(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556160
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)誘導性のβ細胞損傷及び耐糖能障害に拮抗作用を示す新規化合物
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20190729BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20190729BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20190729BHJP
A01K 67/027 20060101ALI20190729BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20190729BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20190729BHJP
A61K 31/155 20060101ALI20190729BHJP
A61K 31/426 20060101ALI20190729BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20190729BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20190729BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20190729BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20190729BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20190729BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20190729BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20190729BHJP
【FI】
C07K16/18ZNA
A61K39/395 N
A61P3/10
A01K67/027
C12N15/12
A61K31/352
A61K31/155
A61K31/426
A61K31/4439
A61K38/00
A61K45/00
A61P43/00 105
A61K49/00
A61K51/10 200
!C12P21/08
【請求項の数】20
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-556885(P2016-556885)
(86)(22)【出願日】2015年3月12日
(65)【公表番号】特表2017-510571(P2017-510571A)
(43)【公表日】2017年4月13日
(86)【国際出願番号】EP2015055238
(87)【国際公開番号】WO2015136055
(87)【国際公開日】20150917
【審査請求日】2016年12月16日
(31)【優先権主張番号】14159194.1
(32)【優先日】2014年3月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511029420
【氏名又は名称】ニューリミューン ホールディング エイジー
(73)【特許権者】
【識別番号】507324681
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・チューリッヒ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF ZURICH
(74)【代理人】
【識別番号】100114362
【弁理士】
【氏名又は名称】萩野 幹治
(72)【発明者】
【氏名】グリム,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ハイツ,ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルト,ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルト,トビアス
【審査官】
藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0071401(US,A1)
【文献】
特表2008−517885(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/170977(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/041069(WO,A1)
【文献】
特表2010−502938(JP,A)
【文献】
国際公開第2003/092619(WO,A1)
【文献】
特表平10−507084(JP,A)
【文献】
Scientific Reports (2014.3.4) Vol.4, No.4267, pp.1-9
【文献】
Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1996) Vol.93, pp.7283-7288
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00
A01K 67/027
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト膵島アミロイドポリペプチド(hIAPP)抗体又はそのhIAPP結合フラグメントであって、その可変領域に、以下の6つの相補性決定領域(CDR)、即ち
VHCDR1:配列番号2の位置26−37,
VHCDR2:配列番号2の位置52−67,
VHCDR3:配列番号2の位置100−110,
VKCDR1:配列番号4の位置24−38,
VKCDR2:配列番号4の位置54−60,及び
VKCDR3:配列番号4の位置93−101;
又は、配列番号2に示したVH領域アミノ酸配列及び配列番号4に示したVL領域アミノ酸配列、
を含む、ヒト膵島アミロイドポリペプチド(hIAPP)抗体又はそのhIAPP結合フラグメント、を有効成分として含み、それが必要な対象において、hIAPP誘導性の耐糖能障害を回復させること、及び血中グルコースレベルを正常にすること、に使用するための医薬組成物。
【請求項2】
体重増加を正常にするために使用される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記対象が2型糖尿病(T2D)に罹患しているか、或いは、2型糖尿病(T2D)を発症する危険性を有する、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
ヒト由来モノクローナル抗体、或いはその合成誘導体又は生物工学誘導体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記抗体又はそのhIAPP結合フラグメントが、前記VH領域及び前記VL領域に対して、及び/又は、前記6つのCDRに対して異種であるポリペプチド配列を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記抗体又はそのhIAPP結合フラグメントが、前記VH領域及び前記VL領域に対して、及び/又は、前記6つのCDRに対して異種である定常ドメイン又はその一部を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記定常ドメインがヒト定常ドメインである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記定常ドメインがIgGタイプである、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記定常ドメインがIgG1クラス又はIgG1アイソタイプである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記抗体又はそのhIAPP結合フラグメントが、(a)酵素、放射性同位体、蛍光団及び重金属からなる群から選択される検出可能な標識によって検出可能に標識され、又は、(b)薬物に結合させられる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記抗体又はそのhIAPP結合フラグメントが、その可変領域に、配列番号6に示したVL領域アミノ酸配列を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記抗体又はそのhIAPP結合フラグメントが、その可変領域に、配列番号2に示したVH領域アミノ酸配列を含む、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
請求項11又は12において定義される抗体又はそのhIAPP結合フラグメント。
【請求項14】
さらに、薬学的に許容される担体を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
皮下(s.c.)、筋肉内(i.m.)又は静脈内(i.v.)に、並びに/或いは、週に1回、2週間に1回又は月に1回の頻度で投与されるように設計される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
膵臓組織における膵島アミロイド原線維、プロト原線維及び/又はアミロイド斑の発症の前に投与されるように設計される、請求項1〜12、14又は15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記組成物がさらに、IAPPアミロイド形成を防止することができる、又は低下させることができる薬剤を含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記薬剤が、フラボノイド、IAPPアナログ、メトホルミン及びチアゾリジンジオン系薬剤(例えば、ロシグリタゾンなど)からなる群から選択される、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記抗体又はそのhIAPP結合フラグメントが、遺伝子組換えhIAPPマウスモデルでは10mg/kgの投薬量で、及び/又は、遺伝子組換えhIAPPラットモデルでは3mg/kgの投薬量で投与されたときに効果を示し、
前記遺伝子組換えhIAPPマウスモデルが、ヒト膵島アミロイドポリペプチド(hIAPP)をコードするDNA配列を含む少なくとも1つの導入遺伝子を発現することができること、及び
(i)1月齢及び2月齢のそれぞれにおける、耐糖能障害及び/又は高血糖症によって特徴づけられる糖尿病の自然発症;並びに/或いは
(ii)2月齢での細胞外のアミロイド沈着物の出現、及び/又は4月齢での広範囲のアミロイドーシス関連のβ細胞喪失、
によって特徴づけられるとともに、
FVB/NxDBA/2J背景を有し、且つヘミ接合体であり、及び、前記DNA配列がラットインスリンIIプロモーターに機能的に連結され、
前記遺伝子組換えhIAPPラットモデルが、ラットインスリンIIプロモーターによって駆動されるhIAPPの膵島β細胞での発現を有するヘミ接合型である、
請求項1〜12、14〜18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
試験化合物(例えば、請求項1〜19のいずれか一項において定義される抗体又はそのhIAPP結合フラグメント)が、β細胞をhIAPP誘導性の細胞損傷及び/又は膵島アミロイドの毒性影響から保護することができるかどうか、並びに/或いは、hIAPP誘導性の耐糖能障害を回復することができるかどうかを決定するために使用するための、遺伝子組換えhIAPPマウスモデルであって、
ヒト膵島アミロイドポリペプチド(hIAPP)をコードするDNA配列を含む少なくとも1つの導入遺伝子を発現することができること、及び
(i)1月齢及び2月齢のそれぞれにおける、耐糖能障害及び/又は高血糖症によって特徴づけられる糖尿病の自然発症;並びに/或いは
(ii)2月齢での細胞外のアミロイド沈着物の出現、及び/又は4月齢での広範囲のアミロイドーシス関連のβ細胞喪失、
によって特徴づけられるとともに、
FVB/NxDBA/2J背景を有し、且つヘミ接合体であり、及び、前記DNA配列がラットインスリンIIプロモーターに機能的に連結される、遺伝子組換えhIAPPマウスモデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般には、アミリンとしてもまた知られているヒト膵島アミロイドポリペプチド(hIAPP)に特異的に結合する分子に関連し、具体的には、2型糖尿病(T2D)に典型的に伴う症状である、膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)誘導性のβ細胞損傷及び耐糖能障害に拮抗作用を示すヒト抗体、並びに、そのフラグメント、誘導体及び変異体(バリアント)に関連する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質の蓄積、修飾及び凝集は、広く知られている神経変性疾患(例えば、ハンチントン病、アルツハイマー病(AD)及びパーキンソン病(PD)など)を含む数多くの代謝疾患の病理学的側面である(非特許文献1)。病理学的なタンパク質凝集はまた、様々な代謝疾患(例えば、2型糖尿病(T2D)など)において、また、1型糖尿病(T1D)の個体への臨床的な膵島移植後の膵島拒絶にも関与する。タンパク質の誤った折り畳み及び凝集はアミロイド沈着物の発生を引き起こしており、これらの疾患における細胞毒性に直接的に関連づけられるようである。膵島アミロイドポリペプチド(IAPP又はアミリン)は、膵臓においてβ細胞によってインスリンと一緒に分泌される生理学的なペプチドであり、原線維性の凝集物をT2D患者の膵島(これはランゲルハンス島とも呼ばれる)において形成し、また、疾患の発症において役割を果たすことが示唆されている(非特許文献2)。さらには、前述の通り、IAPP凝集物が、単離された膵島を1型糖尿病(T1D)の患者に移植したときの膵島において見出されている。
【0003】
ヒトIAPP(hIAPP)は、2位及び7位のシステイン残基の間におけるジスルフィド架橋と、アミド化されたC末端とを有する、37個のアミノ酸からなるペプチドホルモンである。膵島は65%〜80%がβ細胞から構成され、β細胞により、血中グルコースレベル及び細胞代謝を調節するために不可欠なインスリン及びIAPPが産生され、分泌される。IAPPは、プレプロホルモンのプレプロIAPP、すなわち、膵臓のβ細胞において産生される89アミノ酸の前駆体からプロセシングされる。
【0004】
プレプロIAPPは、翻訳後、プロ膵島アミロイドポリペプチド(67アミノ酸のペプチド)に速やかに切断され、このプロ膵島アミロイドポリペプチドはさらなるタンパク質分解及び翻訳後修飾を受けて、hIAPPとなる。増大したインスリン産生が、増大したhIAPPレベルを引き起こすように、hIAPPの発現がインスリンと一緒に調節されている。hIAPPは膵臓のβ細胞から血液循環に放出され、胃内容物排出及び満腹の制御を介して、血糖調節にインスリンとの相乗作用で関与する。
【0005】
2型糖尿病(T2D)では、遺伝的決定因子及び環境的要因により、インスリン抵抗性の発症が引き起こされ、それに続いて、正常な血中グルコースレベルを維持するために、β細胞量並びにインスリン分泌及びアミリン(hIAPP)分泌における代償的な増大が生じる。その結果として生じる高濃度のアミリンが、毒性のヒト膵島アミロイドポリペプチド(hIAPP)オリゴマーの形成、及び、T2D患者の90%超に見出されるhIAPP原線維の沈着に有利に働いている。hIAPPの沈着はインスリン産生β細胞における減少と相関しており、また、1型糖尿病の個体に移植された膵島におけるβ細胞の喪失のための役割を果たすことも提案されている。
【0006】
2型糖尿病は糖尿病の最も一般的な形態であり、全症例の約90%を占める。この疾患には、世界中で2億人を超える人々が冒されており、その結果、糖尿病による100万人を超える死者が毎年生じている。300,000人を超える患者がスイスでは罹患する。糖尿病の有病率が、人口増加、加齢、都市化、並びに、肥満及び運動不足の増大する蔓延のために先進国及び開発途上国の両方で劇的に増大し続けている。250億USドルという世界的な2型糖尿病市場が、2009年と2016年との間における6.4%の年複利成長率により2016年までに350億USドルに達すると予測されている。現在の処置には、食事管理、及び、インスリン感受性を改善するか膵臓を刺激してインスリンを放出させるかのどちらかで血中グルコースレベルを低下させるように種々の経路に作用する薬理学的介入が含まれる。しかしながら、これらの利用可能な処置のどれもがhIAPPの凝集及び膵臓β細胞の喪失を阻止することができない。2型糖尿病のための新しい処置戦略には、グルカゴン−ペプチド1(GLP−1)のアナログ、及び、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)(すなわち、内因性GLP−1を不活性化する酵素)の阻害剤が含まれる。これらの戦略は、GLP−1の強力なインスリン分泌促進効果、及び、ベータ細胞の増殖を高めるその効果に基づいている。
【0007】
より最近の有望な戦略には、IL−1β経路を標的とする抗炎症性薬物又は抗体の開発が含まれる(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9)。重要な注目すべきことに、最近の研究では、hIAPPが、自然免疫系の活性化を引き起こすインフラマソーム−IL−1β系を特異的に誘導することが示されており(非特許文献10;非特許文献11)、したがって、このことは、hIAPP凝集を標的とする治療戦略を裏づけている。
【0008】
従来、hIAPP及び/又はプロIAPPを標的とする能動的及び受動的な免疫療法アプローチで、例えば、特許文献1などにおいて教示される免疫療法アプローチは、hIAPP原線維及び膵島アミロイドの排除に基づいており、hIAPP原線維及び膵島アミロイドの排除を必要とする。しかしながら、今までのところ、免疫療法が首尾よく用いられ得る実験的証拠は何らもたらされていない。それとは反対に、インビボ研究では、ワクチン接種により、hIAPP誘導性のβ細胞アポトーシスをhIAPPトランスジェニックマウスにおいて妨げない抗毒性IAPPオリゴマー抗体を誘導することができたことが示された;非特許文献12を参照のこと。
【0009】
上記をまとめると、hIAPPにより誘導される様々な障害、例えば、β細胞損傷、耐糖能障害及び異常な体重増加などに対処する新規な治療剤及び治療戦略が緊急に必要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際特許出願公開WO03/092619
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Taylor他、Science 296(2005)、1991〜1995
【非特許文献2】Westermark他(2011)、Physiol.Rev.91(3):795〜826)
【非特許文献3】Donath他(2008)、Nat.Clin.Pract.Endocrinol.Metab.4(5):240〜241
【非特許文献4】Ehes他(2009)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 106(33):13998〜14003
【非特許文献5】Owyang他(2010)、Endocrinology 151(6):2515〜2527
【非特許文献6】Dinarello他(2010)、Curr.Opin.Endocrinol.Diabetes Obes.17(4):314〜321
【非特許文献7】Boni−Schnetzler他(2011)、J.Clin.Endocrinol.Metab.93(10):4065〜4074
【非特許文献8】Boni−Schnetzler他(2012)、Br.J.Clin.Pharmacol.
