【実施例】
【0051】
実施例/比較例
実施例1
ヒドロゲル組成物(1)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):31.6%)0.002gをPBS 50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:4.0wt%)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.002gをPBS 50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:4.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.4であり、混合溶液のpHは5.5であった。目視の確認によると、ゲル化は成功していた。
【0052】
実施例2
ヒドロゲル組成物(2)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):31.6%)0.002gをPBS 50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:4.0wt%)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.004gをPBS 50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:8.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.8であり、混合溶液のpHは5.5であった。目視の確認によると、ゲル化は成功していた。
【0053】
実施例3
ヒドロゲル組成物(3)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):31.6%)0.002gをPBS 50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:4.0wt%)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.005gをPBS 50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:10wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは5.5であった。目視の確認によると、ゲル化は成功していた。
【0054】
実施例4
ヒドロゲル組成物(4)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):31.6%)0.001gをPBS 50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:2.0wt%、pH:4.0)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.002gをPBS 50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:4.0wt%、pH:7.2)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.8であり、混合溶液のpHは5.6であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には12分かかった。
【0055】
実施例5
ヒドロゲル組成物(5)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):31.6%)0.001gをPBS 50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:2.0wt%、pH:4.0)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.002gを脱イオン水50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:4.0wt%、pH:4.4)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.8であり、混合溶液のpHは4.3であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には20分かかった。
【0056】
実施例6
ヒドロゲル組成物(6)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):31.6%)0.001gを脱イオン水50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:2.0wt%、pH:3.9)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.002gを脱イオン水50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:4.0wt%、pH:4.4)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.8であり、混合溶液のpHは4.1であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には6時間以上かかった。
【0057】
実施例7
ヒドロゲル組成物(7)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):31.6%)0.002gをPBS 50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:4.0wt%、pH:3.9)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.002gを脱イオン水50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:4.0wt%、pH:4.4)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.4であり、混合溶液のpHは4.2であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には10分かかった。
【0058】
実施例8
ヒドロゲル組成物(8)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):31.6%)0.001gをPBS 50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:2.0wt%、pH:4.0)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:10kDa、4アームタイプ)0.002gをPBS 50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:4.0wt%、pH:7.2)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.4であり、混合溶液のpHは5.6であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には2〜3分かかった。
【0059】
実施例9
