特許第6556143号(P6556143)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6556143無段変速機用の駆動ベルトにおいて使用するのに適したキャリヤリングを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556143
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】無段変速機用の駆動ベルトにおいて使用するのに適したキャリヤリングを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   F16G 5/16 20060101AFI20190729BHJP
   B21D 53/14 20060101ALI20190729BHJP
   B23P 15/00 20060101ALI20190729BHJP
   B23K 10/00 20060101ALI20190729BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20190729BHJP
   B23K 26/354 20140101ALI20190729BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20190729BHJP
   C21D 1/06 20060101ALN20190729BHJP
【FI】
   F16G5/16 B
   B21D53/14
   B23P15/00 Z
   B23K10/00 501A
   B23K26/38 B
   B23K26/354
   C21D9/00 A
   !C21D1/06 A
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-542923(P2016-542923)
(86)(22)【出願日】2014年12月24日
(65)【公表番号】特表2017-511864(P2017-511864A)
(43)【公表日】2017年4月27日
(86)【国際出願番号】EP2014079329
(87)【国際公開番号】WO2015097296
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2017年12月21日
(31)【優先権主張番号】1040566
(32)【優先日】2013年12月24日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ビアネッサー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン フェルメール
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ナウス
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−167702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 5/16
B21D 53/14
B23K 10/00
B23K 26/354
B23K 26/38
B23P 15/00
C21D 9/00
C21D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼から形成されたキャリヤリング(32)を製造する方法であって、
基礎材料のプレート(11)を提供するステップと、
該プレート(11)を管状に曲げるステップであって、この場合、前記プレート(11)の2つの側面(12)を互いに突き合わせて、または少なくとも直接に互いに向き合わせて配置する、ステップと、
前記2つの側面(12)を溶接プロセスにおいて互いに固定して管(13)を形成するステップと、
該管(13)からリング状管セクション(14)を分離するステップと、
該リング状管セクション(14)を加工してキャリヤリング(32)を形成するステップであって、該加工は少なくとも、圧延プロセスにおいて前記リング状管セクション(14)を延伸させることを含む、ステップと、を含む方法において、
溶融切断プロセスによって前記管(13)から前記リング状管セクション(14)を分離し、その後、ただし前記圧延プロセスにおける前記リング状管セクション(14)の前記延伸の前に、前記リング状管セクション(14)に、該リング状管セクション(14)の鋼の再結晶のための焼きなまし熱処理を行うことを特徴とする、鋼から形成されたキャリヤリング(32)を製造する方法。
