特許第6556182号(P6556182)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6556182オーバーモールド把持面を有する自動注射器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556182
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】オーバーモールド把持面を有する自動注射器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20190729BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   A61M5/20
   A61M5/32 500
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-83649(P2017-83649)
(22)【出願日】2017年4月20日
(62)【分割の表示】特願2013-550668(P2013-550668)の分割
【原出願日】2012年1月24日
(65)【公開番号】特開2017-176837(P2017-176837A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2017年5月19日
(31)【優先権主張番号】61/435,465
(32)【優先日】2011年1月24日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505086495
【氏名又は名称】アッヴィ バイオテクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジヨセフ・エフ・ジユリアン
(72)【発明者】
【氏名】チユワン・リー
(72)【発明者】
【氏名】アーロン・ビー・アイガー
(72)【発明者】
【氏名】マーク・カース
(72)【発明者】
【氏名】サブリナ・カツツ
(72)【発明者】
【氏名】アダム・カリフ
(72)【発明者】
【氏名】ジエームズ・シー・スタンゴ
【審査官】 小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0171477(US,A1)
【文献】 特開2003−039884(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/066592(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0069845(US,A1)
【文献】 特表2008−500855(JP,A)
【文献】 特開2005−287676(JP,A)
【文献】 特表2009−542334(JP,A)
【文献】 特表2007−505677(JP,A)
【文献】 特表2014−506493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射装置であって、
第一本体部分と、
注射装置の近位部分に注射装置の把持領域を形成し、かつ注射装置の遠位部分に注射装置の注射領域を画定するために、第一本体部分と協調的に係合可能である第二本体部分と、
把持領域の第一長さに沿って配置された第一オーバーモールド把持面と、
第一オーバーモールド把持面とは反対側の把持領域の第二長さに沿って配置された第二オーバーモールド把持面と、
第一オーバーモールド把持面と当接する第一陥凹部分と、
第二オーバーモールド把持面と当接する第二陥凹部分と、
第一本体部分の陥凹面から延在する発射ボタンと、
注射装置内に配置された容器の内容物をユーザが視認できるように、注射領域に設けられた検査窓と、
注射装置の遠位部分に結合可能であり、検査窓の一部を収容するための凹状切り欠き部分を有する取り外し可能キャップと、
取り外し可能キャップの外面に配置された第三オーバーモールド把持面とを含む、注射装置。
【請求項2】
第一オーバーモールド把持面および第二オーバーモールド把持面に落ち込んでいる1つ以上の溝またはディボットをさらに含む、請求項1に記載の注射装置。
【請求項3】
取り外し可能キャップの前面および裏面から外向きに延在する1つ以上の突起をさらに含む、請求項1に記載の注射装置。
【請求項4】
把持領域が先細構造を有する、請求項1に記載の注射装置。
【請求項5】
第一本体部分の前面が平坦である、請求項1に記載の注射装置。
【請求項6】
第二本体部分の前面が平坦である、請求項5に記載の注射装置。
【請求項7】
第一本体部分の側面が凸状である、請求項6に記載の注射装置。
【請求項8】
第二本体部分の側面が凸状である、請求項7に記載の注射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その全内容が参照により本願に完全に組み込まれる、2011年1月24日出願の米国仮出願第61/435,465号明細書の本出願であり、その優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
自動注射装置は、患者の体内に治療薬を投与し、患者が治療薬を自己投与できるようにする、手動シリンジの代替品を提供する。自動注射装置は、たとえば重篤なアレルギー反応の影響に拮抗するためのエピネフリンを投与するために、緊急状態下で薬剤を投与するために使用されてもよい。自動注射装置は、心臓発作時の抗不整脈剤および選択的血栓溶解剤の投与における使用についても、記載されている。たとえば、その全内容が参照により本願に完全に組み込まれる、米国特許第3,910,260号明細書、米国特許第4,004,577号明細書、米国特許第4,689,042号明細書、米国特許第4,755,169号明細書、および米国特許第4,795,433号明細書を参照されたい。たとえば、その全内容が参照により本願に完全に組み込まれる、米国特許第3,491,130号明細書、米国特許第4,261,358号明細書、米国特許第5,085,642号明細書、米国特許第5,092,843号明細書、米国特許第5,102,393号明細書、米国特許第5,267,963号明細書、米国特許第6,149,626号明細書、米国特許第6,270,479号明細書、および米国特許第6,371,939号明細書、ならびに国際公開第2008/005315号にも、様々なタイプの自動注射装置が記載されている。
【0003】
従来、自動注射装置はシリンジを収容しており、動作されると、シリンジに収容された治療薬が患者の体内に注入されるように、シリンジを前方に移動させて針を筐体から突出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3910260号明細書
【特許文献2】米国特許第4004577号明細書
【特許文献3】米国特許第4689042号明細書
【特許文献4】米国特許第4755169号明細書
【特許文献5】米国特許第4795433号明細書
【特許文献6】米国特許第3491130号明細書
【特許文献7】米国特許第4261358号明細書
【特許文献8】米国特許第5085642号明細書
【特許文献9】米国特許第5092843号明細書
【特許文献10】米国特許第5102393号明細書
【特許文献11】米国特許第5267963号明細書
【特許文献12】米国特許第6149626号明細書
【特許文献13】米国特許第6270479号明細書
【特許文献14】米国特許第6371939号明細書
【特許文献15】国際公開第2008/005315号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
例示的実施形態は、自動注射装置、自動注射装置の筐体部品、およびその製造方法を提供する。自動注射装置の例示的筐体は、注入を実行するときのユーザによる自動注射装置の把持および操作を容易にするために、1つ以上の把持面でオーバーモールドされていてもよい。例示的実施形態において、オーバーモールド左把持面は筐体の左側に沿って延在してもよく、オーバーモールド右把持面は左側の反対側の筐体の右側に沿って延在してもよい。
【0006】
例示的実施形態によれば、自動注射装置には、容器を収容するための空洞を包囲する筐体が設けられている。第一オーバーモールド把持面は、筐体の第一外面上で筐体の一部分に沿って長手方向に延在するように設けられている。第二オーバーモールド把持面は、第一外面の反対側の筐体の第二外面上で筐体の一部分に沿って長手方向に延在するように設けられている。
【0007】
例示的実施形態において、筐体上の第一および第二オーバーモールド把持面は第一触感を有する第一材料で形成され、筐体上の非把持面は第二触感を有する第二材料で形成されている。例示的実施形態において、筐体上の第一および第二オーバーモールド把持面は第一硬度を有する第一材料で形成され、筐体上の非把持面はより硬い第二硬度を有する第二材料で形成されている。
【0008】
例示的実施形態において、自動注射装置は、容器と結合可能な注射針を保護的に被覆するための取り外し可能遠位キャップを含み、遠位キャップの外面は、遠位キャップの把持および取り外しを容易にするためのオーバーモールド把持面を含む。例示的実施形態において、自動注射装置は、筐体の開口から突出して、ユーザによる発射ボタンの作動を容易にするためのオーバーモールド接触面を含む、発射ボタンを含む。例示的実施形態において、自動注射装置は、自動注射装置の近位末端を被覆するための近位終端部を含み、近位終端部はオーバーモールド外面を有する、例示的実施形態において、近位終端部の上面は、自動注射装置を把持するためのユーザの手または指の調節を案内して容易にするための、陥凹面を含む。
