特許第6556144号(P6556144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6556144ポリプロピレン及びポリアミドグラフト化ポリオレフィンからなる熱可塑性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556144
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】ポリプロピレン及びポリアミドグラフト化ポリオレフィンからなる熱可塑性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/12 20060101AFI20190729BHJP
   C08L 23/14 20060101ALI20190729BHJP
   H01L 31/049 20140101ALI20190729BHJP
   H01B 3/44 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   C08L23/12
   C08L23/14
   H01L31/04 562
   H01B3/44 G
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-544464(P2016-544464)
(86)(22)【出願日】2014年12月15日
(65)【公表番号】特表2017-503890(P2017-503890A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】FR2014053339
(87)【国際公開番号】WO2015101730
(87)【国際公開日】20150709
【審査請求日】2017年12月12日
(31)【優先権主張番号】1450031
(32)【優先日】2014年1月3日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジュセ, ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】オスダ, グレゴワール
(72)【発明者】
【氏名】ビゼー, ステファーヌ
【審査官】 松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−531909(JP,A)
【文献】 特開昭63−168455(JP,A)
【文献】 特開平05−262930(JP,A)
【文献】 特開平04−183733(JP,A)
【文献】 特表2004−510865(JP,A)
【文献】 特開平06−200087(JP,A)
【文献】 特開平02−024354(JP,A)
【文献】 特開平01−240560(JP,A)
【文献】 特開平04−314739(JP,A)
【文献】 特開昭62−158740(JP,A)
【文献】 特開昭64−066268(JP,A)
【文献】 特開平04−096969(JP,A)
【文献】 特開平02−153956(JP,A)
【文献】 特開昭64−056750(JP,A)
【文献】 特開昭62−241941(JP,A)
【文献】 特開昭59−129258(JP,A)
【文献】 特開昭62−158739(JP,A)
【文献】 特開平07−003153(JP,A)
【文献】 特開昭61−028539(JP,A)
【文献】 特開昭60−110740(JP,A)
【文献】 特開平06−279649(JP,A)
【文献】 特開平08−034881(JP,A)
【文献】 特開2006−291118(JP,A)
【文献】 特開2009−074082(JP,A)
【文献】 特開2013−129800(JP,A)
【文献】 特開2013−147648(JP,A)
【文献】 特開平07−316423(JP,A)
【文献】 特表2003−528956(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0270820(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08L 1/00 − 101/14
C08K 3/00 − 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性重合体組成物であって、
●組成物の10重量%から90重量%で存在する、ポリプロピレンからなり、かつ官能化していない第1のポリマー、
●オレフィンに由来する繰り返し単位、及びアミノ基及び/又はカルボキシル基から選択される化学構造と反応し得る官能基を有する少なくとも1種類の不飽和モノマー(X)に由来する繰り返し単位を含むポリオレフィン主鎖骨格と、ポリアミド重合体グラフト側鎖部分とからなる第2のポリマーであって、当該ポリオレフィン主鎖骨格と、ポリアミド重合体グラフト側鎖部分とは、不飽和モノマー(X)に由来する繰り返し単位と、ポリアミド重合体の有するアミノ基及び/又はカルボキシル基から選択される化学構造とが縮合反応することによって結合するものであり、組成物の10重量%から90重量%で存在する、第2のポリマー、
●組成物の0.1重量%から20重量%で存在する、官能化ポリオレフィンからなる第3のポリマーであって、官能化ポリオレフィンが無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレンである第3のポリマー、ならびに
●組成物の0重量%から30重量%で存在する、1種類以上の可塑剤、接着促進剤、抗UV剤、酸化防止剤、難燃剤、染料/光沢剤、顔料及び補強充填剤からなる群から選択される機能性補助剤、からなり、
組成物が23℃で400MPa以上のヤング率を示し、総重量割合が100重量%である、
熱可塑性重合体組成物。
