(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中空筒状部材と、当該中空筒状部材の半径方向外方に延在する延在部分と、当該延在部分に設けられた補強部材固定具を有し、中空筒状部材の内径寸法は地山補強材施工用のボーリング孔外形寸法よりも大きいことを特徴とする補強部材保持用治具。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図示の実施形態において、雄ネジMSが形成された地山補強材1としてロックボルトが示されており、補強部材2としては異形鉄筋が示されているが、これに限定される訳ではない。
【0018】
最初に
図1〜
図6を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。
図1において、既存吹付層100にロックボルト挿入用のボーリング孔BHが切削されており、ボーリング孔BHに固化材C(モルタル、コンクリート、セメント等)を充填した状態で、ロックボルト1(地山補強材)が挿入される。ロックボルト1には、後述する補強部材保持用治具10の図示しない雌ネジと螺合する雄ネジMSが形成されている。
ロックボルト1の地上側端部(上端部)近傍には補強部材保持用治具10(ロックボルト接続カプラー)が配置される。補強部材保持用治具10の本体部10Aに形成された雌ネジFS(
図2)がロックボルト1の雄ネジMSを螺合することにより、補強部材保持用治具10はロックボルト1の地上側端部(上端部)近傍に固定される。
【0019】
補強部材保持用治具10(ロックボルト接続カプラー)の詳細が
図2に示されている。
図2において、補強部材保持用治具10は中空筒状部材として構成された本体部10Aを有しており、その内壁面には雌ネジFSが形成され、雌ネジFSはロックボルト1の雄ネジMSに螺合する。そして補強部材保持用治具10は、本体部10Aから半径方向外方に延在する延在部分10B(10B1〜10B4)と、延在部分10Bの半径方向外方端部近傍の上面に設けられた補強部材固定具10Cをも有している。
補強部材保持用治具10の本体部10Aは、中空円筒形の金属製材料(例えば鋼材)で構成されており、内壁面に雌ネジFSが形成されている。ただし、図示はされていないが、本体部10Aを断面多角形の中空筒状体で構成することも可能である。
【0020】
延在部分10B(10B1〜10B4)は、
図1〜
図6では本体部10Aから円周方向等間隔に(中心角が等しく90度となるように)4つ配置され(
図4参照)、延在部分10Bにおける半径方向内側端部は、溶接等の公知の態様で本体部10Aの側面に固定される。
延在部分10Bは例えば断面逆L字状の鋼材で構成され、
図2で示す様に、延在部分10Bの高さ寸法は半径方向外方ほど減少している。
【0021】
延在部分10Bにおいて、本体部10Aに対して対称位置にある(相対する)1対の延在部分10B1、10B2におけるロックボルト軸方向(
図2の上下方向)の本体部10A下面からの高さH12は、他の1対の延在部分10B3、10B4(
図2では延在部分10B4は図示せず)のロックボルト軸方向(
図2で上下方向)の高さ寸法H34よりも小さく設定される。
そして、前記高さ寸法H34と高さ寸法H12の差異は、少なくとも異形鉄筋2(補強部材)の直径寸法よりも大きく設定されている。以て、異形鉄筋2を配置した際に、延在部分10B1、10B2に保持される異形鉄筋2と、延在部分10B3、10B4に保持される異形鉄筋2とが干渉せずに、互い違いに延在せしめている。
なお、4つの延在部分10B1〜10B4は、本体部10Aに対する相対位置、延在する方向を除き、同一に構成されている。
【0022】
延在部分10Bの半径方向外方端部近傍の上面に設けられた補強部材固定具10Cは、
図3に示す様に、一部領域(
図3では上方)が開放した断面多角形の中空筒形に金属板(例えば鋼板)を成型した部材である。そして、開放した領域から異形鉄筋2が挿入される。
補強部材保持用治具10を上面から見た状態が
図4で示されている。
