【実施例】
【0080】
実施例1
シルク配列の獲得
以下の用語を用いてNCBIのヌクレオチドデータベースをサーチし、クモシルクを同定することによって、シルク配列および部分配列を得た:MaSp、TuSp、CySp、MiSp、AcSp、Flag、大瓶状腺、小瓶状腺、鞭状腺、ブドウ状腺、管状腺、円柱状腺、スピドロイン、およびクモフィブロイン。得られたヌクレオチド配列をアミノ酸配列へ翻訳し、次いで精選し(curate)、繰り返される配列を除去した。シルクのタイプに依存して、200〜500アミノ酸長未満であった配列を除去した。上記のサーチからのシルク配列をブロック(例えば、反復配列)および非反復領域へ区分化した。
【0081】
反復ポリペプチド配列(リピート(R)配列)を各シルク配列から選択し、これらをSEQ ID NO: 1077〜1393として列挙する。配列がF、Y、W、C、H、N、M、またはDアミノ酸で終結しないようにするために、例えば、C末端へセリンを付加することによって、R配列の一部を変更した。これは下述のベクターシステムへの組み込みを可能にする。本発明者らはまた、別のブロックからの相同配列からのセグメントの組み込みによって不完全なブロックを変更した。SEQ ID NO: 1077〜1393のいくつかの配列について、ブロックまたはマクロリピートの順序を、NCBIデータベースにおいて見られる配列から変更し、擬似リピートドメインを作製した。
【0082】
非反復N末端ドメイン配列(N配列)およびC末端ドメイン配列(C配列)も各シルク配列から選択した(SEQ ID NO: 932〜1076)。リーディングシグナル配列の除去によって、既に存在しない場合は、N末端グリシン残基の付加によって、N末端ドメイン配列を変更した。
【0083】
本発明の多数の態様を説明した。それにもかかわらず、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な修飾が行われ得ることが理解されるだろう。
【0084】
実施例2
ヌクレオチド配列へのシルクポリペプチド配列の逆翻訳
実施例1に記載されたR、N、およびCアミノ酸配列をヌクレオチド配列へ逆翻訳した。逆翻訳を行うために、各位置で所望のアミノ酸をコードするコドンのバイアスランダム選択へのピキア(コマガテラ)パストリスコドン使用を用いることによって、10,000個の候補配列を作製した。次いで、選択制限部位(BsaI、BbsI、BtgZI、AscI、SbfI)を各配列から除去し;部位を除去することができなかった場合は、配列を廃棄した。次いで、エントロピー、最長の繰り返されるサブ配列、および繰り返される15量体の数を、各配列についてそれぞれ決定した。
【0085】
10,000個の各セットから合成に使用するための最適な配列を選ぶために、以下の基準を連続的に適用した:最長の繰り返されるサブ配列の最低の25%を有する配列を維持し、配列エントロピーの最高の10%を有する配列を維持し、繰り返される15量体の最低の数を有する配列を使用する。
【0086】
実施例3
選択されたN、C、またはR配列からのシルクポリペプチドのスクリーニング
実施例1および2からのヌクレオチド配列に、クローニングを可能にするために、合成の過程で、以下の配列を隣接させた:
ここで、「シルク」は実施例2の教示に従って選択されたポリヌクレオチド配列である。
【0087】
得られたDNAをBbsIで消化し、BtgZIで消化しかつウシ腸アルカリホスファターゼで処理した発現ベクターRM618 (SEQ ID NO:1399)または発現ベクターRM652 (SEQ ID NO:1400)のいずれかへライゲートした。ライゲートされた材料を、標準方法を用いてクローン単離およびDNA増幅のために大腸菌へ形質転換した。
【0088】
ピキア(コマガテラ)パストリス
R、N、またはC配列を含有する発現ベクターを、PEG法(Cregg, J.M., DNA-mediated transformation, Methods Mol. Biol., 389, pg. 27-42 (2007))を用いて、ピキア(コマガテラ)パストリス(株RMs71;これは、野生型ゲノム(NRRLY 11430)の断片での形質転換によって野生型へ戻されたHIS4遺伝子における変異、およびヒスチジンを欠いている所定の寒天培地プレートにおける選択を伴う株GS115(NRRL Y15851)である)へ形質転換した。発現ベクターは、ターゲティング領域(HIS4)、ドミナント耐性マーカー(nat−ノウルセオスリシン(nourseothricin)に対する耐性を付与する)、プロモーター(pGAP)、分泌シグナル(α接合因子リーダーおよびプロ配列)、ならびにターミネーター(pAOX1 pAシグナル)からなった。
【0089】
形質転換体を、25μg/mlノウルセオスリシンを含有するYPD寒天プレート上に平板培養し、30℃で48時間インキュベートした。各形質転換からの2つのクローンを、96-ウェルスクエアウェルブロック中の400μlのYPDへ接種し、1000 rpmで撹拌しながら30℃で48時間インキュベートした。細胞を遠心分離によってペレット化し、ウエスタンブロットによるシルクポリペプチド含有量の分析のために上清を回収した。得られたデータは、上清中の検出不可能なポリペプチドレベルから、比較的高い力価を示すウエスタンブロット上の強いシグナルまでの範囲に及ぶ、様々な発現および分泌表現型を実証している。
【0090】
成功したポリペプチド発現および分泌をウエスタンブロットによって判断した。各ウエスタンレーンを、1:バンド無し、2:適度なバンド、または3:強いバンドとしてスコアリングした。各クローンについての2つのスコアのうちより高いものを記録した。構築物番号が付けられた代表的なウエスタンブロットを
図4および
図5に示し、代表的なクローンについての付加的なウエスタンブロットを
図14に示す。試験した全てのR、N、およびC配列の完全なリストをウエスタンブロット結果と共に表2に示す。各腺カテゴリーおよび全てのドメインタイプを包含する、多数の種からのシルクポリペプチドが、成功裏に発現された。
【0091】
(表2)シルクポリペプチド配列
【0092】
実施例4
アセンブリベクターへの挿入のためのN、R、およびC配列の増幅
N、R、およびC配列についてのDNAを発現ベクターからPCR増幅し、AscI/SbfI制限部位を用いてアセンブリベクターへライゲートした。
【0093】
フォワードプライマーは、以下の配列からなった:
+ N、R、またはC配列の最初の19 bp。
【0094】
リバースプライマーは、N、R、またはC配列の最後の17 bp +
からなった。
【0095】
例えば、以下の配列:
について、使用したプライマーは以下であった:
フォワード:
リバース:
。
【0096】
PCR反応溶液は、12.5μL 2x KOD Extreme Buffer、0.25μl KOD Extreme Hot Start Polymerase、0.5μl 10μM Fwdオリゴ、0.5μl 10μM Revオリゴ、5 ngテンプレートDNA(発現ベクター)、0.5μlの10 mM dNTP、および最終体積25μlまで添加されたddH2Oからなった。次いで、反応物を以下のプログラムに従ってサーモサイクルした。
1.94℃で5分間変性させる
2.94℃で30秒間変性させる
3.55℃で30秒間アニール処理する
4.72℃で30秒間伸長させる
5.29回の付加的なサイクルについて工程2〜4を繰り返す
6.72℃で5分間最終伸長
【0097】
得られたPCR産物を制限酵素AscIおよびSbfIで消化し、アセンブリベクター(実施例5中の説明を参照のこと)、
のうちの1つへライゲートし、これらは、ルーチンな方法を用いて不要な挿入物を放出するために同じ酵素で消化されていた。
【0098】
実施例5
アルギオペ・ブルエンニチMaSp2ブロックからのシルクの合成(RM439、「18B」)
実施例2に記載されるアルゴリズムを用いて、アルギオペ・ブルエンニチMaSp2からの6つのリピートブロックのセット(またはブロックコポリマー)を選択し、各々が3つのブロックからなる2つのR配列へ分割した。次いで、2つの3-ブロックR配列を、以下のように短いオリゴヌクレオチドから合成した。
【0099】
RM409配列の合成:
アルギオペ・ブルエンニチMaSp2ブロック配列を、実施例3において用いたものとは異なる方法を用いて作製した。表3中のオリゴRM2919〜RM2942 (SEQ ID NO: 1468〜1491)を、各オリゴを等しい量で有する単一の混合物へ合わせた(合計100μM)。1μl 10x NEB T4 DNAリガーゼバッファー、1μl 100μMプールされたオリゴ、1μl NEB T4ポリヌクレオチドキナーゼ(10,000 U/ml)、および7μl ddH2Oを合わせ、37℃で1時間インキュベートすることによって調製されたリン酸化反応物において、これらのオリゴをリン酸化した。次いで、4μlのリン酸化反応物と16 μlのddH2Oとを混合し、混合物を95℃へ5分間加熱し、次いで混合物を0.1℃/秒の速度で25℃へ冷却することによって、これらのオリゴをアニールした。次いで、4μlのアニール処理オリゴと、5 nmolベクター骨格(AscIおよびSbfIで消化された、RM396 [SEQ ID NO: 1405])、1μl NEB T4 DNAリガーゼ(400,000 U/ml)、1μl 10x NEB T4 DNAリガーゼバッファー、および10 μlへのddH2Oとを合わせることによって、これらのオリゴをベクターへ一緒にライゲートした。ライゲーション溶液を室温で30分間インキュベートした。ライゲーション反応物の全体を、公知の技術に従ってクローン選択、プラスミド単離、および配列検証のために大腸菌へ形質転換した。
【0100】
得られたオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 930の5′→3′ヌクレオチド配列を有し、RM409と特定する。
【0101】
(表3)RM409シルクリピートドメインを作製するためのオリゴ配列(クローニングのためのフランキング配列を有する) (SEQ ID NO: 930)
【0102】
RM410配列の合成:
表4中のオリゴRM2999〜RM3014 (SEQ ID NO: 1492〜1507)を、各オリゴ100μMの濃度で単一の混合物へ合わせた。1μl 10x NEB T4 DNAリガーゼバッファー、1μl 100μMプールされたオリゴ、1μl NEB T4ポリヌクレオチドキナーゼ(10,000 U/ml)、および7μl ddH2Oを合わせ、37℃で1時間インキュベートすることによって調製されたリン酸化反応物において、これらのオリゴをリン酸化した。次いで、4μlのリン酸化反応物と16 μlのddH2Oとを混合し、混合物を95℃へ5分間加熱し、次いで混合物を0.1℃/秒の速度で25℃へ冷却することによって、これらのオリゴをアニールした。次いで、4 μlのアニール処理オリゴと、5 nmolベクター骨格(AscIおよびSbfIで消化された、RM400 [SEQ ID NO: 1406])、1μl NEB T4 DNAリガーゼ(400,000 U/ml)、1μl 10x NEB T4 DNAリガーゼバッファー、および10μlへのddH2Oとを合わせることによって、これらのオリゴをベクターへ一緒にライゲートした。ライゲーション溶液を室温で30分間インキュベートした。ライゲーション反応物の全体を、公知の技術に従ってクローン選択、プラスミド単離、および配列検証のために大腸菌へ形質転換した。
【0103】
得られたオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO: 931の5′→3′ヌクレオチド配列を有し、RM410と特定する。
【0104】
(表4)RM410シルクリピートドメインを作製するためのオリゴ配列(クローニングのためのフランキング配列を有する) (SEQ ID NO: 931)
【0105】
アルギオペ・ブルエンニチMasp2、「18B」のアセンブリおよびアッセイ
上述の方法に従って合成されたRM409 (SEQ ID NO: 930)およびRM410 (SEQ ID NO: 931)オリゴヌクレオチド配列を、
図6に示されるダイヤグラムに従ってアセンブルし、RM439シルクヌクレオチド配列(例えば「18B」)を作製した。
【0106】
アセンブリベクター中のRM409 (SEQ ID NO: 930)およびRM410 (SEQ ID NO: 931)を、
図7および
図8に示されるダイヤグラムに従って消化およびライゲートした。シルクN、R、およびCドメイン、ならびにα接合因子プレ-プロ配列および3X FLAGタグを含む付加的なエレメントを、シュード-スカーレス2アンチバイオティック(pseudo-scarless 2 antibiotic)(2ab)法(Leguia, M., et al., 2ab assembly: a methodology for automatable, high-throughput assembly of standard biological parts, J. Biol. Eng., 7:1 (2013); およびKodumal, S.J., et al., Total synthesis of long DNA sequences: synthesis of a contiguous 32-kb polyketide synthase gene cluster, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 101:44, pg. 15573-15578 (2004))を用いてアセンブルした。
【0107】
2abアセンブリは、2つの選択可能なマーカーのアイデンティティーおよび相対的位置以外は同一である6つのアセンブリベクターの使用に依存する。各ベクターは、以下のうちの正確に2つに対して耐性である:クロラムフェニコール(CamR)、カナマイシン(KanR)、およびアンピシリン(AmpR)。耐性遺伝子の順序(相対的位置)は重要であり、従って、DNAアセンブリの目的についてAmpR/KanRはKanR/AmpRとは異なる。6つのアセンブリベクターを表5に示し、これらは各々における2つの耐性マーカーに基づいて命名される(CamRについてC、KanRについてK、およびAmpRについてA)。6つのアセンブリベクターは以下の通りである:
アセンブリベクターを表5に示す。ベクターについての配列はSEQ ID NO: 1399〜1410の配列を含む。
【0108】
(表5)発現およびアセンブリベクター
【0109】
図7は、2つの適合性ベクター、AC (RM398 SEQ ID NO:1404)およびCK (RM401 SEQ ID NO:1407)を用いて行われる単一のアセンブリ反応を示し、一つは、標的複合配列の5′末端に予定される配列を含有し、一つは、標的複合配列の3′末端に予定される。5′配列を有するプラスミドをBbsIで独立して消化し、一方、3′配列を有するプラスミドをBsaIで独立して消化した。
【0110】
酵素の不活性化後、2つの消化されたプラスミドをプールし、ライゲートする。所望の産物はAKベクターに存在し、これは、全てのインプットベクターおよび不要な副産物とは異なる。これは大腸菌への形質転換後の所望の産物についての選択を可能にする。
【0111】
このプロセスの間のクローニング部位のDNA配列を
図8に示す。AGGTとなるようにタイプIIs酵素によって作製される4 bp突出部を選択することによって、DNA断片のアセンブリは、所望のコードされたポリペプチドにおいて傷跡がない接合部を生じさせ、但し、ポリペプチドは、グリシン(GGTによってコードされる)で始まり、Aで終わるコドンで終結する(F、Y、W、C、H、N、M、およびD以外の全て)。
【0112】
それぞれ、KCおよびCAアセンブリベクター中のRM409 (SEQ ID NO: 930)およびRM410 (SEQ ID NO: 931)のアセンブリは、
図6に示されるように、KA中のRM411(SEQ ID NO: 465)を作製した。RM411(SEQ ID NO: 465)配列を、AscIおよびSbfIを用いてACおよびCAへトランスファーした。RM411(SEQ ID NO: 465) KAおよびAC配列を、上述の手順に従って消化およびライゲートし、KC中のRM434(SEQ ID NO: 466)を作製した。最後に、KC中のRM434(SEQ ID NO: 466)を消化し、CA中のRM411(SEQ ID NO: 465)とライゲートし、最終シルクポリペプチドコード配列RM439(SEQ ID NO: 467) (aka,「18B」)を作製した。
【0113】
RM468発現ベクターへの「18B」シルクポリペプチドコード配列(RM439)のトランスファー:
RM468 (SEQ ID NO: 1401)発現ベクターは、α接合因子配列および3X FLAG配列(SEQ ID NO: 1409)を含有する。18Bシルクポリペプチドコード配列RM439 (SEQ ID NO: 467)を、BtgZI制限酵素およびGibson反応キットによってRM468 (SEQ ID NO: 1401)発現ベクターへトランスファーした。RM439ベクターをBtgZIで消化し、シルク配列を含有するポリヌクレオチド断片をゲル電気泳動によって単離した。不要なダミー挿入物を除外して、発現ベクターRM468を、実施例4に記載された条件を用いて、プライマーRM3329およびRM3330を使用するPCRによって増幅した。得られたPCR産物および単離されたシルク断片を、製造業者の説明書に従ってGibson反応キットを用いて合わせた。Gibson反応キットは市販されており(https://www.neb.com/products/e2611-gibson-assembly-master-mix)、米国特許第5,436,149号およびGibson, D.G. et al., Enzymatic assembly of DNA molecules up to several hundred kilobases, Nat. Methods, 6:5, pg. 343-345 (2009)に記載されている。
【0114】
RM439 (SEQ ID NO: 467)を含有する得られた発現ベクターを、ピキア(コマガテラ)パストリスへ形質転換した。得られた細胞のクローンを以下の条件に従って培養した:出発供給材料としてのグリセロール50g/Lと共に、[http://tools.invitrogen.com/content/sfs/manuals/pichiaferm_prot.pdf]に記載のものと類似した、最小基本塩培地において、培養物を増殖させた。1 VVMの空気流および2000 rpm撹拌を伴う、30Cに制御された撹拌発酵容器において、増殖を行った。水酸化アンモニウムのオンデマンド添加によってpHを3に制御した。溶存酸素の急増に基づいて必要に応じて追加のグリセロールを添加した。溶存酸素が最大値の15%に達するまで増殖を継続させ、その時点で、典型的に200〜300 ODの細胞密度で、培養物を採取した。
【0115】
発酵槽からの培養液を遠心分離によって脱細胞化した。ピキア(コマガテラ)パストリス培養物からの上清を収集した。限外濾過を用いて上清から低分子量成分を除去し、ブロックコポリマーポリペプチドよりも小さな粒子を除去した。次いで、濾過された培養上清を50xまで濃縮した。上清中のポリペプチドを沈殿させ、ウエスタンブロットによって分析した。産物を
図9中のウエスタンブロットに示す。処理された18Bの予想される分子量は82 kDaである。
図9中のウエスタンブロットにおいて観察された産物は、約120 kDaのより高いMWを示した。この矛盾の原因は不明であるが、他のシルクポリペプチドは、予想される分子量よりも高い分子量で出現することが観察された。
【0116】
18Bブロックコポリマーポリペプチドを精製し、繊維紡糸液へ処理した。精製および乾燥されたポリペプチドを紡糸溶媒に溶解することによって、繊維紡糸液を調製した。ポリペプチドを選択した溶媒中に20〜30重量%で溶解する。次いで、90体積%メタノール/10体積%水を含む凝固浴へ150ミクロン直径オリフィスを通って繊維紡糸液を押し出した。繊維を凝固から取り出し、それらの長さを1〜5倍延伸し、続いて乾燥させた。得られた繊維を
図10に示す。
【0117】
上述のように分泌され、精製され、溶解され、そして繊維にされた18Bブロックコポリマーポリペプチドについて機械的試験を行った。一般的な方法を用いて、特注の引張試験機において繊維の機械的特性を試験した。試験サンプルをゲージ長5.75mmで搭載し、1%の歪み速度で試験した。結果として生じた力を、顕微鏡検査によって測定されるような繊維直径に対して標準化した。応力対歪みの結果を
図11に示し、ここで、各応力-歪み曲線は、単一のバッチからの、単一の紡糸実験からの繊維からのリプリケート測定を示す。
【0118】
実施例6
4XリピートR配列のアセンブリおよびアッセイ
十分に発現および分泌されたSEQ ID NO: 1〜1398からの選択されたRドメインを、
図12に示されるアセンブリスキームを用いて4xリピートドメインへ連結した。実施例4に説明され
図7および8に示されるように、連結を行った。R配列のこのライゲーションからの選択された配列を表6に示す。これらのシルク構築物についての配列は、SEQ ID NO: 1411〜1468の完全長シルク構築物配列を含む。4つのリピート配列、α接合因子、および3X FLAGドメインを含む、得られた産物を、所望のシルク配列を放出するためにAscIおよびSbfIで消化し、そして、不要なダミー挿入物を放出するためにAscIおよびSbfIで消化されていた発現ベクターRM652 (SEQ ID NO: 1400)へライゲートした。大腸菌からのクローン単離後、次いで、ベクターをピキア・パストリスへ形質転換した。形質転換体を、25μg/mlノウルセオスリシンを含有するYPD寒天プレート上に平板培養し、30℃で48時間インキュベートした。各形質転換からの3つのクローンを、96-ウェルスクエアウェルブロック中の400μlのBMGYへ接種し、1000 rpmで撹拌しながら30℃で48時間インキュベートした。細胞を遠心分離によってペレット化し、ウエスタンブロットによるブロックコポリマーポリペプチド含有量の分析のために上清を回収した(
図13)。4x同一リピート配列で形質転換された28個の構築物のうち、大部分(18/28)が、ウエスタンブロット上に実質的なシグナルを有する少なくとも1つのクローンを有し、1つのみがシグナルを全く示さなかった。各々2つの別個のリピート配列の2つのリピートから構成された2つの構築物のうち、一方は、強いウエスタンブロットシグナルを示したが、他方は適度なウエスタンシグナルを示した。これは、より小さな十分に発現されるポリヌクレオチドからより大きなブロックコポリマー発現性ポリヌクレオチドをアセンブルすることが、一般に、機能的に発現されるブロックコポリマーポリペプチドをもたらすことを確認する。縞入り(streakiness)、複数のバンド、およびクローン間バリエーションがウエスタン上において明らかである。これらのバリエーションの具体的な原因は特定されていないが、それらは、ポリペプチド分解、翻訳後修飾(例えば、グリコシル化)、およびゲノム組み込み後のクローン変異を含む、典型的に観察される現象と概ね一致している。修飾および分解されたポリペプチド産物は、意図される使用に応じて、繊維の有用性に悪影響を与えることなく、繊維へ組み入れられ得る。
【0119】
(表6)α接合因子、4Xリピートドメイン、および3X FLAGドメインを有する完全長ブロックコポリマーシルク構築物
【0120】
実施例7
バチルス・サブチリスからの18Bの発現
大腸菌/B.サブチリスシャトルおよび発現プラスミドを先ず構築する。18Bをコードするポリヌクレオチドを、Gibson反応を用いて、プラスミドpBE-S (Takara Bio Inc.)へトランスファーする。PCR反応においてプライマー
を用いて、プラスミドpBE-S (SEQ ID NO: 1512)を増幅する。反応混合物は、1μlの10μM BES-F、1μlの10μM BES-R、0.5μgのpBE-S DNA(1μl体積)、22μlの脱イオン化H2O、および25μlのPhusion High-Fidelity PCR Master Mix (NEBカタログM0531S)からなる。混合物を以下のプログラムに従ってサーモサイクルする。
1)95℃で5分間変性させる
2)95℃で30秒間変性させる
3)55℃で30秒間アニール処理する
4)72℃で6分間伸長させる
5)29回の付加的なサイクルについて工程2〜4を繰り返す
6)72℃で5分間最終伸長を行う
【0121】
