(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記蓋部材に前記一次側空間に連通する第一開口部と、前記二次側空間に連通する第二開口部が設けられていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の膜モジュール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような膜モジュール20に収容される膜エレメント2がセラミックス製の膜エレメントである場合、焼成時の温度条件等に起因してある程度のサイズばらつき、具体的にはケーシング本体40の軸心方向に沿って膜エレメントの長さばらつきが発生するため、シール部材44に対する押圧力を個別に調整する必要があった。
【0006】
そのため、特許文献1に記載された膜モジュールでは、ケーシング本体40の開口端部に嵌入し、ケーシング本体との間で水密性を確保しながらケーシング本体の軸心方向に姿勢を保持したまま移動可能に構成された蓋体50が設けられ、蓋体50の位置を調整することにより、押圧力が個別に調整可能に構成されていた。
【0007】
しかし、単にシール部材44に対する押圧力を調整可能に構成されていても、二次側空間R2から一次側空間R1に高圧の洗浄水を供給する逆洗工程が実行される時に、その圧力によってシール部材44の縁部に付勢力が作用してシール部材44が移動し、押圧部P(51)による押圧状態から離脱して一次側空間R1と二次側空間とが連通してしまう虞があるという問題があった。
【0008】
一次側空間と二次側空間とが連通した場合には、逆洗工程が終了した後のろ過工程で、当該連通部を介して原水がろ過水に混入するという問題が発生する。
【0009】
本発明の目的は、逆洗時に圧力が作用しても、シール部材を介して一次側空間と二次側空間とが連通することのない膜モジュールを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明による膜モジュールの第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、膜エレメントと前記膜エレメントが収容されるケーシングを備えて構成される膜モジュールであって、前記膜エレメントの端面の周縁に配置された
前記膜エレメントとは別体の環状のシール部材と、前記シール部材を介して前記膜エレメントを押圧し、前記ケーシング内で前記膜エレメントの端面が臨み原水が通流する空間である一次側空間と前記膜エレメントの側面が臨みろ過水が通流する空間である二次側空間とを区画する押圧部と、を備え、
前記シール部材の外周面と前記ケーシングの内周面との間には、ろ過水が流通する空間を備え、前記ケーシングは、筒状部材と前記筒状部材の長手方向端部に配置される蓋部材を備え、前記押圧部は、前記蓋部材の前記ケーシングの内部空間に臨む内表面から前記長手方向に突出形成され端面で前記シール部材を押圧するとともに、内周面が前記一次側空間に臨み外周面が前記二次側空間に臨む筒状部で構成され、前記押圧部によって押圧される前記シール部材の被押圧面よりも外側である前記二次側空間側が前記被押圧面よりも高くなるように前記シール部材に形成された立上り部により構成され、前記シール部材の前記二次側空間から前記一次側空間への移動または変位を阻止するシール部材保持機構を備えている点にある。
【0011】
蓋部材のケーシングの内部空間に臨む内表面から筒状部材の長手方向に突出形成された筒状部によって構成された押圧部によってシール部材が膜エレメントに向けて押圧され、ケーシング内で一次側空間と二次側空間とに区画された状態で、シール部材に備えたシール部材保持機構、つまり押圧部によって押圧される前記シール部材の被押圧面よりも外側である前記二次側空間側が前記被押圧面よりも高くなるように前記シール部材に形成された立上り部によってシール部材の二次側空間から一次側空間への移動または変位が抑制され、一次側空間と二次側空間との連通が好適に阻止されるようになる。
【0012】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、膜エレメントと前記膜エレメントが収容されるケーシングを備えて構成される膜モジュールであって、前記膜エレメントの端面の周縁に配置された
