特許第6556206号(P6556206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556206
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】多層型接着接合体
(51)【国際特許分類】
   C09J 5/00 20060101AFI20190729BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20190729BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20190729BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   C09J5/00
   C09J7/20
   C09J133/04
   C09J183/04
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-202425(P2017-202425)
(22)【出願日】2017年10月19日
(65)【公開番号】特開2018-111799(P2018-111799A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2018年2月13日
(31)【優先権主張番号】10 2016 220 691.5
(32)【優先日】2016年10月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509120403
【氏名又は名称】テーザ・ソシエタス・ヨーロピア
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】マルセル・ヘーネル
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ナーゲル
(72)【発明者】
【氏名】イェニファー・キプケ
(72)【発明者】
【氏名】ヤニク・ゼリン
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−184396(JP,A)
【文献】 特開2002−363515(JP,A)
【文献】 特開2002−348553(JP,A)
【文献】 特開2014−009318(JP,A)
【文献】 特開2006−307237(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/052595(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き断面において膨張する媒体を接着テープでラッピングして接着する方法であって、 接着テープを接着テープロールから巻きほどき、その巻きほどいた接着テープは、キャリアフイルム(1)の第一の面上に接着剤層(2)が設けられており、かつ、前記第一の面とは反対側の、キャリアフイルム(1)の第二の面上に部分的に剥離剤層(3)が設けられており、
その際、剥離剤層(3)によって覆われる面積は、キャリアの裏面の全面積の最大50%を占め、
その際、少なくとも、キャリアフィルム(1)の前記第二の面をエッチングし、
該接着テープで、巻き断面において膨張する媒体の周りをラッピングし、
それによって、接着テープの少なくとも一部が、接着剤層(2)でもって下方の巻き層上に接着される、
上記の方法。
【請求項2】
キャリアフィルム(1)の前記第二の面に、別の層が施用されていないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接着テープが、重なって接着している複数の巻き層で前記媒体の周囲に巻き付けられることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記キャリアフィルム(1)をエッチングするために、トリクロロ酢酸(ClC−COOH)またはトリクロロ酢酸を、不活性結晶性化合物と組み合わせて使用ることを特徴とする、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
天然−または合成ゴムベースの接着剤の群から、接着剤層(2)の一つの接着剤が選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
巻き断面において大きさが可変の媒体、および
