特許第6556117号(P6556117)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6556117脊柱安定化システム及び脊柱安定化システムのための外科用固締要素
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556117
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】脊柱安定化システム及び脊柱安定化システムのための外科用固締要素
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/58 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
   A61B17/58
【請求項の数】15
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-503645(P2016-503645)
(86)(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公表番号】特表2016-514506(P2016-514506A)
(43)【公表日】2016年5月23日
(86)【国際出願番号】EP2014055468
(87)【国際公開番号】WO2014147104
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2017年3月17日
(31)【優先権主張番号】102013102976.0
(32)【優先日】2013年3月22日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102013107498.7
(32)【優先日】2013年7月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン リンドネール
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン クルーゲル
【審査官】 北川 大地
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−534116(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0062865(US,A1)
【文献】 特表2011−518030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/58
A61B 17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの固締要素(16)及び少なくとも1つの接続要素(26)を含む脊柱安定化システム(10)のための外科用固締要素(16)であって、
前記外科用固締要素(16)が、固締区域(20)と、接続要素受け(24)を備えた保持区域(22)と、前記接続要素(26)を前記接続要素受け(24)内で固定するための、前記保持区域(22)上に固定可能な固定要素(42;42’)とを含む外科用固締要素において、
前記固定要素(42;42’)が、前記接続要素(26)を前記接続要素受け(24)内で押下するための押下要素(46;46’)を担持すること、
前記固定要素(42;42’)が、遠位固定要素区域(62;62’)と近位固定要素区域(64;64’)を分離する所定の折断点(54;54’)を有すること、及び
前記押下要素(46;46’)の少なくとも一部分が、前記近位固定要素区域(64;64’)上に配置されること、
を特徴とする外科用固締要素。
【請求項2】
請求項1に記載の外科用固締要素であって、前記固定要素(42;42’)が、スリーブ形の又は略スリーブ形の構成を有すると共に、前記固定要素(42;42’)の長手方向軸(70;70’)を同軸に包囲する固定要素壁(76)を有すること、及び/又は、前記固定要素(42;42’)が、前記押下要素(46;46’)のために遠位方向で作用する止め(98;98’)を含むこと、を特徴とする外科用固締要素。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の外科用固締要素であって、
前記固定要素(42;42’)が、固定スクリュー(44;44’)の形態に構成され、前記固定スクリュー(44;44’)が、該固定スクリュー(44;44’)の遠位端から出発して近位方向に延びる雄ねじ(52;52’)を含むこと、及び
前記雄ねじ(52;52’)が、前記保持区域(22)上に形成された雌ねじ(34)に対応するように構成されること、
を特徴とする外科用固締要素。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の外科用固締要素であって、前記固定要素(42;42’)が、前記止め(98;98’)を形成する又は含むヘッド(48;48’)を含むこと、を特徴とする外科用固締要素。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の外科用固締要素であって、前記押下要素(46;46’)が、前記固定要素(42;42’)上に回転可能に装着されること、及び/又は、前記押下要素(46;46’)が、軸方向において不動又は略不動であるように前記固定要素(42;42’)上に保持されること、及び/又は、前記押下要素(46;46’)が、スリーブ形の又は略スリーブ形の構成を有すること、及び/又は、前記押下要素(46;46’)が、長手方向軸(70;70’)に関して直径方向に対向する2つの凹部(103;103’)を含むこと、を特徴とする外科用固締要素。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の外科用固締要素であって、前記押下要素(46;46’)が、遠位方向に突き出ると共に直径方向に対向する2つの押下突起(100;100’)を担持する保持リング(94;94’)を含むこと、を特徴とする外科用固締要素。
【請求項7】
