特許第6556260号(P6556260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6556260-仮固定用接着剤を含む接着テープ 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556260
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】仮固定用接着剤を含む接着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20190729BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20190729BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J201/00
   C09J163/00
【請求項の数】19
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-557343(P2017-557343)
(86)(22)【出願日】2016年5月3日
(65)【公表番号】特表2018-520217(P2018-520217A)
(43)【公表日】2018年7月26日
(86)【国際出願番号】EP2016059807
(87)【国際公開番号】WO2016177685
(87)【国際公開日】20161110
【審査請求日】2017年12月21日
(31)【優先権主張番号】102015208320.9
(32)【優先日】2015年5月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509120403
【氏名又は名称】テーザ・ソシエタス・ヨーロピア
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ヤコバイト・オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ケーレプ・パトリク
(72)【発明者】
【氏名】シュー・クリスティアン
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−295134(JP,A)
【文献】 特表2011−509328(JP,A)
【文献】 特表2011−523990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの基材の第2の最終固定の前段階として、その2つの基材を相互に第1の仮固定をするための仮固定用接着剤を含有する接着テープであって、第2の最終固定が、最終固定用接着剤を用いて行われ、その最終固定用接着剤が、第2の最終固定の過程で仮固定用接着剤を吸収する接着テープにおいて、
仮固定用接着剤が未架橋の感圧接着剤であり、仮固定用接着剤が、第2の最終固定の過程で最終固定用接着剤中に溶解し、
仮固定用接着剤が、ポリウレタン、ポリアミド、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、ポリ(スルホン)(PSU)、およびポリ(エーテルスルホン)(PES)からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含むことを特徴とする接着テープ。
【請求項2】
仮固定用接着剤が、以下のもの:
− 少なくとも1つのポリマー
− 任意選択で1つの接着樹脂
− 少なくとも1つの反応性樹脂を含有し、仮固定用接着剤が、100部のポリマーおよび接着樹脂、少なくとも104部の反応性樹脂を含有することを特徴とする、請求項1に記載の接着テープ。
【請求項3】
仮固定用接着剤中の少なくとも1つのポリマーが、ポリマー連続相として存在することを特徴とする、請求項2に記載の接着テープ。
【請求項4】
仮固定用接着剤中の反応性樹脂として、少なくとも1つのエポキシ樹脂が含有されていることを特徴とする、請求項2または3に記載の接着テープ。
【請求項5】
最終固定用接着剤が少なくとも1つのエポキシ樹脂をベースとして構成されており、仮固定用接着剤が、最終固定用接着剤の反応性樹脂と同一種の反応性樹脂を含有することを特徴とする、請求項4に記載の接着テープ。
【請求項6】
反応性樹脂として、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、エポキシノボラック、エポキシクレゾールノボラック、またはエポキシ化ニトリルゴムをベースとした少なくとも1つのエポキシ樹脂が含有されていることを特徴とする、請求項4または5に記載の接着テープ。
【請求項7】
少なくとも1つのポリマーが、エラストマーまたは熱可塑性樹脂であることを特徴とする、請求項2〜6のいずれか一つに記載の接着テープ。
【請求項8】