【請求項2】
前記溶融切断プロセスは、プラズマ切断またはレーザ切断である、請求項1記載のキャリヤリング(32)を製造する方法。
【請求項3】
前記焼きなまし熱処理において、前記リング状管セクション(14)を、オーブンチャンバ(16)において、摂氏600度を超える温度に加熱し、一定の時間、摂氏600度を超える温度に保持する、請求項1又は2記載のキャリヤリング(32)を製造する方法。
【請求項4】
前記管(13)には焼きなまし熱処理を行わない、請求項1から3のいずれか1項記載のキャリヤリング(32)を製造する方法。
【請求項5】
前記管(13)の金属結晶構造は、溶接構造および/または熱影響ゾーンの形成において不規則性を有する、請求項1から3のいずれか1項記載のキャリヤリング(32)を製造する方法。
【請求項6】
前記リング状管セクション(14)の焼きなまし熱処理の前に、前記リング状管セクション(14)のエッジ(15)をエッジ溶融プロセスにおいて溶融させる、請求項1から5のいずれか1項記載のキャリヤリング(32)を製造する方法。
【請求項7】
前記エッジ溶融プロセスの前の前記リング状管セクション(14)には焼きなまし熱処理を行わない、請求項6記載のキャリヤリング(32)を製造する方法。
【請求項8】
前記基礎材料のプレート(11)、前記管(13)および/または前記リング状管セクション(14)は、約0.4mmの厚さを有し、前記キャリヤリング(32)には、0.2mm未満の(壁)厚さが設けられている、請求項1から7のいずれか1項記載のキャリヤリング(32)を製造する方法。
【請求項9】
前記キャリヤリング(32)は、2つのプーリ(1,2)と駆動ベルト(3)とを備える無段変速機用の駆動ベルト(3)としてまたは当該駆動ベルト(3)において使用するためのものである、請求項1から8のいずれか1項記載のキャリヤリング(32)を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無段変速機用の閉ループ駆動ベルトにおける横断エレメントのキャリヤとして機能するのに適した鋼基礎材料からリングを製造する方法であって、
基礎材料のプレートを提供するステップと、
プレートを管状に曲げるステップであって、2つの側面を互いに突き合わせて配置するステップと、
前記2つの側面を溶接プロセスにおいて互いに固定して管を形成するステップと、
管からリング状セクションを分離するステップと、
駆動ベルト用のキャリヤリングを形成するためにリング状の管セクションを加工するステップであって、当該加工は、少なくとも圧延プロセスにおいてリング状管セクションを延伸させることを含むステップと、を含む方法に関する。
【0002】
管からリング状セクションが分離されるときに溶接の位置においておよび/または溶接プロセスのいわゆる熱影響ゾーンにおいて管および/またはリング状管セクションを破損または損傷させることを回避するために、管は、このような分離の前に焼きなましされる。このような管焼きなましプロセスにおいて、溶接部および熱影響ゾーンに溶接プロセスにおいて導入された脆性は、摂氏600度よりもかなり高い温度、例えば約800℃での材料の回復および再結晶によって除去される。
【0003】
管の焼きなましプロセスは、圧延プロセスを考慮したときにも同じ理由から必要とされることに留意されたい。すなわち、焼きなましプロセスは、管の溶接部または熱影響ゾーン内からの望ましくない変形またはさらには破損を伴うことなく、リング状管セクションが延伸させられることを可能にするために必要とされる。
【0004】
無段変速機用の駆動ベルトは一般的に公知である。通常、このような駆動ベルトは、駆動ベルトの複数の横断エレメントを支持する、無端の、すなわち閉ループリングの2つのセットを含み、横断エレメントは、駆動ベルトの全周に沿ってほぼ隣接した1つの列で配置されている。駆動ベルトのこれらのキャリヤリングは、比較的平坦であり、すなわち、キャリヤリングの内周と外周との半径方向の差は、軸方向の寸法に関して比較的小さい。
【0005】
無段変速機において、駆動ベルトは2つの協働するプーリの間に配置されており、これらのプーリの間で無段変速比が実現される。作動中、駆動ベルトは、駆動ベルトの横断エレメントが互いを一方のプーリから他方のプーリへ押し付けることにより、トルクをプーリのうちの一方から他方のプーリへ伝達する。
【0006】
