置を正確に特定しなければならない。その結果、バルーンは、膨張すると適切に位置決めされる。これは、従来、バルーン作用面に対応する領域においてカテーテルシャフト上にマーカーバンドを取り付けることによって達成されている。この「作用面」は、バルーンの、所望の治療効果(例えば、石灰化プラークに接触すること)を達成するために使用される部分に沿った表面である(この表面は、近位端および遠位端のところに円錐状またはテーパ状の部分を有するバルーンの場合、典型的には、略円筒状の胴部とともに拡張する)。
【0006】
シャフトに沿って配置する間におけるマーカーバンドの位置ズレは、場合によっては、
図5に示すように、作用面の範囲に正確に一致させることへの失敗を招く(シャフトSによって支持される内側マーカーバンドMの各々と、バルーン12の作用面Wと、の位置ズレ量に注目されたい。これは、典型的には、遠位端のところにX線不透過性先端Pも備えている)。下にあるシャフトにマーカーを、バルーンが膨張されるときの作用面の予測される境界と整合させて適正に位置決めするために大きな注意が払われる場合ですら、いくつかの起こりえる要因に起因して、不一致が生じる傾向が依然として存在する。そのような要因の1つは、カテーテルシャフトの遠位端にバルーンを追加した結果として生じる公差の蓄積である場合がある。また、バルーンは、膨張されたときに長手方向に伸びる傾向を有しており、このことは、特に、大きく特別に長いバルーンにおいて顕著である。他の要因は、膨張中にバルーン内でカテーテルシャフトの一部分が曲がるか撓む傾向にあることである。このことは、シャフトに固定されたX線不透過性マーカーと、作用面と、の間の位置ズレにつながり得る。
【0007】
要因が何であれ、結果として生じる位置ズレは、インターベンション処置中に臨床医がバルーンの作用面の位置を正確に特定することの妨げとなり得る。これは、地理的な誤配置、すなわち、対象領域Tと、バルーン12の作用面Wと、の意図される接触(
図2参照)の「ミス」につながり得る。バルーンがペイロード(例えば、薬剤、ステント、または、その両方)または作用要素を血管系内の特定の位置に移送するように構成されている場合には、そのような結果を回避することが特に好ましい。それは、(例えば、薬剤コーティングされたバルーンの場合、バルーン12の再配置または他のバルーンカテーテルの使用が必要になることによって)ミスによって処置の時間が長くなり得るからである。
【0008】
バルーンの膨張中および収縮中において、いくつかの結果を回避することが望ましい。膨張時において、造影剤を介してバルーンに圧力を加えることによって、差のある態様でバルーンが長くなり、その結果、曲がったバナナ状の形状になる。この湾曲は、バルーンの作用面が基準点(例えば、下にあるカテーテルシャフトに設けられたX線不透過性マーキング)または対象の治療領域に対して位置ズレすることにつながる。これは、地理的な誤配置、すなわち、対象領域と、バルーンの作用面と、との意図する接触の「ミス」につながり得る。バルーンがペイロード(例えば、薬剤、ステント、または、その両方)または作用要素を血管系内の特定の位置に移送するように構成されている場合には、そのような結果を回避することが特に望ましい。それは、(例えば、薬剤コーティングされたバルーンの場合、バルーン12の再配置または他のバルーンカテーテルの使用が必要になることによって)ミスによって処置の時間が長くなり得るからである。
【0009】
また、収縮時において、バルーンは、「パンケーキング」として知られる現象を被る場合がある。この条件では、バルーン12は、自身の上に折り畳まれて平坦な状態になる。この状況によって、バルーンがおそらくは未だ膨張状態にあるように蛍光透視法によって見られる。それは、バルーンの全幅がまだ把握され得るからである。このことによって、臨床医は、バルーンが膨張状態に留まっているとの誤った把握を、実際はそうでないときにし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、膨張時の過剰な湾曲、収縮時のパンケーキング、その他に関連する上述の問題を回避する助けとなるバルーンカテーテルが必要とされる。
【0011】
本開示の目的は、膨張時にバルーンが短縮することができる調節可能な内部部材を有するバルーンを提供することである。
【0012】
一態様では、バルーンカテーテルは、長手方向に延在するとともに近位端と遠位端とを有するシャフトと、シャフトに沿って位置決めされる膨張可能なバルーンと、を備えている。バルーンは、シャフトに連結される少なくとも1つの部分であって、バルーンが膨張されたときにシャフトの近位端に向けて移動するように構成された少なくとも1つの部分を有している。
