特許第6556118号(P6556118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556118
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】アンテナ構成
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/24 20060101AFI20190729BHJP
   H01Q 9/32 20060101ALI20190729BHJP
   H01Q 9/16 20060101ALI20190729BHJP
   H01Q 21/20 20060101ALI20190729BHJP
   H01Q 1/24 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   H01Q21/24
   H01Q9/32
   H01Q9/16
   H01Q21/20
   H01Q1/24 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-503722(P2016-503722)
(86)(22)【出願日】2014年3月20日
(65)【公表番号】特表2016-517225(P2016-517225A)
(43)【公表日】2016年6月9日
(86)【国際出願番号】GB2014050871
(87)【国際公開番号】WO2014147401
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2017年3月21日
(31)【優先権主張番号】1305164.4
(32)【優先日】2013年3月20日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591081479
【氏名又は名称】ブリティッシュ・ブロードキャスティング・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BRITISH BROADCASTING CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ボイヤー ジョン
【審査官】 新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第07064725(US,B1)
【文献】 米国特許第06313801(US,B1)
【文献】 特開2009−231927(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01475860(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/24
H01Q 1/24
H01Q 9/16
H01Q 9/32
H01Q 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号の2又はそれ以上の偏波を送信するためのRFアンテナ構成を有する放送システムであって、
プリント基板上に敷設されたトラックを含み、前記プリント基板によって分離された平行面上に配置され、水平偏波RF信号を生成するためのRF給電線のための接続部を有する第1の導体及び第2の導体を含むダイポールアレイと、
前記平行面と実質的に直交し、前記第1の導体及び前記第2の導体の中心位置から延び、垂直偏波RF信号を生成するためのRF給電線のための接続部を有する第3の導体を含むモノポール構成と、
を備え、前記モノポール構成の前記接続部は、前記第1の導体又は前記第2の導体の一方が前記第3の導体の接地としての機能を果たすことによってコンパクトな2極性全方向性アンテナを提供するようになっており、
前記アンテナ構成を2つ有し、該アンテナ構成の一方は、水平偏波及び垂直偏波のために構成され、前記アンテナ構成の他方は、左旋円偏波及び右旋円偏波のために構成される放送システム。
【請求項2】
前記アンテナ構成は、MIMO信号を放送するように構成される、
請求項に記載の放送システム。
【請求項3】
前記放送システムは、DVB規格の1つに合わせて構成される、
請求項に記載の放送システム。
【請求項4】
無線信号の2又はそれ以上の偏波を送信するためのRFアンテナ構成であって、
プリント基板上に敷設されたトラックを含み、前記プリント基板によって分離された平行面上に配置され、水平偏波RF信号を生成するためのRF給電線のための接続部を有する第1の導体及び第2の導体を含むダイポールアレイと、
前記平行面と実質的に直交し、前記第1の導体及び前記第2の導体の中心位置から延び、垂直偏波RF信号を生成するためのRF給電線のための接続部を有する第3の導体を含むモノポール構成と、