該媒体の周囲に巻き断面に沿って自身上に巻かれている接着テープであって、該接着テープはキャリアフィルム(1)を備え、かつこのキャリアフィルム(1)の第一の面上に接着剤層(2)が、そして、第二の面上にプラズマ処理された剥離剤層(3)が施用されている、接着テープ、
を有し、
剥離剤層(3)によって覆われる面積が、キャリアの裏面の全面積の最大50%を占め、および
少なくとも、キャリアフィルム(1)の前記第二の面がエッチングされている、
デバイス。
【請求項7】
前記接着テープが、複数の巻き層で重なって接着されていることを特徴とする、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記接着テープが、その引張り強度を高める、少なくとも一つのフィラメントを有することを特徴とする、請求項6または7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記接着テープに、複数のフィラメントが設けられていることを特徴とする、請求項6、7または8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記剥離剤層(3)の剥離剤が、次の群、
鎖アルキル基をベースとする界面活性剤系の剥離系;ポリビニルステアリルカルバメート、ポリエチレンイミンステアリルカルバミド、C14〜C28脂肪酸のクロム錯体またはステアリルコポリマーからなる群に由来することができるか、またはペルフルオロ化されたアルキル基を有するアクリルポリマーをベースとすることができるポリマー;リコーンまたはフルオロシリコーン化合物、
からのものであることを特徴とする、請求項6〜9のいずれか一つに記載のデバイス。
【請求項11】
前記界面活性剤系の剥離系がステアリルスルホスクシネートまたはステアリルスルホスクシナメートであることを特徴とする、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記シリコーンまたはフルオロシリコーン化合物がポリ(ジメチル−)シロキサンをベースとすることを特徴とする、請求項10または11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記接着剤層(2)の一つの接着剤が、天然−または合成ゴムベースの接着剤の群由来であることを特徴とする、請求項6〜12のいずれか一つに記載のデバイス。
【請求項14】
接着テープロール、および該接着テープロールから接着テープを巻きほどくためのデバイスを有するアプリケーターであって、
その際、該接着テープロールから巻きほどいた接着テープには、キャリアフイルム(1)の第一の面上に接着剤層(2)が設けられており、かつ、前記第一の面とは反対側の、キャリアフイルム(1)の第二の面上に部分的に剥離剤層(3)が設けられており、
この際、剥離剤層(3)によって覆われる面積が、キャリアの裏面の全面積の最大50%を占め、及び少なくとも、キャリアフィルム(1)の前記第二の面がエッチングされており、
かつ、
巻きほどかれた接着テープの剥離剤層(3)に方向付けられたプラズマノズルを有する、上記のアプリケーター。
【請求項15】
前記接着テープのための切断装置を特徴とする、請求項14に記載のアプリケーター。
【請求項16】
プラズマ処理の際に生ずる反応生成物のための吸引装置を特徴とする、請求項14または15に記載のアプリケーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻き断面において膨張する媒体を接着テープでラッピングして接着するための方法に関する。本発明はまた、接着テープであって、それ自体の上に巻き上げられた接着テープを有するデバイス、および接着テープを施用するためのアプリケーターに関する。
【背景技術】
【0002】
