特許第6556134号(P6556134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6556134糸巻付きを識別する方法、及び、糸案内のための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556134
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】糸巻付きを識別する方法、及び、糸案内のための装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 63/04 20060101AFI20190729BHJP
   D02J 1/22 20060101ALI20190729BHJP
   B65H 57/26 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   B65H63/04 A
   D02J1/22 G
   B65H57/26
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-537210(P2016-537210)
(86)(22)【出願日】2014年8月13日
(65)【公表番号】特表2016-533992(P2016-533992A)
(43)【公表日】2016年11月4日
(86)【国際出願番号】EP2014067348
(87)【国際公開番号】WO2015028309
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2017年4月19日
(31)【優先権主張番号】102013014557.0
(32)【優先日】2013年8月31日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン シュトレーヴァー
【審査官】 五閑 統一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−154749(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102007062631(DE,A1)
【文献】 仏国特許出願公開第02870837(FR,A1)
【文献】 特開平07−118953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 63/00
B65H 57/00
D02J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータのモータ軸によって駆動される、供給装置の被駆動のゴデット周壁の周面での糸巻付きを識別する方法であって、
前記モータの物理的な駆動パラメータを連続的に監視し、
前記駆動パラメータの瞬時実際値を、記憶されている前記駆動パラメータの閾値と比較し、
前記ゴデット周壁を、糸を案内するために、回転可能に支承されたローラと協働させ、
前記ゴデット周壁を駆動する前記モータを、個別の閾値設定をともなう個別の監視アルゴリズムに対応する複数の駆動モードで制御し、
前記複数の駆動モードのいずれか1つにより、前記ゴデット周壁への糸かけの際の前記モータの制御を定め、
前記ゴデット周壁への糸かけに対応する監視アルゴリズムが、所定の閾値に対する上方超過又は下方超過の持続時間が臨界持続時間を超えた場合に、前記モータを遮断し、
前記駆動パラメータは前記モータの駆動トルク又は前記モータの出力である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記駆動トルクの実際値を、モータ電流から求める、
請求項記載の方法。
【請求項3】
前記ゴデット周壁に作用する制動モーメントを形成するために、前記ゴデット周壁に対して所定の間隔で定置された摩擦手段によって形成される摩擦面を、前記糸巻付きにより生じた糸巻付き部に作用させる、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記駆動パラメータの閾値の許容不能な上方超過又は下方超過が生じた場合、障害信号を形成する、及び/又は、前記モータを自動的に停止させる、
請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記複数の駆動モードのいずれか1つにより、前記ゴデット周壁の周面での糸案内の際の前記モータの制御を定める、
請求項1記載の方法。
【請求項6】
モータ(2)と、モータ軸(3)に相対回動不能に配置されたゴデット周壁(1)とを備えた、糸案内のための供給装置において、
前記モータ(2)は、ブラシレス同期機(BLDCモータ)(4)によって形成されており、
