特許第6556086号(P6556086)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556086
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】ハイドロゲルシート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/14 20060101AFI20190729BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20190729BHJP
   C08L 41/00 20060101ALI20190729BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20190729BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20190729BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20190729BHJP
   C08F 220/06 20060101ALN20190729BHJP
   C08F 228/02 20060101ALN20190729BHJP
   C08F 212/14 20060101ALN20190729BHJP
【FI】
   C08L101/14
   C08L33/02
   C08L41/00
   C08L25/04
   C08K5/053
   C08F2/44 B
   !C08F220/06
   !C08F228/02
   !C08F212/14
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-66221(P2016-66221)
(22)【出願日】2016年3月29日
(65)【公開番号】特開2017-61668(P2017-61668A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2018年2月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-188867(P2015-188867)
(32)【優先日】2015年9月25日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】西海 健悟
(72)【発明者】
【氏名】岡本 光一朗
(72)【発明者】
【氏名】笹原 秀一
【審査官】 長岡 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−084710(JP,A)
【文献】 特開2015−059184(JP,A)
【文献】 特開2014−181276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/14
C08L 23/00− 47/00
C08F 2/00− 2/60
C08F 6/00−246/00
C08J 3/00− 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水及び多価アルコールと、それらを含有した高分子マトリックスとから構成されたハイドロゲルシートであって、
前記高分子マトリックスが、1個のエチレン性不飽和基を有する単官能性モノマーと、ジビニルベンゼン及びジビニルスルホンから選択される多官能性モノマーとの共重合体とを含み、
前記共重合体が、その主鎖内にエステル結合及びアミド結合を備えず、かつ前記主鎖に結合する親水性基を有し、
前記高分子マトリックスが、前記ハイドロゲルシート100重量部中に、1〜30重量部含まれ、
前記共重合体100重量部中に、前記多官能性モノマー由来の成分が0.1〜5重量部の割合で含まれ、
前記ハイドロゲルシートの引張り試験における破断強度が5kPa以上、破断伸びが200%以上であり、
前記ハイドロゲルシートが、前記水に溶解したアルカリ成分を更に含むことを特徴とするハイドロゲルシート。
【請求項2】
アルカリ成分を含んだ時の25%圧縮強度が、アルカリ成分を含まない時の25%圧縮強度の90%以上である請求項1に記載のハイドロゲルシート。
【請求項3】
前記単官能性モノマーが(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸亜鉛、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸、アリルスルホン酸ナトリウム、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−((メタ)アクリロイルオキシ)−1−プロパンスルホン酸、3−((メタ)アクリロイルオキシ)−1−プロパンスルホン酸カリウム、3−((メタ)アクリロイルオキシ)−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、3−((メタ)アクリロイルオキシ)−2−メチル−1−プロパンスルホン酸カリウム、N−ビニルアセトアミド及びN−ビニルホルムアミドから選択される請求項1又は2に記載のハイドロゲルシート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のハイドロゲルシートを製造する方法であって、
水、多価アルコール、1個のエチレン性不飽和基を有する単官能性モノマー、2〜6個のエチレン性不飽和基を有する多官能性モノマー及び重合開始剤を含むハイドロゲル前駆体をシート状に成形する工程と、
前記単官能性モノマー及び多官能性モノマーを重合させることによりハイドロゲルシートを得る工程とを含み、
重合後のハイドロゲルシートをアルカリ水溶液に浸漬することで前記水にアルカリ成分が溶解されることを特徴とするハイドロゲルシートの製造方法。
