【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は冒頭に記載した種類の外科用固締要素及び脊柱安定化システムに関して、本発明によれば、特に、前記固定要素が、前記接続要素を前記接続要素受け内で押下するための押下要素を担持するという点で成就される。
【0011】
前記外科用固締要素の前記固定要素は、導入の際に前記接続要素を同時に前記接続要素受け内に押し込んで中で保持することもできるように構成することにより、今までの個別の操作ステップ、具体的には前記接続要素を前記接続要素受け内に押し込みこの接続要素を中で保持するステップを、完全に排除することが可能になる。本発明によれば、前記固定要素を導入しつつ既に前記接続要素を前記接続要素受け内に押し込むことができる。前記操作ステップを排除するおかげで、外科処置の全継続時間を短縮し、更に手術を簡素化することができる。更に、前記固定要素と前記押下要素とが連結される又は前記固定要素がこの固定要素とは別に形成された前記押下要素を担持する接続位置において、前記押下要素の遠位端が前記固定要素の遠位端を越えて突出すると特に好都合なことがある。従って具体的には、特に前記固定要素が、特にその遠位固定要素区域が、前記保持区域の雌ねじと係合状態になることなしに、前記押下要素は前記接続要素を前記接続要素受け内に押し込むことができる。
【0012】
特に、前記固定要素がスリーブ形の又は略スリーブ形の構成を有すると共に、前記固定要素の長手方向軸を同軸に包囲する固定要素壁を含むことにより、前記固締要素の特に単純な構成が達成可能である。特に、このことにより例えば前記固定要素を通して、工具を用いて前記固定要素の遠位端に直接アクセスし、固定要素を前記保持区域上に固定することが可能になる。
【0013】
前記固定要素は、好都合なことに遠位方向に作用する前記押下要素用止めを含む。このようにして、前記押下要素の前記固定要素に対する移動を近位方向で限定することができる。
【0014】
特に前記接続位置のときに遠位方向を向く止め面を前記止めが有することにより、特に単純な構造上の設計が達成され、前記押下要素は止め面に寄りかかる、
【0015】
前記固定要素は、好ましくは固定スクリューの形態に構成される。この固定スクリューは、前記固定スクリューの遠位端から出発して近位方向に延びる雄ねじを含み、前記雄ねじは、前記保持区域上に形成される雌ねじに対応するように構成される。特に、この構造により前記固定要素を前記保持区域の雌ねじにねじ込むことが可能になる。従って、前記接続要素を単純かつ確実な仕方で前記接続要素受けに固定することができる。
【0016】
更に前記固定要素が、遠位固定要素区域と近位固定要素区域
を分離する所定の折断点を有することが有利なことがある。このことにより、概して前記接続要素を前記保持区域に不動に固定するには最終的に固定要素の一部のみを前記保持区域上に残せばよいため、前記固定要素は取り扱いが簡単になる。
【0017】
前記所定の折断点が、前記長手方向軸に関して周方向に又は略周方向に延びて前記固定要素壁内に形成される凹部によって形成されることにより、前記固締要素の前記構造は特に単純になる。特に、前記凹部は楔形の環状溝とすることができる。
【0018】
前記周方向凹部が前記長手方向軸から離れる方を向くように形成されることにより、前記固締要素の製造が特に単純になる。その際例えば、前記周方向凹部は、前記固定要素の最後の製造ステップにおいて形成することが可能である。
【0019】
前記遠位固定要素区域が遠位雄ねじ区域を含み、前記近位固定要素区域が近位雄ねじ区域を含むことが有利である。この構造により、前記遠位固定要素区域と前記近位固定要素区域の両方を、いずれの場合も器具上の及び/又は前記保持区域上の対応する雌ねじ区域に螺合する及び/又は螺脱することが可能になる。
【0020】
前記固定要素は、好ましくは前記止めを形成又は包含するヘッドを含む。従って、前記止めは、特に単純な仕方で形成することができる。
【0021】
前記ヘッドが、前記ヘッドに遠位側で接するシャフトの外径よりも大きい外径を有することが好都合である。このようにして前記止めは特に容易に実現することができる。
【0022】
特に、前記固定要素上に前記押下要素を位置決めし装着するために、ねじ山のないシャフト区域が前記ヘッドに遠位側で接し、前記雄ねじが前記ねじ山のないシャフト区域に遠位側で接することが有利である。
