特許第6556227号(P6556227)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6556227自己参照型MRAMセル及び当該自己参照型MRAMセルを有する磁場センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556227
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】自己参照型MRAMセル及び当該自己参照型MRAMセルを有する磁場センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/09 20060101AFI20190729BHJP
   H01L 21/8239 20060101ALI20190729BHJP
   H01L 27/105 20060101ALI20190729BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20190729BHJP
   G11C 11/16 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   G01R33/09
   H01L27/105 447
   H01L43/08 Z
   G11C11/16 100A
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-517334(P2017-517334)
(86)(22)【出願日】2015年9月24日
(65)【公表番号】特表2017-533419(P2017-533419A)
(43)【公表日】2017年11月9日
(86)【国際出願番号】EP2015072029
(87)【国際公開番号】WO2016050614
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2018年6月12日
(31)【優先権主張番号】14290298.0
(32)【優先日】2014年10月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509096201
【氏名又は名称】クロッカス・テクノロジー・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ステネル・カンタン
【審査官】 名取 乾治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−164590(JP,A)
【文献】 特開2007−142424(JP,A)
【文献】 特開2007−218700(JP,A)
【文献】 特開2016−001118(JP,A)
【文献】 特開2008−130962(JP,A)
【文献】 特開2012−142480(JP,A)
【文献】 特表2013−506141(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0107614(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02528060(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/09
G11C 11/16
H01L 21/8239
H01L 27/105
H01L 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定された参照磁化方向を有する参照層と、外部磁場の方向に自由に配向可能であるセンス磁化方向を有するセンス層と、前記参照層と前記センス層との間に構成されたトンネル障壁とを備える自己参照型MRAMセルにおいて、
前記MRAMセルは、バイアス磁化方向を有するバイアス層と、前記MRAMセルがバイアス閾値温度以下の温度にあるときに、前記バイアス磁化方向を或るバイアス方向にピン止めするバイアス反強磁性層とをさらに備え、
前記外部磁場が、前記参照磁化方向のうちの一方の磁化方向に対してほぼ直角の方向に配向されるときに、当該バイアスされたセンス磁化方向が、外部磁場の存在中に線形に変化するように、前記バイアス磁化方向が、前記センス磁化方向を前記バイアス方向に対して反対の方向にバイアスさせるバイアス場を誘導する方向に配向される当該MRAMセル。
【請求項2】