図4において、本体部10Aから円周方向について等間隔に(中心角が等しく90度となる様に)延在部分10B1〜10B4が半径方向外方に延在しており、その半径方向外方端部近傍の上面には補強部材固定具10Cが固定されている。
補強部材固定具10Cは、その軸方向(保持する異形鉄筋2の軸方向、配策方向)が、固定される延在部分10B1〜10B4が延在する方向(半径方向)に対して直角になる様に、延在部分10B1〜10B4の各々に固定されている。
【0023】
図2、
図4で示す補強部材保持用治具10により異形鉄筋2(補強部材)を保持した状態が
図5に示されている。上述した様に、補強部材保持用治具10は、図示しないロックボルト1の上端部近傍に固定される。
図5において、補強部材保持用治具10の延在部分10B(10B1〜10B4)の半径方向外方端部近傍の補強部材固定具10Cには、異形鉄筋21、22が保持されている。そして、
図5で紙面に垂直な方向には、延在部分10B1、10B2の補強部材固定具10Cに保持された異形鉄筋21が保持(配策)されている。また、延在部分10B3、10B4(10B4は
図5では図示せず)の補強部材固定具10Cには、
図5において左右方向に延在して配策される異形鉄筋22が保持されている。
【0024】
異形鉄筋21と異形鉄筋22は、補強部材保持用治具10を設けた空間或いはロックボルト1(
図1)の施工領域の上方空間において垂直に交差する。
ここで、異形鉄筋21が延在している平面と異形鉄筋22が延在している平面(概略同一の平面)は、ロックボルト1(
図1)の軸方向(補強部材保持用治具10の本体部10Aの軸方向)と直交している。換言すれば、
図5、
図1から明らかなように、異形鉄筋2(21、22:補強部材)とロックボルト1(地山補強材)は、直交する様な相対位置に保持されている。
【0025】
図6は、補強部材保持用治具10により異形鉄筋2(補強部材)を保持して、ロックボルト1(
図1)周辺に異形鉄筋2を配置した状態を示している。
図6で示す状態で、ロックボルト1の施工領域に吹付材(例えば、モルタル・コンクリート)を吹き付けることにより、異形鉄筋2(補強部材)を内蔵したロックボルト1(地山補強材)の受圧板3(
図1参照)を形成することが出来る。
なお
図1において、符号5は受圧板3を地山側に押圧定着させる定着板を示しており、符号6は定着ナットを示している。
また、
図6で示すロックボルトの施工領域と隣接する領域においても、
図1〜
図6を参照して説明した態様で、異形鉄筋2(補強部材)を内蔵した受圧板3を形成することが出来る。
図6において、点線で示す異形鉄筋2は、
図6で示す補強部材保持用治具10とは別の補強部材保持用治具10で保持されている異形鉄筋2である。
【0026】
第1実施形態の施工に際しては、先ず既存吹付層100に切削され且つ固化材Cが充填されているボーリング孔BHにロックボルト1を挿入し、ロックボルト1の雄ネジMSに補強部材保持用治具10の本体部10Aの雌ネジFSを螺合して、補強部材保持用治具10をロックボルト1に固定する。
次に、補強部材保持用治具10の延在部分10Bの半径方向外方端部近傍に設けられた補強部材固定具10Cに異形鉄筋2(21、22)を挿入して、保持する。この状態で、異形鉄筋2(異形鉄筋21、22)は補強部材保持用治具10を設けた空間において相互に垂直に交差し、且つ、ロックボルト1に対して直交する様な相対位置に保持される。
そして、異形鉄筋2がロックボルト1に直交して保持された状態で、吹付材(例えば、モルタル・コンクリート)を吹き付けて、補強部材2を内蔵したロックボルト1(地山補強材)の受圧板3を形成する。
【0027】
図1〜
図6の第1実施形態によれば、補強部材保持用治具10の本体部10Aの雌ネジFSとロックボルト1の雄ネジMSを螺合して補強部材保持用治具10をロックボルト1に取り付け、且つ、半径方向外方に位置する補強部材固定具10Cに異形鉄筋2を保持させることにより、異形鉄筋2をロックボルト1に対して直交する様な相対位置に保持することが出来る。そのため、多数の固定アンカーを打設して補強材(例えば鉄筋)の設置する角度や延在する方向を調整する必要がない。
