(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556224
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】腐食プローブ及び腐食プローブの取付方法
(51)【国際特許分類】
G01N 17/04 20060101AFI20190729BHJP
【FI】
G01N17/04
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-513336(P2017-513336)
(86)(22)【出願日】2015年5月20日
(65)【公表番号】特表2017-517011(P2017-517011A)
(43)【公表日】2017年6月22日
(86)【国際出願番号】EP2015061178
(87)【国際公開番号】WO2015177245
(87)【国際公開日】20151126
【審査請求日】2018年5月18日
(31)【優先権主張番号】102014007753.5
(32)【優先日】2014年5月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516351681
【氏名又は名称】シュタインミュラー バブコック インヴァイアランメント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Steinmueller Babcock Environment GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】インゴ ツォアバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ プリースマイアー
【審査官】
島田 保
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2002/0117401(US,A1)
【文献】
特開2005−091281(JP,A)
【文献】
特開2007−232720(JP,A)
【文献】
特開平11−125617(JP,A)
【文献】
特開昭60−228955(JP,A)
【文献】
特表2011−519024(JP,A)
【文献】
特開平11−160226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00−19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管・ウェブ・管構成のボイラ壁又は熱交換器壁(2)で電気化学的に腐食測定を行うためのプローブ(1)であって、
円筒形に形成されており、かつ、前記ボイラ壁又は前記熱交換器壁(2)のウェブ(4)における孔(5)に収容するための部分を有するプローブ(1)において、
前記部分は、前記ウェブ(4)に前記プローブ(1)を固定するための固定部分(1b)であり、
前記固定部分(1b)は、セラミック層(8)によってコーティングされており、
前記セラミック層(8)は、前記ボイラ壁又は前記熱交換器壁(2)に対して前記プローブを電気的に絶縁し、
コーティングした前記固定部分(1b)は、冷却状態において、ウェブ孔(5)の直径よりも小さい第1直径を有しており、再加熱後の取付状態において、より大きな第2直径を有しており、これにより、少なくとも、コーティングした前記固定部分の一部分と、前記ウェブ孔(5)との間で押圧嵌合が行われる、
ことを特徴とするプローブ(1)。
【請求項2】
前記プローブ(1)は、ボイラ部分(1a)を有しており、該ボイラ部分(1a)は、前記固定部分(1b)に連続しており、かつ、前記プローブの取付状態においてボイラ(3)内に突出している、
請求項1に記載のプローブ(1)。
【請求項3】
前記プローブは、中空体として形成されており、
当該プローブ内には、前記ボイラ部分(1a)及び/又は前記固定部分(1b)におけるプローブ温度を検出するための熱電素子(7)が配置されている、
請求項2に記載のプローブ(1)。
【請求項4】
前記プローブ(1)は、前記孔(5)の直径よりも大きな直径を有しかつ前記固定部分(1b)と共に段(6)を構成する、前記ウェブ(4)の外面に配置された部分(1c)を有しており、
前記段(6)は、前記プローブの取付状態において、前記ウェブ(4)の前記外面に当接し、これによって前記プローブの取付深さを定めており、
前記コーティングは、前記段(6)上にも延在している、