ヒドロゲル組成物(9)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):31.6%)0.001gをPBS 50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:2.0wt%、pH:4.0)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:10kDa、4アームタイプ)0.0015gをPBS 50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:3wt%、pH:7.2)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.3であり、混合溶液のpHは5.6であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には6〜8分かかった。
【0060】
実施例10
ヒドロゲル組成物(10)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.5%)0.002gを0.9% NaCl溶液50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:4.0wt%、pH:4.2)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.004gを0.9% NaCl溶液50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:8.0wt%、pH:5.5)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は2.0であり、混合溶液のpHは4.9であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化にかかった時間は5分未満であった。
【0061】
実施例11
ヒドロゲル組成物(11)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.5%)0.002gを0.9% NaCl溶液50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:4.0wt%、pH:4.2)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.006gを0.9% NaCl溶液50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:12.0wt%、pH:5.5)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は3.0であり、混合溶液のpHは4.9であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化にかかった時間は5分未満であった。
【0062】
実施例12
ヒドロゲル組成物(12)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.5%)0.002gを0.9% NaCl溶液50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:4.0wt%、pH:4.2)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.01gを0.9% NaCl溶液50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:20wt%、pH:5.5)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は5.0であり、混合溶液のpHは4.9であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には1日以上かかった。
【0063】
実施例13
ヒドロゲル組成物(13)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):5.4%)0.01gを0.9% NaCl溶液50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:20wt%、pH:4.2)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.005gを0.9% NaCl溶液50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:10wt%、pH:5.5)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは4.9であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には2〜3分かかった。
【0064】
実施例14
ヒドロゲル組成物(14)の作製
先ず、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.5%)0.01gをPBS 50μL中に溶解して、第1の溶液を作った(濃度:20wt%、pH:4.2)。次に、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.01gを0.9% NaCl溶液50μL中に溶解して、第2の溶液を作った(濃度:20wt%、pH:5.5)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは4.9であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には1〜2分かかった。
【0065】
実施例15
薬物送達システム(1)の作製
ハーセプチン(Herceptin)粉末0.00106gを0.9% NaCl溶液中に溶解し、薬物溶液(濃度:10.6mg/mL)を形成した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):12.5%)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.89であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には4分かかった。
【0066】
実施例16
薬物送達システム(2)の作製
ハーセプチン粉末0.00106gを0.9% NaCl溶液中に溶解し、薬物溶液(濃度:10.6mg/mL)を形成した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):12.5%)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.00075gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:1.5wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.67であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には5分かかった。
【0067】
実施例17
薬物送達システム(3)の作製
ハーセプチン粉末0.00106gを0.9% NaCl溶液中に溶解し、薬物溶液(濃度:10.6mg/mL)を形成した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):5.3%)0.0015gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:3.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.33であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には5分かかった。
