特許第6556062号(P6556062)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6556062測風装置、測風システム、測風方法、及び測風プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556062
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】測風装置、測風システム、測風方法、及び測風プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01P 5/00 20060101AFI20190729BHJP
   G01P 5/12 20060101ALI20190729BHJP
   G01L 7/00 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   G01P5/00 F
   G01P5/12 M
   G01L7/00 S
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-6934(P2016-6934)
(22)【出願日】2016年1月18日
(65)【公開番号】特開2017-129366(P2017-129366A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年9月6日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2015年7月20日、2015年度日本建築学会大会(関東)、学術講演梗概集・建築デザイン発表梗概集(DVD−ROM)、構造I分野(第121〜122頁、講演番号:20061)松田哲雄、作田美和子、吉田幸彦、丸田栄蔵
(73)【特許権者】
【識別番号】516017639
【氏名又は名称】株式会社WindStyle
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】松山 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】作田 美知子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】丸田 栄蔵
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−347389(JP,A)
【文献】 特開昭51−140748(JP,A)
【文献】 特許第2511456(JP,B2)
【文献】 特許第5284230(JP,B2)
【文献】 特許第5817968(JP,B2)
【文献】 特許第3788297(JP,B2)
【文献】 特許第5494435(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P
G01F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風速又は風圧を測定する測定用センサ部からのアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する測風装置において、
ディザ信号を生成するディザ信号生成部と、
前記測定用センサ部からの前記アナログ信号に前記ディザ信号生成部により生成されたディザ信号を付加するディザ信号付加部と、
該ディザ信号が付加されたアナログ信号を所定のオーバーサンプリング周波数でオーバーサンプリングしてデジタル信号に変換するA/D変換部と、
該A/D変換部にて変換されたデジタル信号をフーリエ変換するフーリエ変換部と、
振幅スペクトルと位相スペクトルとを求める第1スペクトル演算部と、
前記振幅スペクトルの補正係数である振幅補正係数と前記位相スペクトルの補正係数である位相補正係数とを求める補正係数演算部と、
該振幅補正係数と該位相補正係数とによって前記第1スペクトル演算部にて求めた前記振幅スペクトル及び前記位相スペクトルを補正するスペクトル補正部と、
該補正を行った振幅スペクトル及び位相スペクトルに逆フーリエ変換を行う逆フーリエ変換部と、
を備え、
前記補正係数演算部は、
前記測定用センサ部と該測定用センサ部よりも応答性能が高い校正用センサ部とによる風速又は風圧の同時計測で得られた時刻歴波形をフーリエ変換して該測定用センサ部の振幅スペクトルGG(f)及び位相スペクトルPG(f)と該校正用センサ部の振幅スペクトルGH(f)及び位相スペクトルPH(f)とを求める第2スペクトル演算部と、
該第2スペクトル演算部にて求められた振幅スペクトルGG(f)及びGH(f)より振幅の比率である振幅補正係数GG(f)/GH(f)=g(f)を求める振幅補正係数演算部と、
前記第2スペクトル演算部にて求められた位相スペクトルPG(f)及びPH(f)より位相の差分である位相補正係数PG(f)−PH(f)=p(f)を求める位相補正係数演算部と、
により構成された、
ことを特徴とする測風装置。
【請求項2】
前記A/D変換部にて変換されたデジタル信号の平均化処理を行う平均化処理部、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の測風装置。
【請求項3】
前記平均化処理部にて平均化処理された信号の最初の部分にフェードイン処理を行うと共に該信号の最後の部分にフェードアウト処理を行うフェードイン・アウト処理部、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の測風装置。
【請求項4】
前記測定用センサ部は、ガラスや金属や樹脂や塗料でコーティングされてなる、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測風装置。