前記BLDCモータ(4)の制御電子回路(5)は、前記ゴデット周壁(1)に生じる糸巻付き(30)を識別するように構成されており、
前記ゴデット周壁(1)は、糸(29)を案内するために、回転可能に支承されたローラ(28)と協働しており、
前記制御電子回路(5)は、前記モータ(2)の駆動パラメータを監視する少なくとも1つの測定手段(16)と、前記駆動パラメータの閾値を記憶するメモリ手段(18)と、複数の監視アルゴリズムを格納するマイクロプロセッサ(19)とを有していて、前記ゴデット周壁への糸かけの際の前記モータの制御を定める駆動モードに対応する監視アルゴリズムが、所定の閾値に対する上方超過又は下方超過の持続時間が臨界持続時間を超えた場合に、前記モータを遮断し、前記駆動パラメータは前記モータの駆動トルク又は前記モータの出力である、
ことを特徴とする供給装置。
【請求項7】
前記駆動パラメータを監視する前記測定手段(16)は、モータ電流を測定する電流センサとして構成されている、
請求項記載の供給装置。
【請求項8】
前記ゴデット周壁(1)には、所定の小さい間隔を置いて、該ゴデット周壁(1)に向かい合う摩擦面(26)を有する摩擦手段(24)が設けられている、
請求項又は記載の供給装置。
【請求項9】
前記摩擦手段(24)は、前記ゴデット周壁(1)に対して共軸に延在するピン(25)によって形成されている、
請求項記載の供給装置。
【請求項10】
前記制御電子回路(5)は発光ダイオード(23)及び/又は機械制御ユニット(22)に接続されている、
請求項からまでのいずれか1項記載の供給装置。
【請求項11】
前記BLDCモータ(4)と前記ゴデット周壁(1)とが1つの構造ユニットを形成しており、
前記モータ軸(3)は軸受ケーシング(8)内に突出するように支承されており、
前記制御電子回路(5)は電気回路ケーシング(13)内に封入されており、
前記軸受ケーシング(8)と前記電気回路ケーシング(13)との間に、ステータ(11)を収容するモータ支持体(12)が保持されている
請求項から10までのいずれか1項記載の供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念記載の、被駆動のゴデット周壁の周面での糸巻付きを識別する方法、及び、請求項9の上位概念記載の、糸案内のための供給装置に関する。
【0002】
上記方法及び上記装置は、WO2007/134732から公知である。
【0003】
糸の製造及び加工の際には、案内、送りもしくは延伸のために、回転するゴデット周壁の周面に1回もしくは複数回の部分巻掛けによって糸を案内することが広く知られている。本技術分野において供給機構もしくはゴデットと称されるこうした装置により、繊維機械の内部での糸の輸送が保証される。例えば、延伸及びテクスチャリングに際しては、未加工の糸が供給ボビンとして用意され、繊維機械において加工ステーション内に相前後して複数配置されている供給装置によって案内される。加工ステーションでは糸が延伸及びテクスチャリングされた後、別のボビンへ巻取られる。このようなプロセスでは、例えばボビン交換時に弛みもしくは誤送又は糸切れが起きるおそれがある。しかも、案内チェーン内の糸張力のこうした変化によって、供給装置の被駆動のゴデット周壁に望ましくない糸巻付きが発生しうる。できるだけ短い中断時間を実現するには、こうした糸巻付きをできるだけ迅速に検出して除去しなければならない。
【0004】
公知の手法では、ゴデット周壁の周面は、糸巻付き部との機械的接触によって切り換え位置へ移行する巻付きセンサによって検出される。当該巻付きセンサは、切り換え位置で、モータの給電電圧の直接の中断を生じさせ、ゴデット周壁を停止させる。したがって、公知の方法及び公知の供給装置は、一方で糸巻付きを検出し、他方でゴデット周壁を停止させるための付加的な補助手段を要する。
【0005】
また、従来技術から、ローラでの望ましくない糸巻付きを監視する類似の方法も公知である。例えば、DE102007026631A1には、紡績機において糸巻付き部を振動させる摩擦ローラを監視する方法及び装置が記載されている。この場合、ローラの周面に、所定の距離を置いて、糸巻付きが発生したときに糸の引きずりひいては制動モーメントを発生させる制限手段が対置されている。ここでの特徴的な制動モーメントは、摩擦ローラのモータの駆動モーメントに対して反対に作用し、接続されている制御ユニットにおいて、糸巻付きの検出のために評価される。当該公知の手法においても、摩擦ローラの周面に生じる糸巻付きを検出するには、付加的な補助手段を要する。
【0006】
したがって、本発明の課題は、冒頭に言及した形式の糸巻付きを識別する方法、及び、糸案内のための供給装置を、付加的な補助手段なしに、ゴデット周壁の周面に生じた糸巻付きを識別できるように改善することである。