【0068】
実施例18
薬物送達システム(4)の作製
ハーセプチン粉末0.00106gを0.9% NaCl溶液中に溶解し、薬物溶液(濃度:10.6mg/mL)を形成した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):5.3%)0.0015gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:3.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.00075gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:1.5wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には6分かかった。
【0069】
実施例19
薬物送達システム(5)の作製
ハーセプチン粉末0.1gを脱イオン水中に溶解してから、塩化ナトリウム水溶液(0.9%)を用いて4℃で24時間透析して(MWCO:10000)、薬物溶液を形成した。次いで、薬物溶液を遠心分離し(4000g、4℃)、145.5mg/mLになるまで濃縮した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):5.3%)0.0015gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:3.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.33であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には1分かかった。
【0070】
実施例20
薬物送達システム(6)の作製
ハーセプチン粉末0.1gを脱イオン水中に溶解してから、塩化ナトリウム水溶液(0.9%)を用いて4℃で24時間透析して(MWCO:10000)、薬物溶液を形成した。次いで、薬物溶液を遠心分離し(4000g、4℃)、145.5mg/mLになるまで濃縮した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):5.3%)0.0015gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:3.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.00075gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:1.5wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には1分かかった。
【0071】
実施例21
薬物送達システム(7)の作製
ハーセプチン粉末0.1gを脱イオン水中に溶解してから、塩化ナトリウム水溶液(0.9%)を用いて4℃で24時間透析して(MWCO:10000)、薬物溶液を形成した。次いで、薬物溶液を遠心分離し(4000g、4℃)、145.5mg/mLになるまで濃縮した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):12.5%)0.00075gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:1.5wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.0006gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:1.2wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.71であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には1分かかった。
【0072】
実施例22
薬物送達システム(8)の作製
ハーセプチン粉末0.1gを脱イオン水中に溶解してから、塩化ナトリウム水溶液(0.9%)を用いて4℃で24時間透析して(MWCO:10000)、薬物溶液を形成した。次いで、薬物溶液を遠心分離し(4000g、4℃)、128.6mg/mLになるまで濃縮した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.3%)0.00075gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:1.5wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.00075gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:1.5wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には20分かかった。
【0073】
実施例23
薬物送達システム(9)の作製
ハーセプチン粉末0.1gを脱イオン水中に溶解してから、塩化ナトリウム水溶液(0.9%)を用いて4℃で24時間透析して(MWCO:10000)、薬物溶液を形成した。次いで、薬物溶液を遠心分離し(4000g、4℃)、128.6mg/mLになるまで濃縮した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.3%)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には10分かかった。
【0074】
実施例24
薬物送達システム(10)の作製
ハーセプチン粉末0.1gを脱イオン水中に溶解してから、塩化ナトリウム水溶液(0.9%)を用いて4℃で24時間透析して(MWCO:10000)、薬物溶液を形成した。次いで、薬物溶液を遠心分離し(4000g、4℃)、128.6mg/mLになるまで濃縮した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.3%)0.0015gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:3.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.0015gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:3.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には4分かかった。
【0075】
実施例25
薬物送達システム(11)の作製
ハーセプチン粉末0.1gを脱イオン水中に溶解してから、塩化ナトリウム水溶液(0.9%)を用いて4℃で24時間透析して(MWCO:10000)、薬物溶液を形成した。次いで、薬物溶液を遠心分離し(4000g、4℃)、205mg/mLになるまで濃縮した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.3%)0.00075gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:1.5wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.00075gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:1.5wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には15〜17分かかった。
【0076】
実施例26
薬物送達システム(12)の作製