【請求項2】
前記第2のポリマーにおいて、不飽和モノマー(X)が無水マレイン酸であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第2のポリマーがナノ構造化されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第2のポリマーに関して、前記ポリアミド重合体グラフト側鎖の数平均モル質量が、1000から10000g/モルに及ぶ範囲内にあることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記第2のポリマーのポリアミド重合体グラフト側鎖部分が、一方の末端にアミノ基を有するポリアミド重合体と、少なくとも1種類の不飽和モノマー(X)に由来する繰り返し単位との縮合反応により形成されることを特徴とし、前記ポリアミド重合体が、ポリアミド6/11、ポリアミド6及びポリアミド11から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1のポリマーが組成物の15重量%から40重量%で存在し、かつ、前記第2のポリマーが組成物の60重量%から85重量%で存在することを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1のポリマーが組成物の60重量%から90重量%で存在し、かつ、前記第2のポリマーが組成物の10重量%から40重量%で存在することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
複数の隣接する層を含み、これらの層の少なくとも1層が、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物からなることを特徴とする、多層構造体。
【請求項9】
光起電モジュールのバック層である、請求項に記載の多層構造体。
【請求項10】
ケーブル被覆である、請求項に記載の多層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、ポリプロピレン及びポリアミドグラフト化ポリオレフィンをベースとした熱可塑性組成物であり、この混合物は理想的にはナノ構造化されている。より詳細には、本発明に従った組成物は、2つの選択的形態でもたらされる:一方は、ポリプロピレン含有量が非常に高く(≧60%)、他方は、反対に、ポリアミドグラフト化ポリオレフィン含有量が非常に高い(≧50%)。
【0002】
本発明はまた、層のうちの少なくとも1層が本発明に従った組成物からなる、多層構造体にも関する。
【背景技術】
【0003】
ナノ構造化された共連続合金を形成する、エチレン/無水マレイン酸及びエチレン/アルキル(メタ)アクリレート/無水マレイン酸のコポリマーから選択される、ポリオレフィン骨格上にポリアミドブロックを含むグラフト化コポリマーが国際公開第02/28959号パンフレットに記載されている;これは、軟質エチレンポリマーなどの軟質ポリオレフィン内にこのグラフト化コポリマーを再分散する際に維持される、非常に優れた熱機械的特性をこのターポリマー/コポリマーに付与する。
【0004】
このような混合物は、接着剤、フィルム、防水シート、カレンダー加工された製品、電気ケーブル又は物体の成形(「スラッシュ成形」)プロセスのための粉末などの用途を有する。国際公開第2006/085007号パンフレットでは、摂氏150度(℃)を超える温度に供される基材の熱保護層を形成するために、このような組成物を使用していた。
【0005】
これらの材料は、上述の2つの特許公報に定義されるように、ナノ構造化されていると考えられ、このナノ構造化は、ポリオレフィン層の融点を超える温度において、低レベルの硬度(82から95の間のショアA)及び良好な熱機械的挙動に関する有利な特性をそれらに付与する。
【0006】
残念ながら、これらの高性能の化合物は、それらが大量に存在する場合、すなわち熱可塑性組成物の母材を形成する場合、より具体的には、この組成物がある程度の剛性ならびに水に対する絶対不浸透性又は低い吸湿性を表すことが必要とされる場合には、不利益を示す。
【0007】
これらの同一の化合物がポリオレフィン母材中に少量で用いられる場合には、残念ながらそれらがこの母材に有利な特性を付与できるかどうかは明らかではない。1つの基準、すなわちクリープは、ある特定の用途において、特に重要である。実際には、これらの化合物とポリエチレン、より具体的には高密度ポリエチレン(HDPE)との混合物は、このクリープ基準の観点から、特に140℃を超える温度において、あまり満足のいくものではないことが分かっている。このような熱可塑性組成物は、本出願人から出願された欧州特許出願公開第2196489号の文献により知られている。
【0008】
よって、結果的に得られる組成物が乏しい物理化学的及び剛性特性を示すことが非常に多いことから、ポリオレフィン骨格上にポリアミドブロックを含むこのようなグラフト化コポリマーと別のポリオレフィンとを混合することは、自明ではない。
【0009】
上述のコポリマーをEPDM(これは反応性の化学官能基を有しない)を含む2種類の他のポリマーと混合する試みについて開示する仏国特許発明第2918380号明細書も挙げられるが、このような組成物は軟質性であり、100MPa(メガパスカル)未満のヤング率を示し、したがってこの種の配合物はある程度の剛性が必要とされる用途から除外されてしまう。さらには、EPDMを用いたこのような組成物のエイジング、特にUV照射に対する耐性の特性は、非常に平凡なものである。より詳細には、EPDMが架橋しないであろうことから、本明細書に開示される実施例2はクリープに対して耐性ではないであろう。
【0010】