接着テープが、媒体の周りで、該テープ自体の上に数回巻かれた接着テープの一連の用途が知られている。例えば、高電圧バッテリーの製造において、接着テープはそれ自体の上に接着されて巻き付けられる。その巻き付けの際に、テープ自体に予めかかる負荷だけでなく、バッテリーの充放電中の膨張によって、その巻き付けられた部材に力が及ぶ。いくつかの用途において、接着テープは、フィラメントによって強化することができる。好ましくは、接着テープの長手方向にフィラメントを延在させて、接着テープの引張強度を著しく高める。しかしながら、複数回巻き付けた場合の問題は、上下互いに巻き付けられた部材の接着力が、接着テープの引張強度を超えてしまうことである。通常、接着テープは使用の前に、接着テープロール上に提供される。このために、接着テープの裏面、すなわちキャリアフィルムにおける接着剤層と反対側の面の外側に剥離剤層を備えている。剥離剤層は、キャリアフィルムと、後に続く接着テープを巻いたものの接着剤層との間の剥離力を引き下げ、そして、接着テープを接着テープロールから最初に巻きほどけるようにする。これにより、ライナーの必要性がなくなり、コストが削減される。剥離剤層は、例えば、シリコーン含有層であってもよいが、また、剥離コーティングであってもよい。剥離剤層は、通常、接着テープを巻きほどいた後に、接着フィルムの外側上に残り、そして、当然ながら、後続の、高電圧バッテリーのような媒体に巻き付ける際にも、接着テープを巻いたものと、直後に続く外側の接着テープの巻いたものとの間の剥離力を引き下げる。特に、高電圧バッテリーのような、巻き断面において膨張する媒体の場合、これは、発展する膨張力によって、接着テープの巻いたもの巻きが、解かれる事態を招き得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ国特許第198 07 752 A1号明細書
【特許文献2】ドイツ国特許第100 11 788 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の課題は、上述した欠点を回避した、断面において膨張する媒体をラッピングして接着する方法を提供することである。
【0005】
また、本発明の課題は、上述した欠点を回避した自己接着テープを備えたデバイスを提供することである。
【0006】
本発明のさらなる課題は、本発明による方法を実施できるアプリケーターを提供することである。
【0007】
該課題は、請求項1の特徴を有する最初に述べた方法によって、その第一の態様において解決される。
【0008】
本発明による方法で使用するための接着テープは、好ましくは、接着テープの長手方向および幅に沿って全体に延在するキャリアフィルムを有する。キャリアフィルムの一方の面上には、接着剤層が好ましくは全面的に設けられており、そして、以下では裏面と呼ばれる、その一方の面とは反対側のキャリアフィルムの面上には、剥離剤層(および/またはそのほかの層)は設けられていない。
【0009】
本発明の変形の一つにおいて、剥離剤層は部分的に存在し、剥離剤層によって覆われた領域は、キャリアの裏面の全面積の最大50%、好ましくは最大20%、より好ましくは最大10%、さらに好ましくは最大5%を占める。本発明の本質は、少なくともフィルムの裏側の表面、好ましくは、両方の表面がエッチングされることである。
【0010】
接着テープは、接着テープロール上に設けられ、そして、その接着テープロールから使用するために巻きほどかれる。接着テープまたは接着テープの一部は巻きほどかれる。接着テープは、接着テープの少なくとも一部が直接隣接する下の巻き層に接着剤層でもって接着されるように、断面において膨張する媒体の周りに巻き付けられる。
【0011】
好ましくは、巻き断面において膨張する媒体の周囲にいくつかの上下に重ね合わされた巻き層に接着テープを巻くことも企図される。本発明によれば、接着テープは、少なくとも巻き層の一部に沿って、またはいくつかの巻き層に沿って、該テープ自体にも接着する。
【0012】
適切なキャリアフィルムは、例えば、PA、PUまたはPVC、ポリオレフィンまたはポリエステル、好ましくはPET(ポリエチレンテレフタレート)からなるポリエステルなどのフィルムである。フィルム自体は、いくつかの個々の層、例えば、共押出しした層からなることができる。
【0013】
ポリオレフィン以外には、エチレンと、極性モノマー、例えば、スチレン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチルまたはアクリル酸とのコポリマーも適切である。これは、HDPE、LDPE、MDPEのようなホモポリマーであってもよいし、あるいは、エチレンまたは他のオレフィン、例えば、プロペン、ブテン、ヘキセンまたはオクテンのコポリマー(例えば、LLDPE、VLLDE)であってもよい。また、ポリプロピレン(例えば、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマーまたはポリプロピレンブロックコポリマー)も適している。
【0014】