【0013】
一実施形態では、アクチュエータが、シャフトをバルーンに連結する。アクチュエータは、バルーンの収縮状態に対応する、シャフトの遠位端側の第1の位置と、バルーンの膨張状態に対応する、シャフトの近位端側の第2の位置と、を備えていてもよい。アクチュエータは、バルーンに取り付けられる第1の部分と、シャフトに取り付けられる第2の部分と、を有する嵌め込み部材を備えていてもよい。第1および第2の部分の一方は、突出部を備えていてもよく、他の部分は、突出部分を受け入れるための凹部を備えていてもよい。
【0014】
アクチュエータは、さらに、ばねを備えていてもよい。ばねは、好ましくは、バルーンが膨張されるときに短くなるように構成される。アクチュエータは、バルーンの上記少なくとも1つの部分の相対位置を手動操作で調節するためのねじ部を備えていてもよい。
【0015】
バルーンのシャフトに連結される部分は、バルーンの遠位端部分であってもよい。バルーンの近位端部分は、バルーンが膨張されるときにシャフトの遠位端に向けて移動するように構成されてもよい。
【0016】
任意の実施形態において、カテーテルは、シャフトに連結されるハブを備えていてもよい。このハブは、長手方向におけるハブとシャフトとの相対移動を許容する態様でシャフトに連結される。ハブは、ばねによってシャフトに連結されてもよい。ハブは、ねじ係合によってシャフトに連結されてもよい。
【0017】
シャフトは、バルーンの膨張時において長手方向に収縮し短くなってもよい。シャフトは、少なくとも1つの圧縮ばねを備えていてもよい。
【0018】
他の態様は、バルーンの膨張時において長手方向に収縮するシャフトを備えるバルーンカテーテルである。
【0019】
さらに別の態様は、嵌め込みデバイスに連結される医療バルーンである。このバルーンの一端は、シャフトに連結されてもよく、他端は、嵌め込みデバイスの第2の部分を受け入れるために、嵌め込みデバイスの第1の部分に連結されてもよい。
【0020】
本開示のさらなる態様は、膨張可能なバルーンの一端に連結されるように構成された嵌め込みデバイスを備えるカテーテルシャフトに関する。この一端は、バルーンの遠位端または近位端を備えていてもよい。このデバイスは、ばねを備えていてもよく、ばねは、好ましくは、バルーンが膨張されるときにシャフトを短くするように構成される。デバイスは、第1の部分と、第1の部分内に嵌め込むように構成された第2の部分と、の間でのねじ連結部を備えていてもよい。
【0021】
ハブがシャフトに連結されてもよい。このハブは、長手方向におけるバブとシャフトとの相対移動を許容する態様でシャフトに連結される。ハブは、ばねによってシャフトに連結されてもよく、ばねは、好ましくは、バルーンが膨張されるときにシャフトを短くするように構成される。ハブは、ねじ係合によってシャフトに連結されてもよい。
【0022】
この構成は、シャフトによって支持される膨張可能なバルーンを備えていてもよい。この構成は、さらに、シャフトの第1の部分をシャフトの第2の部分に連結するための圧縮ばねを備えていてもよい。
【0023】
関連する態様は、医療処置を行うための装置に関する。この装置は、長手方向に延在するとともに近位端と遠位端とを有するシャフトであって、膨張可能なバルーンを支持するシャフトと、ばねによって、または、ねじ連結部によってシャフトに連結されるハブと、を備えている。
【0024】
さらに別の態様は、バルーンカテーテルに関する。このバルーンカテーテルは、膨張可能なバルーンと、長手方向に延在するとともに近位端と遠位端とを有するシャフトと、を備えている。シャフトは、第1の部分と、バルーンが膨張されるときにバルーンの一部分を近位端に向けて移動させるために収縮するように構成された第2の部分と、を備えている。第1の部分は、圧縮ばねによって第2の部分に連結されてもよい。第1の部分は、ねじ係合によって第2の部分に連結されてもよい。第1の部分は、第2の部分内に嵌め込むように構成されてもよい。
【0025】
さらに、バルーンが取り付けられるシャフトを備えるカテーテルを使用する方法が開示される。この方法は、バルーンの膨張時にシャフトを収縮させる工程を備えている。この収縮工程は、シャフトの第1の部分と第2の部分とを嵌め込む工程を備えていてもよい。収縮工程は、自動的に、または、手動操作によって達成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】収縮した折り畳み状態から血管内で拡張した状態への血管形成バルーンの移行を示している。