【0023】
前記固締要素を取り扱うことにとって、前記押下要素が前記固定要素上に回転可能に装着されることが好都合である。従って例えば、前記押下要素は前記保持区域に対するその位置を又は回転位置を維持することができ、同時に前記固定要素は軸方向にねじ締めすることができる。
【0024】
更に、前記押下要素が前記固定要素上で軸方向において不動に又は略不動に保持されることが有利である。従って、前記固定要素が前記保持区域に向かう方向に移動すると、前記押下要素は、同時に前記接続要素を前記接続要素受け内に押し込み、この接続要素を中で保持することができる。
【0025】
前記押下要素がスリーブ形の又は略スリーブ形の構成を有する場合、前記固締要素は製造することが特に簡単になる。従って特に、前記固定要素がこのようなヘッドを有する場合、押下要素は好ましくは前記ヘッドの遠位側で前記固定要素を包囲することができる。特に、前記押下要素の外径を前記ヘッドの外径に適合させ、前記固定要素及び前記押下要素により形成される固定ユニットの最大外径を前記ヘッドが有するようにすることができる。
【0026】
前記押下要素が、長手方向軸に関して直径方向に対向する2つの凹部を含むことが好都合である。このことにより、例えば前記固定要素の前記雄ねじが前記凹部の領域において、埋込み器具の雌ねじと又は前記保持区域の雌ねじと相互作用することが可能である。
【0027】
前記凹部が、前記押下要素の遠位端から出発して近位方向に延びるスリットの形態に構成されることにより、前記押下要素の構成は特に単純になる。更にこのような構造により、前記押下要素上の残存する突片を前記長手方向軸から離れる方へ及び前記長手方向軸に向かう方へ枢動することが可能になる。
【0028】
前記押下要素を規定のかつ確実な仕方で前記固定要素上に装着するために、遠位方向に突き出る直径方向に対向する2つの押下突起を担持する保持リングを前記押下要素が含むことが好都合である。例えば前記押下要素の前記保持リングは、それ自体閉じているように、そして近位側で特に前記固定要素の前記ヘッド上に形成することのできる前記止めに突き当たるよう、特に前記固定要素上を遠位側から押圧されるように構成することができる。
【0029】
前記保持リングは、好ましくは前記押下要素の近位端を形成する。従って特に、前記押下突起の遠位端は、前記接続要素受け内に位置決めされるべき前記接続要素と係合させることができる。
【0030】
本発明の更なる好適な実施形態によれば、前記押下突起が前記直径方向に対向する2つの凹部により互いから分離されることを実現することができる。従って、前記押下要素がそれから形成される前記材料の前記構造及び選択肢が適切である場合、既に言及したように、前記押下突起はその遠位端が、前記長手方向軸に向かう方向に及び/又は前記長手方向軸から離れる方向に回り出る及び/又は跳ね出ることができる。
【0031】
押下要素が接続要素に寄りかかる際特に、接続要素の断面が円い棒形の構成を有するときに、前記押下要素が極力大きい接触面を有するためには、前記押下突起の遠位端が遠位方向を向いて凹形に湾曲することが有利である。
【0032】
前記押下要素の前記固定要素上での位置決めを最適化するため、特に、前記押下突起の周方向での位置をも最適化するために、前記押下突起が、周方向を向いて側方に突き出る案内突起を担持することが有利である。従って、これらの案内突起は前記固定要素の周りに前記押下突起自体よりも幾分遠くで係合する。
【0033】
前記固定要素の挿入を、そして特にその周方向での整列を改良するために、前記案内突起が、遠位方向を向く傾斜した摺動面を有することが好都合である。このようにして、前記押下要素を担持する前記固定要素を挿入する際、前記押下要素の遠位端が前記接続要素と接触できることにとって必要な回転位置に挿入される間に、前記押下要素はそれ自体自動的に容易に整列することができる。
【0034】
前記押下要素が前記固定要素に連結される接続位置において、前記保持リングの近位端が前記止めに寄りかかることが有利である。例えば、前記固定要素がそのヘッドに係合する挿入工具、特にねじ回しにより遠位方向に移動する場合、前記押下要素は固定要素と共に同時に遠位方向に移動する。
【0035】