【請求項5】
風洞の内部に配置されて風速又は風圧を測定する測定用センサ部からのアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する測風システムにおいて、
ディザ信号を生成するディザ信号生成部と、
前記測定用センサ部からの前記アナログ信号に前記ディザ信号生成部により生成されたディザ信号を付加するディザ信号付加部と、
該ディザ信号が付加されたアナログ信号を所定のオーバーサンプリング周波数でオーバーサンプリングしてデジタル信号に変換するA/D変換部と、
該A/D変換部にて変換されたデジタル信号をフーリエ変換するフーリエ変換部と、
振幅スペクトルと位相スペクトルとを求める第1スペクトル演算部と、
前記振幅スペクトルの補正係数である振幅補正係数と前記位相スペクトルの補正係数である位相補正係数とを求める補正係数演算部と、
該振幅補正係数と該位相補正係数とによって前記第1スペクトル演算部にて求めた前記振幅スペクトル及び前記位相スペクトルを補正するスペクトル補正部と、
該補正を行った振幅スペクトル及び位相スペクトルに逆フーリエ変換を行う逆フーリエ変換部と、
を備え、
前記補正係数演算部は、
前記測定用センサ部と該測定用センサ部よりも応答性能が高い校正用センサ部とによる風速又は風圧の同時計測で得られた時刻歴波形をフーリエ変換して該測定用センサ部の振幅スペクトルGG(f)及び位相スペクトルPG(f)と該校正用センサ部の振幅スペクトルGH(f)及び位相スペクトルPH(f)とを求める第2スペクトル演算部と、
該第2スペクトル演算部にて求められた振幅スペクトルGG(f)及びGH(f)より振幅の比率である振幅補正係数GG(f)/GH(f)=g(f)を求める振幅補正係数演算部と、
前記第2スペクトル演算部にて求められた位相スペクトルPG(f)及びPH(f)より位相の差分である位相補正係数PG(f)−PH(f)=p(f)を求める位相補正係数演算部と、
により構成された、
ことを特徴とする測風システム。
【請求項6】
前記A/D変換部にて変換されたデジタル信号の平均化処理を行う平均化処理部、
を備えたことを特徴とする請求項5に記載の測風システム。
【請求項7】
前記平均化処理部にて平均化処理された信号の最初の部分にフェードイン処理を行うと共に該信号の最後の部分にフェードアウト処理を行うフェードイン・アウト処理部、
を備えたことを特徴とする請求項6に記載の測風システム。
【請求項8】
前記測定用センサ部は、ガラスや金属や樹脂や塗料でコーティングされてなる、
ことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の測風システム。
【請求項9】
測定用センサ部により風速又は風圧を測定すると共にその測定値をアナログ信号として出力する工程、
ディザ信号を生成する工程、
該生成されたディザ信号を前記アナログ信号に付加する工程、
該ディザ信号が付加されたアナログ信号を所定のオーバーサンプリング周波数でオーバーサンプリングしてデジタル信号にA/D変換する工程、
該A/D変換されたデジタル信号をフーリエ変換する工程、
振幅スペクトルと位相スペクトルとを求める工程、
前記振幅スペクトルの補正係数である振幅補正係数と前記位相スペクトルの補正係数である位相補正係数とを求める工程、
該振幅補正係数と該位相補正係数とによって前記振幅スペクトル及び位相スペクトルを補正する工程、及び
該補正を行った振幅スペクトル及び位相スペクトルに逆フーリエ変換を行う工程、
を備え、
前記振幅補正係数と前記位相補正係数とを求める工程は、
前記測定用センサ部と該測定用センサ部よりも応答性能が高い校正用センサ部とによる風速又は風圧の同時計測で得られた時刻歴波形をフーリエ変換して該測定用センサ部の振幅スペクトルGG(f)及び位相スペクトルPG(f)と該校正用センサ部の振幅スペクトルGH(f)及び位相スペクトルPH(f)とを求める工程と、
該求められた振幅スペクトルGG(f)及びGH(f)より振幅の比率である振幅補正係数GG(f)/GH(f)=g(f)を求める工程と、
前記求められた位相スペクトルPG(f)及びPH(f)より位相の差分である位相補正係数PG(f)−PH(f)=p(f)を求める工程と、
からなる、
ことを特徴とする測風方法。
【請求項10】
前記A/D変換されたデジタル信号の平均化処理を行う工程、
を備えたことを特徴とする請求項9に記載の測風方法。
【請求項11】
前記平均化処理された信号の最初の部分にフェードイン処理を行うと共に、該信号の最後の部分にフェードアウト処理を行う工程、
を備えたことを特徴とする請求項10に記載の測風方法。
【請求項12】
前記測定用センサ部は、ガラスや金属や樹脂や塗料でコーティングされてなる、
ことを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載の測風方法。
【請求項13】
コンピュータに、
ディザ信号を生成する手順、
風速又は風圧を測定した測定用センサ部からのアナログ信号に該生成されたディザ信号を付加する手順、
該ディザ信号が付加されたアナログ信号を所定のオーバーサンプリング周波数でオーバーサンプリングしてデジタル信号に変換する手順、
該変換されたデジタル信号をフーリエ変換する手順、
振幅スペクトルと位相スペクトルとを求める手順、
前記振幅スペクトルの補正係数である振幅補正係数と前記位相スペクトルの補正係数である位相補正係数とを求める手順、
該振幅補正係数と該位相補正係数とによって前記求めた振幅スペクトル及び位相スペクトルを補正する手順、
該補正を行った振幅スペクトル及び位相スペクトルに逆フーリエ変換を行う手順、
を実行させるための測風プログラムであり、
前記振幅補正係数と前記位相補正係数とを求める手順は、