製造業者の説明書に従ってZymoclean Gel DNA Recovery Kit (Zymo Research)を用いて、産物をゲル電気泳動へ供し、およそ6000 bpの産物を単離し、次いで抽出する。18Bをコードするポリヌクレオチドを、制限酵素BtgZIを用いてKAアセンブリベクター中の18Bの消化によって単離し、続いて、ゲル電気泳動、断片単離、およびゲル抽出を行う。製造業者の説明書に従ってGibson Assembly Master Mix (New England Biolabs)を用いて、pBE-Sおよび18B断片を一緒に連結し、得られたプラスミドを、その後のクローン単離、DNA増幅、およびDNA精製についての標準技術を用いて大腸菌へ形質転換した。得られたプラスミド、pBE-S-18B (SEQ ID NO: 1513)を、次いで、製造業者の説明書に従って様々なシグナルペプチドの挿入によって多様化する(「SP DNA 混合物」)。異なる分泌シグナルペプチドを含有するpBE-S-18Bプラスミドの混合物を、次いで、製造業者の説明書に従ってB.サブチリス株RIK1285へ形質転換する。96個の得られたコロニーをTY培地(10 g/Lトリプトン、5 g/L酵母抽出物、5 g/L NaCl)中で48時間インキュベートし、この時点で、細胞をペレット化し、18Bポリペプチドの発現について上清をウエスタンブロットによって分析する。
【0122】
実施例8
クラミドモナス・レインハルドチ(Chlamydomonas reinhardtii)からの18Bの発現
切除可能なC.レインハルドチ発現カセットpChlamy (SEQ ID NO: 1514)を有する大腸菌ベクターを、商業的なDNA合成および標準技術を用いて先ず構築する。カセットは、Rasala, B.A., Robust expression and secretion of Xylanase1 in Chlamydomonas reinhardtii by fusion to a selection gene and processing with the FMDV 2A peptide, PLoS One, 7:8 (2012)に詳細に記載されている。18B、3xFLAGタグ、および終止コドンをコードするポリペプチドを、C.レインハルドチのコドン選択(例えば、http://www.kazusa.or.jp/codon/cgi-bin/showcodon.cgi?species=3055で入手可能)を用いて逆翻訳し、商業的な合成を用いて合成する。合成の過程で、隣接するBbsI部位を含め、18B-3xFLAGポリヌクレオチドの放出を可能にする。5'-ATGTTTTAA-3'を除くプラスミド配列全体を含みかつさらに各末端に18B-3xFLAGコード配列に対する40 bpの相同性を含む線形断片を生じるように設計されたプライマーを用いたpChlamyプラスミドのPCR増幅から得られるポリヌクレオチドを、Gibson反応を用いてBbsIでの消化によって遊離した18B-3xFLAGポリヌクレオチドと連結し、クローン選択、DNA増幅、およびプラスミド単離のために大腸菌へ形質転換する。得られたプラスミドをBsaIで消化し、18B発現カセットを放出させ、これをゲル精製によって単離する。消化された断片を株cc3395へエレクトロポレートし、これを次いで15μg/mlゼオシンで選択する。いくつかのクローンを液体培養で増殖させ、細胞を遠心分離によってペレット化し、上清をタンパク質発現についてウエスタンブロットによって分析する。
【0123】
実施例9
付加的なシルクおよびシルク様配列
「スピドロイン」「カイコガ属(bombyx)」および「ゴケグモ属(latrodectus)」を除外しながら、用語「シルク」についてサーチすることによって、付加的なシルクおよびシルク様配列ならびに部分配列をNCBIの配列データベースから得た。得られたヌクレオチド配列のサブセットをアミノ酸配列へ翻訳し、次いで精選し、繰り返される配列を除去した。短い配列、一般に200〜500アミノ酸長未満、を除去した。さらに、構造エレメントを形成することが公知のポリペプチドを選択するための一次配列を、公共データベースから得た。実施例1に記載された配列に加えて、そのように得られたアミノ酸配列を使用し、相同性によって付加的なシルクおよびシルク様配列をサーチした。得られたシルクおよびシルク様配列を精選し、次いで反復および非反復領域へ区分化した。
【0124】
反復ポリペプチド配列(リピート(R)配列)を各シルク配列から選択し、これらは、SEQ ID NO: 2157〜2690を含む(SEQ ID NO: 2157〜2334はヌクレオチド配列であり、SEQ ID NO: 2335〜2512はクローニングのためのフランキング配列を有するヌクレオチド配列であり、SEQ ID NO: 2513〜2690はアミノ酸配列である)。配列がF、Y、W、C、H、N、M、またはDアミノ酸で終結しないようにするために、例えば、C末端へセリンを付加することによって、R配列の一部を変更した。これは上述のベクターシステムへの組み込みを可能にする。不完全なブロックはまた、別のブロックからの相同配列からのセグメントの組み込みによって変更されていてもよい。
【0125】
非反復N末端ドメイン配列(N配列)およびC末端ドメイン配列(C配列)もいくつかのシルクおよびシルク様配列から選択した(SEQ ID NO: 2157〜2690)。リーディングシグナル配列の除去によって、既に存在しない場合は、N末端グリシン残基の付加によって、N末端ドメイン配列を変更した。ある場合には、Nおよび/またはCドメインを、さらなるプロセッシングの前にR配列から分離しなかった。R、N、およびCアミノ酸配列を、実施例2に記載されたようにヌクレオチド配列へ逆翻訳した。得られたヌクレオチド配列に、クローニングを可能にするために合成の過程で、以下の配列に隣接させた:
ここで、「シルク」は上記の教示に従って選択されたポリヌクレオチド配列である。
【0126】
得られた線形DNAをBbsIで消化し、ダミー挿入物を放出するためにBsmBIで消化したベクターRM747 (SEQ ID NO: 2696)へライゲートした。ライゲートされた材料を、標準方法を用いてクローン単離、DNA増幅、および配列検証のために大腸菌へ形質転換した。得られたプラスミドをBsaIおよびBbsIで消化し、シルクまたはシルク様ポリペプチドをコードする断片を、ゲル電気泳動、断片切除、およびゲル抽出によって単離した。BsmBIで消化し、ウシ腸アルカリホスファターゼで処理した発現ベクターRM1007 (SEQ ID NO: 2707)へ、断片を続いてライゲートした。ライゲートされた材料を、標準方法を用いてクローン単離、DNA増幅、および配列検証のために大腸菌へ形質転換した。
【0127】
R、N、および/またはC配列を含有する発現ベクターを、PEG法(Cregg, J.M. et al., DNA-mediated transformation, Methods Mol. Biol., 389, pg. 27-42 (2007))を用いてピキア(コマガテラ)パストリス(実施例3に記載の株RMs71)へ形質転換した。発現ベクターは、ターゲティング領域およびプロモーター(pGAP)、ドミナント耐性マーカー(nat−ノウルセオスリシンに対する耐性を付与する)、分泌シグナル(α接合因子リーダーおよびプロ配列)、C末端3xFLAGエピトープ、ならびにターミネーター(pAOX1 pAシグナル)からなった。
【0128】
形質転換体を、25μg/mlノウルセオスリシンを含有する酵母エキスペプトンデキストロース培地(Yeast Extract Peptone Dextrose Medium)(YPD)寒天プレート上に平板培養し、30℃で48時間インキュベートした。各形質転換からの2つのクローンを、96-ウェルスクエアウェルブロック中の400μlの緩衝グリセロール複合培地(Buffered Glycerol-complex Medium)(BMGY)へ接種し、1000 rpmで撹拌しながら30℃で48時間インキュベートした。細胞を遠心分離によってペレット化し、3xFLAGエピトープのウエスタンブロット分析によるブロックコポリマーポリペプチド含有量の分析のために上清を回収した。
【0129】
成功したポリペプチド発現および分泌をウエスタンブロットによって判断した。各ウエスタンレーンを、1:バンド無し、2:適度なバンド、または3:強いバンドとしてスコアリングした。各クローンについての2つのスコアのうちより高いものを記録した。代表的なウエスタンブロットデータを
図14に示す。試験した全てのR、N、およびC配列の完全なリストをウエスタンブロット結果と共に表7に示す。多様な種および多様なポリペプチド構造を包含する、多数の種からのシルクおよびシルク様ブロックコポリマーポリペプチドが、成功裏に発現された。
