【文献】
          REIMER ET AL.,FasL:Fas ratio--a prognostic factor in breast carcinomas.,CANCER RESEARCH,2000年  2月15日,vol.60, no.4,PP.822-828
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  CD95L発現のレベルにより膠芽腫を分類することによる、膠芽腫患者における全生存期間または/および無再発生存期間の予知での使用のための、CD95Lに特異的に結合する作用物質であって、
  ここで、前記膠芽腫はCD95L発現のレベルによってCD95L陽性膠芽腫またはCD95L陰性膠芽腫に分類され、膠芽腫組織サンプル中の細胞の少なくとも5%がCD95Lを発現する場合、および/または、膠芽腫組織サンプル中の腫瘍組織の少なくとも5%の領域にCD95Lが検出される場合に、CD95L陽性とみなされる、
作用物質。
 
【発明を実施するための形態】
【0015】
  本発明では、CD95Lの発現は、任意の公知の適切な方法により判定することができる。例えば、CD95LのmRNAを判定することができる。適切な方法の好ましい例は、組織学的、組織化学的または/および免疫組織化学的な方法である。
 
【0016】
  本明細書に記載される癌の診断で用いられるサンプルは、疾患の、より早期の段階に得られた、アーカイブされた(archived)腫瘍組織、例えばバイオプシーまたはパラフィン中に埋め込まれた外科的処置の材料(surgery  material)であってよい。
 
【0017】
  癌疾患は、CD95L発現のレベルによって、CD95L陽性の癌疾患またはCD95L陰性の癌疾患に分類することができる。
 
【0018】
  特に、CD95L陽性の癌疾患は、細胞表面上にCD95Lを発現している細胞により特徴付けられる。しかしながら、本明細書に記載される方法は、CD95Lの細胞内エピトープの検出に基づいてもよい。
 
【0019】
  癌は、癌サンプル中の細胞の少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、または少なくとも50%が、CD95Lを発現する場合に、CD95L陽性とみなすことができる。CD95L陽性細胞の数は、顕微鏡用切片中の細胞を数えることにより決定することができる。
 
【0020】
  組織サンプルにおいてCD95Lを発現している細胞を本質的に検出することができない場合、または、サンプルが、CD95L陽性サンプルに関して本明細書において定義する基準を満たさないサンプル(非−陽性サンプル)である場合に、CD95L発現は不在(CD95L陰性)であると考えられる。CD95L陰性サンプルにおいては、CD95Lを発現している腫瘍細胞の数は、CD95L陽性サンプルに関して本明細書において定義される閾値未満、例えば、腫瘍細胞の1%未満、2%未満、3%未満、4%未満、5%未満、または、10%未満であることができる。
 
【0021】
  細胞でのCD95L発現は、実施例2に開示される方法のような組織化学的方法により判定することができる。特に、癌サンプルにおけるCD95Lの発現は、サンプルを、CD95Lに特異的に結合する作用物質と接触させることにより判定することができる。例えば、本明細書に開示されるCD95L阻害剤は、これらの阻害剤はCD95Lに特異的に結合することができるので、CD95Lの判定に用いることができる。CD95Lに特異的に結合する抗体を用いることができる。適切な抗体は、公知の方法により調製することができる。適切な抗体の例は、実施例2および7に提供される。そのような抗−CD95L特異的抗体またはCD95Lを認識するそのフラグメントは、CD95Lの細胞外または細胞内ドメインに結合し得る。好ましい実施態様によれば、抗−CD95L特異的抗体またはCD95Lを認識するそのフラグメントは、CD95Lの細胞内エピトープに結合する。特に好ましい実施態様によれば、抗−CD95L特異的抗体またはCD95Lを認識するそのフラグメントは、ヒトCD95LのN末13位におけるチロシン(Y)に結合する。13位におけるこのチロシンは、本発明に係る特に好ましい抗体の特異性を定義するために必要である。特に好ましい実施態様によれば、抗−CD95L抗体またはCD95Lを認識するそのフラグメントは、ヒトCD95LのN末アミノ酸13〜19をコードするエピトープを認識する(
図9を参照)。
 
【0022】
  本発明に係る抗体は、モノクローナル抗体であることが特に好ましい。
 
【0023】
  CD95Lに特異的に結合する他の適切な作用物質は、CD95細胞外受容体ドメインまたはその機能性フラグメントを、例えば、Fcドメインまたはその機能性フラグメントをさらに含む融合ポリペプチド中に含む。適切な融合ポリペプチドの例は、本明細書に記載のAPG101である。適切な標識および染色方法は公知である。ビオチン化二次抗体に結合する、ストレプトアビジンが連結したアルカリフォスファターゼを用いた染色の例は、実施例2に提供される。
 
【0024】
  癌は、組織切片中の腫瘍組織の少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、または少なくとも50%の面積にCD95Lを検出することができる場合に、CD95L陽性とみなすこともできる。この値は、本明細書において、「腫瘍組織のCD95L陽性面積(%)」と呼ばれる。非−腫瘍組織は、この分析において除外される。組織切片は、公知の方法により調製することができる。CD95Lの検出のための適切な方法は、本明細書中に記載される。例示的な方法は実施例2に記載される。CD95L陽性腫瘍組織の面積の決定の例は、実施例3に提供される。CD95L発現は、組織サンプル中に本質的にCD95Lを検出することができない場合、または、腫瘍組織のCD95L陽性面積(%)の値が、CD95陽性サンプルに関して定義される閾値未満、例えば、腫瘍面積の1%未満、2%未満、3%未満、4%未満、5%未満、または10%未満である場合に、不在(CD95L陰性)であると考えることができる。
 
【0025】
  CD95L発現(例えば、組織切片中の細胞の数または表面の観点から)は、公知の方法により、例えば、組織切片の自動化分析に基づく方法により、判定することができる。
 
【0026】
  本発明の方法により、任意のタイプの癌(特に固形腫瘍組織)を、CD95Lの発現に関して診断することができる。診断または/および治療すべき癌は、リンパまたは骨髄起源の癌であってもよい。
 