【非特許文献9】Cavelti−Weder他(2012)、Diabetes Care
【非特許文献10】Masters他(2010)、Nat.Immunol.11(10):897〜904
【非特許文献11】Mandrup−Poulsen他(2010)、Nat.Immunol.11(10):881〜883)
【非特許文献12】Lin他、Diabetes 56(2007)、1324〜1332
【発明の概要】
【0012】
本発明は、概して、β細胞をhIAPP誘導性の細胞損傷及び/又は膵島アミロイドの毒性影響から保護すること、並びに/或いは、hIAPP誘導性の耐糖能障害を、その回復を必要とする対象において回復させること、に使用するためのヒト膵島アミロイドポリペプチド(hIAPP)結合分子であって、好ましくは、ヒト糖尿病対象の膵臓組織における凝集hIAPPと選択的に結合するhIAPP結合分子に関する。
【0013】
本発明はとりわけ、hIAPP結合分子(例えば、インビトロで形成されるIAPP凝集物及び糖尿病患者から得られる膵臓組織におけるインビボIAPP凝集物に対する抗IAPP抗体など)の結合レベルがインビボ活性に関して予測的でなく、したがって、治療的有用性を示すという驚くべき知見に基づいている。したがって、インビトロアッセイに基づいた候補化合物の予備的選択では、生物学的に活性な薬剤が、インビトロでのそれらの劣った成績のために最初に選別されることがあるかもしれない。したがって、動物試験は手間及び時間がかかるので、生化学的なインビトロアッセイ及び細胞に基づいたインビトロアッセイが、薬物候補物を選択するための第一選択肢である。このことは、糖尿病のための遺伝子組換えIAPP動物モデルについては特に当てはまる。これは、例えば、これまでに利用可能である様々なマウスモデルは糖尿病を自然発症しないか、又は、6月齢〜10月齢までに高血糖症及び耐糖能障害を伴って糖尿病を自然発症するだけであるかのどちらかであるからである。加えて、多くの場合にはほんの最小限のアミロイド沈着が、糖尿病を自然発症するマウスにおいて認められるか、又は、12月齢〜24月齢でのみ認められる。
【0014】
本発明によれば、候補化合物の信頼できるスクリーニングシステムとして有用であり、このため、試験を合理的な時間で可能にし、したがって、工業的規模及び製薬規模でそれぞれ受け入れやすくする新規なIAPP遺伝子組換え動物モデルが提供される(実施例を参照のこと)。具体的には、本発明の動物モデルは、耐糖能障害及び高血糖症が1月齢及び2月齢のそれぞれにおいて既に存在することによって特徴づけられる糖尿病を自然発症し(
図4)、そして、関連したβ細胞喪失を伴って、細胞外のアミロイド沈着物が2月齢で現れ、かつ、広範囲のアミロイドーシスが4月齢で認められる。したがって、糖尿病に罹患するヒト対象において認められる臨床上の関連した医学的徴候を含めて、本発明の遺伝子組換え動物における病態生理学の発達が比較的短期間であるために、この新しい動物モデルは、抗糖尿病剤のスクリーニング及び有効性確認のために特に適している。当然のことながら、本発明の動物モデルは、IAPP結合分子をアッセイするために特に適しているが、同様に他の候補化合物も試験することができ、例えば、IAPP/インスリンにより標的化される経路の下流側又は上流側で作用し、並びに/或いは、当該動物におけるIAPPの異種発現によって誘導される医学的徴候に拮抗できるか、又は改善することができる薬剤を試験することができる。
【0015】
実施例で示されるように、本発明によれば、ヒト糖尿病対象の膵臓組織における凝集IAPPと選択的に結合するhIAPP結合分子(
図2及び
図3)は、β細胞をhIAPP誘導性の細胞損傷及び膵島アミロイドの毒性影響から保護することにおいて効果的であること(
図7)、hIAPP誘導性の耐糖能障害を回復させることにおいて効果的であること(
図8)、インスリン分泌を増大させることにおいて効果的であること(
図7)、空腹時グルコースを低下させることにおいて効果的であること(
図8)、並びに、体重増加を正常にすることにおいて効果的であること(
図8)が証明され得る。したがって、本発明のhIAPP結合分子は、上述の医学的徴候の1つ又は複数が一般には伴う2型糖尿病(T2D)及び/又は高血圧に罹患する対象、或いは、そのような2型糖尿病(T2D)及び/又は高血圧を発症する危険性がある対象を処置することにおいて特に有用である。
【0016】
この点において、本発明に従って行われた実験からの予備的結果は、β細胞の保護が膵島アミロイド沈着物の除去とは無関係に達成されることを示唆する。したがって、本発明のIAPP結合分子のIAPP拮抗効果は実際には、IAPP特異的な抗糖尿病剤の治療的有用性のためには必要であると先行技術では考えられているIAPP原線維の排除及び/又はIAPP原線維形成の防止によるものではないかもしれない。これらの考察は、2型糖尿病を処置するための医薬品(エキセナチド;BYETTA(登録商標))として承認されるエキセンディン−4について報告される考察に対応する。なお、エキセンディン−4が承認されたのは、エキセンディン−4は膵島アミロイド沈着を増大させるが、生じたβ細胞毒性をヒト膵島アミロイドポリペプチド遺伝子組換えマウスの膵島において相殺するからである(Aston−Mourney他、Diabetologia、54(2011)、1756〜1765を参照のこと)。したがって、本発明の1つの実施形態において、hIAPP結合分子によって媒介されるβ細胞保護は、対象における膵島アミロイドーシスに関係しない。
【0017】
本発明に従って行われたさらなる実験では、本発明のhIAPP結合分子、すなわち、主題抗体NI−203.26C11が、凝集した様々な構造物とそれらの発達の早期段階で結合することができることが示され得る(実施例5を参照のこと)。具体的には、主題抗体NI−203.26C11は、原線維性の特徴を単に示すにすぎない初期の構造物、すなわち、集合して、不溶性線維を形成し、しかし、原線維性の形態学のものではなく、それにもかかわらず、本発明のhIAPP結合分子により検出することができるタンパク質に結合する(
図9を参照のこと)。従って、1つの実施形態において、本発明のhIAPP結合分子は、原線維性IAPP構造物の早期検出が可能であり、また、原線維性IAPP構造物の早期検出のために使用される。好ましい実施形態において、IAPP結合分子により、hIAPPの最初の組み立てが行われるときのhIAPP凝集物が検出される。
【0018】
早期の原線維性構造物と結合する主題抗体の性質を考慮すると、1つの実施形態において、本発明のhIAPP結合分子は、hIAPP誘導性の細胞損傷、膵島アミロイドの毒性影響の処置、保護及び/又は改善において、並びに/或いは、原線維発達の早期段階におけるhIAPP誘導性の耐糖能障害を回復させることにおいて使用される。したがって、本発明によるhIAPP結合分子は好ましくは、ヒト糖尿病対象の膵臓組織における早期の原線維性の凝集hIAPPと選択的に結合する。
【0019】
耐糖能障害は、空腹時血糖が参照基準範囲内にある一方で、食後期が、血中グルコースレベルにおける急速かつ大きい増大によって特徴づけられる。この異常に高いグルコース(血糖)レベルが糖尿病の顕著な兆候であり、これは高血糖症についての特徴である。実施例6及び実施例7において明らかにされ、また、
図8及び
図10に示されるように、主題抗hIAPP抗体のIAPP遺伝子組換え動物への投与は血中グルコースレベルを正常にし、したがって、高血糖症の防止又は処置において有用であり得る。したがって、本発明の1つの実施形態において、hIAPP結合分子が、血中グルコースレベルを正常にすることに使用される。さらには、同様に実施例6において明らかにされ、また、
図8に示されるように、主題抗hIAPP抗体の投与は、動物モデルにおいてhIAPPと関連する体重増加の正常化を引き起こした。したがって、1つの実施形態において、hIAPP結合分子は、典型的にはhIAPPと関連するが、体重を正常にするために使用される。
【0020】
原理的には、ヒト糖尿病対象の膵臓組織における凝集hIAPPと選択的に結合する任意のhIAPP結合分子及び任意のhIAPP相互作用分子はそれぞれ、本発明に従って使用され得る。本発明におけるhIAPP結合分子という用語はまた、この分子の任意の前駆体及び個々の成分をも包含することが意図される。例えば、言及されるhIAPP結合分子が、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質(例えば、抗体、IAPP誘導体又はペプチド阻害剤など)であるならば、それぞれの用語にはまた、そのような分子をコードするポリヌクレオチド、当該分子のコード配列を含むベクター(特に発現ベクター)、同様にまた、このポリヌクレオチド又はベクターを含む宿主細胞が含まれる。候補化合物の糖尿病性膵臓組織特異的なhIAPP結合を、
図2及び
図3に示されるように、また、実施例1に従って明らかにすることができ、そして、この候補化合物の有効性確認を、実施例1及び実施例3において例示されるような本発明の新しい動物モデルを用いて行うことができる。しかしながら、小さい有機分子の場合、膵臓組織の表面/内部におけるhIAPPとのそれらの相互作用を明らかにすることは面倒である場合がある。代わりに、当業者は、この技術分野で知られている生化学的な結合アッセイ及び親和性標識化技術に頼る場合がある;例えば、Lomenick他、Identification of direct protein targets of small molecules(小分子の直接的なタンパク質標的の特定)、ACS Chem.Biol.(2011)、34〜46、及び、Jiang他、Structure−based discovery of fiber−binding compounds that reduce the cytotoxicity of amyloid beta(アミロイドベータの細胞毒性を低下させる線維結合分子の構造に基づく発見)、eLife 2013、2:e00857(オンライン発表)を参照のこと。陽性の結果の場合、その後、その化合物が有効性確認のために本発明の動物モデルに適用される場合がある。
【0021】
「結合分子」は、本発明に関連して使用される場合、主に抗体及びそのフラグメントに関連し、しかし、2型糖尿病(T2D)と診断される患者の膵臓における病理学的なhIAPP凝集物を選択的かつ用量依存的に認識し、実施例において例示されるNI−203.26C11抗体の機能的性質を示す、他の非抗体分子を示す場合もあり、そのような他の非抗体分子には、ホルモン、受容体、リガンド、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子、シャペロン(例えば、熱ショックタンパク質(HSP)など)、同様にまた、細胞−細胞接着分子(例えば、カドヘリンスーパーファミリー、インテグリンスーパーファミリー、C型レクチンスーパーファミリー及び免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーなど)、及び、特に、非免疫グロブリンタンパク質の有望なクラスである設計されたアンキリン反復タンパク質(DARPin)の中で、標的結合について抗体を上回る利点をもたらすことができるものが含まれるが、これらに限定されない(総説については、例えば、Stumpp及びAmstutz、Curr.Opin.Drug Discov.Devel.、10(2007)、153〜159、及び、それに引用される参考文献を参照のこと)。したがって、明瞭性だけのために、また、本発明の範囲を限定することなく、下記の実施形態のほとんどが、治療剤を開発するための好ましい結合分子を代表する抗体及び抗体様分子に関して議論される。本発明の抗体、或いはその抗原結合フラグメント、免疫特異性フラグメント、変異体又は誘導体には、ポリクローナル性、モノクローナル性、多特異性、マウス型、ヒト型、ヒト化型、霊長類化型、マウス化型又はキメラ型の抗体、組換えの完全な抗体(免疫グロブリン)、具体的にはモノクローナルな組換えの完全な抗体(免疫グロブリン)、単鎖抗体、エピトープ結合フラグメント(例えば、Fab、Fab’及びF(ab’)2)、Fd、Fv、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、VLドメイン又はVHドメインのどちらかを含むフラグメント、Fab発現ライブラリーによって作製されるフラグメント、並びに、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書中に開示される抗体に対する抗Id抗体を含む)、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、二価抗体−構築物、合成抗体、交差クローン化(cross−cloned)抗体、完全ヒト型抗体、ヒト化型抗体、異種又はキメラなヒト−マウス抗体、ナノボディー及びジアボディーなどが含まれるが、これらに限定されない。様々なscFv分子がこの技術分野では知られており、例えば、米国特許第5,892,019号に記載される。本発明の免疫グロブリン分子又は抗体分子は免疫グロブリン分子のどのようなタイプのものも可能であり(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、又は、どのようなクラスのものも可能であり(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)、又は、どのようなサブクラスのものも可能である。