請求項1から3までのいずれか1項に記載のプローブ(1)。
【請求項5】
前記セラミック層(8)は、少なくとも部分的に、前記ボイラ部分(1a)の表面及び前記ボイラ壁の外部にある前記部分(1c)の表面上にも延在している、
請求項2を引用する請求項4に記載のプローブ(1)。
【請求項6】
前記セラミック層(8)は、50μm乃至200μmの厚さを有する、
請求項1から5までのいずれか1項に記載のプローブ(1)。
【請求項7】
前記セラミック層(8)は、プラズマスプレー法によって被着されている、
請求項1から6までのいずれか1項に記載のプローブ(1)。
【請求項8】
前記セラミック層(8)は、酸化アルミニウム、Al2O3からなる、
請求項1から7までのいずれか1項に記載のプローブ(1)。
【請求項9】
少なくとも1つのプローブ(1.1、1.2、1.3)を有し、ボイラにおいて電気化学的に腐食測定を行うための装置において、
複数の前記プローブ(1.1、1.2、1.3)のそれぞれは、請求項1から8までのいずれか1項に記載のプローブである、
ことを特徴とする、電気化学的に腐食測定を行うための装置。
【請求項10】
2つ以上のプローブが設けられる場合、当該少なくとも2つのプローブ(1.1、1.2、1.3)は、単一のウェブ(4)において上下に配置される、
請求項9に記載の装置。
【請求項11】
3つのプローブ(1.1、1.2、1.3)を使用するときには、当該プローブは、単一のウェブ(4)において等間隔に上下に配置される、
請求項9に記載の装置。
【請求項12】
ボイラ(3)における腐食測定を行うための、請求項1から8までのいずれか1項に記載のプローブ(1)を取り付ける方法において、
前記プローブ(1)を第1温度に冷却するステップと、
前記ボイラ壁又は前記熱交換器壁(2)の前記ウェブ(4)における孔(5)に前記プローブ(1)を挿入するステップと、
前記プローブ(1)を第2温度に加熱し、これにより、押圧嵌合によって前記プローブを前記ボイラ壁又は前記熱交換器壁(2)の前記ウェブ(4)に保持するステップとを有している、
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
冷凍剤を用いて前記第1温度への前記冷却を行う、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
冷凍剤として、ドライアイス、寒剤又は液化ガスを使用する、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ボイラ(3)の動作中に前記プローブ(1)の前記取り付けを行い、
前記ウェブ(4)及び前記セラミック層(8)を介する前記プローブ(1)への熱結合により、前記第2温度への前記加熱を受動的に行う、
請求項12から13までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管・ウェブ・管構成のボイラ壁又は熱交換器壁で電気化学的に腐食測定を行うためのプローブに関しており、このプローブは、円筒形に形成されており、かつ、ボイラ壁のウェブにおける孔に収容するための部分を有する。
【背景技術】
【0002】
ボイラの(この技術分野ではメンブレンウォールとも称される)ボイラ壁に、腐食測定を行うためのプローブを取り付けることはすでに提案されている。しかしながら、このようなプローブの取り付けは極めて繁雑であることが多く、場合によってはプローブを、ボイラとは空間的に別々にし、作業場で(2つの管とその間にウェブを備えた)ボイラ壁の付属物に取り付け、つぎにボイラ室でボイラの壁部に溶接して固定する必要がある。このような取り付けにより、ボイラの圧力部分における不所望の変化が生じることになる。
【0003】
欧州特許出願公開第2325621号明細書(EP 2 325 621 A1)からは、ボイラ壁に配置されるロッド状の腐食プローブが公知である。この公知のプローブは2つの部分、すなわち腐食センサとランスとからなる。腐食センサは、複数の電極と、センサヘッドの形態の1つの電極支持体とからなる。これらの電極は、扇形の形状を有しており、かつ、ランスの先端部に取り付けられている。これらの電極は、セラミック製細管又はその他の被覆材料及びセラミック接着剤によって互いに絶縁されており、かつ、電極支持体から絶縁されている。このランスは、内部表面積を増大させるため、冷却体が内部に入れられた同心の3つの管から構成される。この公知のプローブの構造には、電極の温度をボイラ壁の温度に冷やすため、コストのかかりかつ能動的な温度調節装置が必要である。