前記MRAMセルは、このMRAMセルが参照閾値温度以下の温度にあるときに、前記参照磁化方向をピン止めする参照反強磁性層をさらに備え、前記バイアス閾値温度は、前記参照閾値温度よりも低い請求項1に記載のMRAMセル。
【請求項3】
直接のRKKY結合が、前記センス層と前記バイアス層との間で発生しないように、前記MRAMセルは、前記センス層と前記バイアス層との間に減結合層をさらに備える請求項1に記載のMRAMセル。
【請求項4】
流線とプログラミングフィールド線とを有する磁場センサにおいて、
前記電流線が、複数のMRAMセルに直列に電気接続していて、
それぞれのMRAMセルが、固定された参照磁化方向を有する参照層と、外部磁場の方向に自由に配向可能であるセンス磁化方向を有するセンス層と、前記参照層と前記センス層との間に構成されたトンネル障壁と、バイアス磁化方向を有するバイアス層と、前記MRAMセルがバイアス閾値温度以下の温度にあるときに、前記バイアス磁化方向を或るバイアス方向にピン止めするバイアス反強磁性層とを備え、
前記外部磁場が、前記参照磁化方向のうちの一方の磁化方向に対してほぼ直角の方向に配向されるときに、当該バイアスされたセンス磁化方向が、外部磁場の存在中に線形に変化するように、前記バイアス磁化方向が、前記センス磁化方向を前記バイアス方向に対して反対の方向にバイアスさせるバイアス場を誘導する方向に配向され、
前記電流線が、前記複数のMRAMセルをバイアス閾値温度を超える温度で加熱する加熱電流を通電するために配置されていて、
前記MRAMセルが、前記バイアス閾値温度を超える温度で加熱されるときに、プログラミングフィールド電流を通電するためのプログラミングフィールド線が、前記MRAMセルのバイアス磁化方向を或るバイアス方向に方向づける磁場を生成する当該磁場センサ。
【請求項5】
前記電流線は、
前記複数のMRAMセルの第1サブセットと第2サブセットとを直列にそれぞれ接続している第1支線と第2支線と、
前記複数のMRAMセルの第3サブセットと第4サブセットとを直列にそれぞれ接続している第3支線と第4支線とを備え
前記第1支線と前記第2支線とが、前記第3支線と前記第4支線とに対して並列にホイートストンブリッジ回路構成式に電気接続されている請求項4に記載の磁場センサ。
【請求項6】
前記プログラミングフィールド線は、
第1プログラミング磁場を誘導する第1プログラミングフィールド電流を通電するために構成された第1プログラミングフィールド線部分と、
前記第1プログラミングフィールド線部分に対してほぼ直角に配置され、且つ第2プログラミング磁場を誘導する第2プログラミングフィールド電流を通電する第2プログラムフィールド線部分とを備え
前記第1プログラミング磁場と前記第2プログラミング磁場との結合によって合成されたプログラミング磁場が、複数の前記サブセット内に構成された複数のMRAMセルのうちの任意の1つのMRAMセルの前記バイアス磁化方向を前記或るバイアス方向に方向づける請求項5に記載の磁場センサ。
【請求項7】
前記第1サブセットと前記第2サブセットとの前記MRAMセルのバイアス方向がそれぞれ、前記参照磁化方向のうちの一方の磁化方向に対して約−45°及び45°であり、 前記第3サブセットと前記第4サブセットとの前記MRAMセルのバイアス方向がそれぞれ、前記参照磁化方向のうちの一方の磁化方向に対して約135°及び−135°である請求項5に記載の磁場センサ。
【請求項8】
磁場センサをプログラミングするための方法において、
前記磁場センサは、
記電流線が、複数のMRAMセルに直列に電気接続していて、
それぞれのMRAMセルが、固定された参照磁化方向を有する参照層と、外部磁場の方向に自由に配向可能であるセンス磁化方向を有するセンス層と、前記参照層と前記センス層との間に構成されたトンネル障壁と、バイアス磁化方向を有するバイアス層と、前記MRAMセルがバイアス閾値温度以下の温度にあるときに、前記バイアス磁化方向を或るバイアス方向にピン止めするバイアス反強磁性層とを備え、
前記外部磁場が、前記参照磁化方向のうちの一方の磁化方向に対してほぼ直角の方向に配向されるときに、当該バイアスされたセンス磁化方向が、外部磁場の存在中に線形に変化するように、前記バイアス磁化方向が、前記センス磁化方向を前記バイアス方向に対して反対の方向にバイアスさせるバイアス場を誘導する方向に配向され、
前記電流線が、前記複数のMRAMセルをバイアス閾値温度を超える温度で加熱するための加熱電流を通電するために配置されていて、