【0009】
別の例示的実施形態によれば、自動注射装置を組み立てる方法が提供される。方法は、容器を収容するための空洞を包囲する筐体を提供するステップを含む。方法は、筐体上で、筐体の第一外面上の筐体の一部分に沿って長手方向に延在する第一把持面をオーバーモールドするステップを含む。方法はまた、筐体上で、第一外面の反対側の筐体の第二外面上で筐体の一部分に沿って長手方向に延在する、第二把持面をオーバーモールドするステップも含む。
【0010】
例示的実施形態において、筐体上の第一および第二把持面は、第一触感を有する第一材料で形成され、筐体上の非把持面は第二触感を有する第二材料で形成される。例示的実施形態において、筐体上の第一および第二把持面は第一硬度を有する第一材料で形成され、筐体上の非把持面はより硬い第二硬度を有する第二材料で形成される。
【0011】
例示的実施形態において、方法は、遠位キャップの把持および取り外しを容易にするために遠位キャップ面の外面上に把持面をオーバーモールドするステップと、注射針を保護的に被覆するために筐体の遠位末端に遠位キャップを結合するステップと、を含む。例示的実施形態において、方法は、発射ボタンの起動を容易にするために発射ボタン上に把持面をオーバーモールドするステップと、発射ボタンの一部が筐体の開口から突出するように、空洞内に発射ボタンを設けるステップと、を含む。
【0012】
例示的実施形態において、方法は、近位終端部の外面上に把持面をオーバーモールドするステップと、筐体の近位末端に近位終端部を結合するステップと、を含む。例示的実施形態において、近位終端部の上面は、自動注射装置を把持するためにユーザの手または指を案内するための陥凹面を含む。
【0013】
別の例示的実施形態によれば、容器を収容するための空洞を包囲する筐体を含む、自動注射装置が提供される。筐体は、第一オーバーモールド把持領域、第二オーバーモールド把持領域、ならびに第一および第二オーバーモールド把持領域に当接する陥凹領域を含む。
【0014】
例示的実施形態において、陥凹領域は第一および第二オーバーモールド把持領域の間に設けられる。例示的実施形態において、陥凹領域における筐体の幅は、第一オーバーモールド把持領域における筐体の幅、および第二オーバーモールド把持領域における筐体の幅よりも狭い。例示的実施形態において、陥凹領域には把持面がない。
【0015】
例示的実施形態において、第一オーバーモールド把持領域は、把持面でオーバーモールドされている外面を有する筐体の近位終端部によって、形成される。例示的実施形態において、筐体の第二オーバーモールド把持領域は、先細管状構造を有する。
【0016】
例示的実施形態の上記およびその他の目的、態様、特徴、および利点は、以下の添付図面と併せて下記の説明を参照することによって、より明らかとなり、より良く理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】取り外し可能遠位キャップが取り外されて装置の筐体とは別に描かれている、例示的自動注射装置の左側斜視図である。
図2図1の例示的自動注射装置の右側斜視図である。
図3図1および図2の例示的自動注射装置の左側分解斜視図である。
図4図1から図3の例示的自動注射装置の正面図である。
図5図1から図3の例示的自動注射装置の左側面図であり、右側面図は左側面図の鏡像である。
図6A図1から図3の装置の第一本体部分に設けられた例示的左把持面の正面拡大図である。
図6B図6Aの例示的左把持面の左側拡大図である。
図7図1から図3の例示的自動注射装置の例示的取り外し可能遠位キャップの底面図である。
図8図1から図3の例示的自動注射装置の例示的近位終端部の上面図である。
図9】例示的自動注射装置を形成する例示的方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
例示的実施形態は、ユーザによる確実、安全、人間工学的、および快適な取り扱いのために特に設計および構成された筐体を有する、自動注射装置を提供する。例示的実施形態は、ユーザによる確実、安全、人間工学的、および快適な取り扱いのために特に設計および構成された、自動注射装置の筐体部品も提供する。例示的実施形態はまた、自動注射装置の例示的筐体、および例示的筐体を含む自動注射装置を製造する方法も、提供する。
【0019】
一例示的実施形態において、装置がユーザによって容易に、快適に、および確実に把持および操作されるようにするために、例示的自動注射装置筐体の外面に、1つ以上のオーバーモールド把持面が設けられてもよい。例示的オーバーモールド把持面はとりわけ、ユーザの手からの滑りを防止し、それによってユーザおよびその他の近傍にいる人への負傷を回避するために、筐体上に構成および位置決めされる。さらに、例示的オーバーモールド把持面はとりわけ、たとえば年配のユーザ、リウマチ性関節炎を患うユーザなど、特に身体的に弱いユーザによって人間工学的かつ快適に使用できるように、構成および位置決めされる。
【0020】
例示的自動注射装置を用いて行われるユーザテストにおいて、テスト参加者は、装置の両側の例示的オーバーモールド把持面、ならびに装置の比較的大きいサイズおよび人間工学的形状を、評価した。テスト参加者は、例示的装置の取り扱いおよび握りについて高評価を与えたが、その中でオーバーモールド把持面は、オーバーモールド把持面を備えない装置と比較して、取り扱いおよび握りについて、例示的装置構成のテスト参加者による高評価の主な要因であった。いくつかの有用性要因について、コシャンスコアと例示的装置構成との間に著しい正相関関係があったが、これは例示的装置が手の機能障害を有するユーザによる使用に非常に適していることを示している。
【0021】
例示的自動注射装置は、1回投与分のTNFα阻害薬を収容してもよく、これを投与するために使用されてもよい。例示的実施形態において、TNFα阻害薬は、ヒトTNFα抗体、またはその抗原結合部分であってもよい。例示的実施形態において、ヒトTNFα抗体またはその抗原結合部分は、アダリムマブ(HUMIRA(R))またはゴリムマブであってもよい。
【0022】
I.定義
例示的実施形態の理解を促進するために、本章において特定の用語が定義される。
【0023】
本明細書において使用される「自動注射装置」および「自動注射器」という用語は、治療上有効な投与量の治療薬を患者が自己投与できるようにする装置を指すが、この装置は、機構部が係合したときに注射によって患者に治療薬を自動的に送達する機構を含む点で、従来のシリンジとは異なっている。
【0024】
本明細書において使用される「器」および「容器」という用語は、1回投与分の治療薬を保持するために例示的自動注射装置内で使用されてもよい、シリンジまたはカートリッジを指す。
【0025】
本明細書において使用される「シリンジ」および「カートリッジ」という用語は、患者への治療薬投与のために患者またはその他の非医療従事者への装置の流通または販売に先立って1回投与分の治療薬が充填された自動注射装置の、滅菌バレル部分を指す。例示的実施形態において、シリンジのバレル部分の遠位末端は、滅菌皮下注射針と結合されてもよい。例示的実施形態において、カートリッジのバレル部分の遠位末端は、注射針に結合されなくてもよい。つまり、例示的実施形態において、シリンジは、そのバレル部分に結合された事前取り付け注射針を備えるカートリッジであってもよい。
【0026】
シリンジアセンブリを参照して本明細書に記載される例示的実施形態はまた、カートリッジアセンブリを用いて実現されてもよい。同様に、カートリッジアセンブリを参照して本明細書に記載される例示的実施形態はまた、シリンジアセンブリを用いて実現されてもよい。
【0027】
本明細書において使用される「事前充填シリンジ」という用語は、患者への治療薬投与の直前に治療薬が充填されるシリンジ、および患者への治療薬投与より前に治療薬が充填され、この事前充填済み状態で一定期間保管されるシリンジを指す。
【0028】
本明細書において使用される「注射針」および「針」という用語は、患者の体内に1回投与分の治療薬を送達するために患者の体内に挿入される、自動注射装置の針を指す。例示的実施形態において、注射針は、1回投与分の治療薬を保持するシリンジアセンブリまたはカートリッジアセンブリに直接結合されるか、または別途これと接触していてもよい。別の例示的実施形態において、注射針は、たとえばシリンジ針、および/またはシリンジまたはカートリッジアセンブリと注射針との間に流体連通をもたらす伝達機構を通じて、シリンジまたはカートリッジアセンブリと間接的に結合してもよい。
【0029】
本明細書において使用される「注入前状態」という用語は、装置の起動前、すなわち装置に収容された治療薬の送達の開始前の、自動注射装置の状態を指す。
【0030】
本明細書において使用される「注入状態」という用語は、装置に収容された治療薬の送達中の、自動注射装置の1つ以上の状態を指す。
【0031】
本明細書において使用される「注入後状態」という用語は、装置に収容された治療上有効な投与量の治療薬の送達の完了、または治療上有効な投与量の治療薬の送達の完了に先立つ患者からの装置の抜去を指す。
【0032】