よって、ポリオレフィン骨格上にポリアミドブロックを含むグラフト化コポリマーとポリオレフィンとを含む、剛性と同時に、機械的及び熱機械的品質/特性に関して超高性能の熱可塑性組成物が望まれている。
【発明の概要】
【0011】
本出願人は、様々な実験及び取扱作業の後、当業者に周知の教示とは異なり、所定の量の別のポリオレフィンポリマーを含む共連続的なナノ構造化組成物が、一方の他方に対する割合に応じて、特に改善されたクリープ特性又は水に対する優れた透過性を示しつつ、高いヤング率(剛性)及び非常に満足のいく物理化学的特性(特に経時によるエイジング及びUV照射による損傷の観点から)を保持することを見出した。
【0012】
よって、本発明はポリマーの混合物からなる熱可塑性組成物に関し、本組成物は、
●混合物の10重量%から90重量%で存在する、ポリプロピレンからなる第1のポリマー、
●少なくとも1種類の不飽和モノマーの残基(X)及び複数のポリアミドグラフトを含有するポリオレフィン骨格からなる第2のポリマーであって、ポリアミドグラフトは、少なくとも1つのアミン末端及び/又は少なくとも1つのカルボン酸末端を有するポリアミドと縮合反応によって反応可能な官能基を含む不飽和モノマーの残基(X)によってポリオレフィン骨格に結合し、不飽和モノマーの残基(X)はグラフト化又は共重合によって骨格に結合し、この第2のポリマーは混合物の10重量%から90重量%で存在する、第2のポリマー、及び
●混合物の0.1%から20%の、官能化ポリオレフィンからなる第3のポリマー、ならびに
●任意選択的に、組成物の0%から30重量%の機能性補助剤、
からなり、
本組成物は、23℃において400MPa以上のヤング率を示す。
【0013】
本発明の他の有利な特徴は以下のように特定される:
− 有利には、第2のポリマーにおいて、不飽和モノマー(X)は無水マレイン酸である、
− 本発明の特に有利な態様によれば、上述のグラフト化ポリマー、すなわち上述の第2のポリマーはナノ構造化されている、
− 好ましくは、第2のポリマーに関して、上述のグラフト化ポリマーの上述のポリアミドグラフトの数平均モル質量は、1000から10000g/モル、好ましくは1000から5000g/モルに及ぶ範囲内にある、
− 好ましくは、第2のポリマーに関連して、ポリアミドグラフトは、例えばモノNH6/11、及び/又は1種類の単官能性NHポリアミド6及び/又は1種類の単官能性NHポリアミド11など少なくとも1種類のコポリアミド、を含む、
− 第1のポリマーは、ポリプロピレンホモポリマー又は、異種又はランダムのポリプロピレンコポリマーから選択される、
− 有利には、上述の第1のポリマーは組成物の15重量%から40重量%で存在し、第2のポリマーは組成物の60重量%から85重量%で存在する、
− 有利には、上述の第1のポリマーは組成物の60重量%から90重量%で存在し、第2のポリマーは組成物の10重量%から40重量%で存在する、
− 機能性補助剤は、可塑剤、接着促進剤、UV安定剤及び/又はUV吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、染料/光学的増白剤、顔料及び補強充填剤のうち1種類以上からなる。
【0014】
本発明に従った組成物は、本質的に、ポリプロピレンのポリアミドグラフト化ポリオレフィンに対する割合に応じて二分される。
【0015】
よって、ポリプロピレンの量が混合物の60重量%以上である場合には、ポリアミドグラフト化ポリオレフィンは、他の特性/品質を損なうことなく、排他的ではないが本質的に、特にポリプロピレンの融点より高い温度において、(非常に)良好なクリープ特性を組成物に与えるのに対し、ポリアミドグラフト化ポリオレフィンの量が混合物の50重量%を超える場合には、ポリプロピレンは、優れたクリープ耐性特性を保持しつつ、他の特性/品質を損なうことなく、排他的ではないが本質的に、水に対する優れた不浸透性を組成物に与える。
【0016】
本発明はまた、特に、複数の隣接する層を備えた光起電モジュールのバック層又はケーブル被覆など(又はガソリンタンク、複数の隣接する層を備えた流体輸送管など)の多層体にも関し、これらの層の少なくとも1層が、前述の請求項のいずれかにおいて定義される組成物からなることを特徴とする。
【0017】
本発明に従った組成物は、光起電モジュールの用途に関連して提示される(特に、優れたクリープ特性及び水に対する不浸透性、及び必要とされる特定の機械的特性に起因して)が、当然ながら、この組成物は他の用途についても想定可能であって、このような組成物は、有利には特に多層構造体、例えば、ケーブル(特に空気又は流体の輸送用の管)、履き物(例えばスキー)、フィルム又は接着剤コーティングなどに用いることができることに注目すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1のポリマーに関しては、それはポリプロピレンからなる;それはポリプロピレンのホモポリマー又はコポリマーである。
【0019】
コモノマーとしては、以下のものが挙げられうる:
− α−オレフィン、有利には3から30個の炭素原子を有するもの。このようなα−オレフィンの例は、リストのうちプロピレンをエチレンに置き換えることを除けば第2のポリマー(下に記載される)について挙げたものと同じである、
− ジエン。
【0020】
第2のポリマーは、ポリプロピレンブロックを含むコポリマーでもありうる。
【0021】
ポリマーの例としては、以下のものが挙げられうる:
− ポリプロピレン、
− 1%から20%のポリエチレンを追加的に含めることができる、当業者に周知のポリプロピレンとEPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー)又はEPR(エチレンプロピレンゴム)との混合物。
【0022】
第2のポリアミドグラフト化ポリマーのポリオレフィン骨格に関しては、これは、モノマーとしてα−オレフィンを含むポリマーである。