【請求項5】
前記多価アルコールが、前記ハイドロゲル前駆体100重量部中に20〜70重量部含まれる請求項4に記載のハイドロゲルシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロゲルシート及びその製造方法に関する。本発明のハイドロゲルシートは、アルカリ二次電池、電気防食工程のバックフィル、再アルカリ化用部材、脱塩用部材等の強度や耐アルカリ性を求められる用途に好適に使用できる。
【背景技術】
【0002】
ハイドロゲルは、親水性高分子鎖間が架橋された三次元ネットワーク構造を持つ高分子マトリックスを含んでおり、医療分野や工業分野において幅広い用途を有する。特に二次電池の分野では、安全性を高めるために、ハイドロゲルを用いた電解質のゲル化が古くから注目されている。
ニッケル−水素二次電池や次世代二次電池として注目されているニッケル−亜鉛二次電池は、電解液に水溶液を用いている。そのため、これら二次電池は、リチウムイオン二次電池のような有機溶媒を電解液に用いる非水系二次電池と比べて、高い安全性を有する。しかしながら、高濃度のアルカリ水溶液が電解液として使用されているため、アルカリ水溶液は、液漏れにより皮膚・衣類へ付着した場合、皮膚に傷害を起こしたり、衣類を傷めたりすることがある。電解液をハイドロゲルに保持することで、液漏れ防止が可能であり、長期的に安全かつ安定的な電池の使用が可能となる。
【0003】
ハイドロゲルを電解液の保持に用いた例として、例えば、国際公開WO2002−023663号(特許文献1)や特開2007−227032号公報(特許文献2)がある。特許文献1では、架橋型ポリアクリル酸カリウムに、水酸化カリウム水溶液、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフルオロエチレン粉末を混合して混合物を得、混合物をゲル化させた後、ゲル化した混合物をガラス板に塗布・乾燥・剥離することでシート状のゲルを得、シート状のゲルを目的の厚みまで圧延することでシート状のハイドロゲルを作製している。また、特許文献2では、層状構造を有するハイドロタルサイトに水酸化アルカリ水溶液を保持させることで無機物からなるハイドロゲルを作製している。こうしたハイドロゲルは、電解液の使用安全性の向上や、電極活物質の形態変化の抑制への有効なアプローチとして用いられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2002−023663号
【特許文献2】特開2007−227032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のシート状のハイドロゲルは、水溶液を含んだ架橋ポリマーゲルの集合体により構成されている。そのため、ゲル間の相互作用が小さく、伸びが無く脆いゲルであり、ガラス板からの剥離時にゲルが破壊し、ハンドリングが困難であるという課題があった。また、シート状のハイドロゲルを作製するにあたり、ガラス板への塗布・乾燥・剥離・圧延と煩雑な作業工程が必要とされていた。
特許文献2のハイドロゲルは、伸びがなく、非常に脆いため、ハンドリングが困難であった。また、ハイドロゲルは、正極・負極と圧着する際に、圧力で水が吐き出されるため、電解液の保持性に劣るという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かくして本発明によれば、水及び多価アルコールと、それらを含有した高分子マトリックスとから構成されたハイドロゲルシートであって、
前記高分子マトリックスが、1個のエチレン性不飽和基を有する単官能性モノマーと、ジビニルベンゼン及びジビニルスルホンから選択される多官能性モノマーとの共重合体とを含み、
前記共重合体が、その主鎖内にエステル結合及びアミド結合を備えず、かつ前記主鎖に結合する親水性基を有し、
前記高分子マトリックスが、前記ハイドロゲルシート100重量部中に、1〜30重量部含まれ、
前記共重合体100重量部中に、前記多官能性モノマー由来の成分が0.1〜5重量部の割合で含まれ、
前記ハイドロゲルシートの引張り試験における破断強度が5kPa以上、破断伸びが200%以上であり、
前記ハイドロゲルシートが、前記水に溶解したアルカリ成分を更に含むことを特徴とするハイドロゲルシートが提供される。
【0007】
また、本発明によれば、上記ハイドロゲルシートを製造する方法であって、
水、多価アルコール、1個のエチレン性不飽和基を有する単官能性モノマー、2〜6個のエチレン性不飽和基を有する多官能性モノマー及び重合開始剤を含むハイドロゲル前駆体をシート状に成形する工程と、
前記単官能性モノマー及び多官能性モノマーを重合させることによりハイドロゲルシートを得る工程とを含み、
重合後のハイドロゲルシートをアルカリ水溶液に浸漬することで前記水にアルカリ成分が溶解されることを特徴とするハイドロゲルシートの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明のハイドロゲルシートは、それ自体がミクロゲルの集合体ではなく、1つのバルクゲルで構成されているため、高い機械的な強度と保水性を有している。そのため、本発明のハイドロゲルシートは、これら性質が要求される電解液の保持部材、電気防食工法のバックフィル、再アルカリ化工法、脱塩工法等に使用できる。また、本発明のハイドロゲルシートは、高分子マトリックスに含まれる共重合体が、その主鎖内にエステル結合及びアミド結合を備えず、耐アルカリ性の主骨格を有しているため、アルカリ水溶液中での形状維持が可能である。よって、長期的な使用が望まれる、アルカリ水溶液を電解液として使用する二次電池、コンクリートの再アルカリ化工法等に特に好適に使用できる。更に、本発明のハイドロゲルシートは、シート状であるため、貼り付けるだけの簡便な作業で、各種用途への適用が可能である。
【0009】