例示的実施形態にしたがって提供された自動注射装置は、「治療上有効な量」または「予防上有効な量」の本発明の抗体または抗体部分を含んでもよい。本明細書において使用される「治療上有効な量」とは、投与量および必要な期間において、所望の治療結果を達成するために有効な量を指す。治療上有効な量の抗体、抗体部分、またはその他のTNFα阻害薬は、患者の病状、年齢、性別、および体重、ならびに患者において望ましい反応を生じさせる抗体、抗体部分、またはその他のTNFα阻害薬の能力などの要因に応じて、異なるだろう。治療上有効な量はまた、抗体、抗体部分、およびその他のTNFα阻害薬のいかなる毒性または有害作用よりも治療上有益な効果が上回る量でもある。本明細書において使用される「予防上有効な量」とは、投与量および必要な期間において、所望の予防結果を達成するために有効な量を指す。通常、予防投与量は病気の罹患前または初期段階に患者の体内で使用されるので、予防上有効な量は治療上有効な量よりも少なくなる。
【0033】
本明細書において使用される「物質」または「治療薬」という用語は、例示的自動注射装置を採用する患者に対して治療上有効な量で投与されることが可能な、いずれかのタイプの薬剤、生物活性剤、生体物質、化学物質、または生化学物質を指す。例示的自動注射装置において使用可能な例示的治療薬は、液状の薬剤を含んでもよいが、これに限定されるものではない。このような薬剤は、アダリムマブ(HUMIRA(R))、およびたとえば融合タンパク質および酵素などの溶液状態のタンパク質を含んでもよいが、これらに限定されるものではない。溶液状タンパク質の例は、プルモザイム(Pulmozyme)(ドルナーゼアルファ(Dornase alfa))、レグラネクス(Regranex)(ベカプレルミン(Becaplermin))、アクチバーゼ(Activase)(アルテプラーゼ(Atleplase))、アルドラザイム(Aldurazyme)(ラロニダーゼ(Laronidase))、アメビブ(Amevive)(アレファセプト(Alefacept))、アラネスプ(Aranesp)(ダルベポエチンアルファ(Darbepoetin alfa))、ベカプレルミン濃縮物、ベタセロン(Betaseron)(インターフェロンベータ−1b(Interferon beta−1b))、ボトックス(BOTOX)(A型ボツリヌス毒素(Botulinum Toxin Type A))、エリテック(Elitek)(ラスブリカーゼ(Rasburicase))、エルスパ(Elspar)(アスパラギナーゼ(Asparaginase))、エポジェン(Epogen)(エポエチンアルファ(Epoetin alfa))、エンブレル(Enbrel)(エタネルセプト(Etanercept))、ファブラザイム(Fabrazyme)(アガルシダーゼベータ(Agalsidase beta))、インファージェン(Infergen)(インターフェロンアルファコン−1(Interferon alfacon−1))、イントロンA(Intron A)(インターフェロンアルファ−2a(Interferon alfa−2a))、))、キネレット(Kineret)(アナキンラ(Anakinra))、マイオブロック(MYOBLOC)(B型ボツリヌス毒素(Botulinum Toxin Type B))、ニューラスタ(Neulasta)(ペグフィルグラスチム(Pegfilgrastim))、ニューメガ(Neumega)(オプレルベキン(Oprelvekin))、ニューポジェン(Neupogen)(フィルグラスチム(Filgrastim))、オンタック(Ontak))(デニロイキンディフチトクス(Denileukin diftitox))、ペガシス(PEGASYS)(ペグインターフェロンアルファ−2a(Peginterferon alfa−2a))、プロロイキン(Proleukin)(アルデスロイキン(Aldesleukin))、プルモザイム(Pulmozyme)(ドルナーゼアルファ(Dornase alfa))、レビフ(Rebif)(インターフェロンベータ−1a(Interferon beta−1a))、レグラネクス(Regranex)(ベカプレルミン(Becaplermin))、レタバーゼ(Retavase)(レテプラーゼ(Reteplase))、ロフェロン−A(Roferon−A)(インターフェロンアルファ−2(Interferon alfa−2))、TNKアーゼ(TNKase)(テネクテプラーゼ(Tenecteplase))、ならびにザイグリス(Xigris)(ドロトレコギンアルファ(Drotrecogin alfa))、アーカリスト(Arcalyst)(リロナセプト(Rilonacept))、エヌプレート(NPlate)(ロミプロスチム(Romiplostim))、ミルセラ(Mircera)(メトキシポリエチレングリコールエポエチンベータ(methoxypolyethylene glycol−epoetin beta))、シンライズ(Cinryze)(C1エステラーゼ阻害剤(C1 esterase inhibitor))、エラプレース(Elaprase (イデュルスルファーゼ(idursulfase)、マイオザイム(Myozyme)(アルグルコシダーゼアルファ(alglucosidase alfa))、オレンシア(Orencia)(アバタセプト(abatacept))、ナグラザイム(Naglazyme)(ガルスルファーゼ(galsulfase))、ケピバンス(Kepivance)(パリフェルミン(palifermin))、およびアクティミューン(Actimmune)(インターフェロンガンマ−1b(interferon gamma−1b))を含むが、これらに限定されるものではない。
【0034】
本明細書において使用される「投与分(dose)」または「投与量(dosage)」という用語は、好ましくは本発明の装着可能自動注射装置を用いて患者に投与される、TNFα阻害薬などの治療薬の量を指す。一実施形態において、投与量はたとえば、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、および160mgを含むがこれらに限定されないTNFα阻害薬、アダリムマブの、有効量を含む。
【0035】
本明細書において使用される「投与(dosing)」という用語は、治療目的(たとえばリウマチ性関節炎の治療など)を達成するための治療薬(たとえば抗TNFα抗体など)の投与を指す。
【0036】
本明細書において使用される「投与計画」という用語は、TNFα阻害薬などの治療薬の治療スケジュール、たとえば長期間にわたる、および/またはたとえば0週目に第一投与量のTNFα阻害薬を、その後隔週投与計画で第二投与量のTNFα阻害薬を投与するなどの一連の治療を通じての治療スケジュールを指す。
【0037】
本明細書において使用される「治療(treatment)」という用語は、たとえばリウマチ性関節炎などのTNFαが有害となる疾患など、疾患の治療のための治療的処置、ならびに予防的または抑制的手段を指す。
【0038】
本明細書において使用される「患者」または「ユーザ」という用語は、例示的自動注射装置を用いて治療薬が投与される、いずれかのタイプの動物、ヒト、または非ヒトを指す。
【0039】
「近位」という用語は、注射のためまたは注射を模倣するために患者に対して装置が保持されるときに患者の身体の注射部位から最も遠い、例示的自動注射装置の部分または末端または部品を指す。
【0040】
「遠位」という用語は、注射のためまたは注射を模倣するために患者に対して装置が保持されるときに患者の身体の注射部位から最も近い、例示的自動注射装置の部分または末端または部品を指す。
【0041】
「平坦」という用語は本明細書において、完全な平坦、または完全な平坦を基準としてある程度の公差内でほぼ平坦であることを、広義で意味するために使用される。
【0042】
「凹状」という用語は本明細書において、完全な凹状、または完全な凹状を基準としてある程度の公差内でほぼ凹状であることを、広義で意味するために使用される。
【0043】
「凸状」という用語は本明細書において、完全な凸状、または完全な凸状を基準としてある程度の公差内でほぼ凸状であることを、広義で意味するために使用される。
【0044】
「長円形」という用語は本明細書において、完全な長円形、または完全な長円形を基準としてある程度の公差内でほぼ長円形であることを、広義で意味するために使用される。
【0045】
「楕円形」という用語は本明細書において、完全な楕円形、または完全な楕円形を基準としてある程度の公差内でほぼ楕円形であることを、広義で意味するために使用される。
【0046】
「長方形」という用語は本明細書において、完全な長方形、または完全な長円形を基準としてある程度の公差内でほぼ長方形であることを、広義で意味するために使用される。
【0047】
「平行」という用語は本明細書において、完全な平行、または完全な平行を基準としてある程度の公差内でほぼ並行であることを、広義で意味するために使用される。
【0048】
「直線」という用語は本明細書において、完全な直線、または完全な直線を基準としてある程度の公差内でほぼ直線であることを、広義で意味するために使用される。
【0049】
「等しい」という用語は本明細書において、完全に等しい、またはある程度の公差内でほぼ等しいことを、広義で意味するために使用される。
【0050】
