【実施例1】
【0015】
はじめに
図1、
図2を用いて本実施例の現金自動取引装置10の構成を説明する。
図1は本実施形態に係る紙幣処理装置を搭載する現金自動取引装置(ATM)10の概観図である。
図2は現金自動取引装置10を構成する各構成要素を説明するための構成図である。
【0016】
現金自動取引装置10は金融機関等に設置され、顧客の操作によって現金の預入や引出等の取引を行い、顧客の要求する種々の取引を自動的に実行する装置である。
【0017】
現金自動取引装置10の内部には、利用者用の入力兼表示機能を備えた操作部15、カードの挿入・排出及び明細票の排出を実施する機構を備えたカード・明細書部12、通帳の挿入・排出を実施する通帳部13、紙幣の入出金を実施する紙幣部11、硬貨の入出金を実施する硬貨部14、上述の各機構部を後方から操作するための開閉式扉(不図示)、係員が操作に利用する係員操作部16と記憶部17、を含んで構成されている。
【0018】
紙幣部11は、利用者が投入した紙幣を計数して収納したり、操作部15の入力部から入力された出金金額等に応じて、収納庫に収納されている紙幣を繰出して入出金口への排出等を行う。
【0019】
係員操作部16は、運用中に発生した障害の情報や復旧操作情報の案内表示や、保守運用で必要な種々の操作画面情報の表示を行う。記憶部17は、利用者の取引履歴や現金自動取引装置10を動作させるためのプログラムや障害ログ等を記憶する。制御部20は図示しないCPUやメモリを備え、現金自動取引装置10全体を制御する。また制御部20に接続するカード・明細票部12や紙幣部11等が各媒体の動作を制御する。通信制御部17は制御部20から制御を受け、取引を管理する図示しないホストコンピュータと接続し、情報の送受信を行う。
【0020】
紙幣部11内についてはさらに詳細な構成例を示して説明する。紙幣部11は制御部20からの指示を受け、紙幣の繰出し、搬送等を制御するとともに動作結果を制御部20に報告する紙幣制御部111と、紙幣の投入、抜き取りを利用者に行わせる入出金部112と、紙幣の金種識別を行う識別部113と、取引操作者が投入した紙幣を一時的に保留する一時保留部114と、それぞれの部位を接続し紙幣を搬送する搬送部115と、紙幣を収納する着脱可能な複数のカセット120、130、140とから構成されている。また各カセットには後述する情報を記憶するカセット内蔵記憶部121、131、141がカセット毎に内蔵されている。
【0021】
カセット内蔵記憶部121、131、141は後述する情報を記憶するが、その情報は様々なタイミングで記憶する。具体的には、各種の取引が終了した後の記憶部17にログが記憶するタイミングに合わせて記憶してもよいし、営業終了後などの所定の時間が定められている場合にそのタイミングで記憶してもよいし、保守点検のタイミングで記憶されてもよいし、任意の操作によって記憶されてもよい。
【0022】
次に本実施例におけるカセット120の動作を検査する装置について説明する。
図3は現金自動取引装置10から回収したカセット120から紙幣を取り出し、新たな紙幣をカセット120に装填する図示しない現金センター等に設置し、カセット内蔵記憶部121から情報を読み取りあるいは書き込みを行うシステムの構成を示す構成図である。カセット120とコネクタ320を介して情報の読み出し、書き込みを行う装置(カセットチェッカ)310と、カセットチェッカ310と通信し、情報の表示、判断等を行うコンピュータ(端末装置)300から構成する。
【0023】
図4は、
図3の端末装置300、カセットチェッカ310、カセット120の接続と其々の構成を説明する構成図である。
【0024】
端末装置300は、制御プログラムを展開や一時的に情報を記憶するメモリ部303と、係員(操作者)に情報を表示する表示部304と、係員からの入力を受け付ける入力部305と、外部にある装置との通信を制御する通信制御部306と、カセットチェッカ310と接続し、情報の送受信を行うインターフェース部307と、制御プログラムや各種情報を記憶する記憶部301と、各部と電気的に接続し、制御信号の送受信を行う制御部302とを備える。
【0025】
記憶部301には、管理情報309として、カセット120の過去の診断情報やカセットチェッカ310から受信した情報を含む点検に利用する点検管理情報などが記憶されている。また、制御部302は、後述する点検要否判断部308があり、カセット120等の点検要否を判断する。
【0026】
カセットチェッカ310は、カセット120と接続するコネクタ部320と、端末装置300のインターフェース部307と接続し、端末装置300からの制御信号やカセット120からの信号をコネクタ部320を介して送受信して動作をする制御部312と、コネクタ部320を介して受信した情報やカセットチェッカ320を制御するプログラムを記憶する記憶部311から構成される。
【0027】
