(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556186
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】ねじ切りダイス用アタッチメント
(51)【国際特許分類】
B23G 1/44 20060101AFI20190729BHJP
B23G 1/46 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
B23G1/44 C
B23G1/46 B
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-99177(P2017-99177)
(22)【出願日】2017年5月18日
(65)【公開番号】特開2018-192577(P2018-192577A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2017年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】591131822
【氏名又は名称】株式会社彌満和製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】502388714
【氏名又は名称】株式会社 彌満和プレシジョン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】安西 真吾
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 孝敏
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 淳史
【審査官】
中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭53−040798(JP,Y1)
【文献】
実開平04−083531(JP,U)
【文献】
実開平05−080625(JP,U)
【文献】
特開平10−006137(JP,A)
【文献】
特開平10−086019(JP,A)
【文献】
特開平10−309628(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0321401(US,A1)
【文献】
国際公開第2013/001624(WO,A1)
【文献】
特開2013−180361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23G 1/00−11/00
B23Q 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ切りダイスを取り付け可能なホルダーを具備するねじ切りダイス用アタッチメントであって、当該ねじ切りダイス用アタッチメントには、中心軸線に沿って貫通する液路が形成されており、当該ねじ切りダイス用アタッチメントを、給油機能を備えたマシニングセンタに取り付けて使用することによって、前記液路を介して、当該ねじ切りダイス用アタッチメントの後端から前端まで切削油剤を通過させて先端から噴出させることができ、
前記ホルダーを収容するシャンク部をさらに具備し、前記ホルダーと前記シャンク部との間に弾性部材が配置され、該弾性部材が弾性変形することによって、前記ホルダーと前記シャンク部とが軸線方向又は径方向に相対的に移動可能であり、
前記弾性部材がOリングであり、
前記シャンク部の外周面がマシニングセンタのツールホルダーに嵌合することを特徴とするねじ切りダイス用アタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ切りダイス用アタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マシニングセンタでおねじ加工を行う場合、主軸に取り付けられるツールホルダーに、ねじ切りダイスを取り付けたコレットダイスホルダーを装着して加工を行っていた(例えば特許文献1参照)。また、旋盤及びボール盤で用いるアタッチメントにねじ切りダイスを取り付け、アタッチメントをマシニングセンタ用のツールホルダーに取り付けておねじ加工を行っていた(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−80625号公報
【特許文献2】特開平10−309628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に記載の構成において、加工時の切りくずは、ねじ切りダイスの切りくず穴又はねじ切りダイスを保持するホルダー内に収納される。収納しきれない切りくずが、加工物とねじ切りダイスの刃先との間に突発的に入り込み、切りくずの噛み込みや切りくず詰まりが生じる結果、加工物の表面状態の悪化やおねじ精度の不具合を生じさせる場合がある。
【0005】
また、おねじを形成するダイス加工は内面切削であることから、切削油剤は外部から加工部に供給される。こうした外部給油では、切削油剤がねじ切りダイスの刃先に直接的に供給されない。そのため、刃先において発生する切削熱を冷却する効果が低く、刃先の熱的摩耗が進行しやすいという問題や、切削時の発熱に起因する構成刃先が生成されやすいという問題がある。
【0006】
本発明は、マシニングセンタによるおねじ加工において、切りくずの噛み込みや切りくず詰まりを防止し、安定した加工を可能にするねじ切りダイス用アタッチメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、ねじ切りダイスを取り付け可能なホルダーを具備するねじ切りダイス用アタッチメントであって、当該ねじ切りダイス用アタッチメントには、中心軸線に沿って貫通する液路が形成されており、当該ねじ切りダイス用アタッチメントを、給油機能を備えたマシニングセンタに取り付けて使用することによって、前記液路を介して、当該ねじ切りダイス用アタッチメントの後端から前端まで切削油剤を通過させて先端から噴出させることができることを特徴とするねじ切りダイス用アタッチメントが提供される。
【0008】
本発明の別態様によれば、前記ホルダーを収容するシャンク部をさらに具備し、前記ホルダーと前記シャンク部との間に弾性部材が配置され、該弾性部材が弾性変形することによって、前記ホルダーと前記シャンク部とが軸線方向又は径方向に相対的に移動可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様によれば、マシニングセンタによるおねじ加工において、切りくずの噛み込みや切りくず詰まりを防止し、安定した加工を可能にするねじ切りダイス用アタッチメントを提供するという共通の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態によるねじ切りダイス用アタッチメントの部分断面図である。
【
図2】
図1のねじ切りダイス用アタッチメントの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態によるねじ切りダイス用アタッチメント1の部分断面図である、