ハーセプチン粉末0.1gを脱イオン水中に溶解してから、塩化ナトリウム水溶液(0.9%)を用いて4℃で24時間透析して(MWCO:10000)、薬物溶液を形成した。次いで、薬物溶液を遠心分離し(4000g、4℃)、205mg/mLになるまで濃縮した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.3%)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には5〜6分かかった。
【0077】
実施例27
薬物送達システム(13)の作製
ハーセプチン粉末0.1gを脱イオン水中に溶解してから、塩化ナトリウム水溶液(0.9%)を用いて4℃で24時間透析して(MWCO:10000)、薬物溶液を形成した。次いで、薬物溶液を遠心分離し(4000g、4℃)、205mg/mLになるまで濃縮した。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.3%)0.0015gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:3.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.0015gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:3.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には2〜3分かかった。
【0078】
実施例28
薬物送達システム(14)の作製
ハーセプチン粉末0.1gを脱イオン水中に溶解して、薬物溶液を形成した(濃度:190mg/mL)。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.3%)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には3〜5分かかった。
【0079】
実施例29
薬物送達システム(15)の作製
ハーセプチン粉末0.1gを脱イオン水中に溶解して、薬物溶液を形成した(濃度:160mg/mL)。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):19.8%)0.00075gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:1.5wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.0015gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:3.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化にかかった時間は2分未満であった。
【0080】
実施例30
薬物送達システム(16)の作製
MOPSバッファー50μL中のハーセプチン粉末0.01848gと、MOPSバッファー50μL中のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa,DS(グラフト率):11.3%)0.001gとを混合して複合体溶液を形成し、遠心分離して上澄み30μLを除去した。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.001gを0.9%NaCl溶液30μL中に溶解し、複合体溶液と混合して、ヒドロゲルを作製した(最終薬物濃度:184.8mg/mL)。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には5分かかった。
【0081】
実施例31
薬物送達システム(17)の作製
0.9% NaCl溶液をバッファー溶液として用い、濃度128.0mg/mLのハーセプチン/Zn複合体溶液を作った。pH値5.0の酸性条件下、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):12.5%)、およびチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン/Zn複合体溶液中に溶解して、PGA濃度1.0wt%、PEG濃度0.75wt%のハーセプチンヒドロゲルを作製した(マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.7)。ゲル化時間は30分を超えた。
【0082】
実施例32
薬物送達システム(18)の作製
0.5Mヒスチジン溶液をバッファー溶液として用い、濃度208.0mg/mLのハーセプチン/Zn複合体溶液を作った。pH値4.3の酸性条件下、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):12.5%)、およびチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン/Zn複合体溶液中に溶解して、PGA濃度1.3wt%、PEG濃度0.8wt%のハーセプチンヒドロゲルを作製した(マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.6)。ゲル化時間は5〜10分であった。
【0083】
実施例33
薬物送達システム(19)の作製
ドキソルビシン粉末0.004gを脱イオン水中に溶解して、薬物溶液を形成した(濃度:4.0mg/mL)。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.5%)0.0015gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:3.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.0015gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:3.0wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは4.5であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には20〜30分かかった。
【0084】
比較例1
薬物送達システムの作製
ドキソルビシン粉末0.002gを脱イオン水中に溶解して、薬物溶液を形成した(濃度:2.0mg/mL)。次いで、マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.5%)0.001gを薬物溶液50μL中に溶解し、第1の溶液を作った(濃度:2.0wt%)。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.006gを薬物溶液50μL中に溶解し、第2の溶液を作った(濃度:12wt%)。次いで、第1の溶液と第2の溶液を等容量(50μL)で混合し、ヒドロゲルを作製した。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は6.0であり、混合溶液のpHは5.0であった。目視の確認によると、ゲル化は失敗した。
【0085】
実施例34
ヒドロゲル作製に対するpHの影響
各種バッファー溶液を用い、濃度1.5wt%のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.5%)の各種溶液を作製した。各種バッファー溶液を用い、濃度1.5wt%のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)の各種溶液を作製した。マレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)の溶液とチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)の溶液とを各種pH環境下で混合してヒドロゲルを作製し、ゲル化のプロセスを観察した。表1に、ゲル化時間、均一性およびヒドロゲルの剛性などの結果が示されている。