前記測定用センサ部と該測定用センサ部よりも応答性能が高い校正用センサ部とによる風速又は風圧の同時計測で得られた時刻歴波形をフーリエ変換して該測定用センサ部の振幅スペクトルGG(f)及び位相スペクトルPG(f)と該校正用センサ部の振幅スペクトルGH(f)及び位相スペクトルPH(f)とを求める手順と、
該求められた振幅スペクトルGG(f)及びGH(f)より振幅の比率である振幅補正係数GG(f)/GH(f)=g(f)を求める手順と、
前記求められた位相スペクトルPG(f)及びPH(f)より位相の差分である位相補正係数PG(f)−PH(f)=p(f)を求める手順と、
からなることを特徴とする測風プログラム。
【請求項14】
前記A/D変換されたデジタル信号の平均化処理を行う手順、
を実行させることを特徴とする請求項13に記載の測風プログラム。
【請求項15】
前記平均化処理された信号の最初の部分にフェードイン処理を行うと共に該信号の最後の部分にフェードアウト処理を行う手順、
を実行させることを特徴とする請求項14に記載の測風プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風速又は風圧を測定する測風装置、測風システム、測風方法、及び測風プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、風速や風圧を測定するための測風装置は種々の分野で使用されており、様々な構造のものが提案されている。
【0003】
そして、そのような風速や風圧を測定するためのセンサ部(つまり、風速計や風圧計)には、表面がガラスや金属や樹脂や塗料などでコーティングされているものがある(非特許文献1参照)。このようなセンサ部は、指向性が低下されて全方位の測定が可能となったり、強度や耐久性や防水性が向上されたりするというメリットを有している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】東亜工業株式会社のホームページ、風洞実験装置、マルチチャンネル風速計測システム、[平成27年11月19日検索]、インターネット〈URL:http://www.toa−tec.co.jp/multi/multi_anemo.html〉
【非特許文献2】宮木紀子、外2名、「風洞実験における建物周辺の風速変動量の測定について」、日本建築学会大会学術講演梗概集、構造系、昭和52年10月、p.879−880
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようにガラスなどでコーティングを施したセンサ部は1Hz未満と応答性が悪くなってしまうため、より高い風速や風圧の変動を測定することが困難であると認識されていた。
【0006】
なお、より高い風速や風圧の変動を測定する方法としては、ガラスなどのコーティングを除去する方法なども提案されたりしたが(非特許文献2参照)、実現には種々の障害があるようで、普及するまでには至っていない。
【0007】
また、より高い風速や風圧の変動を測定する別の方法としては、
(a) 周波数応答性能が高い熱線流速計を用いる方法や、
(b) 粒子画像流速測定法(PIV)
などもあるが、コストや手間が掛かってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上述の問題を解消することのできる測風装置、測風システム、測風方法、及び測風プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点は、図1に例示するものであって、風速又は風圧を測定する測定用センサ部(2)からのアナログ信号(S)をデジタル信号(S)に変換して出力する測風装置(1)において、
ディザ信号(Sdit)を生成するディザ信号生成部(3)と、
前記測定用センサ部(2)からの前記アナログ信号(S)に前記ディザ信号生成部(3)により生成されたディザ信号(Sdit)を付加するディザ信号付加部(4)と、
該ディザ信号(Sdit)が付加されたアナログ信号(SAdit)を所定のオーバーサンプリング周波数(Fos)でオーバーサンプリングしてデジタル信号(S)に変換するA/D変換部(6)と、
該A/D変換部(6)にて変換されたデジタル信号(S)をフーリエ変換するフーリエ変換部(10)と、
振幅スペクトルと位相スペクトルとを求める第1スペクトル演算部(11)と、
前記振幅スペクトルの補正係数である振幅補正係数と前記位相スペクトルの補正係数である位相補正係数とを求める補正係数演算部(12)と、
該振幅補正係数と該位相補正係数とによって前記第1スペクトル演算部(11)にて求めた前記振幅スペクトル及び前記位相スペクトルを補正するスペクトル補正部(13)と、
該補正を行った振幅スペクトル及び位相スペクトルに逆フーリエ変換を行う逆フーリエ変換部(14)と、
を備え、
前記補正係数演算部(12)は、
前記測定用センサ部(2)と該測定用センサ部(2)よりも応答性能が高い校正用センサ部(不図示)とによる風速又は風圧の同時計測で得られた時刻歴波形をフーリエ変換して該測定用センサ部(2)の振幅スペクトルGG(f)及び位相スペクトルPG(f)と該校正用センサ部(不図示)の振幅スペクトルGH(f)及び位相スペクトルPH(f)とを求める第2スペクトル演算部(121)と、
該第2スペクトル演算部(121)にて求められた振幅スペクトルGG(f)及びGH(f)より振幅の比率である振幅補正係数GG(f)/GH(f)=g(f)を求める振幅補正係数演算部(122)と、
前記第2スペクトル演算部(121)にて求められた位相スペクトルPG(f)及びPH(f)より位相の差分である位相補正係数PG(f)−PH(f)=p(f)を求める位相補正係数演算部(123)と、