【0007】
この課題は、本発明にしたがって、請求項1に記載の方法及び請求項9に記載の供給装置により解決される。
【0008】
本発明の有利な実施形態は、各従属請求項の特徴及びその任意の組み合わせによって規定される。
【0009】
本発明は、繊維機械で使用される糸案内のための供給装置が、比較的小さく、したがって精細に制御可能な出力スペクトルを有するそれぞれ1つずつの個別のモータを備えるという知識を基礎としている。ここで、ゴデット周壁での糸案内は、モータの出力送出にとって重要である。つまり、糸案内の変化によってモータでの電力消費量が僅かに変化する。こうした知識から、本発明では、モータでの少なくとも1つの物理的な駆動パラメータを連続的に監視し、駆動パラメータの瞬時実際値を、記憶されている駆動パラメータの閾値と比較する。ここでの駆動パラメータの閾値は、ゴデット周壁の周面に生じる糸巻付きを表す一義的な識別指標となっている。したがって、物理的な駆動パラメータに基づく実際値と目標値との単純な比較により、被駆動のゴデット周壁の周面での糸巻付きを識別することができる。
【0010】
供給装置は、主としてモータの駆動トルクによって生じる糸張力に対し、決定的な影響を与えるので、本発明の方法の実施形態では、物理的な駆動パラメータとして、モータの駆動トルクを監視すると特に有利であることがわかっている。したがって、駆動トルクの実際値は、ゴデット周壁に作用する糸張力に直接に比例すると見なすことができる。
【0011】
駆動トルクを連続的に監視するために、駆動トルクの実際値が、少なくとも1つのモータ特性量の測定値、特にモータ電流から求められる。ここで、出力の送出における変化が直接にモータ電流に作用することが知られている。したがって、駆動トルクの実際値を求めるために、モータ電流を測定すると特に有利である。
【0012】
最小限の張力で糸がゴデット周壁の周面を案内される場合にも糸巻付きを識別できるようにするために、本発明の方法の一実施形態によれば、有利には、モータの出力送出が制御される。この制御は、ゴデット周壁に対して所定の間隔を置いた定置の摩擦手段によって形成される摩擦面を糸巻付きに作用させて、ゴデット周壁に作用する制動モーメントを形成することにより行われる。このようにすれば、駆動トルクを変化させることができるので、さらに好都合である。
【0013】
きわめて短い中断時間を実現するために、本発明の方法の変形形態において、好ましくは、駆動パラメータの閾値の許容不能な上方超過又は下方超過が生じた場合に障害信号を形成し、モータを自動的に停止させる。このようにすれば、ゴデット周壁の直接の停止がトリガされ、また、障害信号によってオペレータが相応の情報を取得できる。
【0014】
繊維プロセスにおいてこうした供給装置は種々の動作状況に応答しなければならないので、本発明の方法の実施形態によれば、ゴデット周壁を駆動するモータを、それぞれ個別の閾値設定をともなう個別の監視アルゴリズムに対応する複数の駆動モードで制御すると特に有利である。この場合、要求に応じて、及び、供給装置の動作状態に応じて、できるだけ適応性の高い操作シーケンスをトリガできるようにするために、種々の駆動パラメータもしくは種々の閾値もしくは種々の評価方式が利用される。
【0015】
したがって、複数の駆動モードのうち1つの駆動モードは、特に、ゴデット周壁への糸かけの際のモータの制御のために定められている。当該状態は、プロセス中断のたびに、その後のプロセススタートに際して発生する。この場合、通常、糸はオペレータによって手動で供給装置にかけられるので、モータの駆動トルクの意図しない変化が生じることがある。この点で、対応する監視アルゴリズムが、上方超過の持続時間を定める時定数を閾値に割り当てるように構成するとよい。このようにすれば、障害信号の形成又はモータの停止を行うことなく、短時間の閾値の上方超過もしくは下方超過を消去できる。
【0016】
したがって、第2の駆動モードは、ゴデット周壁の周面で糸を案内する際のモータの制御に用いられる。ここで、対応する監視アルゴリズムは、閾値の上方超過もしくは下方超過の全てを検出する。
【0017】
このように、本発明の方法は、ゴデット周壁の駆動部に組み込まれることに特に適している。
【0018】
さらに、本発明の供給装置では、モータがブラシレス同期機(BLDCモータ)と制御電子回路とによって形成され、この制御電子回路がゴデット周壁に生じた糸巻付きを識別するように構成されている。制御電子回路がモータに直接に接続されていることにより、BLDCモータは、駆動パラメータの変化を識別し、評価するのに特に適する。
【0019】