【0022】
本発明の好ましい実施形態において、hIAPP結合分子は、組織化学的染色を受けやすく、それにより、患者から得られる膵臓組織で、IAPP凝集物を含有する膵臓組織に対する結合の容易な特定を可能にするという点で免疫学的に活性である。したがって、本発明の特に好ましい実施形態において、hIAPP結合分子は抗hIAPP抗体又はそのhIAPP結合フラグメントである。最も好ましくは、抗体はヒト由来抗体である。本発明のhIAPP結合分子は、特定及び特徴づけがインビトロで行われ、クローン化及び組換え産生が、国際特許出願公開WO2008/081008に詳しく記載されるようなNeurimmune’s RTM(商標)技術によって行われてもよい。加えて、又は、代替において、hIAPP結合分子の存在及び親和性についてのスクリーニングプロセスは、この場合には膵島上のアミロイド沈着物について同様に行われる高感度な組織アミロイド斑免疫反応性(TAPIR)アッセイ(例えば、国際特許出願公開WO2004/095031(その開示内容が参照によって本明細書中に組み込まれる)に記載されるアッセイなど)の工程を含んでもよい。
【0023】
好ましくは、本発明に従って使用されるためのヒト抗hIAPP抗体が、健康なヒト対象のプールから、又は、T2Dを発症する危険性が高いが、抗体単離時には好ましくはT2Dの徴候を何ら示さず、しかし、アミロイド沈着を示し、かつ、IAPP特異的な免疫応答を示す肥満患者及び他の患者のプールから単離されている。そのようなヒト由来抗体はまた、そのような抗体が、実際に被験体によって最初に発現されたものであり、例えば、ヒト免疫グロブリン発現ファージライブラリーによって生じるインビトロ選択された構築物、又は、ヒト免疫グロブリンレパートリーの一部を発現する遺伝子組換え動物において生じる異種抗体ではないことを強調するために(なお、それらはこれまで、ヒト様抗体を提供するために試みるための最も一般的な方法を表していた)、「ヒト自己抗体」と呼ばれる場合がある。他方で、本発明のヒト由来抗体は、プロテインAカラム又は親和性カラムによって精製される場合があるヒト血清抗体そのものから区別するために、合成(的)、組換え(型)及び/又は生物工学(的)であると表現される場合がある。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、hIAPP結合分子は、本出願人の同時係属中の国際特許出願公開WO2014/041069に開示されるヒト由来のモノクローナル抗hIAPP抗体に由来する。なお、国際特許出願公開WO2014/041069の開示内容は、抗hIAPP抗体、それらのCDR及び可変領域のアミノ酸配列、抗hIAPP抗体の組換え産生、同様にまた、抗hIAPP抗体及び同等な抗体の免疫学的かつ生物学的な活性を試験するために有用であるアッセイを記載する実施例に関しては特に、参照によって本明細書中に組み込まれる。加えて、別途言及される場合を除き、本明細書中で使用されるような用語、例えば、本明細書中における「IAPP」及び「CDR」などには、国際出願公開WO2014/041069(上掲)において提供されるような定義が与えられる。
【0025】
添付の実施例において示されるように、本発明は、ヒト由来の抗hIAPP抗体NI−203.26C11により例示される。抗体の結合特異性はほとんど、可変重鎖領域及び可変軽鎖領域を含むその結合ドメインによって、具体的には、それに含有される相補性決定領域(CDR)の1つ又は複数によって決定される。この技術分野では知られているように、フレームワーク領域及び/又はCDRにおける変異は実質的な影響を結合特異性に与えない場合があり、それどころか、親和性を高めることまでできるかもしれない。例えば、当業者は、結合親和性が、アミノ酸置換をCDR内において、又は、Kabatによって定義されるようなCDRと部分的に重なる超可変ループ(Chothia及びLesk、J.Mol.Biol.、196(1987)、901〜917)の内部において行うことによって強化される場合があることを理解している;例えば、Riechmann他、Nature、332(1988)、323〜327を参照のこと。したがって、本発明はまた、元の抗体のCDRの1つ又は複数が1つ又は複数のアミノ酸置換を含む抗体(好ましくは2つ以下のアミノ酸置換を含む抗体)に関する。
【0026】
したがって、1つの実施形態において、本発明の上記hIAPP結合分子のいずれか1つは、その結合ドメインに、
(a)
図1に示される重鎖(VH)領域アミノ酸配列及び/又は軽鎖可変(VL)領域アミノ酸配列(配列番号1、配列番号3及び配列番号5)の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR);
(b)
図1に示されるVH領域及び/又はVL領域のアミノ酸配列;
(c)(a)のアミノ酸配列のいずれか1つの部分的変化から生じるアミノ酸配列からなる少なくとも1つのCDR;並びに/或いは
(d)(b)のアミノ酸配列のいずれか1つの部分的変化から生じるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域
を含む。
【0027】
抗体NI−203.26C11は、上述の国際特許出願公開WO2014/041069に開示される抗hIAPP抗体の1つである。それに記載されるヒト組換え抗体のIAPP結合エピトープのペップスキャン分析により、aa2−CNTATCA−8(配列番号7)を含むヒトIAPP内の配列が、抗体NI−203.26C11によって認識される特有な線状エピトープとして明らかにされた。抗体NI−203.26C11のエピトープ精密マッピングに関する最近の実験データでは、NI−203.26C11がhIAPPとN末端で結合し、その際、重要な役割が、2番目、3番目、4番目及び7番目のアミノ酸について有することが明らかにされた。具体的には、例えば、2番目のアミノ酸位置の欠失又は変異は抗体NI−203.26C11のIAPP結合を実質的に無効にするので、2番目及び7番目のアミノ酸の存在が、結合のために必要であるようである。したがって、抗体NI−203.26C11と等価な抗IAPP抗体を決定するために、一般的な完了アッセイ(completion assay)のほかに、抗原結合アッセイが使用される場合があり、特にELISAが、所与の抗IAPP抗体が結合優先、すなわち、上記必須のアミノ酸位置を有する2−CNTATCA−8(配列番号7)に対する結合特異性、を実質的に示すかどうかを明らかにするために、使用される場合がある。
【0028】
好ましくは、本発明のhIAPP結合分子は、その免疫グロブリン鎖の一方又は両方において、
図1に示されるような可変領域のうちの2つ又は3つすべてのCDRを含む。
【0029】
本発明の好ましい実施形態において、hIAPP結合分子、例えば、抗hIAPP抗体などは、表Iに示される抗IAPP抗体のV
H領域又はV
L領域のポリヌクレオチド配列を有する核酸を含むポリヌクレオチドによって、或いは、そのような核酸から本質的になるポリヌクレオチドによって、或いは、そのような核酸からなるポリヌクレオチドによってコードされる。これに関連して、当業者は、軽鎖及び/又は重鎖の可変ドメインを少なくともコードするポリヌクレオチドは両方の免疫グロブリン鎖又は一方の免疫グロブリン鎖のみの可変ドメインをコードすることがあることを容易に理解するであろう。したがって、1つの実施形態において、ポリヌクレオチドは、表Iに示されるような抗IAPP抗体のV
H領域及びV
L領域のポリヌクレオチド配列を有する核酸を含み、或いは、そのような核酸から本質的になり、或いは、そのような核酸からなる。
【0030】
【表1】
表I:抗IAPP抗体のV
H領域及びV
L領域のヌクレオチド配列
【0031】
代替において、本発明に従って使用されるためのhIAPP結合分子は、膵臓組織におけるhIAPP凝集物に対する結合について、
図1に示されようなVH領域及びVL領域を有する抗体と競合する。そのようなhIAPP結合分子は、特に治療的適用のための抗体(例えば、マウス抗体、ヒト化抗体、異種抗体、キメラなヒト−マウス抗体又は好ましくはヒト由来抗体)である場合がある。しかしながら、診断使用及び研究のためには一般に、マウス抗体が同様に好適である。抗体の抗原結合フラグメントは、例えば、単鎖Fvフラグメント(scFv)、F(ab’)フラグメント、F(ab)フラグメント及びF(ab’)2フラグメントである。いくつかの適用のために、抗体の可変領域のみが必要とされ、この場合、抗体の可変領域は、当該抗体を好適な試薬により処理し、その結果、Fab’部分、Fab部分又はF(ab”)
2部分を生じさせるようにすることによって得ることができる。そのようなフラグメントは、例えば、免疫グロブリンの免疫特異性部分を検出用試薬(例えば、放射性同位体など)に連結することを伴う免疫診断手順における使用のために十分である。
【0032】
例示的なIAPP結合分子、すなわち、抗hIAPP抗体はまた、アルツハイマー病のヒト脳における病理学的なAβ沈着物を認識しないことが示され得る。したがって、1つの実施形態において、本発明のhIAPP結合分子は、アルツハイマー病のヒト脳における病理学的なAβ沈着物を認識しない。
【0033】
本発明の1つの実施形態において、hIAPP結合分子は、hIAPP結合ドメイン(例えば、VH領域及び/又はVL領域)に対して、及び/又は、少なくとも1つのCDRに対して異種であるポリペプチド配列を含む。異種のポリペプチド配列には、異なる特異性の結合ドメイン、ペプチドリンカー、ペプチドタグ、N末端及びC末端のペプチド部分、並びにFcドメインなどが単独又は組合せで含まれるが、これらに限定されない。当然のことながら、加えて、又は、代替において、本発明のIAPP結合分子は、化学的又は生化学的な手段及び方法によりインビトロで付加されることがある非ペプチド部分(例えば、ポリエチレングリコールなど)を含有してもよい。
【0034】
本発明に従って使用されるためのhIAPP結合分子又はそれらの対応する免疫グロブリン鎖はさらに、この技術分野で知られている従来の技術を使用して改変することができ、例えば、この技術分野で知られているアミノ酸欠失、アミノ酸挿入、アミノ酸置換、アミノ酸付加及び/又は組換え、並びに/或いはいずれかの他の改変を単独又は組合せでのどちらかで使用することによって改変することができる。そのような改変を免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列の根底にあるDNA配列に導入するための様々な方法が当業者には広く知られている;例えば、Sambrook他、Molecular Cloning A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、N.Y.(1989)、及び、Ausubel、Current Protocols in Molecular Biology、Green Publishing Associates and Wiley Interscience、N.Y.(1994)を参照のこと。本発明の抗体の修飾には、アセチル化、ヒドロキシル化、メチル化、アミド化、及び、炭水化物部分又は脂質部分及び補因子などの結合又は除去を含む側鎖修飾、骨格修飾、並びに、N末端修飾及びC末端修飾を含む、1つ又は複数の構成アミノ酸における化学的及び/又は酵素的な誘導体化が含まれる。同様に、本発明は、上記抗体又はその何らかのフラグメントを異種分子(例えば、カルボキシル末端での免疫刺激リガンドなど)に融合されたアミノ末端において含むキメラなタンパク質の製造を包含する;対応する技術的詳細については、例えば、国際特許出願公開WO00/30680を参照のこと。
【0035】
好ましい実施形態において、本発明のhIAPP結合分子は、結合ドメイン(例えば、VH領域及び/又はVL領域)に対して、及び/又は、少なくとも1つのCDRに対して異種である定常ドメイン又はその一部を含み、この場合、好ましくは、定常ドメインはヒト定常ドメインである。好ましくは、定常ドメインはIgGタイプのものであり、好ましくはIgG1クラス又はIgG1アイソタイプである;例えば、Kipriyanov及びLe Gall、Molecular Biotechnology 26(2004)、39〜60;Chan及びCarter、Nature Reviews Immunology 10(2010)、301〜316;Vincent及びZurini、Biotechnol J.7(2012)、1444〜1450を参照のこと。