【
図2】収縮した折り畳み状態から血管内で拡張した状態への血管形成バルーンの移行を示している。
【
図3】血管形成処置中の血管形成バルーンの視認性を示している。
【
図4】血管形成処置中の血管形成バルーンの視認性を示している。
【
図5】バルーンの膨張中における血管内のバルーンの位置ズレを示している。
【
図6】本開示の一実施形態による血管形成バルーンを示している。
【
図7】本開示の一実施形態による血管形成バルーンを示している。
【
図8】本開示の一実施形態による血管形成バルーンを示している。
【
図9】本開示の一実施形態による血管形成バルーンを示している。
【
図10】本開示の特定の実施形態による血管形成バルーンを示している。
【
図10a】本開示の特定の実施形態による血管形成バルーンを示している。
【
図11】本開示の特定の実施形態による血管形成バルーンを示している。
【
図16】本開示のさらに別の実施形態を示している。
【
図17】本開示のさらに別の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面に関連して以下で行われる説明は、特に明記しない限り、全ての実施形態に適用され、各実施形態に共通した特徴は、同様に示され、同様の参照番号が付される。
【0028】
カテーテル10が設けられる。このカテーテル10は、遠位部分11を有している。遠位部分11は、カテーテルチューブ14に取り付けられたバルーン12を有している。
図6、
図7および
図8を参照すると、バルーン12は、中間部分16すなわち「胴部」と、端部部分18,20と、を有している。一実施形態では、端部部分18,20は、縮径して、中間部分16をカテーテルチューブ14に接合している(したがって、部分18,20は、一般的に、コーンまたはコーン部分と称される)。バルーン12は、バルーン端部(近位端15aおよび遠位端15b)のところでコーン部分18,20上にシールされ、1つ以上の膨張内腔17を介したバルーン12の膨張を可能にしている。膨張内腔17は、カテーテルチューブ14内を延在し、バルーン12の内部と連通している。
【0029】
また、カテーテルチューブ14は、ガイドワイヤ内腔23を形成する細長いチューブ状のシャフト24を備えている。ガイドワイヤ内腔23は、カテーテル10を通るガイドワイヤ26を方向付ける。ガイドワイヤ内腔23の遠位端に沿ってバルーン12が配置され得る。
図8に示されるように、このガイドワイヤ26は、カテーテル10の近位端と、コネクタ27の第1のポート25と、を通って内腔23内に延在して、「オーバーザワイヤ」(OTW)構成を達成することができる。しかしながら、ガイドワイヤ26は、「ラピッドエクスチェンジ」(RX)構成で提供されてもよい。ラピッドエクスチェンジ構成では、ガイドワイヤ26は、遠位端側の横方向開口14aを出る(
図9参照)か、あるいは、バルーン12の遠位側の先端を通って供給される(図示せず)。第2のポート29が、
膨張内腔17を介してバルーン12の内部区画に流体(例えば、生理食塩水、造影剤、または、その両方)を導入するために、例えばコネクタ27によって、カテーテル10にも関連付けられてもよい。
【0030】
バルーン12は、膨張流体を受け入れるための内部を形成する単層または複層のバルーン壁28を備えていてもよい。バルーン12は、バルーンが膨張されるときに1つ以上の方向においてそのサイズおよび形状が維持されるバルーン壁28を有するノンコンプライアントバルーンであってもよい。そのような場合には、バルーン12は、膨張中および膨張後に一定に維持される予め定められた表面積も有しており、また、膨張中および膨張後に各々にまたは一緒に一定に維持される予め定められた長さおよび予め定められた直径を有している。しかしながら、バルーン12は、それに代えて、特定の用途に応じて、セミコンプライアントまたはコンプライアントであってもよい。
【0031】
本開示の一態様によれば、カテーテル10は、膨張中にバルーン12が短縮することができる助けとなるように構成されてもよい。これは、バルーン12の一部分をシャフト24(この一部分は、バルーン内の内部部材24aを形成する)に取り付けることによって達成されてもよい。バルーン12の一部分は、バルーンが膨張されるときにバルーンのこの部分が遠位端15b側から近位端15a側に移動することができる態様で取り付けられる。一実施形態では、