ここで、制御電子回路は、モータの駆動パラメータを監視する少なくとも1つの測定手段と、駆動パラメータの閾値を記憶するメモリ手段とを有する。なお、こうした測定手段及びメモリ手段は、設定に応じたモータの電子制御を満足するためにも必要である。
【0020】
駆動パラメータを監視する測定手段として、好ましくは、モータ電流を測定する電流センサが制御電子回路に組み込まれる。これにより、駆動トルクの推定を可能にする直接比例の信号を求めることができる。
【0021】
ゴデット周壁の周面の糸巻付きの信号を増幅するために、さらに、所定の小さい間隔を置いてゴデット周壁に摩擦手段を対応させるように構成される。この摩擦手段は、ゴデット周壁に向かい合う摩擦面を有する。
【0022】
摩擦手段として、ゴデット周壁に対して小さい間隔を保持できるものであれば、任意の機械部品を好適に利用できる。好ましくは、摩擦手段は、ゴデット周壁に対して実質的に共軸に配向されたピンによって構成される。
【0023】
糸巻付きを識別し、モータを遮断した後に、オペレータによる後処理を迅速に開始できるようにするために、本発明の供給装置の有利な実施形態によれば、制御電子回路が発光ダイオード及び/又は機械制御ユニットに接続される。発光ダイオードによって、繊維機械での障害を外部へ向かって報知する視覚信号を利用できる。これに代えてもしくはこれに加えて、相応に隣接する他の処理機構及び供給装置を制御できるよう、機械制御ユニットへの直接の障害報知を担当する手段を設けてもよい。
【0024】
本発明の供給装置は、負荷のかかる環境におけるコンパクトな配置での駆動に特に適する。本発明の供給装置の有利な実施形態によれば、制御電子回路とモータとゴデット周壁とが1つの構造ユニットを形成し、ここで、モータ軸が軸受ケーシング内に突出するように支承され、制御電子回路が電気回路ケーシング内に封入され、軸受ケーシングと電気回路ケーシングとの間に、ステータを収容するモータ支持体が保持される。こうしたコンパクトな構成により、有利には、繊維機械において複数の供給装置を相互に密に並べて配置できる。
【0025】
糸を案内する際、好ましくは、この糸は、ゴデット周壁の周面への複数回の部分巻掛けによって案内される。本発明の一実施形態によれば、好ましくは、ゴデット周壁は、複数回の巻掛けによって糸を案内する回転可能なローラと協働する。
【0026】
本発明の供給装置では、望ましくない糸巻付きをモータによって自動的に識別し、機械を停止させることができるので、高度な動作確実性が得られる。なお、糸巻付きを識別する付加的な補助手段は必要ない。
【0027】
本発明を、以下に、添付図を参照しつつ、本発明の装置の幾つかの実施形態に即して、詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の供給装置の一実施形態を示す概略的な断面図である。
図2.1】図1の実施形態において、繊維機械での第1の動作状況を示す概略的な側面図である。
図2.2】図1の実施形態において、繊維機械での第2の動作状況を示す概略的な側面図である。
図3】モータの駆動パラメータの時間特性を示す概略的なグラフである。
図4】種々の駆動モードでのモータの駆動パラメータの時間特性を示す概略的なグラフである。
【0029】
図1には、本発明の供給装置の一実施形態が断面図で示されている。供給装置は、モータ2のモータ軸3の突出した自由端に相対回動不能に固定された、ポット状のゴデット周壁1を有する。モータ2は、いわゆるBLDCモータとして知られるブラシレス同期機として構成されている。BLDCモータ4はモータ2と制御電子回路5とを含む。
【0030】
BLDCモータ4は、この実施形態では、複数部分から構成されている。モータ2のモータ軸3は、複数の転がり軸受9によって回転可能に軸受ケーシング8に支承されている。モータ軸3は、ゴデット周壁1とは反対側の端部を有しており、この端部にロータ10が配置されている。ロータ10は詳細には図示されていない複数の永久磁石によって形成されている。ロータ10は複数の巻線を支持するステータ11によって包囲されている。ステータ11はモータ支持体12によって支承されている。モータ支持体12は、軸受ケーシング8とモータ2に直接に取り付けられた電気回路ケーシング13との間に延在している。電気回路ケーシング13は制御電子回路5を収容している。
【0031】
制御電子回路5は、この実施形態では、回路板14、パワーモジュール15、インバータ17及びマイクロプロセッサ19によってシンボリックに示されている。特に、制御電子回路5は、通常インバータ17に接続される測定手段16を有する。さらに、マイクロプロセッサ19に接続されたメモリ手段18も設けられている。
【0032】