【0036】
したがって、本発明は、どのようなhIAPP結合分子であれ、当該分子を、β細胞をhIAPP誘導性の細胞損傷及び/又は膵島アミロイドの毒性影響から保護することにおいて、並びに/或いは、hIAPP誘導性の耐糖能障害を、それを必要とする対象において回復させることにおいて有用にする機能的特徴及び生物学的特徴を有する本明細書中上記で記載されるような、また、定義されるようなhIAPP結合分子に関連する。
【0037】
本発明のさらなる実施形態において、本発明に従って使用されるためのhIAPP結合分子は検出可能に標識されるか、又は、他の場合には機能的部分(moiety)に連結される。様々な標識化剤が本発明のhIAPP結合分子に対して直接的又は間接的のどちらでもカップリングされることが可能である。間接的なカップリングの一例は、スペーサー部分の使用によるものである。さらには、本発明のhIAPP結合分子はさらなるドメインを含むことができ、この場合、前記ドメインは共有結合又は非共有結合によって連結されている。連結は、この技術分野で知られている方法及び上記方法に従った遺伝子融合に基づくことが可能であり、又は、例えば、化学的架橋によって、例えば、国際特許出願公開WO94/04686に記載されるような化学的架橋によって行うことができる。本発明のhIAPP結合分子を含む融合タンパク質に存在するさらなるドメインは好ましくは、柔軟なリンカーによって、好都合にはポリペプチドリンカーによって連結される場合があり、この場合、前記ポリペプチドリンカーは、前記さらなるドメインのC末端と本発明のhIAPP結合分子のN末端との間の距離、又は、逆に、本発明のhIAPP結合分子のC末端と前記さらなるドメインのN末端との間の距離に広がるために十分である長さのペプチド結合した複数の親水性アミノ酸を含む。治療的又は診断的に活性な薬剤が様々な手段によって本発明のhIAPP結合分子にカップリングされることが可能である。これには、例えば、治療的又は診断的に活性な薬剤に共有結合法(例えば、ペプチド連結など)によってカップリングされる本発明の抗hIAPP抗体の可変領域を含む単鎖の融合タンパク質が含まれる。さらなる例には、下記の限定されない例示的な列挙における分子を含めて、さらなる分子に共有結合又は非共有結合によりカップリングされる抗原結合フラグメントを少なくとも含む分子が含まれる。Traunecker(Int.J.Cancer Surp.SuDP 7(1992)、51〜52)は、CD3に対するFv領域が可溶性CD4又は他のリガンド(例えば、OVCA及びIL−7など)にカップリングされる二重特異性試薬ヤヌシン(janusin)を記載する。同様に、本発明の抗体の可変領域はFv分子の中に構築され、代替リガンド(例えば、引用された論文において例示されるリガンドなど)にカップリングされることが可能である。Higins(J.Infect.Dis.166(1992)、198〜202)は、GP120のV3領域における特異的配列に向けられる抗体に架橋されるOKT3から構成されるヘテロコンジュゲート抗体を記載した。そのようなヘテロコンジュゲート抗体はまた、本発明の方法の抗IAPP抗体に含有される可変領域を少なくとも使用して構築することができる。特異的抗体のさらなる例には、Fanger、Cancer Treat.Res.68(1993)、181〜194、及び、Fanger、Crit.Rev.Immunol.12(1992)、101〜124によって記載される抗体が含まれる。従来の抗体を含む免疫毒素である様々なコンジュゲートがこの技術分野において幅広く記載されている。毒素が従来のカップリング技術によって抗体にカップリングされる場合があり、又は、タンパク質毒素部分を含有する免疫毒素を融合タンパク質として作製することができる。本発明の抗体は、そのような免疫毒素を得るための対応する方法で使用することができる。そのような免疫毒素を例示するものが、Byers、Seminars Cell.Biol.2(1991)、59〜70、及び、Fanger、Immunol.Today 12(1991)、51〜54によって記載される免疫毒素である。
【0038】
上記の融合タンパク質はさらに、プロテイナーゼのための切断可能なリンカー又は切断部位を含む場合がある。これらのスペーサー部分は同様に、不溶性又は可溶性のどちらでも可能であり(Diener他、Science 231(1986)、148)、抗hIAPP抗体からの薬物放出を標的部位において可能にするために選択することができる。免疫療法のために本発明の抗体にカップリングすることができる治療剤の例として、薬物、放射性同位体、レクチン及び毒素が挙げられる。本発明の抗体及び抗原にコンジュゲート化することができる薬物には、マイトマイシンC、ダウノルビシン及びビンブラスチンなどの薬物として古典的に言及される化合物が含まれる。放射性同位体とコンジュゲート化された本発明の抗体又は抗原を、例えば、免疫療法のために使用する際には、ある特定の同位体が、白血球分布、同様にまた、安定性及び放射のような要因に依存して、他の同位体よりも好ましい場合がある。自己免疫応答に依存して、いくつかの放射体が他の放射体よりも好ましい場合がある。一般には、α粒子放射性及びβ粒子放射性の放射性同位体が免疫療法において好まれる。好ましい放射体は、短距離高エネルギー放射体であり、例えば、
212Biなどである。治療目的のために本発明の抗体又は抗原に結合させることができる放射性同位体の例が、
125I、
131I、
90Y、
67Cu、
212Bi、
212At、
211Pb、
47Sc、
109Pd及び
188Reである。最も好ましくは、放射性標識は
64Cuである。エクスビボ及びインビボの治療プロトコルと同様に、本発明の抗体又は抗原にカップリングすることができる他の様々な治療剤が当業者によって知られており、又は、容易に確認されることが可能である。適切な場合には、当業者は、タンパク質性物質そのものの代わりに、本発明のhIAPP結合分子をコードするポリヌクレオチドを使用してもよい。
【0039】
1つの実施形態において、本明細書中に開示されるhIAPP結合分子は、(a)検出可能に標識され(この場合、好ましくは、検出可能な標識が、酵素、放射性同位体、蛍光団、核磁性及び重金属からなる群から選択される)、又は、(b)薬物に結合させられる。
【0040】
製薬使用のために、本発明によるhIAPP結合分子は、薬学的に許容され得る担体を必要に応じてさらに含む医薬組成物に配合される。好ましくは、hIAPP結合分子は、皮下(s.c.)、筋肉内(i.m.)又は静脈内(i.v.)に、並びに/或いは、週に1回、2週間に1回又は月に1回の頻度で投与されるように設計される。1つの実施形態において、hIAPP結合分子は、膵臓組織における、膵島アミロイド原線維、プトロ原線維及び/又はアミロイド斑の発症の前又は後において投与されるように設計される。実施例2及び
図4において示され得るように、耐糖能障害が、2型糖尿病のトランスジェニックマウスモデル(hIAPPトランスジェニックマウス)における膵島アミロイドの沈着に先立つ。したがって、耐糖能障害に罹患し、かつ/又は、健康な対象と比較して、IAPPの異常な発現を示す対象が、膵島におけるIAPPのアミロイド斑形成又は原線維形成が存在しない状態で処置される場合があり、したがって、これにより、糖尿病のより有害な医学的徴候の発症が防止される場合がある。
【0041】
本発明のhIAPP結合分子の1つの実施形態において、医薬組成物はさらに、IAPPアミロイド形成を防止することができる、又は低下させることができる薬剤を含み、この場合、好ましくは、前記薬剤は、フラボノイド、IAPPアナログ、メトホルミン及びチアゾリジンジオン系薬剤(例えば、ロシグリタゾンなど)からなる群から選択される;例えば、Cao及びRaleigh、Biochemistry 51(2012)、2670〜2683;Noor他、Protein Sci.21(2012)、373〜382;Yan他、PNAS 103(2006)、2046〜2051;並びにHull他、Diabetes 54(2005)、2235〜2244を参照のこと。代替において、本発明のhIAPP結合分子は、共投与されるように、すなわち、そのような薬剤を対象に投与する前に、投与するのと併せて、又は投与した後に付随して共投与されるように設計される場合がある。例えば、糖尿病患者は既に抗糖尿病薬物による処置を受けている場合があり、しかしながら、このような処置は、医学的な徴候及び症状のすべてを治療するために成功していること及び/又は十分であることがそれぞれ判明していなかった。この場合、先行処置は、本発明によるhIAPP結合分子の投与により補われる場合がある。併用療法が疾患の進行の期間中には特に好まれる。本特許出願との関連において、2つ以上の化合物の「共投与」は、2つの化合物が1つの配合物において組み合わされるか否かにかかわらず、又は、2つの化合物が2つの別個の配合物に存在するかどうかにかかわらず、これらの化合物の1つをそれぞれが含有する2つの医薬品の個別投与、同様にまた、同時投与を含めて、これら2つ以上の化合物を24時間以内に患者に投与することとして定義される。2つの化合物の「相乗効果」は、統計学的分析の観点から、これら2つの個々の化合物の効果の和から生じる相加効果よりも大きい効果である。
【0042】
本発明に従って使用されるための所与のhIAPP結合分子が治療的に効果的であり得るか否かが、本発明の動物モデルを使用することによって明らかにされ得るし、また、添付された実施例に開示され得る。好ましくは、hIAPP結合分子は、抗hIAPP IgG抗体に関して、遺伝子組換えhIAPPマウスモデルでは約10mg/kgの投薬量で、及び/又は、遺伝子組換えhIAPPラットモデルでは約3mg/kgの投薬量で投与されたときに効果的である。したがって、hIAPP結合フラグメント(例えば、単鎖抗体など)を使用する場合、又は、小さい有機分子を使用する場合、投薬量は抗体の分子量との関連で調節することができる。
【0043】
典型的な用量が、例えば、0.001μg〜1000μgの範囲(或いはこの範囲における発現又は発現阻害のための核酸)であることが可能である;しかしながら、この例示的な範囲よりも少ない用量又は大きい用量が、とりわけ上述の要因を考慮して想定される。一般には、投薬量は、例えば、約0.0001〜100mg/kg宿主体重の範囲が可能であり、より通常的には0.01〜5mg/kg宿主体重の範囲(例えば、0.02mg/kg宿主体重、0.25mg/kg宿主体重、0.5mg/kg宿主体重、0.75mg/kg宿主体重、1mg/kg宿主体重、2mg/kg宿主体重など)が可能である。例えば、投薬量は、1mg/kg体重又は10mg/kg体重であること、或いは、1〜10mg/kgの範囲内であること、好ましくは少なくとも1mg/kgであることが可能である。上記範囲において中間的である用量もまた、本発明の範囲内であることが意図される。対象には、そのような用量を毎日、隔日、毎週、又は、経験的分析によって決定されるどのような他のスケジュールに従ってでも投与することができる。例示的な処置は、長期間(例えば、少なくとも6ヶ月の長期間)にわたる多数回の投薬での投与を伴う。さらなる例示的な処置計画は、2週間毎に1回、又は、1ヶ月に1回、又は、3ヶ月毎〜6ヶ月毎に1回での投与を伴う。例示的な投薬スケジュールには、連日での1〜10mg/kg又は15mg/kg、1日おきでの30mg/kg、或いは、毎週での60mg/kgが含まれる。一部の方法では、異なる結合特異性を有する2つ以上のモノクローナル抗体が同時に投与され、そのような場合、投与されるそれぞれの抗体の投薬量が、上記の範囲内である。進行を定期的な評価によってモニターすることができる。非経口投与のための調製物には、無菌の水性又は非水性の溶液、懸濁物及びエマルションが含まれる。非水性溶媒の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油など)、及び、注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)が挙げられる。水性担体には、生理食塩水及び緩衝化媒体を含めて、水、アルコール性溶液/水溶液、エマルション又は懸濁物が含まれる。非経口用ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルブドウ糖、ブドウ糖及び塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル又は固定油が含まれる。静脈内用ビヒクルには、流体及び栄養補充液、並びに、電解質補充液(例えば、リンゲルブドウ糖に基づくものなど)などが含まれる。保存剤及び他の添加剤もまた存在する場合がある(例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤及び不活性ガスなど)。
【0044】
「対象」及び「患者」という用語は本明細書中では交換可能に使用され、代謝疾患の処置を必要とする個体を意味する。好ましくは、対象は哺乳動物であり、特に好ましくはヒトである。