【0130】
本発明の多数の態様を説明した。それにもかかわらず、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な修飾が行われ得ることが理解されるだろう。
【0131】
(表7)付加的なシルクポリペプチド配列
【0132】
実施例10
アルギオペ・ブルエンニチMaSp2ポリペプチドの円順列変異体
実施例5において特定されたアルギオペ・ブルエンニチMaSp2由来の6つのリピートブロック(ブロックコポリマー)を、およそ90度円順列にし(6つのブロックの末端から最初へ約1.5ブロックを移動させることによる)、次いで、各々、約3つのブロックからなる2つのR配列、RM2398 (SEQ ID NO: 2708)およびRM2399 (SEQ ID NO: 2709)へ分割した。これらの3ブロック配列を続いて使用して、オリジナルの6ブロック配列から約90および約270度回転された6ブロック配列を作製し、既存の3ブロック配列(RM409およびRM410)を使用して、約180度回転された6ブロック配列を作製した。次いで、各6ブロック配列を18ブロック配列へアセンブルした。アセンブリプロセスおよび回転された配列を
図15に示す。
【0133】
RM2398およびRM2399を作製するために、いずれかのプライマー
を用いるPCRによって、プラスミドRM439 (SEQ ID NO: 467)を増幅した。各反応物は、12.5μL 2x KOD Extreme Buffer、0.25μl KOD Extreme Hot Start Polymerase、0.5μl 10μM Fwdオリゴ、0.5μl 10μM Revオリゴ、5 ngテンプレートDNA (RM439)、0.5μlの10 mM dNTP、および最終体積25μlまで添加されたddH2Oからなった。次いで、各反応物を以下のプログラムに従ってサーモサイクルした:
1.94℃で5分間変性させる
2.94℃で30秒間変性させる
3.55℃で30秒間アニール処理する
4.72℃で60秒間伸長させる
5.29回の付加的なサイクルについて工程2〜4を繰り返す
6.72℃で5分間最終伸長
【0134】
得られた線形DNAをBsaIで消化し、BsmBIで消化したアセンブリベクターRM2086 (SEQ ID NO: 2693)およびRM2089 (SEQ ID NO: 2695)へライゲートした。ライゲートされた材料を、標準方法を用いてクローン単離、DNA増幅、および配列検証のために大腸菌へ形質転換した。実施例5に記載された2abアセンブリプロセス(BtgZI切断部位をシルク配列からさらに遠くへシフトするためのアセンブリベクターに対する軽微な修正を伴う)を用いて、3ブロック断片を2つの異なる6ブロック断片へアセンブルし、一つは、RM2398の後に(proceeding)RM2399 (RM2452 - SEQ ID NO: 2710を製造)を有し、一つは、RM2399の後にRM2398 (RM2454 - SEQ ID NO: 2712を製造)を有した。加えて、RM409 (SEQ ID NO 463)およびRM410 (SEQ ID NO 464)を、BbsIおよびBsaIでアセンブリベクターRM396から消化し、BbsIおよびBsaIで消化しウシ腸アルカリホスファターゼで処理したベクターRM2105 (SEQ ID NO: 2691)へライゲートした。ライゲートされた材料を、標準方法を用いてクローン単離、DNA増幅、および配列検証のために大腸菌へ形質転換した。得られたプラスミドを続いてAscIおよびSbfIで消化し、シルクをコードする断片を、ゲル電気泳動、断片切除、およびゲル抽出によって単離した。断片を、AscIおよびSbfIで消化したアセンブリベクターRM2086およびRM2089へ続いてライゲートした。ライゲートされた材料を、標準方法を用いてクローン単離、DNA増幅、および配列検証のために大腸菌へ形質転換した。2abアセンブリを用いて、RM410の後にRM409からなる6-ブロック断片を作製した(RM2456 - SEQ ID NO: 2711を製造)。RM2452、RM2454、およびRM2456を、AscIおよびSbfIでアセンブリベクターRM2081(SEQ ID NO: 2692)から消化し、AscIおよびSbfIで消化されていたアセンブリベクターRM2088およびRM2089へライゲートした。ライゲートされた材料を、標準方法を用いてクローン単離、DNA増幅、および配列検証のために大腸菌へ形質転換した。2abアセンブリを用いて、18ブロック配列を3つの6ブロック断片の各々から作製し、配列RM2462 (SEQ ID NO: 2713)、RM2464 (SEQ ID NO: 2715)、およびRM2466 (SEQ ID NO: 2714)が得られた。次いで、6ブロック配列および18ブロック配列の各々を、BsaIおよびBbsIを用いてアセンブリベクターから消化し、シルクをコードする断片をゲル電気泳動、断片切除、およびゲル抽出によって単離した。BsmBIで消化しウシ腸アルカリホスファターゼで処理した発現ベクターRM1007 (SEQ ID NO: 2707)へ、断片を続いてライゲートした。ライゲートされた材料を、標準方法を用いてクローン単離、DNA増幅、および配列検証のために大腸菌へ形質転換した。。得られたプラスミドをBsaIで線形化し、PEG法(Cregg, J.M. et al., DNA-mediated transformation, Methods Mol. Biol., 389, pg. 27-42 (2007))を用いてピキア(コマガテラ)パストリス(実施例3に記載の株RMs71)へ形質転換するために使用した。形質転換体を、25μg/mlノウルセオスリシンを含有する酵母エキスペプトンデキストロース培地(YPD)寒天プレート上に平板培養し、30℃で48時間インキュベートした。各形質転換からの2つのクローンを、96-ウェルスクエアウェルブロック中の400μlの緩衝グリセロール複合培地(BMGY)へ接種し、1000 rpmで撹拌しながら30℃で48時間インキュベートした。細胞を遠心分離によってペレット化し、3xFLAGエピトープのウエスタンブロット分析によるシルクポリペプチド含有量の分析のために上清を回収した。各ポリペプチドの代表的なクローンについてのウエスタンブロットデータを
図16に示す。円順列ポリペプチドの各々の発現および分泌は、その未回転相当物と匹敵するようである。これは、開始位置の任意の番号が、それらのブロックから構成されるポリペプチドの発現または分泌に対して影響を与えることなく、繰り返されるシルクもしくはシルク様ポリペプチド中のブロックを特定するために選択され得ることを示唆している。
【0135】
実施例11
コピー数およびプロモーター強度の制御によるアルギオペ・ブルエンニチMaSp2ポリヌクレオチドの発現の変化
外因的に導入されたポリヌクレオチドの転写の程度は、産生されるポリペプチドの量に影響を与えることが公知である(例えば、Liu, H., et al., Direct evaluation of the effect of gene dosage on secretion of protein from yeast Pichia pastoris by expressing EGFP, J. Microbiol. Biotechnol., 24:2, pg. 144-151 (2014); およびHohenblum, H., et al., Effects of gene dosage, promoters, and substrates on unfolded protein stress of recombinant Pichia pastoris, Biotechnol. Bioeng., 85:4, pg. 367-375 (2004)を参照のこと)。