により構成されたことを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の観点は、前記A/D変換部(6)にて変換されたデジタル信号(S)の平均化処理を行う平均化処理部(8)、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の観点は、前記平均化処理部(8)にて平均化処理された信号の最初の部分(図3にて符号Δt1で示す部分)にフェードイン処理を行うと共に該信号の最後の部分(図3にて符号Δt2で示す部分)にフェードアウト処理を行うフェードイン・アウト処理部(9)、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の観点は、前記測定用センサ部(2)が、ガラスや金属や樹脂や塗料でコーティングされてなることを特徴とする。
【0013】
本発明の第5の観点は、風洞(7)の内部に配置されて風速又は風圧を測定する測定用センサ部(2)からのアナログ信号(S)をデジタル信号(S)に変換して出力する測風システム(A)において、
ディザ信号(Sdit)を生成するディザ信号生成部(3)と、
前記測定用センサ部(2)からの前記アナログ信号(S)に前記ディザ信号生成部(3)により生成されたディザ信号(Sdit)を付加するディザ信号付加部(4)と、
該ディザ信号(Sdit)が付加されたアナログ信号(SAdit)を所定のオーバーサンプリング周波数(Fos)でオーバーサンプリングしてデジタル信号(S)に変換するA/D変換部(6)と、
該A/D変換部(6)にて変換されたデジタル信号(S)をフーリエ変換するフーリエ変換部(10)と、
振幅スペクトルと位相スペクトルとを求める第1スペクトル演算部(11)と、
前記振幅スペクトルの補正係数である振幅補正係数と前記位相スペクトルの補正係数である位相補正係数とを求める補正係数演算部(12)と、
該振幅補正係数と該位相補正係数とによって前記第1スペクトル演算部(11)にて求めた前記振幅スペクトル及び前記位相スペクトルを補正するスペクトル補正部(13)と、
該補正を行った振幅スペクトル及び位相スペクトルに逆フーリエ変換を行う逆フーリエ変換部(14)と、
を備え、
前記補正係数演算部(12)は、
前記測定用センサ部(2)と該測定用センサ部(2)よりも応答性能が高い校正用センサ部(不図示)とによる風速又は風圧の同時計測で得られた時刻歴波形をフーリエ変換して該測定用センサ部(2)の振幅スペクトルGG(f)及び位相スペクトルPG(f)と該校正用センサ部(不図示)の振幅スペクトルGH(f)及び位相スペクトルPH(f)とを求める第2スペクトル演算部(121)と、
該第2スペクトル演算部(121)にて求められた振幅スペクトルGG(f)及びGH(f)より振幅の比率である振幅補正係数GG(f)/GH(f)=g(f)を求める振幅補正係数演算部(122)と、
前記第2スペクトル演算部(121)にて求められた位相スペクトルPG(f)及びPH(f)より位相の差分である位相補正係数PG(f)−PH(f)=p(f)を求める位相補正係数演算部(123)と、
により構成されたことを特徴とする。
【0014】
本発明の第6の観点は、前記A/D変換部(6)にて変換されたデジタル信号(S)の平均化処理を行う平均化処理部(8)、を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の第7の観点は、前記平均化処理部(8)にて平均化処理された信号の最初の部分(図3にて符号Δt1で示す部分)にフェードイン処理を行うと共に該信号の最後の部分(図3にて符号Δt2で示す部分)にフェードアウト処理を行うフェードイン・アウト処理部(9)、を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明の第8の観点は、前記測定用センサ部(2)が、ガラスや金属や樹脂や塗料でコーティングされてなることを特徴とする。
【0017】
本発明の第9の観点は、測定用センサ部(2)により風速又は風圧を測定すると共にその測定値をアナログ信号として出力する工程、
ディザ信号(Sdit)を生成する工程、
該生成されたディザ信号(Sdit)を前記アナログ信号(S)に付加する工程、
該ディザ信号(Sdit)が付加されたアナログ信号(SAdit)を所定のオーバーサンプリング周波数(Fos)でオーバーサンプリングしてデジタル信号(S)にA/D変換する工程、
該A/D変換されたデジタル信号(S)をフーリエ変換する工程(図2のP4参照)、
振幅スペクトルと位相スペクトルとを求める工程(図2のP5参照)、
前記振幅スペクトルの補正係数である振幅補正係数と前記位相スペクトルの補正係数である位相補正係数とを求める工程(図2のP6参照)、
該振幅補正係数と該位相補正係数とによって前記振幅スペクトル及び位相スペクトルを補正する工程(図2のP7参照)、及び
該補正を行った振幅スペクトル及び位相スペクトルに逆フーリエ変換を行う工程(図2のP8,P9参照)、
を備え、
前記振幅補正係数と前記位相補正係数とを求める工程(P6)は、
前記測定用センサ部(2)と該測定用センサ部(2)よりも応答性能が高い校正用センサ部(不図示)とによる風速又は風圧の同時計測で得られた時刻歴波形をフーリエ変換して該測定用センサ部(2)の振幅スペクトルGG(f)及び位相スペクトルPG(f)と該校正用センサ部(不図示)の振幅スペクトルGH(f)及び位相スペクトルPH(f)とを求める工程と、
該求められた振幅スペクトルGG(f)及びGH(f)より振幅の比率である振幅補正係数GG(f)/GH(f)=g(f)を求める工程と、
前記求められた位相スペクトルPG(f)及びPH(f)より位相の差分である位相補正係数PG(f)−PH(f)=p(f)を求める工程と、
からなる、
ことを特徴とする測風方法に関する。
【0018】