また、本発明によれば、以下の構成を有する場合、より高い機械的な強度と保水性を有したハイドロゲルシートを提供できる。
(1)ハイドロゲルシートが、水に溶解したアルカリ成分を更に含む。
(2)アルカリ成分を含んだ時の25%圧縮強度が、アルカリ成分を含まない時の25%圧縮強度の90%以上である。
(3)単官能性モノマーが(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸亜鉛、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸、アリルスルホン酸ナトリウム、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−((メタ)アクリロイルオキシ)−1−プロパンスルホン酸、3−((メタ)アクリロイルオキシ)−1−プロパンスルホン酸カリウム、3−((メタ)アクリロイルオキシ)−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、3−((メタ)アクリロイルオキシ)−2−メチル−1−プロパンスルホン酸カリウム、N−ビニルアセトアミド及びN−ビニルホルムアミドから選択され、多官能性モノマーがジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルスルホン、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル及びジメチルジアリルアンモニウムクロリドからなる群から選択される。
【0010】
更に、本発明によれば、以下の工程を有する場合、上記ハイドロゲルシートをより簡便に製造できる。
(1)多価アルコールが、ハイドロゲル前駆体100重量部中に20〜70重量部含まれる。
(2)ハイドロゲルシートが、水に溶解したアルカリ成分を更に含み、
アルカリ成分が、重合後のハイドロゲルシートをアルカリ水溶液に浸漬することで水に溶解される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(ハイドロゲルシート)
ハイドロゲルシートは、水及び多価アルコールと、それらを含有した高分子マトリックスとから構成される。
(1)高分子マトリックス
高分子マトリックスは、1個のエチレン性不飽和基を有する単官能性モノマーと2〜6個のエチレン性不飽和基を有する多官能性モノマーとの共重合体とを含む。
【0012】
高分子マトリックスは、ハイドロゲルシート100重量部中に1〜30重量部含まれる。含有量が1重量部未満の場合、ハイドロゲルシートの強度が低くなり、シート形状を保てなくなることがある。30重量部より多いと、重合速度が速くなり、高分子マトリックスが低分子量化するため、強度が低くなり、破断強度が低下してしまうことがある。また、重合時の反応熱が非常に高くなり、高分子マトリックスが解重合することで、破断強度が低下することがある。また、電池の電解質として使用した場合、インピーダンスが高く、望む電池特性が出ないことがある。好ましい含有量は2〜27重量部であり、より好ましい含有量は5〜25重量部である。
【0013】
共重合体は、その主鎖内にエステル結合及びアミド結合を備えず、かつ主鎖に結合する親水性基を有している。親水性基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、スルホ基等が挙げられる。親水性基は、機械的強度の向上の観点から、主鎖以外の高分子鎖と結合していることは適切ではない。親水性基の数は、高分子マトリックスを構成する単官能性モノマーの親水性官能基当量(官能基1つあたりの分子量)が300g/mol以下であることが好ましい。
共重合体は、高分子マトリックス100重量部中に60〜100重量部含まれることが好ましい。含有量が60重量部未満の場合、ハイドロゲルシートの強度が低くなり、シート形状を保てなくなることがある。高分子マトリックスは共重合体のみからなっていることがより好ましい。
【0014】
(a)単官能性モノマー
単官能性モノマーは、1個のエチレン性不飽和基を有する限り特に限定されない。単官能性モノマーは、水に対して可溶性を有するモノマーが好ましい。ここで、可溶性とは、100gの水に1g以上溶解することを意味する。例えば、単官能性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸亜鉛、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸、アリルスルホン酸ナトリウム、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−((メタ)アクリロイルオキシ)−1−プロパンスルホン酸、3−((メタ)アクリロイルオキシ)−1−プロパンスルホン酸カリウム、3−((メタ)アクリロイルオキシ)−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、3−((メタ)アクリロイルオキシ)−2−メチル−1−プロパンスルホン酸カリウム、N−ビニルアセトアミド及びN−ビニルホルムアミド等が挙げられる。単官能性モノマーは、1種のみであってもよく、複数種の混合物であってもよい。
【0015】
(b)多官能性モノマー
多官能性モノマーは、2〜6個のエチレン性不飽和基を有する限り特に限定されない。多官能性モノマーは、エチレン性不飽和基間にエステル結合及びアミド結合を備えないモノマーが好ましい。例えば、多官能性モノマーとしては、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルスルホン、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド等が挙げられる。多官能性モノマーは、1種のみであってもよく、複数種の混合物であってもよい。
【0016】
(c)多官能性モノマーの割合