【0027】
  CD95Lの発現に基づく診断は、今までのところCD95L発現サブタイプを含むと考えられていなかった癌タイプ、および、診断されるCD95L発現サブタイプに適応した特定の治療を必要とすると考えられていなかった癌タイプの、診断および治療に特に重要である。本発明で同定される膠芽腫のCD95L発現サブタイプの例は、本明細書に記載の、CD95L陽性膠芽腫およびCD95L陰性膠芽腫である。本明細書において提供される解決は、本発明において同定されるCD95L発現サブタイプの診断に基づく特定の治療を含む。
 
【0028】
  本発明は、癌細胞におけるCD95L発現に基づいて、これまでに知られていない疾患のパターンを提供する。任意のタイプの癌(特に固形腫瘍組織)は、CD95L発現陽性またはCD95L発現陰性と判定することができる。癌は、浸潤性増殖により特徴付けることができる。本発明によりCD95L陽性癌またはCD95L陰性癌と診断される癌疾患は、脳腫瘍、結腸癌、結腸直腸癌、膵癌、乳癌、肺癌、腎臓癌、肝臓癌または/およびそれらの転移性疾患からなる群から選択することができる。具体的には、癌疾患はグリオーマであり、より具体的には膠芽腫である。
 
【0029】
  例えば、本発明によれば、これまでに知られている診断方法による診断脳腫瘍は、本明細書に記載のように、腫瘍サンプルにおけるCD95L発現の判定の結果に基づいて、CD95L陽性脳腫瘍またはCD95L陰性脳腫瘍であると特定することができる。そのような公知の診断方法は、公知の組織学的または病理組織学的な方法、例えば、組織染色の公知の方法、および、公知の免疫組織化学的方法を含む。
 
【0030】
  本発明によれば、これまでに知られている診断方法により得られる診断グリオーマは、CD95L陽性グリオーマまたはCD95L陰性グリオーマであると特定することができる。
 
【0031】
  本発明によれば、これまでに知られている診断方法により得られる診断膠芽腫は、CD95L陽性膠芽腫またはCD95L陰性膠芽腫であると特定することができる。
 
【0032】
  本発明によれば、これまでに知られている診断方法により得られる診断結腸直腸癌は、CD95L陽性結腸直腸癌またはCD95L陰性結腸直腸癌であると特定することができる。
 
【0033】
  本発明によれば、これまでに知られている診断方法により得られる診断膵癌は、CD95L陽性膵癌またはCD95L陰性膵癌であると特定することができる。
 
【0034】
  本発明によれば、これまでに知られている診断方法により得られる診断結腸癌は、CD95L陽性結腸癌またはCD95L陰性結腸癌であると特定することができる。
 
【0035】
  本発明によれば、これまでに知られている診断方法により得られる診断乳癌は、CD95L陽性乳癌またはCD95L陰性乳癌であると特定することができる。
 
【0036】
  本発明によれば、これまでに知られている診断方法により得られる診断肺癌は、CD95L陽性肺癌またはCD95L陰性肺癌であると特定することができる。
 
【0037】
  本発明によれば、これまでに知られている診断方法により得られる診断腎臓癌は、CD95L陽性腎臓癌またはCD95L陰性腎臓癌であると特定することができる。
 
【0038】
  本発明によれば、これまでに知られている診断方法により得られる診断肝臓癌は、CD95L陽性肝臓癌またはCD95L陰性肝臓癌であると特定することができる。
 
【0039】
  本発明によれば、本明細書に記載の特定のタイプの癌に起因する転移性疾患は、CD95L陽性転移性疾患またはCD95L陰性転移性疾患であると特定することができる。
 
【0040】
  本発明において用いられるCD95L阻害剤は、少なくとも細胞外CD95ドメインまたはその機能性フラグメントおよび少なくともFcドメインまたはその機能性フラグメントを含む、融合タンパク質を含むことができる。具体的には、融合タンパク質は、APG101、APG101に対して少なくとも70%の同一性を有するポリペプチド、および、APG101の機能性フラグメントから選択される。
 
【0041】
  免疫グロブリンFcドメインに融合された細胞死受容体CD95(Apo−1;Fas)の細胞外ドメインを含む融合タンパク質は、PCT/EP04/03239に記載され、その開示は参照により本明細書中に含まれる。本明細書において用いられる「融合タンパク質」は、融合タンパク質アイソフォームの混合物を含み、各融合タンパク質は、少なくとも細胞外CD95ドメイン(APO−1;Fas)またはその機能性フラグメント、および、Fcドメインまたはその機能性フラグメントである少なくとも第二のドメイン(約4.0〜約8.5のpI範囲内に分布する)を含む。したがって、Fcドメインが、「第二のドメイン」と呼ばれ得る一方で、本明細書において用いられる細胞外CD95ドメインは、「第一のドメイン」とも呼ばれ得る。
 
【0042】
  融合タンパク質の混合物は、組成物中に提供することができる。
 
【0043】
  第一のドメインタンパク質は、細胞外CD95ドメインであり、好ましくは哺乳類の細胞外ドメインであり、具体的にはヒトタンパク質であり、すなわち、ヒト細胞外CD95ドメインである。融合タンパク質の第一のドメイン(すなわち細胞外CD95ドメイン)は、好ましくは、ヒトCD95(配列番号1)のアミノ酸170、171、172または173までのアミノ酸配列を含む。シグナルペプチド(例えば配列番号1の1〜25位)は、存在してよく、または存在しなくてよい。特に治療目的には、ヒトタンパク質の使用が好ましい。
 
【0044】
  融合タンパク質は、同一または異なってよい1つまたは複数の第一のドメインを含むことができる。1つの第一のドメイン、すなわち1つの細胞外CD95ドメインは、融合タンパク質中に存在することが好ましい。
 