【0045】
「処置」及び「処置する」などは、所望される薬理学的及び/又は生理学的な効果を得ることを一般には意味するように本明細書中では使用される。そのような効果は、疾患又はその症状を完全又は部分的に防止するという点では予防的である場合があり、並びに/或いは、疾患及び/又は当該疾患に起因すると考えられる有害影響を部分的又は完全に治す点では治療的である場合がある。本明細書中で使用される場合、「処置する」又は「処置」という用語は治療的処置及び予防的又は防止的な対策の両方を示し、この場合、その目的は、望まれない生理学的変化又は障害(例えば、代謝疾患の発達又は拡大など)を防止すること又は抑制すること(緩和すること)である。有益な臨床結果又は所望される臨床結果には、検出可能又は検出不能であるかに関わりなく、症状の緩和、疾患の程度の減弱、疾患の安定化された(すなわち、悪化しない)状態、疾患進行の遅延又は緩速化、疾患状態の改善又は緩和、及び、寛解(部分的又は全体的を問わず)が含まれるが、これに限定されない。「処置」はまた、処置を受けない場合の予想される生存と比較して、生存を延ばすことを意味することができる。処置を必要としている人々には、状態又は障害を既に有する人々、同様にまた、状態又は障害を有する傾向がある人々、或いは、状態又は障害の発現が防止されなければならない人々が含まれる。
【0046】
医薬組成物として使用されるために、本発明によるhIAPP結合分子は、必要に応じて他の活性な薬剤と組み合わされて、1つ又は複数の不活性な従来の担体及び/又は希釈剤と一緒に組み込まれる場合がある。薬学的に許容され得る担体及び投与経路を、当業者に知られている対応する文献から選ぶことができる。本発明の医薬組成物は、この技術分野では広く知られている方法に従って配合することができる;例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2000)(University of Sciences in Philadelphia、ISBN0−683−306472);Vaccine Protocols、第2版(Robinson他、Humana Press、Totowa、New Jersey、米国、2003);Banga、Therapeutic Peptides and Proteins:Formulation,Processing,and Delivery Systems、第2版(Taylor及びFrancis(2006)、ISBN:0−8493−1630−8)を参照のこと。好適な医薬用担体の様々な例がこの技術分野では広く知られており、これらには、リン酸塩緩衝化生理食塩水、水、エマルション(例えば、油/水エマルションなど)、様々なタイプの湿潤化剤、無菌溶液などが含まれる。そのような担体を含む組成物を、広く知られている従来の方法によって配合することができる。これらの医薬組成物は好適な用量で対象に投与することができる。好適な組成物の投与は種々の方式によって行われてよい。例には、薬学的に許容され得る担体を含有する組成物を、経口方法、鼻腔内方法、直腸方法、局所的方法、腹腔内方法、静脈内方法、筋肉内方法、皮下方法、真皮下方法、経皮的方法、クモ膜下腔内方法及び頭蓋内方法を介して投与することが含まれる。経口投与用の医薬組成物、例えば、単一ドメイン抗体分子(例えば、「ナノボディー(商標)」)などもまた、本発明において想定される。そのような経口配合物は、錠剤、カプセル、粉末、液体又は半固体の形態である場合がある。錠剤は、固体の担体、例えば、ゼラチン又はアジュバントなどを含む場合がある。様々なタイプの投与のために好適である配合物に関するさらなる指針を、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mace Publishing Company、Philadelphia、PA、第17版(1985)及び対応する更新版)において見出すことができる。薬物送達のための様々な方法の簡単な総説については、Langer、Science 249(1990)、1527〜1533を参照のこと。1つの実施形態において、本発明のhIAPP結合分子及び組成物はヒト患者に1日1回、1日おき、週3回、週2回又は週1回で投与され、好ましくは1日1回よりも少なく投与される。
【0047】
上述の通り、さらなる局面において、本発明は、試験化合物が、β細胞をhIAPP誘導性の細胞損傷及び/又は膵島アミロイドの毒性影響から保護することができるかどうか、並びに/或いは、hIAPP誘導性の耐糖能障害を回復させることができるかどうかを決定するために使用する遺伝子組換え非ヒト動物に関連し、ただし、前記動物は、ヒト膵島アミロイドポリペプチド(hIAPP)をコードするDNA配列を含む少なくとも1つの導入遺伝子を発現することができること、及び、
(i)約1月齢及び約2月齢のそれぞれにおける、耐糖能障害及び/又は高血糖症によって特徴づけられる糖尿病の自然発症;並びに/或いは
(ii)約2月齢での細胞外のアミロイド沈着物の出現、及び/又は約4月齢での広範囲のアミロイドーシス関連のβ細胞喪失(実施例4及び
図4を参照のこと)
によって特徴づけられる。
【0048】
好ましくは、試験化合物は、本明細書中上記で定義されるhIAPP結合分子である。
【0049】
実施例において記載されるように、hIAPPをコードするDNA配列が好ましくは、ラットインスリンIIプロモーターに機能的に連結される。さらには、本発明の遺伝子組換え動物は好ましくはヘミ接合体である;例えば、Cho他、Curr Protoc Cell Biol.(2009)、Chapter:unit−19.11;Haruyama他、Curr Protoc Cell Biol.(2009)、Chapter:unit−19.11を参照のこと。
【0050】
これらの実施形態及び他の実施形態が本発明の記載及び実施例によって開示され、また、包含される。本発明に従って用いられるための材料、方法、使用法及び化合物のいずれか1つに関するさらなる文献が、例えば、電子デバイスを使用して、公開されている図書館及びデータベースから検索される場合がある。例えば、公開されているデータベース“Medline”が利用される場合がある(このデータベースは国立バイオテクノロジー情報センター及び/又は国立衛生研究所の国立医学図書館によって提供される)。さらなるデータベース及びウェブアドレス、例えば、欧州バイオインフォマティクス研究所(EBI)(これは欧州分子生物学研究所(EMBL)の一部である)のデータベースなどが当業者には知られており、これらもまた、インターネット検索エンジンを使用して得ることができる。バイオテクノロジーにおける特許情報、並びに、遡及的検索及び現在の認識のために有用な特許情報の関連原典の調査の概略が、Berks、TIBTECH 12(1994)、352〜364に示される。
【0051】
いくつかの文書が本明細書の本文を通して引用される。すべての引用された参考文献(本出願を通して引用されるような文献参照物、発行された特許、公開された特許出願、及び、製造者の仕様書、説明書などを含む)の内容が、本明細書により明示的に、参照によって組み込まれる;しかしながら、どのような文書であれ、引用される文書は実際に本発明に関して先行技術であることを何ら認めるものではない。
【0052】
より完全な理解を、例示のみの目的のために本明細書中に提供され、かつ、本発明の範囲を限定するようには意図されない下記の具体的な実施例及び図を参照することによって得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】ヒトIAPP抗体NI−203.26C11の可変領域(すなわち、重鎖及びカッパ軽鎖)のアミノ酸配列及びヌクレオチド配列。フレームワーク領域(FR)及び相補性決定領域(CDR)が示され、CDRには下線が引かれている。重鎖連結領域(JH)及び軽鎖連結領域(JK)も同様に示される。クローニング戦略に起因して、重鎖及び軽鎖のN末端におけるアミノ酸配列は潜在的にはプライマー誘発変化をFR1に含有する場合があり、しかしながら、このプライマー誘発変化は抗体の生物学的活性に実質的な影響を与えていない。コンセンサスなヒト抗体を提供するために、最初のクローンのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列をデータベースにおける該当するヒト生殖系列可変領域配列とアラインメントし、それらと一致させた;例えば、MRC Centre for Protein Engineering(Cambridge、英国)によって提供されるVbase(http://vbase.mrc−cpe.cam.ac.uk/)を参照のこと。ヒト抗体のアミノ酸配列が示されるが、この場合、N末端のアミノ酸は、コンセンサスな生殖系列配列からのPCRプライマーに起因する逸脱が潜在的には生じていると見なされ、したがって、プライマー誘発変異補正(PIMC)によって置き換えられている。
【
図2】NI−203.26C11抗体は、2型糖尿病(T2D)と診断される患者の膵臓における病理学的なhIAPP凝集物を選択的かつ用量依存的に認識する。健康なコントロールには認められない、T2D患者の膵島における膵島アミロイドのチオフラビンS(ThioS、左側パネル、緑色)染色。NI−203.26C11抗体は、膵島アミロイドが多く含まれるT2D膵島(対象1及び対象2)において染色を示し、しかし、膵島アミロイドを欠く健康なコントロールの膵島(対象3及び対象4)においては染色を示さない。3nM、10nM、30nM(強い染色)及び1nM(弱い染色)での組換えマウスキメラ抗体NI−203.26C11によるアミロイド陽性T2D膵島におけるhIAPP凝集物の検出(NI−203.26C11−ch、褐色)。NI−203.26C11抗体は、健康なコントロール膵臓における生理学的なhIAPPを認識しない。抗IAPP抗体(1:100;抗IAPP)及び二次ロバ抗マウス抗体のみ(抗マウス二次)を陽性コントロール及び陰性コントロールとしてそれぞれ使用した。対比染色を行って、細胞の核を可視化した(i.o.ではかすかな青色、本図ではかすかな染色)。スケールバー:100μm。
【
図3】NI−203.26C11抗体は、T2D患者における病理学的なhIAPP凝集物を選択的に認識する。NI−203.26C11抗体はT2D膵島において染色を示すが、病理学的なhIAPP凝集物を欠く健康なコントロールの膵島においては生理学的なIAPPを認識しない。組換えマウスキメラ抗体NI−203.26C11によるT2D膵島におけるhIAPP凝集物の検出(NI−203.26C11−ch、青色;100nM;上段パネル)。hIAPP凝集物のNI−203.26C11染色が、β細胞を有しない膵島領域に限定される(どの併合図も、赤色でのインスリン染色を有していない)。抗インスリン抗体(1:3)による膵島β細胞上のインスリンの検出(赤色)。抗IAPP抗体(1:100;抗IAPP;下段パネル)は、インスリン染色による共局在化によって示されるように、生理学的なhIAPPをT2D及び健康なコントロールの膵島β細胞において認識する(赤色でのインスリン染色を有する併合図)。スケールバー:50μm。
【
図4】耐糖能障害は2型糖尿病のトランスジェニックマウスモデル(hIAPPトランスジェニックマウス)における膵島アミロイドの沈着に先立つ。(A)膵島アミロイドはhIAPPトランスジェニックマウスにおいて、4週齢ではなく、14週齢で可視化される。野生型マウスは膵島アミロイドを有しない。hIAPPトランスジェニックマウス及び野生型マウスの膵島の代表的な画像で、膵島アミロイド(0.1% ThioS)、インスリン(抗インスリン抗体;1:3;赤色)及びグルカゴン(抗グルカゴン抗体;1:2500;青色)について染色された画像。(B)4週齢及び14週齢のトランスジェニックマウスにおける耐糖能障害。4週齢(上段パネル)及び14週齢(下段パネル)でのhIAPPトランスジェニックマウス及び野生型マウスにおいて行われる経口ブドウ糖負荷試験(oGTT)の期間中における血中グルコースレベル。経口グルコース後の血中グルコースレベルが、4週齢(tg、n=13;wt、n=9)及び14週齢(tg、n=27;wt、n=31)での野生型マウスと比較してhIAPPトランスジェニックマウスにおいてはより高かった。空腹時血中グルコースレベルが4週齢では群間において類似するが、14週齢ではhIAPPトランスジェニックマウスにおいて増大した。wt群と比較した場合、
**p<0.01、及び、
***p<0.001。スケールバー:50μm。
【
図5】NI−203.26C11抗体はhIAPPトランスジェニックマウスにおいてhIAPP凝集物と選択的に結合する。NI−203.26C11は染色を4週齢及び16週齢のhIAPPトランスジェニックマウスの膵島に対して示し(青色染色、左側パネル)、週齢一致の野生型マウスに対しては染色を示さない(青色染色の非存在;右側パネル)。組換えヒト抗体NI−203.26C11によるトラスジェニック膵島上のhIAPP凝集物の検出(NI−203.26C11;青色;100nM)。抗インスリン抗体(1:3)による膵島β細胞上のインスリンの検出(赤色)。スケールバー:50μm。