前記MRAMセルが、前記バイアス閾値温度を超える温度で加熱されるときに、プログラミングフィールド電流を通電するためのプログラミングフィールド線が、前記MRAMセルのバイアス磁化方向を或るバイアス方向に方向づける磁場を生成する
ように構成され
当該方法は、
複数のMRAMセルのうちの任意のMRAMセル内のバイアス磁化方向を自由にするために、前記任意のMRAMセルをバイアス閾値温度を超える温度に加熱することと、
当該加熱されたMRAMセルの前記バイアス磁化方向を或るバイアス方向に方向づけることと、
前記バイアス磁化方向を前記バイアス方向にピン止めするために、当該加熱されたMRAMセルを前記バイアス閾値温度未満の温度に冷却することと
を備える方法。
【請求項9】
前記バイアス磁化方向を或るバイアス方向に方向づけることは、前記バイアス磁化方向を方向づけるための磁場を誘導するプログラミングフィールド電流を通電することを備える請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記電流線は、
前記複数のMRAMセルの第1サブセットと第2サブセットとを直列にそれぞれ接続している第1支線と第2支線と、
前記複数のMRAMセルの第3サブセットと第4サブセットとを直列にそれぞれ接続している第3支線と第4支線とを備え
前記第1支線と前記第2支線とが、前記第3支線と前記第4支線とに対して並列にホイートストンブリッジ回路構成式に電気接続されていて、
当該方法は、
当該加熱するステップと当該バイアス磁化方向を整合するステップと当該冷却するステップとを、前記第1サブセット内と前記第2サブセット内と前記第3サブセット内と前記第4サブセット内とに構成された前記複数のMRAMセルに対して連続して実行することを備える請求項8に記載の方法。
【請求項11】
当該加熱するステップは、前記第1サブセット、前記第2サブセット、前記第3サブセット及び前記第4サブセット内にそれぞれ構成された前記複数のMRAMセルを前記バイアス閾値温度以上で加熱するために、前記第1電流支線、前記第2電流支線、前記第3電流支線及び前記第4電流支線にわたって、前記加熱電圧パルスを連続して印加すること、又は
前記第1サブセット、前記第2サブセット、前記第3サブセット及び前記第4サブセット内にそれぞれ構成された前記複数のMRAMセルを前記バイアス閾値温度以上で加熱するために、前記第1電流支線、前記第2電流支線、前記第3電流支線及び前記第4電流支線に、前記加熱電流パルスを連続して通電すること
を備える請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記プログラミングフィールド線は、
第1プログラミング磁場を誘導する第1プログラミングフィールド電流を通電するために構成された第1プログラミングフィールド線部分と、
前記第1プログラミングフィールド線部分に対してほぼ直角に配置され、且つ第2プログラミング磁場を誘導する第2プログラミングフィールド電流を通電するために構成された第2プログラムフィールド線部分とを備え
前記第1プログラミング磁場と前記第2プログラミング磁場との結合から合成された前記プログラミング磁場が、複数の前記サブセット内に構成された複数のMRAMセルのうちの任意のMRAMセルの前記バイアス磁化方向に方向づけられ
当該バイアス磁化方向を方向づけることは、
合成された前記プログラミング磁場に応じて前記バイアス閾値温度以上で加熱される前記サブセット内に構成された前記複数のMRAMセルの前記バイアス磁化方向を方向づけるために、前記第1プログラミングフィールド電流を前記第1プログラミングフィールド線に通電することと、前記第2プログラミングフィールド電流を前記第2プログラミングフィールド線に通電することを備える請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1サブセットと前記第2サブセットとの前記MRAMセルのバイアス方向がそれぞれ、前記参照磁化方向のうちの一方の磁化方向に対して約−45°及び45°とされて