を備え、前記モノポール構成の前記接続部は、前記第1の導体又は前記第2の導体の一方が前記第3の導体の接地としての機能を果たすことによってコンパクトな2極性全方向性アンテナを提供するようになっている、ことを特徴とするRFアンテナ構成を2つ有し、該アンテナ構成の一方は、水平偏波及び垂直偏波のために構成され、前記アンテナ構成の他方は、左旋円偏波及び右旋円偏波のために構成されることを特徴とするテレビカメラ。
【請求項5】
前記2つのアンテナ構成は、使用時に一方が他方から垂直に変位して接近して取り付けられる、
請求項に記載のテレビカメラ。
【請求項6】
前記アンテナ構成は、MIMO信号を放送するように構成される、
請求項に記載のテレビカメラ。
【請求項7】
MIMO信号をプリコーディングするように構成された回路を有する、請求項に記載のテレビカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナに関し、特にRF電波の複数の偏波を生成するためのアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
RF電波の垂直偏波、水平偏波、右旋円偏波又は左旋円偏波を生成する様々な形状のRFアンテナが知られている。図1に、水平偏波RF波を生成するための2つの構成を示す。図1aには、シリンダ内のスロットに結合された同軸線上でRF信号を受け取るスロット付きシリンダ構成を示す。図1bには、各々が平面内に配置され誘電体によって分離された2つの平行な導体を有する、アルフォードループとして知られているプリント回路アンテナを示す。
【0003】
図2には、垂直偏波用アンテナの様々な構成を示す。図2aはディスコーン構成であり、図2bはモノポール構成であり、図2cはスリーブ付きダイポール構成である。
【0004】
円偏波アンテナは、円偏波を生成するように90°位相シフトした水平に配向された交差ダイポールで形成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、RF波の複数の偏波を生成できるコンパクトなアンテナ構成の必要性を理解している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の改善点は、以下の独立請求項に定められ、以下ではこれを参照することができる。従属請求項には有利な特徴を示す。
【0007】
大まかに言えば、本発明を具体化する構成は、水平偏波を生成するためのアンテナと、垂直偏波を生成するためのアンテナとを、水平偏波用アンテナが垂直偏波用アンテナの接地として機能するように互いに組み合わせたものを含む。
【0008】
添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を一例としてさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】水平偏波を生成するための既知の構成を示す図である。
図2】垂直偏波を生成するための既知の構成を示す図である。
図3】本発明を具体化する構成を示す図である。
図4図3のアンテナ構成との接続部を示す概略図である。
図5図3のアンテナを組み込んだシステムを示すシステム図である。
図6】各アンテナ入力及び2つの入力間のカップリングについて計算したリターンロス(入力整合)を示す性能プロットである。
図7】左偏波、右偏波、左旋円偏波及び右旋円偏波のそれぞれについて方位角を用いて計算した性能を示す一組の極線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
電波の異なる偏波を生成するためのアンテナ構成は、様々な異なるシステムで使用されている。本発明のこの実施形態は、ラジオ、テレビ、データ送信、及び複数の偏波を必要とし得る実質的にあらゆるシステムを含む多くのこのようなシステムに適用可能である。1つのこのようなシステムに、カメラが複数の偏波を送受信する無線カメラ構成がある。
【0011】
無線カメラは、その携帯性が特に有用である。無線カメラは、360°のパンが可能であり、恐らくは±30°又はそれ以上傾くことができ、撮影対象領域内を動き回ることができる必要がある。この動作のための1つの要件は、送信アンテナが必要な方角全体に放射を行うことである。従来のSISO(単入力単出力)システムでは、ディスコーンアンテナ又は直線アンテナ列などの全方向性直線偏波アンテナが使用され、円偏波システムでは、(フォースクエアダイポールアンテナとしても知られている)リンデンブラッドアレイなどのアンテナアレイが使用される。
【0012】
このような無線カメラの改善は、SISOシステムに比べて2倍近いスペクトル効率を実現し、MIMO(多入力多出力)技術を用いてこれを行う、いわゆる「halfRF HDラジオカメラ」がある。このカメラは、複数の偏波の使用を必要とし、このためアンテナの設計過程が複雑になる。MIMOシステムは、複数の送信アンテナと複数の受信アンテナとを有し、データを複数のストリームにコーディングする。各ストリームは、1又はそれ以上のアンテナから放射することができる。屋内で使用される多くのシステムは、環境からの散乱に依拠して送信アンテナと受信アンテナの間に多くの様々な無相関経路をもたらす。無線カメラを屋外で使用すると、透過散乱がはるかに少なく、従って交差偏波システムを用いて送信アンテナと受信アンテナの間に異なる経路をもたらす。