多官能性モノマー由来の重合体は、共重合体100重量部に対して、0.1〜5重量部の割合で含まれる。共重合体中の多官能性モノマー由来の重合体の含有量は、熱分解GCにより測定できる。熱分解GCによる測定は、例えば、以下の手順で行うことができる。(多官能性モノマーとしてのジビニルベンゼン由来重合体のジビニルベンゼン含有量測定)
重合後のハイドロゲルシート約0.05gをできるだけ小さな大きさにカット後、遠沈管に精秤し、メタノール約10mlを加えて10hr以上常温静置する。約15分間超音波洗浄抽出して再度よく混合した後、3500rpm×30min遠心分離し、上澄み液を捨てて沈殿物を取り出し、沈殿物を絶乾することでハイドロゲルシートに含まれる共重合体樹脂成分の分離を行い、これを測定試料とする。
試料を0.1〜0.5mg精秤し、キューリー点が590℃の強磁性金属体(パイロホイル:日本分析工業社製)に圧着するように包み、キューリーポイントパイロライザーJPS−700型(日本分析工業社製)熱分解装置で下記条件にて測定して生成したジビニルベンゼンモノマーをガスクロマトグラフ GC7820(アジレント・テクノロジー社製)(検出器:FID)を用いて測定し、ジビニルベンゼン単独重合体を同様に測定して得られたジビニルベンゼンモノマーピーク面積を使用して予め準備した検量線より含有量を算出する。
【0017】
(測定条件)
・加熱(590℃−5sec)
・オーブン温度(300℃)
・ニードル温度(300℃)
・ カラム(GRACE社製 EC−5(φ0.25mm×30m×膜厚0.25μm)
(カラム温度条件)
・温度条件(50℃で0.5分保持後、200℃まで10℃/分で昇温し、更に320℃まで20℃/分で昇温し320℃にて0.5分保持)
・キャリアーガス(He)
・He流量(39.553ml/分)
・注入口圧力(100kPa)
・注入口温度(300℃)
・検出器温度(300℃)
・スプリット比(1/50)
検量線作成用標準試料は、積水化成品工業社製のジビニルベンゼン単独重合体を使用する。
ジビニルベンゼン単独重合体粒子は、以下の方法に作製したものを使用した。
即ち、攪拌機、温度計を備えた重合器にラウリル硫酸ナトリウム0.2重量部を溶解させた脱イオン水2000重量部を入れ、そこへ第三リン酸カルシウム200重量部を分散させた。これに予め調製しておいたジビニルベンゼン(商品名「DVB−810」新日鉄住金化学社製)1000重量部に2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)10重量部を溶解させた混合液を入れて、その液をT.Kホモミキサー(特殊機化工業社製)にて4000rpmで10分間攪拌して重合器を65℃に加熱して攪拌しながら懸濁重合を行った後、室温まで冷却した。ここで得られた懸濁液を吸引濾過により10000重量部の脱イオン水で洗浄した後、乾燥してジビニルベンゼン重合体粒子を得た。粒度分布測定装置Multisizer3(ベックマン・コールター社製)で測定したジビニルベンゼン単独重合体粒子の平均粒子径は11.5μmであった。
【0018】
多官能性モノマー由来の重合体の割合が0.1重量部未満の場合、架橋密度が低くなり、シート形状を保てなくなることがある。5重量部より多い場合、多官能性モノマー由来の重合体が相分離してしまい、架橋構造が不均一なハイドロゲルシートとなることがある。好ましい割合は0.2〜3重量部であり、より好ましい割合は0.4〜1.5重量部である。
なお、共重合体は、単官能性モノマーと多官能性モノマーに由来する成分からなるが、共重合体製造時の各モノマーの使用量と、共重合体中の各成分の含有量とは、ほぼ同じである。
【0019】
(d)他のモノマー
本発明の効果を阻害しない範囲で、上記単官能性モノマーと多官能性モノマー以外の他のモノマー由来の成分が、共重合体に上記単官能性モノマー及び/又は多官能性モノマーと共重合する形態で含まれていてもよい。他のモノマーとしては、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリグリセリンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。全モノマー100重量部中に占める他のモノマーの割合は、5重量部以下であることが好ましい。全モノマーが上記単官能性モノマーと多官能性モノマーからなることがより好ましい。
【0020】
(e)他の重合体
また、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記単官能性モノマーと多官能性モノマーの共重合体以外の他の重合体が、前記共重合体と重合しない形態で高分子マトリックスに含まれていてもよい。他の重合体としては、ポリビニルアルコールやセルロース誘導体等が挙げられる。高分子マトリックス100重量部中に占める他の重合体の割合は、40重量部未満であることが好ましい。
【0021】
(2)水
水は、ハイドロゲルシート100重量部中に5〜99重量部含まれることが好ましい。含有量が5重量部未満の場合、アルカリ成分を含有できる量が少なくなり、電池の電解質として使用した場合、インピーダンスが高く、望む電池特性が出ないことがある。99重量部より多いと、ハイドロゲルシートの強度が低くなり、シート形状を保てなくなることがある。より好ましい含有量は10〜95重量部であり、更に好ましい含有量は20〜90重量部である。
水にはアルカリ成分が溶解していてもよい。アルカリ成分が溶解していることで、二次電池用のゲル電解質やコンクリートの再アルカリ化工法に使用可能となる。アルカリ成分としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等が挙げられる。アルカリ成分の溶解量は、水100重量部に対して、70重量部までの量であることが好ましい。溶解量が70重量部より多い場合、電解質濃度が高くなりすぎるため、インピーダンスが高くなることがある。溶解量は、ゲル電解質の用途では4〜70重量部、再アルカリ化工法の用途では20〜70重量部とすればよい。