無段変速機の作動中、駆動ベルトのキャリヤリングは、曲げおよび引張力に曝され、その結果、キャリヤリングの金属疲労は、駆動ベルトの起こりえる故障において役割を果たす。このような金属疲労に対するキャリヤリングの抵抗性は、使用される鋼のタイプ、品質および処理によって大きく決定される。キャリヤリングの駆動ベルト用途のための所要の材料特性を提供する好適な基礎材料は、マルエージング鋼である。
【0007】
管からのリング状セクションの分離は、一般的に、1つまたは複数の回転する切断刃によって行われる。切断刃は、やはり回転させられている管の材料に押し込まれる。このような分離プロセスの複数の基本的配列は、当該技術分野において公知であり、例えば、国際公開第2005/039812号、国際公開第2004/089568号、欧州特許出願公開第1130282号明細書および欧州特許出願公開第1108919号明細書に記載されている。しかしながら、全てのこのような場合、1つまたは複数の切断刃は、管にかなりの(せん断)応力を加える。この応力は、管の材料が十分に延性である場合に限り、破損または望ましくない変形を生じることなく提供することができる。実際には、これは、管の溶接後およびリング状セクションの管からの分離前に、管を焼きなまししなければならないことを意味する。
【0008】
本開示によれば、溶融切断プロセスにおいて溶融させることによって管からリング状セクションを分離するためにレーザ、プラズマビームまたは類似の熱源を使用することによって、前記せん断応力は生じない。その結果、このような溶融切断プロセスを用いることにより、管の延性または脆性は、切断の質、すなわちリング状管セクションの品質にほとんど影響しない。いかなる場合にも、上述の望ましくない変形または破損は生じず、管の溶融切断の前に管を焼きなまししなくても生じない。
【0009】
一見、溶融切断プロセスのこの後者の態様は、実施において無関係であるように見える。なぜならば、管の焼きなましプロセスは、リング状の管セクションを損傷または破損することなく圧延プロセスが行われるために、いずれにしても行わなければならないからである。しかしながら、本開示の基礎となる洞察に基づき、この態様はさらに好適に適用することができる。特に、本開示によれば、溶接後の焼きなましは、溶融切断プロセスにおいて管からリング状管セクションを分離させる後まで、延期される。これにより、キャリヤリング製造方法の全体的な有効性、特に費用対効果が高まる。
【0010】
本開示の上述の基本的な特徴をここで添付の図面を参照しながら例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】公知の駆動ベルトの一部の概略図であり、駆動ベルトは、互いに重ね合わされた複数のキャリヤリングによってそれぞれ形成された2つのリングセットと、複数の横断エレメントとを有する。
図2】板状の基材から駆動ベルト用のリングセットを製造する公知の方法におけるプロセスステップの公知の手順を表す図である。
図3】公知のリングセット製造方法において管からリング状セクションを分離するプロセスステップの公知の構成を示している。
図4】本開示の関連において適用される、管からリング状セクションを分離するプロセスステップの択一的な構成を示している。
図5】本開示による、リングセットの製造の一部としてのプロセスステップの新規の手順を表す図である。
【0012】
図1に部分的に概略的に示された公知の駆動ベルト3は、キャリヤリング32と称される、互いに重ね合わされた環状の金属バンドの2つのセット31と、複数の個々の金属の横断エレメント33とを含む。各横断エレメント33には、それぞれの側面において凹所34が設けられており、これらの凹所34にリングセット31が提供されている。公知の駆動ベルト3において、横断エレメント33は、リングセット31の全周にわたっておりかつほぼ連続的に埋めている1つの列を形成している。変速機における使用中、駆動ベルト3は2つの変速機プーリの間に保持され、ベルト3のリングセット31は緊張させられ、これにより、横断エレメント33の列は、リングセット31によって案内されながら駆動力を一方のプーリから他方のプーリへ伝達することができる。
【0013】
図2は、駆動ベルト3のリングセット31を形成する典型的な製造方法における主要なステップを概略的に示しており、中間製品キャリヤリングの製造を含む。
【0014】