請求項6に記載の外科用固締要素であって、前記保持リング(94;94’)が、前記押下要素(46;46’)の近位端を形成すること、を特徴とする外科用固締要素。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の外科用固締要素であって、前記押下要素(46;46’)が前記固定要素(42;42’)に連結される接続位置において、前記保持リング(94;94’)の近位端が、前記止め(98;98’)に寄りかかること、及び/又は、前記保持リング(94;94’)の外径が、前記ヘッド(48;48’)の外径に対応する又はほぼ対応すること、を特徴とする外科用固締要素。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の外科用固締要素であって、前記固定要素(42;42’)と前記押下要素(46;46’)を接続位置において解放可能に接続するためのロック接続部(122;122’)を特徴とする外科用固締要素。
【請求項10】
請求項3〜9のいずれか1項に記載の外科用固締要素であって、前記遠位固定要素区域(62;62’)が、近位方向を向いて開放している遠位工具要素受け(82;82’)を含むこと、を特徴とする外科用固締要素。
【請求項11】
請求項3〜10のいずれか1項に記載の外科用固締要素であって、前記近位固定要素区域(64;64’)が、近位方向を向いて開放している近位工具要素受け(72;72’)を含むこと、を特徴とする外科用固締要素。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の外科用固締要素であって、前記固定要素(42;42’)の遠位端が閉じていること、を特徴とする外科用固締要素。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の外科用固締要素であって、前記固定要素(42;42’)が一体の構成を有すること、及び/又は、前記押下要素(46;46’)が一体の構成を有すること、及び/又は、前記固定要素(42;42’)と前記押下要素(46;46’)が異なる材料から形成されること、を特徴とする外科用固締要素。
【請求項14】
少なくとも2つの外科用固締要素(16)及び少なくとも1つの接続要素(26)を含む脊柱安定化システム(10)であって、
前記少なくとも2つの外科用固締要素(16)のうちの少なくとも1つが、固締区域(20)と、接続要素受け(24)を備えた保持区域(22)と、前記接続要素(26)を前記接続要素受け(24)内で固定するための、前記保持区域(22)上に固定可能な固定要素(42)とを含む脊柱安定化システムにおいて、
前記固定要素(42;42’)が、前記接続要素(26)を前記接続要素受け(24)内で押下するための押下要素(46;46’)を担持すること、
前記固定要素(42;42’)が、遠位固定要素区域(62;62’)と近位固定要素区域(64;64’)を分離する所定の折断点(54;54’)を有すること、及び
前記押下要素(46;46’)の少なくとも一部分が、前記近位固定要素区域(64;64’)上に配置されること、
を特徴とする脊柱安定化システム。
【請求項15】
請求項14に記載の脊柱安定化システムであって、該脊柱安定化システムが内側スリーブ(126;126’)を含み、該内側スリーブ(126;126’)が、前記保持区域(22)に一時的に連結されるように適合されていると共に、前記固定要素(42;42’)の雄ねじ(52;52’)に対応する雌ねじ(134;134’)を有すること、を特徴とする脊柱安定化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの固締要素及び少なくとも1つの接続要素を含む脊柱安定化システムのための外科用固締要素であって、前記外科用固締要素が、固締区域と、接続要素受けを備えた保持区域と、前記接続要素を接続要素受け内で固定するための保持区域上に固定可能な固定要素とを含む外科用固締要素に関する。
【0002】
本発明は更に、少なくとも2つの外科用固締要素及び少なくとも1つの接続要素を含む脊柱安定化システムであって、前記少なくとも2つの外科用固締要素のうちの少なくとも1つが、固締区域と、接続要素受けを備えた保持区域と、前記接続要素を前記接続要素受け内で固定するための、前記保持区域上に固定可能な固定要素とを含む脊柱安定化システムに関する。
【背景技術】
【0003】
冒頭に記載した種類の外科用固締要素及び脊柱安定化システムが、例えばEP 2 266 483 A1から知られている。脊柱を安定させるために、知られているこれらの固締要素が、隣り合った椎体内に挿入され、1つ以上の接続要素により互いに接続される。これらの固締要素は特に、固締スクリュー、例えば椎弓根スクリューの形態にすることができる。接続要素は、ロッド形、及び/又はプレート形とすることができるのであり、隣り合った椎体間でこのようにして規定の接続が設定可能である。2つだけでなく2つ、3つ、又はそれ以上の脊柱の運動分節を互いに連結し安定させることができるように、当然ながら、脊柱安定化システムは、更なる固締要素及び接続要素を包含することもできる。
【0004】
特に、このような脊柱安定化システムの低侵襲性の埋込みにおいては、接続要素を接続要素受け内に導入し、その後に通常やや小さい固定要素を挿入することは問題である。
【0005】
固定要素をより簡単に挿入するために、接続要素は通常、接続要素受け内に押し込まれる。
【0006】
知られているシステムにおいて、固締要素の導入及び接続要素の固定は、原則として固締要素を導入し留めておくステップ、接続要素を接続要素受け内に挿入するステップ、接続要素を接続要素受け内に押し込み、その後、固定要素を導入するステップ及び固定要素を用いて接続要素を接続要素受け上で不動に固定するステップ、という幾つかのステップから成る。接続要素を接続要素受け内に押し込む目的は、特に接続要素を固定するために固定要素を導入し好ましくは保持区域への力なしにこの固定要素を固定できるように、接続要素を接続要素受け内の規定の端位置にもたらしてそこで保持することである。
【0007】