【0004】
欧州特許出願公開第2700932号明細書(EP 2 700 932 A2)からは、管・ウェブ・管構成の壁部分用の腐食プローブが公知であり、ここでは、腐食を電気化学的に特定するためにプレート状の複数の電極が設けられている。これらのプレート状の電極は、電気的な絶縁を行いかつ実質的に矩形の支持体部分に、並んで配置されており、この支持体部分は、壁部分の隣接する2つの管の間の中間空間(ウェブ)に取り付けるために構成されている。この支持体部分は、材料結合及び/又は摩擦結合及び/又は形状結合によって使用され、特に気密にウェブに接続されるべきものである。これらの接続をどのように構成すべきかについては開示されていない。
【0005】
米国特許第6478948号明細書(US 6,478,948)からは、ボイラにおける腐食監視方法がさらに公知であり、ここではプローブが、外側のボイラ壁に係合する保持クランプにより、管・ウェブ・管構成を備えたボイラ壁のウェブに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2325621号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2700932号明細書
【特許文献3】米国特許第6478948号明細書
【特許文献4】欧州特許第0302073号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、電気化学的に腐食測定を行うためのプローブを、ボイラ壁又は熱交換器壁に容易に固定できるようにすることであり、ここではさらに、コストのかかる、プローブの温度調節が回避できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明によるプローブによって解決され、このプローブでは、孔に設けられる部分が、ウェブにプローブを固定するための固定部分として形成されており、この固定部分が、セラミック層によってコーティングされており、このセラミック層は、ボイラ壁に対してプローブを電気的に絶縁し、このコーティングした固定部分は、冷却状態において、ウェブ孔の直径よりも小さい第1直径を有しており、再加熱後の取付状態において、より大きな第2直径を有しており、これにより、少なくとも、コーティングした固定部分の一部分と、ウェブ孔との間で押圧嵌合が行われる。
【0009】
コーティングした固定部分と、ウェブ孔との間のこの押圧嵌合により、第1には簡単な固定が行われ、第2にはプローブとボイラ壁との熱結合が可能になり、かつ、同時にこのプローブがボイラ壁に電気的に絶縁されて取り付けられる。ここでは、ボイラ壁において電気化学的に腐食測定を行う際に温度を制御するための、従来技術のような温度調節装置は不要になる。なぜならば、セラミック層の厚さが薄い(より有利にはこの厚さは50μm乃至200μmの範囲内にある)ことにより、かつ、結果的に得られる熱結合により、公知のプローブでは一般的であるように、プローブ壁と比べて格段に大きく加熱されてしまうことがないからである。ここで提案されるプローブの取り付けは、さらにボイラの圧力部分に変更を必要としない。本発明よるプローブは、ボイラの動作中にも取り付けることができる。なぜならば、孔開けはボイラの圧力部分ではなく、負荷が加わらない、ボイラ壁のウェブに行われるからである。
【0010】
このプローブは有利には、ボイラ部分を有しており、このボイラ部分は、固定部分に連続しており、かつ、プローブの取付状態においてボイラ内に突出している。これは、ボイラ壁表面に対して所定の間隔で腐食測定を行うのに役立つ。
【0011】
より有利には上記プローブは、孔の直径よりも大きな直径を有しかつ固定部分と共に段を構成する、ウェブの外面に配置された部分を有する。この段は、プローブの取付状態において、ウェブの外面に当接し、これによってプローブの取付深さを定めており、セラミックコーティングは、段上にも延在している。この段は、正確かつ再現可能な取付深さを保証するための取付時の補助手段である。これによって保証されるのは、すべてのプローブが同様に取り付けられかつこれに同様に熱負荷が加えられることである。これにより、複数のプローブ間の温度不均衡と、ここから生じる誤った測定とが防止される。
【0012】
プローブはより有利には中空体として形成されており、ボイラ部分及び/又は固定部分のプローブ温度を検出するための熱電素子がこの空所に配置されている。これによって例えば、プローブの収縮中のこのプローブの冷却フェーズの経過と、取り付け後の加熱フェーズの経過とを検出して記録することができる。