ポリエステルをベースとするフィルム、特に、ポリエチレンテレフタレートのフィルムが、とりわけ好ましい。
【0015】
本発明によれば、フィルムとして一軸延伸および二軸延伸されたフィルムを卓越して使用することが可能である。例えば、一軸延伸されたポリプロピレンは、長手方向において、非常に高い引き裂き強度および低い伸びを特徴とする。
【0016】
粗面化のために非常に良好な結果を得るために、トリクロロ酢酸(ClC−COOH)またはトリクロロ酢酸を、不活性結晶性化合物、好ましくはケイ素化合物、特に、好ましくは[SiOと組み合わせて、フィルムをエッチングする試薬として使用することが推奨される。不活性結晶性化合物の意図は、PETフィルムの表面にこれを組み込んで、それにより粗度および表面エネルギーを高めることである。
【0017】
好ましい一実施形態によるフィルムの厚さは5〜250μm、好ましくは、6〜120μm、特に、12〜100μm、就中、28〜50μm、とりわけ、36μmである。
【0018】
キャリアフィルムとして特に好ましいのは、両面がエッチングされたポリエチレンテレフタレートフィルムである。そのようなものは、Coveme社の商品名Kemafoil HPHとして入手可能である。
【0019】
フィルムの製造のために、添加剤およびさらなる成分を添加することが適切であり得、これらは、成膜性を向上させ、結晶性セグメントを形成する傾向を減少させ、および/または、目標とする機械的特性を向上させるか、または場合によっては悪化させる。
【0020】
フィルムは、着色および/または透明であり得る。
【0021】
キャリアフィルムの一方の面上には、好ましくは、キャリアフィルムの面を全面的に覆う接着剤層が設けられている。公知の接着系の全てが使用できる。
【0022】
天然または合成ゴムベースの接着剤以外には、特に、シリコーン接着剤およびポリアクリレート接着剤、好ましくは、低分子量アクリレートホットメルト感圧接着剤が使用可能である。後者は、ドイツ国特許第198 07 752 A1号明細書(特許文献1)およびドイツ国特許第100 11 788 A1号明細書(特許文献2)においてより詳細に記載されている。アクリレートベースのUV架橋性接着剤も適している。
【0023】
塗工重量は、好ましくは、15〜200g/m、より好ましくは、30〜120g/mの範囲であり、特に好ましくは、50g/mである(これは、おおよそ15〜200μm、より好ましくは30〜120μm、特に好ましくは50μmの厚さに相当する。)。
【0024】
好ましくは、接着剤は感圧接着剤、つまり、乾燥状態において室温で永続的に接着性および粘着性を維持する粘弾性物質である。ほとんどすべての基材上で、軽い圧力で直ちに接着する。
【0025】
感圧接着剤は、ブロックコポリマーを含有するポリマーブロックをベースにしたものである。これらは、スチレンのようなビニル芳香族(Aブロック)および、例えば、ブタジエンおよびイソプレンまたは両方のコポリマーのような、1,3−ジエンの重合によるもの(Bブロック)であることが好ましい。様々なブロックコポリマーの混合物を使用することも可能である。部分的または完全に水素化された生成物が好ましい。
【0026】
ブロックコポリマーは、線状A−B−A構造を有することができる。放射型のブロックコポリマー、ならびに星型および線状のマルチブロックコポリマーを同様に使用できる。
【0027】
約>75℃のガラス転移温度を有する他の芳香族含有ホモポリマーおよびコポリマー(好ましくはC〜C12芳香族)をベースとする、例えば、α−メチルスチレン含有芳香族ブロックのようなポリマーブロックを、ポリスチレンブロックの代わりに使用することができる。同様に、>+75℃のガラス転移温度を有する(メタ)アクリレートホモポリマーおよび(メタ)アクリレートコポリマーをベースとするポリマーブロックを使用することができる。この場合、一方が硬質ブロックとして(メタ)アクリレートポリマーだけをベースとするもの、他方が、例えば、ポリスチレンブロックなどのポリ芳香族ブロックおよびポリ(メタ)アクリレートブロックの両方を利用するようなブロックコポリマーが使用できる。
【0028】
個々の場合に特に明記しない限り、無機ではない、かつ、主として無機ではない材料、特に、有機材料およびポリマー材料のガラス転移温度に関するデータは、DIN53765:1994−03によるガラス転移温度−値Tgが参照される(セクション2.2.1を参照)。
【0029】