特に、接続要素を接続要素受け内に押し込むために外側スリーブを使用することが知られている。ところが、このことはこのために皮膚切開を著しく拡大せねばならないという欠点を有する。別法として、固定要素が固定された後に、例えば、固定要素の保持区域上の案内部として働く長尺部を折断することにより、長尺の保持区域を部分的に除去することのできる又は除去されねばならない固締要素も知られている。ところが、いずれの変形例も外科処置に伴う努力を増し、特に手術時間を長引かせるという欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】EP 2 266 483 A1 & US 2010/0331897 A1
【特許文献2】US 7 985 242 B2
【特許文献3】US 2006/0149241 A1
【特許文献4】WO 2009/132110 A1
【特許文献5】EP 1 891 904 A1
【特許文献6】FR 2 829 014 A1 & US 2005/0240180 A1
【特許文献7】US 2009/062865 A1
【特許文献8】US 5 667 508 A
【特許文献9】DE 296 06 468 U1
【特許文献10】FR 2 624 720 A1
【特許文献11】DE 94 03 231 U1
【特許文献12】WO 96/21396 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、特に、冒頭に記載した種類の前記脊柱安定化システムの埋込みを簡素化することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は冒頭に記載した種類の外科用固締要素及び脊柱安定化システムに関して、本発明によれば、特に、前記固定要素が、前記接続要素を前記接続要素受け内で押下するための押下要素を担持するという点で成就される。
【0011】
前記外科用固締要素の前記固定要素は、導入の際に前記接続要素を同時に前記接続要素受け内に押し込んで中で保持することもできるように構成することにより、今までの個別の操作ステップ、具体的には前記接続要素を前記接続要素受け内に押し込みこの接続要素を中で保持するステップを、完全に排除することが可能になる。本発明によれば、前記固定要素を導入しつつ既に前記接続要素を前記接続要素受け内に押し込むことができる。前記操作ステップを排除するおかげで、外科処置の全継続時間を短縮し、更に手術を簡素化することができる。更に、前記固定要素と前記押下要素とが連結される又は前記固定要素がこの固定要素とは別に形成された前記押下要素を担持する接続位置において、前記押下要素の遠位端が前記固定要素の遠位端を越えて突出すると特に好都合なことがある。従って具体的には、特に前記固定要素が、特にその遠位固定要素区域が、前記保持区域の雌ねじと係合状態になることなしに、前記押下要素は前記接続要素を前記接続要素受け内に押し込むことができる。
【0012】
特に、前記固定要素がスリーブ形の又は略スリーブ形の構成を有すると共に、前記固定要素の長手方向軸を同軸に包囲する固定要素壁を含むことにより、前記固締要素の特に単純な構成が達成可能である。特に、このことにより例えば前記固定要素を通して、工具を用いて前記固定要素の遠位端に直接アクセスし、固定要素を前記保持区域上に固定することが可能になる。
【0013】
前記固定要素は、好都合なことに遠位方向に作用する前記押下要素用止めを含む。このようにして、前記押下要素の前記固定要素に対する移動を近位方向で限定することができる。
【0014】
特に前記接続位置のときに遠位方向を向く止め面を前記止めが有することにより、特に単純な構造上の設計が達成され、前記押下要素は止め面に寄りかかる、
【0015】
前記固定要素は、好ましくは固定スクリューの形態に構成される。この固定スクリューは、前記固定スクリューの遠位端から出発して近位方向に延びる雄ねじを含み、前記雄ねじは、前記保持区域上に形成される雌ねじに対応するように構成される。特に、この構造により前記固定要素を前記保持区域の雌ねじにねじ込むことが可能になる。従って、前記接続要素を単純かつ確実な仕方で前記接続要素受けに固定することができる。
【0016】
更に前記固定要素が、遠位固定要素区域と近位固定要素区域分離する所定の折断点を有することが有利なことがある。このことにより、概して前記接続要素を前記保持区域に不動に固定するには最終的に固定要素の一部のみを前記保持区域上に残せばよいため、前記固定要素は取り扱いが簡単になる。
【0017】
前記所定の折断点が、前記長手方向軸に関して周方向に又は略周方向に延びて前記固定要素壁内に形成される凹部によって形成されることにより、前記固締要素の前記構造は特に単純になる。特に、前記凹部は楔形の環状溝とすることができる。
【0018】
前記周方向凹部が前記長手方向軸から離れる方を向くように形成されることにより、前記固締要素の製造が特に単純になる。その際例えば、前記周方向凹部は、前記固定要素の最後の製造ステップにおいて形成することが可能である。
【0019】
前記遠位固定要素区域が遠位雄ねじ区域を含み、前記近位固定要素区域が近位雄ねじ区域を含むことが有利である。この構造により、前記遠位固定要素区域と前記近位固定要素区域の両方を、いずれの場合も器具上の及び/又は前記保持区域上の対応する雌ねじ区域に螺合する及び/又は螺脱することが可能になる。
【0020】
前記固定要素は、好ましくは前記止めを形成又は包含するヘッドを含む。従って、前記止めは、特に単純な仕方で形成することができる。
【0021】
前記ヘッドが、前記ヘッドに遠位側で接するシャフトの外径よりも大きい外径を有することが好都合である。このようにして前記止めは特に容易に実現することができる。
【0022】
特に、前記固定要素上に前記押下要素を位置決めし装着するために、ねじ山のないシャフト区域が前記ヘッドに遠位側で接し、前記雄ねじが前記ねじ山のないシャフト区域に遠位側で接することが有利である。
【0023】
前記固締要素を取り扱うことにとって、前記押下要素が前記固定要素上に回転可能に装着されることが好都合である。従って例えば、前記押下要素は前記保持区域に対するその位置を又は回転位置を維持することができ、同時に前記固定要素は軸方向にねじ締めすることができる。
【0024】