ピキア(コマガテラ)パストリスにおいて、転写の程度は、宿主ゲノムへ組み込まれるポリヌクレオチドのコピー数を増加させることによって、または転写を駆動するための適切なプロモーターを選択することによって、一般的に制御される(例えば、Hartner, F.S., et al., Promoter library designed for fine-tuned gene expression in Pichia pastoris, Nucleic Acids Res., 36:12 (2008); Zhang, A.L., et al., Recent advances on the GAP promoter derived expression system of Pichia pastoris, Mol. Biol. Rep., 36:6, pg. 1611-1619 (2009); Ruth, C., et al., Variable production windows for porcine trypsinogen employing synthetic inducible promoter variants in Pichia pastoris, Syst. Synth. Biol., 4:3, pg. 181-191 (2010); Stadlmayr, G., et al., Identification and characterisation of novel Pichia pastoris promoters for heterologous protein production, J. Biotechnol., 150:4, pg. 519-529 (2010)を参照のこと)。異種タンパク質発現のために用いられるプロモーターのセットへ比較的最近追加されたのは、pGCW14(Liang, S., Identification and characterization of P GCW14: a novel, strong constitutive promoter of Pichia pastoris, Biotechnol. Lett. 35:11, pg. 1865-1871 (2013))であり、これは、pGAPよりも5〜10倍強いことが報告されている。シルクおよびシルク様ポリペプチドの発現および分泌がコピー数によっても影響され得ることを確認するために、18B(実施例5に記載される)の発現を駆動するpGAPを1、3、または4コピー含有する株、および18Bの発現を駆動するpGCW14を1、2、3、または4コピー含有する株を作製し、試験した。株を表8に記載する。
【0136】
(表8)複数のポリヌクレオチド配列または異なるプロモーターを有する株
【0137】
α接合因子 + 18B + 3xFLAGタグをコードするポリヌクレオチド配列を、制限酵素AscIおよびSbfIを用いて実施例5に記載されるプラスミド(RM439, SEQ ID NO: 467がクローニングされている、RM468, SEQ ID NO: 1401)から消化した。α接合因子 + 18B + 3xFLAGタグをコードする断片を、ゲル電気泳動、断片切除、およびゲル抽出によって単離した。得られた線形DNAを、AscIおよびSbfIで消化した発現ベクターRM630 (SEQ ID NO: 2697)、RM631 (SEQ ID NO: 2698)、RM632 (SEQ ID NO: 2699)、RM633 (SEQ ID NO: 2700)、RM812 (SEQ ID N: 2701)、RM837 (SEQ ID NO: 2702)、RM814 (SEQ ID N: 2703)、およびRM815 (SEQ ID NO: 2704)へ、ライゲートした。発現ベクターの重要な特質を表9に要約し、配列はSEQ ID NO: 2691〜2707を含む。ライゲートされた材料を、標準方法を用いてクローン単離、DNA増幅、および配列検証のために大腸菌へ形質転換した。
【0138】
(表9)さらなるベクター
【0139】
発現ベクターRM630中の18Bをコードするポリヌクレオチドを、BsaIで線形化し、PEG法(Cregg, J.M. et al., DNA-mediated transformation, Methods Mol. Biol., 389, pg. 27-42 (2007))を用いてピキア(コマガテラ)パストリス(株GS115 - NRRL Y15851)へ形質転換した。形質転換体を最小デキストロース(MD)寒天プレート(アミノ酸添加無し)上に平板培養し、30℃で48時間インキュベートした。これにより株RMs126, 1x pGAP 18Bを作製した。
【0140】
RMs126を、続いて、エレクトロポレーション法を用いて、発現ベクターRM632およびRM633(BsaIで線形化した)中の18Bをコードするポリヌクレオチドで同時形質転換した(Wu., S., and Letchworth, G.J., High efficiency transformation by electroporation of Pichia pastoris pretreated with lithium acetate and dithiothreitol, Biotechniques, 36:1, pg. 152-154 (2004))。形質転換体を、25μg/mlノウルセオスリシンおよび100μg/mlハイグロマイシンBを含有する酵母エキスペプトンデキストロース培地(YPD)寒天プレート上に平板培養し、30℃で48時間インキュベートした。これにより株RMs127, 3x pGAP 18Bを作製した。
【0141】
RMs127を、続いて、PEG法を用いて、発現ベクターRM631(BsaIで線形化した)中の18Bをコードするポリヌクレオチドで形質転換した。形質転換体を、300μg/ml G418を含有する酵母エキスペプトンデキストロース培地(YPD)寒天プレート上に平板培養し、30℃で48時間インキュベートした。これにより株RMs134, 4x pGAP 18Bを作製した。
【0142】
株RMs133、RMs138、RMs143、およびRMs152(それぞれ、1x、2x、3x、および4x p754 18B)を作製するために、株GS115(NRRL Y15851)を、PEG法を用いて、発現ベクターRM812、RM814、RM815、およびRM837(BsaIで線形化した後)中の18Bをコードするポリヌクレオチドで連続的に形質転換した。
【0143】
各株のクローンを、96-ウェルスクエアウェルブロック中の400μlの緩衝グリセロール複合培地(BMGY)へ接種し、1000 rpmで撹拌しながら30℃で48時間インキュベートした。細胞を遠心分離によってペレット化し、3xFLAGエピトープのウエスタンブロット分析によるブロックコポリマーポリペプチド含有量の分析のために上清を回収した。各ポリペプチドの代表的なクローンについてのウエスタンブロットデータを
図16に示す。バンド強度の増加は、より高い転写が、付加的なブロックコポリマーポリペプチドの発現および分泌をもたらしたことを示唆しており、これは、転写を増加させる戦略が、シルクおよびシルク様ポリペプチドリピート単位に基づくブロックコポリマーに対して機能することを確認する。
【0144】
実施例12
Rドメインのホモポリマーとの単一のRドメインの発現および分泌の比較
十分に発現および分泌されたSEQ ID NO: 1〜1398からの付加的な選択されたRドメインを、2abアセンブリ(実施例5に記載される)を用いて4〜6xリピートドメインへ連結した。加えて、2abアセンブリを用いて、12B配列を18B配列(実施例5より)と連結し、30B配列が得られた。各シルク配列が、5'末端でα接合ドメインおよび3'末端で3xFLAGドメインに隣接し、pGAPプロモーターによって駆動されるように、得られた産物を発現ベクターへトランスファーした。作製された配列を表10に記載し、配列はSEQ ID NO: 2734〜2748を含む。
【0145】
(表10)α接合因子、複数のリピートドメイン、および3X FLAGドメインを有するさらなる完全長ブロックコポリマー構築物
【0146】
次いで、ブロックコポリマー発現ベクターを、PEG法(Cregg, J.M. et al., DNA-mediated transformation, Methods Mol. Biol., 389, pg. 27-42 (2007))を用い、てピキア(コマガテラ)パストリス(実施例3に記載の株RMs71)へ形質転換した。形質転換体を、25μg/mlノウルセオスリシンを含有するYPD寒天プレート上に平板培養し、30℃で48時間インキュベートした。各形質転換からの3つのクローンを、96-ウェルスクエアウェルブロック中の400μlのBMGYへ取り、1000 rpmで撹拌しながら30℃で48時間インキュベートした。細胞を遠心分離によってペレット化し、ウエスタンブロットによるシルクポリペプチド含有量の分析のために上清を回収した。各ブロックコポリマー構築物についての代表的なクローン、ならびに実施例6からの1x Rドメイン相当物および4x Rドメイン構築物を