スチレン−ブタジエンブロックコポリマーおよびスチレン−イソプレンブロックコポリマーおよび/またはそれらの水素化生成物、したがって、スチレン−エチレン/ブチレンブロックコポリマーおよびスチレン−エチレン/プロピレンブロックコポリマーの代わりに、本発明によれば、別のポリジエン含有エラストマーブロック、例えば、いくつかの異なる1,3−ジエンのコポリマーを利用したブロックコポリマーおよびそれらの水素化生成物を使用することも同様に可能である。別の官能化ブロックコポリマー、例えば、無水マレイン酸変性またはシラン変性スチレンブロックコポリマーを本発明に従って使用することができる。
【0030】
ブロックコポリマーの典型的な使用濃度は、30重量%〜70重量%の範囲、特に、35重量%〜55重量%の範囲の濃度である。
【0031】
別のポリマーとして、純粋な炭化水素、例えば、天然のまたは合成的に製造されたポリイソプレンまたはポリブタジエンのような不飽和ポリジエンをベースとするもの、化学的に、本質的に飽和したエラストマー、例えば、飽和エチレン−プロピレンコポリマー、α−オレフィンコポリマー、ポリイソブチレン、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ならびに、化学的に官能化された炭化水素、例えば、ハロゲン含有アクリレート含有またはビニルエーテル含有ポリオレフィン、を存在させることができ、これはビニル芳香族ブロックコポリマーを半分まで置換することができる。
【0032】
接着樹脂は接着付与剤として役立つ。
【0033】
適切な接着樹脂には、とりわけ優先的に、ロジンまたはロジン誘導体をベースとする、部分的または完全に水素化された樹脂である。少なくとも部分的に水素化された炭化水素樹脂、例えば、芳香族含有炭化水素樹脂の部分的または完全な水素化によって得られる水素化された炭化水素樹脂(例えば、Arkon PおよびArkon Mシリーズ(Arakawa社)またはRegaliteシリーズ(Eastman社)、水素化されたジシクロペンタジエン−ポリマーをベースとする炭化水素樹脂(例えば、ExxonのEscorez 5300シリーズ)、水素化されたC5/C9樹脂をベースとする炭化水素樹脂(Exxon社のEscorez 5600シリーズ)または、水素化されたC5樹脂をベースとする炭化水素樹脂(Eastman社のEastotac)またはそれらの混合物を使用することも可能である。
【0034】
ポリテルペンをベースとする水素化されたポリテルペン樹脂も使用することができる。上述の接着性樹脂は、単独でも混合しても使用することができる。
【0035】
さらなる添加剤として、典型的に、光安定剤、例えば、UV吸収剤、立体障害アミン、オゾン劣化防止剤、金属不活性化剤、加工助剤、末端ブロック強化樹脂を使用することが可能である。
【0036】
例えば、分子量<1500g/mol(数平均)または液状のEPDMタイプを有する低分子量ポリイソブチレンなどの液体樹脂、可塑剤油または低分子量液体ポリマーなどの可塑剤が典型的に使用される。
【0037】
接着剤は、接着テープのキャリアよりも小さい幅を有するストリップの形態で接着テープの長手方向に施用できる。
【0038】
コーティングしたストリップは、キャリア材料の幅の10%〜80%の幅を有することができる。特に好ましくは、キャリア材料の幅の20%〜50%のコーティングを有するストリップを使用するような場合である。
【0039】
使用の場合に応じて、接着剤のいくつかの平行なストリップをキャリア材料上にコーティングすることもできる。
【0040】
キャリア上のストリップの位置は自由に選択可能であり、その際、キャリアの縁部の一つに直接配置することが好ましい。
【0041】
接着剤の製造および加工は、溶液、分散液および溶融物から行うことができる。好ましくは、製造および加工方法は、溶液からならびに溶融物から実施される。特に好ましくは溶融物からの接着剤の製造であり、その際、バッチ法または連続法を用いることできる。特に有利なのは、押出機を用いて感圧接着剤を連続的に製造することである。
【0042】
溶融物から加工する場合、これらは、ノズルまたはカレンダーによる塗工方法であることができる。
【0043】
溶液からの方法では、少し挙げるとドクターブレード、ナイフまたはノズルを用いたコーティングが知られている。
【0044】
最後に、接着テープは、使用するまで接着剤層を覆うカバー材料を有することができる。カバー材料として適切なものは、上に詳述した全ての材料である。