【0045】
  好ましい実施態様によれば、Fcドメインまたはその機能性フラグメント、すなわち、本発明に係る融合タンパク質の第二のドメインは、CH2および/またはCH3ドメイン、および場合によりヒンジ領域の少なくとも一部分、または、それから得られる改変免疫グロブリンドメインを含む。免疫グロブリンドメインはIgG、IgM、IgD、またはIgE免疫グロブリンドメインまたはそれらから得られる改変免疫グロブリンドメインであってよい。好ましくは、第二のドメインは、定常IgG免疫グロブリンドメインの少なくとも一部分を含む。IgG免疫グロブリンドメインは、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4ドメインまたはそれらから改変されたドメインから選択してよい。好ましくは、第二のドメインは、ヒトFcドメイン、例えばIgGのFcドメイン、例えば、ヒトIgG1のFcドメインである。
 
【0046】
  融合タンパク質は、同一または異なってよい1つまたは複数の第二のドメインを含むことができる。1つの第二のドメイン、すなわち1つのFcドメインは、融合タンパク質中に存在することが好ましい。
 
【0047】
  さらに、第一および第二のドメインの両方とも、好ましくは同一種由来である。
 
【0048】
  第一のドメイン、すなわち細胞外CD95ドメインまたはその機能性フラグメントは、N末またはC末に位置してよい。第二のドメイン、すなわちFcドメインまたは機能性フラグメントは、融合タンパク質のC末またはN末に位置してもよい。しかしながら、融合タンパク質のN末における細胞外CD95ドメインが好ましい。
 
【0049】
  さらに好ましい実施態様によれば、融合タンパク質は、APG101(CD95−Fc、配列番号1の26〜400位)である。配列番号1により定義されるように、APG101は、ヒト細胞外CD95ドメイン(アミノ酸26〜172)およびヒトIgG1のFcドメイン(アミノ酸172〜400)を含み、さらに場合により、N末シグナル配列(例えば配列番号1のアミノ酸1〜25)を含む、融合タンパク質であってよい。シグナルペプチドの存在は、APG101の未熟型を示す。成熟の間に、シグナルペプチドは切断される。特に好ましい実施態様によれば、シグナル配列は切断される。切断されるシグナル配列を有するAPG101は、用語「未修飾APG101」によっても構成される。さらなる実施態様では、融合タンパク質は、APG101と、少なくとも70%同一性、より好ましくは75%同一性、80%同一性、85%同一性、90%同一性、95%同一性、96%同一性、97%同一性、98%同一性、99%同一性を有するポリペプチドである。本出願によれば、用語「同一性」は、比較される2つのアミノ酸配列が不変である(換言すれば同一のアミノ酸を同じ位置に共有する)程度に関する。
 
【0050】
  用語「APG101」は、シグナルペプチドを含んで、および含まずに、配列番号1の26〜400位の融合タンパク質を含む。また、用語「APG101」は、CD95細胞外ドメインのN末がトランケートされた形態を含む融合タンパク質も含む。
 
【0051】
  別の好ましい実施態様では、本発明に係る融合タンパク質は、APG101の機能性フラグメントである。本明細書において用いられる用語「フラグメント」は、一般に、「機能性フラグメント」、すなわち、対応する野生型または全長タンパク質が有するのと本質的に同一の生物学的活性および/または特性を有する、野生型または全長タンパク質のフラグメントまたは一部分を指す。
 
【0052】
  当業者は、本発明に係る融合タンパク質を設計および生産する方法を知っている。しかしながら、融合タンパク質アイソフォーム(具体的にはAPG101アイソフォーム)の混合物は、例えばPCT/EP04/03239に記載の方法により得ることができ、その開示は参照により本明細書中に含まれる。好ましい実施態様によれば、本発明の融合タンパク質の設計は、第一のドメインおよび第二のドメインの末端アミノ酸(単数または複数)の選択を含む(両ドメイン間に少なくとも1つのアミノ酸オーバーラップを作るため)。第一および第二のドメインの間、または、2つの第一のドメインの間の、オーバーラップは、好ましくは1、2または3アミノ酸の長さを有する。より好ましくは、オーバーラップは、1アミノ酸の長さを有する。オーバーラップするアミノ酸の例は、S、E、K、H、T、P、およびDである。
 
【0053】
  上記に示されるように、本明細書において用いられる「融合タンパク質」は、アイソフォームの混合物を含む。本明細書において用いられる用語「アイソフォーム」は、同一タンパク質の異なる形態、例えば、APG101(具体的には、シグナル配列を有さないAPG101)の異なる形態を指す。そのようなアイソフォームは、例えば、対応する未修飾タンパク質(すなわち、いかなる修飾もされずに所定のコード配列から発現および翻訳されるタンパク質)と比較した場合に、タンパク質長さが異なってよく、アミノ酸が異なってよく(すなわち置換および/または欠失)、および/または、翻訳後の修飾が異なってよい。異なるアイソフォームは、例えば、SDS−電気泳動のような電気泳動および/または分画電気泳動(本発明によれば好ましい)によって、区別することができる。
 
【0054】
  タンパク質の長さが異なるアイソフォームは、例えば、対応する未修飾タンパク質と比較した場合に、N末および/またはC末が伸長および/または短縮されてよい。例えば、本発明に係るAPG101アイソフォームの混合物は、未修飾の形態、ならびに、N末および/またはC末が伸長および/または短縮されたその変異型の、APG101を含んでよい。従って、好ましい実施態様によれば、本発明に係る混合物は、N末および/またはC末が短縮されたAPG101の変異型を含む。特に好ましいのは、N末が短縮された融合タンパク質を含む融合タンパク質アイソフォームの混合物である。そのようなN末が短縮された融合タンパク質は、未修飾APG101の、−1、−2、−3、−4、−5、−6、−7、−8、−9、−10、−11、−12、−13、−14、−15、−16、−17、−18、−19、−20、−21、−22、−23、−24、−25、−26、−27、−28、−29、−30、−35、−40、−45および/または−50のN末が短縮された変異型を含んでよい。特に好ましいのは、−17、−21および/または−26のN末が短縮された変異型である。番号は、配列番号1に係るシグナル配列を含むAPG101タンパク質を指す。換言すれば、短縮された融合タンパク質は、配列番号1のN末が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45および/または50アミノ酸トランケートされた配列を含むことができる。好ましい短縮された融合タンパク質は、N末が16、20、または25アミノ酸トランケートされた配列番号1を有する。
 