前記第3サブセットと前記第4サブセットとの前記MRAMセルのバイアス方向がそれぞれ、前記参照磁化方向のうちの一方の磁化方向に対して約135°及び−135°であるように、当該バイアス磁化方向を方向づけることが実行される請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外部磁場を測定するための自己参照型MRAMセル及び当該自己参照型MRAMセルを有する磁場センサに関する。さらに、本開示は、磁場センサをプログラミングするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自己参照型MRAMセルは、磁気センサ又は磁気コンパス内の磁場を感知するために使用され得る。MRAMセルは、固定された参照磁化方向を有する1つの参照層と、自由なセンス磁化方向を有する1つのセンス層と、このセンス層とこの参照層との間の1つのトンネル障壁層とを含む1つの磁気トンネル接合を有する。当該参照磁化方向及び当該センス磁化方向は、当該参照層と当該センス層との平面に対して平行に配向され得る。当該センス層の方向の変化が、一般に、外部磁場を測定するために使用される。センサ装置が、回路構成内に配置された複数の自己参照型MRAMセルから構成され得、当該外部磁場に関する測定応答を増幅するために有益に使用され得る。例えば、ホイートストンブリッジ構成内に配置された複数の自己参照型MRAMセルが、当該センサ装置に対して提唱されている。
【0003】
図1は、直列に接続された2つの抵抗R3、R4に対して並列な直列に接続されたその他の抵抗R1、R2から構成される従来のホイートストンブリッジを示す。図1の回路では、それぞれの抵抗が、1つの自己参照型MRAMセルに相当し得る。
【0004】
外部磁場が、参照磁化方向に対して直角に配向され、センス磁化方向が、この参照磁化方向に対して約45°を成して配向されるときに、当該外部磁場の存在中に測定される電圧Voutの線形変化が、このようなホイートストンブリッジに対して取得され得る。感知動作中に、当該センス磁化方向を当該参照磁化方向に対して約45°を成して配向することが、1つのフィールド線に通電するフィールド電流によって誘導される磁場を印加することによって達成される。当該フィールド電流が、全ての感知動作中に通電される必要があるので、このような公知のセンサ装置を動作させることは、エレクトロマイグレーション現象に起因して寿命を低下させる静的電力消費を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2528060号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2013107614号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記の欠点を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、請求項1に記載の自己参照型MRAMセルと、請求項に記載の磁場センサと、請求項に記載の磁場センサをプログラミングするための方法とによって解決される。
【0008】
本発明は、固定された参照磁化方向を有する1つの参照層と、外部磁場の方向に自由に配向可能であるセンス磁化方向を有する1つのセンス層と、前記参照層と前記センス層との間に構成された1つのトンネル障壁とを備える自己参照型MRAMセルに関する。前記MRAMセルは、バイアス磁化方向を有する1つのバイアス層と、前記MRAMセルがバイアス閾値温度に等しい温度であるか又はこのバイアス閾値温度の下の温度であるときに、前記バイアス磁化方向を或るバイアス方向にピン止めする1つのバイアス反強磁性層とをさらに備える。このような外部磁場が、前記参照磁化方向のうちの一方の磁化方向に対してほぼ直角の方向に配向されるときに、当該バイアスされたセンス磁化方向の方向が、外部磁場の存在中に線形に変化するように、前記バイアス磁化方向が、前記センス磁化方向を前記バイアス方向に対して反対の方向にバイアスするために適合されたバイアス場を誘導するために配向される。
【0009】
さらに、本開示は、複数のMRAMセルを直列に電気接続している1つの電流線を有する磁場センサに関する。前記電流線は、前記MRAMセルをバイアス閾値温度の上で加熱するために適合された加熱電流を通電するために配置されている。前記MRAMセルが、前記バイアス閾値温度の上の温度で加熱されるときに、プログラミングフィールド電流を通電するための1つのフィールド線が、前記MRAMセルのバイアス磁化方向を或るバイアス方向に整合するために適合された磁場を誘導する。
【0010】