図10および
図11に示されるように、アクチュエータ30は、その遠位端部分でシャフト24に連結される第1の部分30aと、第1の部分30aを受け入れる(例えば、嵌め込み(入れ子式)の態様)ように構成された第2の部分30bと、を備えている。この2つの部分30a,30bは、膨張流体をバルーン12内に収容するように、互いにシール係合される。
【0032】
使用時において、
図10および
図11を参照すると、バルーン12は、最初、折り畳まれた収縮状態(12’)にあり、端部15bに対応する遠位部分は(例えば、嵌め込み部分30a,30bが少なくとも部分的に分離することによって)遠位方向に延在する。膨張時において、バルーン12は、拡張し、したがって、部分30a,30bを引き寄せるか押圧して一緒に入れ子式になり、したがって、コンパクトになる。このシャフト24が相対的に縮小すなわち短くなることによって、バルーン12がシャフトに動かないように固定された場合に存在する、結果として得られる圧力下でシャフト24が撓むことが防止され、したがって、生じ得る、望ましくない撓んだ状態や対応する位置ズレが防止される。
【0033】
また、部分30a,30bは、長手方向の移動を制限することに加えて他の方向における移動を制限する態様で一緒に連結され得る。これは、
図10aに参照符号30cによって示されるように、一方に突出部(例えば、長手方向のレール)を設けるとともに他方に対応する凹部(例えば、長手方向の一致する溝)を設けることによって達成されてもよい。1つ以上のそのような一致構成が設けられてもよい。また、この構成は、許容される相対移動の量を画定するためのストッパを備えていてもよい。
【0034】
図12および
図13は、バルーン12の近位端15aのところにアクチュエータ30も設けられてもよいことを示している。当業者にはこれらの図から推測できるように、アクチュエータは、
図10、
図10aおよび
図11に示されるものと同一である。
図12において、バルーン12は、非膨張状態(12’)にあり、したがって、部分30a,30bは拡張される。膨張されるとき、部分30a,30bは、入れ子になり、シャフト24の所望の短縮が提供される。この実施形態において、シャフト24は、「デュアル内腔」アプローチとして示されており、膨張内腔17およびガイドワイヤ内腔23(バルーン12の内部においてシャフト24の膨張開口Oと連通する)は仕切りによって分離される。
【0035】
図14に戻ると、膨張条件に応じて部分30a,30bの一方または他方を近位方向または遠位方向に押圧するために、付勢要素すなわちばね32の形態のアクチュエータ30も設けられ得る。
図14から明らかなように、付勢要素32は、バルーン12が膨張されるときにシャフト24を短くするように構成される。部分30a,30bの代わりに、1つ以上のばね32も、
図15に示されるように、シャフト24の他の部分に沿って独立した態様で設けられ得る。両方の場合において、ばね32は、圧縮ばねを備えていてもよい。圧縮ばねは、通常、伸張されており、したがって、自動的な態様での膨張の結果として、または、以下で説明するように手動操作による調節の結果として、シャフト24を圧縮して短くする。一緒に図示されているものの、これらの構成の一方のみが使用され得ること、または、各々が複数回使用され得ることが理解されるべきである。
【0036】
また、部分30a,30bは、ねじ連結部34などの手段を使用して互いに係合してもよい(
図15)。これによって、相対移動に対して手動操作による調節が可能になる。これは、(例えば、カテーテル10の近位端でコネクタ27すなわちハブのところで把持することによって)回転されることができる内側シャフト24を設けることによって達成され得る。このように、膨張中に内側シャフト24を回転させることによって、シャフト24は、手動操作によって短縮され得る。また、ねじ連結部34は、
図16に示されるように、コネクタ27すなわちハブと、シャフト24の近位部分と、の間に設けられてもよく、これは、
図17に示されるように、ばね32についても同様である(この配置では、ばね32は、引っ張りばね、または、圧縮ばねであってもよい)。
図17から当業者には明らかなように、ハブ27は、好ましくは、コネクタによって、バルーンが膨張され得るようにバルーンの近位端に連結される。また、連結部は、2つの構造を連結するレールによって形成されてもよく、場合によっては、(例えば、パッドを設けることによって)摩擦を生じさせて、相対移動の制御が可能となる。これらのアプローチのうちの任意のアプローチと