第1のプロセスステップIでは、約0.4mmの厚さを有する基礎材料のプレート11が円筒状に曲げられ、プレート11の突き合わされた側面12が第2のプロセスステップIIにおいて互いに溶接され、中空の円筒もしくは管13を形成する。プロセスの第3のステップIIIにおいて、金属格子を回復および再結晶させるために、管13は工業用オーブン16において摂氏600度よりもかなり高い温度、例えば摂氏約800度で焼きなましされる。その後、第4のプロセスステップIVにおいて、リング状セクション14は、管13の本体から分離される。次のステップ、すなわちプロセスステップVにおいて、表面品質および/または形状を改善するために、リング状管セクション14の横方向側面もしくはエッジ15は処理される。例示された例において、エッジ15の処理は、エッジ溶融プロセスによって行われ、この場合、前記エッジ15は、レーザ20などの熱源によって一時的に溶融させられることによって再成形される。このエッジ溶融プロセス自体は、国際公開第2012/089228号より公知である。その後、リング状管セクション14は、厚さを0.2mm未満、通常は約0.185mmにまで減じるために、第6のプロセスステップVIにおいて、延伸させられながら圧延され、これにより、キャリヤリング32を形成する。
【0015】
次いで、前の圧延プロセス(すなわちステップVI)の加工硬化の効果を除去するために、キャリヤリング32は、さらなる焼きなましプロセスステップVIIを受ける。その後、第8のプロセスステップVIIIにおいて、キャリヤリング32は較正され、すなわち、2つの回転するローラの周囲に取り付けられ、前記ローラを離反させることによって所定の周長まで伸長させられる。この第8のプロセスステップVIIIにおいて、キャリヤリング32には内部応力分布も加えられる。その後、キャリヤリング32は、2つの別のプロセスステップ、すなわち、時効またはバルク析出硬化の第9のプロセスステップIXと、窒化または表面硬化の第10のプロセスステップXとにおいて熱処理される。特に、このような両熱処理は、オーブンチャンバにおいてキャリヤリング32を加熱することを必要とする。オーブンチャンバにはプロセスガスが供給される。プロセスガスは、典型的には、リング時効のためには窒素と、僅かな、例えば約5体積%の水素とから成り、リング窒化のためにはアンモニアから成る。両熱処理は、典型的には、摂氏400度〜摂氏500度の温度範囲で行われ、キャリヤリング32のために使用された金属(すなわち典型的にはマルエージング鋼合金)と、キャリヤリング32のために望まれる機械的特性とに依存して、30分未満から120分を超えるまでの間、それぞれ継続することができる。
【0016】
最後に、最後に示された第11のプロセスステップXIにおいて図2にさらに示されているように、このように処理された複数のキャリヤリング32を半径方向に積層する、すなわち、重ね合わせることによって、積層されたリングセット31が形成される。明らかに、リングセット31のキャリヤリング32は、適切に寸法決めされなければならず、例えば、一方のキャリヤリング32が他方の周囲に密にはめ合わされるように周長が僅かに異ならなければならない。このために、リングセット31のキャリヤリング32は、典型的には、様々な寸法のキャリヤリング32のストックから目的にかなうように選択される。
【0017】
管13からリング状管セクション14を分離する上記の第4のプロセスステップIVの公知の構成が、図3に概略的に示されている。図3は、管13を断面図で示している。しかしながら、現実には、管13の直径は、その壁厚よりも著しく大きい。円17は、切断プロセス中の管13に対するほぼ円筒形の回転可能な切断工具17の複数の連続する半径方向位置を示している。しかしながら、現実には、切断工具17は固定された半径位置を有し、管13が切断工具17に対して回転させられる。管13の内側において、切断プロセス中に切断工具17が半径方向内方へ移動するときにカウンター工具18が管13のための支持を提供する。実際の切断は、2つの段階I,IIにおいて生じる。切断の第1の段階Iにおいて、切断工具17は、回転する管13の壁厚を貫いて徐々に移動させられ(位置Ia〜Ic)、これにより、管13の材料においてらせん状の切断線Cをたどる。次いで、切断の第2の段階IIにおいて、管13の一回転の間にリング状セクションは管13から完全に分離される。第4のプロセスステップIVのこの公知の構成において、実質的な切断力は切断工具17によって管13に加えられることが明らかであろう。
【0018】
管13からリング状管セクション14を分離するプロセスステップIVの択一的な構成が、図4に概略的に示されている。この第2の実施の形態では、管13の壁厚を貫いて溶融させるために、集中した熱源(例えばレーザビーム)19が使用される。熱源19に対する管13の一回転の間に、開始位置Sから全周切断が行われ、リング状セクション14が管13から分離される。第4のプロセスステップIVのこの特定の構成において、管13および/またはリング状セクション14には最小限の力しか加えられない。