制御電子回路5は、給電線路21を介して図示されていない電圧源に接続されている。制御電子回路5に通じる第2の線路は、上位の機械制御ユニット22とのデータ交換を可能にするデータ線路20である。付加的に、この実施形態では、制御電子回路5は、モータ2の可能な動作状態を視覚信号によって表示するために、発光ダイオード23に直接に接続されている。したがって、障害が例えば赤色信号によって、また、通常の動作状態が緑色信号によって、発光ダイオード23で報知される。
【0033】
図1に示されている供給装置の機能を、図2.1,図2.2に即して以下に説明する。図2.1,図2.2には、それぞれ、図1の実施形態を繊維機械で使用した場合の側面図が示されている。図2.1は糸案内の動作状態にある供給装置を表し、図2.2は糸巻付きが生じた動作状態にある供給装置を表している。
【0034】
繊維機械の内部では、図1の供給装置が支持体27で支承されている。この場合、ゴデット周壁1は支持体27の前面に支承されており、BLDCモータ4は支持体27の後面に支承されている。支持体27の前面には、回転可能に支承されるローラ28が所定の間隔を置いてゴデット周壁1に対置されている。さらに、支持体27の前面には摩擦手段24が固定されており、その摩擦面26は、ゴデット周壁1に対して小さな間隔を置いて支承されている。摩擦手段24は、この実施形態では、ゴデット周壁1に対して共軸に配向されかつ実質的にゴデット周壁1の全長にわたって延在するピン25によって形成される。
【0035】
図2.1には、糸29が複数回の巻掛けによってゴデット周壁1の周面及びローラ28の周面に案内される状況が示されている。ゴデット周壁1は、当該動作状況においては、モータ2によって、実質的に一定の回転数で駆動される。なお、モータ2の制御は、制御電子回路5を介して行われる。ここで、目標回転数はデータ入力側を介して制御電子回路5に供給される。
【0036】
本発明の方法は、当該フェーズにおいて制御電子回路5内でモータ2の物理的な駆動パラメータを連続的に監視することに基づいている。このために、駆動パラメータの実際値が記憶されている駆動パラメータの閾値と比較される。駆動パラメータとして、好ましくは、モータ2の駆動トルクが検出される。ただし、基本的には、駆動パラメータとしてモータの出力を監視することもできる。
【0037】
図3には、モータ2の駆動トルクの実際値の時間特性がグラフで示されている。グラフの横軸には時間tが記され、縦軸にはモータの駆動トルクMが記されている。糸29が障害を受けずに上述したようにゴデット周壁1の周面を案内されるかぎり、駆動トルクの実際値は僅かな小変動を除いて実質的に一定にとどまる。図3では当該実際値が記号Mで示されている。モータ2の駆動トルクが監視される場合、閾値はモータの最大トルク負荷を表すので、この閾値は上方限界値と見なすことができ、図3では記号Mで示されている。閾値Mは横軸に平行な一定値である。
【0038】
供給装置の前後での糸切れ又は供給装置の前後での糸緩みのためにゴデット周壁1の周面に糸巻付きが生じた場合、ゴデット周壁1で糸張力が変化し、モータ2の物理的な駆動パラメータを変化させる。図2.2には、ゴデット周壁1の周面での糸巻付き30が順行する糸29の巻上げによって生じる状況が示されている。ただし、これとは異なって、糸巻付き30が既に繰り出された糸によって生じることもあり、この場合、糸巻付き30は逆行する糸によって生じる。
【0039】
ゴデット周壁1の周面での糸巻付き30の発生の原因乃至様態に関係なく、駆動パラメータの実際値又は駆動トルクの実際値に作用する全ての変化量が検出される。この場合、通常、モータ2での負荷軽減率が上昇し、高い駆動トルクの実際値が生じる。
【0040】
駆動トルクの実際値を求めるために、この実施形態では、モータ電流がモータ特性量として測定される。このために、制御電子回路5内の測定手段16が用いられる。ただし、基本的には、モータ2の駆動パラメータを求めるために、例えばモータ電圧などの他のモータ特性量を用いてもよい。駆動トルクの実際値は駆動トルクの閾値と連続的に比較される。閾値は制御電子回路5のメモリ手段18に格納されている。
【0041】
図3に示されているように、巻付きが生じた場合、駆動トルクの実際値Mは増大し、時点tで閾値Mを上回る。実際値が閾値と比較され、時点tでの上方超過が確認された後、制御電子回路5によってモータ2がただちに停止される。同時に、機械制御ユニット22が障害信号を伝達し、これによりオペレータに対して故障が表示される。付加的に、発光ダイオード23を介して視覚信号を形成することもできる。こうしてゴデット周壁1の周面での糸巻付き30が除去され、プロセスを新たに開始できるようになる。
【0042】