【0013】
本発明は、少なくとも2つの上記のようなプローブを有するボイラにおいて電気化学的に腐食測定を行う装置にも関している。より有利には、複数のプローブ間の電圧電位を測定するため、複数のプローブを互いに所定の間隔で個別に取り付けることができる。複数のプローブを個別に取り付けることができるため、複数のプローブが1つのランスにまとめて取り付けられる構成と比較して、これらのプローブは、より小さな個別半径を有しており、これにより、幅の狭いウェブへの取り付けが可能になる。
【0014】
本発明は、上記のようなプローブをボイラに取り付ける方法にさらに関しており、この方法は以下のステップを有する。すなわち、
プローブを第1温度に冷却するステップと、
ボイラ壁のウェブにおける孔にプローブを挿入するステップと、
プローブを第2温度に加熱し、これにより、押圧嵌合によってプローブをボイラ壁のウェブに保持するするステップとを有する。
【0015】
本発明の別の有利な実施形態は、従属請求項において特定されている。
【0016】
以下、添付の図面に基づいて本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ボイラ壁に取り付けられた状態の、本発明によるプローブの一実施形態の断面図である。
【
図2】ボイラ壁に取り付けられた複数のプローブの、本発明による装置の一実施形態の斜視図である。
【
図3】外側からボイラ壁を見た、
図2による装置の実施形態の斜視図である。
【
図4】ボイラ内部からボイラ壁を見た、
図2による装置の実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1には、ボイラ壁に取り付けられた状態の、本発明によるプローブの一実施形態の断面図が示されており、ここではセラミック層の厚さが誇張されて示されており、
図2には、ボイラ壁に取り付けられた複数のプローブの、本発明による装置の一実施形態の斜視図が示されており、この図は、ボイラ壁に対して直角な断面と、プローブを通りしかもボイラ室から突出する断面の2つの断面とを有する。
図3には外側からボイラ壁を見た、
図2による装置の実施形態の斜視図が示されており、
図4には、ボイラ内部からボイラ壁を見た、
図2による装置の実施形態の斜視図が示されている。
【0019】
図1には、金属から作製されておりかつ電極として機能する、電気化学的に腐食測定を行うためのプローブ1が示されており、このプローブは、ボイラ壁2に取り付けられている。以下の実施例及び請求項ではボイラが引き合いに出されているとしても、類似の腐食問題は、熱交換器においても発生する。したがって、以下の説明及び請求項は、熱交換器のメンブレンウォールにおける腐食測定用のプローブ、装置及び方法も対象としている。
【0020】
ボイラ壁ないしはメンブレンウォールは、それ自体公知の管・ウェブ・管構成を有しており、例えば化石燃料によって熱せられる蒸気発生器ないしはボイラ3の一部である。
【0021】
図1には、孔5が設けられたウェブ4の一部分だけが示されている。孔5は、あらかじめ設定した孔直径を有しており、かつ、ボイラ内部空間への開口部を構成しており、ここでは(以下で説明するように)プローブ1が収縮されており、これによって締付嵌合により、ボイラ壁2に取り付けられている。
【0022】
プローブは、取付状態においてボイラ内部空間に突出するボイラ部分1aを有する。ボイラ部分1aには、孔5内にある固定部分1bが連続しており、この固定部分は、孔5の内側表面に押圧嵌合されている。ボイラ部分1a及び固定部分1bはより有利には同じ半径を有する。固定部分1bには、プローブの部分1cが連続しており、この部分は、取付状態においてボイラ3の外部にあり、かつ、固定部分1bよりも大きな直径を有する。これにより、固定部分1bへの移行領域に段6が形成されている。段6は、取り付けの際に正確かつ再現可能な取付深さに対する補助として使用される。これによって保証されるのは、個々のプローブ1が、種々異なる測定時点において、又は(複数のプローブが使用される場合に)すべてのプローブが同等に取り付けられかつ熱負荷が加えられることである。個々のプローブ間の温度不均衡と、ここから生じる誤った測定とが阻止される。
【0023】