更に、前記押下要素が前記固定要素上で軸方向において不動に又は略不動に保持されることが有利である。従って、前記固定要素が前記保持区域に向かう方向に移動すると、前記押下要素は、同時に前記接続要素を前記接続要素受け内に押し込み、この接続要素を中で保持することができる。
【0025】
前記押下要素がスリーブ形の又は略スリーブ形の構成を有する場合、前記固締要素は製造することが特に簡単になる。従って特に、前記固定要素がこのようなヘッドを有する場合、押下要素は好ましくは前記ヘッドの遠位側で前記固定要素を包囲することができる。特に、前記押下要素の外径を前記ヘッドの外径に適合させ、前記固定要素及び前記押下要素により形成される固定ユニットの最大外径を前記ヘッドが有するようにすることができる。
【0026】
前記押下要素が、長手方向軸に関して直径方向に対向する2つの凹部を含むことが好都合である。このことにより、例えば前記固定要素の前記雄ねじが前記凹部の領域において、埋込み器具の雌ねじと又は前記保持区域の雌ねじと相互作用することが可能である。
【0027】
前記凹部が、前記押下要素の遠位端から出発して近位方向に延びるスリットの形態に構成されることにより、前記押下要素の構成は特に単純になる。更にこのような構造により、前記押下要素上の残存する突片を前記長手方向軸から離れる方へ及び前記長手方向軸に向かう方へ枢動することが可能になる。
【0028】
前記押下要素を規定のかつ確実な仕方で前記固定要素上に装着するために、遠位方向に突き出る直径方向に対向する2つの押下突起を担持する保持リングを前記押下要素が含むことが好都合である。例えば前記押下要素の前記保持リングは、それ自体閉じているように、そして近位側で特に前記固定要素の前記ヘッド上に形成することのできる前記止めに突き当たるよう、特に前記固定要素上を遠位側から押圧されるように構成することができる。
【0029】
前記保持リングは、好ましくは前記押下要素の近位端を形成する。従って特に、前記押下突起の遠位端は、前記接続要素受け内に位置決めされるべき前記接続要素と係合させることができる。
【0030】
本発明の更なる好適な実施形態によれば、前記押下突起が前記直径方向に対向する2つの凹部により互いから分離されることを実現することができる。従って、前記押下要素がそれから形成される前記材料の前記構造及び選択肢が適切である場合、既に言及したように、前記押下突起はその遠位端が、前記長手方向軸に向かう方向に及び/又は前記長手方向軸から離れる方向に回り出る及び/又は跳ね出ることができる。
【0031】
押下要素が接続要素に寄りかかる際特に、接続要素の断面が円い棒形の構成を有するときに、前記押下要素が極力大きい接触面を有するためには、前記押下突起の遠位端が遠位方向を向いて凹形に湾曲することが有利である。
【0032】
前記押下要素の前記固定要素上での位置決めを最適化するため、特に、前記押下突起の周方向での位置をも最適化するために、前記押下突起が、周方向を向いて側方に突き出る案内突起を担持することが有利である。従って、これらの案内突起は前記固定要素の周りに前記押下突起自体よりも幾分遠くで係合する。
【0033】
前記固定要素の挿入を、そして特にその周方向での整列を改良するために、前記案内突起が、遠位方向を向く傾斜した摺動面を有することが好都合である。このようにして、前記押下要素を担持する前記固定要素を挿入する際、前記押下要素の遠位端が前記接続要素と接触できることにとって必要な回転位置に挿入される間に、前記押下要素はそれ自体自動的に容易に整列することができる。
【0034】
前記押下要素が前記固定要素に連結される接続位置において、前記保持リングの近位端が前記止めに寄りかかることが有利である。例えば、前記固定要素がそのヘッドに係合する挿入工具、特にねじ回しにより遠位方向に移動する場合、前記押下要素は固定要素と共に同時に遠位方向に移動する。
【0035】
極力コンパクトな構成を達成するために、前記保持リングの外径が前記ヘッドの外径に対応する又はほぼ対応することが好都合である。
【0036】
本発明の更なる好適な実施形態によれば、前記固定要素と前記押下要素とを接続位置において解放可能に接続するためのロック接続部を設けることができる。
【0037】
特に前記ロック接続部が、少なくとも1つのロック突起、及び前記ロック突起と相互作用する少なくとも1つのロック凹部を含むことにより、前記固締要素の特に単純な設計を達成することができる。原則として、前記押下要素上と前記固定要素上の両方に前記ロック凹部を設けることができる。その際前記対応するロック突起は、それぞれの他の要素上に設けられるべきである。
【0038】
前記少なくとも1つのロック突起が、前記押下要素上の前記長手方向軸に向かう方向を向く環状突起により形成されることが好都合である。それ故に、前記押下要素が、上述の直径方向に対向する2つのスリットを有する場合、前記環状突起も、周方向に延びる2つの区域に分割される。その際2つの区域は、いずれの場合も前記押下突起上に配置又は形成される。
【0039】
前記少なくとも1つのロック突起を前記少なくとも1つのロック凹部と係合させることをより簡単にするために、前記少なくとも1つのロック突起が前記押下要素上で前記押下突起の前記領域内に配置されることが有利である。特に、このような構造により前記押下突起が移動する結果として、前記少なくとも1つのロック突起が、前記長手方向軸に向かう方向と前記長手方向軸から離れる方向の両方に移動することが可能になる。
【0040】
前記少なくとも1つのロック凹部は、好都合なことに前記固定要素上で前記ヘッドと前記近位雄ねじ区域との間に形成される。従って前記少なくとも1つのロック突起がこのロック凹部に係合することが、単純な仕方で可能になる。更にこのようなロック凹部を、特に前記固定要素の前記雄ねじとヘッドとの間にねじ山のない区域を形成することにより製造することが簡単になる。
【0041】
前記押下要素の前記固定要素上での軸方向位置決めが単純な仕方で達成されることを可能にするために、前記接続位置のときに前記少なくとも1つのロック突起が前記近位雄ねじ区域の近位端に近位側で寄りかかる又は突き当たることが有利である。特に、前記押下要素の保持リングが同時に前記固定要素の前記止めに寄りかかる場合、前記押下要素は前記固定要素上に装着され、前記固定要素に関して相対運動しないよう軸方向で固着される。