【0045】
しかしながら、好ましくは、プラスチックフィルムまたは十分に接着された長繊維紙のような毛羽立ちのない材料が使用される。
【0046】
ライナーが存在する接着テープの変形が好ましい。
【0047】
ライナー(剥離紙、剥離フィルム)は、接着テープまたはラベルの一部ではなく、それらの製造、保管または打ち抜きによるさらなる加工のための助けとなるだけである。さらに、接着テープのキャリアとは異なり、ライナーは接着剤層にしっかりと結合されていない。
【0048】
公知の接着テープの問題点は、剥離剤層は、一方では、接着剤層とキャリアフィルムとの間の剥離力を有利に低減する必要があり、それにより、保管のために接着テープ自体を巻きあげることが可能であり、また巻きほどきを可能にする、という事実である。巻きほどかれた接着テープは、依然として剥離剤層を有しているため、後にその接着テープを、巻き断面において可変である媒体の周りに新たに巻き付ける際に、同様に、しかぢながら、不都合なことに、接着剤層と、その下にあるキャリアフィルムとの間の剥離力が低下し、そして、巻きの強度が低下する。
【0049】
驚くべきことに、エッチングされたフィルムを使用することによって、剥離力が予想外に高くなる可能性があることが示されている。
【0050】
該課題は、さらに、本発明によるアプリケーターによって解決される。
【0051】
本発明のアプリケーターは、接着テープロール、および該接着テープロールから接着テープを巻きほどくためのデバイスを含み、その際、該接着テープロールから巻きほどかれた接着テープには、キャリアフィルムの片面上に接着層が設けられている。
【0052】
好ましいやり方では、アプリケーターは接着テープのための切断装置を有する。該切断装置は、巻きほどかれて、上に貼り付けられた接着テープの切断を可能にする。
【0053】
アプリケーターはまた、接着テープを基材上に押圧するためのニップロールを含むことができる。
【0054】
さらに、場合によって既存のライナーのための収集装置を提供することができる。
【0055】
本発明の好ましい一実施形態において、接着テープは、接着テープの長手方向に延びる、引張り強度を高める少なくとも一つのフィラメントを有する。フィラメントは、特に、ガラスフィラメントまたはPETフィラメントであり得る。フィラメントは、キャリアフィルムおよび/または接着剤層にも組み込むことができる。通常、フィラメントは、個々のフィラメントの束からなり、その際、サイジング、すなわちバインダーによって、個々のフィラメントを結合させて該束は形成される。
【0056】
フィラメントは、キャリアフィルムまたは接着剤層またはその両方に、長手方向において、互いに隣接して、互いに離間して配置するか、または、ノンクリンプ織物または織物として一体化することもできる。
【0057】
フィラメントノンクリンプ織物またはフィラメント織物は、長手方向において、好ましくは少なくとも100N/cm、より好ましくは200N/cm、特に好ましくは500N/cmの引張り強度を有する。
【0058】
好ましくは、該ノンクリンプ織物または織物を形成するために使用されるヤーンは、80〜2200dtex、好ましくは280〜1100dtexの繊度を有する。
【0059】
本発明の目的のために、フィラメントは、文献においてマルチフィラメントと呼ばれることが多い、平行な線状の個々の繊維/個々のフィラメントの束を意味すると理解される。場合によっては、この繊維の束は撚り合わせることによって堅くすることができ、その場合には、紡糸されたまたは撚られたフィラメントと呼ばれる。あるいはまた、圧縮空気またはウォータージェットで旋回させることにより、繊維束を強化することができる。以下では、一般化のために、これらの実施形態の全てにおいてフィラメントという語だけが使用される。
【0060】
フィラメントは、テクスチャー加工されているか、または、滑らかかつポイント強化(punktverfestigt)されているか、または、強化されずに存在させることができる。
【0061】
ノンクリンプ織物/織物は、後から染色することができるか、またはスパン染色されたヤーンからなることができる。
【0062】
より好ましくは、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはポリアミドのフィラメント、好ましくはポリエステル(ジオール)からなるものである。
【0063】