カセット120は、コネクタ部120を介して受信した信号によりカセット120の状態をチェックするセンサ321や、紙幣の入出金を行うために図示しないローラ等やローラ等を動作させるモータ等を含む駆動部322や、カセット内蔵記憶部121を有する。
【0028】
なお、カセットチェッカ310単独でカセットを検査する検査装置としてもよいし、端末装置300とカセットチェッカ310とを合わせて検査装置としてもよい。換言すると、カセットチェッカ310は端末装置300が備える機能(表示部304、入力部305、記憶部301、点検要否判断部308等)を有していてもよい。
【0029】
次に、カセット120のカセット内蔵記憶部121に記憶する情報400について説明する。
図5は、情報400のパターンを示す一例である。ここでは特にカセット120自身の点検要否に必要な情報を記憶する例を示す。カセット120自身の点検要否を判断するために必要な情報として、カセット種別やシリアル番号のほか、累積動作時間や累積紙幣繰出し枚数等を分類する稼働履歴401や、カセット120が現金自動取引装置10にセットさている際に(稼働中ともいう)に検出した異常を記録する障害履歴402などがある。なお、
図5に示す情報400をカセット点検要否判断情報と呼んでもよい。
【0030】
また、カセット内蔵記憶部121に記憶する情報の例として、別の例を示す。
図6はカセット内蔵記憶部121に記憶する情報500の例である。ここでは特にカセットを運用した紙幣部の点検要否に必要な情報を記憶する例を示す。紙幣部の点検要否を判断するために必要な情報として、紙幣部種別やシリアル番号のほか、入出金部累積動作回数等稼働履歴501や、稼働中に検出した異常を記録する障害履歴502などがある。なお、
図6に示す情報500を紙幣部点検要否判断情報と呼んでもよい。
【0031】
また、別の例として
図7はカセット内蔵記憶部121に記憶する情報のパターンの例である。ここでは特にカセットを運用した現金自動取引装置の点検要否に必要な情報600を記憶する例を示す。現金自動取引装置の点検要否を判断するために必要な情報として、現金自動取引装置種別やシリアル番号のほか、紙幣部以外となるカード部等の動作回数等稼働履歴601や、稼働中に検出した異常を記録する障害履歴602などがある。なお、
図7に示す情報600を現金自動取引装置点検要否情報と呼んでもよい。
【0032】
図5から
図7のような情報それぞれの形態でカセット内蔵記憶部121に記録するだけでなく、カセット内蔵記憶部121にすべてを格納しておくことで、カセット単体、紙幣部、現金自動取引装置それぞれの点検要否判断をまとめて行なうことも可能である。あるいは、ある客先のこの支店における紙幣処理部といった情報を連携して活用することも可能である。なお、カセット単体、紙幣部、現金自動取引装置それぞれの点検要否判断のための情報を全て纏めたものを点検要否情報と呼んでもよい。
【0033】
次に本実施例におけるカセット120とカセットチェッカ310と端末装置300を用いた点検要否の予測処理の方法について説明する。
図8はその予測処理の一例を示している。点検要否は動作時間があるしきい値に達した場合のほか、動作回数で判断する方法、異常検出回数で判断する方法、異常予兆を示すリトライ回数で判断する方法、およびそれら複数の情報を複合的に判断する方法などさまざまな手段がある。本実施例では
図5に示す動作時間や繰出し枚数等から判断する方法を一例として示す。
【0034】
はじめにカセットチェッカ310は現金自動取引装置10から持ち帰えられたカセット120が装着されるまで待機し、カセット120が装着された場合は、その装着を検知する(ステップ701)。
【0035】
カセットチェッカ310にカセット120がセットされると、カセットチェッカ310は端末装置300からの信号によりカセット120が破損しているかどうかのテスト動作(検査)を実施する。また、合わせてカセット内蔵記憶部121に記憶されている情報を読み出す(ステップ702)。カセットチェッカ310は、カセット内臓記憶部121から読みだした情報を端末装置300へ送信する。このときカセットチェッカ310の記憶部311にて読みだした情報を記憶するとしてもよい。
【0036】
次に、端末装置300は受信した情報に基づき、制御部302の点検要否判断部308を用いて点検要否を判断する。はじめに、累積動作時間が点検要となるしきい値を超えているか否かを判断する(ステップ703)。しきい値を超えていたときは点検要としてカセット予測異常有と判断する(ステップ709)。超えていなかったときには、次に累積紙幣繰出し枚数が予測判断をすることが可能な枚数を超えているか否かを判断する(ステップ704)。
【0037】
予測判断可能な枚数に達していないときにはカセット予測異常無と判定する(ステップ705)。予測判断可能な枚数に達していたときには、繰出しリトライ頻度を示す繰出しリトライ比率がしきい値を超えたかどうかを判断し(ステップ708)、超えていたときにはカセット予測異常有と判定する(ステップ709)。一方、超えていなかったときにはカセット予測異常無と判定する(ステップ705)。