【0013】
halfRF HD無線カメラシステムは、DVB−T、DVB−T2及び新たなDVB−NGH規格などの様々なDVB規格からの技術を使用することができる。DVB−NGHは、MIMOを含む多くの高度無線周波数技術を用いて、テレビの堅固なハンドヘルド受信を実現する。DVB−NGHで使用される1つの特定の技術は、地上の直線偏波(水平及び垂直)MIMO通信を衛星からの円偏波(左旋及び右旋)MIMO送信と組み合わせて送信ダイバーシティを提供するものである。これを可能にする1つの方法は、水平偏波アンテナ、垂直偏波アンテナ、左旋円偏波アンテナ及び右旋円偏波アンテナという4つの別個のアンテナを使用することであり、これらのアンテナの各々には多くの周知の選択肢が存在する。
【0014】
図1には、様々な偏波を生成するための既知の構成を示している。全方向性水平偏波アンテナの既知の解決策は、水平偏波を生成するためのプリントアルフォードループ(図1b)又はスロット付きシリンダ(図1a)であり、垂直偏波については、考えられるアンテナとして、スリーブ付きダイポール、直線アンテナ列(図2b)、ディスコーンアンテナ(図2a)又はモノポールアンテナ(図2c)がある。
【0015】
円偏波アンテナは、リンデンブラッドアレイ、又は水平に配向された一対の交差ダイポール(これらの位相シフトは90°)よって製造することができる。2つの円偏波の各々には、1つの円偏波アンテナが必要となる。2本巻き螺旋を用いて全方向性傾斜偏波又は円偏波放射を生成することもできるが、これには同軸ケーブルを巧妙に曲げる必要があり、偏波毎に1つの2本巻きアンテナが必要となる。
【0016】
上記の各アンテナは比較的単純かつコンパクトであるが、4つのアンテナが必要になり、かさばる上にコストが掛かってしまう。
【0017】
別の全方向パターン生成法は、(各々が約90°の水平ビーム幅の)放射状に分布する要素のアレイを用いて、準全方向パターンを合成することである。この技術は、VHF及びUHF放送で一般的に使用されている。実際のアレイの実装では、各アンテナ素子に給電を行うために電力分割器が必要になるが、このアレイは極めて柔軟であり、各アンテナへの入力の位相に応じてあらゆる偏波を放射することができ、ダイポールも、傾斜するのではなく水平及び垂直であることができる。
【0018】
この実装は、VHF及びUHFでは理想的な技術であるが、このようなダイポールアレイの構築は、2GHzなどの他の周波数では容易でなく、7GHzでは極めて難しく、これらの周波数では、パッチ素子を用いてアレイを構築する方が賢明である。この実装には、回路基板の外側、又はスクエア内の電力分割器にプリントできる何らかの給電ネットワークも必要になる。各アプローチには、その問題が伴う。例えば、高周波数ではボックスの内寸が小さくなり、従って工具によるアクセスが問題となり、折り畳んだPCBの外側の給電線は、隅部に不連続部を有する。
【0019】
上述したように、halfRFシステムは、4つの偏波を必要とする。本発明者らは、多くの用途にとって理想的なアンテナシステムは、アンテナ間の位相を変化させることによってあらゆる必要な偏波を生成するように使用できる、共同配置された全方向性直交偏波アンテナを有するものになると理解している。この位相変化は、ベースバンドに適当な位相シフトを加えることによって実現することができ、そうすると必要なアンテナが4つから2つになり、各アンテナ対はさらにコンパクトになる。2つの直線偏波アンテナは間隔を空けることができず、依然として円偏波を生成する。これらのアンテナ間のあらゆる距離は、生成されるあらゆるパターンに深いヌルを形成する。2つの直交アンテナは、実質的に同じ空間内に存在する必要がある。この2つのアンテナを何らかの形で組み合わせることができれば、非常にコンパクトな構築しやすい二重偏波アンテナを形成することができる。
【0020】
本発明者らは、このような二重偏波アンテナを、図3の本発明の実施形態に示すように設計できると理解している。この実施形態では、プリントダイポールアレイ及び給電線はモノポールアンテナの接地面と大差ないように思われるという概念を用いており、従って帯域幅を強化するように修正して下側トレースをモノポール接地面として使用できるように修正したダイポールアレイを使用する。
【0021】
このアンテナ構成は、誘電体の上面に配置された第1の導体1を含む。ここでは、誘電体は、プリント基板4であり、導体は、プリント基板上に敷設されたトラックである。プリント基板4の下面には、上面の第1のトラックと平行な部分を有する第2の導体2が配置される。第1の導体1が存在する平面は、第2の導体2が存在する平面と平行である。
【0022】