本発明は、第二の態様において、デバイスによって解決される。
【0064】
デバイスという語はここでは一般的に理解されるべきである。デバイスは、変圧器、パッケージング、スチールバンドル、電池および高電圧バッテリーのような、巻き断面において大きさが可変である媒体を含む。媒体は、巻き断面において、好ましくは温度の影響によって可変である。媒体の周りには、巻き断面に沿って、それ自体の上に巻かれた接着テープが設けられ、該接着テープは、媒体の周囲に延在して、その上で、周囲に張り巡らされて置かれて、媒体上で接着されている。
【0065】
該デバイスは、キャリアフィルムを有する接着テープであって、それ自体の上に巻かれる接着テープを含み、該接着テープは、一方の面上に接着剤層が施用されている。該接着テープは、特に、巻き断面において膨張する媒体、例えば、高電圧バッテリーの周りに巻き付けるために設けられる。デバイスは、特に、接着テープに関して、好ましくは上述の方法の一つによって製造される。
【0066】
本発明を図面の実施形態に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1図1は、静的せん断試験の概略図を示す。
図2図2は、本発明による接着テープの例示的な構成を示す。
図3図3は、シリコーンコーティングされたPETを使用した場合、プラズマ処理された、シリコーンコーティングされたPETを使用した場合、およびエッチングされたPETを使用した場合の、せん抵抗の比較を示す。
【発明の好ましい実施形態】
【0068】
本発明は、巻き断面において膨張する媒体を複数回ラッピングする方法に関する。そのような使用の例は、接着テープが複数の層でそれ自体の上に接着されている高電圧バッテリーの製造である。バッテリーのラッピングおよびそのバッテリーの充電および放電の間の膨張プロセス時に予め加えられた負荷によって、接着テープロールに力が加わる。そのバッテリーの膨張に起因する接着テープの張力に耐えるために、接着テープは、長手方向に延びる一つまたはそれ以上のフィラメントで補強できる。
【0069】
本発明による接着テープは、エッチングされたキャリアフィルム1と、キャリアフィルム1の一方の面上の接着剤層2とを有する。
【0070】
キャリアフィルムの一方の面上に施用された接着剤の、他方の面に対する接着力を試験する一つの可能性は、その他方の面上に接着する際のせん断抵抗を測定することである。使用されるせん断抵抗を測定する方法は、図1に示す動的せん断試験である。試験は以下のように実施する。40×25mmの大きさの接着テープストリップの裏面上で、25×25mmの面積の上に、40×25mmの接着テープストリップを接着し、その接着面を100N/cmで1分間プレスする。その接着テープの結合体は、突出している接着テープストリップでもって張力試験機に取り付けられる。試料を50mm/分の速度で引き剥がし、接着テープストリップがせん断した時の接着面積(N/cm)に対する力を測定する。引っ張り力は矢印で示されている。
【0071】
簡略化のために、上側の接着テープストリップの接着剤は全く示されていない。さらに、第二のストリップの場合、接着剤は接着領域にのみ示されている。
【0072】
キャリアフィルム1は、比較例1および2においてはシリコーン処理されたPETフィルムであり、実施例3においてはエッチングされたPETフィルムである。感圧接着剤としてアクリレート接着剤が使用される。以下のグラフは、プラズマ処理によって、シリコーンによる接着テープの裏面のコーティングに対するせん断抵抗が増加することを示している。この目的のために、剥離剤を有するキャリアフィルムの裏面は、接着のための接着テープの適用の直前に、プラズマ処理の形態の物理的表面処理によって最適化される。エッチングされたフィルムがキャリアとして使用される場合、さらなる、著しい、かつ、予期せぬ高い増加、この場合には、ほぼ倍増したせん断抵抗、が見られる(図3参照)。
【0073】
裏面のプラズマ処理をしない、既知の標準的な接着テープと比較して、以下の利点が挙げられる。
・ 多層型複合材の場合の確実な固着。とりわけ、接着接合体の最後の層が整列するのを防ぐことができる。
・ 裏面の粘着性を改善するための、プラズマ処理のようなプロセス工程が不要となる。
【符号の説明】
【0074】
1 キャリアフィルム
2 接着剤層
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1.