【0086】
【表1】
【0087】
この例では、酸性pH環境(つまり、pH=4.2、4.5、5.0、および6.5)下、作製時において、適度な混合物のゲル化時間および均一性が得られた。さらに、かかる条件で形成されたヒドロゲルは好ましい剛性を備える。
【0088】
比較例2
薬物搭載ヒドロゲルのカプセル化および溶解に対するアルカリ性pHの影響
【0089】
濃度50.0mg/mL、pH値7.8のハーセプチン溶液を作製した。適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):31.6%)をハーセプチン溶液中に溶解して、濃度2.0wt%の第1の溶液を作製した。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン溶液中に溶解して、濃度4.0wt%の第2の溶液を作製した。第1の溶液と第2の溶液とをpH値7.8(アルカリ性条件)下で混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.72)、ヒドロゲル(GAEG01)を作製した。ゲル化時間は2分未満であった。
【0090】
次に、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):31.6%)をハーセプチン溶液中に溶解して、濃度2.0wt%の第1の溶液を作製した。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:10kDa、4アームタイプ)をハーセプチン溶液中に溶解して、濃度4.0wt%の第2の溶液を作製した。第1の溶液と第2の溶液とをpH値7.8(アルカリ性条件)下で混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.36)、ヒドロゲル(GAEG02)を作製した。ゲル化時間は同様に2分未満であった。
【0091】
この比較例では、ゲル化が急速である(2分未満)ために、作製の過程で第1の溶液と第2の溶液との混合物が不均一となった。薬物放出挙動の試験において、ヒドロゲルからのハーセプチンの放出は不完全なものであった。ヒドロゲル(GAEG01およびGAEG02)はハーセプチンを約28日しか放出しなかった。加えて、薬物構造および活性の試験では、ハーセプチンの分子構造の完全性は多大なダメージを受け(多数のハーセプチン断片の形成)、かつその活性は失われた(抗原への結合能力が大幅に低下)。
【0092】
実施例35
薬物搭載ヒドロゲルのカプセル化および溶解に対する酸性pHの影響
ヒドロゲルGAEG13を実施例25により作製した。ヒドロゲルGAEG14を実施例26により作製した。ヒドロゲルGAEG15を実施例27により作製した。薬物搭載ヒドロゲル(GAEG13、GAEG14およびGAEG15)のカプセル化および溶解に対する酸性pHの影響について試験を行った。
【0093】
この例では、ヒドロゲル(GAEG13、GAEG14およびGAEG15)の最大薬物搭載濃度が205mg/mLに達した。第1の溶液と第2の溶液との混合物(ヒドロゲル/薬物)は、ゲル化時間が十分であったため(2〜17分)、作製の過程で均一であった。薬物放出挙動の試験において、ヒドロゲルからのハーセプチンの放出は完全であった。ヒドロゲル(GAEG13、GAEG14およびGAEG15)はハーセプチンを約50日も放出した(つまり、ヒドロゲルは徐放能力を備えている)。加えて、薬物構造および活性の試験では、ハーセプチンの分子構造の完全性は維持され、例えば35日目にハーセプチン断片の形成は依然としてなかった。故に、その生物活性は維持されていた(抗原への結合能力が依然高かった)。
【0094】
実施例36
薬物複合体搭載ヒドロゲル(1)の溶解効果
MOPSバッファー50μL中のハーセプチン粉末0.01848gと、MOPSバッファー50μL中のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.3%)0.001gとを混合して複合体溶液を形成し、遠心分離して上澄み30μLを除去した。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)0.001gを0.9% NaCl溶液30μL中に溶解し、複合体溶液と混合して、ヒドロゲル(PGA01)を作製した(最終薬物濃度184.8mg/mL)。この作製において、マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0であり、混合溶液のpHは6.0であった。目視の確認によると、ゲル化は成功しており、ゲル化には5分かかった。
【0095】
この例では、薬物放出挙動の試験において、ヒドロゲルからのハーセプチンの放出は完全であった。ヒドロゲル(PGA01)はハーセプチンを約42日も放出した(つまり、ヒドロゲルは徐放能力を備えている)。加えて、薬物構造および活性の試験では、ハーセプチンの分子構造の完全性は維持され、例えば28日目にハーセプチン断片/凝集体の形成は依然としてなかった。故に、その生物活性は維持されていた(抗原への結合能力が依然高かった)。
【0096】
実施例37
薬物複合体搭載ヒドロゲル(2)の溶解効果
0.9% NaCl溶液をバッファー溶液として用い、濃度128.0mg/mLのハーセプチン/Zn複合体溶液を作製した。pH値5.0(酸性条件)下、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):12.5%)およびチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン/Zn複合体溶液中に溶解し、PGA濃度1.0wt%、PEG濃度0.75wt%(マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.7)のハーセプチンヒドロゲルを作り、ヒドロゲル(GAEGZ001)を作製した。ゲル化時間は30分を超えた。
【0097】
0.5Mヒスチジン溶液をバッファー溶液として用い、濃度208.0mg/mLのハーセプチン/Zn複合体溶液を作製した。pH値4.3(酸性条件)の下、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:1000kDa、DS(グラフト率):12.5%)およびチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン/Zn複合体溶液中に溶解し、PGA濃度1.3wt%、PEG濃度0.8wt%(マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.6)のハーセプチンヒドロゲルを作って、ヒドロゲル(GAEGZ002)を作製した。ゲル化時間は5〜10分であった。
【0098】
この例では、ヒドロゲル(GAEGZ002)の薬物搭載濃度)は208mg/mLにもなった。ヒドロゲル(GAEGZ001)はハーセプチンを約42日も放出し、ヒドロゲル(GAEGZ002)はハーセプチンを最大約70日も放出した(つまり、ヒドロゲルは強い徐放能力を備えている)。これは、ハーセプチンとZnとが相互作用してキレートを形成し、結果として徐放効果を高めることになるためである。加えて、薬物構造および活性の試験では、ハーセプチンの分子構造の完全性および安定性は維持され、例えば、放出されたハーセプチンのモノマーが90%を超えていた。故に、その生物活性は維持されていた(抗原への結合能力は依然高かった)。
【0099】