【0038】
最後に端末装置300の制御部302は、判定した結果をコンピュータ300に表示や印字等を行う(ステップ706)。カセット120のチェック結果と稼働状態の結果を表示する例として
図9、カセット120のチェック結果とそのカセットが運用されていた現金自動取引装置10の稼働状態の結果を表示する例として
図10に示す。
【0039】
なお、
図9に示すATM情報のボタンが係員により押されたことを検知することで
図10の画面が表示され、
図10に示すカセット情報のボタンが係員により押されたことを検知することで
図9の画面が表示される。また、
図9および
図10に示す、紙幣部情報のボタンが係員により押されたことを検知することで、同様に紙幣部の点検要否の判断が表示される。また、点検要否が表示されるだけでなく、交換までの残り時間等が表示されるとしてもよい。
【0040】
最後にカセットチェッカ300はカセット120がカセットチェッカ300から脱却されるまで待機し、カセット120の脱却を検知すると予測処理は終了する。(ステップ707)なお、カセット120が破損しているかどうかのテスト動作(センサ321、駆動部322に対するテスト動作)の結果、破損を検出した場合には、上記予測結果とは関係なくカセット異常有と取扱うことになる。
【0041】
また、カセット120以外の点検予測を行う場合は、
図6または
図7にて示した稼働履歴や障害情報を用いて予測する。その際は、ステップ704やステップ708と同じ様にしきい値により判断してもよい。その際、判断するためのしきい値は予め定められてもよいし、適宜設定することができるとしてもよい。
【0042】
本実施例では、現金自動取引装置10内にあるカセット120に内蔵した記憶部に点検の予兆に必要な情報を格納することで、カセットチェッカ300の検査動作結果に稼動時の情報を併用することでカセット120の故障チェックの精度向上を図ることができる。また、現金センターにおいてカセット120から情報を取り出し、現金自動取引装置10の稼働状態を判断することで点検業務を定期的ではなく必要なタイミングを予測し、すみやかにあるいは計画的に行なうことで、稼働状況に応じて効率よく保守を行うことを目的とした寿命予測や故障予測を行うことができる。
【0043】
[変形例]
実施例1では、読み取ったカセット120内の情報を端末装置300で判断する方法を例として示したが、現金自動取引装置10内や紙幣部11内で点検要否判断を行い、その判断結果をカセット内蔵記憶部121に記憶し、判断結果をカセットチェッカ310で読み取り端末装置300に表示するとしてもよい。この場合、カセットチェッカ310から現金自動取引装置10までの間でカセット120が故障したことがわかり、カセット120の管理をより詳細に行うことができる。
【0044】
また、現金センターで多くのカセット120から速く情報収集することを目的として、
図11のように端末装置300に複数のカセットチェッカ310を接続した構成としてもよい。このような構成とすることで、カセットチェッカ310毎に端末装置300を設置するよりも省スペースで実現できる。
【0045】
また、離れた現金センターに設置されたカセットチェッカ310から収集した情報をネットワークを通じて別途接続したサーバ(不図示)等において、カセット120や紙幣部11あるいは現金自動取引装置10を複数分や過去分を含めて集計し、総合的に判断し、点検の指示や計画を行なうシステムを構成してもよい。この場合、複数の現金センタ―に設置されたカセットチェッカ310の情報を取得できるため、より多くの装置について効率的に管理する事ができる。
【0046】
また、
図12に示すように特定のカセットチェッカ310の情報を受信し、統合して取扱うマスタ機とした機能を持たせ、ネットワークを通じて情報を収集、送信することを主目的としたスレーブ機とした機能を持たせることで、サーバ等大規模な情報システムを構築することなく複数個所に設置したカセットチェッカ310を統合した情報連携システムを構築することができる。
図12の各端末装置(300、313、323)に
図10のように複数のカセットチェッカ310を接続することで多くのカセットを並行で処理できるシステムを構築することもできる。
【0047】
なお、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、ハードウェアで実現してもよい。また、前記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【0048】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、IC(Integrated Circuit)カード、SDカード、DVDなどの記録媒体に置くことができる。 また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。