【
図6】NI−203.26C11抗体は凝集hIAPPをhIAPPトランスジェニックマウスにおいて単回投与の後で標的化する。組換えヒトNI−203.26C11抗体又はアイソタイプコントロール(コントロールIgG)抗体を16週齢のhIAPPトランスジェニックマウス及び野生型マウスに10mg/kg(i.p.)で投与し、抗体結合を、抗ヒト二次抗体を使用して投与後2日で評価した。組換えヒトNI−203.26C11(本図では褐色染色)はトランスジェニック膵島を標的としており、これにより、ThioS陽性アミロイドが示される(本図では緑色染色)が、ThioS陰性の野生型膵島は示されない。コントロールIgGでは染色は何ら認められなかった。対比染色を行って、細胞の核を可視化した(i.o.ではかすかな青色、本図ではかすかな染色)。
【
図7】NI−203.26C11抗体はβ細胞喪失をhIAPPトランスジェニックマウスにおいて防ぐ。(A)β細胞を可視化するために抗インスリン抗体により染色されたマウス膵島の代表的な画像(i.o.では赤色、本図では強い染色)。(B)hIAPPトランスジェニックマウスにおける組換えマウスキメラNI−203.26C11抗体による週1回の処置(tg NI−203.26C11−ch、n=23;10mg/kg i.p.、12週間)は、PBSを受けるhIAPPトランスジェニックマウス(tg PBS、n=28)と比較して、膵臓のインスリンを増大させ(%膵臓領域及び%膵島領域におけるインスリン陽性領域;上段左側パネル及び上段中央パネル)、膵島領域を増大させ(平均膵島領域;上段右側パネル)、インスリン分泌を増大させる(血漿中インスリンレベル;下段左側パネル)。膵島密度及び膵臓質量はNI−203.26C11−ch処置の後で変化していなかった(それぞれ、下段中央パネル及び下段右側パネル)。tg PBS群と比較した場合、
*p<0.05、及び、
**p<0.01。スケールバー:50μm。
【
図8】NI−203.26C11抗体はhIAPPトランスジェニックマウスにおいて空腹時血中グルコースを低下させ、耐糖能を改善し、体重増加を正常にする。組換えマウスキメラNI−203.26C11抗体を週1回、hIAPPトランスジェニックマウスに投与した(tg NI−203.26C11−ch、n=24;10mg/kg i.p.)。PBSをビヒクルとして使用した(tg PBS、n=27)。(A)NI−203.26C11抗体は空腹時血中グルコースをPBS群と比較してhIAPPトランスジェニックマウスにおいて8週間及び12週間の処置の後で有意に低下させる。血中グルコースレベルを一晩の絶食の後で測定した。(B)NI−203.26C11抗体は耐糖能をPBS群と比較してhIAPPトランスジェニックマウスにおいて有意に改善する。10週間の処置の後でhIAPPトランスジェニックマウスにおいて行われる経口ブドウ糖負荷試験(oGTT)の期間中の血中グルコースレベル。(C)体重増分(%)が、PBSが注入される野生型マウス(wt PBS、n=31)と比較した場合、12週間の処置の間、NI−203.26C11処置のhIAPPトランスジェニックマウスにおいて正常化された。PBS処置のもとにあるhIAPPトランスジェニックマウスは、野生型マウスと比較して、損なわれた体重増加を示した。tg NI−203.26C11−chをtg PBSと比較した場合:
*p<0.05、及び、
**p<0.01;tg PBSをwt PBSと比較した場合:# p<0.05、及び、### p<0.001;tg NI−203.26C11−chをwt PBSと比較した場合:§ p<0.05。
【
図9】NI−203.26C11は、主に早期の原線維性のhIAPP凝集物化学種を認識する。(A)古典的なS字形凝集曲線をhIAPP(■)については有するが、凝集を齧歯類IAPP(□;rIAPP)については示さないチオフラビン−T(Thio−T)凝集アッセイ。(B)示された時点でThio−T実験から採取されたサンプル(1:3の希釈系列)のドットブロット分析では、集められたすべてのhIAPPサンプルに対する抗IAPP抗体の非選択的な結合、同様にまた、20分後に採取されたrIAPPに対する抗IAPP抗体の非選択的な結合が明らかにされた。対照的に、NI−203.26C11は、選択的な結合を、hIAPP凝集の成長期(5’)で採取されたhIAPP調製物について示し、その後の時点(10’及び20’)で採取されたhIAPPサンプルに対しては低下した結合を示した。重要なことに、NI−203.26C11は、非凝集hIAPPの画分(0’)については免疫陰性のままであり、rIAPPに対しては反応しなかった。フィルター遅延アッセイ(FRA)において、抗IAPP抗体はSDS抵抗性の原線維性hIAPP化学種をアッセイされたすべての時点で認識し、これに対して、これらのhIAPP化学種に対してNI−203.26C11については反応性を認めることができなかった。(C)Thio−T凝集アッセイから採取されたサンプルの透過電子顕微鏡法(TEM)分析では、多様な形態学的スペクトルが明らかにされた。大きい原線維性凝集物を、凝集前(0’)に採取されたhIAPPについて検出することができず、また、後期段階(20’)で採取されたrIAPPについても検出することができなかった。中間的なhIAPP化学種は、不定形の非原線維性特徴、同様にまた、原線維性特徴の両方を示し(5’)、一方で、平衡期に至る境界(10’)又は平衡期の範囲内(20’)で採取されたサンプルは原線維性の形態学を主に示した。
【
図10】NI−203.26C11抗体は耐糖能を2型糖尿病のトランスジェニックラットモデル(hIAPPトランスジェニックラット)において正常にする。組換えラットキメラNI−203.26C11抗体を週1回、hIAPPトランスジェニックラット(tg NI−203.26C11−r、n=9;3mg/kg i.p.)及び野生型ラット(wt NI−203.26C11−r;n=4;3mg/kg i.p.)に投与した。PBSをhIAPPトランスジェニックラット(tg PBS、n=10)及び野生型ラット(wt PBS、n=5)においてビヒクルとして使用した。(A)同等の血中グルコースレベルを示す、3月齢のhIAPPトランスジェニックラット及び野生型ラットにおける処置前の経口ブドウ糖負荷試験(oGTT)。(B)NI−203.26.C11抗体は、tg PBSラット及びwt PBSラットと比較した場合、血中グルコースレベルを8週間の処置の後で行われたoGTTの期間中、hIAPPトランスジェニックラットにおいて正常にする。NI−203.26C11−r抗体は血中グルコースレベルを野生型ラット(wt NI−203.26C11−r)において影響を与えない。tg NI−203.26C11−rをtg PBSと比較した場合:
**p<0.01。
【発明を実施するための形態】
【0054】
方法
抗体
ヒトIAPP(hIAPP)の凝集型化学種を標的とするヒト由来抗体を、高齢ヒト対象の臨床的に選択された集団に由来するヒトメモリーB細胞レパートリーの全補体のハイスループット分析によって同定した。hIAPP反応性のメモリーB細胞に由来する抗体cDNAを結合特性の決定のために発現させた。ヒトIgGに対するマウス及びラットの抗ヒト抗体応答を中和するのを避けるために、ヒト可変ドメインと、マウス又はラットの定常領域とからなるキメラ抗体をタンパク質工学によって作製した。hIAPP反応性IgGクローンをトランスジェニックマウス及びトランスジェニックラットにおけるインビトロ特徴づけ研究及びインビボ有効性確認研究のためにCHOにおいて組換え産生させた。タンパク質発現を、100mg規模での抗体の産生に備えるために20リットルのウェーブリアクター(wave reactor)にまでスケールアップした。抗体をアフィニティークロマトグラフィーによってエンドトキシンフリーとなるように精製した。
【0055】
マウス
マウスを、The Jackson Laboratory(Bar Harbor、ME)から得た。ラットインスリンIIプロモーターによって駆動されるhIAPPの膵島β細胞での発現を有するヘミ接合型の遺伝子組換えオスマウス(F1)と、FVB/NxDBA/2J背景の野生型オスマウス(F1)とを、hIAPP遺伝子組換えFVB/N(FVB/N−Tg(Ins2−IAPP)RHFSoel/J)のオスをDBA/2Jの野生型メスマウスと交配することによって作製した。遺伝子組換え状態を、hIAPP導入遺伝子に対するオリゴヌクレオチドプライマーを使用するゲノムDNAのPCRによって明らかにした。
【0056】
マウスは代謝表現型の早期発症を示した。すなわち、マウスは、1月齢及び2月齢で既に存在する耐糖能障害及び高血糖症によって特徴づけられる糖尿病を自然発症した。以前に記載されたマウスモデルは、ここに記載されるマウスモデルと比較して、糖尿病を自然発症せず、また、高血糖症及び耐糖能障害を伴う糖尿病を6月齢〜10月齢までに自然発症しなかった。例えば、Couce他、Diabetes 45(1996)、1094〜1101;Soeller他、Diabetes 47(1998)、743〜750;Hull他、Diabetes 52(2)(2003)、372〜379;Hull他、Am J Physiol Endocrinol Metab 289(2005)、703〜709;Butler他、Diabetes 52(2003)、2304〜2314;Hoppener他、Diabetologia 42(4)(1999)、427〜434;及びJanson他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(14)(1996)、7283〜7288を参照のこと。加えて、本発明のマウスモデルは、最小限のアミロイド沈着が糖尿病自然発症マウスにおいて認められた、以前に記載されたマウスモデルとの比較において、2月齢における細胞外アミロイド沈着物の出現及び4月齢で認められる広範囲のアミロイドーシスを、関連したβ細胞喪失を伴って示し、同様にまた、12月齢における細胞外のアミロイド沈着(アミロイド重篤度=1〜5%及びアミロイド保有率=40〜60%)を、関連したβ細胞喪失を伴って示し、かつ、16月齢〜19月齢における細胞外のアミロイド沈着(アミロイド保有率=25〜85%)を、関連したβ細胞喪失を伴って示した;例えば、Hull他、Diabetes 52(2)(2003)、372〜379;Hull他、Am J Physiol Endocrinol Metab 289(2005)、703〜709;Hoppener他、Diabetologia 42(4)(1999)、427〜434を参照のこと。
【0057】
以前のモデル(総説、Matveyenko他(2006)、ILAR J.47(3):225〜233を参照のこと)に対する本マウスモデルの新規な特徴には、下記が含まれる:
1)異なる遺伝的背景:
・本発明者らのマウスモデル:FVB/NxDBA/2J背景のもとでのヘミ接合性のhIAPP遺伝子組換え体。
・以前に記載されたマウスモデル:FVB/N背景のもとでのヘミ接合性のhIAPP遺伝子組換え体(Couce他(1996)、Diabetes 45:1094〜1101)、FVB/N/A
vy/A背景のもとでのヘミ接合性のhIAPP遺伝子組換え体(Soeller他(1998)、Diabetes 47:743〜750)、C57BL/6J背景のもとでのヘミ接合性のhIAPP遺伝子組換え体(Hull他(2005)、Am J Physiol Endocrinol Metab 289:703〜709)、DBA/2J背景のもとでのヘミ接合性のhIAPP遺伝子組換え体(Hull他(2005)、Am J Physiol Endocrinol Metab 289:703〜709)、C57BL/6JxDBA/2J背景のもとでのヘミ接合性のhIAPP遺伝子組換え体(Hull他(2003)、Diabetes 52(2):372〜379;Hull他(2005)、Am J Physiol Endocrinol Metab 289:703〜709)、C57BL/6J/A
vy/A背景のもとでのヘミ接合性のhIAPP遺伝子組換え体(Butler他(2003)、Diabetes 52:2304〜2314)、及び、ob/ob背景のもとでのヘミ接合性のhIAPP遺伝子組換え体(Hoppener他(1999)、Diabetologia 42(4):427〜434)。FVB/N背景のもとでのホモ接合のhIAPP遺伝子組換え体(Janson他(1996)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(14):7283〜7288)。
【0058】
2)早期発症する代謝表現型:
・本発明者らのマウスモデル:マウスは、1月齢及び2月齢で既に存在する耐糖能障害及び高血糖症によって特徴づけられる糖尿病を自然発症する。
・以前に記載されたマウスモデル:
○マウスは糖尿病を自然発症しない:FVB/N背景のもとでのヘミ接合性のhIAPP遺伝子組換え体(Couce他(1996)、Diabetes 45:1094〜1101)、C57BL/6J背景のもとでのヘミ接合性のhIAPP遺伝子組換え体(Hull他(2005)、Am J Physiol Endocrinol Metab 289:703〜709)、及び、DBA/2J背景のもとでのヘミ接合性のhIAPP遺伝子組換え体(Hull他(2005)、Am J Physiol Endocrinol Metab 289:703〜709)。
○マウスは、高血糖症及び耐糖能障害を伴う糖尿病を6月齢〜10月齢までに自然発症する:FVB/N/A
vy/A背景のもとでのヘミ接合性のhIAPP遺伝子組換え体(Soeller他(1998)、Diabetes 47:743〜750)、C57BL/6J/A
vy/A背景のもとでのヘミ接合性のhIAPP遺伝子組換え体(Butler他(2003)、Diabetes 52:2304〜2314)、C57BL/6JxDBA/2J背景のもとでのヘミ接合性のhIAPP遺伝子組換え体(Hull他(2003)、Diabetes 52(2):372〜379;Hull他(2005)、Am J Physiol Endocrinol Metab 289:703〜709)、及び、ob/ob背景のもとでのヘミ接合性のhIAPP遺伝子組換え体(Hoppener他(1999)、Diabetologia 42(4):427〜434)。
【0059】
3)早期発症し、かつ、より顕著な膵島病理:
・本発明者らのマウスモデル:関連するβ細胞喪失を伴って、2月齢での細胞外アミロイド沈着物の出現及び約4月齢で認められる広範囲のアミロイドーシス。
・以前に記載されたマウスモデル:糖尿病を自然発症するマウスにおいて認められる最小限のアミロイド沈着。C57BL/6JxDBA/2J背景のもとでのヘミ接合性のhIAPP遺伝子組換え体(Hull他(2003)、Diabetes 52(2):372〜379;Hull他(2005)、Am J Physiol Endocrinol Metab 289:703〜709)は、関連したβ細胞喪失を伴って、12月齢での細胞外のアミロイド沈着を示した(アミロイド重篤度=1〜5%及びアミロイド保有率=40〜60%)。ob/ob背景のもとでのヘミ接合性のhIAPP遺伝子組換え体(Hoppener他(1999)、Diabetologia 42(4):427〜434)は、関連したβ細胞喪失を伴って、16月齢〜19月齢での細胞外のアミロイド沈着を示した(アミロイド保有率=25〜85%)。
【0060】
マウスを12時間照明のスケジュールで飼育し、マウスには、(総カロリー[kcal]の百分率として)7%の脂肪及び18%のタンパク質からなる通常の固形飼料(KLIBA NAFAG)を与えた。すべてのマウスが食物及び水を自由に摂取した。
【0061】
ラット
ラットインスリンIIプロモーターによって駆動されるhIAPPの膵島β細胞での発現を有するヘミ接合型のトランスジェニックラット(Matveyenko他、Diabetes(2009)、1604〜1615;Butler他、Diabetes(2004)、1509〜1516)、及び、野生型Sprague−Dawleyオスラットを、Charles River Laboratories(ドイツ)から得た。ラットを12時間照明のスケジュールで飼育し、ラットには、通常の固形飼料を与えた。すべてのラットが食物及び水を自由に摂取した。
【0062】
処置
トランスジェニックマウスは、組換えマウスキメラIgG2a抗体NI−203.26C11−chの週1回の投与(10mg/kg体重;i.p.)を4週齢で開始して、研究の継続期間にわたって受けた。ビヒクル処置のトランスジェニックマウス及び野生型マウスには生理食塩水(PBS)を腹腔内投与した。
トランスジェニックラット及び野生型ラットは、組換えラットキメラIgG2b抗体NI−203.26C11−rの週1回の投与(3mg/kg体重;i.p.)を12週齢で開始して、研究の継続期間にわたって受けた。ビヒクル処置のトランスジェニックラット及び野生型ラットには生理食塩水(PBS)を腹腔内投与した。
【0063】
経口ブドウ糖負荷試験、空腹時血中グルコース、血漿中インスリン及び血漿中hIAPP
ブドウ糖負荷試験のために、5時間絶食マウス及び一晩絶食ラットに2g/kgのグルコース溶液を経口投与した。血液サンプルをグルコース注入前、並びに、グルコース注入後10分、30分、60分、120分及び240分においてマウスの尾静脈から集めた。ラット血液をグルコース注入前、並びに、グルコース注入後30分、60分、120分及び240分において舌下静脈からガス麻酔下で集めた。血中グルコースを、グルコメーター(CONTOUR XTセンサー、Bayer)を使用して測定した。空腹時血中グルコースを、一晩絶食の後で集められた血液サンプルから測定した。非絶食時の血漿中のインスリンレベル及びhIAPPレベルを、マウスインスリンの酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キット(Mercodia)及びヒトアミリンの酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キット(Millipore)を使用して求めた。
【0064】
組織学
マウスを屠殺し、膵臓を解剖し、(膵臓質量を算出するために)重量測定し、4%(wt/vol.)リン酸塩緩衝化パラホルムアルデヒドにおいて固定処理し、パラフィンに包埋し、3μmの切片を切り出した。パラフィン包埋されたヒト組織を、University Hospital Basel(UHB、Basel、スイス)から得て、3μmの切片を切り出した。切片を0.1%(wt/vol.)チオフラビンSにより染色して、アミロイド沈着物、ポリクローナルなモルモット抗インスリン抗体(1:3;FLEX;Dako)、マウスモノクローナル抗IAPP抗体(1:100;R10/99;Abcam)、ポリクローナルなウサギ抗グルカゴン抗体及び組換えNI−203.26C11(ヒト又はマウスのキメラ)抗体を可視化した。一次抗体に続いて、スライス物を、TRITCコンジュゲート化ロバ抗モルモット抗体(Jackson ImmunoResearch Europe Ltd.、英国)、Cy5コンジュゲート化ロバ抗マウス抗体又はビオチン化ロバ抗マウス抗体、Cy5コンジュゲート化ヤギ抗ウサギ抗体、Cy5コンジュゲート化ロバ抗ヒト抗体又はビオチン化ロバ抗ヒト抗体とインキュベーションした。ストレプトアビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ反応(Vectastain ABCキット、Vector Lab Inc.、Burlingame、米国)をビオチン化二次抗体と一緒に使用し、切片をヘマトキシリンにより対比染色して、細胞の核を可視化した。画像分析を、Image Jソフトウエアを使用して行った。ThioS陽性アミロイド領域、インスリン陽性領域、平均膵島領域及び膵島密度を定量化するために、膵臓切片あたりのすべての膵島(動物あたり5つの切片)を20倍の倍率で詳しく調べた。ThioS陽性アミロイド領域及びインスリン陽性領域を、事前に設定された閾値を超える蛍光に対応する領域としてコンピュータ計算した。膵島領域を、膵島の輪郭が明瞭に視認される場合には、ThioSチャネルで可視化される膵島の輪郭を手で描くことによって求めた。ThioS染色が膵臓領域及びインスリン領域に関連して表された。インスリン染色が膵臓領域及び膵島領域に関連して表された。
【0065】
統計学的分析
データが平均±SEMとして表される。群の対の間における有意差を、スチューデントt検定を使用して求めた。耐糖能のデータを、反復測定ANOVAを使用して分析した(調べたときの時間及び処置を独立変数とした)。すべての統計学的分析を、Prismソフトウエア(GraphPad Software Inc.、San Diego、CA、米国)を使用して行った。p<0.05を、有意であると見なした。
【0066】
実施例1:ヒト組織における病理学的hIAPPについての抗体の親和性及び選択性の有効性確認
NI−203.26C11抗体が病理学的なhIAPP凝集物を選択的かつ用量依存的に認識するかどうかを検討するために、ヒト組織、すなわち、2型糖尿病(T2D)と診断された患者の膵臓におけるヒト組織であって、ThioS染色時に認められる膵島におけるアミロイド負荷を示すT2Dと診断された患者(対象1及び対象2)のパラフィン包埋された膵臓切片を、NI−203.26C11抗体結合について試験した。コントロールとして、T2Dと診断されない患者(対象3及び対象4)のパラフィン包埋された膵臓切片を使用した(
図2)。
【0067】
ギ酸による前処理の後、切片をNI−203.26C11−ch抗体と種々の濃度で、すなわち、1nM、3nM、10nM及び30nMでインキュベーションし、又は、マウスモノクローナル抗IAPP抗体(1:100;Abcam、Cambridge、英国)及び二次のロバ抗マウス抗体をコントロールとして使用し、その後、ビオチン化されたロバ抗ヒト二次抗体(1:500;Jackson ImmunoResearch、Newmarket、英国)又はビオチン化されたヤギ抗マウス二次抗体(1:500;Jackson ImmunoResearch、Newmarket、英国)とインキュベーションした。抗体シグナルを、Vectastain ABC−APキット(Vector Laboratories、米国)により増幅し、ジアミノベンジジン基質(Thermo Fisher Scientific、米国)により検出した。アビジン/ビオチンブロッキング(Avidin/Biotinブロッキングキット、Vector Laboratories、米国)のとき、膵島β細胞を、ビオチン化されたロバ抗モルモット二次抗体(1:500;Jackson ImmunoResearch Laboratories、米国)にカップリングされるポリクローナルなモルモット抗インスリン抗体(1:5;Dako、米国)を使用して可視化し、抗体シグナルを、Vectastain ABC−APキット(Vector Laboratories、米国)により増幅し、アルカリホスファターゼ基質(Vector Laboratories、米国)により検出した。
【0068】
NI−203.26C11抗体は、用量依存的な染色を、膵島アミロイドが多く含まれるT2D膵島(対象1及び対象2)において示すが、膵島アミロイドを欠く健康なコントロールの膵島(対象3及び対象4)においては示さなかった(
図2)。しかしながら、NI−203.26C11抗体は、
図2(2つの下段列)に示されるように、健康なコントロール膵臓における生理学的なhIAPPを認識しなかった。
【0069】
加えて、NI−203.26C11抗体の選択性を免疫蛍光染色によって検討した(
図3)。組織切片を、NI−203.26C11抗体、マウスモノクローナル抗IAPP抗体(1:100;Abcam、Cambridge、英国)及び二次のロバ抗マウス抗体、並びに、膵島β細胞のためのポリクローナルなモルモット抗インスリン抗体(1:5;Dako、米国)を利用してIAPP及び膵島β細胞に対して標識した。可視化を、蛍光標識された二次抗体を用いて行った。
【0070】
簡単に記載すると、パラフィン包埋切片をNI−203.26C11抗体又はマウスモノクローナル抗IAPP抗体(1:100;Abcam、Cambridge、英国)で標識化し、続いて、Cy5標識された二次のロバ抗マウスIgGによって標識化した。膵島β細胞、すなわち、インスリンの、IAPPとの共局在化を、TRITC標識されたロバ抗モルモット二次抗体(1:500;Jackson ImmunoResearch Laboratories、米国)にカップリングされるポリクローナルなモルモット抗インスリン抗体(1:5;Dako、米国)を使用して求めた。染色されたサンプルを、Tris緩衝化グリセロール(0.1M Tris−HCl(pH9.5)と、50mg/mLの没食子酸n−プロピルが補充されたグリセロールとの3:7の混合物)とともにカバーガラスにより覆った。
【0071】
結果として、組換えマウスキメラ抗体NI−203.26C11(NI−203.26C11−ch;青色;100nM;
図3、上段パネル)により、T2D膵島におけるhIAPP凝集物が検出された。具体的には、染色が、β細胞を有しない膵島領域に限定された(どの併合図も、赤色でのインスリン染色を有していない)。しかしながら、染色が、病理学的なhIAPP凝集物を欠く健康なコントロール膵島における生理学的なIAPPに対しては視認されなかった。
【0072】
実施例2:耐糖能障害が2型糖尿病のトランスジェニックマウスモデルにおけるThioS陽性物の沈着に先立つ
トランスジェニックマウスモデルにおける膵島アミロイドの沈着を試験するために、膵島アミロイドを、hIAPPトランスジェニックマウスにおいて4週齢ではなく、14週齢で、膵島アミロイド(0.1% ThioS)、インスリン(抗インスリン抗体、1:3;赤色)及びグルカゴン(抗グルカゴン抗体;1:2500;青色)について染色されるhIAPPトランスジェニックマウス及び野生型マウスの膵島を利用して上記で記載されるように、免疫蛍光染色を利用して可視化した。