「隣接」という用語は本明細書において、直接隣り合うこと、またはある程度の公差内でほぼ隣り合っていることを、広義で意味するために使用される。
【0051】
「当接」という用語は本明細書において、直接当接すること、またはある程度の公差内でほぼ当接していることを、広義で意味するために使用される。
【0052】
「横軸」という用語は本明細書において、長手軸に対して実質的に直交する軸を指すために使用される。
【0053】
II.例示的実施形態
特定の説明的実施形態を参照して、例示的実施形態が以下に記載される。例示的実施形態は、1回投与分の治療薬の注射を提供するために自動注射装置を使用することに関して記載されるが、当業者は、例示的実施形態が説明的実施形態に限定されないこと、および例示的自動注射装置がいずれの適切な治療薬を患者に注射するために使用されてもよいことを、認識するだろう。加えて、例示的自動注射装置の構成要素ならびに例示的自動注射装置を製造および使用する方法は、以下に記載される説明的実施形態に限定されるものではない。
【0054】
図1から図8は、装置の把持および操作を容易にするために1つ以上のオーバーモールド把持面を有する、例示的自動注射装置100を示す。図面は、実質的に装置100の長さに沿って延びる長手軸L、装置の長手軸Lに対して実質的に直交して延びる第一横軸H、ならびに長手軸Lおよび第一横軸Hの両方に対して実質的に直交して延びる第二横軸Vを示す。
【0055】
いくつかの例示的実施形態において、装置100の例示的長さは、約4、4.5、4.8、5、5.5、6、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10インチであってもよいが、これらの例示的長さに限定されるものではない。いくつかの例示的実施形態において、装置100の例示的幅(最も広い箇所で)は、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0インチであってもよいが、これらの例示的幅に限定されるものではない。いくつかの例示的実施形態において、装置100の例示的厚み(最も厚い箇所で)は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0インチであってもよいが、これらの例示的厚みに限定されるものではない。例示的実施形態において、装置100は、約6.69インチの例示的長さ、最も広い部分で約1.46インチの例示的幅、および最も厚い部分で約1.15インチの例示的厚みを有してもよい。別の例示的実施形態において、装置100は、約4.8インチの例示的長さ、最も広い部分で約0.8インチの例示的幅、および最も厚い部分で約0.6インチの例示的厚みを有してもよい。引用された例示的装置の例示的寸法は、装置がユーザの手による把持によって快適かつ人間工学的に保持されることを可能にする。これにより、ユーザは注射を行うために装置を確実かつ快適に把持および操作することができる。
【0056】
例示的自動注射装置100は、シリンジまたはカートリッジなどの容器を収容するための外部筐体101を含んでもよい。容器は、患者の体内に注入される1回投与分の治療薬で事前充填されていてもよい。装置の筐体101は、組み立て済み状態において、投与分の治療薬を保存および分注するのに適したいずれのサイズおよび形状を有してもよい。組み立て済み筐体101は、ユーザの手にとって快適なように設計および構成され、ユーザが注入中に装置100を快適かつ確実に保持できるような、形状を有してもよい。例示的実施形態において、組み立て済み筐体101は、長手軸Lに沿った長さが第一横軸Hに沿った幅および第二横軸Vに沿った厚みよりもはるかに大きくなるような、長尺構造を有してもよい。装置の幅(最も広い箇所で)に対する長さの例示的な比率は、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、そのすべての中間比率、などを含んでもよいが、これらに限定されるものではない。装置の厚み(最も厚い箇所で)に対する長さの例示的な比率は、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、そのすべての中間比率、などを含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0057】
図1は、外部筐体101を有する例示的自動注射装置100を示す左側斜視図である。図2は、図1の例示的自動注射装置100の右側斜視図である。例示的実施形態において、装置100の筐体101は、実質的に長円形または楕円形の断面を備える先細管状構造を有してもよい。先細管状構造において、筐体101の幅は、筐体101の近位部分106において、筐体101の遠位部分104よりも大きくてもよい。例示的筐体の先細管状形状は、装置を流線型にして、ユーザの手によって快適かつ人間工学的に保持および操作されるようにする。
【0058】
装置100の筐体101は、互いに組み合わせられた複数の本体部品で形成されてもよい。例示的実施形態において、筐体101は、その周縁に沿って互いに協調的に係合したときに、その間に空洞を包囲および提供する、第一本体部分116および第二本体部分118で形成されてもよい。第一および第二本体部分は、接合、接着、超音波溶接、摩擦嵌め、スナップ嵌め、締まり嵌め、ネジ、対応する突起と陥凹との間のアタッチメントなどを含むがこれらに限定されない、いずれか適切な技術を用いて互いに協調的に係合されてもよい。当業者は、その他の例示的実施形態において、組み立てられたときに装置の空洞が単一の本体部品内に、または3つ以上の本体部品内に包囲されてもよいことを、認識するだろう。
【0059】
発射ボタン120は、第一本体部分116の表面から延在してもよい。発射ボタン120は、ユーザによって起動されると、装置100によって注入を実行させてもよい。例示的実施形態において、発射ボタン120の起動を容易にするために、発射ボタン120に当接する第一本体部分116上に、陥凹または凸状部分126が設けられてもよい。陥凹部分126は、ユーザが発射ボタン120を押す際にユーザの指に適合するために、例示的実施形態において発射ボタン120を包囲してもよい。
【0060】
ユーザが装置100の内容物を視認できるように、第一本体部分116の表面に、透明検査窓128が設けられてもよい。透明検査窓128は、たとえば薬剤の透明度を確認するために、装置100内に収容された治療薬をユーザが視認できるように、および成功した注入の最後に現れる注入終了標識を視認できるようにするだろう。例示的な検査窓128は、その他の形状も可能であるが、たとえば長尺長方形(鋭角または丸みを帯びた縁を備える)、長尺長円形などの、実質的に長尺の形状であってもよい。長尺検査窓128において、長手軸Lに沿って延在する長さは、第一横軸Hに沿って延在する幅よりも実質的に大きくてもよい。例示的実施形態において、検査窓の長さと幅との比率は、1.5:1、2.0:1、2.5:1、3.0:1、3.5:1、4.0:1、4.5:1、5:1、すべての中間比率などを含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0061】
装置100の近位末端を被覆するために、装置筐体の近位終端部172が設けられてもよい。例示的実施形態において、近位終端部172は、組み立て済みの第一および第二本体部分の近位末端に結合されてもよい。近位終端部172は、いずれの適切なサイズおよび形状を取ってもよい。例示的実施形態において、近位終端部172は、実質的に楕円形または長円形の、実質的に管状の構成を有してもよい。例示的実施形態において、近位終端部172の外面の少なくとも一部は、装置の近位部分の把持を容易にするために、1つ以上の把持面173でオーバーモールドされてもよい。例示的実施形態において、近位終端部172の外面全体は、オーバーモールド把持面173によって被覆されてもよい。把持面に適合するために、近位終端部172の外面上に、対応する陥凹が設けられてもよい。
【0062】
注射の前の注射針の露出を防止するために装置100の遠位末端を被覆するため、組み立て済み第一および第二本体部分の遠位末端に、取り外し可能遠位キャップ164が結合されてもよい。遠位キャップ164は、ユーザと注射針との偶発的および/または望ましくない接触に対して保護する。遠位キャップ164はまた、装置が使用されていないときに注射針の損傷および汚れに対しても保護する。遠位キャップ164は、いずれの適切なサイズおよび形状を取ってもよい。例示的実施形態において、遠位キャップ164は、実質的に楕円形または長円形の、実質的に管状の構成を有してもよい。例示的実施形態において、遠位キャップ164の前面は、検査窓128の一部を収容するための、凹状切り欠き部168を有してもよい。
【0063】
例示的実施形態において、遠位キャップ164の外面はオーバーモールド把持面を備えていなくてもよい。別の例示的実施形態において、遠位キャップ164の外面は、装置からの遠位キャップ164の把持および取り外しを容易にするために、1つ以上の把持面165でオーバーモールドされてもよい。例示的実施形態において、遠位キャップ164の外面全体は、オーバーモールド把持面165によって被覆されてもよい。把持面に適合するために、遠位キャップ164の外面上に、対応する陥凹が設けられてもよい。
【0064】