【0023】
2〜30個の炭素原子を有するα−オレフィンが選好される。
【0024】
α−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、1−ヘキサコセン、1−オクタコセン、及び1−トリアコンテンが挙げられうる。
【0025】
3〜30個の炭素原子、好ましくは3〜20個の炭素原子を有するシクロオレフィン、例えば、シクロペンタン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン及び2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン;ジ−及びポリオレフィン、例えば、ブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン及び5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエンなど;ビニル芳香族化合物、例えば、モノ−又はポリアルキルスチレン(スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン及びp−エチルスチレンを含む)など、及び、メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ベンジルビニルアセテート(benzylvinyl acetate)、ヒドロキシスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、ジビニルベンゼン、3−フェニルプロペン、4−フェニルプロペン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、1,2−ジフルオロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、テトラフルオロエチレン及び3,3,3−トリフルオロ−1−プロペンなどの官能基を含む誘導体も挙げられうる。
【0026】
本発明の文脈では、用語「α−オレフィン」はスチレンも含む。α−オレフィンとしては、プロピレン及び非常に特にエチレンが選好される。
【0027】
1種類のα−オレフィンのみがポリマー鎖内で重合される場合、このポリオレフィンはホモポリマーでありうる。例としては、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)が挙げられうる。
【0028】
少なくとも2種類のコモノマーがポリマー鎖内で共重合され、2種類のコモノマーのうちの1つ(「第1のコモノマー」と称される)がα−オレフィンであり、他のコモノマー(「第2のコモノマー」と称される)が第1のコモノマーと重合可能なモノマーである場合には、このポリオレフィンはコポリマーでありうる。
【0029】
第2のコモノマーとしては以下のものが挙げられうる:
●すでに言及されたα−オレフィンのうちの1つであって、第1のα−オレフィンコモノマーとは異なるもの、
●例えば、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン又はブタジエンなどのジエン、
●アルキル(メタ)アクリレートという用語の下に統合される、例えば、アルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸のエステル。これらの(メタ)アクリレートのアルキル鎖は、最大30個の炭素原子を有しうる。アルキル鎖としては、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ペンタコシル、ヘキサコシル、ヘプタコシル、オクタコシル又はノナコシルが挙げられうる。不飽和カルボン酸のエステルとしては、メチル、エチル及びブチル(メタ)アクリレートが選好される、
●カルボン酸のビニルエステル。カルボン酸のビニルエステルの例としては、酢酸ビニル、ビニルベルサテート(versatate)、プロピオン酸ビニル、酪酸ブチル又はビニルマレエートが挙げられうる。カルボン酸のビニルエステルとしては、酢酸ビニルが選好される。
【0030】
有利には、ポリオレフィン骨格は第1のコモノマーを少なくとも50モル%含み、その密度は有利には0.91から0.96の間でありうる。
【0031】
好ましいポリオレフィン骨格は、エチレン/アルキル(メタ)アクリレートのコポリマーからなる。このポリオレフィン骨格を使用することにより、光及び温度に起因するエイジングに対する優れた耐性がもたらされる。
【0032】
たとえ異なる「第2のコモノマー」が、ポリオレフィン骨格内に共重合されたとしても、本発明の範囲から逸脱することにはならないであろう。
【0033】
本発明によれば、ポリオレフィン骨格は、縮合反応によってポリアミドグラフトの酸及び/又はアミン官能基と反応することができる、少なくとも1つの不飽和モノマー残基(X)を含む。本発明の定義によれば、不飽和モノマー(X)は「第2のコモノマー」ではない。
【0034】
ポリオレフィン骨格に含まれる不飽和モノマー(X)としては、次のものが挙げられうる:
●不飽和エポキシド。これらには、例えば脂肪族グリシジルエステル及びエーテルが含まれ、例えばアリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、マレイン酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アクリル酸グリシジル及びメタクリル酸グリシジルなどである。これらはまた、例えば脂環式グリシジルエステル及びエーテルであり、例えば2−シクロヘキセン−1−イルグリシジルエーテル、グリシジルシクロヘキセン−4,5−ジカルボキシレート、グリシジルシクロヘキセン−4−カルボキシレート、グリシジル5−ノルボルネン−2−メチル−2−カルボキシレート及びジグリシジルエンド−シス−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボキシレートなどである。好ましくは、不飽和エポキシドとしてはメタクリル酸グリシジルが使用される、