ここで、異形鉄筋2は、補強部材保持用治具10から円周方向に等間隔で(中心角が等しく90度となるように)配置された延在部分10Bに設置した補強部材固定具10Cにより保持されるため、直交する2方向に延在する異形鉄筋2(異形鉄筋21、22)は、ロックボルトの施工領域上で垂直に交差するが、
図2で示す高さ寸法H12、H34は異形鉄筋2の直径以上の差異があるため、異形鉄筋21、22が干渉することはない。
【0028】
また、ロックボルト1に補強部材保持用治具10を挿入し、補強部材保持用治具10における補強部材固定具10Cに異形鉄筋2(補強部材)を挿入すれば、多数の固定アンカーを打設することなく、ロックボルト1の軸方向に対して異形鉄筋2が延在する(配策される)方向が直交する。そのため、傾斜面や切土面に積層された既存の吹付層100における作業が容易となり、作業性が向上する。
そして、上述の様に、ロックボルト1に対して異形鉄筋2を直角に配置した状態で、コンクリート・モルタル等の吹付材を吹き付けることにより、異形鉄筋2を内蔵した吹付材によりロックボルト1の受圧板3が、高品質を保ちつつ容易に造成される。
【0029】
次に、
図7、
図8を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。
第1実施形態では
図1で示す様に、既存吹付層100の表面が平坦であるのに対して、第2実施形態では、
図7で示す様に既存吹付層200の表面における凹凸や不陸が大きい場合に実施される。
以下、
図1〜
図6の第1実施形態と異なる点を主として、
図7、
図8の第2実施形態を説明する。
【0030】
図7において、既存吹付層200に切削されたボーリング孔BHにロックボルト1(地山補強材)が挿入されている。
ロックボルト1の地上側端部(上端部)近傍には補強部材保持用治具20(ロックボルト接続カプラー)が配置され、補強部材保持用治具20は本体部20Aを有し、本体部20Aには図示しない雌ネジが形成されており、当該雌ネジはロックボルト1の雄ネジMSと螺合している。当該雌ネジ(図示せず)と雄ネジMSとの螺合により、補強部材保持用治具20はロックボルト1の地上側端部(上端部)近傍に固定される。
ロックボルト1の軸方向位置において、補強部材保持用治具20の本体部20Aに隣接して、地中側には固定用ナット4が螺合されている。そして、固定用ナット4と補強部材保持用治具20の本体部20Aの雌ネジFS(
図8参照)により、所謂「ダブルナット」が構成され、ロックボルト1に対する補強部材保持用治具20のロックボルト軸方向位置が固定され、変動しない様に構成されている。
【0031】
図7における補強部材保持用治具20は、
図8で詳細に示されている。
図8において、補強部材保持用治具20の本体部20Aには雌ネジFSが形成されており、それに加えて、本体部20Aの下方には固定用ナット4が設けられている。
上述した様に、雌ネジFSを形成した補強部材保持用治具20と固定用ナット4は、「ダブルナット」を構成している。
但し、固定用ナット4は補強部材保持用治具20の構成部品ではない。換言すれば、固定用ナット4と補強部材保持用治具20とは別部品である。ただし、固定用ナット4を補強部材保持用治具20の一部として構成することも可能である。
【0032】
図8において、補強部材保持用治具20は、雌ネジFSが形成された本体部20Aと、本体部20Aから半径方向外方に延在する延在部分20Bと、延在部分20Bの半径方向外方端部近傍に設けられた補強部材固定具20Cを有している。
補強部材保持用治具20の構造は、
図1〜
図6で示す第1実施形態の補強部材保持用治具10と同様である。
図7、
図8の第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、異形鉄筋2は補強部材保持用治具20の補強部材固定具20Cにより保持され、その際、異形鉄筋2はロックボルト1に対して直交して保持される。また、2方向に延在する異形鉄筋2は、相互に直角に交差する。
【0033】