本発明の第10の観点は、前記A/D変換されたデジタル信号(S)の平均化処理を行う工程(図2のP2参照)、を備えたことを特徴とする。
【0019】
本発明の第11の観点は、前記平均化処理された信号の最初の部分(図3にて符号Δt1で示す部分)にフェードイン処理を行うと共に、該信号の最後の部分(図3にて符号Δt2で示す部分)にフェードアウト処理を行う工程(図2のP3参照)、を備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明の第12の観点は、前記測定用センサ部(2)が、ガラスや金属や樹脂や塗料でコーティングされてなることを特徴とする。
【0021】
本発明の第13の観点は、コンピュータに、
ディザ信号(Sdit)を生成する手順、
風速又は風圧を測定した測定用センサ部(2)からのアナログ信号(S)に該生成されたディザ信号(Sdit)を付加する手順、
該ディザ信号(Sdit)が付加されたアナログ信号(SAdit)を所定のオーバーサンプリング周波数Fosでオーバーサンプリングしてデジタル信号(S)に変換する手順、
該変換されたデジタル信号(S)をフーリエ変換する手順(図2のP4参照)、
振幅スペクトルと位相スペクトルとを求める手順(図2のP5参照)、
前記振幅スペクトルの補正係数である振幅補正係数と前記位相スペクトルの補正係数である位相補正係数とを求める手順(図2のP6参照)、
該振幅補正係数と該位相補正係数とによって前記求めた振幅スペクトル及び位相スペクトルを補正する手順(図2のP7参照)、
該補正を行った振幅スペクトル及び位相スペクトルに逆フーリエ変換を行う手順(図2のP8,P9参照)、
を実行させるための測風プログラムであり、
前記振幅補正係数と前記位相補正係数とを求める手順(P6)は、
前記測定用センサ部(2)と該測定用センサ部(2)よりも応答性能が高い校正用センサ部(不図示)とによる風速又は風圧の同時計測で得られた時刻歴波形をフーリエ変換して該測定用センサ部(2)の振幅スペクトルGG(f)及び位相スペクトルPG(f)と該校正用センサ部(不図示)の振幅スペクトルGH(f)及び位相スペクトルPH(f)とを求める手順と、
該求められた振幅スペクトルGG(f)及びGH(f)より振幅の比率である振幅補正係数GG(f)/GH(f)=g(f)を求める手順と、
前記求められた位相スペクトルPG(f)及びPH(f)より位相の差分である位相補正係数PG(f)−PH(f)=p(f)を求める手順と、
からなることを特徴とする測風プログラムに関する。
【0022】
本発明の第14の観点は、前記A/D変換されたデジタル信号(S)の平均化処理を行う手順(図2のP2参照)、を実行させることを特徴とする。
【0023】
本発明の第15の観点は、前記平均化処理された信号の最初の部分(図3にて符号Δt1で示す部分)にフェードイン処理を行うと共に該信号の最後の部分(図3にて符号Δt2で示す部分)にフェードアウト処理を行う手順(図2のP3参照)、を実行させることを特徴とする。
【0024】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0025】
上記した各観点によれば、前記測定用センサ部がガラスや金属や樹脂や塗料等でコーティングされていて応答性能が低下していても、より高い風速変動や風圧変動を捉えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明に係る測風装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、測定用センサ部の出力信号に補正を施す手順を示すフローチャート図である。
図3図3は、フェードイン処理及びフェードアウト処理を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図1乃至図3に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0028】
本発明に係る測風装置は、風速又は風圧を測定する測定用センサ部からのアナログ信号をデジタル信号に変換して出力するものである。
【0029】
本発明に係る測風装置は、図1に符号1で例示するように、
・ ディザ信号Sditを生成するディザ信号生成部3と、
・ 前記測定用センサ部2からの前記アナログ信号Sに前記ディザ信号生成部3により生成されたディザ信号Sditを付加するディザ信号付加部4と、
・ 該ディザ信号Sditが付加されたアナログ信号SAditを所定のオーバーサンプリング周波数(例えば、10kHz以上)Fosでオーバーサンプリングしてデジタル信号Sに変換するA/D変換部6と、
・ 該A/D変換部6にて変換されたデジタル信号Sをフーリエ変換するフーリエ変換部10と、
・ 該フーリエ変換した結果に基づいて振幅スペクトルと位相スペクトルとを求める第1スペクトル演算部11と、
・ 前記振幅スペクトルの補正係数である振幅補正係数と前記位相スペクトルの補正係数である位相補正係数とを求める補正係数演算部12と、
・ 該振幅補正係数と該位相補正係数とによって前記第1スペクトル演算部11にて求めた前記振幅スペクトル及び前記位相スペクトルを補正するスペクトル補正部13と、
・ 該補正を行った振幅スペクトル及び位相スペクトルに逆フーリエ変換を行う逆フーリエ変換部14と、
を備えており、前記補正係数演算部12は、
・ 前記測定用センサ部2と該測定用センサ部2よりも応答性能が高い校正用センサ部(不図示)とによる風速又は風圧の同時計測で得られた時刻歴波形をフーリエ変換して該測定用センサ部2の振幅スペクトルGG(f)及び位相スペクトルPG(f)と該校正用センサ部の振幅スペクトルGH(f)及び位相スペクトルPH(f)とを求める第2スペクトル演算部121と、