●不飽和カルボン酸及びそれらの塩、例えばアクリル酸又はメタクリル酸及びこれら酸の塩。
●カルボン酸無水物。これらは、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水アリルコハク酸、無水シクロヘキサ−4−エン−1,2−ジカルボン酸、無水4−メチレンシクロヘキサ−4−エン−1,2−ジカルボン酸、無水ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸及び無水x−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,2−ジカルボン酸から選択することができる。カルボン酸無水物として無水マレイン酸を使用することが好ましい。
【0035】
不飽和モノマー(X)は、好ましくは不飽和カルボン酸無水物である。
【0036】
本発明の有利なバージョンによれば、ポリオレフィン骨格に結合する不飽和モノマー(X)の好ましい数は、平均で、1.3以上、及び/又は、好ましくは20以下である。
【0037】
よって、(X)が無水マレイン酸であり、かつ、ポリオレフィンの数平均モル質量が15000g/モルの場合、これは、ポリオレフィン骨格全体の少なくとも0.8質量%及び最大で6.5%の無水物の割合に対応することが見出されている。ポリアミドグラフトの質量に関するこれらの値は、ポリアミドグラフト化ポリマー中のポリアミドと骨格の割合を決定する。
【0038】
不飽和モノマー残基(X)を含むポリオレフィン骨格は、モノマー(第一のコモノマー、任意選択的な第二のコモノマー及び任意選択的に不飽和のモノマー(X))の重合により得られる。この重合は、高圧ラジカル法又は溶液法によって、オートクレーブ反応器中又は管型反応器中で行うことができ、これらの方法及び反応器は当業者によく知られている。不飽和モノマー(X)がポリオレフィン骨格内で共重合されない場合、それはポリオレフィン骨格にグラフトされる。グラフティングもまた、それ自体が既知の操作である。たとえいくつかの異なる機能性モノマー(X)がポリオレフィン骨格に共重合される、及び/又は、グラフトされたとしても、組成物は本発明に従ったものであろう。
【0039】
モノマーの種類及び比率により、ポリオレフィン骨格は半結晶又は非晶質でありうる。非晶質ポリオレフィンの場合には、ガラス転移温度のみが観察され、一方、半結晶ポリオレフィンの場合には、ガラス転移温度と溶融温度(必然的に、融点の方がより高くなる)が観察される。当業者は、ポリオレフィン骨格のガラス転移温度、任意選択的に融点及び粘度についての所望の値を容易に得るために、モノマーの比及びポリオレフィン骨格の分子量を選択すれば足りるであろう。
【0040】
好ましくは、ポリオレフィンは0.5から400g/10分(190℃、2.16kg、ASTM D 1238)のメルト・フロー・インデックス(MFI)を有する。
【0041】
ポリアミドグラフトは、ホモポリアミド又はコポリアミドのいずれかでありうる。
【0042】
表現「ポリアミドグラフト」が特に目的とするのは、下記の重縮合の結果として得られる脂肪族ホモポリアミドである:
●ラクタム、
●脂肪族α,ω−アミノカルボン酸、又は
●脂肪族ジアミンと脂肪族二酸。
【0043】
ラクタムの例としては、カプロラクタム、オエナントラクタム及びラウリルラクタムが挙げられうる。
【0044】
脂肪族α,ω−アミノカルボン酸の例としては、アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカノン酸及び12−アミノドデカン酸が挙げられうる。
【0045】
脂肪族ジアミンの例としては、ヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン及びトリメチルヘキサメチレンジアミンが挙げられうる。
【0046】
脂肪族二酸の例としては、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸及びドデカンジカルボン酸が挙げられうる。
【0047】
脂肪族ホモポリアミドの中でもとりわけ、例として、及び暗黙の制約なしに、次のポリアミドが挙げられうる:ポリカプロラクタム(PA6);ポリウンデカンアミド(Rilsan(登録商標)の銘柄でArkema社から市販される、PA11);ポリラウリルラクタム(Rilsan(登録商標)の銘柄でArkema社から市販される、PA12);ポリブチレンアジパミド(PA4.6);ポリヘキサメチレンアジパミド(PA6.6);ポリヘキサメチレンアゼラミド(PA6.9);ポリヘキサメチレンセバカミド(PA6.10);ポリヘキサメチレンドデカンアミド(PA6.12);ポリデカメチレン ドデカnアミド(PA10.12);ポリデカメチレンセバカミド(PA10.10)及びポリドデカメチレンドデカンアミド(PA12.12)。
【0048】
また、表現「半結晶性のポリアミド」が目的とするのは脂環式ホモポリアミドである。
【0049】
特に、脂環式ジアミンと脂肪族二酸との縮合により得られる脂環式ホモポリアミドが挙げられうる。
【0050】
脂環式ジアミンの例としては、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン又はPACMとしても知られる4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)もしくは、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン又はBMACMとしても知られる2,2'−ジメチル−4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)が挙げられうる。