図7において、補強部材保持用治具20は固定用ナット4と共に所謂「ダブルナット」を構成しているので、補強部材保持用治具20で保持される異形鉄筋2は、ロックボルト1の軸方向における位置が一定に固定される。
この状態で、吹付材(例えば、モルタル・コンクリート)を吹き付けることにより、異形鉄筋2(補強部材)を内蔵した受圧板3が形成される。
【0034】
本発明の第2実施形態によれば、
図7で示す様に既存吹付面200における凹みが大きくても、補強部材保持用治具20と固定用ナット4による所謂「ダブルナット」構造により、補強部材保持用治具20のロックボルト1の軸方向における位置が固定される。そのため、補強部材保持用治具20のロックボルト1の軸方向が変動してしまうことが防止される。
そのため、補強部材保持用治具20のロックボルト1の軸方向における位置を適宜調節することにより、既存吹付面200における凹凸が大きくても、異形鉄筋2を適正なレベル(ロックボルトの軸方向位置)に調整して、既存の吹付材層200の表面から異形鉄筋2までの距離(ロックボルト軸方向における距離)が一定以上に保持することが出来る。
【0035】
その状態でコンクリート・モルタル等の吹付材を吹き付けることにより、受圧板3における異形鉄筋2の位置が均一となり、既存吹付面200における凹凸や不陸が大きくても、鉄筋が適正に配置された受圧板3を形成することが出来る。
換言すれば、
既存の吹付層200の表面における凹凸や不陸が大きくても、ロックボルト1の受圧板3として必要な強度を保持した受圧板3が容易に造成される。
【0036】
図7、
図8の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、
図1〜
図6の第1実施形態と同様であり、重複した説明は省略する。
【0037】
次に
図9〜
図13を参照して、本発明の第3実施形態を説明する。
図1〜
図8で示す第1、第2実施形態では、ロックボルト1を施工した後に、補強部材である異形鉄筋2を配置して、その後、吹付材を吹き付けて受圧板3を形成している。
それに対して、第3実施形態では、既存吹付層300の表面に補強部材である異形鉄筋2を配置して保持し、モルタル、コンクリート等の吹付材を吹き付けて受圧板3を形成した後に、当該受圧板3にボーリング孔BHを切削して、ロックボルト1を施工している。
以下、
図9〜
図13の第3実施形態の説明にあたっては、第1実施形態、第2実施形態と異なる点を主に説明する。
【0038】
図9において、既存吹付層300におけるロックボルト1が施工される箇所に、補強部材保持用治具30の中空筒状部材30A(箱抜材)が載置されている。そして、補強部材保持用治具30の補強部材固定具30C(
図10、
図11参照)により異形鉄筋2(補強部材)が保持されており、異形鉄筋2は既存吹付層300の上方空間において相互に直交する2方向に延在している。
図9で示す状態で吹付材(例えば、モルタル・コンクリート)を吹き付けて、異形鉄筋2(補強部材)を内蔵したロックボルト1(地山補強材)の受圧板3を形成する。その後、受圧板3、既存吹付層300にボーリング孔BHを切削して、ロックボルト1を施工する。
【0039】
既存吹付層300に配置される補強部材保持用治具30の詳細が、
図10、
図11に示されている。
図10、
図11において、補強部材保持用治具30は、例えば中空の鋼管により構成される中空筒状部材30A(箱抜材)と、中空筒状部材30Aから半径方向外方に延在する延在部分30Bと、延在部分30Bの半径方向外方端部近傍に設けられた補強部材固定具30Cを有している。
ここで中空筒状部材30Aの内径寸法はロックボルト施工用のボーリング孔BHの外形寸法よりも僅かに大きく設定されている。
なお、補強部材保持用治具30の延在部分30Bは、その高さ寸法が半径方向について一定である。
【0040】
図10、
図11で示す補強部材保持用治具30により異形鉄筋2を保持した状態が
図12に示されている。
図12において、第1実施形態、第2実施形態と同様に、異形鉄筋2は補強部材保持用治具30の補強部材固定具30Cにより保持されている。そして、異形鉄筋2は中空筒状部材30Aの軸方向(受圧板3を形成した後に施工される