前記膜エレメントとは別体の環状のシール部材と、前記シール部材を介して前記膜エレメントを押圧し、前記ケーシング内で前記膜エレメントの端面が臨み原水が通流する空間である一次側空間と前記膜エレメントの側面が臨みろ過水が通流する空間である二次側空間とを区画する押圧部と、を備え、
前記シール部材の外周面と前記ケーシングの内周面との間には、ろ過水が流通する空間を備え、前記ケーシングは、筒状部材と前記筒状部材の長手方向端部に配置される蓋部材を備え、前記押圧部は、前記蓋部材の前記ケーシングの内部空間に臨む内表面から前記長手方向に突出形成され端面で前記シール部材を押圧するとともに、内周面が前記一次側空間に臨み外周面が前記二次側空間に臨む筒状部で構成され、前記一次側空間に臨む前記シール部材の内周面と当接するように前記筒状部から前記一次側空間側である前記膜エレメントの端面に向けて延出形成された延出部により構成され、前記シール部材の前記二次側空間から前記一次側空間への移動または変位を阻止するシール部材保持機構を備えている点にある。
【0013】
蓋部材のケーシングの内部空間に臨む内表面から筒状部材の長手方向に突出形成された筒状部によって構成された押圧部によってシール部材が膜エレメントに向けて押圧され、ケーシング内で一次側空間と二次側空間とに区画された状態で、押圧部に備えたシール部材保持機構、つまり一次側空間に臨むシール部材の内周面と当接するように筒状部から一次側空間側である膜エレメントの端面に向けて延出形成された延出部によってシール部材の二次側空間から一次側空間への移動または変位が抑制され、一次側空間と二次側空間との連通が好適に阻止されるようになる。
【0014】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記立上り部は、前記一次側空間に向かって下り勾配に形成されている点にある。
【0015】
シール部材に設けられた立上り部が一次側空間に向かって下り勾配に形成、換言すると二次側空間に向かって上り勾配に形成されていると、二次側空間に洗浄水による大きな圧力が作用しても、シール部材が押圧部を通過して一次側空間に移動したり変位したりすることが効果的に阻止される。
【0016】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記蓋部材に前記一次側空間に連通する第一開口部と、前記二次側空間に連通する第二開口部が設けられている点にある。
【0017】
蓋部材に形成された筒状部によって構成された押圧部によってシール部材が押圧され、その状態でケーシング内が一次側空間と二次側空間とに区画されるとともに、蓋部材に備えた第一開口部が一次側空間に連通し、蓋部材に備えた第二開口部が二次側空間に連通する。
【発明の効果】
【0018】
以上説明した通り、本発明によれば、逆洗時に圧力が作用しても、シール部材を介して一次側空間と二次側空間とが連通することのない膜モジュールを提供することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明による膜モジュール及び膜ろ過装置について説明する。
図1及び
図2(a)〜(d)には本発明による膜モジュール20で構成される膜ろ過ユニット1が例示されている。膜ろ過装置1は、4台の膜モジュール20と、各膜モジュール20に原水を供給する原水ヘッダー管22と、各膜モジュール20に洗浄用空気または水や薬液を供給する洗浄ヘッダー管24と、各膜モジュール20のろ過水を集水するろ過水ヘッダー管26を備えている。
【0021】
各膜モジュール20は、膜ケーシング100及び膜ケーシング100に収容された膜エレメント2で構成され、膜ケーシング100は、基台30と、ケーシング本体40と、上部蓋体50と、ケーシング本体40に支持される支持部60と、ケーシング本体40の長手方向つまり軸心方向に沿って支持部60と上部蓋体50との相対位置を調整可能に保持する保持部70等を備えて構成されている。
【0022】
ろ過工程では、原水ヘッダー管22から供給された原水が膜エレメント2の一次側から二次側へ通過することでろ過され、ろ過水は上部蓋体50に形成されたろ過水流出管54からろ過水ヘッダー管26に集水される。洗浄工程(逆洗工程)では、ろ過水ヘッダー管26から洗浄水が供給されて、膜エレメント2の二次側から一次側へ洗浄水が通過し洗浄廃水が原水ヘッダー管22から排水される。さらにその後、洗浄ヘッダー管24から洗浄用空気等が供給されてフラッシングされる。尚、基台30、ケーシング本体40、上部蓋体50、支持部60、保持部70等の材質は金属や樹脂等、ろ過工程や洗浄工程の圧力に耐え得るものであればよい。