第1の導体1には、中心位置から互いに反対方向に延びるトラックが配置される。この導体は、互いに反対方向に延びるこれらのトラックと直交して中心位置から十字形を形成するように広がるトラックも有する。第1の導体は、十字形の各端部に、アンテナの周波数の生成調整を可能にするように設けられたフィラメント導体8も有する。第2の導体2は第1の導体1に類似し、ここではプリント基板である誘電体の下面に存在する。第2の導体も、中心位置から互いに反対方向に延びる部分と、ほぼ十字形の構成を形成するように第1の部分と直角に互いに反対方向に延びる追加部分とを有する。また、第2の導体の中心領域7は、同軸コネクタ5及び6からの接続空間を提供するように拡大される。従って、領域7は接続領域と見なすことができる。
【0023】
PCBの平面とほぼ垂直に、従って第1及び第2の導体とほぼ垂直に、第3の導体3が延びる。この第3の導体は、同軸ケーブル内の導体の延長部などのワイヤ又は同様のフィラメント部品とすることができる。第3の導体は、第1及び第2の導体の中心位置7から延びる。
【0024】
このアンテナには、水平放射と垂直放射を同時に生成するように2つの独立した給電線を用いて給電することも、或いは左旋円(LHCP)放射と右旋円(RCHP)放射を同時に提供するように複合信号を用いて給電することもできる。構造は、プリント基板に接続する2つの等しい長さの同軸ケーブルと、垂直モノポールの機能を果たす短いワイヤ片とを必要とするという点で非常に単純である。
【0025】
フィラメント導体8を含む説明した第1及び第2の導体は、RF波の水平全方向性偏波を生成するダイポールアレイを協働的に形成する。第3の導体は、垂直偏波を生成するためのモノポールである。第2の導体は、以下で図4に接続部を示して説明するように、第3の導体の接地としての機能を果たす。図4で分かるように、同軸テーブル5は、下面の2つの導体2のうちの下側の導体への外側接続部と、プリント基板に接続されずに貫通して延びて第3の導体3を形成する中心導体とを有する。他方の同軸コネクタ6は、下面の第2の導体2への外側接続部を有し、同軸コネクタの中心部は、上面の上側導体1に接続される。従って、これらの同軸ケーブルは、下面の第2の導体2への共通の外側接続部を有する。このようにして、第2の導体は、第3の導体の接地としての機能を果たす。
【0026】
従って、共同配置された2つの部品を有するコンパクトな二重極性全方向性アンテナが提供される。一方の部品は、水平偏波放射を生成し、他方の部品は、垂直偏波放射を生成する。このことは、2つの半部品間に90°の位相シフトを加えることによって円偏波を生成できることを意味する。この設計では、水平アンテナが垂直アンテナの一部を形成し、2つの半部品間の距離を最小化することができる。
【0027】
本発明者らは、このようなアプローチには、垂直偏波と水平偏波の間のカップリングが増加するという点でコストが掛かり得ることを理解している。しかしながら、このシステムでは、水平及び垂直信号を、円偏波に必要な位相シフトを生成するようにプリコーディングし、このプリコーディングを、偏波間のカップリングを打ち消すように修正することができる。
【0028】
水平アンテナが垂直偏波アンテナの接地面を形成してアンテナの共同配置を可能にするという共通の特徴を有する他の実施形態も可能である。ある実施形態では、コンパクトな全方向性円偏波アンテナを形成することができる。このようなコンパクト性は、携帯用途にとって特に有用である。
【0029】
図5に、画像センサ、電子部品及びストレージを収容する本体11とレンズ10とを有し、後部12に2つのアンテナが取り付けられたカメラを含む、本発明を具体化するカメラシステムを示す。これらのアンテナは、各々が上記の図3に関連して図示し説明した構成を有する上側アンテナ13及び下側アンテナ14を含むように構成される。2つのアンテナの一方は、別個の水平偏波及び垂直偏波を放送するように別個の信号を用いて給電される。他方のアンテナは、90°の位相シフトを有する信号を用いて給電され、これによって左旋円偏波及び右旋円偏波が生成される。これにより、このシステムは、2つの小型アンテナから、水平偏波、垂直偏波、左旋円偏波及び右旋円偏波という4つの別個の偏波を生成する。カメラ後部12は、異なるアンテナ構成を容易に所定位置に入れ換え可能な、アンテナが取り付けられた着脱可能ユニットとすることができる。
【0030】
アンテナ同士を近接して配置すると、性能に若干の影響が生じる。図6は、各アンテナ入力及び2つの入力間のカップリングについて計算したリターンロス(入力整合)を示す性能プロットである(カップリングは相互依存性によって両方向で同じなので、1方向のみを示す)。このグラフでは、y軸上に0〜−30dBまでのリターンロスをdBで示し、x軸上に周波数をGHzで示す。
【0031】
図形からは、2つの偏波の近接性に起因して予想される若干のカップリングが偏波間に存在することが分かるが、このカップリングは大きなものではなく、このことは、放射パターンに示される交差偏波放射の欠如に反映されている。必要であれば、MIMOコーディングを上述したように修正することにより、交差偏波放射のレベルを低下させることもできる。