【0042】
前記固定要素を所望のやり方で前記保持区域と係合させることを可能にするために、前記遠位固定要素区域が、近位方向を向いて開放している遠位工具要素受けを含むことが好都合である。前記遠位工具要素受けは、そのために設けられた工具と係合させることができ、前記遠位固定要素区域は、前記接続要素を前記固締要素上に前記固定要素によって規定の仕方で固定できるような仕方で、前記保持区域と係合させることができる。前記工具要素受けは多角形の断面とすることができ、例えば六角形の断面とすることができる。円みのある多数の内面の形態の又は前記遠位固定要素区域の内壁面に、この内壁面と重なるように形成された2つの、3つの、又はそれ以上の孔の形態の工具要素受けも考えられる。
【0043】
前記遠位工具要素受けは、好ましくは前記遠位固定要素区域の長さ部分にほぼわたって軸方向に延びる。従って、基本的に前記遠位固定要素区域の、利用可能な長さ部分全体を使用して挿入工具と係合させることができる。
【0044】
更に前記近位固定要素区域が、近位方向を向いて開放している近位工具要素受けを含むことが有利である。従って、例えば前記所定の折断点を切断する前に、前記固定要素は、前記近位工具要素受けと係合させることのできる挿入工具を用いて遠位方向に前記保持区域まで移動させ、必要な場合この保持区域と係合させることができる。
【0045】
前記近位工具要素受けは、好ましくは前記固定要素の長さ部分にわたって延びる。前記固定要素の長さ部分は、軸方向における前記ヘッドの長さ部分に対応する又はほぼ対応する。このようにして、挿入工具、例えばねじ回しの前記近位工具要素受けとの確実な係合を保証することができる。
【0046】
特に、前記近位工具要素受けは、多角形の特に四角形の又は六角形の断面を有することができ、又は円みのある多数の内面の形態にすることも、又はこの領域内で前記固定要素の内壁と重なる対応する孔を作成することにより形成することもできる。
【0047】
好ましくは、前記固定要素の遠位端が閉じている。従って、この遠位端は、同時に挿入工具、例えばねじ込み具の遠位止めを形成するのであり、前記遠位固定要素区域を前記保持区域と係合状態にして、遠位固定要素区域を保持区域上に、例えばねじ締めにより固定する。
【0048】
更に、前記固定要素の前記遠位端に少なくとも1つの貫通開口が設けられることが有利なことがある。貫通開口の数は、好ましくは円みのある多数の内面又は前記遠位工具要素受けを形成するために前記固定要素の内壁に設けられた凹部の前記数に対応する。
【0049】
前記固締要素の安定性を増すために、前記固定要素が一体の構成を有することが有利である。例えば、固定要素は前記接続要素の固定に要する保持力を吸収することにとって適切な生体適合性金属から製作することができる。
【0050】
前記押下要素は、好ましくは一体の構成を有する。従って押下要素は、例えば、特に、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の蒸気滅菌可能なプラスチック材料から射出成型することにより容易に製造することができる。
【0051】
更に、前記固定要素と前記押下要素とが、異なる材料から形成されることが有利なことがある。特に、前記2つの要素は、前記それぞれの目的に特によく適している材料から形成することができ、例えば前記押下要素は、押下中に前記接続要素を損傷し得ない比較的軟質の材料から、例えば滅菌可能な生体適合性プラスチック材料から形成することができる。前記押下要素とは対照的に、前記固定要素は例えば生体適合性金属、特にチタン又はチタン合金から作製することができる。
【0052】
本発明の更なる好適な実施形態によれば、前記脊柱安定化システムの前記外科用固締要素のうち少なくとも1つが、外科用固締要素の上述した有利な実施形態のうちの1つの形態であることが有利である。その際、前記脊柱安定化システムは概して上で述べた利点を有する。
【0053】
本発明による前記脊柱安定化システムの更なる好適な実施形態によれば、前記保持区域に一時的に連結されるようになっており、前記固定要素の前記雄ねじに対応する雌ねじを有する案内スリーブを脊柱安定化システムが含むことを実現することができる。例えば、前記案内スリーブは、前記脊柱安定化システム内に包含される挿入器具類の一部として形成することができる。前記案内スリーブ上にある雌ねじのおかげで、例えば、前記固定要素を前記案内スリーブにねじ付け、従って軸方向におけるその位置を規定することが可能である。
【0054】
前記案内スリーブが、前記固定要素の前記ヘッド用の及び/又は前記保持リング用の近位方向を向く止めを含むことが好都合である。このようにして、前記止めが前記案内スリーブ上で近位方向を向く限りにおいて前記固定要素を、特にその近位固定要素区域のみを、移動させることが可能である。従って前記固定要素を、規定のやり方で前記案内スリーブと係合させ、この案内スリーブに緊締することができる結果、次のステップにおいて前記接続要素を前記接続要素受け内に固定するために、特に、前記所定の折断点を破壊することにより前記遠位固定要素区域を前記近位固定要素区域から分離することができ、好ましくはこの遠位固定要素区域を前記保持区域上の雌ねじと、力に頼ることなく係合させることができる。
【0055】
前記遠位固定要素区域を前記保持区域の雌ねじと力に頼ることなく係合させることを可能にするために、前記案内スリーブが前記保持区域に連結されて、前記固定要素が、前記案内スリーブの、近位方向を向く前記止めに突き当たる組立て位置において、前記遠位固定要素区域が遠位側で前記案内スリーブの雌ねじを越えて突き出ることが有利である。従って前記遠位固定要素区域は、前記所定の折断点を破壊することにより前記近位固定要素区域から分離することができ、力を加えずに更に遠位方向に移動させて前記保持区域に接続することができる。
【0056】
更に前記組立て位置のとき、前記遠位固定要素区域が前記保持区域上の雌ねじから係合解除されることが好都合なことがある。従って前記遠位固定要素区域は、前記近位固定要素区域から分離し、前記保持区域上の雌ねじと、力に頼ることなく係合させることができる。
【0057】