図4を参照のこと。
図4(A)に示されるように、野生型マウスは、トランスジェニックマウスと比較して、膵島アミロイドを欠いていた。
【0073】
加えて、耐糖能をトランスジェニックマウスにおいて測定した。
図4(B)を参照のこと。簡単に記載すると、グルコースを5時間絶食の動物に体重1グラムあたり2mgで腹腔内投与し、その後、動物の血液(末梢血)におけるグルコースレベル(血中グルコース濃度)を、市販の測定装置(Medisafe Reader、Terumo Co.,Ltd.)を使用して240分間にわたって15分毎に求めた。市販の測定装置を利用する測定は比色分析に基づく。測定用チップが準備され、チップ上に、グルコースオキシダーゼ及びペルオキシダーゼが触媒として、また、4−アミノアンチピリン及びN−エチル−N(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジンが発色剤として置かれる。毛管現象により吸収される血液サンプルがこのチップに置かれるとき(この場合には4μl)、その後、血液中のグルコースがグルコースオキシダーゼによって酸化される。その後、チップ上の発色剤が、この時に生じる過酸化水素と、ペルオキシダーゼとによって酸化され、これにより、赤紫色が生じる。血液中のグルコースの量が、この色の濃淡の程度を測定することによって計算される。経口ブドウ糖負荷試験を4週齢(上段パネル)及び14週齢(下段パネル)でのトランスジェニックマウス及び野生型マウスにおいて行った。
図4(B)を参照のこと。結果は、経口グルコース後の血中グルコースレベルが、4週齢(tg、n=13;wt、n=9)及び14週齢(tg、n=27;wt、n=31)での野生型マウスと比較してhIAPPトランスジェニックマウスにおいてはより高かったことを示した。加えて、空腹時血中グルコースレベルが4週齢では群間において類似するが、14週齢ではhIAPPトランスジェニックマウスにおいて増大した。
【0074】
実施例3:hIAPPトランスジェニックマウスにおけるhIAPP凝集物についての抗体の親和性及び選択性の有効性確認
hIAPPトランスジェニックマウスにおけるhIAPP凝集物に対するNI−203.26C11抗体の親和性及び選択性を試験するために、遺伝子組換え体の膵島におけるhIAPP凝集物を検出するための組換えヒト抗体NI−203.26C11(NI−203.26C11;青色;100nM)、及び、膵島β細胞におけるインスリンを検出するための抗インスリン抗体(1:3;赤色)を利用する免疫蛍光分析及び免疫組織化学的分析を行った。
図5を参照のこと。結果は、4週齢及び16週齢のhIAPPトランスジェニックマウスにおける膵島に対するNI−203.26C11染色(青色染色;左側パネル、
図5)を示し、週齢一致の野生型マウスに対しては染色が認められなかった(青色染色の非存在;右側パネル、
図5)。
【0075】
加えて、NI−203.26C11抗体を16週齢のhIAPPトランスジェニックマウス及び野生型マウスに単回投与(10mg/kg(i.p.))で投与し、その結合を、抗ヒト二次抗体を使用して投与後2日で評価した。
図6を参照のこと。
【0076】
組換えヒトNI−203.26C11(褐色染色、
図6)は遺伝子組換え体の膵島を標的とし、これにより、ThioS陽性アミロイドが示される(緑色染色、
図6)が、ThioS陰性の野生型膵島は示されないことが示された。加えて、染色はコントロールIgGにより何ら認められなかった。
【0077】
実施例4:本発明の抗体の投与はβ細胞喪失をhIAPPトランスジェニックマウスにおいて防ぐ
hIAPPトランスジェニックマウスにおけるβ細胞に対するNI−203.26C11の影響を試験するために、膵臓インスリン、膵島領域及びインスリン分泌を、hIAPPトランスジェニックマウスにおいて組換えマウスキメラNI−203.26C11抗体による週1回の処置の後で測定した(tg NI−203.26C11−ch、n=23;10mg/kg i.p.、12週間);
図7を参照のこと。
【0078】
簡単に記載すると、パラフィン包埋切片をポリクローナルなモルモット抗インスリン抗体(1:5;Dako、米国)で標識し、続いて、TRITC標識されたロバ抗モルモット二次抗体(1:500;Jackson ImmunoResearch Laboratories、米国)によって標識した。染色されたサンプルを、Tris緩衝化グリセロール(0.1M Tris−HCl(pH9.5)と、50mg/mLの没食子酸n−プロピルが補充されたグリセロールとの3:7の混合物)とともにカバーガラスにより覆った。膵臓領域及び膵島領域との関連でのインスリン陽性領域、平均膵島領域及び膵臓密度の定量化が方法の節に記載されている。
【0079】
結果は、膵臓のインスリン(%膵臓領域及び%膵島領域におけるインスリン陽性領域;上段左側パネル及び上段中央パネル)、膵島領域(平均膵島領域;上段右側パネル)及びインスリン分泌(血漿中インスリンレベル;下段左側パネル)が、PBSを受けるhIAPPトランスジェニックマウス(tg PBS、n=28)と比較して増大したことを示した。しかしながら、膵島密度及び膵臓質量はNI−203.26C11−ch処置の後で変化していなかった(下段中央パネル及び下段右側パネル、それぞれ;
図7)。
【0080】
実施例5:本発明の抗体は主に早期の原線維性IAPPを認識する
抗体NI−203.26C11がどのhIAPP凝集物化学種に結合するかを検討するために、チオフラビン−T(Thio−T)凝集アッセイを行った。簡単に記載すると、合成hIAPPの自発的凝集を、アミロイド原線維形成をアミロイド特異的色素チオフラビン−T(Thio−T)の蛍光の増大によりモニターすることによって評価した。凍結乾燥された合成hIAPPペプチド(Bachem、スイス)を純DMSOにおいて再構築し、Thio−T溶液(20mM Tris−HCl(pH8.5)における20μM Thio−T)と混合して、20μMの最終ペプチド濃度にした。0.22μmのフィルター(Millipore)でろ過した後、凝集溶液を蛍光用石英キュベットに直ちに移し、凝集を、489nmでの蛍光放射波長(456nmでの励起)をRTで1分毎に測定するCary Eclipse蛍光分光光度計(Agilent)で撹拌下において記録した。アッセイは、
図9Aに示されるように、古典的なS字形凝集曲線をhIAPPについて示し、齧歯類IAPP(rIAPP)については示さなかった。
【0081】
加えて、ドットブロット分析を、Thio−T実験からのサンプルを利用して行った。ドットブロット分析を下記のように行った。凝集アッセイからのhIAPP調製物を連続希釈し、PBS−T(PBSにおける0.1%のTween−20)で事前に平衡化されたニトロセルロースメンブラン(0.1μmの細孔サイズ)でろ過した。ウエルをPBS−Tで洗浄し、サンプルを加えた。完全なろ過の後、メンブランを3回洗浄した。続いて、メンブランをRTで15分間にわたって手短に風乾し、ブロッキング緩衝液(PBSにおける3%のBSA、0.1%のTween−20)においてRTで1時間インキュベーションし、その後、マウスキメラNI−203.26C11抗体(ブロッキング緩衝液における5μg/ml)とRTで1時間インキュベーションした。コントロール抗体として、ニワトリ抗IAPP抗体(1:1000;P10997、Agrisera)を使用した。洗浄後、メンブランをHRPコンジュゲート化抗マウスIgG二次抗体及びHRPコンジュゲート化抗ニワトリIgG二次抗体(1:10000の希釈;Jackson ImmunoResearch Laboratories)とRTで1時間インキュベーションした。HRP基質(ECL)の転換を、ImageQuant LAS4000での検出(GE Healthcare)を使用して分析した。
図9Bに示されるように、hIAPP凝集の早期段階におけるhIAPP調製物についての選択的結合が示され得る一方で、低下した結合が成長の後期段階で認められた。しかしながら、抗体NI−203.26C11は非凝集hIAPP画分(0’)については免疫陰性のままであり、また、rIAPPに対しては反応しなかった。
【0082】
さらには、フィルター遅延アッセイ(FRA)を、2%のSDSに混合される凝集アッセイからのhIAPP調製物を使用して行った。その後、サンプルを酢酸セルロースメンブランでろ過し、メンブランをブロッキング緩衝液(PBSにおける3%のミルク、0.1%のTween−20)とRTで1時間ブロッキング処理した。SDS耐性hIAPP集合物の検出をドットブロット分析について記載されるように行った。FRAは、抗IAPP抗体はSDS抵抗性の原線維性hIAPP化学種を評価されたすべての時点で認識したが、これらのhIAPP化学種に対して抗体NI−203.26C11については反応性が認められ得ないことを示した。例えば、
図9Bを参照のこと。
【0083】
hIAPP集合物の形態学を透過電子顕微鏡法(TEM)分析によって評価した。簡単に記載すると、サンプルをグロー放電による炭素被覆の銅グリッドに吸着させ、過剰なサンプルを、ろ紙で拭き取ることによって除いた。グリッドを2%(w/v)酢酸ウラニルにより60秒間染色し、過剰な溶液を、ddH20で洗浄することによって除いた。風乾後、グリッドを、100kVの加速電圧を用いるPhilip社のCM100透過型電子顕微鏡により画像化した。
図9Cに示されるように、多様な形態学的スペクトルがTEMにより評価できた。具体的には、凝集前の時点を示す0分の時点では、大きい原線維性凝集物が存在しない。5分後では、無定形の非原線維性の特徴が原線維性の特徴と同様に、認められた。原線維性の形態が、その後の時点で、すなわち、10分及び20分で採取されたサンプルにおいて認められた。
【0084】
実施例6:本発明の抗体の投与は糖尿病に伴う症状を防止する
NI−203.26C11抗体の投与が糖尿病に関連する症状を改善し得るかどうかを試験するために、組換えマウスキメラNI−203.26C11抗体をhIAPPトランスジェニックマウス(tg NI−203.26C11−ch、n=24;10mg/kg i.p.)に週1回で投与し、血中グルコース、耐糖能、体重を、上記で既に記載されたように評価した。
図8を参照のこと。
【0085】
8週間及び12週間の処置の後、NI−203.26C11抗体は、PBS群と比較されるhIAPPトランスジェニックマウスにおける一晩の絶食の後で測定される空腹時血中グルコースの有意な低下を示した。加えて、10週間の処置の後での耐糖能が有意に改善された。
【0086】
さらには、正常になった体重が、NI−203.26C11により処置されるhIAPPトランスジェニックマウスにおいて認められた。すなわち、体重増分(%)が、PBSが注入される野生型マウス(wt PBS、n=31)と比較された場合、12週間の処置の間処置されたNI−203.26C11において正常化された。具体的には、PBS処置のもとにあるhIAPPトランスジェニックマウスは、野生型マウスと比較して、損なわれた体重増大を示した。
図8を参照のこと。
【0087】
したがって、結果として、NI−203.26C11抗体はhIAPPトランスジェニックマウスにおいて空腹時血中グルコースを低下させ、耐糖能を改善し、かつ、体重増加を正常にすることが示された。
【0088】
実施例7:本発明の抗体は耐糖能をhIAPPトランスジェニックラットにおいて正常にする
加えて、トランスジェニックマウスにおいて示される結果をさらに改善するために、2型糖尿病のトランスジェニックラットモデル(hIAPPトランスジェニックラット)におけるNI−203.26C11抗体の影響を評価した。
図10を参照のこと。具体的には、組換えラットキメラNI−203.26C11抗体を週1回、hIAPPトランスジェニックラット(tg NI−203.26C11−r、n=9;3mg/kg i.p.)及び野生型ラット(wt NI−203.26C11−r;n=4;3mg/kg i.p.)に投与した。
【0089】
耐糖能を試験するために、経口ブドウ糖負荷試験(oGTT)を、同等の血中グルコースレベルを示す3月齢のhIAPPトランスジェニックラット及び野生型ラットにおいて処置前に行った。結果として、NI−203.26C11−r抗体は、PBS処置のhIAPPトランスジェニックラット(tg PBS、n=10)及びPBS処置の野生型ラット(wt PBS、n=5)と比較した場合、血中グルコースレベルを8週間の処置の後で行われたoGTTの期間中のhIAPPトランスジェニックラットにおいて正常にした。加えて、NI−203.26C11−r抗体は野生型ラット(wt NI−203.26C11−r)において血中グルコースレベルに影響を与えないことが示された。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]