【0022】
アルカリ成分を含んだ時の25%圧縮強度は、アルカリ成分を含まない時の25%圧縮強度の90%以上であることが好ましい。90%以上であれば、長期間シート形状を維持したままでのハイドロゲルシートの使用が可能であり、特にゲル電解質の用途に好適である。より好ましくは95〜100%である。
また、用途によっては、水に酸成分が溶解していてもよい。
【0023】
(3)多価アルコール
ハイドロゲルシートは、多価アルコールを含むことで、ハイドロゲルシートの保水性を向上できる。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のジオールの他、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジグリセリン、ポリグリセリン等の多価アルコール縮合体、ポリオキシエチレングリセリン等の多価アルコール変成体が挙げられる。多価アルコールは、1種のみであってもよく、複数種の混合物であってもよい。
【0024】
多価アルコールの含有量は、ハイドロゲルシート100重量部に対して、1〜70重量部であることが好ましい。1重量部より少ないと、十分な保水性が得られず、ハイドロゲルシートの安定性が低下することがある。70重量部より多いと、高分子マトリックスが保持できる多価アルコールの量を超えてしまうことがあるため、多価アルコールがブリードアウトして物性変動が生じることがある。より好ましい含有量は2〜65重量部であり、更に好ましい含有量は5〜60重量部である。
また、取り扱い時、安定に形状を保持できる良好なシートを作製するためには、ハイドロゲル前駆体全量100重量部に対して、20重量部以上含むことが好ましい。20重量部以上含むと、重合反応が十分進行して分子量が大きくなるため、破断強度が高くなり、良好なハイドロゲルシートが得られる。
【0025】
(4)その他の成分
(a)支持材
ハイドロゲルシートは、織布、不織布、多孔質シート等の支持材を含んでいてもよい。支持材を含むことで、シートの形状を容易に維持できる。支持材の材質としては、セルロース、絹、麻等の天然繊維やポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の合成繊維、それらの混紡が挙げられる。アルカリ成分を含ませる場合、アルカリ成分により分解する成分を持たないレーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成繊維、それらの混紡が好ましい。支持材は、ハイドロゲルシートの表面、裏面及び中間のいずれに位置していてもよい。
【0026】
(b)保護フィルム
ハイドロゲルシートは、その表面及び/又は裏面に保護フィルムを備えていてもよい。保護フィルムをセパレーターとして用いる場合は、離型処理されていることが好ましい。表面及び裏面の両方に保護フィルムを備える場合、表裏異なる剥離強度に調整してもよい。また、保護フィルムを支持材として用いる場合は離型処理の必要はない。
保護フィルムとしては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、紙、樹脂フィルム(例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム)をラミネートした紙等からなるフィルムが挙げられる。離型処理としては、熱又は紫外線で架橋、硬化反応させる焼き付け型のシリコーンコーティングが挙げられる。
【0027】
(c)添加剤
ハイドロゲルシートは、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、電解質、防腐剤、殺菌剤、防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、消泡剤、安定剤、香料、界面活性剤、着色剤、薬効成分(例えば、抗炎症剤、ビタミン剤、美白剤等)が挙げられる。
例えば、電解質を含むことで導電性のハイドロゲルシートが得られる。導電性のハイドロゲルシートは、例えば、心電図測定用電極、低周波治療器用電極、各種アース電極等の生体電極として使用可能である。
また、アクリル系エマルジョンやリン酸エステル型界面活性剤などの粘着剤を添加することで、ハイドロゲルシートに粘着性を付与することができる。粘着性のハイドロゲルシートは、例えば、電気防食工程のバックフィル、再アルカリ化用部材、脱塩用部材のシートとして使用可能である。
【0028】
(5)ハイドロゲルシートの物性
ハイドロゲルシートは5kPa以上の破断強度を有することが好ましい。5kPa以上の破断強度を有することで、ハンドリング性を向上できる。より好ましい破断強度は5〜50kPaである。
また、ハイドロゲルシートは200%以上の破断伸びを有することが好ましい。200%以上の破断伸びを有することで、ハンドリング性を向上できる。より好ましい破断伸びは200〜800%である。
【0029】
(ハイドロゲルシートの製造方法)
ハイドロゲルシートは、例えば、
(i)水、多価アルコール、1個のエチレン性不飽和基を有する単官能性モノマー、2〜6個のエチレン性不飽和基を有する多官能性モノマー及び重合開始剤を含むハイドロゲル前駆体をシート状に成形する工程(成形工程)
(ii)単官能性モノマー及び多官能性モノマーを重合させることによりハイドロゲルシートを得る工程(重合工程)
を経ることにより製造できる。
【0030】
(1)成形工程