【0055】
  APG101アイソフォームのC末の短縮の例は、C末のLys−クリッピングである。
 
【0056】
  本発明の好ましい実施態様によれば、本発明に係る融合タンパク質の混合物は、好ましくは、修飾アイソフォームに対して50モル%の未修飾APG101、より好ましくは40モル%の未修飾APG101、より好ましくは30モル%の未修飾APG101、より好ましくは20、より好ましくは10モル%の未修飾APG101、より好ましくは5モル%の未修飾APG101、およびさらにより好ましくは3モル%の未修飾APG101、および最も好ましくは1モル%および/またはそれ未満の未修飾APG101を含む。最も好ましいのは、未修飾APG101を少しも含まない融合タンパク質アイソフォームの混合物を含む実施態様である。
 
【0057】
  上記に概説されるように、アイソフォームは、アミノ酸置換、アミノ酸欠失および/またはアミノ酸の付加によって異なってもよい。そのような置換および/または欠失は、1つまたは複数のアミノ酸を含んでよい。しかしながら、本実施態様によれば、1アミノ酸の置換が好ましい。
 
【0058】
  本発明に係るアイソフォームは、翻訳後修飾に関して異なることもできる。本発明に係る翻訳後修飾は、制限されずに、特に膜局在化(例えば、ミリストイル化、パルミトイル化、イソプレニル化、またはグリピエーション(glypiation))のための疎水性基の付加、リポイル化(lipoyation)などの高い酵素活性のための補助因子の付加、より小さな化学基の付加(例えば、アシル化、ホルミル化、アルキル化、メチル化、C末でのアミド化、アミノ酸付加、γ−カルボキシル化、グリコシル化、ヒドロキシル化、酸化、グリシル化(glycilation)、ビオチン化および/またはペグ化)を、含んでよい。
 
【0059】
  本発明によれば、シアル酸の付加、Fcに基づくグリコシル化、具体的にはFcに基づくN末グリコシル化、および/または、pyro−Glu−修飾が、翻訳後修飾の好ましい実施態様である。
 
【0060】
  好ましい実施態様によれば、本発明の組成物に含まれる融合タンパク質は、大量のシアル酸を含む。本発明によれば、シアル酸の含有量は、好ましくは約4.0〜7.0モルNeuAc/モルAPG101、より好ましくは、4.5〜6.0モルNeuAc/モルAPG101、および最も好ましくは、約5.0モルNeuAc/モルAPG101である。本明細書において用いられるシアル酸は、ノイラミン酸のN−またはO−置換誘導体を指す。好ましいシアル酸は、N−アセチルノイラミン酸(NeuAc)である。アミノ基は、一般に、アセチルまたはグリコリル基のいずれかを有するが、他の修飾が説明されている。ヒドロキシル置換基は、かなり変化し得る。好ましいヒドロキシル置換基は、アセチル、ラクチル、メチル、サルフェートおよび/またはホスフェート基である。シアル酸の付加は、一般に、よりアニオン性のタンパク質を生じる。生じる負電荷は、この修飾に、結合能力およびタンパク質の表面電荷を変える能力を与える。大量のシアル酸は、より良い血清安定性をもたらし、したがって改善された薬物動態およびより低い免疫原性をもたらす。本発明のAPG101アイソフォームの高度のシアリル化は、大量の二分岐(diantennary)構造により説明することができた。本発明の方法により得られる本発明の組成物におけるAPG101アイソフォームがそのような高度のシアル酸付加を示すことは、非常に驚くべきことと見なされなければならない。
 
【0061】
  本発明によれば、グリコシル化は、融合タンパク質(本明細書に定義される、その機能性フラグメント)の官能基に炭水化物が付加される反応を指す。具体的にはそれは、APG101またはそのアイソフォームへの炭水化物の付加に関する。炭水化物は、例えばN結合またはO結合により付加され得る。N結合の炭水化物は、アスパラギンまたはアルギニン側鎖の窒素に付加される。O結合の炭水化物は、セリン、トレオニン、チロシン、ヒドロキシリジンまたはヒドロキシプロリン側鎖の、ヒドロキシ酸素(hydroxy  oxygen)に付加される。本発明によれば、N結合(特にFcに基づくN末グリコシル化)が好ましい。特に好ましいN結合グリコシル化部位は、APG101(配列番号1)のN118、N136および/またはN250位に位置する。
 
【0062】
  本発明に係るフコシル化は、分子へのフコース糖単位の付加に関する。本発明に関して、融合タンパク質(具体的にはAPG101)へのフコース糖単位のそのような付加は、グリコシル化の特に好ましいタイプを表わす。フコシル化された形態の大部分は、抗体依存性細胞毒性(ADCC)の低減をもたらす。したがって、融合タンパク質アイソフォームの混合物は、低減したADCCにより特徴付けられ、それは、製剤および診断の用途に有益である。
 
【0063】
  本明細書に定義される第一および第二のドメインの他に、本発明に係る融合タンパク質は、さらなる標的化ドメインなどのさらなるドメイン、例えば単鎖抗体またはそのフラグメントおよび/またはシグナルドメインを含んでよい。さらなる実施態様によれば、本発明により用いられる融合タンパク質は、組み換え体の発現後に宿主細胞からの分泌を可能にするN末シグナル配列を含んでよい。シグナル配列は、融合タンパク質の第一のドメインと相同のシグナル配列であってよい。あるいは、シグナル配列は、異種のシグナル配列であってもよい。異なる実施態様では、融合タンパク質は、シグナルペプチドのようなさらなるN末配列がない。
 
【0064】
  本明細書に記載の融合タンパク質は、N末がブロックされた融合タンパク質(プロテアーゼによるN末分解に関して、より高い安定性を提供する)、および、N末フリーの融合タンパク質(プロテアーゼによるN末分解に関して、より高い安定性を提供する)であってよい。
 