例示的実施形態において、装置の把持および操作をさらに容易にするために、遠位キャップ164上の把持面165に、(外面から突起している)1つ以上の隆起、および/または(外面中に落ち込んでいる)1つ以上の溝またはディボットが設けられてもよい。隆起および/または溝の形状および位置は希望通りに変更されてもよく、いずれの望ましい数の隆起および/または溝が設けられてもよい。例示的実施形態において、隆起および/または溝は、装置の長手軸Lに対して実質的に直交して延在してもよい。例示的実施形態において、把持面165は、触覚を改善し、装置の堅固な把持をさらに容易にするために、テクスチャ表面を含んでもよい。例示的実施形態において、遠位キャップ164は、キャップ164の把持をさらに容易にするために、遠位キャップ164の前面および裏面から外向きに延在する、1つ以上の突起170a、170b(図5に示す)を含んでもよい。
【0065】
例示的実施形態において、遠位キャップ164は、装置が使用されていないときに筐体上の所定位置で保持されるために、筐体の陥凹または段差部分と、摩擦によって係合してもよい。例示的実施形態において、遠位キャップ164は、ユーザが注射を実行する準備を整えるまでキャップを筐体にロックおよび/または接合しておくための、ボスを含んでもよい。例示的実施形態の教示にしたがって、いずれの適切な係合機構が使用されてもよい。
【0066】
近位終端部172、第一本体部分116、および第二本体部分118が組み合わせられると、これらは先細管状構造を形成する。近位終端部172上の把持面173に当接する本体部分116、118の側面は、1つ以上の陥凹または凹状部分122、124を含んでもよい。例示的実施形態において、発射ボタン120に当接する装置の両側に、2つの陥凹部分122、124が設けられてもよい。陥凹部分は、発射ボタン120を押すときにユーザの手が快適な位置に納まるようにする。
【0067】
陥凹部分122、124に当接する本体部分116、118の部分は、装置の保持および操作を容易にするために、1つ以上の把持面154、156でオーバーモールドされてもよい。例示的実施形態において、装置の反対側の側面に2つの把持面154、156が設けられてもよい。第一把持面154は第一陥凹部分122に当接してもよく、第二把持面156は第二陥凹部分124に当接してもよい。把持面に適合するために、第一本体部分116の外面上に、対応する陥凹が設けられてもよい。
【0068】
自動注射装置の例示的筐体において、第一オーバーモールド把持領域、第二オーバーモールド把持領域、ならびに第一および第二オーバーモールド把持領域に当接する陥凹領域が設けられてもよい。第一オーバーモールド把持領域、第二オーバーモールド把持領域、および陥凹領域は、注射を実行するためにユーザが自動注射装置を把持してもよい、人間工学的かつ快適な把持域を、協調的に提供してもよい。
【0069】
この例示的実施形態において、第一オーバーモールド把持領域は、オーバーモールド外面または被膜を有する近位終端部172によって形成されてもよい。第二オーバーモールド把持領域は、1つ以上のオーバーモールド把持面(たとえば、把持面154、156)を有する第一本体部分116および第二本体部分118のアセンブリの一部で形成されてもよい。例示的実施形態において、第二オーバーモールド把持領域は、ユーザの手との人間工学的な適合を提供するために、実質的先細管状構造を有してもよい。第一および第二オーバーモールド把持領域に当接する陥凹領域は、第一オーバーモールド把持領域および第二オーバーモールド把持領域よりも幅が狭い、第一本体部分116および第二本体部分118のアセンブリの部分によって形成されてもよい。例示的実施形態において、陥凹領域は、第一および第二オーバーモールド把持領域の間に設けられてもよい。例示的実施形態において、陥凹領域は、いかなるオーバーモールド把持面も備えていなくてもよい。
【0070】
図3は、図1および図2の例示的自動注射装置100の分解図を示す。例示的実施形態において、第一本体部分116は、(実質的にL−H面に沿って延在する)実質的に平坦な前面、ならびに(実質的にL−V面に沿って延在する)左右側面を含んでもよい。第一本体部分116の前面は、第一本体部分116の左右側面と連続して一体に遷移してもよい。前面が側面に対して遷移する縁は、装置の流線型を維持するため、および装置の人間工学的取り扱いのため、鋭角であるか、または平滑で丸みを帯びていてもよい。第一本体部分116の前面および/または側面は、組み立て済み筐体がユーザの手の中に人間工学的に適合するように、実質的に平坦またはわずかに凸状であってもよい。前面は、装置の近位部分106の方が遠位部分104よりも広くなっていてもよい。当業者は、装置の第一本体部分116に関してその他の例示的形状も可能であることを、認識するだろう。
【0071】
例示的実施形態において、第二本体部分118は、(実質的にL−H面に沿って延在する)実質的に平坦な前面、ならびに(実質的にL−V面に沿って延在する)左右側面を含んでもよい。第二本体部分118の前面は、第二本体部分118の左右側面と連続して一体に遷移してもよい。前面が側面に対して遷移する縁は、装置の流線型を維持するため、および装置の人間工学的取り扱いのため、鋭角であるか、または平滑で丸みを帯びていてもよい。第二本体部分118の前面および/または側面は、組み立て済み筐体がユーザの手の中に人間工学的に適合するように、実質的に平坦またはわずかに凸状であってもよい。前面は、装置の近位部分106の方が遠位部分104よりも広くなっていてもよい。当業者は、装置の第二本体部分118に関してその他の例示的形状も可能であることを、認識するだろう。
【0072】
図3に示されるように、第一本体部分116および第二本体部分118は、その周縁に沿って互いに協調的に係合して、その間に空洞102を包囲および提供してもよい。上部および第二本体部分は、接合、接着、超音波溶接、摩擦嵌め、スナップ嵌め、締まり嵌め、ネジ、対応する突起と陥凹との間のアタッチメントなどを含むがこれらに限定されない、いずれか適切な技術を用いて互いに協調的に係合してもよい。当業者は、別の例示的実施形態において、組み立てられたときに装置の空洞102が単一の本体部品内に、または3つ以上の本体部品内に包囲されてもよいことを、認識するだろう。
【0073】
例示的容器160は好ましくは空洞102内に摺動可能に配置され、遠位末端で注射針(図示せず)に結合される。注射針は、たとえば軟性針シールドおよび/または剛性針シールドなど、針シールド162によって被覆されてもよい。筐体内で筐体に対して容器160を機械的に前進させるため、および注射を実行するために容器160から治療薬を放出するため、筐体内に容器前進機構が設けられてもよい。容器前進機構は、容器を被覆位置から突出位置に移動させる、1つ以上のアクチュエータ(たとえば1つ以上の付勢部材)を含んでもよい。装置が注入前状態にあるとき、容器160は被覆位置にあってもよく、すなわち筐体内に後退していてもよい。装置が作動すると、容器前進機構は、注射針が筐体の遠位末端から突出して治療薬を患者の体内に放出させるように、容器160を突出位置まで前進させてもよい。筐体の遠位末端は、これを通じて針が突出する開口を含んでもよい。
【0074】
筐体内の空洞102はまた、たとえば発射ボタン120などの発射従事機構も収容してもよい。発射ボタン120は、押下することで作動すると、容器前進機構を起動させ、するとこれは容器を注射部位まで前進させ注射針を注射部位内に押し込み、注射部位に治療薬を送達する。例示的実施形態において、発射ボタン120の外面の少なくとも一部分は、ユーザの指または手による発射ボタンの押下を容易にするために、1つ以上のゴム引き把持面でオーバーモールドされてもよい。例示的実施形態において、発射ボタンの外面全体が、オーバーモールド把持面で被覆されてもよい。例示的実施形態において、発射ボタン120上の把持面は、装置のどの領域が把持されるべきかを示す視覚的アフォーダンスを提供するために、非把持面とは異なる色で着色されてもよい。たとえば、発射ボタン120上の1つ以上の把持面は緑色で、装置のそれ以外の表面はすべて緑色ではない1つ以上の色であってもよい。
【0075】
図3は、第一本体部分116の前面が、これを通じて発射ボタン120が前面の外側に突出する第一開口119を含んでもよいことを示している。例示的な開口119は、円形断面を有する発射ボタン120を収容するために円形であってもよいが、その他の形状もまた可能である。第一本体部分116の前面は、透明検査窓128を収容するための第二開口127を含んでもよい。
【0076】
図3に示されるように、例示的実施形態において、取り外し可能遠位キャップ164は、装置が使用されていないときに筐体上の所定位置で保持されるために、筐体の陥凹または段差部分166と、摩擦によって嵌合してもよい。
【0077】
図4は、例示的自動注射装置100の第一本体部分116の前面を示す。図5は、装置100内で組み立てられた状態の、第一本体部分116および第二本体部分118の左側面図を示す。
【0078】