この工程での重合開始剤には、熱重合開始剤及び光重合開始剤のいずれも使用できる。この内、重合前後での成分の変化の少ない光重合開始剤を使用することが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(製品名:イルガキュア1173,BASF・ジャパン社製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(製品名:イルガキュア184,BASF・ジャパン社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(製品名:イルガキュア2959,BASF・ジャパン社製)、2−メチル−1−[(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(製品名:イルガキュア907,BASF・ジャパン社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(製品名:イルガキュア369,BASF・ジャパン社製)等が挙げられる。重合開始剤は、1種のみであってもよく、複数種の混合物であってもよい。
【0031】
重合開始剤の使用量は、全モノマー(単官能性モノマー、多官能性モノマー及び任意に他のモノマー)の合計100重量部に対して、0.1〜5重量部であることが好ましい。使用量が0.1重量部未満の場合、重合反応が十分に進行せず、得られたハイドロゲルシート中に、未重合のモノマーが残存することがある。5重量部より多いと、重合反応後の重合開始剤の残物により、臭気を帯びたり、残物の影響により物性が低下したりすることがある。より好ましい使用量は0.2〜3重量部であり、更に好ましい使用量は0.4〜1.5重量部である。
【0032】
ハイドロゲル前駆体のシート状への成形は、例えば、(i)ハイドロゲル前駆体を型枠に注入する方法、(ii)保護フィルム間にハイドロゲル前駆体を流し込み、一定の厚みに保持する方法、(iii)保護フィルム上にハイドロゲル前駆体をコーティングする方法、等が挙げられる。方法(i)は、任意の形状のハイドロゲルシートを得ることができる利点がある。方法(ii)及び(iii)は、比較的薄いハイドロゲルシートを得ることができる利点がある。支持材を含むハイドロゲルシートは、方法(i)により製造することが適切である。
なお、ハイドロゲル前駆体には、上記の他のモノマー、添加剤等が含まれていてもよい。
【0033】
(2)重合工程
シート状に成形されたハイドロゲル前駆体を熱付与又は光照射により重合させることでハイドロゲルシートを得ることができる。熱付与及び光照射の条件は、ハイドロゲルシートを得ることができる限り、特に限定されず、一般的な条件を採用できる。
なお、以下の実施例1では、単官能性モノマーとしてアクリル酸を、多官能性モノマーとしてジビニルベンゼンを使用してハイドロゲルシートが得られている。ここで、特開2003−178797号公報では、これらの2種のモノマーは、溶媒を使用しない塊状重合で重合可能であるが、この場合、重合時の温度制御ができず、両モノマーを実用的なレベルで均質に重合できない、とされている。しかしながら、本願の発明者によれば、そのようなことはなく、保湿剤として添加した多価アルコールが相溶化剤として働くことで、意外にも液系で重合可能であることを見出している。
【0034】
(3)その他の工程
その他の工程として、アルカリ成分含有工程が挙げられる。アルカリ成分含有工程では、重合後のハイドロゲルシートをアルカリ水溶液に浸漬することで、ハイドロゲルシート中の水にアルカリ水溶液中のアルカリ成分が溶解される。この浸漬は、所望するアルカリ成分量のハイドロゲルシートを得るための条件下で行われる。例えば、浸漬温度としては、4〜80℃の冷却、常温(約25℃)及び加温下で行うことができる。浸漬時間は、常温下では、6〜336時間とすることができる。
浸漬後に、ハイドロゲルシートを乾燥させることで、含水量の調整を行ってもよい。その調整としては、例えば、浸漬前後のハイドロゲルシートの重量をほぼ同一にすることが挙げられる。
また、ハイドロゲルシートを電気防食工程のバックフィル、再アルカリ化用部材、脱塩用部材のシートに用いる場合、粘着性があることが好ましい。粘着性を付与するには、アクリル系エマルジョンやリン酸エステル型界面活性剤などの粘着剤を(1)成型工程で添加すればよい。
【0035】
(ハイドロゲルシートの用途)
ハイドロゲルシートは、アルカリ二次電池、電気防食工程のバックフィル、再アルカリ化用部材、脱塩用部材等の強度や耐アルカリ性を求められる用途に使用できる。また、ハイドロゲルシートに導電性を付与すれば、生体電極として使用できる。
(1)アルカリ二次電池
ここでのアルカリ二次電池は、正極及び負極間の電解質層としてハイドロゲルシートを使用し得る二次電池である。そのような二次電池としては、ニッケル−水素二次電池やニッケル−亜鉛二次電池が挙げられる。これら二次電池は、電解液としてアルカリ水溶液を使用しているため、二次電池からの液漏れをハイドロゲルシートにより防止できる。
アルカリ二次電池の構成は、電解質層としてハイドロゲルシートを使用すること以外は、特に限定されず、一般的な構成をいずれも使用できる。例えば、ニッケル−水素二次電池の正極としてはニッケル又はニッケル合金を、負極としては白金触媒を、ニッケル−亜鉛二次電池の正極としてはニッケル又はニッケル合金を、負極としては亜鉛又は酸化亜鉛を使用できる。正極及び負極は、ニッケル、アルミニウム等からなる集電体上に形成されていてもよい。
ハイドロゲルシートは、セパレーターの役割を兼ねていてもよい。この場合、ハイドロゲルシートは支持材を備えていることが好ましい。
【0036】
(2)電気防食工程のバックフィル
ここでのバックフィルは、鋼材を含むコンクリート構造物において、鋼材の腐食によりコンクリート構造物にひび割れのような劣化が発生することを抑制する部材を意味する。この用途では、鋼材に防食電流を流すために、ハイドロゲルシートに導電性が付与されていることが好ましい。また、ハイドロゲルシートは、それを鋼材及び防食電流を流す電極と電気的に接触させることを容易にするために、粘着性が付与されていることが好ましい。
【0037】
(3)再アルカリ化用部材及び脱塩用部材