図16に示す。実施例6において観察されたように、縞入りおよび複数のバンドがウエスタン上において明らかである。これらのバリエーションの具体的な原因は特定されていないが、それらは、ポリペプチド分解および翻訳後修飾(例えばグリコシル化)を含む、典型的に観察される現象と概して一致している。さらに、4〜6x Rドメインポリペプチドのバンド強度は、対応の1x Rドメイン構築物よりも弱いようである。これは、アルギオペ・ブルエンニチMaSp2ポリペプチドの6B、12B、18B、および30Bシリーズにおいても明らかである。これは、シルクリピート配列を含むより長いブロックコポリマーは、同じまたは異なるリピート配列を含むより短いブロックコポリマー配列よりも一般にあまり発現および分泌されないことを示唆している。
【0147】
実施例13
シルクを発現および分泌する株の生産性の測定
表11は、実施例10、実施例11、および実施例12に記載されたポリペプチドを発現する株の体積的生産性および比生産性を列挙する。
【0148】
(表11)シルクポリペプチドを産生する株の生産性
【0149】
生産性を測定するために、各株の3つのクローンを、96-ウェルスクエアウェルブロック中の400μlの緩衝グリセロール複合培地(BMGY)へ接種し、1000 rpmで撹拌しながら30℃で48時間インキュベートした。48時間インキュベーション後、各培養物4μlを用いて、96-ウェルスクエアウェルブロック中の新鮮な400μlのBMGYに接種し、これを次いで1000 rpmで撹拌しながら30℃で24時間インキュベートした。次いで、細胞を遠心分離によってペレット化し、上清を除去し、細胞を400μlの新鮮なBMGY中に再懸濁させた。細胞を遠心分離によって再びペレット化し、上清を除去し、細胞を800μlの新鮮なBMGY中に再懸濁させた。その800μlから、400μlを96-ウェルスクエアウェルブロックへ等分し、これを次いで1000 rpmで撹拌しながら30℃で2時間インキュベートした。2時間後、培養物のOD600を記録し、細胞を遠心分離によってペレット化し、上清をさらなる分析のために収集した。各上清中のブロックコポリマーポリペプチドの濃度を、3xFLAGエピトープを定量化する直接的酵素免疫測定法(ELISA)分析によって決定した。
【0150】
各株の相対的な生産性は、ウエスタンブロットデータに基づいて行われた定性的観察を確認する。円順列ポリペプチドは、未回転シルクと同様のレベルで発現し、より強いプロモーターまたはより多いコピーは、より高いブロックコポリマー発現および分泌をもたらし、シルクリピート配列を含むより長いブロックコポリマーポリペプチドは、同じまたは異なるリピート配列を含むより短いブロックコポリマーよりも一般にあまり発現しない。興味深いことには、産生された12B(55.9 kDa)のグラムは、産生された6B(29.5 kDa)のグラムを超え、このことは、シルクリピート配列を含むより大きなブロックコポリマーの発現の低下に至る要因は、18B(82.2 kDa)のサイズにより近いブロックコポリマーの発現まで、有力になり得ないことを示唆している。重要なことには、ブロックコポリマーポリペプチドの大部分は、ポリペプチド転写レベルのいかなる最適化前でも、比較的高い比生産性を有する(> 0.1 mgシルク/g乾燥細胞重量(Dry Cell Weight)(DCW)/時間。いくつかの態様において、生産性は2 mgシルク/g DCW/時間を超える。さらなる態様において、生産性は5 mgシルク/g DCW/時間を超える)。さらなる転写は、18Bの生産性を、およそ5倍、20(ほぼ21)mgポリペプチド/g DCW/時間へと改善した。
【0151】
実施例14
シルク繊維の機械的特性の測定
実施例5において産生されたブロックコポリマーポリペプチドを、繊維へ紡糸し、様々な機械的特性について試験した。先ず、標準技術を用いて、ギ酸ベースの紡糸溶媒中に精製および乾燥されたブロックコポリマーポリペプチドを溶解することによって、繊維紡糸液を調製した。スピンドープを、時折混合しながら3日間回転シェーカー上において35℃でインキュベートした。3日後、スピンドープを16000 rcfで60分間遠心分離し、紡糸前に少なくとも2時間室温へ平衡化させた。
【0152】
スピンドープを、標準のアルコールベースの凝固浴へ50〜200μm直径オリフィスを通して押し出した。繊維を張力下で凝固浴から引き上げ、それらの長さを1〜5倍延伸し、続いて乾燥させた。少なくとも5つの繊維を少なくとも10メートルの紡糸繊維から無作為に選択した。リニアアクチュエータおよび較正ロードセル(calibrated load cell)を含む機器を用いて、これらの繊維を引張機械的特性について試験した。繊維を1%歪みで破損まで引っ張った。画像処理ソフトウェアを用いて倍率20xにて光学顕微鏡検査で繊維直径を測定した。平均最大応力は54〜310 MPaの範囲であった。平均降伏応力は24〜172 MPaの範囲であった。平均最大歪みは2〜200%の範囲であった。平均初期モジュラスは1617〜5820 MPaの範囲であった。延伸比の効果を表12および
図17に示す。さらに、3つの繊維の平均靭性は、0.5 MJ m
-3 (標準偏差0.2)、20 MJ m
-3 (標準偏差0.9)、および59.2 MJ m
-3 (標準偏差8.9)と測定された。
【0153】
(表12)延伸比の効果
【0154】
少なくとも10 mの紡糸繊維から無作為に選択された少なくとも4〜8個の繊維の平均値として繊維直径を決定した。各繊維について、6回の測定を0.57 cmのスパンにわたって行った。直径は4.48〜12.7μmの範囲であった。繊維直径は同じサンプル内で一致していた。サンプルは様々な平均直径にわった:10.3μm (標準偏差0.4μm)、13.47μm (標準偏差0.36μm)、12.05μm (標準偏差0.67)、14.69μm (標準偏差0.76μm)、および9.85μm (標準偏差0.38μm)。
【0155】
最適化された回収および分離プロトコルから作製されたブロックコポリマー材料から紡糸された特に有効なある繊維は、最大最終引張強度310 MPa、平均直径4.9μm (標準偏差0.8)、および最大歪み20%を有した。繊維引張試験結果を
図18に示す。
【0156】
繊維を室温で一晩乾燥させた。4 cm
-1分解能で400 cm
-1から4000 cm
-1までDiamond ATRモジュールを用いてFTIRスペクトルを収集した(
図19)。アミドI領域(1600 cm
-1〜1700 cm
-1)をベースライン化し、オリジナルの曲線の二次導関数からのピーク位置によって決定された5〜6個の位置でガウス分布と曲線適合させた。アミドI領域の総面積によって割られた約1620 cm
-1および約1690 cm
-1でのガウス分布下面積として、βシート含有量を決定した。アニール処理および未処理繊維を試験した。アニーリングのために、繊維を湿潤真空チャンバ内にて1.5 Torrで少なくとも6時間インキュベートした。未処理繊維は31% βシート含有量を含有することが分かり、アニール処理繊維は50% βシート含有量を含有することが分かった。
【0157】
液体窒素を用いる凍結割断によって繊維断面を調べた。サンプルを白金/パラジウムでスパッタコーティングし、5 kV加速電圧でHitachi TM-1000を用いて画像化した。
図20は、繊維が滑らかな表面、円形断面を有し、中身が詰まっておりボイドを含まないことを示している。いくつかの態様において
【0158】
実施例15
最適な繊維の製造
MaSp2様シルクのRドメインを表13aおよび13bに列挙されるものから選択し、
図12に示されるアセンブリスキームを用いて、Rドメインを、5'末端でα接合因子および3'末端で3X FLAGに隣接した4xリピートドメインへ連結する。実施例4に記載され
図7および
図8に示されるように、連結を行う。得られたポリヌクレオチド配列および対応のポリペプチド配列を表13aおよび13bに列挙する。
【0159】