【0023】
図4には本発明による膜ろ過装置1に使用する膜エレメント2が例示されている。当該膜エレメント2は接合材層11を介して接合された複数のセラミックス成形体6で構成されている。
【0024】
図3(a),(b)に示すように、当該セラミックス成形体6は略直方体形状を呈し、一対の対向する端面6a,6b間に複数本の流体通流孔3が貫通形成されている。セラミックス成形体6には、一端が基端側端面6aで閉じ、他端が対向側端面6bで開放されるとともに側面6c,6dで開放された複数のスリット5が形成されている。
【0025】
対向側端面6bから視て、中心から側面6dに延びるように形成された2本のスリット5と、当該2本のスリット5と直交するように側面6cに延びるように形成された6本のスリット5によって、流体通流孔3が8ブロックに区画され、流体通流孔3が中心に1本形成されるとともに各ブロックに10本形成されている。
【0026】
本実施形態では、セラミックス成形体6に流体通流孔3が81本形成され、各流体通流孔3の内壁面にはろ過膜が形成されている。
【0027】
このようなセラミックス成形体6は、セラミック粒状体をプレス形成することにより得られる。
【0028】
そして、接合材11が、複数のセラミックス成形体6の各対向面6a,6b間にそれぞれ配置され、流体通流孔3同士が重畳して連通するように位置決めされた状態で、所定時間、所定温度で焼成することにより、複数のセラミックス成形体6が一体に接合された多孔質体でなる基材が形成される。
【0029】
このようにして、セラミックス成形体6が7段積層され、多孔質の膜エレメントの基材が形成される。
【0030】
最後に、セラミック粒子を添加したスラリーを、セラミックス成形体6の流体通流孔3の内周面に塗布し、その後、焼成処理することにより流体通流孔3の内周面にろ過膜層4(
図4参照)が形成される。
【0031】
図4に示すように、このようにして構成された多孔質体でなる膜エレメント2の上下端面をガラスや樹脂のコーティング等によって閉塞して、流体通流孔3の例えば下端側から被処理水である原水を圧入すると、流体通流孔3の内壁に形成されたろ過膜層4で特定成分が除去されるろ過工程が進み、ろ過水が基材の表面6c,6dやスリット5から流出し、当該ろ過水を集水することにより被処理水から処理水を得ることができる。
【0032】
尚、上述した膜エレメント2は例示に過ぎず、その具体的構成は当該実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、本実施形態では複数のセラミック成形体を積層して形成しているが、押出成形によって形成する、複数の管状膜を管板を用いて並列配置で束ねる等、その他の様々な方法によって形成することができる。
【0033】
以下、膜ろ過装置1を構成する膜モジュール20の膜ケーシング100の具体的な構成を図面に基づいて詳述する。
【0034】
図6(a)〜(d)に示すように、膜モジュール20の基台30には膜ろ過装置1を構成する4台の膜モジュール20に対応して4つの凹部36が連設されている。それぞれ脚部32で支持される枠体34の中央部に、横断面が略方形のケーシング本体40に合わせて略方形の凸壁部33が形成され、その凸壁部33の内側に凹部36が形成されている。
【0035】
凹部36の中央部には原水ヘッダー管22と接続されて原水を導入する原水供給管38が一体に形成されている。また、枠体34には各凸壁部33の角部に対応する位置にケーシング本体40を締付け固定するためのボルト挿通孔31が形成されている。原水供給管38の下端縁にはOリング39aを嵌め込む環状凹部39が形成され、その下部に横設された原水ヘッダー管22と水密に連結される。また、凸壁部33の外周の下端縁にはOリング35aを嵌め込む環状凹部35が形成され、ケーシング本体40の内壁と水密に連結される。
【0036】
図7(a)〜(d)に示すように、ケーシング本体40は横断面が略方形に形成された筒状体で構成され、強度を確保するために外周面に複数本のリブ42が形成され、さらに両端側に中央部よりも拡径された鍔部43が形成されている。
【0037】