【0065】
  タンパク質のN末をブロックする修飾は、当業者に公知である。しかしながら、N末をブロックする、本発明に係る好ましい翻訳後修飾は、pyro−Glu−修飾である。Pyro−Gluは、ピロリドンカルボン酸とも呼ばれる。本発明に係るPyro−Glu−修飾は、側鎖カルボキシル基とα−アミノ基の濃縮を介した、グルタミンの環化によるN末グルタミンの修飾に関する。修飾タンパク質は、半減期の増大を示す。そのような修飾は、グルタミン酸残基にも生じることができる。特に好ましいのは、N末が短縮された融合タンパク質−26に関する、pyro−Glu−修飾、すなわちピロリドンカルボン酸である。
 
【0066】
  本明細書に記載の混合物は、80〜99モル%のN末がブロックされた融合タンパク質および/または1〜20モル%のN末フリーの融合タンパク質を含んでよい。
 
【0067】
  さらに好ましい実施態様によれば、本明細書に記載の混合物は、0.0〜5.0モル%、より好ましくは0.0〜3.0モル%、およびさらにより好ましくは0.0〜1.0モル%の、融合タンパク質の高分子量の形態、例えば凝集体を含む。好ましい実施態様では、混合物は、融合タンパク質アイソフォームのいかなる凝集体も含まず、具体的には、APG101のいかなる二量体または凝集体も含まない。二量体または凝集体は、それらは溶解度および免疫原性に対して負の効果を有するので、一般に望ましくない。
 
【0068】
  APG101の機能的形態は、本明細書に記載のように、ヒンジ領域において、2つの分子の配列番号1に関する179位または/および182位でジスルフィド架橋により連結された、2つの融合タンパク質を含む。ジスルフィド架橋は、2つの分子の配列番号1に関する173位で形成されてもよく、改善された安定性をもたらす。配列番号1に関する173位でのジスルフィド架橋が必要でない場合は、この位置でのCys残基を別のアミノ酸により置換することができ、または欠失させることができる。
 
【0069】
  本発明によれば、融合タンパク質アイソフォームの混合物は、約4.0〜約8.5のpI範囲内に分布する。さらなる実施態様では、本発明に係る組成物に含まれる融合タンパク質アイソフォームの混合物のpI範囲は、約4.5〜約7.8、より好ましくは約5.0〜約7.5である。
 
【0070】
  等電点(pI)は、特定の分子または表面が電荷を持たないpH値により定義される。周囲媒質のpH範囲に応じて、タンパク質のアミノ酸は、異なる正電荷または負電荷を有し得る。タンパク質の全電荷の合計は、特定のpHの範囲(その等電点、すなわちpI値)ではゼロである。電界中のタンパク質分子は、このpH値を有する媒質のポイントに到達すると、その電気泳動移動度が低下し、この場所に留まる。当業者は、所定のタンパク質のpI値を決定する方法、例えば分画電気泳動を熟知している。本技術は極めて高い分解度が可能である。電荷が1つ異なるタンパク質を、分離および/または分画することができる。
 
【0071】
  本発明のさらに別の態様は、CD95L発現のレベルに従って癌疾患を分類することによる、癌疾患の診断での使用のための、CD95Lに特異的に結合する作用物質である。本態様では、癌疾患は、CD95L発現のレベルにより、CD95L陽性の癌疾患またはCD95L陰性の癌疾患に分類することができる。
 
【0072】
  本態様では、癌は、本明細書に記載の任意の癌であってよい。具体的には、癌疾患は、脳腫瘍、結腸癌、結腸直腸癌、膵癌、乳癌、肺癌、腎臓癌、肝臓癌または/およびそれらの転移性疾患からなる群から選択される。より具体的には、癌疾患はグリオーマであり、最も具体的には膠芽腫である。
 
【0073】
  本態様では、作用物質は、本明細書に記載のCD95Lに特異的に結合する作用物質であってよい。作用物質は、本明細書に記載の任意のCD95L阻害剤であってよい。
 
【0074】
  特に、CD95Lに特異的に結合する作用物質は、少なくとも細胞外CD95ドメインまたはその機能性フラグメントおよび少なくともFcドメインまたはその機能性フラグメントを含む、本明細書に記載の融合タンパク質を含む。より具体的には、融合タンパク質は、APG101、APG101に対して少なくとも70%の同一性を有するポリペプチド、および、APG101の機能性フラグメントから選択される。
 
【0075】
  本発明の別の態様は、CD95L発現のレベルによって患者の癌疾患を分類することによる、癌患者における全生存期間または/および無再発生存期間の予知での使用のための、CD95Lに特異的に結合する作用物質である。
 
【0076】
  本態様では、癌は、本明細書に記載の任意の癌であってよい。具体的には、癌疾患は、脳腫瘍、結腸癌、結腸直腸癌、膵癌、乳癌、肺癌、腎臓癌、肝臓癌または/およびそれらの転移性疾患からなる群から選択される。より具体的には、癌疾患はグリオーマであり、最も具体的には膠芽腫である。
 
【0077】
  本態様では、作用物質は、本明細書に記載のCD95Lに特異的に結合する作用物質であってよい。作用物質は、本明細書に記載の任意のCD95L阻害剤であってよい。
 
【0078】
  具体的には、CD95Lに特異的に結合する作用物質は、少なくとも細胞外CD95ドメインまたはその機能性フラグメントおよび少なくともFcドメインまたはその機能性フラグメントを含む、本明細書に記載の融合タンパク質を含む。より具体的には、融合タンパク質は、APG101、APG101に対して少なくとも70%の同一性を有するポリペプチド、および、APG101の機能性フラグメントから選択される。
 
【0079】
  本発明では、全生存期間(OS)は、癌を患っている個体のグループに関する生きる見込みを表わす。それは、特定の期間後に生きている可能性がある、グループ内の個体の割合を表わす。
 
【0080】
  本発明のさらに別の態様は、癌患者における全生存期間または/および無再発生存期間を予知する方法であって、前記方法は、
  (a)癌サンプルにおいてCD95L発現を判定するステップ、および、
  (b)CD95L発現のレベルによって、患者の生存期間または/および無再発生存期間を予知するステップ(ここでCD95L発現は、患者の生存期間と負に相関する)
を含む。
 