また、本開示は、複数のMRAMセルのうちの任意の1つのMRAMセル内のバイアス磁化方向を自由にするために、これらのMRAMセルのうちの任意の1つのMRAMセルをバイアス閾値温度の上の温度に加熱することと、当該加熱されたMRAMセルの前記バイアス磁化方向を或るバイアス方向に整合することと、前記バイアス磁化方向を前記バイアス方向にピン止めするために、当該加熱されたMRAMセルを前記バイアス閾値温度の下に冷却することとから成る、磁場センサをプログラミングするための方法に関する。
【0011】
当該加熱電流(又は加熱電圧パルス)及び当該プログラミングフィールド電流は、感知動作よりも非常に短いプログラミング動作中に通電されるだけで済むので、ここで開示された磁場センサは、非常により少ない静的電力消費で済み、寿命を著しく長くし得る。
【0012】
本発明は、例示され且つ図示された1つの実施の形態によってより良好に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来のホイートストンブリッジ構成を示す。
図2】1つの実施の形態による磁場センサを示す。
図3図2の磁場センサによって測定された電圧応答のグラフである。
図4】1つの実施の形態による1つのMRAMセルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図2は、1つの実施の形態による磁場センサ100を示す。この磁場センサ100は、ホイートストンブリッジ回路構成内で接続された4つの電流支線(3a,3a′,3b,3b′)を有する。特に、第1支線3aと第2支線3a′とがそれぞれ、第1MRAMセル1aと第2MRAMセル1a′とに直列に電気接続している。第3支線3bと第4支線3b′とがそれぞれ、第3MRAMセル1bと第4MRAMセル1b′とに直列に電気接続している。第1支線3aと第2支線3a′とが、当該ホイートストンブリッジを構成する第3支線3bと第4支線3b′とに並列に電気接続している。
【0015】
図4は、1つの実施の形態による複数のMRAMセル1a、1a′、1b、1b′のうちの任意の1つに対応するMRAMセル1の断面図である。このMRAMセル1は、1つの固定参照磁化方向230を有する1つの参照層23と、外部磁場60の方向に自由に配向可能である1つのセンス磁化方向210を有する1つのセンス層21と、この参照層23とこのセンス層21との間に構成された1つのトンネル障壁22とを有する。
【0016】
このセンス層21及びこの参照層23はそれぞれ、磁気材料、特に強磁性型の磁気材料を含むか又は当該磁気材料から形成されている。強磁性材料は、特に、当該強磁性材料が1つの方向へ飽和された後に、その磁化方向を反転させる磁場の強さを示す格別の保持力によって特徴付けられ得る。一般に、センス層21及び参照層23は、同じ強磁性材料又は相違する強磁性材料でもよい。センス層21は、軟質強磁性材料、すなわち比較的低い保持力を有する強磁性材料を含有し得る一方で、参照層23は、硬質強磁性材料、すなわち比較的高い保持力を有する強磁性材料を含有し得る。こうして、センス層21の磁化方向が、低強度の磁場の下で容易に変更され得る。適切な強磁性材料は、典型元素を伴うか又は伴わない、遷移金属、希土類元素及びこれらの合金を含む。例えば、適切な強磁性材料は、鉄(「Fe」)、コバルト(「Co」)、ニッケル(「Ni」)、並びにパーマロイ(又はNi80Fe20)のような、これらの合金;Ni、Fe及びホウ素(「B」)に基づく合金;Co90Fe10;Co、Fe及びBに基づく合金を含む。場合によっては、Ni及びFe(及びオプションでB)に基づく合金は、Co及びFe(及びオプションでB)に基づく合金よりも小さい保持力を有し得る。センス層21及び参照層23のそれぞれの厚さは、約1nm〜約20nm又は約1nm〜約10nmのように、nmの範囲内にあり得る。センス層21及び参照層23のその他の実装も考えられる。例えば、センス層21及び参照層23のどちらか一方又は双方が、いわゆる合成反強磁性層から成る副層のような同じ様式の複数の副層を含んでもよい。
【0017】
トンネル障壁層22は、絶縁材料を含有し得る又は絶縁材料から形成され得る。適切な絶縁材料は、酸化アルミニウム(例えば、Al)及び酸化マグネシウム(例えば、MgO)のような酸化物を含有する。トンネル障壁層22の厚さは、約1nm〜約10nmのように、nmの範囲内にし得る。
【0018】