図12では図示しないロックボルト1の軸方向)に対して直交する様な相対位置に保持される。
また
図13で示す様に、異形鉄筋2は、直交する2方向に延在している。
【0041】
図13において、補強部材保持用治具30により異形鉄筋21、22(補強部材)を保持して、既存吹付層の表面に異形鉄筋2を配置した状態が、平面図として示されている。
図13の中央には、補強部材保持用治具30の中空筒状部材30A(箱抜材)が示されている。
図13で示す状態で、中空筒状部材30Aの上面の開口を蓋(図示せず)により閉塞して、中空筒状部材30Aの内側の空間には吹付材が侵入することを防止する。そして、中空筒状部材30Aを含むロックボルトの施工領域に吹付材(例えば、モルタル・コンクリート)を吹き付けることにより、異形鉄筋2を内蔵したロックボルト1のための受圧板3(
図9)を形成することが出来る。
上述した通り、第3実施形態では、受圧板3を形成した後にロックボルト1を施工するので、
図13にはロックボルト1は図示されていない。
【0042】
受圧板3を形成した後、蓋を取り除いて中空筒状部材30Aの上面を開口し、中空筒状部材30A内部の中空部分を介して、ロックボルト施工用のボーリング孔BHを切削する。そしてボーリング孔BHに固化材Cを充填してロックボルト1を挿入する。
そして、定着板5、定着ナット6により、受圧板3を既存吹付層300側に定着する。
なお、ボーリング孔BHの切削に際しては、中空筒状部材30Aの内径よりも僅かに小さな外形寸法の掘削装置(例えばケーシング等:図示せず)を用いる。
【0043】
第3実施形態の施工に際しては、補強部材保持用治具30の中空筒状部材30Aを既存吹付層300のロックボルト施工箇所に載置する。次に、中空筒状部材30Aの補強部材固定具30Cにより異形鉄筋2を保持し、以て、異形鉄筋2を補強部材保持用治具30上で相互に直角に交差せしめると共に、異形鉄筋2を中空筒状部材30Aの軸方向(ロックボルト1の軸方向)に対して直交する様に保持する。
そして中空筒状部材30Aの上面の開口を蓋により閉塞してから吹付材を吹き付けて、中空筒状部材30A内に吹付材が侵入することを防止しつつ、異形鉄筋2を内蔵した受圧板3を形成する。
受圧板3を形成した後、中空筒状部材30Aの中空部分を介してロックボルト施工用のボーリング孔BHを切削し、固化剤Cを充填してロックボルト1を挿入する。
【0044】
図9〜
図13の第3実施形態によれば、既存吹付層300の表面に吹付材を吹き付けて受圧板3を形成した後にロックボルトを施工する場合に、補強部材保持用治具30を既存吹付層300におけるロックボルトを施工するべき箇所に配置し、補強部材保持用治具30により異形鉄筋2(補強部材)を保持した状態で、吹付材を吹き付けることにより、受圧板3を形成する。
その際に、補強部材保持用治具30の中空筒状部材30A(箱抜材)の開口を蓋等により閉塞すれば、当該中空筒状部材30Aの内側の空間には吹付材が侵入しない。
【0045】
吹付材が硬化した後、中空筒状部材30Aの内側空間を介して傾斜面にロックボルト挿入用のボーリング孔BHを切削して、ロックボルトによる地山補強土工を実行することが出来る。
その際に、補強部材保持用治具30により異形鉄筋2を保持するので、異形鉄筋2が適正に内蔵され配置された状態で、吹付材により傾斜面を被覆することが出来る。
図9〜
図13の第3実施形態におけるその他の構成および作用効果については、
図1〜
図8の実施形態と同様である。
【0046】
図14は、第1〜第3実施形態における補強部材固定具10C、20C、30Cの変形例を示している。
図14において、補強部材固定具40Cは金属板(例えば鋼板)で構成されており、一部領域が開放された概略半円筒形に成型されている。補強部材固定具40Cは、異形鉄筋2(
図14では図示せず)を包囲する本体部40CAと、異形鉄筋2の挿入口である開口を構成する挿入部40CBと、補強部材挿入部40CBの一部を切り欠いて異形鉄筋の挿入通路に向けて斜め下方に突出させた突起部40CCを備えている。
挿入部40CBは、本体部40CAに向かって開口面積が減少する様に構成されている。