実施例38
薬物搭載ヒドロゲルの放出挙動
0.9% NaCl溶液をバッファー溶液として用い、濃度10.6mg/mLのハーセプチン溶液を作製した。次いで、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.3%)をハーセプチン溶液中に溶解して、濃度3.0wt%の第1の溶液を作った。次いで、適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン溶液中に溶解して、濃度3.0wt%の第2の溶液を作った。次いで、pH値6.0(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲルを作製した。ゲル化時間は10〜15分であった。
【0100】
0.9% NaCl溶液をバッファー溶液として用い、濃度128.6mg/mLのハーセプチン溶液を作った。次いで、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.3%)をハーセプチン溶液中に溶解して、濃度3.0wt%の第1の溶液を作った。次いで、適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン溶液中に溶解して、濃度3.0wt%の第2の溶液を作った。次いで、pH値6.0(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲルを作製した(GAEG11)。ゲル化時間は4分であった。
【0101】
0.9% NaCl溶液をバッファー溶液として用い、濃度205.0mg/mLのハーセプチン溶液を作った。次いで、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.3%)をハーセプチン溶液中に溶解して、濃度3.0wt%の第1の溶液を作った。次いで、チオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン溶液中に溶解して、濃度3.0wt%の第2の溶液を作った。次いで、pH値6.0(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲルを作製した(GAEG15)。ゲル化時間は4分であった。
【0102】
この例では、薬物放出挙動の試験において、その結果から、薬物搭載濃度が高いほど、薬物放出期間が長くなるということが示されている。薬物搭載濃度が128.6mg/mLまたは205.0mg/mLのときに、薬物放出期間は約42日にもなった。
【0103】
実施例39
薬物複合体搭載ヒドロゲルの放出挙動
0.5Mヒスチジン溶液をバッファー溶液として用い、濃度9.3mg/mLのハーセプチン/Zn複合体溶液を作った。pH値4.1(酸性条件)下、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率:9.0%)およびチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)ハーセプチン/Zn複合体溶液中に溶解して、PGA濃度1.5wt%、PEG濃度1.5wt%のハーセプチンヒドロゲルを作り(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲル(GAEGZ007)を作製した。ゲル化時間は50〜60分であった。
【0104】
0.5Mヒスチジン溶液をバッファー溶液として用い、濃度93.0mg/mLのハーセプチン/Zn複合体溶液を作った。pH値4.2(酸性条件)下、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率:9.0%)およびチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン/Zn複合体溶液中に溶解して、PGA濃度1.5wt%、PEG濃度1.5wt%のハーセプチンヒドロゲルを作り(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲル(GAEGZ008)を作製した。ゲル化時間は35〜40分であった。
【0105】
0.5Mヒスチジン溶液をバッファー溶液として用い、濃度171.7mg/mLのハーセプチン/Zn複合体溶液を作った。pH値4.3(酸性条件)下、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率:9.0%)およびチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン/Zn複合体溶液中に溶解して、PGA濃度1.5wt%、PEG濃度1.5wt%のハーセプチンヒドロゲルを作り(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲル(GAEGZ009)を作製した。ゲル化時間は25〜30分であった。この例では、薬物放出挙動の試験において、その結果から、薬物搭載濃度が高いほど、薬物放出期間が長くなるということが示されている。薬物搭載濃度が93.0mg/mLまたは171.7mg/mLのときに、薬物放出期間は約35日にもなった。
【0106】
実施例40
薬物搭載ヒドロゲルのカプセル化および溶解に対する酸性pHの影響
濃度141.3mg/mLのエタネルセプト(Etanercept)溶液を作った。適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):5.0%)をエタネルセプト溶液中に溶解し、濃度4.1wt%の第1の溶液を作った。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をエタネルセプト溶液中に溶解し、濃度1.5wt%の第2の溶液を作った。pH値6.3(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.8)、ヒドロゲルを作製した。ゲル化時間は90〜120分であった。
【0107】
次いで、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):5.0%)をエタネルセプト溶液中に溶解し、濃度4.9wt%の第1の溶液を作った。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をエタネルセプト溶液中に溶解し、濃度1.5 wt%の第2の溶液を作った。pH値6.3(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.67)、ヒドロゲルを作製した。ゲル化時間は45〜90分であった。
【0108】
次いで、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):5.0%)をエタネルセプト溶液中に溶解し、濃度5.7wt%の第1の溶液を作った。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をエタネルセプト溶液中に溶解し、濃度1.5wt%の第2の溶液を作った。pH値6.3(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.57)、ヒドロゲルを作製した。ゲル化時間は30〜45分であった。
【0109】
次いで、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):5.0%)をエタネルセプト溶液中に溶解し、濃度6.5wt%の第1の溶液を作った。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をエタネルセプト溶液中に溶解し、濃度1.5wt%の第2の溶液を作った。pH値6.3(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は0.5)、ヒドロゲルを作製した。ゲル化時間は30〜45分であった。