図4を参照すると、MRAMセル1は、1つの参照反強磁性層24をさらに有してもよい。この参照反強磁性層24は、参照層23に隣接して配置されていて、この参照反強磁性層24の内部又はその近くの温度が、この参照反強磁性層24のネール温度又は別の閾値温度のような、低閾値温度T、すなわちブロッキング温度の下にあるときに、この参照反強磁性層24は、交換バイアスによって参照磁化方向230を特定の方向に沿ってピン止めする。当該温度が、高閾値温度T、すなわちブロッキング温度の上にあるときにこの参照反強磁性層24は、この参照磁化方向230をピン止め解除又は解放する。その結果、この参照磁化方向230が、別の方向に切り替え可能になる。図4の特定の例では、参照層23が、第1参照磁化方向230を有する1つの第1参照副層231と、第2参照磁化方向230′を有する1つの第2参照副層232と、この第1参照強磁性層231とこの第2参照強磁性層232とを分離している1つの非磁性結合層233とから成る合成強磁性(SAF)構造として示されている。
【0019】
参照反強磁性層24は、反強磁性型の磁気材料を含むか又は当該磁気材料から形成されている。適切な反強磁性材料は、複数の遷移金属及びこれらの合金を含む。例えば、適切な反強磁性材料は、イリジウム(「Ir」)及びMnに基づく合金(例えば、IrMn);Fe及びMnに基づく合金(例えば、FeMn);白金(「Pt」)及びMnに基づく合金(例えば、PtMn);及びNi及びMnに基づく合金(例えば、NiMn)のような、マンガン(「Mn」)に基づく合金を含む。例えば、参照反強磁性層24は、約120℃〜約220℃の範囲内の高閾値温度Tを有するIr及びMnに基づく(又はFe及びMnに基づく)合金を含有し得るか又は当該合金から形成され得る。センス磁化方向210が、ピン止め解除されているので、さもなければ動作温度窓の上限を設定する閾値温度なしに又は当該閾値温度を考慮することなしに、高い閾値温度Tが、高温用途のような、希望する用途に適応するように選択され得る。センス磁化方向210は、低閾値温度Tと高閾値温度Tとで自由に調整可能である。自由に調整可能なセンス磁化方向210を有するセンス層21を備えるこの種類のMRAMセル1は、自己参照型MRAMセルとして知られている。
【0020】
MRAMセル1は、バイアス磁化方向250を有する1つのバイアス層25と、MRAMセル1がバイアス閾値温度Tに等しい温度又はその下の温度にあるときに、このバイアス磁化方向250を1つのバイアス方向にピン止めする1つのバイアス反強磁性層27とを備える。直接のRKKY結合が、バイアス層25とセンス層21との間で発生しないように、1つの減結合層26が、センス層21とバイアス層25との間に配置されてもよい。
【0021】
バイアス層25とセンス層21との間の磁気結合に起因して、バイアス磁化方向250は、そのバイアス方向に対して反対の方向にセンス磁化方向210をバイアスするために適合されたバイアス場251を誘導するように設定される。当該バイアス方向は、参照磁化方向230のうちの一方の磁化方向に対して平行の方向と直角の方向との間の或る角度を成すように配向され得る。このとき、バイアス磁化方向250によってこのようなバイアス方向に誘導されたバイアス場251によってバイアスされたセンス磁化方向210が、参照磁化方向230の方向に対してほぼ直角を成す方向に配向された外部磁場60の存在中に線形に変化し得る。
【0022】
参照磁化方向230の方向が、外部磁場の下でアニール処理を使用することによって設定され得る。
【0023】
1つの実施の形態では、バイアス閾値温度Tは、参照閾値温度Tよりも低い。
【0024】
図2に戻ると、磁場センサ100を1つの実施の形態にしたがってプログラミングするための方法は、
複数のMRAMセル1a、1a′、1b、1b′のうちの1つのMRAMセルを、そのバイアス磁化方向250を解放するために、バイアス閾値温度Tの上の温度に加熱することと、
当該加熱されたMRAMセル(1)のバイアス磁化方向250を、そのバイアス方向に整合することと、及び
当該加熱されたMRAMセル1a、1a′、1b、1b′を、そのバイアス磁化方向250をそのバイアス方向にピン止めするために、バイアス閾値温度Tの下の温度に冷却することとを有する。
【0025】
特に、上記の加熱ステップ、バイアス磁化方向250の整合、及び冷却ステップは、第1MRAMセル1a及び第2MRAMセル1a′並びに第3MRAMセル1b及び第4MRAMセル1b′に対して連続して実行され得る。
【0026】