図12〜17に示されるアプローチとの組み合わせも利用可能である。
【0037】
本開示によって、発明の概念を説明するためにいくかの実施形態が提示されたが、添付の特許請求の範囲に定義されるように、本発明の領域および範囲から逸脱することなく、説明された実施形態に対して多くの修正形態、変形形態および変更が可能である。例えば、様々な実施形態で提示される範囲および数値は、公差、環境要因の変化、材料の品質、構造の修正、および、バルーンの形状に起因して変わるので、およそのものであると捉えることができ、「約」または「実質的に」との用語は、そのような要因のために、関連する値が最小限変わり得ることを意味している。したがって、本開示が、説明された実施形態に限定されるものではなく、次の特許請求の範囲の言語によって定義される最大の範囲およびその均等物を有していることが意図されている。
本発明は、以下の形態でも実現可能である。
[形態1]
バルーンカテーテルであって、
長手方向に延在するとともに、近位端と遠位端とを有するシャフトと、
前記シャフトに沿って位置決めされる膨張可能なバルーンと
を備え、
前記バルーンは、前記シャフトに連結される少なくとも1つの部分であって、前記バルーンが膨張されるときに前記シャフトの前記近位端に向けて移動するように構成された少なくとも1つの部分を有する
バルーンカテーテル。
[形態2]
形態1に記載のカテーテルであって、
アクチュエータが前記シャフトを前記バルーンに連結する
カテーテル。
[形態3]
形態2に記載のカテーテルであって、
前記アクチュエータは、
前記バルーンの収縮状態に対応する、前記シャフトの前記遠位端側の第1の位置と、
前記バルーンの膨張状態に対応する、前記シャフトの前記近位端側の第2の位置と
を備える
カテーテル。
[形態4]
形態2または形態3に記載のカテーテルであって、
前記アクチュエータは、前記バルーンに取り付けられる第1の部分と、前記シャフトに取り付けられる第2の部分と、を有する嵌め込み部材を備える
カテーテル。
[形態5]
形態4に記載のカテーテルであって、
前記第1の部分および前記第2の部分のうちの一方は、突出部を備え、
他方は、前記突出部を受け入れるための凹部を備える
カテーテル。
[形態6]
形態1ないし形態5のいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記アクチュエータは、さらに、ばねを備え、
前記ばねは、好ましくは、前記バルーンが膨張されるときに前記シャフトを短くするように構成された
カテーテル。
[形態7]
形態1ないし形態6のいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記アクチュエータは、前記バルーンの前記少なくとも1つの部分の相対位置を手動操作によって調節するためのねじ部を備える
カテーテル。
[形態8]
形態1ないし形態7のいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記シャフトに連結される前記バルーンの前記部分は、前記バルーンの遠位端部分である
カテーテル。
[形態9]
形態1ないし形態8のいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記バルーンの近位端部分は、前記バルーンが膨張されるときに前記シャフトの前記遠位端に向けて移動するように構成される
カテーテル。
[形態10]
形態1ないし形態9のいずれか一項に記載のカテーテルであって、
さらに、前記シャフトに連結されるハブを備え、
前記ハブは、長手方向における前記ハブと前記シャフトとの相対移動を許容するように前記シャフトに連結される
カテーテル。
[形態11]
形態10に記載のカテーテルであって、
前記ハブは、ばねによって前記シャフトに連結される
カテーテル。
[形態12]
形態11に記載のカテーテルであって、
前記ハブは、ねじ係合によって前記シャフトに連結される
カテーテル。
[形態13]
形態1ないし形態12のいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記シャフトは、前記バルーンの膨張時に長手方向に縮小し短くなる
カテーテル。
[形態14]
形態1ないし形態13のいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記シャフトは、少なくとも1つの圧縮ばねを備える
カテーテル。
[形態15]
バルーンカテーテルであって、