ボイラ部分1aと、固定部分1bと、ウェブの外面に設けられている部分1cとはより有利には、金属製の管材から一体的に作製され、この管材は、可能であれば、ボイラ壁2(ないしは腐食プローブによって検査すべき材料)の材料と同じである。プローブ1はより有利には円筒形の中空体であり、この中空体は、熱電素子7を収容するのに適しており、これによってボイラ部分1a及び/又は固定部分1bの温度が記録される。プローブ1の丸形状により、及び、ボイラ部分1a及び固定部分1bの半径が比較的小さいことにより、ボイラ壁2の幅の狭いウェブ4のウェブ孔内にプローブ1を取り付けることができる。これにより取り付けは、動作中のボイラにおいても行うことができる。なぜならば、孔開けは、圧力部分にではなく、負荷のかからないウェブに行われるからである。
【0024】
より有利には、プローブ1を収縮させる前にすでにプローブ体に熱電素子7が取り付けられている。これにより、プローブの収縮時の冷却フェーズ及び加熱フェーズを記録できる可能性が得られる。
【0025】
プローブ1と、ボイラ壁2とが電気的に接続されないようにするため、このプローブは、固定部分1b及び段6の領域において、セラミック製の保護層8により、ボイラ壁2から電気的に絶縁されている。
図1に示した層厚は、縮尺通りではなく、図示のために実際よりも大きく示されている。
【0026】
この層の厚さは、上記の電気的な絶縁が保証されるが、同時にボイラ壁2への熱結合が保証される、すなわちボイラウェブ4及びセラミック層8を介したプローブ1への熱結合が行われるように選択される。特に上記の層の厚さは、上記プローブが、腐食測定信号が読み出される領域(すなわちプローブ1の先端部)において、ボイラ内壁とほぼ同じ温度を有するように選択される。このことは、特にボイラ壁2における熱流束において重要である。なぜならば、そうでなければ、プローブ1は、少なくともボイラ部分1aの領域において、ボイラ壁2よりも格段に高温になってしまうからである。
【0027】
セラミック層8は、より有利には酸化アルミニウム、Al
2O
3からなり、かつ、有利にはプラズマスプレー法によって被着される。このスプレーオンは有利には過剰に行われる。余った材料は、層のスプレーオンの後、研磨によって削り取られ、これによってウェブ4において所定の大きさの嵌合が得られ、また高い表面品質が得られる。ここでセラミック層8の有利な厚さは、少なくとも7メガオームの電気抵抗を保証するための、50μmの最小厚さと、プローブとウェブ4との間の温度差分を最大10Kに制限するための、200μmの最大厚さとの境界条件を定めるため、50μm乃至200μmにある。ここで、セラミック層8の層厚は、このセラミック層が、プローブ1を取り付ける際、及び、ボイラ3の動作時における温度変化の際の冷却/加熱による機械的な要求に耐えられるように設計される。
【0028】
セラミック層8はより有利には、少なくとも部分的にボイラ部分1aの表面上にも延在しており、これによってプローブの前面における測定も行われて最適である。しかしながら、択一的な実施例にしたがい、ボイラ部分にコーティングを設けず、これによってボイラ部分の全面を測定に利用することも可能である。さらに、ウェブの外面に設けられる、プローブの部分1c上のコーティングは、このコーティングの際の製造技術上の理由から好適である。
【0029】
腐食測定のため、少なくとも、ボイラ部分1aの先端部9には、所定の領域においてセラミックがなく、かつ、この先端部は電極表面を構成する。腐食測定のため、先端部において読み出される電気化学的なノイズは、線路10を介して腐食モニタ11に供給される。腐食モニタ11は、線路12を介してウェブ4の電位を検出することができる。腐食測定が必要な場合、より有利には腐食モニタ11を、(
図1には示していない)腐食測定のための少なくとも2つの別のプローブに電気的に接続することができる。さらに腐食モニタは、線路13を介して内部に設けられている熱電素子7に接続されており、これによって熱電素子7によって測定した温度が読み出される。
【0030】
以下では、上記プローブ1をボイラ壁2に取り付けるための本発明による方法を説明する。プローブ1はまず、取り付けられていない状態で第1温度に冷却される。より有利にはプローブは、ドライアイスに埋め込まれることによって約−75℃に冷却され、この際には熱電素子7によって冷却過程を監視することができる。コーティングしたボイラ部分1a及びコーティングした固定部分1bの直径は、この直径が、冷却された状態において孔5の半径より小さくなるように設計されている。ドライアイスを用いた有利な冷却の際、熱ひずみは、制御可能な範囲にとどまり、セラミック層8の安定性が損なわれることはない。
【0031】