表13aおよび13b中の配列について:(1)プロリン含有量は11.35〜15.74%の範囲である(表13aおよび13bのパーセンテージは、対応のポリペプチド配列中のアミノ酸残基の総数に対する記載の含有量のアミノ酸残基、この場合はプロリンの数を指す)。同様のRドメインのプロリン含有量はまた、13〜15%、11〜16%、9〜20%、または3〜24%の範囲であり得る;(2)アラニン含有量は16.09〜30.51%の範囲である。同様のRドメインのアラニン含有量はまた、15〜20%、16〜31%、12〜40%、または8〜49%の範囲であり得る;(3)グリシン含有量は29.66〜42.15%の範囲である。同様のRドメインのグリシン含有量はまた、38〜43%、29〜43%、25〜50%、または21〜57%の範囲であり得る;(4)グリシンおよびアラニン含有量は54.17〜68.59%の範囲である。同様のRドメインのグリシンおよびアラニン含有量はまた、54〜69%、48〜75%、または42〜81%の範囲であり得る;(5)βターン含有量は18.22〜32.16%の範囲である。βターン含有量は、Geourjon, C., and Deleage, G., SOPMA: significant improvements in protein secondary structure prediction by consensus prediction from multiple alignments, Comput. Appl. Biosci., 11:6, pg. 681-684 (1995)からのSOPMA法を用いて計算される。SOPMA法は以下のパラメータを用いて適用される:ウィンドウ幅−10;類似性閾値−10;状態の数−4。同様のRドメインのβターン含有量はまた、25〜30%、18〜33%、15〜37%、または12〜41%の範囲であり得る;(6)ポリアラニン含有量は12.64〜28.85%の範囲である。少なくとも4つの連続するアラニン残基を含む場合、モチーフはポリアラニンモチーフと見なされる。同様のRドメインのポリアラニン含有量はまた、12〜29%、9〜35%、または6〜41%の範囲であり得る;(7)GPGモチーフ含有量は22.95〜46.67%の範囲である。同様のRドメインのGPGモチーフ含有量はまた、30〜45%、22〜47%、18〜55%、または14〜63%の範囲であり得る;(8)GPGおよびポリアラニン含有量は42.21〜73.33%の範囲である。同様のRドメインのGPGおよびポリアラニン含有量はまた、25〜50%、20〜60%、または15〜70%の範囲であり得る。他のシルクタイプは、異なる範囲のアミノ酸含有量および他の特性を示す。
図21は、本明細書に開示されるシルクポリペプチド配列の様々なシルクタイプについてのグリシン、アラニン、およびプロリン含有量の範囲を示す。
図21は、ポリペプチド配列中の残基の総数に対するグリシン、アラニン、またはプロリンアミノ酸残基のパーセンテージを示す。
【0160】
4つのリピート配列、α接合因子、および3X FLAGドメインを含む連結の得られた産物を、所望のシルク配列を放出するためにAscIおよびSbfIで消化し、そして、AscIおよびSbfIで消化した発現ベクターRM812 (SEQ ID N: 2701)、RM837 (SEQ ID NO: 2702)、RM814 (SEQ ID NO: 2703)、およびRM815 (SEQ ID NO: 2704)(発現ベクターの重要な特質が表9に要約される)へライゲートする。PEG法を用いて、得られた発現ベクター(BsaIでそれらを線形化した後)でピキア(コマガテラ)パストリス株GS115 (NRRL Y15851)を連続的に形質転換することによって、pGCW14の転写制御下でシルクポリヌクレオチドのの4コピーを含有する株を作製する。同様の擬似リピートドメインは、500〜5000、119〜1575、300〜1200、500〜1000、または900〜950アミノ酸長の範囲であり得る。ブロックコポリマー全体は、40〜400、12.2〜132、50〜200、または70〜100 kDaの範囲であり得る。
【0161】
(表13a)選択されたRドメインの特性
【0162】
(表13b)選択されたRドメインの特性
【0163】
得られた株のクローンを以下の条件に従って培養する:出発供給材料としてのグリセロール50g/Lと共に、[http://tools.invitrogen.com/content/sfs/manuals/pichiaferm_prot.pdf]に記載のものと類似した、最小基本塩培地において、培養物を増殖させる。1 VVMの空気流および2000 rpm撹拌を伴う、30Cに制御された撹拌発酵容器において、増殖を行う。水酸化アンモニウムのオンデマンド添加によってpHを3に制御する。溶存酸素の急増に基づいて必要に応じて追加のグリセロールを添加する。溶存酸素が最大値の15%に達するまで増殖を継続させ、その時点で、典型的に200〜300 ODの細胞密度で、培養物を採取する。
【0164】
発酵槽からの培養液を遠心分離によって脱細胞化する。ピキア(コマガテラ)パストリス培養物からの上清を収集する。限外濾過を用いて上清から低分子量成分を除去し、ブロックコポリマーポリペプチドよりも小さな粒子を除去する。次いで、濾過された培養上清を50xまで濃縮する。
【0165】
ギ酸ベースの紡糸溶媒中に精製および乾燥されたブロックコポリマーポリペプチドを溶解することによって、繊維紡糸液を調製する。スピンドープを、時折混合しながら3日間回転シェーカー上において35℃でインキュベートする。3日後、スピンドープを16000 rcfで60分間遠心分離し、紡糸前に少なくとも2時間室温へ平衡化させる。スピンドープを、標準のアルコールベースの凝固浴へ150μm直径オリフィスを通して押し出す。繊維を張力下で凝固浴から引き上げ、それらの長さを1〜5倍延伸し、続いてタイトハンク(tight hank)として乾燥させる。
【0166】
少なくとも5つの繊維を少なくとも10メートルの紡糸繊維から無作為に選択する。リニアアクチュエータおよび較正ロードセルを含む特注の機器を用いて、繊維を引張機械的特性について試験する。繊維をゲージ長5.75 mmで搭載し、破損まで1%歪み速度で引っ張る。繊維の最終引張強度は50〜500 MPaであると測定される。どの繊維が選択されるかに依存して、降伏応力は24〜172 MPaまたは150〜172 MPaであると測定され、最終引張強度(最大応力)は54〜310 MPaまたは150〜310 MPaであると測定され、破断歪みは2〜200%または180〜200%であると測定され、初期モジュラスは1617〜5820 MPaまたは5500〜5820 MPaであると測定され、靭性値は少なくとも0.5 MJ/m
3、少なくとも3.1 MJ/m
3、または少なくとも59.2 MJ/m
3であると測定される。
【0167】
結果として生じた力を、光学顕微鏡検査によって測定されるような繊維直径に対して標準化する。画像処理ソフトウェアを用いて倍率20xにて光学顕微鏡検査で繊維直径を測定する。少なくとも10 mの紡糸繊維から無作為に選択された少なくとも4〜8個の繊維の平均値として繊維直径を決定する。各繊維について、6回の測定を5.75 mmのスパンにわたって行う。どの繊維が選択されるかに依存して、繊維直径は、4〜100μm、4.48〜12.7μm、または4〜5μmであると測定される。
【0168】
繊維のβシート結晶含有量を試験するために、繊維を室温で一晩乾燥させる。4 cm
-1分解能で400 cm
-1から4000 cm
-1までDiamond ATRモジュールを用いてFTIRスペクトルを収集する。アミドI領域(1600 cm
-1〜1700 cm
-1)をベースライン化し、オリジナルの曲線の二次導関数からのピーク位置によって決定された5〜6個の位置でガウス分布と曲線適合させる。アミドI領域の総面積によって割られた約1620 cm
-1および約1690 cm
-1でのガウス分布下面積として、βシート含有量を決定する。βシート結晶を誘導するために、繊維を湿潤真空チャンバ内にて1.5 Torrで少なくとも6時間インキュベートする。繊維表面形態および断面(液体窒素を用いる凍結割断によって得られる)を、走査電子顕微鏡法によって分析する。サンプルを白金/パラジウムでスパッタコーティングし、5 kV加速電圧でHitachi TM-1000を用いて画像化する。
【0169】
本発明の多数の態様を説明した。それにもかかわらず、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な修飾が行われ得ることが理解されるだろう。