【0032】
図6に示す性能からは、アンテナの2つの部分(上側の曲線20が水平部分であり、下側の曲線22が垂直部分である)の各々が、約10%の帯域幅で−10dBよりも良好な入力整合を有することが分かる。2つのアンテナ間のカップリング(プロット24)は、アンテナ同士の近接性に起因して理想よりも高い。
【0033】
図7に示す計算した放射パターンは、各所望の入力を用いて給電した時の計算したアンテナ利得を示す。これらのパターンは、全て非常に似た利得を示しており、方位変動が非常に少ない。水平アンテナ又は垂直アンテナのいずれかのみに通電した時には、望ましくない交差偏波放射が低い。左旋円偏波又は右旋円偏波のいずれかを形成するように両アンテナに通電した時には、利得のみに交差偏波放射が加わり、非常に低い交差偏波放射が達成される。
【0034】
DVB−NGH(次世代ハンドヘルド)規格では、改善されたサービス耐久性及び容量を実現するために多くの高度RF技術が使用される。マルチパスチャネルにおける信号フェージングは、有意な信号損失を引き起こす可能性があり、これに対処するための1つの方法は、送信ダイバーシティを導入することである。複数の送信機によって伝送路間に十分な非相関性が生じると、フェージングが低下してシステムの信頼性が高まる。
【0035】
DVB−NGHは、地上送信機からの直線偏波された2×2のMIMOと、衛星からの円偏波された2×2のMIMOとを生成し、コーディングに応じてスループットの強化又は送信ダイバーシティのいずれかに使用できる4×4のMIMOスキームを生成することによって送信ダイバーシティを実装する。
【0036】
MIMOは、1又はそれ以上のデータストリームを取得し、MIMOコーディングマトリクスを乗じることによって生成される。このマトリクスは、線状アンテナから円偏波を生成するために必要な90°を生じるための位相項を含むように修正することができる。各ストリームは、独立した位相シフトを有することができ、従って1つの交差偏波アンテナ対から左旋円偏波放射と右旋円偏波放射を同時に得ることができる。
【0037】
直線偏波アンテナを用いて円偏波を生成すると、望ましくない偏波間カップリング、従って望ましくない交差偏波放射が生じる可能性がある。このカップリングは、ベースバンドに逆アンテナカップリングを加えて実際の望ましくない交差偏波放射を打ち消すようにコーディングマトリクスのさらなる修正を修正することによって除去することができる。
【0038】
以下、1つのコーディングマトリクス修正法について説明する。
【0039】
以下のマトリクスMの形を取る直線偏波のためのMIMO回転プリコーディングを用いて交差極性MIMOシステム性能を高めることができる。
(1)
【0040】
このマトリクスを、(成分s0及びs1を有する)元々の複合ベースバンド信号sに以下のように適用する。
(2)
すなわち、
(3)
式中、
及び
は、結果として得られるプリコーディング信号である。
【0041】
アンテナは、それ自体が非理想的であり、以下の交差カップリングマトリクスPによって特徴付けられると仮定する。
(4)
【0042】
ここでは、
(5)
であり、xV及びxHは、それぞれ所望の垂直項及び水平項であり、
及び
は、マトリクスPによる望ましくない交差カップリング後の実際の信号である。
【0043】
この場合、Pが可逆的であると仮定すると、この回転プリコーディングマトリクスは、以下の補償を行うように修正することができる。
(6)
式中、
(7)である。
【0044】
直線(H/P)アンテナアレイに(さらなる)円偏波を与えるための補足的プリコーディングは、以下のように記述することができる。
(8)
式中、
及び
は、上述した回転プリコーディング信号であり、
及び
は、所望の円偏波をさらに特徴付ける。
【0045】
この場合、交差結合マトリクスPの存在下で、本発明者らは、プリコーディング全体を以下のように修正することができる。
(9)
【0046】
従って、ある実施形態では、説明したような交差カップリング係数を選択することにより、2つのアンテナの近接性に起因する交差カップリングを打ち消すことができる。
【0047】
カメラシステムに関連してアンテナ構成を説明したが、誤解のないように言えば、基地局、放送システム、テレビ放送装置、モバイル装置、携帯電話機、及び複数の偏波を生成できるアンテナを使用する実質的にあらゆるシステム又は装置を含む他のシステムも、説明したアンテナ構成の1つ又はそれ以上を使用することができると想定される。
【符号の説明】
【0048】
1 第1の導体
2 第2の導体
3 第3の導体
4 プリント基板
5 同軸コネクタ
6 同軸コネクタ
7 接続領域
8 フィラメント導体
図1(a)】
図1(b)】
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】