・ 該第2スペクトル演算部121にて求められた振幅スペクトルGG(f)及びGH(f)より振幅の比率である振幅補正係数GG(f)/GH(f)=g(f)を求める振幅補正係数演算部122と、
・ 前記第2スペクトル演算部121にて求められた位相スペクトルPG(f)及びPH(f)より位相の差分である位相補正係数PG(f)−PH(f)=p(f)を求める位相補正係数演算部123と、
により構成されている。この場合、前記A/D変換部6にて変換されたデジタル信号Sの平均化処理を行う平均化処理部8、を備えていても良い。また、前記測定用センサ部2としては、ガラスや金属や樹脂や塗料でコーティングされた風速計や風圧計(つまり、測風器)を挙げることができるが、ガラスや金属や樹脂や塗料以外の公知の材料でコーティングされた風速計や風圧計を排除するものではない。ここで、風速計としては、市販の風速計を用いれば良いが、好ましくは、サーミスタや白金巻線や半導体を使った熱式の風速計(無指向性の風速計)を挙げることができる。
【0030】
本発明によれば、前記測定用センサ部2がガラスなどでコーティングされていて応答性能が低下していても、より高い風速変動や風圧変動を捉えることができる。例えば、前記測定用センサ部2が1Hzくらいの応答性能でしか測定できないもの(つまり、1Hz以上の周波数になると出力(応答倍率)が減衰して行って測定できないセンサ)であっても、本発明を適用することによって、例えば、100Hzくらいの周波数での測定が可能となる。また、例えば、前記測定用センサ部2が1秒毎の値(つまり、風速や風圧の値)しか測定できないものであっても、本発明を適用することによって、例えば、10m秒毎の値(つまり、風速や風圧の瞬間値)まで細かく測定できる。つまり、本発明によれば、風速や風圧の時間的変化をより細かく測定する(つまり、より高い周波数領域まで測定する)ことが可能となる。
【0031】
ところで、本発明に係る測風装置1には、前記平均化処理部8にて平均化処理された信号の最初の部分(図3に符号Δt1で示す部分)にハニング窓を使ってフェードイン処理を行うと共に、該信号の最後の部分(図3に符号Δt2で示す部分)にフェードアウト処理を行うフェードイン・アウト処理部9を設けておくと良い。これらのフェードイン処理及びフェードアウト処理によって、平均化処理された信号の最初の値と最後の値とが“該信号の波形の平均値”に略等しくなり、風速や風圧を精度良く測定することができる。
【0032】
従来、ガラスなどでコーティングされている風速計(測定用センサ部2)は、指向性が緩和等される反面、応答性が悪くなって風速の高い変動は測定しづらくなると考えられていた。しかしながら、そのような風速計であっても高周波側の成分には有効な信号が含まれているので、上述のような処理を施すことによりより高い風速変動を測定することができる。また、ガラスなどでコーティングされている風圧計についても同様の効果を得ることができる。
【0033】
一方、本発明に係る測風システムAは、風速又は風圧を測定する測定用センサ部2からのアナログ信号をデジタル信号に変換して出力するものであって、該測定用センサ部2は風洞7の内部に配置されている。そして、該測風システムAは、
・ ディザ信号Sditを生成するディザ信号生成部3と、
・ 前記測定用センサ部2からの前記アナログ信号Sに前記ディザ信号生成部3により生成されたディザ信号Sditを付加するディザ信号付加部4と、
・ 該ディザ信号Sditが付加されたアナログ信号SAditを所定のオーバーサンプリング周波数Fosでオーバーサンプリングしてデジタル信号Sに変換するA/D変換部6と、
・ 該A/D変換部6にて変換されたデジタル信号Sをフーリエ変換するフーリエ変換部10と、
・ 該フーリエ変換した結果に基づいて振幅スペクトルと位相スペクトルとを求める第1スペクトル演算部11と、
・ 前記振幅スペクトルの補正係数である振幅補正係数と前記位相スペクトルの補正係数である位相補正係数とを求める補正係数演算部12と、
・ 該振幅補正係数と該位相補正係数とによって前記第1スペクトル演算部11にて求めた前記振幅スペクトル及び前記位相スペクトルを補正するスペクトル補正部13と、
・ 該補正を行った振幅スペクトル及び位相スペクトルに逆フーリエ変換を行う逆フーリエ変換部14と、
を備え、
前記補正係数演算部12は、
・ 前記測定用センサ部2と該測定用センサ部2よりも応答性能が高い校正用センサ部(不図示)とによる風速又は風圧の同時計測で得られた時刻歴波形をフーリエ変換して該測定用センサ部2の振幅スペクトルGG(f)及び位相スペクトルPG(f)と該校正用センサ部の振幅スペクトルGH(f)及び位相スペクトルPH(f)とを求める第2スペクトル演算部121と、
・ 該第2スペクトル演算部121にて求められた振幅スペクトルGG(f)及びGH(f)より振幅の比率である振幅補正係数GG(f)/GH(f)=g(f)を求める振幅補正係数演算部122と、
・ 前記第2スペクトル演算部121にて求められた位相スペクトルPG(f)及びPH(f)より位相の差分である位相補正係数PG(f)−PH(f)=p(f)を求める位相補正係数演算部123と、
により構成されている。この場合、前記A/D変換部6にて変換されたデジタル信号Sの平均化処理を行う平均化処理部8、を備えていると良い。また、前記測定用センサ部2としては、ガラスや金属や樹脂や塗料でコーティングされた風速計や風圧計(つまり、測風器)を挙げることができるが、ガラスや金属や樹脂や塗料以外の公知の材料でコーティングされた風速計や風圧計を排除するものではない。
【0034】