1つの実施の形態では、MRAMセル1a、1a′、1b、1b′を加熱することは、第1MRAMセル1a、第2MRAMセル1a′、第3MRAMセル1b及び第4MRAMセル1b′をバイアス閾値温度Tで又は当該バイアス閾値温度Tの上で加熱するために、第1電流支線3a、第2電流支線3a′、第3電流支線3b及び第4電流支線3b′にわたって、加熱電圧パルス32(図2参照)を連続して印加することから成る。
【0027】
この代わりに、MRAMセル1a、1a′、1b、1b′を加熱することは、第1MRAMセル1a、第2MRAMセル1a′、第3MRAMセル1b及び第4MRAMセル1b′をバイアス閾値温度Tで又は当該バイアス閾値温度Tの上で加熱するために、第1電流支線3a、第2電流支線3a′、第3電流支線3b及び第4電流支線3b′に、加熱電流パルス31を連続して通電することから成る。
【0028】
図2に示された1つの実施の形態では、プログラミングフィールド線4が、第1プログラミング磁場42′を誘導する第1プログラミングフィールド電流41′を通電するために構成された第1プログラミングフィールド線部分4aを有する。このプログラミングフィールド線4は、この第1プログラミングフィールド線部分4aに対してほぼ直角に配置され、且つ第2プログラミング磁場42″を誘導する第2プログラミングフィールド電流41″を通電するために構成された第2フィールド線部分4bをさらに有する。
【0029】
したがって、バイアス磁化方向250を整合するステップは、第1プログラミングフィールド電流41′を第1プログラミングフィールド線4aに通電することと、第2プログラミングフィールド電流41″を第2プログラミングフィールド線4bに通電することとから成る。当該合成されたプログラミング磁場42が、バイアス閾値温度Tで又は当該バイアス閾値温度Tの上で加熱される第1MRAMセル1、第2MRAMセル1、第3MRAMセル1又は第4MRAMセル1のバイアス磁化方向250を整合するために適合される。当該合成されたプログラミング磁場42の方向が、第1プログラミングフィールド電流41′と第2プログラミングフィールド電流41″との相対的な大きさと極性とに依存する。したがって、バイアス磁化方向250のバイアス方向が、第1プログラミングフィールド電流41′と第2プログラミングフィールド電流41″との大きさと極性とを調整することによって適切な任意の方向に調整され得る。
【0030】
したがって、当該バイアス方向が、参照磁化方向230のうちの一方の磁化方向に対して平行の方向と直角の方向との間の或る角度を成すように、バイアス磁化方向250を整合するステップが実行され得る。
【0031】
第1サブセット1aと第2サブセット1a′とのMRAMセル1のバイアス方向がそれぞれ、参照磁化方向230のうちの一方の磁化方向に対して約−45°及び45°であるように、及び、第3サブセット1bと第4サブセット1b′とのMRAMセル1のバイアス方向がそれぞれ、参照磁化方向230のうちの一方の磁化方向に対して約135°及び−135°であるように、バイアス磁化方向250を整合するステップがさらに実行され得る。
【0032】
磁場センサ100は、図2に示された構成に限定されない。例えば、磁場センサ100は、複数のMRAMセル1から構成されてもよい。特に、第1支線3aが、複数のMRAMセル1から成る第1サブセット1aに直列に電気接続されてもよく、第2支線3a′が、複数のMRAMセル1から成る第2サブセット1a′に直列に電気接続されてもよく、第3支線3bが、複数のMRAMセル1から成る第3サブセット1bに直列に電気接続されてもよく、第4支線3b′が、複数のMRAMセル1から成る第4サブセット1b′に直列に電気接続されてもよい。
【0033】
磁場センサ100のプログラミング動作中に、加熱するステップとバイアス磁化方向250を整合するステップと冷却するステップとが、第1サブセット1a内と第2サブセット1a′内と第3サブセット1b内と第4サブセット1b′内とに構成されたMRAMセル1に対して連続して実行され得る。
【0034】