巻き断面において膨張する媒体を接着テープでラッピングして接着する方法であって、接着テープを接着テープロールから巻きほどき、その巻きほどいた接着テープは、キャリアフイルム(1)の片面上に接着剤層(2)が設けられており、かつ、反対側の面上に部分的に剥離剤層(3)が設けられており、
その際、剥離剤層(3)によって覆われる面積は、キャリアの裏面の全面積の最大50%、好ましくは最大20%、より好ましくは最大10%、さらに好ましくは最大5%を占め、
その際、少なくとも、キャリアフィルム(1)の、剥離剤層(3)を備えた側の表面をエッチングし、
該接着テープで、巻き断面において膨張する媒体の周りをラッピングし、
それによって、接着テープの少なくとも一部が、接着剤層(2)でもって下方の巻き層上に接着される、
上記の方法。
2.
前記接着剤層(2)が施用された面とは反対側の面に、剥離剤層(3)および/または別の層が施用されていないことを特徴とする、上記1に記載の方法。
3.
前記接着テープが、重なって接着している複数の巻き層で前記媒体の周囲に巻き付けられることを特徴とする、上記1または2に記載の方法。
4.
前記キャリアフィルム(1)をエッチングするために、トリクロロ酢酸(ClC−COOH)またはトリクロロ酢酸を、不活性結晶性化合物、好ましくはケイ素化合物、特に、好ましくは[SiOと組み合わせて使用されることを特徴とする、上記1、2または3に記載の方法。
5.
天然−または合成ゴムベースの接着剤、特に、シリコーン接着剤ならびにポリアクリレート接着剤の群から、接着剤層(2)の一つの接着剤が選択されることを特徴とする、上記1〜4のいずれか一つに記載の方法。
6.
巻き断面において大きさが可変の媒体、および
該媒体の周囲に巻き断面に沿って自身上に巻かれている接着テープであって、該接着テープはキャリアフィルム(1)を備え、かつこのキャリアフィルム(1)の一方の面上に接着剤層(2)が、そして、他方の面上にプラズマ処理された剥離剤層(3)が施用されている、接着テープ、
を有するデバイス。
7.
前記接着テープが、複数の巻き層で重なって接着されていることを特徴とする、上記6に記載のデバイス。
8.
前記接着テープが、その引張り強度を高める、少なくとも一つのフィラメントを有することを特徴とする、上記6または7に記載のデバイス。
9.
前記接着テープに、複数のフィラメントが設けられていることを特徴とする、上記6、7または8に記載のデバイス。
10.
前記剥離剤層(3)の剥離剤が、次の群、
ステアリルスルホスクシネートまたはステアリルスルホスクシナメートなどの長鎖アルキル基をベースとする界面活性剤系の剥離系;ポリビニルステアリルカルバメート、ポリエチレンイミンステアリルカルバミド、C14〜C28脂肪酸のクロム錯体またはステアリルコポリマーからなる群に由来することができるか、またはペルフルオロ化されたアルキル基を有するアクリルポリマーをベースとすることができるポリマー;特に、ポリ(ジメチル−)シロキサンをベースとする、シリコーンまたはフルオロシリコーン化合物、
からのものであることを特徴とする、上記6〜9のいずれか一つに記載のデバイス。
11.
前記接着剤層(2)の一つの接着剤が、天然−または合成ゴムベースの接着剤、シリコーン接着剤、および、特に、ポリアクリレート接着剤の群由来であることを特徴とする、上記6〜10のいずれか一つに記載のデバイス。
12.
接着テープロール、および該接着テープロールから接着テープを巻きほどくためのデバイスを有するアプリケーターであって、
その際、該接着テープロールから巻きほどいた接着テープには、キャリアフイルム(1)の片面上に接着剤層(2)が設けられており、かつ、反対側の面上に部分的に剥離剤層(3)が設けられており、かつ、
巻きほどかれた接着テープの剥離剤層(3)に方向付けられたプラズマノズルを有する、上記のアプリケーター。
13.
前記接着テープのための切断装置を特徴とする、上記12に記載のアプリケーター。
14.
プラズマ処理の際に生ずる反応生成物のための吸引装置を特徴とする、上記12または13に記載のアプリケーター。
図1
図2
図3