【0051】
よって、脂環式ホモポリアミド中でもとりわけ、PACMとC12二酸との縮合から得られるポリアミドPACM.12、及び、BMACMとC10及びC12脂肪族二酸との縮合からそれぞれ得られるBMACM.10及びBMACM.12が挙げられうる。
【0052】
表現「ポリアミドグラフト」が目的とするのは、次の縮合の結果として得られる半芳香族ホモポリアミドである:
●脂肪族ジアミンと芳香族二酸、例えばテレフタル酸(T)及びイソフタル酸(I)など。得られるポリアミドは、次に、「ポリフタルアミド」又はPPAとして一般に知られる;
●例えばキシレンジアミン、より具体的にはm−キシレンジアミン(MXD)などの芳香族ジアミンと、脂肪族二酸。
【0053】
よって、ポリアミド6.T、6.I、MXD.6又はMXD.10が挙げられうる。
【0054】
本発明に従った組成物において利用されるポリアミドグラフトは、コポリアミドでありうる。コポリアミドは、ホモポリアミドの生産のために上記設定されたモノマーの群のうち少なくとも2種類の重縮合から得られる。コポリアミドの記載において用語「モノマー」は、「繰り返し単位」の意味にとられるべきである。これは、PAの繰り返し単位が二酸とジアミンとの組合せからなる場合に、非常に優れていることを理由とする。それはジアミンと二酸との組合せ、つまりジアミン/二酸の対(等モル量)であると考えられ、これはモノマーに相当する。これは、二酸又はジアミンが、個別に、それ自身だけでは重合してポリアミドを与えるには不十分な、構造単位のみであるという事実によって説明される。
【0055】
したがって、コポリアミドは特に、以下の縮合生成物の範囲にまで及ぶ:
●少なくとも2種類のラクタム、
●少なくとも2種類の脂肪族α,ω−アミノカルボン酸、
●少なくとも1種類のラクタム及び少なくとも1種類の脂肪族α,ω−アミノカルボン酸、
●少なくとも2種類のジアミン及び少なくとも2種類の二酸、
●少なくとも1種類のラクタムと少なくとも1種類のジアミン、及び少なくとも1種類の二酸、
●少なくとも1種類の脂肪族α,ω−アミノカルボン酸と少なくとも1種類のジアミン、及び少なくとも1種類の二酸、
ジアミン及び二酸は、互いに独立して、脂肪族、脂環式又は芳香族であることが可能である。
【0056】
モノマーの種類及び比によって、コポリアミドは半結晶質又は非晶質でありうる。非晶質のコポリアミドの場合はガラス転移温度のみが観測されるのに対し、半結晶質のコポリアミドの場合にはガラス転移温度及び融点(必然的に、融点の方がより高くなる)が観測される。
【0057】
本発明の文脈で用いることができる非晶質コポリアミドの中でもとりわけ、例えば、半芳香族モノマーを含むコポリアミドが挙げられうる。
【0058】
コポリアミドの中でもとりわけ、半結晶性コポリアミド、特にPA6/11、PA6/12及びPA6/11/12型のものも使用されうる。
【0059】
重合度は、幅広い割合の範囲内で変化しうる;その値に応じて、ポリアミドであるか又はポリアミドのオリゴマーである。
【0060】
有利には、ポリアミドグラフトは単官能性である。
【0061】
ポリアミドグラフトがモノアミン末端を有するためには、次の式の鎖制限剤(chain limiter)を使用することで足りる:
式中、
●Rは、水素又は最大20個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、
●Rは、最大20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルケニル基、飽和又は不飽和脂環式ラジカル、芳香族ラジカル又は上記の組合せである。鎖制限剤は、例えばラウリルアミン又はオレイルアミンでありうる。
【0062】
ポリアミドグラフトがモノカルボン酸末端を有するためには、式R'−COOH又はR'−CO−O−CO−R'又はジカルボン酸の鎖制限剤を使用することで足りる。
【0063】
R’及びR’は最大20個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。
【0064】
有利には、ポリアミドグラフトはアミン官能性を備えた末端を有する。好ましい単官能性の重合鎖制限剤は、ラウリルアミン及びオレイルアミンである。
【0065】
ポリアミドグラフトは1000から10000g/モルの間、好ましくは1000から5000g/モルの間のモル質量を有する。
【0066】
重縮合は、ポリアミドグラフトのグラフティングを行うために用いることができ、例えば、反応混合物を撹拌しながら、減圧下又は不活性雰囲気下、一般に200から300℃の温度でなど、通常知られている方法に従って行われる。グラフトの平均鎖長は、重縮合可能なモノマー又はラクタムの単官能性の重合鎖制限剤に対する仕込みモル比によって決定される。平均鎖長の計算では、通常、1つのグラフト鎖に対して鎖制限剤1分子が許容される。
【0067】
当業者は、ポリアミドグラフトのガラス転移温度、任意選択的に融点及び粘度の所望の値を得るためには、モノマーの種類及び比を選択すること、及び、ポリアミドグラフトのモル質量を選択することで足りるであろう。
【0068】
ポリアミドグラフトと、X残基(又は第2のグラフト化コポリマー、すなわちエラストマーコポリマーのための官能化モノマー)を含むポリオレフィン骨格との縮合反応は、ポリアミドグラフトのアミン又は酸官能基とX残基との反応によって行われる。有利には、モノアミンポリアミドグラフトが用いられ、アミド又はイミド結合がアミン官能基と官能基のX残基との反応によって生成される。