図4に示されるように、例示的自動注射装置100は、実質的に長尺の、長円形断面を有する先細管状形状を有してもよい。装置の近位終端部172は、近位終端部172の遠位末端においてわずかにおよび徐々に大きい幅(幅w2)となるように拡大する、より狭い近位末端(幅w1)を有してもよい。近位終端部172に当接する第一本体部分116の近位末端は、側面に1つ以上の陥凹部分122、124を含んでもよい。陥凹部分122、124は、近位終端部172の隣接する幅(幅w2)よりも狭い、狭頸部分(幅w3)を形成してもよい。陥凹部分122、124の遠位末端において、第一本体部分116は装置の最大幅(幅W)まで拡大してもよく、装置の中間部分の付近でより狭い幅(幅w4)まで徐々に先細ってもよい。装置の遠位部分104において、第一本体部分116は実質的に均一な狭い幅(幅w4)を有してもよい。第二本体部分118は、第一本体部分116と実質的に類似の形状および構成を有してもよい。図5に示されるように、例示的実施形態において、取り外し可能遠位キャップ164は、遠位キャップ164の把持をさらに容易にするために、遠位キャップ164の前面および裏面から外向きに延在する、1つ以上の突起170a、170b(図5に示す)を含んでもよい。
【0079】
当業者は、例示的自動注射装置100においてその他の形状も可能であることを、認識するだろう。
【0080】
図4および図5に示されるように、例示的実施形態において、左把持面130が、第一本体部分116の左側面を部分的に被覆してこれを横切って延在するように設けられてもよく、右把持面132が、第一本体部分116の右側面を部分的に被覆してこれを横切って延在するように設けられてもよい。例示的実施形態において、各把持面130、132は、発射ボタン120と検査窓128との間に設けられてもよい。当業者は、把持面130、132のその他の配置も可能であることを、認識するだろう。同様に、例示的実施形態において、左把持面152が第二本体部分118の左側面を部分的に被覆してこれを横切って延在するように設けられてもよく、右把持面153が第二本体部分118の右側面を部分的に被覆してこれを横切って延在するように設けられてもよい。第一および第二本体部分が組み立てられると、左把持面130、152は筐体上に連続的な左把持面154を形成してもよく、右把持面132、153は筐体上に連続的な右把持面156を形成してもよい。左右の連続的把持面154、156は、ユーザの手による装置の確実かつ快適な把持および操作を容易にするが、これはたとえば年配のユーザおよびリウマチ性関節炎を患うユーザなど、身体的に弱いユーザのユーザ経験を、著しく驚くほど改善する。
【0081】
例示的自動注射装置を使用して行われたユーザテストにおいて、テスト参加者は、装置の両側のオーバーモールド把持面、オーバーモールド把持面上の隆起、および比較的大きく人間工学的な装置の形状を好んだ。多くのテスト参加者(58%)は、本発明の例示的自動注射装置の取り扱いおよび握りを非常に好んだ。全体的に、例示的装置構成は、10.0点満点のうち8.1点の高い平均評価を受けた。オーバーモールド把持面が、取り扱いおよび握りに関する例示的装置の参加者による高評価の主な要因であった。いくつかの有用性要因について、コシャンスコアとオーバーモールド把持面を備える本発明の例示的装置との間には有意な正相関関係があったが、これは本発明の例示的装置が手の機能障害を持つ人に非常に適していることを示唆している。
【0082】
当業者は、左右の把持面が、図1から図8に示される例示的なサイズ、形状、および構成とは異なるサイズ、形状、および構成を有してもよいことを、認識するだろう。当業者は、図1から図8に示される例示的な左右の把持面よりも多くのまたは少ない把持面が例示的自動注射装置に設けられてもよいことを、認識するだろう。当業者は、図1から図8に示される例示的位置以外の位置で1つ以上の把持面が例示的自動注射装置上に配置されてもよいことを、認識するだろう。さらに当業者は、各把持面の外形がいくつかの例示的実施形態において平滑な、丸みを帯びた、流線型の構成を有してもよいことを、認識するだろう。
【0083】
例示的実施形態において提供されたオーバーモールド把持面は、第二の硬い低摩擦触感をユーザに提供するオーバーモールド把持面を備えない装置の部分と比較して、第一の柔らかい高摩擦触感をユーザに提供する、いずれの適切な材料で形成されてもよい。知覚の違いはユーザに触覚アフォーダンスを提供し、オーバーモールド把持面が設けられた領域で装置が把持されていることを示す。
【0084】
例示的実施形態において、オーバーモールド把持面はユーザに対して柔らかい高摩擦触感を有する第一のタイプの材料で形成されてもよく、その一方でオーバーモールド把持面を備えない装置の部分は、ユーザに対して硬い低摩擦触感を有する第二のタイプの材料で形成されてもよい。例示的実施形態において、オーバーモールド把持面は硬度の低い第一材料で形成されてもよく、その一方で非把持面は硬度の高い第二材料で形成されてもよい。
【0085】
たとえば、非把持面は、医療機器用途での使用に適した、そしてユーザに硬い低摩擦触感を提供するのに適した、いずれの硬質熱可塑性材料または硬質基材で形成されてもよい。硬質熱可塑性物質は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、高衝撃ポリスチレン(HIPS)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリアミド(PA)、PC/ABS混合物、およびPPO/PS混合物などの材料を含むことができる。
【0086】
例示的オーバーモールド把持面は、柔らかい高摩擦触感をユーザに提供するのに適したいずれの材料グレードおよび硬度を有する材料で形成されてもよい。例示的オーバーモールド把持面材料は、ゴム(たとえば一実施形態において50Aのデュロメータを有するものなど)、熱可塑性エラストマ(TPE)、熱可塑性加硫物(TPV)などを含んでもよいが、これらに限定されるものではない。例示的オーバーモールド把持面を形成するために使用され得る例示的な熱可塑性エラストマは、KRAIBURGのTPE、PolyOneのDynaflex(TM)TPE、PolyOneのVersaflex(TM)TPE、PolyOneのVersollan(TM)TPE、PolyOneのOnFlex(TM)TPEなどを含むが、これらに限定されるものではない。例示的オーバーモールド把持面を形成するために使用され得る例示的な熱可塑性加硫物は、ExxonMobilのSantoprene(TM)熱可塑性物質などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0087】
例示的実施形態において、オーバーモールド把持面は、装置のどの領域が把持されるべきかを示す視覚的アフォーダンスを提供するために、非把持面とは異なる色で着色されてもよい。たとえば、左右のオーバーモールド把持面は栗色であってもよく、その一方で筐体上の非把持面は灰色であってもよい。
【0088】
図5に示されるように、例示的実施形態において、装置の把持および操作をさらに容易にするために、左オーバーモールド把持面154および/または右オーバーモールド把持面156に、(外面から突起している)1つ以上の隆起および/または(外面中に落ち込んでいる)1つ以上の溝またはディボット158a、158b、158c(図5および図6Bに示される通り)が設けられてもよい。隆起および/または溝の形状および位置は希望通りに変更されてもよく、いずれの望ましい数の隆起および/または溝が設けられてもよい。例示的実施形態において、隆起および/または溝は、装置の長手軸Lに対して実質的に直交して延在してもよい。例示的実施形態において、オーバーモールド把持面は、触覚を改善し、装置の堅固な把持をさらに容易にするために、テクスチャ表面を含んでもよい。
【0089】
図6Aは、図1の装置100の第一本体部分116に設けられた例示的な左オーバーモールド把持面130の正面拡大図である。図6Bは、図6Aの例示的左オーバーモールド把持面130の左側拡大図である。第一本体部分116の右オーバーモールド把持面132、第二本体部分118の左オーバーモールド把持面152、および第二本体部分118の右オーバーモールド把持面153は、構造および構成が類似していてもよい。
【0090】
図6Aおよび図6Bを参照すると、左オーバーモールド把持面130は、実質的に長手軸Lに沿って第一本体部分116の前面上に延在する、第一長手辺134を有してもよい。例示的実施形態において、左オーバーモールド把持面130の第一長手辺134は実質的に直線状であってもよく、その一方で別の例示的実施形態において、第一長手辺134はわずかに凹状または凸状であってもよい。第一長手辺134の近位末端136は、左オーバーモールド把持面130の第一水平辺140の末端138に向かって延在し、これと接続していてもよい。第一水平辺140は、実質的に第二横軸Vに沿って第一本体部分116の左側面を横切って延在し、第一本体部分116の周縁で終端してもよい。
【0091】
例示的実施形態において、末端136、138の間に延在する接続辺142は、第一長手辺134を第一水平辺140に接続してもよい。例示的実施形態において、第一水平辺140は、長手軸Lおよび第一横軸Hの両方に対してある角度で第一長手辺134まで延在する斜縁を含んでもよい。
【0092】
例示的実施形態において、左オーバーモールド把持面130の第一長手辺134は、実質的に第一水平辺140よりも長くてもよい。第一水平辺140の長さに対する第一長手辺134の長さの例示的比率は、約2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、5:1、そのすべての中間比率などを含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0093】