ゴデット周壁1の周面での糸巻付き30が駆動トルクの実際値に充分な変化をもたらさない場合、信号増幅のために、摩擦面26を有する摩擦手段24が、糸巻付きの成長にしたがって糸巻付き部が摩擦手段24の摩擦面26に擦れるように、ゴデット周壁1に対置される。糸巻付き30と定置の摩擦手段24との間のこうした摩擦接触は直接にモータ2へ伝わり、駆動トルクの実際値が比例を超える割合で増大する。こうして、糸巻付きに基づく駆動トルクの変化が不充分な場合にも、糸巻付き30の成長は有利に制限される。
【0043】
糸巻付き30が識別されてモータが停止された後、糸巻付き30は除去され、プロセスが新たに開始される。このとき、糸はオペレータによって新たにゴデット周壁1及びローラ28の周面に巻掛けられる。当該動作状態では、オペレータの意図しない大きさの負荷がゴデット周壁1に発生し、モータ2の駆動トルクに望ましくない過上昇が生じることがある。ただし、このフェーズでモータをただちに遮断乃至停止することは所望されない。よって、種々の駆動モードにおいて種々の監視アルゴリズムにしたがって駆動トルクの監視を行うように構成できる。この実施形態では、ゴデット周壁への糸かけの際のモータの制御を定める第1の駆動モードと、ゴデット周壁の周面での糸案内の際のモータの制御を定める第2の駆動モードとが区別される。各駆動モードは、通常、制御電子回路5のマイクロプロセッサ19に格納されている複数の監視アルゴリズムのうちいずれか1つに割り当てられる。
【0044】
図4を参照しながら監視アルゴリズムを説明する。図4には、複数の駆動モードにおけるモータ2の駆動トルクの実際値の特性が示されている。図4のグラフでは、横軸に時間t、縦軸に駆動トルクMが示されている。
【0045】
ゴデット周壁1の周面に糸かけを行う場合、駆動トルクの実際値Mが糸案内のための所望の駆動トルクに達するまで連続的に増大する。ただし、図4に示されている実施形態では、オペレータが糸かけを行う際に、モータ2の駆動トルクが比例を超えて増大している。糸かけのための第1の駆動モード中、連続的にモータ電流測定により求められた駆動トルクの実際値が閾値MS2と比較される。閾値MS2はモータ2の最大負荷を表している。モータの負荷限界値への到達が起こると、駆動トルクを低下させるために、制御電子回路5によって回転数が低減される。なお、駆動トルクの監視は回転数の変化から独立に行われる。また、このフェーズでは、駆動トルクの実際値のほか、上方超過の持続時間も求められる。図4に示されている特性では、上方超過は時点tで終了している。当該時間は時間差t−tで得られる。このようにして求められた時間差も同様に監視基準となる。当該上方超過が設定された持続時間を超えて続く場合、制御電子回路5によってモータ2の遮断が行われる。このケースでは、時間差が設定された臨界持続時間よりも小さかったので、図4の実施形態のモータ2は遮断されなかった。ここでは、糸識別機能部が手動の糸かけに合わせて調整される。このように、本発明の方法は、手動で操作可能な供給装置に特に適する。
【0046】
供給装置での糸かけ過程が終了して駆動パラメータの実際値が糸案内の動作状態に対して設定されている通常値へ達するとただちに、モータの制御部の駆動モードが切り換えられ、図3に即して上述した監視アルゴリズムが作動される。図3に即して上述した監視アルゴリズムを図4にもう一度示してある。閾値MS1は糸かけにとって重要な閾値MS2よりも小さい。閾値MS1は、糸案内中に発生するモータ2の負荷変動によっては駆動パラメータの当該閾値を下回る実際値しか生じないように選択されている。糸巻付きのために駆動パラメータの実際値に大きな変化が発生する場合にのみ、当該閾値が上方超過される。図4には、時点tのこうした状況が示されている。時点tでは、ゴデット周壁1の周面での糸巻付きが発生しており、モータ2があらためて停止される。
【0047】
本発明の方法と本発明の供給装置とは、繊維機械内の加工ステーションにおいて確実な糸案内を保証できるよう、直接に関連している。この点で、本発明は、繊維機械での糸案内と糸巻付きの監視とを同時に実行するのに特に適する。
【符号の説明】
【0048】
1 ゴデット周壁、 2 モータ、 3 モータ軸、 4 BLDCモータ、 5 制御電子回路、 8 軸受ケーシング、 9 転がり軸受、 10 ロータ、 11 ステータ、 12 モータ支持体、 13 電気回路ケーシング、 14 回路板、 15 パワーモジュール、 16 測定手段、 17 インバータ、 18 メモリ手段、 19 マイクロプロセッサ、 20 データ線路、 21 給電線路、 22 機械制御ユニット、 23 発光ダイオード、 24 摩擦手段、 25 ピン、 26 摩擦面、 27 支持体、 28 ローラ、 29 糸、 30 糸巻付き
図1
図2.1】
図2.2】
図3
図4