【0110】
この例では、ヒドロゲルの最大薬物搭載濃度が141.3mg/mLに達した。ゲル化時間が十分であったため(30〜120分)、第1の溶液と第2の溶液との混合物(ヒドロゲル/薬物)は作製の過程で均一であった。薬物放出挙動の試験において、ヒドロゲルからのハーセプチンの放出は完全であった。ヒドロゲルはエタネルセプトを約30日も放出した(つまり、ヒドロゲルは徐放能力を備えている)。加えて、薬物構造および活性の試験では、エタネルセプトの分子構造の完全性は維持された。故に、その生物活性は維持されていた(抗原への結合能力が依然高かった)。
【0111】
実施例41
薬物搭載ヒドロゲルのカプセル化および溶解に対する酸性pHの影響
濃度100mg/mLのHSA(ヒト血清アルブミン)溶液を作った。適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率): 12.1%)をHSA溶液中に溶解し、濃度2.0wt%の第1の溶液を作った。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をHSA溶液中に溶解し、濃度2.0wt%の第2の溶液を作った。pH値5.0〜6.15(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲル(A)を作製した。ゲル化時間は8〜12分であった。
【0112】
濃度200mg/mLのHSA(ヒト血清アルブミン)溶液を作った。次に、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):12.1%)をHSA溶液中に溶解し、濃度2.0wt%の第1の溶液を作った。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をHSA溶液中に溶解し、濃度2.0wt%の第2の溶液を作った。pH値5.0〜6.15(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲル(B)を作製した。ゲル化時間は2.5〜4.2分であった。
【0113】
濃度300mg/mLのHSA(ヒト血清アルブミン)溶液を作った。次に、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):12.1%)をHSA溶液中に溶解し、濃度2.0wt%の第1の溶液を作った。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をHSA溶液中に溶解し、濃度2.0wt%の第2の溶液を作った。pH値6.15(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲル(C)を作製した。ゲル化時間は1分未満であった。
【0114】
この例では、ヒドロゲル(A、BおよびC)の最大薬物搭載濃度が100〜300mg/mLに達した。ゲル化時間が十分であったため、第1の溶液と第2の溶液との混合物(ヒドロゲル/薬物)は作製の過程で均一であった。加えて、薬物構造の試験では、HSAの分子構造の完全性および安定性は維持されており、例えば、ヒドロゲル(A、BおよびC)から放出されたHSAのモノマーはそれぞれ94.1%、92.8%および92.6%であった。
【0115】
比較例3
薬物搭載ヒドロゲルのカプセル化および溶解に対するアルカリ性pHの影響
濃度50mg/mLのHSA(ヒト血清アルブミン)溶液を作った。適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):12.1%)をHSA溶液中に溶解し、濃度2.0wt%の第1の溶液を作った。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をHSA溶液中に溶解し、濃度2.0wt%の第2の溶液を作った。pH値8.18(アルカリ性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲル(D)を作製した。しかし、ヒドロゲルは即座にゲル化してしまった。
【0116】
この比較例では、ゲル化が急速である(つまり、ヒドロゲルが即座にゲル化した)ために、作製の過程で第1の溶液と第2の溶液との混合物は不均一となった。加えて、薬物構造の試験において、HSAの分子構造の完全性は多大なダメージを受けた(多数のHSA断片の形成)。ヒドロゲルから放出されたHSAのモノマーは75.8%だけだった。
【0117】
実施例42
薬物搭載ヒドロゲルのカプセル化および溶解に対する酸性pHの影響
濃度20mg/mLのリラグルチド溶液を作製した。適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):12.1%)をリラグルチド溶液中に溶解し、濃度2.0wt%の第1の溶液を作った。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をリラグルチド溶液中に溶解し、濃度2.0wt%の第2の溶液を作った。pH値5.0(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲル(A)を作製した。ゲル化時間は8〜12分であった。
【0118】
濃度20mg/mLのリラグルチド溶液を作製した。次いで、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:300kDa、DS(グラフト率):12.1%)をリラグルチド溶液中に溶解し、濃度3.0wt%の第1の溶液を作った。適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をリラグルチド溶液中に溶解し、濃度3.0wt%の第2の溶液を作った。pH値5.0(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、ヒドロゲル(B)を作製した。ゲル化時間は2.5〜4.2分であった。
【0119】
この例では、ゲル化時間が十分であった(2〜12分)ため、第1の溶液と第2の溶液との混合物(ヒドロゲル/薬物)は作製の過程で均一となった。加えて、薬物構造の試験では、リラグルチドの分子構造の完全性および安定性は維持されており、例えば、ヒドロゲル(AおよびB)から放出されたリラグルチドのモノマーは100%であった。
【0120】
実施例43
薬物搭載ヒドロゲルのin−vivo薬物動態(pharmacokinetics,PK)の研究
【0121】
先ず、濃度20.0mg/mLの“ハーセプチン”溶液を作製し、対照群とした。
【0122】
別の濃度20.0mg/mLのハーセプチン溶液を作製した。次いで、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.4%)をハーセプチン溶液中に溶解し、濃度3.0wt%の第1の溶液を作った。次いで、適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン溶液中に溶解し、濃度3.0wt%の第2の溶液を作った。次いで、pH値6.0(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、“ハーセプチン−搭載ヒドロゲル”を作製し、実験群とした。
【0123】
ラットを用い、“ハーセプチン”(対照群)、“ハーセプチン搭載ヒドロゲル”(実験群)の薬物動態(PK)実験を行った。投与量は50mg/kgとした。投薬後の7日目、14日目、21日目、28日目および35日目にそれぞれ血漿中の薬物濃度を測定し、血清濃度−時間プロファイルを作成した。血清濃度−時間プロファイルのデータにより、T
max、C