本発明の好適な実施形態の以下の記載は、図面と合わせるとより詳細に説明するように働く。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】埋込み中の脊柱安定化システムの概略全体図。
図2】椎体内に挿入された固締要素に連結される案内スリーブの図表示。
図3A】案内スリーブの分解図。
図3B図3Aの領域Aの拡大図。
図3C図3Aの線3C‐3Cに沿って切り取った断面図。
図4A】案内スリーブの遠位端の固締要素と係合する前の概略分解図。
図4B図4A4B‐4Bに沿って切り取った断面図。
図4C】案内スリーブが固締要素に連結される図4Bと同様の図。
図5A】固締要素に連結された案内スリーブの、内側スリーブが挿入される前の長手方向断面図。
図5B図5Aの領域Bの拡大図。
図6A】固締要素に連結された案内スリーブの内側スリーブが、挿入された長手方向断面図。
図6B図6Aの領域Cの拡大図。
図6C図6Aの領域Dの拡大図。
図7A】内側スリーブが固締要素に連結される図6Aと同様の図。
図7B図7Aの領域Eの拡大図。
図7C図7Aの領域Fの拡大図。
図7D図7Aの領域Fの斜視図。
図8】内側スリーブの部分断面図。
図9A】固定要素及び押下要素の分解図。
図9B】固定要素及び押下要素の接続位置における斜視図。
図9C図9Bの線9C‐9Cに沿って切り取った断面図。
図10A】固定要素を、押下要素と共に内側スリーブを通してねじ込む際に切り取った概略部分断面図。
図10B】近位方向を向く内側スリーブの止めに押下要素の保持リングが突き当たって押下要素が、接続要素を保持区域の接続要素受け内に押し込む組立て位置のときの図10Aと同様の部分断面図。
図11A】所定の折断点を切断する前の図10Bの配置の断面図。
図11B】遠位固定要素区域を、保持区域の雌ねじにねじ込んで接続要素を接続要素受け内で固定した後の図11Aと同様の図。
図12】相応に構成された固定要素を挿入する際の内側スリーブの、更なる実施形態の長手方向断面図。
図13】固定要素及び相応に構成された内側スリーブの更なる実施形態の、所定の折断点を切断する前の図10Bの配置と同様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1は、脊柱14の2つ以上の隣り合った椎骨12を互いに対する然るべき位置にそれを用いて安定させることのできる全体として参照符号10で表す脊柱安定化システムを概略的に示す。脊柱安定化システム10は、ボーンスクリュー又は椎弓根スクリュー18の形態の複数の固締要素16を含む。複数の固締要素16は、固締区域20及び保持区域22を有する。
【0060】
保持区域22は、接続要素26を収容するための接続要素受け24を有し、椎弓根スクリュー18のヘッド28上に形成される。ヘッド28はフォーク形であり、固締要素16の長手方向軸30に関して直径方向に対向する保持区域32を有する。保持区域32に雌ねじ34が設けられる。好ましくは固締区域20が、骨ねじ山36の設けられたシャフト38の形態である結果、固締要素16は椎骨12に特にその椎弓根にねじ込むことができる。別法として、固締区域20を骨鉤又は骨釘の形態にすることもできる。
【0061】
任意で、固締区域20と保持区域22は、一体の構成とすることができ又は図に示す実施形態におけるように、互いに対して移動可能とすることができ、例えば固締区域20と保持区域22との間に形成される玉継手により規定される継手中心の周りで枢動可能とすることができる。従って、椎弓根スクリュー18は特に多軸スクリューの形態である。
【0062】
例えば、図9Aに示す固定スクリュー44の形態の固定要素42が接続要素26を固定するように働く。接続要素26は、接続ロッド40又はプレート形要素の形態にすることができる。図9B及び図9Cに概略的に示すような接続位置において、固定スクリュー44は、接続要素26を押す及び/又は押下するために押下要素に接続又は連結される。換言すれば、固定要素42が押下要素46を担持するとも言える。押下要素46は、好ましくは回転可能であるように、但し軸方向に不動であるように、固定要素42上に装着される。
【0063】
固定要素42及び押下要素46の構成を、以下で図9A図9Cと合わせてより詳細に説明する。
【0064】
固定スクリュー44は、直径の低減された、ねじ山のないシャフト区域50が遠位側で接続された円筒形ヘッド48を有する。シャフト区域50に遠位側で接続されるのは、雄ねじ52である。雄ねじ52は、所定の折断点54を形成する凹部56により、近位雄ねじ区域58と遠位雄ねじ区域60とに分割される。凹部56は環状溝の形態であり、好ましくは楔形であり、固定要素42から離れる方を向いて開放している。この環状溝は、固定要素42を外側でリングの形態に包囲する。固定要素42は所定の折断点54により、遠位固定要素区域42と近位固定要素区域64とに分けられる。固定要素42は、全体として一体の構成であり、好ましくは生体適合性金属製、例えばチタン又はチタン合金製である。
【0065】
固定要素は内部が中空であり、従って全体として略スリーブ形である。固定要素42の内径は、その内側で2つの段部になって低減される。ヘッド48の領域では、内径66aは、近位固定要素区域64のそのほかの部分における内径66bよりも幾分大きい。遠位固定要素区域62の領域における内径66cは、やはり内径66bよりも幾分小さい。遠位固定要素区域62は、遠位側では固定要素42の長手方向軸70に対して交差方向に底部68が延びることにより閉じている。
【0066】
近位方向を向いて開放している近位工具要素受け72が、ヘッド48の領域内に具体的には長手方向軸70と平行に整列してヘッド48の領域において、固定要素42の中空円筒形のスリーブ壁76内に部分的に形成される合計で6つの孔74により形成される。従って、要するに円みのある多数の内面78が形成されるのであり、この内面は対応するねじ込み具80と係合させることができる。
【0067】