【0069】
この縮合は、好ましくは溶融状態で行われる。通常のニーディング及び/又は押出成形技法を使用して、本発明に従った組成物を製造することができる。組成物の成分は、次に混合されて混練生成物を形成し、これを任意選択的にダイ出口で粉砕してもよい。有利には、混練加工の間にカップリング剤が添加される。
【0070】
ナノ構造化組成物を得るために、ポリアミドグラフト及び骨格は、次に、一般に200から300℃の温度で押出機内で混合されうる。押出機内の溶融材料の平均滞留時間は5秒から5分の間、好ましくは20秒から1分の間でありうる。この縮合反応の収率は、遊離ポリアミドグラフト、すなわちポリアミドグラフト化ポリマーを形成するために反応しなかったものの選択的な抽出により評価される。
【0071】
アミン末端を含むポリアミドグラフトの調製及び残基(X)又は官能化モノマー(第二のコポリマー)を含むポリオレフィン骨格へのそれらの付加は、米国特許第3976720号、同第3963799号、同第5342886号及びフランス特許第2291225号に記載されている。本発明のポリアミドグラフト化ポリマーは、有利には、ナノ構造化された配置を示す。
【0072】
第3の任意選択的なポリマーに関しては、それは、ポリプロピレンとポリアミドグラフト化ポリオレフィンとの相溶化のための薬剤として作用可能な官能化ポリオレフィンからなる。このグラフト化ポリオレフィンの説明は、ポリアミドグラフト化ポリアミドに用いられたポリオレフィン骨格のものと同様である。
【0073】
表現「官能性ポリオレフィン」は、その鎖内に、通常はエポキシド、マレイン酸及び無水マレイン酸などの1種類以上の反応性の化学官能基を有するポリオレフィンを意味すると理解される。この表現は、この群に属しているポリオレフィン又はこの群に属していないポリオレフィンを識別可能な当業者にはよく知られている。EPDMはこの定義には対応していない。
【0074】
有利には、官能化ポリオレフィンは無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレンである。
【0075】
任意選択的な機能性補助剤に関しては、それは組成物中に、組成物の30重量%の最大含有量で存在することができ、もっぱら後述する化合物又はこれらの化合物の混合物から選択されよう。
【0076】
加工を容易にし、かつ組成物及び構造体の製造方法の生産性を改善するために、可塑剤を本発明に従った組成物に添加してもよい。例として、本発明に従った組成物の接着性の向上を可能にするパラフィン系、芳香族系又はナフタレン系の鉱物油が挙げられうる。また、可塑剤としては、フタル酸エステル類、アゼライン酸エステル類、アジピン酸エステル類又はリン酸トリクレシルが挙げられうる。
【0077】
同様に、必ずしも必要ではないが、接着性が特に高くなければならない場合には組成物の接着性を改善するために、有利には接着促進剤を加えることができる。接着促進剤は非ポリマー成分である;それは有機物、結晶体、鉱物であってもよく、好ましくは半鉱物半有機物でありうる。これらの中でもとりわけ、有機シラン又はチタン酸エステル(titanates)、例えば、チタン酸モノアルキル、トリクロロシラン及びトリアルコキシシランなどが挙げられうる。例えば反応押出成形を介してなど、当業者に周知の技術により、第1又は第2の共重合体に直接グラフト化させるためにこれらの接着促進剤を提供することも可能である。
【0078】
UV照射は熱可塑性組成物のわずかな黄変を生じうることから、このような現象を避けなければならない幾つかの用途では、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン及び他のヒンダードアミンなどのUV安定剤及びUV吸収剤(これらの化合物は一般に抗UV剤と称される)を添加することができる。これらの化合物は、例えば、ベンゾフェノン又はベンゾトリアゾールをベースとしていてもよい。これらは、組成物の総重量の10重量%未満、好ましくは0.1%から5%の量で加えることができる。
【0079】
リン含有化合物(ホスホナイト及び/又はホスファイト)及びヒンダードフェノール化合物など、組成物の製造の間の黄変を抑えるために酸化防止剤を加えることもできる。これらの酸化防止剤は、組成物の総重量の10重量%未満、好ましくは0.05%から5%の量で加えることができる。
【0080】
同様に、幾つかの用途においては、難燃剤もまた本発明に従った組成物に加えることができる。これらの薬剤は、ハロゲン化されていても、されていなくてもよい。ハロゲン化剤の中でもとりわけ、臭素化物が挙げられうる。非ハロゲン化剤としては、例えばポリリン酸アンモニウム、ホスフィン酸アルミニウム及びホスホン酸アルミニウムなどのリン系添加剤、メラミンシアヌレート、ペンタエリスリトール、ゼオライト及びこれらの薬剤の混合物の使用が挙げられうる。組成物は、組成物の総重量に対して3%から30%の範囲の割合で、これらの薬剤を含んでもよい。着色化合物又は光沢化合物を添加することも可能であろう。
【0081】
例えば、二酸化チタン又は酸化亜鉛などの顔料は、組成物の総重量に対して、一般に5%から15%の範囲の割合で組成物に加えることができる。
【0082】
タルク、ガラス繊維、炭素繊維、モンモリロナイト、カーボンナノチューブ又はカーボンブラックなどの補強充填剤を、組成物の総重量に対して2.5%から30%の範囲内の割合で組成物に加えることも可能である。
【0083】
本発明に従った組成物の調製:
上述したように、本発明に従ったポリアミドグラフト化ポリオレフィンを得るために、ポリオレフィン骨格にポリアミドグラフトをグラフティングする技法は、特に、上述した文献である仏国特許発明第2912150号、同第2918150号又は欧州特許出願公開第2196489号から当業者に周知である。