バルーンの膨張時に長手方向に縮小するシャフトを備える
バルーンカテーテル。
[形態16]
医療バルーンであって、
嵌め込みデバイスに連結される
医療バルーン。
[形態17]
形態16に記載の医療バルーンであって、
前記バルーンの一端は、シャフトに連結され、
他端は、前記嵌め込みデバイスの第2の部分を受け入れるために、前記嵌め込みデバイスの第1の部分に連結される
医療バルーン。
[形態18]
カテーテルシャフトであって、
膨張可能なバルーンの一端に連結されるように構成された嵌め込みデバイスを備える
カテーテルシャフト。
[形態19]
形態18に記載のカテーテルであって、
前記一端は、前記バルーンの遠位端を備える
カテーテル。
[形態20]
形態18に記載のカテーテルであって、
前記一端は、前記バルーンの近位端を備える
カテーテル。
[形態21]
形態18ないし形態20のいずれか一項に記載のシャフトであって、
前記デバイスは、ばねを備え、
前記ばねは、好ましくは、前記バルーンが膨張されるときに前記シャフトを短くするように構成された
シャフト。
[形態22]
形態18ないし形態21のいずれか一項に記載のシャフトであって、
前記デバイスは、第1の部分と、該第1の部分内に嵌まるように構成された第2の部分と、の間のねじ連結部を備える
シャフト。
[形態23]
形態18ないし形態22のいずれか一項に記載のシャフトであって、
さらに、前記シャフトに連結されるハブを備え、
前記ハブは、長手方向における前記ハブと前記シャフトとの相対移動を許容するように前記シャフトに連結される
シャフト。
[形態24]
形態23に記載のシャフトであって、
前記ハブは、ばねによって前記シャフトに連結され、
前記ばねは、好ましくは、前記バルーンが膨張されるときに前記シャフトを短くするように構成された
シャフト。
[形態25]
形態23に記載のシャフトであって、
前記ハブは、ねじ係合によって前記シャフトに連結される
シャフト。
[形態26]
形態18ないし形態25のいずれか一項に記載のシャフトであって、
さらに、前記シャフトによって支持される膨張可能なバルーンを備える
シャフト。
[形態27]
形態18ないし形態26のいずれか一項に記載のシャフトであって、
さらに、前記シャフトの第1の部分を前記シャフトの第2の部分に連結するための圧縮ばねを備える
シャフト。
[形態28]
医療処置を行うための装置であって、
長手方向に延在するとともに、近位端と遠位端とを有するシャフトであって、膨張可能なバルーンを支持するシャフトと、
ばねによって、または、ねじ結合部によって前記シャフトに連結されるハブと
を備える装置。
[形態29]
バルーンカテーテルであって、
膨張可能なバルーンと、
長手方向に延在するとともに、近位端と遠位端とを有するシャフトと
を備え、
前記シャフトは、第1の部分と、前記バルーンが膨張されるときに前記近位端に向けて前記バルーンの一部分を移動させるために前記シャフトを縮小するように構成された第2の部分と、を備える
バルーンカテーテル。
[形態30]
形態29に記載のカテーテルであって、
前記第1の部分は、圧縮ばねによって前記第2の部分に連結される
カテーテル。
[形態31]
形態29に記載のカテーテルであって、
前記第1の部分は、ねじ係合によって前記第2の部分に連結される
カテーテル。
[形態32]
形態29に記載のカテーテルであって、
前記第1の部分は、前記第2の部分内に嵌まるように構成された
カテーテル。
[形態33]
膨張可能なバルーンが取り付けられるシャフトを備えるカテーテルの使用方法であって、
前記バルーンの膨張時に前記シャフトを縮小させる工程を備える
カテーテルの使用方法。
[形態34]
形態33に記載の方法であって、
前記縮小工程は、前記シャフトの第1の部分と第2の部分とを嵌め込む工程を備える
方法。
[形態35]
形態33に記載の方法であって、
前記縮小工程は、手動操作によって達成される
方法。
[形態36]
カテーテルであって、
形態18ないし形態27のいずれか一項に記載のシャフトを備える
カテーテル。
【符号の説明】
【0038】
10…カテーテル
11…遠位部分
12…バルーン
14…カテーテルチューブ
14a…横方向開口
15a…近位端
15b…遠位端
16…中間部分
17…膨張内腔
18,20…端部部分
23…ガイドワイヤ内腔
24…シャフト
24a…内部部材
25…第1のポート
26…ガイドワイヤ
27…ハブ
28…バルーン壁
29…第2のポート
30…アクチュエータ
30a…第1の部分
30b…第2の部分
32…ばね
34…連結部
O…膨張開口