遠位固定要素区域62の領域では、長手方向軸70と平行に整列してスリーブ壁76に部分的に係合する合計で6つの孔84を製作することにより、遠位固定要素区域62の内側に、基本的には同様に形成される遠位工具要素受け82が形成される。任意で図9Cに示す孔84は底部68を貫通し、従ってその貫通開口86を形成することもできる。従って、要するに遠位固定要素区域62も、遠位工具要素受け82を規定する、円みのある多数の内面88を有する。工具要素受け82は、図11Aに概略的に示すように相応に構成されたねじ込み具90と係合させることができる。
【0068】
押下要素46は略スリーブ形であり、押下要素の近位端92でそれ自体閉じている保持リング94を有する。接続位置のとき、端部92は止め98を形成するヘッド48の遠位方向を向くリング形の止め面96に寄りかかる。保持リング94から遠位方向に延びているのは、接続位置のときにその遠位端102が遠位側で底部68を越えて突き出る、長手方向軸70に関して直径方向に対向する2つの押下突起100である。端部102は、遠位方向を向いて凹形に湾曲しているのであり、任意で要素26の曲率に適合させることができる。保持リング94の外径はヘッド48の外径に対応するため、接続位置のとき図9Bに概略的に示すような固定要素42と押下要素46とから成る完全な略円筒形の組立体が形成される。
【0069】
押下突起100は、長手方向軸70に関して直径方向に対向する、凹部103を形成するスリット104により分離される。押下突起100の両脇に形成されるのは、周方向に突出して互いを向く案内突起106である。案内突起106は、遠位方向を又はほぼ遠位方向を向く、傾斜した摺動面108を規定する。案内突起106は保持リング94から幾分離間するのであり、周方向に開放している欠刻110が形成される。
【0070】
押下突起100上に形成されるのは、押下要素46の内側114から突き出て長手方向軸70に向かう方向を向くロック突起112である。スリット104が存在しなかった場合には、2つのロック突起112は環状突起により形成されることになる。ロック突起112は押下突起100上で欠刻110の幾分遠位側の方へ配置される。ロック突起112は遠位方向を向いて傾いており、従って摺動面116をも有する。
【0071】
押下要素46の外径が案内突起106の遠位側の方へ幾分僅かに増加するため、それぞれの端部102に向かって、僅かに円錐形の外面区域118が形成される。
【0072】
ねじ山のないシャフト区域50は、ロック突起112用にロック凹部120を形成するのであり、固定要素42と押下要素46との間には全体としてロック接続部122が形成される。接続位置のとき、押下要素46は保持リング94が雄ねじ52及びシャフト区域50を越えて押圧されてヘッド48に突き当たると、ロック突起112はロック凹部120内にロックする。
【0073】
押下要素46は、好ましくは蒸気滅菌可能なプラスチック材料から形成されるのであり、押下要素46と固定要素42とが合体される際、押下突起100は、長手方向軸70から幾分離れるように旋回し、ロック突起112がロック凹部120に侵入すると長手方向軸70に向かう方向に弾性的に戻るように再度旋回することができる。
【0074】
以下で図1図11Bと合わせて、脊柱安定化システム10の埋込みを概略的に説明する。
【0075】
第1ステップにおいて、固締要素16は所与の数で椎骨12にねじ込まれる。接続要素26を続いて固定要素42を保持区域22内に挿入できるようにするために、次のステップでは、案内スリーブ124が、知られているやり方で保持区域22にロックすることにより連結される。このことを、図4B及び図4Cに概略的に示す。
【0076】
案内スリーブ124を固締要素16に連結した後、次のステップでは器具を案内するように働く内側スリーブ126が、近位側から案内スリーブ124内に導入される。内側スリーブ126は、その遠位端に遠位方向を向く4つのロッド形突起128を有する。4つのロッド形突起128は、保持区域22と案内スリーブ124の両方と係合させることができる。内側スリーブ126の案内スリーブ124内への導入を、図5A図7Dに概略的に示す。
【0077】
上に記載した2つのステップの別法として、執刀医は、案内スリーブ124と、この案内スリーブ内に挿入される内側スリーブ126とから成るユニットを助手に渡させることもできる。執刀医は、これらのスリーブを保持区域22にロックすることにより連結する。
【0078】
内側スリーブ12には、その遠位端から出発して長手方向軸30に関して直径方向に対向する窓様の2つの欠刻130が設けられる。従って、これらの欠刻130間には、これも長手方向軸30に関して正反対にあり遠位方向を向く2つの連結突起132が形成される。連結突起132には、雌ねじ34と同じ寸法の雌ねじ134が設けられる。雌ねじ34と雌ねじ134の両方は、雄ねじ52に対応するように形成される。
【0079】
雌ねじ134に近位側で接しているのは、近位方向を向く止め面136である。止め面136の機能を以下で説明する。
【0080】
次のステップにおいて、図1に概略的に示すように、保持器具138の連結された接続要素26を、欠刻130を通して固締要素16の接続要素受け24内に導入することができる。
【0081】
市場で入手可能な脊柱安定化システムとは異なり、ここでは、接続要素26を接続要素受け24内へ更なる器具を用いて押し込む必要はない。脊柱安定化システム10において、この機能は押下要素46を担持する固定要素42に引き継がれる。
【0082】
次のステップでは、図10Aに示すように固定要素42が、ねじ込み具80を用いて遠位方向へ内側スリーブ126の雌ねじ134にねじ付けられる。具体的には、図10Bに概略的に示すように保持リング94が止め面136に突き当たるまでである。ねじ込み具80は、近位工具要素受け72に係合する。押下突起100の端部102は、ねじ込み中に接続要素26と接触し、固定要素42を更にねじ込む間、この接続要素を接続要素受け24内に押し込む。図11Aの異なる断面斜視図から再度明白であるように、固定要素42は、押下要素46を用いて接続要素26を接続要素受け24内に保持する。保持リング94が止め面136に突き当たるこの組立て位置のときに、遠位固定要素区域62が、遠位側にて雌ねじ134を越えて突き出ること、従ってこの雌ねじと係合状態にないこともこの図から明らかである。
【0083】