【0081】
  本発明の本態様では、癌サンプルを患者から得ることができる。好ましくは、その方法は、患者から癌サンプルを得るステップを含まない。
 
【0082】
  本態様では、癌疾患は、CD95L発現のレベルにより、CD95L陽性の癌疾患またはCD95L陰性の癌疾患に分類することができる。
 
【0083】
  本態様では、癌は、本明細書に記載の任意の癌であってよい。具体的には、癌疾患は、脳腫瘍、結腸癌、結腸直腸癌、膵癌、乳癌、肺癌、腎臓癌、肝臓癌または/およびそれらの転移性疾患からなる群から選択される。より具体的には、癌疾患はグリオーマであり、最も具体的には膠芽腫である。
 
【0084】
  本態様では、作用物質は、本明細書に記載のCD95Lに特異的に結合する作用物質であってよい。作用物質は、本明細書に記載の任意のCD95L阻害剤であってよい。
 
【0085】
  具体的には、CD95L阻害剤に特異的に結合する作用物質は、少なくとも細胞外CD95ドメインまたはその機能性フラグメントおよび少なくともFcドメインまたはその機能性フラグメントを含む、本明細書に記載の融合タンパク質を含む。より具体的には、融合タンパク質は、APG101、APG101に対して少なくとも70%の同一性を有するポリペプチド、および、APG101の機能性フラグメントから選択される。
 
【0086】
  本発明のさらなる態様は、癌の治療方法であって、前記方法は、
  (a)患者から得られる癌サンプルにおいてCD95Lの発現を判定するステップ、および、
  (b)ステップ(a)において、癌サンプルにおけるCD95Lの発現が検出された場合にCD95L阻害剤を投与するステップ、
を含む。
 
【0087】
  本発明のさらに別の態様は、癌疾患の治療での使用のためのCD95L阻害剤であって、ここで、癌疾患はCD95L陽性の癌疾患である。癌疾患は、本明細書に記載の任意の癌疾患であってよい。CD95L阻害剤は、本明細書に記載の任意のCD95L阻害剤であってよい。
 
【0088】
  本発明のさらなる態様は、癌疾患の治療のための薬剤の製造に関するCD95L阻害剤の使用に関し、ここで癌疾患は、CD95L陽性の癌疾患である。CD95L阻害剤は、本明細書に記載の任意のCD95L阻害剤であってよい。
 
【0089】
  本明細書に記載の、診断または/および治療される癌患者は、癌(例えば膠芽腫)の第一または第二の再発または進行を有する患者であってよい。患者は、例えば膠芽腫の治療において、放射線療法(例えば60Gy)または/およびテモゾロミドを含む標準的な治療が失敗している患者であってよい。具体的には、患者は、例えば膠芽腫の治療のための再照射の候補者である。
 
【0090】
  本明細書に記載の治療用途では、CD95L阻害剤は、例えば注入または注射により、全身に投与することができる。
 
【実施例】
【0091】
  実施例1
  癌の治療のためのAPG101(CD95リガンド阻害剤):フェーズII試験
  フェーズII試験は、膠芽腫の第一または第二の再発または進行を有する患者の治療における、ランダム化したオープン−ラベルの多施設治験の、毎週のAPG101+再照射(APG101+RT群、試験群)、対、再照射のみ(RT群、コントロール群)であった。合計で91人の患者を本試験に含めた。ITT個体群は84人患者から構成され、APG101+RT群が58人、RT群が26人であった。腫瘍切除が適さないか、または、切除後に肉眼的な残留腫瘍を有するかのいずれかの、第一または第二の再発の膠芽腫を有する男性および女性患者が、この試験の候補者であった。適格な患者は、標準的な治療(放射線療法(60Gy)およびテモゾロミドを含んでいなければならない)に失敗していなければならず、そして、再照射の候補者とならなければならなかった。試験に含まれる患者は、再照射のみ、または、再照射+進行するまで週1回の30分の静脈内(i.v.)注入として投与される400mgのAPG101の、いずれかを受けた。
【0092】
  組織学的分析のためのアーカイブされた腫瘍組織は、膠芽腫診断を確証するために、(ITT個体群の)81人の患者から入手可能であった。中央組織学診断(central  histology  review)に関して、バイオプシーまたはパラフィン中に埋め込まれた外科的処置の材料は、膠芽腫の一次診断を確証するために、中央診断(central  review)に利用可能でなければならない。得られた全てのサンプルは、最初の外科的処置および疾患診断または試験前の外科的切除に由来する、アーカイブされたサンプルであった。患者の登録後に、パラフィン包埋された腫瘍サンプルを、試験センターにより回収した。組織切片をこれらの腫瘍サンプルから調製して、免疫組織化学染色(IHC)を用いて、CD95Lを含む様々な「マーケット」を評価した。
【0093】
  この臨床試験に参加している多形膠芽腫(GBM)患者を、コントロール群および試験群にランダム化した。
【0094】
  結果
  図1は、コントロール群および試験群(全生存率、OS)の患者の生存率を示す。図は、APG101および放射線治療を受ける試験群の患者は、放射線治療のみを受けるコントロール群と比較して、改善された生存率を有することを示す(
表1参照)。
【0095】
【表1】
【0096】
  コントロール群患者および試験群患者のGBM腫瘍サンプルの切片を、CD95リガンド(CD95L)の存在に関して、免疫組織化学的染色により分析した(
実施例2参照)。
【0097】
  驚くべきことに、CD95L発現のレベルおよび分布は、患者間で大きく異なることが見いだされた。約3分の1の患者は、腫瘍組織において強い陽性のCD95L発現を示した。さらに別の3分の1の患者は、CD95L陰性の表現型を示した。残りの患者は、CD95Lのわずかな発現を示した。この表現型は、「低陽性」表現型と呼ぶことができた。
【0098】
  放射線治療に加えてAPG101を受ける試験群患者(N=58)では、18人の患者が、腫瘍組織において、強い陽性のCD95L発現の表現型を示した。18人の患者は、CD95L陰性の表現型を示した。コントロール群(N=26)では、10人の患者が強い陽性のCD95Lの表現型を示し、9人の患者がCD95L陰性の表現型を示した(
表2)。
【0099】
【表2】
 