特に、MRAMセル1を加熱することは、MRAMセル1から成る第1サブセット1aと第2サブセット1a′と第3サブセット1bと第4サブセット1b′とをバイアス閾値温度Tで又は当該バイアス閾値温度Tの上で連続して加熱するために、加熱電圧パルス32を第1電流支線3aと第2電流支線3a′と第3電流支線3bと第4電流支線3b′とにわたって連続して印加することから成るか、又は加熱電流パルス31を第1電流支線3aと第2電流支線3a′と第3電流支線3bと第4電流支線3b′とに連続して通電することから成る。それぞれの第1サブセット1aと第2サブセット1a′と第3サブセット1bと第4サブセット1b′とが、バイアス閾値温度Tで又は当該バイアス閾値温度Tの上で独立して加熱され得る。図2を参照すると、このことは、第1電流支線3aの第1加熱電流パルス31aと、第2電流支線3a′の第2加熱電流パルス31a′と、第3電流支線3bの第3加熱電流パルス31bと、第4電流支線3b′の第4加熱電流パルス31b′とを独立して通電することによって実行され得る。
【0035】
サブセット1a、1a′、1b、1b′のうちの1つのサブセット内のMRAMセル1が、バイアス閾値温度Tで又は当該バイアス閾値温度Tの上で加熱されると、第1プログラミングフィールド電流41′と第2プログラミングフィールド電流41″とが、第1プログラミング磁場42′と第2プログラミング磁場42″とをそれぞれ誘導するために、第1プログラミングフィールド線4aと第2プログラミングフィールド線4bとにそれぞれ通電され得る。サブセット1a、1a′、1b、1b′のうちの1つのサブセット内の加熱されたMRAMセル(1)のバイアス磁化方向250が、第1プログラミングフィールド電流41′と第2プログラミングフィールド電流41″とによってそれぞれ誘導された第1プログラミング磁場42′と第2プログラミング磁場42″との結合から合成されるプログラミング磁場42にしたがって整合される。
【0036】
バイアス磁化方向250が、当該合成されたプログラミング磁場42の方向に応じて適切な任意のバイアス方向に整合され得る。例えば、第1サブセット1a内のMRAMセル1のバイアス磁化方向250と、第2サブセット1a′内のMRAMセル1のバイアス磁化方向250と、第3サブセット1b内のMRAMセル1のバイアス磁化方向250と、第4サブセット1b′内のMRAMセル1のバイアス磁化方向250とがそれぞれ、参照磁化方向230に対して約−45°、45°、135°、−135°を成して配向されたバイアス方向を有し得るし又はその他の適切な任意の方向を有し得る。
【0037】
当該プログラミング動作を実行した後に、プログラミング磁場センサ100は、外部磁場60を感知するために使用され得る。
【0038】
図2に戻ると、ホイートストンブリッジの磁場センサ100が、MRAMセル1の複数の層21,23の平面内で、且つ(アニール処理中に決定された)参照磁化方向230の方向に対してほぼ直角に配向された外部磁場60の1つの成分方向を感知するために使用され得る。
【0039】
バイアス磁化方向250のバイアス方向が、参照磁化方向230のうちの1つの磁化方向に対して平行の方向と当該一方の磁化方向に対して直角の方向との間の或る角度を成すように配向される場合、当該バイアス磁化方向250によって誘導されるバイアス場251によってバイアスされたセンス磁化方向210が、当該参照磁化方向230の方向に対してほぼ直角に配向される外部磁場60の当該成分によってほぼ線形に変化する。
【0040】
図3は、図2に示された磁場センサ100の、外部磁場60(参照磁化方向230の方向に対してほぼ直角に配向された成分)の存在中に第1支線3a及び第2支線3a′と第3支線3b及び第4支線3b′との間で測定された電圧応答Voutのグラフである。
【符号の説明】
【0041】
1 自己参照型MRAMセル
1a 第1サブセット
1a′ 第2サブセット
1b 第3サブセット
1b′ 第4サブセット
100 磁場センサ
21 センス層
210 センス磁化方向
22 トンネル障壁
23 参照層
230 参照磁化方向
24 参照反強磁性層
25 固定バイアス層
250 固定バイアス磁化方向
26 減結合層
27 バイアス反強磁性層
3 第1電流線
3a 第1支線
3a′ 第2支線
3b 第3支線
3b′ 第4支線
31 加熱電流パルス
31a 加熱電流の第1部分
31a′ 加熱電流の第2部分
31b 加熱電流の第3部分
31b′ 加熱電流の第4部分
32 加熱電圧パルス
4 プログラミングフィールド線
4a 第1プログラミングフィールド線
4b 第2プログラミングフィールド線
41 プログラミングフィールド電流
41′ 第1プログラミングフィールド電流
41″ 第2プログラミングフィールド電流
42 プログラミング磁場
42′ 第1プログラミング磁場
42″ 第2プログラミング磁場
バイアス温度
高閾値温度
低閾値温度
bias 加熱電圧パルス
out 電圧応答
図1
図2
図3
図4