【0084】
ポリプロピレン、機能性補助剤(上述の添加剤)及び官能化ポリオレフィンは、当業者に十分に知られており、それらの調製もまた知られている。これらの化合物の混合は、完全に慣行となっており、当業者にとって明確な説明は必要とされない。
【0085】
よって、架橋剤が添加される場合であっても、本発明の範囲を逸脱しない。例として、有機過酸化物又はイソシアネートが挙げられうる。この架橋は、周知の照射技術によって行われてもよい。この架橋は、当業者に周知の数多くの方法のうちの1つ、特に、熱活性開始剤、例えば過酸化物及びアゾ化合物、又はベンゾフェノン等の光開始剤の使用によって、アミノシラン、エポキシシラン、又は例えばビニルトリエトキシシラン又はビニルトリメトキシシランなどのビニルシランのような反応性官能基を有するシランの、光線、紫外線、電子ビーム及びX線を含む照射技術によって、及び湿式法による架橋によって、行うことができる。上述の「Handbook of Polymer Foams and Technology」という題名の手引書の198頁〜204頁に、当業者が参照しうる追加的な教示が与えられる。
【0086】
試験配合物の形成に用いられる材料
Lotader(登録商標) 4210:Arkema社製造のエチレン、アクリル酸エチル(6.5重量%)及び無水マレイン酸(3.6重量%)のターポリマー。9g/10分のMFI(190℃、2.16kg下、ISO 1133に従って測定)を有する。
【0087】
PPH 4060:Total社から販売されるポリプロピレンホモポリマー。3g/10分のMFI(230℃、2.16kg下、ISO 1133に従って測定)を有する。
【0088】
PPC 3650:Total社から販売される異相系のポリプロピレンコポリマー。1.3g/10分のMFI(230℃、2.16kg下、ISO 1133に従って測定)を有する。
【0089】
Orevac(登録商標) CA100:Arkemaから販売される無水マレイン酸官能性ポリプロピレン。10g/10分のMFI(190℃、0.325kg下、ISO 1133に従って測定)を有する。
【0090】
タルクHAR T77:Imerys社から販売される。
【0091】
ガラス繊維CSX 3J−451 WD:日東紡績株式会社(Nittobo)から販売される。
【0092】
二酸化チタンKronos 2073:Kronos社から販売される。
【0093】
TPV PP/架橋性EPDM:2g/10分のMFI(230℃、2.16kg下)を有する35重量%のポリプロピレンと、65重量%のフェノール樹脂をベースとする系を有する架橋性EPDMとからなり、150phrの脂肪族オイルを含む熱可塑性エラストマー。EPDMの実際の組成は、仏国特許発明第2918380号明細書の実施例1の組成に記載されている。
【0094】
HDPE M40053S:4.0g/10分のMFI(190℃、2.16kg下、ISO 1133に従って測定)を有する、Sabic社販売の高密度ポリエチレン。
【0095】
ポリアミドプレポリマー:本出願人によって製造される、2500g/モルのMnを有する、モノNHポリアミド(polyamid)−6 プレポリマー。このプレポリマーはラクタム−6から出発する重縮合によって合成された。ラウリルアミンは、鎖端に単一の1級アミン官能性を有するように、鎖制限剤として用いられる。プレポリマーの数平均モル質量は2500g/モルである。
【0096】
試験配合物及びフィルムの製造
配合物は、Leistritz(登録商標)型の共回転二軸押出機(L/D=35)を使用して「混練」することによって調製された。押出機のバレル要素は240℃でのフラットプロファイルに従って加熱され;回転速度は、15kg/h(毎時キログラム)のスループットで300rpm(回転数/分)である。
【0097】
組成物の350μm(マイクロメートル)の単一層フィルムは、小実験室規模の押出成形ライン上でのキャストフィルム押出成形によって生成された。押出機は、1cm(センチメートル)幅のフラットダイ及び0.5mm(ミリメートル)の開口部を備えたHaake1型の異方向回転二軸押出機である。バレル要素を230℃のフラットプロファイルに従って加熱し、スクリューの回転速度を60rpm(回転数/分)とする。
【0098】
【0099】
【0100】
フィルム上で行われた試験
これら3種類の試験は、主に組成物1から16について、上述の技術的な問題の考えられる解決法を試験するために行われたが、本発明に従った組成物が、さらに他の特に有利な特性も示すことは注目すべきことである。
【0101】
これら3つの試験は、一方では、メガパスカル(MPa)で表される23℃におけるヤング率の測定、常温における水に対する透過性の測定、及び、最後に、クリープ特性の決定からなる。
【0102】
「ヤング率」の試験
組成物の試験片のヤング率を測定するため、規格NF EN ISO 527に従って引張試験を行う。
【0103】
水に対する不浸透性の試験
この試験は、ASTM規格E96−80に匹敵する、1999年のISO規格1663(例:NF T 56−105)に従い、水蒸気を使用して行われる。この方法は、検討対象の試験片における相対湿度含量を与える。
【0104】
クリープ試験
クリープ強度は、フィルムから切り取られたIFC型の試験片から決定される。2bar、すなわち0.2MPaの応力に応じた重量を試験片の一端に印加する。応力は、組成物に応じて、150℃、160℃又は170℃の温度で15分間、印加される。残留歪みは常温に戻してから測定される。
【0105】
【0106】
組成物の各々について行われた3つの試験の結果は、一方では、後者では決して予見できないけれども、本発明に従った組成物の技術的利点を明確に示し、他方では、この組成物の好ましい範囲(重量%)を示している。