 
【0100】
  驚くべきことに、コントロール群GBM患者の全生存期間は、CD95L発現のレベルと負に相関した。GBMの、強いCD95L陽性の表現型を示す患者は、CD95L陰性GBMの患者より悪い予後を有した。CD95L陽性の患者は250日生存し、CD95L陰性の患者は460日生存した(
表2参照)。
【0101】
  試験群では、GBMの、強いCD95L陽性の表現型を示す患者は、治療の恩恵を受けた。CD95L陽性患者は350日生存した。
【0102】
  図2のKaplan−Meyerプロットは、コントロール群および試験群における、CD95L陽性患者において得られた生存データを比較する。APG101での治療において、曲線は、より長い生存期間にシフトする。これは、GBMのCD95L陽性の表現型を示す患者が、APG101の投与の恩恵を受けたことを意味する。メジアン全生存期間は、250日(コントロール群)から350日に増加した。
【0103】
  試験群では、CD95陰性患者でのメジアン全生存は410日であった。陰性CD95L表現型を示すコントロール群患者と比較して、メジアン全生存は、APG101での治療において、460日から410日に減少した。データを
図3のKaplan−Meyerプロットに示す。この図は、試験群およびコントロール群の曲線が大きく重なり、統計的に有意でないことを示す。
【0104】
  要約
  本実施例は、癌におけるCD95Lの発現が、患者の生存の減少と関連することを示す。これは、CD95Lが癌における予後因子として適切であることを意味する。これは、特に、可変の程度にCD95Lを発現する癌タイプ(例えば膠芽腫)において重要である。したがって、本発明は、CD95Lの発現による、癌の診断的区別を可能にする。これは、CD95L陽性癌およびCD95L陰性癌における、癌(例えば膠芽腫)の新規の診断的区別をもたらす。
【0105】
  したがって、本実施例は、驚くべきことに、CD95L阻害剤(例えばAPG101)が、CD95Lを発現している癌を患っている患者において、癌の生存を改善することができることを示す。対照的に、CD95Lを発現しない癌を患っている患者は、CD95L阻害剤を用いた治療による恩恵を受けない。本実施例は、癌サンプルにおいてCD95L発現を判定するステップ、および、CD95Lが発現される場合に患者を治療するステップを含む、治療ストラテジーを可能にする。このストラテジーは、治療の成功を期待することができる患者にCD95L阻害剤を投与することができるので、有利である。これは、CD95Lを発現していない癌を患っている患者にとって、これらの患者は、CD95L阻害剤を用いた治療から恩恵をおそらく受けないので、不利でない。
【0106】
  実施例2
  CD95Lの免疫組織化学的判定
【0107】
  CD95Lは、以下の手順を行なうことにより、組織切片(例えば腫瘍組織切片)において判定することができる:
  ・組織サンプルを、4%緩衝ホルムアルデヒド中に固定し、パラフィン中に埋め込んだ。
【0108】
  ・3μmの厚い切片を脱脂(dewoxed)した:
  1.キシロール10分。
  2.キシロール10分。
  3.キシロール10分。
  1.エタノール100%5分。
  2.エタノール100%5分。
  エタノール96%5分。
  エタノール90%5分。
  エタノール70%5分。
  1.H
2O  dest.1分
  2.H
2O  dest.5分。
【0109】
  ・高温抗原脱マスキング手順:
  クエン酸(Citrat)pH6.0(標的回復溶液(Target  Retrieval  Solution)、99℃、(DAKO,カタログ番号S1699)、25分。
【0110】
  ・室温で冷却15分
【0111】
  ・PBS中で洗浄2×5分
【0112】
  ・高い内因性ビオチンを有する組織に関して:例えば、膵臓、肝臓、腎臓由来のサンプルに関して、Biotin−Block(DAKO,Biotin  Blocking  System,X0590)
    ・アビジン10分。室温(RT)
    ・PBS中でリンス1×5分
    ・ビオチン10分。RT
    ・PBS中でリンス1×5分
【0113】
  ・非特異の抗体結合をブロックするために、切片を、ブロッキング溶液1(PBS,BSA  20mg/ml;Serva,Germany,カタログ番号11924)、ヒトIgG  1mg/ml、(Gammunex  10%,Talecris)とともに、20分間、インキュベートした。
【0114】
  ・ブロッキング溶液1中に希釈された一次抗体
    ・抗CD95  aAPG101ウサギFc除去(depleted)2μg/ml
    ・抗CD95Lポリクローナルウサギ(Dianova,カタログ番号DLN−14047)1:100
    ・ウサギIgGアイソタイプコントロール(Invitrogen(Zytomed),カタログ番号08−6199)
【0115】
  ・室温でインキュベーション60分。
【0116】
  ・PBS中で洗浄2×5分
【0117】
  ・ブロッキング溶液2を用いて20分間ブロッキング。ブロッキング溶液2を用いたブロッキング=ブロッキング溶液1+20%正常ヤギ血清,Dianova,カタログ番号005−000−121を用いたブロッキング。
【0118】
  ・ブロッキング溶液2、例えばヤギF(ab’)
2抗_ウサギIgG(H+L鎖)ビオチン化(SouthernBiotech,カタログ番号4052−08)中に希釈された二次抗体1:100、室温でインキュベーション30分
【0119】
  ・PBS中で洗浄2×5分
【0120】
  ・ストレプトアビジン−アルカリフォスファターゼ(濃縮APラベル,BioGenex,カタログ番号HK321−UK)、ブロッキング溶液1に希釈、室温でインキュベーション30分
【0121】
  ・PBS中で洗浄2×5分
【0122】
  ・アルカリフォスファターゼ基質(DAKO  Liquid  Permanent  Red,DakoCytomation  GmbH,Glostrup,Denmark,カタログ番号K0640)を用いたインキュベーション
【0123】
  ・ヘマトキシリン(Merck,Mayers  Hamalaunlosungカタログ番号1.09249.0500)を用いた対比染色
【0124】