第一長手辺134の遠位末端144は、左オーバーモールド把持面130の第二水平辺148の末端146に向かって延在し、これと接続してもよい。例示的実施形態において、末端144、146の間に延在する接続辺150は、第一長手辺134を第二水平辺148に接続してもよい。例示的実施形態において、接続辺150は、接続辺142よりも長い長さを有してもよい。例示的実施形態において、接続辺142の長さに対する接続辺150の長さの比率は、1.5:1、1.75:1、2:1、2.25:1、2.5:1、2.75:1、3:1、3.25:1、3.5:1、3.75:1、4:1、そのすべての中間比率などを含んでもよいがこれらに限定されるものではなく、しかしこれらの例示的比率に限定されるものではない。第二水平辺148は、実質的に第二横軸Vに沿って第一本体部分116の左側面を横切って延在し、第一本体部分116の周縁で終端してもよい。
【0094】
例示的実施形態において、第一長手辺134は、第一水平辺140または第二水平辺148のいずれかよりも実質的に長くてもよい。いずれかの水平辺の長さに対する第一長手辺134の長さの例示的比率は、約2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、5:1、5.5:1,6:1、6.5:1、7:1、そのすべての中間比率などを含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0095】
図7は、オーバーモールド把持面165を示す、例示的取り外し可能遠位キャップ164の底面図である。オーバーモールド把持面165は、硬い低摩擦触感をユーザに提供するオーバーモールド把持面を備えない装置の部分と比較して、第一の柔らかい高摩擦触感をユーザに提供する、いずれの適切な材料で形成されてもよい。知覚の違いはユーザに触覚アフォーダンスを提供し、オーバーモールド把持面が設けられた領域で装置が把持されていることを示す。
【0096】
例示的実施形態において、オーバーモールド把持面は柔らかい高摩擦触感を有する第一のタイプの材料で形成されてもよく、その一方で非把持面は、より硬い低摩擦触感を有する第二のタイプの材料で形成される。例示的オーバーモールド把持面165は、柔らかい高摩擦触感をユーザに提供するのに適したいずれの材料グレードおよび硬度を有する材料で形成されてもよい。例示的オーバーモールド把持面材料は、ゴム(たとえば一実施形態において50Aのデュロメータを有するものなど)、熱可塑性エラストマ(TPE)、熱可塑性加硫物(TPV)などを含んでもよいが、これらに限定されるものではない。例示的オーバーモールド把持面を形成するために使用され得る例示的な熱可塑性エラストマは、KRAIBURGのTPE、PolyOneのDynaflex(TM)TPE、PolyOneのVersaflex(TM)TPE、PolyOneのVersollan(TM)TPE、PolyOneのOnFlex(TM)TPEなどを含むが、これらに限定されるものではない。例示的オーバーモールド把持面を形成するために使用され得る例示的な熱可塑性加硫物は、ExxonMobilのSantoprene(TM)熱可塑性物質などを含むが、これらに限定されるものではない。例示的実施形態において、オーバーモールド把持面165は、装置のどの領域が把持されるべきかを示す視覚的アフォーダンスを提供するために、非把持面とは異なる色で着色されてもよい。たとえば、遠位キャップ164上の1つ以上のオーバーモールド把持面165は栗色であってもよく、その一方で筐体上の非把持面は灰色であってもよい。
【0097】
図8は、筐体の近位末端を被覆するための例示的近位終端部172の上面図である。例示的実施形態において、近位終端部172の外面は、いかなるオーバーモールド把持面も備えていなくてもよい。別の例示的実施形態において、装置の近位部分の把持を容易にするために、近位終端部172の外面の少なくとも一部が1つ以上の把持面173でオーバーモールドされてもよい。例示的実施形態において、近位終端部172の外面全体が、オーバーモールド把持面173によって被覆されてもよい。
【0098】
オーバーモールド把持面173は、第二の柔らかい低摩擦触感をユーザに提供するオーバーモールド把持面を備えない装置の部分と比較して、第一の柔らかい高摩擦触感をユーザに提供する、いずれの適切な材料で形成されてもよい。知覚の違いはユーザに触覚アフォーダンスを提供し、オーバーモールド把持面が設けられた領域で装置が把持されていることを示す。
【0099】
例示的実施形態において、オーバーモールド把持面173は柔らかい高摩擦触感を有する第一のタイプの材料で形成されてもよく、その一方で非把持面は、より硬い低摩擦触感を有する第二のタイプの材料で形成される。例示的オーバーモールド把持面173は、柔らかい高摩擦触感をユーザに提供するのに適したいずれの材料グレードおよび硬度を有する材料で形成されてもよい。例示的オーバーモールド把持面材料は、ゴム(たとえば一実施形態において50Aのデュロメータを有するものなど)、熱可塑性エラストマ(TPE)、熱可塑性加硫物(TPV)などを含んでもよいが、これらに限定されるものではない。例示的オーバーモールド把持面を形成するために使用され得る例示的な熱可塑性エラストマは、KRAIBURGのTPE、PolyOneのDynaflex(TM)TPE、PolyOneのVersaflex(TM)TPE、PolyOneのVersollan(TM)TPE、PolyOneのOnFlex(TM)TPEなどを含むが、これらに限定されるものではない。例示的オーバーモールド把持面を形成するために使用され得る例示的な熱可塑性加硫物は、ExxonMobilのSantoprene(TM)熱可塑性物質などを含むが、これらに限定されるものではない。例示的実施形態において、オーバーモールド把持面173は、装置のどの領域が把持されるべきかを示す視覚的アフォーダンスを提供するために、非把持面とは異なる色で着色されてもよい。たとえば、近位終端部172上の1つ以上のオーバーモールド把持面173は栗色であってもよく、その一方で筐体上の非把持面は灰色であってもよい。
【0100】
例示的実施形態において、装置の近位部分の把持をさらに容易にするために、近位終端部172の外面上に、(外面から突起している)1つ以上の隆起、および/または(外面中に落ち込んでいる)1つ以上の溝またはディボットが設けられてもよい。隆起および/または溝の形状および位置は希望通りに変更されてもよく、いずれの望ましい数の隆起および/または溝が設けられてもよい。例示的実施形態において、オーバーモールド把持面173は、触覚を改善し、装置の堅固な把持をさらに容易にするために、テクスチャ表面を含んでもよい。例示的実施形態において、ユーザの手および指を装置に向けて配向および案内するために、近位終端部172の外周の周りに巻溝174が設けられてもよく、近位終端部172の上部に凹状または陥凹面176が設けられてもよい。たとえば、凹状または陥凹面176は、ユーザが装置を用いて注入を実行している間、指を表面176上に適合させてもよい。
【0101】
いくつかの例示的実施形態において、装置100の筐体101、取り外し可能遠位キャップ164、および/または近位終端部172は、自動注射装置の使用を容易にするために、図形、記号、および/または数字をさらに含んでもよい。たとえば、遠位キャップ164は、装置が患者に対してどのように(すなわち遠位末端を注射部位と隣接させて)保持されるべきかを示すために、装置の遠位末端の方向を指す矢印の絵を、外面上に含んでもよい。当業者は、患者の指示を容易にするために自動注射装置がいずれの適切な図形、記号、および/または数字を含んでもよいこと、またはそのような図形、記号、および/または数字を省略してもよいことを、認識するだろう。
【0102】
図9は、例示的自動注射装置を組み立てる例示的方法のフローチャートである。例示的実施形態において、例示的自動注射装置の筐体は、装置の組み立て中に結合され得る2つ以上の個別筐体部品(たとえば、第一および第二本体部品)として提供されてもよい。
【0103】
ステップ902において、筐体の第一本体部分が提供または形成される。ステップ904において、注入中に装置の把持および操作を容易にするために、第一本体部分の外面上の対応する陥凹に、1つ以上の把持面がオーバーモールドされる。
【0104】
ステップ906において、筐体の第二本体部分が提供または形成される。ステップ908において、注入中に装置の把持および操作を容易にするために、第二本体部分の外面上の対応する陥凹に、1つ以上の把持面がオーバーモールドされる。
【0105】
ステップ910において、筐体の近位終端部が提供または形成される。ステップ912において、装置の把持および操作を容易にするために、近位終端部の外面上の対応する陥凹に、1つ以上の把持面がオーバーモールドされる。
【0106】
ステップ914において、筐体の取り外し可能遠位キャップが提供または形成される。ステップ916において、注入を実行する前の遠位キャップの取り外しを容易にするために、遠位キャップの外面上の対応する陥凹に、1つ以上の把持面がオーバーモールドされる。
【0107】
ステップ918において、筐体の発射ボタンが提供または形成される。ステップ920において、注入を実行するための発射ボタンの起動を容易にするために、発射ボタンの外面上に1つ以上の把持面がオーバーモールドされる。
【0108】