再アルカリ化及び脱塩は、コンクリート構造物において求められている。これまでの再アルカリ化及び脱塩は、そのための組成物を現場で塗布することで行われていたため、作業効率を上げることが望まれている。本発明のハイドロゲルシートを使用すれば、現場でシートを貼るのみであるから、作業効率をこれまでより格段に上げることができる。再アルカリ化及び脱塩部材用のハイドロゲルシートには、粘着性が付与されていることが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。まず、実施例で測定する各種物性の測定方法を記載する。
(アルカリ水溶液の吸収量)
まず、アルカリ浸漬前のハイドロゲルシートを計量する。その後、250メッシュのポリエチレン製ティーバッグにハイドロゲルシートを入れ、ティーバッグをアルカリ水溶液に24時間浸漬し、ティーバッグを引き上げて10分間水切りをしたものを計量する。吸収量は以下のように求める。
吸収量は、24時間アルカリ水溶液に浸漬したハイドロゲルシートが入っていないティーバッグの重量をブランクとし、アルカリ浸漬により膨潤したハイドロゲルシートが入ったティーバッグの重量から、ブランクと浸漬前のハイドロゲルシートの重量を減じた値を、浸漬前のハイドロゲルシートの重量で除して、100を掛けた値を吸収量とした。また、水切り時にハイドロゲルシートが柔らかくなってメッシュを通り抜ける場合は、「液状化」したと記載する。
【0039】
(引張り試験での破断強度及び破断伸び)
アルカリ浸漬前のハイドロゲルシートを20mm×50mm×4mm厚に切り取り、試験片とする。引っ張り試験機として、テクスチャーアナライザーTA.XT Plus(英弘精機社製)を用いる。上下の冶具に20mm×20mm×4mm部を挟み込み、厚みが2mmになるように固定する。引張り速度0.5mm/secでハイドロゲルシートを破断するまで引っ張る。
破断強度及び破断伸びは以下のように求める。
破断強度 σu=Pu/A0(kPa)
u:破断時の荷重(N)
0:シートの断面積(=20mm×4mm=80mm2
破断伸び φ=100×(L−L)(%)
:破断時の標点間距離(mm)
:試験前の標点間距離(=10mm)
【0040】
(25%圧縮強度)
アルカリ浸漬前のハイドロゲルシートを20mm×20mm×4mm厚に切り取り、アルカリ成分を含まない時の試験片とする。また、同様にアルカリ浸漬前のハイドロゲルシートを20mm×20mm×4mm厚に切り取り、4Mの水酸化カリウム水溶液に室温で24時間浸漬する。浸漬後、浸漬前の重量まで乾燥させることでアルカリ成分を含んだときの試験片とする。引っ張り試験と同様に、テクスチャーアナライザーTA.XT Plus(英弘精機社製)を用いた。30φのステンレス製円柱測定冶具を用いて0.5mm/secで圧縮し、1mm圧縮時の応力を25%圧縮強度とする。
【0041】
(実施例1)
アクリル酸(日本触媒社製)20重量部、ジビニルベンゼン(新日鉄住金化学社製)0.20重量部、グリセリン(日本油脂社製)60重量部、イオン交換水19.80重量部、重合開始剤としてイルガキュア1173(BASF・ジャパン社製)0.20重量部をいれて混合し、ハイドロゲル前駆体を作製した。次に、剥離性PETフィルム上に4mm厚のシリコン枠を置き、枠内にハイドロゲル前駆体を流し込んだ。この後、ハイドロゲル前駆体上に剥離性PETフィルムを載せることで、シート状のハイドロゲル前駆体を得た。その後、小型UV重合機(JATEC社製、J−cure1500、メタルハライドランプ型名MJ−1500L)にてコンベアー速度0.4m/min、ワーク間距離150mmの条件でエネルギー7000mJ/cmの紫外線を照射する工程を3回行って重合することで、4mm厚のハイドロゲルシートを作製した。
重合後のハイドロゲルシートを4Mの水酸化カリウム水溶液に室温で24時間浸漬したところ、浸漬前のハイドロゲルシート100重量部に対して、4Mの水酸化カリウム水溶液442重量部を吸収した、アルカリ水溶液を含むハイドロゲルシートを得た。
【0042】
(実施例2)
ジビニルベンゼンの使用量を0.04重量部、イオン交換水の使用量を19.96重量部にしたこと以外は実施例1と同様にしてハイドロゲルシートを得た。重合後のハイドロゲルシートを4Mの水酸化カリウム水溶液に室温で24時間浸漬したところ、浸漬前のハイドロゲルシート100重量部に対して、4Mの水酸化カリウム水溶液502重量部を吸収した、アルカリ水溶液を含むハイドロゲルシートを得た。
(実施例3)
ジビニルベンゼン0.20重量部をジビニルスルホン0.14重量部にし、グリセリンの使用量を30重量部、イオン交換水の使用量を49.86重量部にしたこと以外は実施例1と同様にしてハイドロゲルシートを得た。重合後のハイドロゲルシートを4Mの水酸化カリウム水溶液に室温で24時間浸漬したところ、浸漬前のハイドロゲルシート100重量部に対して、4Mの水酸化カリウム水溶液485重量部を吸収した、アルカリ水溶液を含むハイドロゲルシートを得た。
【0043】
(実施例4)
ジビニルベンゼンの使用量を0.30重量部、イオン交換水の使用量を19.70重量部にしたこと以外は実施例1と同様にしてハイドロゲルシートを得た。重合後のハイドロゲルシートを4Mの水酸化カリウム水溶液に室温で24時間浸漬したところ、浸漬前のハイドロゲルシート100重量部に対して、4Mの水酸化カリウム水溶液375重量部を吸収した、アルカリ水溶液を含むハイドロゲルシートを得た。
(実施例5)
ジビニルベンゼンの使用量を0.16重量部、グリセリンの使用量を45重量部、イオン交換水の使用量を34.84重量部にしたこと以外は実施例1と同様にしてハイドロゲルシートを得た。重合後のハイドロゲルシートを4Mの水酸化カリウム水溶液に室温で24時間浸漬したところ、浸漬前のハイドロゲルシート100重量部に対して、4Mの水酸化カリウム水溶液379重量部を吸収した、アルカリ水溶液を含むハイドロゲルシートを得た。
【0044】
(実施例6)