風洞実験においては、風洞7の中に縮尺模型などの試験体を置いて人工的に小規模な風の流れを発生させて局所的な風速を測定することが行われるが、そのような風洞実験は相似則が適用される物理シミュレーションであって、風洞7内で経過する時間は、実際の経過時間の数分の一から数百分の一とかのスケールである。そのため、該風洞7内で測定する風速もより高周波数域まで測定しなければならない。本発明によれば、そのような風洞実験において、ガラスなどでコーティングして応答性に劣る測定用センサ部2を用いても、風速の瞬間値を測定することができる。つまり、本発明はこのような風洞実験において風速の瞬間値を測定するのに特に有効である。
【0035】
ところで、本発明に係る測風システムAには、前記平均化処理部8にて平均化処理された信号の最初の部分(図3に符号Δt1で示す部分)にハニング窓を使ってフェードイン処理を行うと共に、該信号の最後の部分(図3に符号Δt2で示す部分)にフェードアウト処理を行うフェードイン・アウト処理部9を設けておくと良い。これらのフェードイン処理及びフェードアウト処理によって、平均化処理された信号の最初の値と最後の値とが“該信号の波形の平均値”に略等しくなり、風速や風圧を精度良く測定することができる。
【0036】
一方、本発明に係る測風方法は、
・ 測定用センサ部2により風速又は風圧を測定すると共にその測定値をアナログ信号Sとして出力する工程、
・ ディザ信号Sditを生成する工程、
・ 該生成されたディザ信号Sditを前記アナログ信号Sに付加する工程、
・ 該ディザ信号Sditが付加されたアナログ信号SAditを所定のオーバーサンプリング周波数Fosでオーバーサンプリングしてデジタル信号SにA/D変換する工程、
・ 該A/D変換されたデジタル信号Sをフーリエ変換する工程(図2のP4参照)、
・ 該フーリエ変換した結果に基づいて振幅スペクトルと位相スペクトルとを求める工程(図2のP5参照)、
・ 前記振幅スペクトルの補正係数である振幅補正係数と前記位相スペクトルの補正係数である位相補正係数とを求める工程(図2のP6参照)、
・ 該振幅補正係数と該位相補正係数とによって前記振幅スペクトル及び位相スペクトルを補正する工程(図2のP7参照)、及び
・ 該補正を行った振幅スペクトル及び位相スペクトルに逆フーリエ変換を行う工程(図2のP8,P9参照)、
を備え、
前記振幅補正係数と前記位相補正係数とを求める工程P6は、
・ 前記測定用センサ部2と該測定用センサ部2よりも応答性能が高い校正用センサ部(不図示)とによる風速又は風圧の同時計測で得られた時刻歴波形をフーリエ変換して該測定用センサ部2の振幅スペクトルGG(f)及び位相スペクトルPG(f)と該校正用センサ部の振幅スペクトルGH(f)及び位相スペクトルPH(f)とを求める工程と、
・ 該求められた振幅スペクトルGG(f)及びGH(f)より振幅の比率である振幅補正係数GG(f)/GH(f)=g(f)を求める工程と、
・ 前記求められた位相スペクトルPG(f)及びPH(f)より位相の差分である位相補正係数PG(f)−PH(f)=p(f)を求める工程と、
からなることを特徴とする。この場合、前記A/D変換されたデジタル信号Sの平均化処理を行う工程(図2のP2参照)を備えていても良い。また、本発明に係る測風方法は、前記平均化処理された信号の最初の部分(図3に符号Δt1で示す部分)にハニング窓を使ってフェードイン処理を行うと共に、該信号の最後の部分(図3に符号Δt2で示す部分)にフェードアウト処理を行うフェードイン・アウト処理工程P3を備えていても良い。これらのフェードイン処理及びフェードアウト処理によって、平均化処理された信号の最初の値と最後の値とが“該信号の波形の平均値”に略等しくなり、風速や風圧を精度良く測定することができる。さらに、前記測定用センサ部2としては、ガラスや金属や樹脂や塗料でコーティングされた風速計や風圧計(つまり、測風器)を挙げることができるが、ガラスや金属や樹脂や塗料以外の公知の材料でコーティングされた風速計や風圧計を排除するものではない。
【0037】
本発明によれば、前記測定用センサ部2がガラスなどでコーティングされていて応答性能が低下していても、より高い風速変動や風圧変動を捉えることができる。
【0038】
一方、本発明に係る測風プログラムは、コンピュータに、
・ ディザ信号Sditを生成する手順、
・ 風速又は風圧を測定した測定用センサ部2からのアナログ信号Sに該生成されたディザ信号Sditを付加する手順、
・ 該ディザ信号Sditが付加されたアナログ信号SAditを所定のオーバーサンプリング周波数Fosでオーバーサンプリングしてデジタル信号Sに変換する手順、
・ 該変換されたデジタル信号Sをフーリエ変換する手順(図2のP4参照)、
・ 該フーリエ変換した結果に基づいて振幅スペクトルと位相スペクトルとを求める手順(図2のP5参照)、
・ 前記振幅スペクトルの補正係数である振幅補正係数と前記位相スペクトルの補正係数である位相補正係数とを求める手順(図2のP6参照)、
・ 該振幅補正係数と該位相補正係数とによって前記求めた振幅スペクトル及び位相スペクトルを補正する手順(図2のP7参照)、
・ 該補正を行った振幅スペクトル及び位相スペクトルに逆フーリエ変換を行う手順(図2のP8,P9参照)、
を実行させるための測風プログラムであり、
前記振幅補正係数と前記位相補正係数とを求める手順P6は、
・ 前記測定用センサ部2と該測定用センサ部2よりも応答性能が高い校正用センサ部(不図示)とによる風速又は風圧の同時計測で得られた時刻歴波形をフーリエ変換して該測定用センサ部2の振幅スペクトルGG(f)及び位相スペクトルPG(f)と該校正用センサ部の振幅スペクトルGH(f)及び位相スペクトルPH(f)とを求める手順と、
・ 該求められた振幅スペクトルGG(f)及びGH(f)より振幅の比率である振幅補正係数GG(f)/GH(f)=g(f)を求める手順と、
・ 前記求められた位相スペクトルPG(f)及びPH(f)より位相の差分である位相補正係数PG(f)−PH(f)=p(f)を求める手順と、