ステップ922において、自動注射装置の1つ以上の内部部品が、上部および第二本体部分の間に画定された空洞内に配置されてもよい。例示的な装置部品は、患者に注入するための治療薬が事前充填された容器(たとえば、シリンジ)、容器の遠位末端に結合された注射針、注射部位に向けて筐体内でおよびこれに対して容器を前進させ、注入中に容器から治療薬を放出するための、容器前進機構、容器前進機構を起動するための発射ボタンなどを含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0109】
ステップ924において、上部および第二本体部分が協調的に係合されて、空洞内に内部部品を包囲および保持する本体アセンブリを形成してもよい。例示的実施形態において、本体部分はその周縁において結合されてもよい。接合、接着、超音波溶接、摩擦嵌め、スナップ嵌め、締まり嵌め、ネジ、対応する突起および陥凹などを含むがこれらに限定されない、いずれの適切な結合または接合がステップ924において使用されてもよい。
【0110】
ステップ926において、注射針、またはやはり注射針を被覆する針シールドを被覆するために、本体アセンブリの遠位末端において取り外し可能遠位キャップが取り外し可能に結合されてもよい。
【0111】
ステップ928において、本体アセンブリの近位末端において近位終端部が結合されてもよい。
【0112】
いずれの装置部品を形成するためにも、射出成形を含むがこれに限定されない、いずれの適切な製造技術が使用されてもよい。装置部品は、プラスチック、熱可塑性物質、ポリカーボネート、金属などを含むがこれらに限定されない、いずれの適切な材料で形成されてもよい。
【0113】
本明細書において説明されたステップの順序は望み通りに変更されてもよいこと、ならびにその他の製造ステップ/技術が可能であり、本発明の精神および範囲内で考えられることは、特筆される。
【0114】
自動注射装置ユーザテスト
本発明のオーバーモールド把持面を有する例示的自動注射装置、およびそのような把持面を備えない4つの代替自動注射装置の両方をテストするために、44人のテスト参加者が募集された。参加者の多くは、テストの時点でリウマチ性関節炎(RA)を患っていた。参加者らは1年から40年前にRAであると診断されており、診断後の平均経過年月は9年前であった。4人の参加者は、テスト時点でクローン病を患っていた。
【0115】
テスト手順
各テスト参加者は、異なる例示的自動注射装置構成をテストした。具体的には、実例装置使用段階において、各テスト参加者は、装置を用いて模擬注射(すなわち、針が切り取られて薬剤のない注射)を実行した。彼/彼女が模擬注射を行った際、各テスト参加者には、装置の形状および機能の患者による認定を評価するように考案された、一連の関連質問が尋ねられた。これらの質問は、たとえば、サイズ、形状、扱いやすさ、持ちやすさ、全体的なユーザ体験などに関する質問を含んでいた。
【0116】
装置取り扱いおよび把持
異なる装置構成を用いて模擬注射を行った際、テスト参加者らは、取り扱いおよび握り、全体的な使いやすさ、および注射ステップの実行における快適性について、フィードバックおよび比較評価を提供するよう求められた。すべての装置構成は、1(非常に否定的)から10(非常に肯定的)までの尺度で評価された。
【0117】
多くのテスト参加者(58%)は、オーバーモールド把持面を含まない4つの代替装置構成と比較して、本発明の実例装置構成の取り扱いおよび握りを強く好んだ。テスト参加者らは、実例装置の側面上のゴム引きオーバーモールド握りおよびその比較的大きいサイズを特に好んだが、これらが実例装置を容易かつ快適に保持できるようにしていた。ゴム引きオーバーモールド握りは、本明細書において教示されるように、取り扱いおよび握りについて実例装置構成の参加者による高得点の主な要因であった。
【0118】
さらに、取り扱いおよび把持、使いやすさ、注射の開始および実行のしやすさ、注射の実行における快適性、許容性、および全体的な好みなど、特定の有用性要因に付けられた評価で、コシャン手機能障害尺度を用いて、手の機能障害について相関分析がなされた。いくつかの有用性要因については、コシャンスコアと本発明の実例装置構成との間に正相関関係があり、この実例装置構成は手の機能障害を有する人に特に適していることを示していた。
【0119】
装置保持および使用の快適性
実例装置使用段階において模擬注射を実行した際、テスト参加者らは、本発明の実例装置構成およびオーバーモールド把持面を含まない4つの代替装置構成の保持の快適性を評価するように求められた。テスト参加者らは、各装置構成を1(非常に低い信頼性)から7(非常に高い信頼性)の尺度で評価した。ほとんどのテスト参加者は注射ステップの実行における快適性について本発明の実例装置構成の方を好み、45%がこれに最高評価を与えた。
【0120】
装置の使用および取り扱いの容易さ
実例装置との最初の露出の際、および使用に関する指示または実演を受ける前に、テスト参加者らは、本発明の実例装置構成およびオーバーモールド把持面を含まない4つの代替装置構成の認識された使いやすさについて尋ねられた。テスト参加者らは、各装置構成を1(非常に難しい)から7(非常に易しい)の尺度で評価した。すべての装置構成が、認識された使いやすさについて高評価を受けた。
【0121】
実際の装置使用段階で模擬注射を実行した際、テスト参加者らは、各装置構成の扱いやすさを評価するように求められた。テスト参加者らは、各装置構成を1(非常に低い信頼性)から7(非常に高い信頼性)の尺度で評価した。さらに、第三の実際の装置使用段階で装置構成を使用して模擬注射を実行した際、テスト参加者らは1(非常に難しい)から10(非常に易しい)の尺度で全体的な使いやすさについて構成を評価するようにも求められた。
【0122】
ほとんどのテスト参加者(42%)は、オーバーモールド把持面を含まない4つの代替装置構成と比較して、本発明の実例装置構成が最も使いやすいと感じた。全体的に本発明の実例装置構成は、10.0点満点中7.97の高い平均点を取った。
【0123】
装置サイズ
実例装置使用段階において模擬注射を実行した際、テスト参加者らは、1(非常に低い信頼性)から7(非常に高い信頼性)の尺度で、本発明の実例装置構成およびオーバーモールド把持面を含まない4つの代替装置構成の全体的なサイズを評価するように求められた。すべての装置構成は、その全体的な形状についておおむね肯定的な評価を受けた。全体として、拳を固く握りしめるのが困難なテスト参加者は、大きめの装置を好んだ。本発明の実例装置構成は全体的に最高評価を受けた。
【0124】
装置形状
実際の装置使用段階で模擬注射を実行した際、テスト参加者らは、1(非常に低い信頼性)から7(非常に高い信頼性)の尺度で、本発明の実例装置構成およびオーバーモールド把持面を含まない4つの代替装置構成の全体的な形状を評価するように求められた。
【0125】
すべての装置構成は、その全体的なサイズについておおむね肯定的な評価を受けた。全体として、拳を固く握りしめるのが困難なテスト参加者は、大きめの装置を好んだ。本発明の実例装置構成に関しては、多くの参加者が、自身の手によく適合する形状であると感じた。
【0126】
III.参照による組み込み
本願を通じて引用される、特許および特許出願を含むすべての参考文献の内容は、参照によりその全体が本願に組み込まれる。これら参考文献の適切な構成要素および方法は、本発明およびその実施形態のために選択されてもよい。さらに、背景技術の章で特定された構成要素および方法は、本開示にとって不可欠であり、本発明の範囲内において、本開示の別の箇所に記載された構成要素および方法と組み合わせて、または置き換えて、使用されることも可能である。
【0127】
IV.同等物
例示的実施形態を記述する際に、明確さのために特定の専門用語が使用されている。説明目的のため、各特定の用語は、少なくとも、類似の目的を達成するために類似のやり方で動作する、すべての技術的および機能的同等物を含むように、意図されている。加えて、具体的な例示的実施形態が複数のシステム要素または方法ステップを含むいくつかの例において、これらの要素またはステップは、単一の要素またはステップに置き換えられてもよい。同様に、単一の要素またはステップは、同じ目的を果たす複数の要素またはステップに置き換えられてもよい。さらに、様々な特性のパラメータが本明細書において例示的実施形態のために指定されているとき、これらのパラメータは、別途指定されない限り、20分の1、10分の1、5分の1、3分の1、2分の1などまで切り上げまたは切り捨てられてもよく、あるいはその丸め近似値で調整されてもよい。また、例示的実施形態はその特定の実施形態に関連して図示および記載されてきたが、当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、その形態および詳細において様々な置き換えおよび変形がなされてもよいことを、理解するだろう。さらにまた、別の態様、機能、および利点もまた本発明の範囲に含まれる。
【0128】
例示的フローチャートは、説明目的のため本明細書に提供されており、これらは方法の非限定例である。当業者は、例示的方法が例示的フローチャートに示されるよりも多くのまたは少ないステップを含んでもよいこと、および例示的フローチャートのステップが図示されるのとは異なる順序で実行されてもよいことを、認識するだろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9