max、T
1/2、AUC
D35およびBA(バイオアベイラビリティ(bioavailability))のような薬物動態パラメータを得た。それらが表2に示されている。
【0124】
【表2】
【0125】
結果から、ハーセプチン搭載ヒドロゲルでは、そのC
maxは元のハーセプチンの約60%であり、そのT
maxは2倍遅延し、そのT
1/2は2.7倍延長したことが示された。よって、ハーセプチン搭載ヒドロゲルは徐放能力を備えている。
【0126】
実施例44
薬物複合体搭載ヒドロゲルのin−vivo薬物動態(pharmacokinetics,PK)の研究
まず、濃度20.0mg/mLの“ハーセプチン”溶液を、対照群として作製した。
【0127】
0.9% NaCl溶液をバッファー溶液として用い、濃度20.0mg/mLのハーセプチン/Zn複合体溶液を作製した。pH値5.8(酸性条件)下、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率:11.4%)およびチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)を、PGAの濃度1.5wt%、PEGの濃度1.5wt%でハーセプチン/Zn複合体溶液中に溶解し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、“ハーセプチン/Zn複合体搭載ヒドロゲル(Her/Zn−ヒドロゲル)”を作製して実験群とした。ゲル化時間は40〜50分であった。
【0128】
ラットを用い、“ハーセプチン”(対照群)、“ハーセプチン/Zn複合体搭載ヒドロゲル(Her/Zn−ヒドロゲル)”(実験群)の薬物動態(PK)実験を行った。投与量は50mg/kgとした。投薬後の7日目、14日目、21日目、28日目および35日目にそれぞれ血漿中の薬物濃度を測定し、血清濃度−時間プロファイルを作成した。血清濃度−時間プロファイルのデータにより、T
max、C
max、T
1/2、AUC
D35およびBA(バイオアベイラビリティ)のような薬物動態パラメータを得た。それらが表3および
図1に示されている。
【0129】
【表3】
【0130】
結果から、ハーセプチン/Zn複合体搭載ヒドロゲルでは、そのC
maxは元のハーセプチンの約30%であり、そのT
maxは3倍遅延し、そのT
1/2は4.2倍延長したことが示された。よって、ハーセプチン/Zn複合体搭載ヒドロゲルは徐放能力を備えている。
【0131】
実施例45
薬物搭載ヒドロゲルのin−vivo薬力学(pharmacodynamics,PD)の研究
“ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)”溶液を準備し、対照群とした。
【0132】
濃度10mg/mLの“ハーセプチン”溶液を作製し、第1の実験群とした。
【0133】
別の濃度10mg/mLのハーセプチン溶液を作製した。次いで、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率):11.5%)をハーセプチン溶液中に溶解し、濃度3.0wt%の第1の溶液を作った。次いで、適量のチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)をハーセプチン溶液中に溶解し、濃度3.0wt%の第2の溶液を作った。次いで、pH値6.0(酸性条件)下で第1の溶液と第2の溶液とを混合し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、“ハーセプチン−搭載ヒドロゲル”を作製して、第2の実験群とした。
【0134】
BT474乳癌マウスを用い、“DPBS”(対照群)、“ハーセプチン”(第1の実験群)、“ハーセプチン搭載ヒドロゲル”(第2の実験群)の薬力学(PD)実験を行った。“ハーセプチン”および“ハーセプチン搭載ヒドロゲル”の投与量は50mg/kgとした。投薬後の特定の日に腫瘍体積(mm
3)をそれぞれ測定し、腫瘍体積変化曲線を作成した。腫瘍体積変化曲線のデータにより、腫瘍増殖抑制(TGI)を計算した。それらが表4に示されている。
【0135】
【表4】
【0136】
投薬後28日目における腫瘍体積変化の結果から、DPBSと比較して、皮下注射により投与されたハーセプチン(投与量:50mg/kg)は腫瘍増殖を抑制できることがわかり、そのTGIを計算すると52.7%であった。
【0137】
投薬後28日目におけるハーセプチン搭載ヒドロゲルのTGIはハーセプチンと類似している。
【0138】
実験中にマウスの体重(BW)に著しい変化はなかった。
【0139】
実施例46
薬物複合体搭載ヒドロゲルのin−vivo薬力学(PD)の研究
“ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)”溶液を準備し、対照群とした。
【0140】
0.9% NaCl溶液をバッファー溶液として用い、濃度10.0mg/mLのハーセプチン/Zn複合体溶液を作製した。pH値5.9(酸性条件)下、適量のマレイミド基を含有するポリグルタミン酸(PGA)(Mw:200〜400kDa、DS(グラフト率:11.5%)およびチオール基を含有するポリエチレングリコール(PEG)(Mw:5kDa、4アームタイプ)を、PGAの濃度1.5wt%、PEGの濃度1.5wt%でハーセプチン/Zn複合体溶液中に溶解し(マレイミド基に対するチオール基のモル比は1.0)、“ハーセプチン/Zn複合体搭載ヒドロゲル(Her/Zn−ヒドロゲル)”を作製して実験群とした。ゲル化時間は約40分であった。
【0141】
BT474乳癌マウスを用い、“DPBS”(対照群)、“ハーセプチン/Zn複合体搭載ヒドロゲル(Her/Znヒドロゲル)”(実験群)の薬力学(PD)実験を行った。“ハーセプチン/Znヒドロゲル”の投与量は50mg/kgとした。投薬後の特定の日に腫瘍体積(mm
3)をそれぞれ測定し、腫瘍体積変化曲線を作成した。腫瘍体積変化曲線のデータにより、腫瘍増殖抑制(TGI)を計算した。それらが表5におよび
図2に示されている。
【0142】
【表5】
【0143】
投薬後28日目における腫瘍体積変化の結果から、ハーセプチン/Zn複合体搭載ヒドロゲルは腫瘍増殖を大幅に抑制できることがわかり、そのTGIを計算すると121.9%であった。
【0144】
実験中にマウスの体重(BW)に著しい変化はなかった。
【0145】
本開示は、マレイミド(MA)基を含有するポリグルタミン酸(PGA)と、チオール(SH)基を含有するポリエチレングリコール(PEG)とを含む新規なヒドロゲル組成物を提供する。特に、当該ヒドロゲル組成物の酸性pH値の範囲は約4.0〜約6.5である。当該ヒドロゲルは薬物送達システムに適用することができる。当該ヒドロゲルは高用量の薬物を担持する能力を持ち、最大薬物搭載濃度が約300mg/mLにも達する。当該ヒドロゲルは薬物の放出挙動を調節することができ、例えば徐放期間がin vitroで少なくとも35日に達する。特に、薬物複合体搭載ヒドロゲルでは、in vivoでそのC
maxはヒドロゲルに覆われていない薬物の約30%であり、そのT
maxは3倍遅延し、かつそのT
1/2は4.2倍延長する。当該ヒドロゲルにより、薬物の分子構造および生物活性の完全性および安定性は維持される。加えて、当該ヒドロゲルは、多種類の薬物、例えば、抗体もしくはタンパク質もしくはペプチドのような高分子薬物、または親水性もしくは疎水性小分子などを封入することができる。
【0146】
開示した実施形態に各種修飾および変化を加え得るということは、当業者には明らかであろう。明細書および実施例は単に例示として見なされるように意図されており、本発明の真の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって示される。