【0019】
実際には、溶接において管13の材料に導入される内部応力は、図3に示されたような、機械的な切断工具17,18によって加えられる力と組み合わさって、管13および/またはリング状管セクション14を、例えばそれらの望ましくない変形によって損傷させ、またはさらには破損させる。しかしながら、溶融切断プロセスでは、実質的な切断力は加えられず、ひいては、管13および/またはリング状管セクション14はそれによって損傷されない。これにより、管焼きなましの第3のプロセスステップIIIは、機械的な切断プロセスの代わりに溶融切断プロセスによってリング状セクション14が管13から分離されるならば(プロセスステップIV)、必ずしも行われる必要はない。さらに、結果として生じるリング状管セクション14は、圧延の前、すなわち、キャリヤリング32、最終的には駆動ベルト3のリングセット31の製造の第6のプロセスステップVIの前に、焼きなましされなければならない。
【0020】
本開示によれば、リング状管セクション14の焼きなましは好適には延期され、すなわち、リング状管セクション14のエッジ15が第5のプロセスステップVにおいて処理された後に初めて行われる。全体的なキャリヤリング製造方法のこの特定の構成において、エッジ溶融の第5のプロセスステップVは、公知技術、すなわち、国際公開第2012/089228号によって開示されているような焼きなましの後処理を含む従来技術に従って、好適には、リング状管セクション14を圧延する第6のプロセスステップVIの前に第2の焼きなましプロセスステップなしに、行うことができる。キャリヤリングの製造の関連する部分のこの新規の構成が、図5に示されている。
【0021】
図5によれば、第2のプロセスステップIIにおける管13の溶接の後、溶融切断プロセス、すなわち第4のプロセスステップIVにおいて管13が即座に複数のリング状セクション14に切断され、これにより、従来の製造方法における焼きなましの第3のステップIIIを省略する。その後、第5のプロセスステップVにおいて、リング状管セクション14のエッジ15は、これらのエッジ15を一時的に溶融させるレーザ20によって処理される。その後に初めて、回復および再結晶によってリング状管セクション14全体にわたって材料特性を均等化するために、リング状管セクション14は、焼きなましのプロセスステップV−bを受ける。この後者のプロセスステップV−bにおいて、溶接プロセスステップIIと、分離プロセスステップIVと、エッジ溶融プロセスステップVとから結果的に生じる熱影響ゾーンは、全て同時に、すなわち好適には1つのプロセスステップV−bにおいて除去される。すなわち、溶融切断の前記第4のプロセスステップIVと、エッジ溶融の前記第5のプロセスステップVとにおいて、管13の金属結晶構造はまだ、管溶接の第2のプロセスステップIIにおいて形成された不規則性を有しており、すなわち、溶接構造と、熱影響ゾーンとをまだ有している。
【0022】
最後に、留意すべきことは、リング状管セクション14のエッジ15を処理するためにエッジ溶融プロセス(プロセスステップV)が選択されず、代わりにストーンタンブリングまたはブラッシングなどの別のプロセスがこの目的のために適用されたとしても、このような別のエッジ処理プロセスが完了した後に初めてリング状管セクション14を焼きなましすることは依然として有利であることができる。結局、この形式において、溶融切断(プロセスステップIV)およびエッジ処理(プロセスステップV)の後の所要の品質標準を満たすこれらの中間製品のみが、圧延(プロセスステップVI)の前に焼きなまし(プロセスステップV−b)される(されなければならない)。
【0023】
本開示は、前記説明の全ておよび添付図面の全ての詳細に加えて、添付の特許請求の範囲の全ての特徴にも関しかつこれらの特徴を含む。請求項における括弧書きの符号は、請求項の範囲を限定するのではなく、単に、それぞれの特徴の拘束しない例として提供されている。請求項に記載された特徴は、場合によって、任意の製品または任意の方法において別々に適用することができるが、これらの特徴のうちの2つ以上のあらゆる組合せを適用することも可能である。
【0024】
本開示によって表された発明は、明細書に明示的に言及された実施の形態および/または実施例に限定されるのではなく、その補正、変更および実用的な適用、特に当業者の到達範囲にあるものをも包含する。
図1
図2
図3
図4
図5