極力コンパクトな構成を達成するために、前記保持リングの外径が前記ヘッドの外径に対応する又はほぼ対応することが好都合である。
【0036】
本発明の更なる好適な実施形態によれば、前記固定要素と前記押下要素とを接続位置において解放可能に接続するためのロック接続部を設けることができる。
【0037】
特に前記ロック接続部が、少なくとも1つのロック突起、及び前記ロック突起と相互作用する少なくとも1つのロック凹部を含むことにより、前記固締要素の特に単純な設計を達成することができる。原則として、前記押下要素上と前記固定要素上の両方に前記ロック凹部を設けることができる。その際前記対応するロック突起は、それぞれの他の要素上に設けられるべきである。
【0038】
前記少なくとも1つのロック突起が、前記押下要素上の前記長手方向軸に向かう方向を向く環状突起により形成されることが好都合である。それ故に、前記押下要素が、上述の直径方向に対向する2つのスリットを有する場合、前記環状突起も、周方向に延びる2つの区域に分割される。その際2つの区域は、いずれの場合も前記押下突起上に配置又は形成される。
【0039】
前記少なくとも1つのロック突起を前記少なくとも1つのロック凹部と係合させることをより簡単にするために、前記少なくとも1つのロック突起が前記押下要素上で前記押下突起の前記領域内に配置されることが有利である。特に、このような構造により前記押下突起が移動する結果として、前記少なくとも1つのロック突起が、前記長手方向軸に向かう方向と前記長手方向軸から離れる方向の両方に移動することが可能になる。
【0040】
前記少なくとも1つのロック凹部は、好都合なことに前記固定要素上で前記ヘッドと前記近位雄ねじ区域との間に形成される。従って前記少なくとも1つのロック突起がこのロック凹部に係合することが、単純な仕方で可能になる。更にこのようなロック凹部を、特に前記固定要素の前記雄ねじとヘッドとの間にねじ山のない区域を形成することにより製造することが簡単になる。
【0041】
前記押下要素の前記固定要素上での軸方向位置決めが単純な仕方で達成されることを可能にするために、前記接続位置のときに前記少なくとも1つのロック突起が前記近位雄ねじ区域の近位端に近位側で寄りかかる又は突き当たることが有利である。特に、前記押下要素の保持リングが同時に前記固定要素の前記止めに寄りかかる場合、前記押下要素は前記固定要素上に装着され、前記固定要素に関して相対運動しないよう軸方向で固着される。
【0042】
前記固定要素を所望のやり方で前記保持区域と係合させることを可能にするために、前記遠位固定要素区域が、近位方向を向いて開放している遠位工具要素受けを含むことが好都合である。前記遠位工具要素受けは、そのために設けられた工具と係合させることができ、前記遠位固定要素区域は、前記接続要素を前記固締要素上に前記固定要素によって規定の仕方で固定できるような仕方で、前記保持区域と係合させることができる。前記工具要素受けは多角形の断面とすることができ、例えば六角形の断面とすることができる。円みのある多数の内面の形態の又は前記遠位固定要素区域の内壁面に、この内壁面と重なるように形成された2つの、3つの、又はそれ以上の孔の形態の工具要素受けも考えられる。
【0043】
前記遠位工具要素受けは、好ましくは前記遠位固定要素区域の長さ部分にほぼわたって軸方向に延びる。従って、基本的に前記遠位固定要素区域の、利用可能な長さ部分全体を使用して挿入工具と係合させることができる。
【0044】
更に前記近位固定要素区域が、近位方向を向いて開放している近位工具要素受けを含むことが有利である。従って、例えば前記所定の折断点を切断する前に、前記固定要素は、前記近位工具要素受けと係合させることのできる挿入工具を用いて遠位方向に前記保持区域まで移動させ、必要な場合この保持区域と係合させることができる。
【0045】
前記近位工具要素受けは、好ましくは前記固定要素の長さ部分にわたって延びる。前記固定要素の長さ部分は、軸方向における前記ヘッドの長さ部分に対応する又はほぼ対応する。このようにして、挿入工具、例えばねじ回しの前記近位工具要素受けとの確実な係合を保証することができる。
【0046】
特に、前記近位工具要素受けは、多角形の特に四角形の又は六角形の断面を有することができ、又は円みのある多数の内面の形態にすることも、又はこの領域内で前記固定要素の内壁と重なる対応する孔を作成することにより形成することもできる。