押下要素46により保持される接続要素26を保持区域22上の接続要素受け24内に最終的に固定するために、ねじ込み具80が引き抜かれ、ねじ込み具90が導入され、ねじ込み具90の遠位端が遠位工具要素受け82と係合させられる。ねじ込みにより近位固定要素区域64が内側スリーブ126に連結されるおかげで、対応するトルクを加えることにより所定の折断点54を破壊し、近位固定要素区域64から遠位固定要素区域62を不可逆的に分離することができる。従って遠位固定要素区域62は自由になるため、この遠位固定要素区域を更に遠位方向に、近位固定要素区域64とは無関係に移動させて雌ねじ34と係合させ、底部68が接続要素26に突き当たるまで、従って接続要素26が最終的に接続要素受け24内で緊締状態に保持されるまで、この雌ねじ内にねじ込むことができる。
【0084】
所与の接続要素26は全て、固定要素42を用いて記載したやり方で固締要素16の保持区域22上に固定される。
【0085】
最終的に、押下要素46が上に配置された近位固定要素区域64は、ねじ込み具80を用いて近位方向にねじを緩められ、案内スリーブ124から内側スリーブ126が近位方向に引き出され、案内スリーブ124は保持区域22から連結解除される。別法として、案内スリーブ124と内側スリーブ126とから成るユニットを、概して1つのステップにおいて除去することもできる。今や脊柱安定化システム10は、椎骨12に所望するように固定される。
【0086】
従って、特に記載した脊柱安定化システム10は、知られているシステムに設けられるような、保持区域22から近位方向に突き出る拡張部なしで済ますことができる。この拡張部がある場合、拡張部は固定要素42を保持区域22上に固定した後に、例えば折断により除去されねばならない。更に記載した脊柱安定化システム10において、例えば案内スリーブ124の外側の周りに係合する更なる押し下げスリーブの形態のロッド押し込み器具を設けることは余分なものとなる。ロッド押し込み器具を設けることは、脊柱安定化システム10を埋め込むための、低侵襲性のアクセス用の皮膚切開が幾分拡大されねばならないことになるという更なる欠点を有するであろう。提案される脊柱安定化システム10により、この欠点は排除される。
【0087】
図12及び図13に、内側スリーブ126’及びこの内側スリーブ126’と相互作用する固定要素42’の代わりの実施形態を概略的に示す。内側スリーブ126’及び固定要素42’は、その構成及び機能において内側スリーブ126及び固定要素42にほぼ対応する。
【0088】
内側スリーブ126’と内側スリーブ126との間の差異は、基本的に雌ねじ134’が内側スリーブ126’上で、内側スリーブ126上の雌ねじ134よりも更に幾分近位方向に配置されるということである。従って雌ねじ134’は、内側スリーブ126’の内径が幾分広がっている領域内に配置される。従って雌ねじ134’は、図11Aに概略的に示すように、固定要素42が遠位方向で前方へ最大程度押圧されると、内側スリーブ126内では、雄ねじ52に対して外径の拡大したヘッドが配置される場所に配置される。これとは対照的に、雌ねじ134’は今や、ヘッド48’が正に着座するところに配置される。この雌ねじは、固定要素42’のヘッド48’上に形成される近位雄ねじ区域58の雄ねじと相互作用する。従って固定要素42’は、互いから空間的に明らかに分離する2つの雄ねじ区域、具体的には遠位固定要素区域62’上の遠位雄ねじ区域60’と近位固定要素区域64上の近位雄ねじ区域58’とを有する。従って近位雄ねじ区域58’と遠位雄ねじ区域60’はその直径も相違し、遠位雄ねじ区域60’の方が幾分小さい外径である。
【0089】
内側スリーブ126’は、内側スリーブ126との更なる差異を有する。その近位端から出発して、内側スリーブ126’の内壁面140’に螺旋溝142’が形成される。固定要素42’の押下突起100’の対応する突起が、螺旋溝142’に係合する結果、固定要素42’を内側スリーブ126’内に挿入すると、押下突起100’はスリット形の欠刻130’に係合できるような仕方で整列する。
【0090】
固定要素42’が機能する仕方は、基本的に固定要素42の機能に対応する。同様のやり方で、図10A図10B図11A、及び図11Bと合わせて記載したように、ねじ込み具80が近位固定要素受け72’に係合すると、固定要素42’が内側スリーブ126’の雌ねじ134’に遠位方向にねじ付けられる。具体的には、押下突起100’の遠位端102’が接続要素26に突き当たるまでである。固定要素42’が更にねじ込まれると、押下突起100’の端部102’は接続要素26を接続要素受け24内に押し込む。図13に概略的に示すように、固定要素42’は、押下要素46’を用いて接続要素26を接続要素受け24内に保持する。押下突起100’の遠位端102’が接続要素26に突き当たるこの組立て位置のときに、遠位固定要素区域62’が未だに雌ねじ34と係合状態にないこともこの図からはっきりと明白である。
【0091】
押下要素46’により保持される接続要素26を保持区域22上の接続要素受け24内に最終的に固定するために、ねじ込み具80が引き抜かれ、ねじ込み具90が挿入され、ねじ込み具90の遠位端が遠位工具要素受け82’と係合させられる。ねじ込みにより近位固定要素区域64’が内側スリーブ126’に連結されるおかげで、対応するトルクを加えることにより所定の折断点54’を破壊し、近位固定要素区域64’から遠位固定要素区域62’を不可逆的に分離することができる。従って、遠位固定要素区域62’は自由になるため、この遠位固定要素区域を更に遠位方向に、近位固定要素区域64’とは無関係に移動させて雌ねじ34と係合させ、底部68’が接続要素26に突き当たるまで、従って接続要素26が最終的に接続要素受け24内で緊締状態に保持されるまで、この雌ねじ内にねじ込むことができる。
【0092】
他の点では、脊柱安定化システム10は上述のような内側スリーブ126’及び固定要素42’でもって同様の仕方で機能する。
【0093】
任意でねじ込み具80及びねじ込み具90の機能を、特に、多部分構成とすることのできる単一の器具に合体させることもできる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13