【0047】
異形鉄筋2を挿入部40CBから挿入する際に、異形鉄筋2は、大きく開口した挿入部40CBから、補強部材固定具40Cを構成する金属板の弾性反撥力に抗して突起部40CCを通過し、ワンタッチで簡単に本体部40CAに収容される。
一方、本体部40CAに収容された異形鉄筋2は、本体部40CAから外れようとすると突起部40CCと干渉するので、異形鉄筋2が補強部材固定具40Cから外れてしまうことが防止される。
【0048】
次に、
図15を参照して、本発明の第4実施形態を説明する。
図15の第4実施形態では、既存吹付層の表面の状態と、当該表面における凹凸、不陸を考慮して、
図1〜
図13の第1〜第3実施形態の何れかを選択して、既存吹付層に対してロックボルトを施工している。
図15において、ステップS1では、既存吹付層の表面の状態を目視や従来公知の手法で確認し、所望の強度を有するかどうかを判断する。その結果、所望の強度を有さないと判断した場合(ステップS1がNo)はステップS2に進み、所望の強度を有すると判断した場合(ステップS1がYes)はステップS3に進む。
【0049】
ステップS2(ステップS1がNoの場合)は、既存吹付層の表面が所望の強度を有していない状態なので、既存吹付層の表面に新たに吹付材を吹き付けて受圧板3を形成し、その後、ロックボルト1を施工して、地山補強土工を行う。すなわち、中空筒状部材30Aを有する補強部材保持用治具30を用いて、第3実施形態(
図9〜
図13)を実施する。
一方、ステップS3(ステップS1がYesの場合)は、既存吹付層の表面が所望の強度を有しているので、ロックボルト1を施工して(地山補強土工を実行して)から既存吹付層の表面に吹付材を積層して、受圧板3を形成する。すなわち、第1実施形態(
図1〜
図6)或いは第2実施形態(
図7〜
図8)の何れかの吹付工法を実施する。
ステップS3の後、ステップS4に進む。
【0050】
ステップS4では、ステップS1がYesの場合に、第1実施形態(
図1〜
図6)の吹付工法を実施するか、或いは、第2実施形態(
図7〜
図8)の吹付工法を実施するかを判断する。
ステップS4では、既存吹付層の表面における凹凸(或いは不陸)の状態を目視や従来公知の手法で確認し、当該凹凸(或いは不陸)が大きいかどうかを判断する。
そして、既存吹付層の表面における凹凸(或いは不陸)が大きいと判断した場合(ステップS4が「Yes」)にはステップS5に進み、既存吹付層の表面における凹凸(或いは不陸)が小さく、平坦と判断した場合(ステップS4が「No」)にはステップS6に進む。なお、既存吹付層の表面における凹凸(或いは不陸)が大きいか小さいかのしきい値は、施工現場の状態により、ケース・バイ・ケースで定められる。
【0051】
ステップS5(既存吹付層の表面における凹凸或いは不陸が大きい場合)では、凹凸或いは不陸が大きいため、第2実施形態(
図7〜
図8)の吹付工法を選択する。すなわち、ロックボルト1(地山補強材)に固定用ナット4を螺合し、固定用ナット4に隣接して補強部材保持用治具20の本体部20Aの雌ネジFSをロックボルト1の雄ネジMSに螺合して、所謂「ダブルナット」を構成して行う吹付工法を施工する。
一方、ステップS6(既存吹付層の表面における凹凸或いは不陸が小さい場合)では、凹凸或いは不陸が小さく平坦であるため、第1実施形態(
図1〜
図6)の吹付工法を選択する。
図15の第4実施形態によれば、施工するべき斜面に既に吹き付けられている吹付材の状態(既存吹付層の表面の状態)と、施工するべき斜面或いは既存吹付層の凹凸、不陸を考慮して、
図1〜
図13の実施形態(第1実施形態〜第3実施形態)から選択した最適な工法を実施することが出来る。
【0052】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
上述した様に、補強部材保持用治具10の本体部10Aの平面形状は円形として図示されているが、平面形状を多角形に構成することが可能である。また中空筒状部材(箱抜材)30Aの平面形状についても、円形に限定される訳ではなく、多角形状にすることが出来る。