単官能性モノマーとして、ビニルスルホン酸(旭化成ファインケム社製)20重量部を使用し、グリセリンの使用量を50重量部、イオン交換水の使用量を29.80重量部にしたこと以外は実施例1と同様にしてハイドロゲルシートを得た。重合後のハイドロゲルシートを4Mの水酸化カリウム水溶液に室温で24時間浸漬したところ、浸漬前のハイドロゲルシート100重量部に対して、4Mの水酸化カリウム水溶液458重量部を吸収した、アルカリ水溶液を含むハイドロゲルシートを得た。
(実施例7)
単官能性モノマーとして、アクリル酸12重量部とp−スチレンスルホン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)8重量部を使用したこと以外は実施例1と同様にしてハイドロゲルシートを得た。重合後のハイドロゲルシートを4Mの水酸化カリウム水溶液に室温で24時間浸漬したところ、浸漬前のハイドロゲルシート100重量部に対して、4Mの水酸化カリウム水溶液299重量部を吸収した、アルカリ水溶液を含むハイドロゲルシートを得た。
【0045】
(実施例8)
アクリル酸の使用量を25重量部、ジビニルベンゼンの使用量を0.25重量部、グリセリンの使用量を30重量部、イオン交換水の使用量を44.75重量部にしたこと以外は実施例1と同様にしてハイドロゲルシートを得た。重合後のハイドロゲルシートを4Mの水酸化カリウム水溶液に室温で24時間浸漬したところ、浸漬前のハイドロゲルシート100重量部に対して、4Mの水酸化カリウム水溶液470重量部を吸収した、アルカリ水溶液を含むハイドロゲルシートを得た。
(実施例9)
グリセリン60重量部をポリエチレングリコール:PEG200(第一工業製薬社製)60重量部にし、ジビニルベンゼンの使用量を0.30重量部、イオン交換水の使用量を19.70重量部にしたこと以外は実施例1と同様にしてハイドロゲルシートを得た。重合後のハイドロゲルシートを4Mの水酸化カリウム水溶液に室温で24時間浸漬したところ、浸漬前のハイドロゲルシート100重量部に対して、4Mの水酸化カリウム水溶液571重量部を吸収した、アルカリ水溶液を含むハイドロゲルシートを得た。
【0046】
(実施例10)
グリセリン60重量部をD−ソルビトール(和光純薬社製)20重量部にし、ジビニルベンゼンの使用量を0.12重量部、イオン交換水の使用量を59.88重量部にしたこと以外は実施例1と同様にしてハイドロゲルシートを得た。重合後のハイドロゲルシートを4Mの水酸化カリウム水溶液に室温で24時間浸漬したところ、浸漬前のハイドロゲルシート100重量部に対して、4Mの水酸化カリウム水溶液426重量部を吸収した、アルカリ水溶液を含むハイドロゲルシートを得た。
(比較例1)
ジビニルベンゼンの使用量を0.01重量部、グリセリンの使用量を50重量部、イオン交換水の使用量を29.99重量部にしたこと以外は実施例1と同様にしてシート状のハイドロゲル前駆体を得た。
このハイドロゲル前駆体を実施例1と同様に紫外線照射すると、ゲル化せず、ハイドロゲルシートが得られなかった。
【0047】
(比較例2)
多官能性モノマーをジビニルベンゼンからN,N’−メチレンビスアクリルアミド(和光純薬社製)に代えたこと以外は実施例2と同様にしてハイドロゲルシートを作製した。
重合後のハイドロゲルシートを4Mの水酸化カリウム水溶液に24時間浸漬すると、液状化してしまい、シート形状を保てなかった。
(比較例3)
グリセリンを使用せず、イオン交換水の使用量を79.80重量部にしたこと以外は実施例1と同様にしてシート状のハイドロゲル前駆体を得た。
このハイドロゲル前駆体を実施例1と同様に紫外線照射すると、ハイドロゲルシートは得られるが、剥離性PETフィルムを剥離すると、ハイドロゲルシートが壊れてしまい、物性評価を行うことができなかった。
【0048】
(比較例4)
粒径20〜50μmの微粉末からなる架橋型ポリアクリル酸粒子(東亞合成社製、ジュンロンPW−120)20重量部とイオン交換水600重量部とを加えて72時間攪拌することで、架橋型ポリアクリル酸希薄水溶液を作製した。この水溶液をシリコン枠に流し込み、イオン交換水が80重量部になるまで自然乾燥することで、ハイドロゲルを得た。このハイドロゲルをプレス機で4mm厚になるように圧延することでハイドロゲルシートを作製した。
アルカリ浸漬工程は実施例1と同様にして行ったところ、浸漬前のハイドロゲルシート100重量部に対して、4Mの水酸化カリウム水溶液312重量部を吸収した、アルカリ水溶液を含むハイドロゲルシートを得た。
(比較例5)
架橋型ポリアクリル酸粒子(ジュンロンPW−120)20重量部を8重量部にし、ハイドロタルサイト(和光純薬社製)12重量部を加えたこと以外は比較例4と同様にしてハイドロゲルシートを作製した。
アルカリ浸漬工程は実施例1と同様にして行ったところ、浸漬前のハイドロゲルシート100重量部に対して、4Mの水酸化カリウム水溶液304重量部を吸収した、アルカリ水溶液を含むハイドロゲルシートを得た。
上記実施例及び比較例の原料の構成量及び結果をまとめて表1及び2に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
表1及び2から、実施例1〜10において、高分子マトリックスが、1個のエチレン性不飽和基を有する単官能性モノマーと2〜6個のエチレン性不飽和基を有する多官能性モノマーとの共重合体とを含み、共重合体が、その主鎖内にエステル結合及びアミド結合を備えず、かつ主鎖に結合する親水性基を有し、高分子マトリックスが、前記ハイドロゲルシート100重量部中に、1〜30重量部含まれ、前記共重合体100重量部中に、前記多官能性モノマー由来の重合体が0.1〜5重量部の割合で含まれている場合、引張り試験における破断強度が5kPa以上、破断伸びが200%以上であるハイドロゲルシートを得られることが分かる。
また、実施例1〜10のハイドロゲルシートは、アルカリ浸漬においても形状が保たれており、アルカリ浸漬による強度低下がほとんどないことが分かる。