  ・全細胞数に対する染色された細胞数(CD95L陽性細胞(%))、または/および、全面積に対する染色された面積のサイズ(CD95L陽性面積(%))の判定。腫瘍組織を試験する場合:腫瘍細胞の全数に対する染色された腫瘍細胞の数(CD95L陽性腫瘍細胞(%))、または/および、腫瘍組織の全面積に対する腫瘍組織の染色された面積のサイズ(腫瘍組織のCD95L陽性面積(%))の判定。非−腫瘍組織は無視する。
【0125】
  実施例3
  CD95Lの免疫組織化学的に染色されたスライドの評価
  1.一般面
  全てのCD95Lの染色されたスライド(実施例2参照)は、神経腫瘍学(C.H.)の分野で広範囲の経験を持つ1人の(single)認定神経病理医により評価された。全体的な評価は、単一の切片においてスライドごとに(slide−by−slide)行なった。評価プロセス全体において最も長い中断は、間が60分より長くなかった。神経病理医は、患者の臨床データを知らされなかった。同一の神経病理医は、以前に、Mib1−、GFAP−およびIDH1  R132H免疫組織化学と組み合わせたH&E−および銀染色に基づいて、基準の組織学診断を作り出している。しかしながら、CD95Lの評価の時点で、これらの診断に関するスライドは利用可能でなかった。神経病理医は、診断について、個人的な通知(personal  notice)のみ利用可能であった。さらに、神経病理医は、MGMT状態を評価していて、この分析による結果は、CD95Lスライドが評価されるときに知られていた。
【0126】
  2
.較正画像(calibration  figure)の作成
  CD95Lの免疫組織化学染色は、Apogenix社により確立された。評価する神経病理医(C.H.)は、染色の技術面に関与せず、用いられたプロトコルに関して知らなかった。CD95Lの免疫組織化学を確立するプロセスの完了後、品質チェックのために、少数のCD95L染色スライドを神経病理医にコミットした。神経病理医は、用いた免疫組織化学が、高品質の結果を可能にすることを確認し、このプロトコルが、さらなるCD95L染色に関する標準になると定義することを検討した。
【0127】
  品質評価のために作成されたこれらのスライドに基づき、CD95Lの免疫組織化学強度の比較を可能にする較正画像を作成した。ソフトウェアAxioVision  4.8を用いて、AxioCamHRデジタルカメラを有するCarl  Zeiss  AxioPlan2顕微鏡上で写真を撮った。未修整の写真を、CorelDraw  v14.0に直接組み込んで並べた。CD95Lの免疫組織化学の強度が同様の、異なるサンプル由来の2枚の写真を1列に並べた。要約すると、CD95Lの免疫組織化学の強度「CD95L陽性(高)」または「CD95L陰性(低)」を表わす2列の写真が作成された(
図4参照)。
【0128】
  3.概略および組織選択
  最初のステップにおいて、スライドを低解像度で顕微鏡(Olympus  BX46)の下でスキャンし、固形腫瘍組織の量を評価した。正常の脳実質組織の面積および腫瘍浸潤の面積を、さらなる分析から除外した。腫瘍組織は、以下の基準が満たされる場合に、さらなる評価に選択した:
  ・低酸素ダメージに関する兆候なくバイタルに見えた腫瘍組織
  ・切除により誘導される鮮血(fresh  bleeding)がない腫瘍組織
  ・切断により誘導されるアーティファクトの兆候がない腫瘍組織
【0129】
  4.単一のスライドの評価−基準「強度」
  各スライドの適切な腫瘍組織を、CD95L陽性またはCD95L陰性の染色強度に関して評価した。CD95L較正画像を用いて評価を標準化した。ほとんどの腫瘍が別々の面積において異なる染色強度を示したので、これらの合計した面積のパーセンテージを測定した。それぞれの腫瘍は、CD95L陽性またはCD95L陰性の染色強度を示す面積を表わす特定の値(%)が与えられた:
【0130】
【表3】
【0131】
  最後に、結果を中央病理診断(central  pathology  review)のフォームで通知した。
【0132】
  5.単一スライドの評価−基準「分布パターン」
  神経膠腫(例えば膠芽腫)は、腫瘍細胞突起(tumor  cell  processes)の線維性マトリックスおよび腫瘍細胞からなる。光学顕微鏡を用いて、これらの突起(processes)は、通常、特定の腫瘍細胞に割り当てることができない。CD95L抗体の結合が主にマトリックスのそのような細胞区画に見られた場合、その染色パターンを「びまん性」と定義した。その代わり、明らかに腫瘍細胞がCD95Lにより標識された場合は、その染色パターンを「局所性」と定義した。腫瘍組織中にCD95L標識が本質的に見られなかった場合、または、CD95L陽性の面積が腫瘍組織の2%より低かった場合、その分布パターンは評価しなかった。最後に、結果を中央病理診断のフォームで通知した。
【0133】
  6.CD95Lの結果の報告
  CD95Lの評価による結果を、中央病理診断のフォーム(上記参照)で通知した。フォームは、責任のある神経病理医により日付が入れられ、署名された。
【0134】
  7.IHCに基づく分析に適した特異的CD95L−抗体の生成
  ヒトCD95Lの最初の21aa(CD95L_NT  1−21:MQQPFNYPYPQIYWVDSSASS)をコードする合成N末ペプチドでのウサギの免疫化を用いて、CD95L特異的ウサギモノクローナル抗体を開発した。IHCに基づくアッセイでのCD95Lの検出に適する適切な抗体の選択のために、候補の抗−CD95Lウサギモノクローナル抗体の徹底的な特性化(IHC分析を含む)を行なった。スクリーニングプロセスは、免疫化に用いたN末ペプチドを特異的に認識する非常に多くの抗体を同定した。しかしながら、1つのウサギモノクローナル抗体「クローン24−8」が、IHCに基づく分析でのCD95Lの検出に特に適した。
【0135】
  持続する抗体供給を確実にするために、クローン24−8に由来する抗体の組み換え発現をHEK細胞において行なった。クローン24−8に由来する組み換え抗体は、それぞれのIgG重鎖および軽鎖の配列に基づき、そして、APG1181と指定された。組み換え抗体の特異性は、ハイブリドーマクローン24−8に由来する抗体と同一である(
図5および
図7参照)。抗体の特異性は、ELISA、IHC分析、および、特異的エピトープのマッピングにより、特徴付けられた。