鍔部43の角部にはボルト挿通孔41が形成されている。ケーシング本体40の内部に軸心方向に上述の膜エレメント2が収容可能なように、略方形の横断面の面積は膜エレメント2の横断面の面積より大きく構成され、膜エレメント2によるろ過水が膜エレメント2の対向面6a,6aに挟まれた周面6c,6dとケーシング本体40の内周面との間に形成される二次側空間に漏出して貯溜されるように構成されている。
【0038】
基台30に形成された凸壁部33にケーシング本体40が立設され、基台30のボルト挿通孔31とケーシング本体40のボルト挿通孔41とにわたってボルトが挿入されて固定される。
【0039】
また、
図6(b)に示すように、基台30に形成された凹部36にシール部材としてのゴムパッキン44が収容され、その上に上述した膜エレメント2が収容される。凹部36の周縁部に形成された平坦面で当該ゴムパッキン44の外面が支持され、ゴムパッキン44の内面に膜エレメント2の下端面6a(
図4参照)の周縁部が圧接することで、原水供給管38と膜エレメント2の下端面6aとが水密にシールされる。
【0040】
図8(a),(b),(c)に示すように、ゴムパッキン44は中央部に原水が通流可能な開口45が形成され、内壁部46に膜エレメント2の下端面6aの角部下面と接当する段差部47が形成されている。内壁部46と膜エレメント2の周面6c,6d(
図4参照)とが密着し、外壁部48と凸壁部33の内壁とが密着するように構成されている。その結果、原水供給管38から供給される原水は、膜エレメント2の周面6c,6dとケーシング本体40との間の空間への漏洩が阻止された状態で、膜エレメント2の下端面6aから流体通流孔3に流入する。
【0041】
図5に示すように、ケーシング本体40に収容された膜エレメント2の上端面6a(
図4参照)にもゴムパッキン44が設置され、当該ゴムパッキン44を周囲から加圧して膜エレメント2の周面に密着させるパッキンカバー90でゴムパッキン44の外周部が被覆されている。ゴムパッキン44は、膜エレメント2の端面の周縁に配置される環状のシール部材として機能する。
【0042】
図9(a),(b)には、膜エレメント2を通過したろ過水をろ過水流出管54に導くための通路を確保するためのパッキンカバー90が示されている。パッキンカバー90は略方形環状の部材であって、中央部に開口91が形成され、ゴムパッキン44の外周と接するようにその内周が形成され、外周部の中央近傍から上方に向けて、上端面周方向に複数の円柱状の突起92が形成されている。
【0043】
ケーシング本体40の開口端部から鍔部43に嵌め込むように、パッキンカバー90の上方から上部蓋体50が挿入される。上部蓋体50が下方に押圧されると、上部蓋体50の内側下縁部51でゴムパッキン44が上方から押圧され、上部蓋体50の外側下縁部52で円柱状の突起92が上方から押圧されるように構成されている。
【0044】
図10(a)〜(d)に示すように、上部蓋体50は、平面視で外周がケーシング本体40の上部の鍔部43の内周よりも僅かに小さな略方形の形状を呈し、ドーム形状の天井壁53を備えている。
【0045】
天井壁53の中央部には、洗浄ヘッダー管24(
図1参照)からの洗浄用空気や水が供給される流体通流口55が形成され、略方形の外周の一辺(
図10(a)では左側の一辺)の近傍には、ろ過水を外部に導出するろ過水流出管54が上方に突出するように形成されている。
【0046】
外側下縁部52、ろ過水流出管54、流体通流口55の各周部にはOリングを収容する凹部52a,54a,55aが形成され、それぞれを通過する流体が漏れないようにシール可能に構成されている。
【0047】
従って、上部蓋体50は、外周端面に形成された凹部52aに装着されたOリングによって、ケーシング本体40の内周面に対して水密性を確保しながらケーシング本体40の軸心方向に姿勢を保持したまま移動可能になる。
【0048】
図11(a),(b),(c)に示すように、保持部70は洗浄用空気等を供給する流体通流管73が形成された略円筒状の管状部材で構成され、上端側周面にOリングを収容する凹部71が形成されるとともに、下端部に流体通流管73と上部蓋体50の流体通流口55(
図10(a)参照)との間で連通状態を保つように押圧接触する鍔部72が形成されている。
【0049】
保持部70の外周には、上下方向中央部から下方にかけて雄ネジ部74が形成され、雄ネジ部74の上方に断面六角形の回転操作部75が形成されている。
【0050】