からなることを特徴とする。この場合、前記A/D変換されたデジタル信号Sの平均化処理を行う手順(図2のP2参照)、を実行させるようにしても良い。
【0039】
ところで、本発明に係る測風プログラムが、前記平均化処理された信号の最初の部分(図3に符号Δt1で示す部分)にハニング窓を使ってフェードイン処理を行うと共に、該信号の最後の部分(図3に符号Δt2で示す部分)にフェードアウト処理を行う手順(図2のP3参照)を実行するようにしても良い。これらのフェードイン処理及びフェードアウト処理によって、平均化処理された信号の最初の値と最後の値とが“該信号の波形の平均値”に略等しくなり、風速や風圧を精度良く測定することができる。
【実施例1】
【0040】
風速計の高周波側(数Hz〜100Hz程度)の出力信号(電圧)は数百分の一〜数千分の一のオーダーで減衰する。仮に、該高周波側の必要な信号が1/1000に減衰している場合、通常程度の精度で計測するためには最低でも1/1000のさらに1/1000、すなわち、10bit+10bit=20bit程度以上のA/D変換をする必要がある。しかしながら、市販されている比較的安価なA/D変換器は12〜18bit程度のものが主流で20bitを超えるものはかなり高額となる。多数のA/D変換器を使って多チャンネルで風速計測をする場合には、このようなA/D変換器のコスト高はかなりの問題となる。
【0041】
本実施例では、前記測定用センサ部2としては、白金巻線がガラスでコーティングされている風速計(東亜工業株式会社製の風速プローブ。型式はVP−100)を使用し、前記A/D変換部6としては、18bitのA/D変換器(ナショナルインスルツメンツ社製。型式はUSB−6289)を使っている。
【0042】
本実施例においては、前記測定用センサ部2からのアナログ信号Sに対してディザリングを行った。具体的には、前記ディザ信号生成部3によって0.5bit程度のランダムノイズ(ディザ信号)Sditを生成し、前記ディザ信号付加部4によって該ランダムノイズSditを前記アナログ信号Sに付加した。
【0043】
そして、該ディザ信号Sditが付加されたアナログ信号SAditを前記A/D変換部6によってオーバーサンプリングしてデジタル信号Sに変換した。具体的には、必要とするサンプリング周波数の数倍から数百倍のサンプリング周波数で測定することでホワイトノイズ(主に量子化誤差であるが、外部からのランダムノイズも含んだもの)のレベルを落とし(つまり、公知のように、ノイズ電力をオーバーサンプリングによって高い周波数まで引き延ばすことによって、所定の信号帯域(つまり、サンプリング周波数の半分の信号帯域)の部分でのノイズ電力の総和を小さくし)、必要な信号を相対的に大きくし、浮き上がらせるようにした。また、50Hzの電源ノイズを浮き上がらせて除去しやすくした。
【0044】
なお、高周波数域での周波数成分を計測するため、以下の手順で補正を行った。すなわち、
・ 上述のようにA/D変換を行い、風速の時刻歴波形を得た(図2のP1)。
・ 得られた風速時刻歴波形を平均化処理し、本来必要とする周波数のデータに変換した(図2のP2)。
・ 平均化処理された風速時刻歴波形を、フェードイン/フェードアウト処理をした後に、下式(1)によってフーリエ変換をし、振幅スペクトルGG(f)と位相スペクトルPG(f)とを求めた(下式(2)(3)。図2のP3〜P5)。
・ 振幅補正係数g(f)と位相補正係数p(f)とを用いて、前記振幅スペクトルGG(f)と前記位相スペクトルPG(f)とを補正した(下式(4)(5)。図2のP6,P7)。
・ 補正後の振幅スペクトルCGG(f)と位相スペクトルCPG(f)とに逆フーリエ変換を行い、時刻歴波形に戻した(下式(6)〜(8)。図2のP8〜P10)。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【0045】
ところで、上述の振幅補正係数g(f)と位相補正係数p(f)の算出は次のようにして行った。
・ 前記測定用センサ部2よりも応答性能が高い風速計(日本カノマックス株式会社製の平行流形プローブ0247R−T5。以下、“校正用風速計”とする)と前記測定用センサ部2とを用いて、風速の同時計測を行い、風速の時刻歴波形(校正用風速計の時刻歴波形XH(t)と、前記測定用センサ部2の時刻歴波形XG(t))を得た。
・ それらの時刻歴波形(XH(t)及びXG(t))をフーリエ変換し(式(9)(10))、振幅スペクトルと位相スペクトルとを求めた(式(11)〜(14))。
・ それらのスペクトルから下式(15)(16)によって補正係数g(f)とp(f)とを算出した。
【数9】
【数10】
【数11】
【数12】
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の測風装置、測風システム、測風方法、及び測風プログラムは風環境評価のための風洞実験にて風速や風圧の測定に利用することができ、具体的には、風工学や建築や自動車の風洞実験やエアコンの風速(風圧)測定など、様々な技術分野における風速や風圧の測定に利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 測風装置
2 測定用センサ部
3 ディザ信号生成部
4 ディザ信号付加部
6 A/D変換部
7 風洞
8 平均化処理部
9 フェードイン・アウト処理部
10 フーリエ変換部
11 第1スペクトル演算部
12 補正係数演算部
13 スペクトル補正部
14 逆フーリエ変換部
121 第2スペクトル演算部
122 振幅補正係数演算部
123 位相補正係数演算部
測風システム
os オーバーサンプリング周波数
アナログ信号
Adit ディザ信号が付加されたアナログ信号
dit ディザ信号
デジタル信号
図1
図2
図3