【0047】
好ましくは、前記固定要素の遠位端が閉じている。従って、この遠位端は、同時に挿入工具、例えばねじ込み具の遠位止めを形成するのであり、前記遠位固定要素区域を前記保持区域と係合状態にして、遠位固定要素区域を保持区域上に、例えばねじ締めにより固定する。
【0048】
更に、前記固定要素の前記遠位端に少なくとも1つの貫通開口が設けられることが有利なことがある。貫通開口の数は、好ましくは円みのある多数の内面又は前記遠位工具要素受けを形成するために前記固定要素の内壁に設けられた凹部の前記数に対応する。
【0049】
前記固締要素の安定性を増すために、前記固定要素が一体の構成を有することが有利である。例えば、固定要素は前記接続要素の固定に要する保持力を吸収することにとって適切な生体適合性金属から製作することができる。
【0050】
前記押下要素は、好ましくは一体の構成を有する。従って押下要素は、例えば、特に、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の蒸気滅菌可能なプラスチック材料から射出成型することにより容易に製造することができる。
【0051】
更に、前記固定要素と前記押下要素とが、異なる材料から形成されることが有利なことがある。特に、前記2つの要素は、前記それぞれの目的に特によく適している材料から形成することができ、例えば前記押下要素は、押下中に前記接続要素を損傷し得ない比較的軟質の材料から、例えば滅菌可能な生体適合性プラスチック材料から形成することができる。前記押下要素とは対照的に、前記固定要素は例えば生体適合性金属、特にチタン又はチタン合金から作製することができる。
【0052】
本発明の更なる好適な実施形態によれば、前記脊柱安定化システムの前記外科用固締要素のうち少なくとも1つが、外科用固締要素の上述した有利な実施形態のうちの1つの形態であることが有利である。その際、前記脊柱安定化システムは概して上で述べた利点を有する。
【0053】
本発明による前記脊柱安定化システムの更なる好適な実施形態によれば、前記保持区域に一時的に連結されるようになっており、前記固定要素の前記雄ねじに対応する雌ねじを有する案内スリーブを脊柱安定化システムが含むことを実現することができる。例えば、前記案内スリーブは、前記脊柱安定化システム内に包含される挿入器具類の一部として形成することができる。前記案内スリーブ上にある雌ねじのおかげで、例えば、前記固定要素を前記案内スリーブにねじ付け、従って軸方向におけるその位置を規定することが可能である。
【0054】
前記案内スリーブが、前記固定要素の前記ヘッド用の及び/又は前記保持リング用の近位方向を向く止めを含むことが好都合である。このようにして、前記止めが前記案内スリーブ上で近位方向を向く限りにおいて前記固定要素を、特にその近位固定要素区域のみを、移動させることが可能である。従って前記固定要素を、規定のやり方で前記案内スリーブと係合させ、この案内スリーブに緊締することができる結果、次のステップにおいて前記接続要素を前記接続要素受け内に固定するために、特に、前記所定の折断点を破壊することにより前記遠位固定要素区域を前記近位固定要素区域から分離することができ、好ましくはこの遠位固定要素区域を前記保持区域上の雌ねじと、力に頼ることなく係合させることができる。
【0055】
前記遠位固定要素区域を前記保持区域の雌ねじと力に頼ることなく係合させることを可能にするために、前記案内スリーブが前記保持区域に連結されて、前記固定要素が、前記案内スリーブの、近位方向を向く前記止めに突き当たる組立て位置において、前記遠位固定要素区域が遠位側で前記案内スリーブの雌ねじを越えて突き出ることが有利である。従って前記遠位固定要素区域は、前記所定の折断点を破壊することにより前記近位固定要素区域から分離することができ、力を加えずに更に遠位方向に移動させて前記保持区域に接続することができる。
【0056】
更に前記組立て位置のとき、前記遠位
固定要素区域が前記保持区域上の雌ねじから係合解除されることが好都合なことがある。従って前記遠位固定要素区域は、前記近位固定要素区域から分離し、前記保持区域上の雌ねじと、力に頼ることなく係合させることができる。
【0057】
本発明の好適な実施形態の以下の記載は、図面と合わせるとより詳細に説明するように働く。