図12(a)〜(d)に示すように、支持部60は膜ろ過装置1を構成する4台の膜モジュール20に対応して4つ連設されている。各支持部60は中央部に環状部63を備え、環状部63から平面視で十字状に4本の梁部64が延出形成されている。梁部64はドーム形状の天井壁53の上面に沿うように外方に向けて湾曲するアーチ状に形成されている。環状部63の内壁には、保持部70の雄ネジ部74と螺合する雌ネジ部66が形成されている。
【0051】
梁部64の端部には、支持部60をケーシング本体40に形成されたボルト挿通孔41にボルト固定するためのボルト挿通孔61が形成された固定部65を備えている。ケーシング本体40のボルト挿通孔41と支持部60のボルト挿通孔61とにボルトが挿通されて支持部60がケーシング本体40に固定される。
【0052】
図5に示すように、上部蓋体50に形成された流体通流口55の上部に、流体通流管73が形成された保持部70がOリングを介して配置されている。保持部70の外周部に形成された雄ネジ部74と支持部60の環状部63に形成された雌ネジ部66とが螺合することにより保持部70が平面視で上部蓋体50の中央部に位置決め保持されている。
【0053】
保持部70の回転操作部75を手動または工具を用いて回転操作することにより雄ネジ部74と雌ネジ部66の螺合の程度が調整され、その結果、支持部60を基準に保持部70によって上部蓋体50の下方への押圧の程度が調整される。
【0054】
上部蓋体50の内側下縁部51でゴムパッキン44が上方から押圧され、上部蓋体50の外側下縁部52で円柱状の突起92が上方から押圧され、さらに基台30の凹部36に配置されたゴムパッキン44との間で膜エレメント2が強固に固定される。
【0055】
上部蓋体50の内周面からケーシング本体40の軸心方向に突出形成された筒状部である内側下縁部51が、ゴムパッキン44を介して膜エレメント2を押圧し、ケーシング40内で原水が通流する空間である一次側空間R1とろ過水が通流する空間である二次側空間R2とを区画する押圧部Pとなる。そして、蓋部材50に一次側空間R1に連通する第一開口部となる流体通流口55と、二次側空間R2に連通する第二開口部となるろ過水流出管54が設けられている。
【0056】
洗浄工程(逆洗工程)でろ過水ヘッダー管26から供給される高圧の洗浄水の影響を受けて、押圧部Pによる押圧力に抗してゴムパッキン44の一次側空間R1への移動または変位による一次側空間R1と二次側空間R2との連通を阻止するシール部材保持機構Kが、ゴムパッキン44に設けられている。
【0057】
詳述すると、
図13(a)に示すように、シール部材保持機構Kは、押圧部Pによって押圧されるゴムパッキン44の被押圧面44Aに設けられ、押圧部Pより二次側空間R2側に立ち上がるように形成された立上り部で構成されている。当該立上り部は、一次側空間R1に向かって下り勾配に形成されている。
【0058】
図13(b)に示すように、押圧部Pの下面である押圧面に、周方向に沿って環状に連続する2条のビードBが形成されていることが好ましく、ビードBによってゴムパッキン44が膜エレメント2の上面6aに向けて強固に押圧され、ゴムパッキン44の一次側空間R1への移動または変位がさらに効果的に抑制されるようになる。
【0059】
図13(c)に示すように、ゴムパッキン44の被押圧面44Aに設けられ立上り部に対応した位置から押圧部Pの下面である押圧面が、平坦面から二次側空間R2へ向けて上り勾配となる傾斜面に形成され、平坦面及び傾斜面にそれぞれ周方向に沿って環状に連続する1条のビードBが形成されていてもよい。ゴムパッキン44の被押圧面44Aと押圧部Pの押圧面の形状を前記のようにすることで、ケーシング本体40内での膜エレメント2の位置を適切な位置へ調整することができるようになる。
【0060】
原水ヘッダー管22から原水が加圧供給されると、原水は膜エレメント2の下端面に開口された流体通流孔3に流入して上昇し、流体通流孔3の内面に形成されたろ過膜4でろ過されて周面6c,6d(
図4参照)からろ過水が流出する。
【0061】
膜エレメント2でろ過されたろ過水は、膜エレメント2の周面とケーシング本体40の内壁面との間に形成された空間に流出し、ケーシング本体40の上部鍔部43とゴムパッキン44を押圧するパッキンカバー90との間の空間、及び、上部蓋体50の内側下縁部51と外側下縁部52との間の空間56(
図10(d)参照)を経由して、当該空間56に連通しているろ過水流出管54の下部開口54bからろ過水流出管54に導水される。尚、
図5に示される流体通流孔3は、