図2は、
図1のねじ切りダイス用アタッチメント1の正面図である。ねじ切りダイス用アタッチメント1は、ホルダー10と、シャンク部20と、固定ボルト30とを有している。
【0013】
ホルダー10は、全体として円筒形状であり、両端が開口している。ホルダー10は、より大きい外径を有する大径部11と、より小さい外径を有する小径部12とを有している。大径部11側の開口部には、ねじ切りダイス40が取り付けられる。すなわち、大径部11側の開口部近傍には、中心軸線に対して対称位置に2つの止めねじ13が設けられ、それによってねじ切りダイス40が固定される。ねじ切りダイス用アタッチメント1の軸線方向において、ねじ切りダイス40が取り付けられている側を「前」側とし、その反対側を「後」側とする。
【0014】
ホルダー10の小径部12の外周面には、軸線方向に延びる4つのスライド溝14が周方向に沿って等間隔に形成されている。4つのスライド溝14よりも後方の小径部12の外周面には、軸線方向に離間して2つの環状の溝が形成され、それぞれに弾性部材15が配置されている。弾性部材15は、例えばOリングである。
【0015】
シャンク部20は、ホルダー10の大径部11と略同一外径に形成された円筒形状であり、両端が開口している。シャンク部20の内部にはホルダー10が収容される。したがって、シャンク部20の内径は、ホルダー10の小径部12の外径よりも僅かばかり大きく設定される。また、シャンク部20は、ホルダー10の小径部12よりも軸線方向に長く形成されている。
【0016】
シャンク部20の外周面には、4つの六角穴付きボルト21が螺合するねじ孔が、周方向に沿って等間隔に形成されている。六角穴付きボルト21は、剛球22がねじ孔及びホルダー10の各々のスライド溝14内に配置されるように剛球22を保持している。したがって、ねじ孔の直径は、剛球22の直径よりも僅かばかり大きく設定される。剛球22は、六角穴付きボルト21及びスライド溝14間において、ホルダー10の径方向に僅かばかり移動可能である。ホルダー10のスライド溝14は、ホルダー10の小径部12の外周面において、剛球22の周方向の移動を規制し、剛球22の軸線方向の所定距離の移動が可能となるように形成される。シャンク部20の環状の前端面及び後端面にはそれぞれ1つの環状の溝が形成され、それぞれに弾性部材23が配置されている。弾性部材23は、例えばOリングである。
【0017】
固定ボルト30は、ボルト本体31と、ボルト本体31の後部に設けられたフランジ部32とを有している。ボルト本体31の外周面にはおねじが形成されている。固定ボルト30は、シャンク部20をホルダー10との間に挟み込むようにして、ホルダー10の後端の開口部と螺合する。すなわち、シャンク部20の前端面は、弾性部材23を介してホルダー10の大径部11の後端面と当接し、シャンク部20の後端面は、弾性部材23を介して固定ボルト30のフランジ部32の前端面と当接する。
【0018】
固定ボルト30は、中心軸線に沿って貫通孔が形成されている。したがって、ねじ切りダイス用アタッチメント1全体としては、
図1において矢印で示されるような、中心軸線に沿って貫通する液路50が形成されている。
【0019】
ねじ切りダイス用アタッチメント1は、シャンク部20の外周面がマシニングセンタのツールホルダー(図示せず)に嵌合することによって取り付けられる。したがって、ねじ切りダイス用アタッチメント1のホルダー10及びホルダー10に螺合する固定ボルト30は、マシニングセンタのツールホルダーとは係合していない。そのため、ホルダー10は、ねじ切りダイス用アタッチメント1がマシニングセンタのツールホルダーに取り付けられた状態で、シャンク部20、ひいてはマシニングセンタに対して相対的に移動可能である。
【0020】
すなわち、ホルダー10は、弾性部材15が弾性変形することができることから、径方向、すなわちシャンク部20の中心軸線から離間する方向に移動可能である。また、ホルダー10は、弾性部材23が弾性変形することができることから、軸線方向に移動可能である。なお、ホルダー10は、剛球22とスライド溝14との係合によって、中心軸線回りには回転することができない。
【0021】
ホルダー10の相対的な移動によって、おねじ加工時の誤差を吸収することが可能となる。すなわち、ホルダー10の軸線方向の相対移動によって、切削されるおねじのねじリードと、マシニングセンタのN/C制御によるねじ切りダイス用アタッチメント1の移動量との間の誤差を吸収し、これらを一致させた状態でおねじ加工をすることができる。また、ホルダー10の径方向の相対移動によって、ねじ切りダイス40の中心軸線と、ねじ切りダイス用アタッチメント1の回転軸線との間の誤差を吸収し、これら軸線を一致させた状態でおねじ加工をすることができる。さらに、ホルダー10の径方向の相対移動によって、ねじ切りダイス40の中心軸線とマシニングセンタに取り付けられた加工物の中心軸線との間の誤差を吸収し、これら軸線を一致させた状態でおねじ加工をすることができる。
【0022】
上述したように、ねじ切りダイス用アタッチメント1は中心軸線に沿って貫通する液路50を有している。そのため、ねじ切りダイス用アタッチメント1を、給油機能を備えたマシニングセンタに取り付けて使用する場合には、液路50を介して、ねじ切りダイス用アタッチメント1の後端から前端まで切削油剤を通過させて先端から噴出させることができる。
【0023】
したがって、内面切削を行うおねじ加工中に液路50を通して切削油剤を供給することによって、ねじ切りダイス40の刃先に切削油剤を直接的に供給することができる。その結果、加工部に対して外部から給油していた従来に比べ、切削熱を冷却する効果が高く、刃先摩耗の進行を抑制することが可能となり、構成刃先の生成を防ぐことも可能となる。また、ねじ切りダイス用アタッチメント1の内部を通過した切削油剤を先端から噴出させることから、加工時の切りくずが、切りくず穴41又はホルダー10内に収納されることなく切削油剤と共に強制的に排出され、切りくずの噛み込みや切りくず詰まりを防ぐことが可能となる。その結果、安定した加工が可能となり、良好な表面状態で、高精度且つ高効率なおねじが加工を実現することができる。
【0024】
本発明は、給油機能を備えたマシニングセンタに取り付けて使用することによって、液路を介して、後端から前端まで切削油剤を通過させて先端から噴出させることが可能な限りにおいて、任意の構成のねじ切りダイス用アタッチメントに適用することができる。また、上述した実施形態では、2種類の弾性部材(弾性部材15及び弾性部材23)を有していたが、いずれか一方のみを有するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 ねじ切りダイス用アタッチメント
10 ホルダー
11 大径部
12 小径部
13 止めねじ
14 スライド溝
15 弾性部材
20 シャンク部
21 六角穴付きボルト
22 剛球
23 弾性部材
30 固定ボルト
31 ボルト本体
32 フランジ部
40 ダイス
41 切りくず穴
50 液路