しかしながら別の実施例によれば、例えば液化ガス、有利には液体空気、液体窒素又はこれに相当する極低温媒体、又は寒剤のような別の冷凍剤によって処理することも可能である。寒剤を使用する際には、0℃乃至−100℃の温度を得ることが可能である。より有利には、氷/CaCl
2(約−40℃)又は氷/MgCl
2(約−34℃)からなる混合物によって処理する。これにより、場合によって冷却時に比較的大きく半径を低減させることができ、ひいては加熱後には比較的大きな締付力を得ることができる。
【0032】
冷却した後、つぎにドライアイスベットからプローブを取り出し、ボイラ壁2のウェブ4において準備した孔5に直接挿入する。ここでプローブ1は、ボイラ壁2によって受動的に第2温度に加熱される。付加的な熱源による積極的な加熱は不要である。上記加熱により、プローブは、押圧嵌合によってボイラ壁2のウェブ4に気密に保持される。この第2温度は、プローブが低温の(すなわち動作していない)ボイラ3に取り付けられる場合、約20℃の一般的な周囲温度であり、又は、ボイラ3が動作している場合、熱せられているボイラ3のボイラ内壁の温度に対応する。周囲温度においてすでにプローブ1を保持するのに十分な締付力が生じるように、孔5及びコーティングした固定部分1bの半径が選択されているのに対し、上記押圧嵌合は、ボイラ動作温度において最大になる。
【0033】
図2乃至
図4では、本発明の別の複数の実施例にしたがい、ボイラ壁2内に複数のプローブ1.1、1.2及び1.3を備える装置14が設けられている。
図2乃至
図4に示したプローブ1.1、1.2及び1.3の構造は、
図1に示したプローブの構造に対応し、ここでは図示し易くするため、
図1に示した熱電素子7及び腐食モニタ11との結線は図示されておらず、またセラミック層8も概略的にしか示されていない。図示したプローブの個数の3は単なる例である。必須であるのは少なくとも1つのプローブであり、この場合にはウェブが、
図1に関連して説明したように対向電極として使用される。2つ以上のプローブを使用する際、ウェブ電位の検出はオプションである。これらの図では3つのプローブ1.1、1.2及び1.3が示されており、これらのプローブは上下にかつ等間隔で単一のウェブ4に配置されている。
【0034】
詳細には、
図2にはボイラ内部の視点から3つのプローブ1.1、1.2及び1.3の斜視図が示されており、ここではボイラ壁2に対して直角な断面と、これと互いに直交する断面との2つの断面が示されている。これらの断面は、プローブ1aの回転対称軸上で交わる。
図3には、外部からボイラ壁2を見た、
図2の装置14の斜視図が示されており、
図4には、ボイラ3の内部からボイラ壁2を見た、
図2の装置14の斜視図が示されている。
【0035】
図1による装置も
図2の装置14も共に、この技術分野において公知の電気化学的な腐食測定法を使用している。これについては上で引用した従来技術と、特許文献の欧州特許第0302073号明細書(EP 0 302 073)とを共に参照されたい。
【0036】
基本的に電気化学的な腐食測定のすべての形態に一般的に当てはまるのは、
・ 上記複数の電極はもっぱら、共通の1つの電解質によって、かつ、測定電子装置によってのみ電気的に接続されており、本発明で使用される測定法においてプローブにより、これらの電極が構成され、上記電解質は灰層であり、
・ 電極は、(有利には最大10°Kの差分の)検査すべき材料とほぼ同じ温度を有しなければならない、
・ 電極は、検査すべき材料と同じ材料から構成されるようにする、ということである。
【0037】
ここで説明したプローブの構成によって保証されるのは、腐食の電気化学的な分析の公知のあらゆる形態を利用できることである。プローブないしは電極の個数を変化させることにより、種々異なる複数の測定法を利用することができる。本発明では、電極が極性付けられていない(すなわち電極間に電圧が加えられていない)測定も、電極が極性付けられている方法も共に可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 プローブ、 1a ボイラ部分、 1b 固定部分、 1c ボイラ外部のプローブ部分、 2 ボイラ壁、 3 ボイラ、 4 ウェブ、 5 孔、 6 段、 7 熱電素子、 8 セラミック層、 9 先端部、 10 プローブに至る線路、 11 腐食モニタ、 12 壁に至る線路、 13 熱電素子に至る線路、 14 プローブから構成される装置、 1.1、1.2、1.3 装置のプローブ