図4に示す中央部の流体通流孔3である。
【0062】
セラミック成型体を焼成して得られる膜エレメント2は、ある程度の高さばらつきが生じる。しかし、押圧機構60,70によって上部蓋体50がケーシング本体40の鍔部43に対して上下方向に位置調整可能に構成され、上部蓋体50に形成されているろ過水流出管54がろ過水ヘッダー管26に対して上下方向に位置調整可能に構成されていることで、高さばらつきが吸収可能に構成されている。もちろん、それぞれの位置調整部にはOリングが備わっているので水密構造は維持される。
【0063】
また、上部蓋体50及びゴムパッキン44を取り外すと、ケーシング本体40の上部鍔部43、つまり中央部より拡径された端縁部に膜エレメント2の上端が突出しており、上部鍔部43と膜エレメント2の周面との間に隙間が形成されているので、膜エレメント2のケーシング本体40からの離脱操作や挿入操作が容易に行なえる。
【0064】
即ち、原水供給管38とろ過水流出管54とが、ケーシング本体40の長手方向に向けて、好ましくはほぼ平行な向きにケーシングの端部に配置されているので、原水供給管38及びろ過水流出管54がケーシングの周面から側方に大きく突出するようなことがなく、平面視で設置スペースを小さくすることができる。
【0065】
また、ケーシングは筒状の本体40と蓋体50とを含み、ろ過水流出管54が蓋体50に設けられているので、ろ過水流出管の端部がケーシングの周面に接続されるような態様と比較して、ケーシングの周面にろ過水流出管を配置するようなスペースが不要になり、平面視で顕著な省スペース化が図られるようになる。
【0066】
一次側空間R1と二次側空間R2との仕切り壁としても機能する蓋体50の内側下縁部51は、ゴムパッキン44、円柱状の突起92を介して膜エレメント2を保持するように構成されているので、膜エレメント2の周面と本体40内面との間に形成される空間と、ろ過水流出管54の端部とが水密状態になり、ろ過水に原水が混入することが回避される。
【0067】
以下、シール部材保持機構Kの別実施形態を説明する。
上述した実施形態では、シール部材保持機構Kは、押圧部Pによって押圧されるゴムパッキン44の被押圧面44Aに設けられ、押圧部Pより二次側空間R2側に次第に立ち上がる傾斜壁で構成された立上り部で構成された例を説明したが、
図14(a)に示すように、立上り部は、押圧部Pより二次側空間R2側にステップ的に立ち上がる段差部で構成されていてもよい。
【0068】
また、
図14(b)に示すように、押圧部Pが嵌入される溝部が形成されるように、押圧部Pにより押圧される位置を境にして一次側空間R1と二次側空間R2のそれぞれにステップ的に立ち上がる段差部で構成されていてもよい。また、押圧部Pにより押圧される位置を境にして一次側空間R1と二次側空間R2のそれぞれに次第に立ち上がる傾斜部で構成されていてもよい。
【0069】
シール部材保持機構Kは、押圧部Pに設けられていてもよい。
図14(c)に示すように、ゴムパッキン44の被押圧面44Aは平坦に形成され、ゴムパッキン44の内周面と当接するように押圧部Pから一次側空間R1側に延出形成された延出部P1によりシール部材保持機構Kが構成されていてもよい。
【0070】
図14(d)に示すように、ゴムパッキン44の下端が径方向外方に延出するような鍔部44Bが形成され、押圧部Pの外周が径方向外方に屈曲しさらに下方に延出することで、その端面で当該鍔部44Bを上から押圧するような構成であってもよい。
【0071】
図14(e)に示すように、ゴムパッキン44の被押圧面44Aに環状の凸部44Cを形成し、当該凸部44Cに外嵌するように、押圧部Pの押圧面に環状の溝部Kをシール部材保持機構Kとしてもよい。
【0072】
つまり、シール部材保持機構Kは、シール部材44に形成されていてもよいし、押圧部Pに形成されていてもよいし、協働してシール部材44を保持するようにシール部材44と押圧部Pの両方に形成されていてもよい。
【0073】
また、押圧部Pは、蓋部材50に一体に構成された内側下縁部51に限るものではなく蓋部材50と別体に形成されていてもよい。
【0074】
以上、本発明による膜モジュールについて図面を参照して基本的構成を説明したが、膜モジュールの各部の具体的な構成、サイズ、形状、材料等は、上述した実施形態で説明した態様に限定されるものではなく、本発明による作用効果を奏する範囲において適宜選択して設計可能であることはいうまでもない。