少なくとも1つの反応性樹脂が、ポリマー連続相中において少なくとも部分的に、好ましくは完全に均質に溶解して存在することを特徴とする、請求項2〜7のいずれか一つに記載の接着テープ。
【請求項9】
接着テープが、支持体のない転写式接着テープとして存在する、請求項1〜のいずれか一つに記載の接着テープ。
【請求項10】
コンポジット製造において繊維構築物を仮固定するための、請求項1〜のいずれか一つに記載の接着テープの使用。
【請求項11】
回転翼の製造において繊維構築物を仮固定するための、請求項1〜のいずれか一つに記載の接着テープの使用。
【請求項12】
真空樹脂注入プロセス用の樹脂がエポキシ樹脂の群から選択されることを特徴とする、真空樹脂注入プロセスにおいて繊維構築物を仮固定するための、請求項1〜のいずれか一つに記載の接着テープの使用。
【請求項13】
以下の工程、
− 請求項1〜のいずれか一つに記載の接着テープを用いた、型中での繊維構築物の仮固定、および繊維構築物相互の仮固定をする工程、
− 最終固定用接着剤中に仮固定用接着剤を溶解しながら、最終固定用接着剤を注入する工程、ならびに
− 最終固定用接着剤を硬化する工程
を含む、繊維構築物と接着テープを含有する最終固定用接着剤とからなるコンポジットを製造するための方法。
【請求項14】
最終固定用接着剤の注入が、樹脂注入プロセスによって行われることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
真空樹脂注入プロセス用の樹脂がエポキシ樹脂の群から選択されることを特徴とする、真空樹脂注入プロセスにおいて繊維構築物を仮固定するための、接着テープの使用であって、当該接着テープが、2つの基材の第2の最終固定の前段階として、その2つの基材を相互に第1の仮固定をするための仮固定用接着剤を含有する接着テープであって、第2の最終固定が、最終固定用接着剤を用いて行われ、その最終固定用接着剤が、第2の最終固定の過程で仮固定用接着剤を吸収する接着テープであって、
ここで、仮固定用接着剤が未架橋の感圧接着剤であり、仮固定用接着剤が、第2の最終固定の過程で最終固定用接着剤中に溶解する、前記使用。
【請求項16】
前記仮固定用接着剤が、以下のもの:
− 少なくとも1つのポリマー
− 任意選択で1つの接着樹脂
− 少なくとも1つの反応性樹脂を含有し、仮固定用接着剤が、100部のポリマーおよび接着樹脂、少なくとも104部の反応性樹脂を含有することを特徴とする、請求項15に記載の接着テープの使用。
【請求項17】
以下の工程、
− 接着テープを用いた、型中での繊維構築物の仮固定、および繊維構築物相互の仮固定をする工程、
− 最終固定用接着剤中に仮固定用接着剤を溶解しながら、最終固定用接着剤を注入する工程、ならびに
− 最終固定用接着剤を硬化する工程
を含む、繊維構築物と接着テープを含有する最終固定用接着剤とからなるコンポジットを製造するための方法であって、
当該接着テープが、2つの基材の第2の最終固定の前段階として、その2つの基材を相互に第1の仮固定をするための仮固定用接着剤を含有する接着テープであって、第2の最終固定が、最終固定用接着剤を用いて行われ、その最終固定用接着剤が、第2の最終固定の過程で仮固定用接着剤を吸収する接着テープであって、
ここで、仮固定用接着剤が未架橋の感圧接着剤であり、仮固定用接着剤が、第2の最終固定の過程で最終固定用接着剤中に溶解する、前記コンポジットを製造するための方法。
【請求項18】
最終固定用接着剤の注入が、樹脂注入プロセスによって行われることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記仮固定用接着剤が、以下のもの:
− 少なくとも1つのポリマー
− 任意選択で1つの接着樹脂
− 少なくとも1つの反応性樹脂を含有し、仮固定用接着剤が、100部のポリマーおよび接着樹脂、少なくとも104部の反応性樹脂を含有することを特徴とする、請求項17または18に記載のコンポジットを製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの基材の第2の最終固定の前段階としてのその2つの基材相互の第1の仮固定のための仮固定用接着剤を含有する接着テープ(ただし、第2の最終固定は、最終固定用接着剤、特にエポキシ樹脂を用いて行われ、その最終固定用接着剤が、第2の最終固定の過程で仮固定用接着剤を吸収する)、その接着テープの使用、ならびにコンポジットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化エポキシ樹脂は、多数の適用範囲を有する。つまり、繊維強化エポキシ樹脂は、自動車産業、ボート建造、航空機建造において、または風力発動機用の回転翼の製造において使用される。風力発動機用の回転翼の製造時には、多数の層のガラス繊維マットを、望みの型中において広面積に敷く。次いで、いわゆる真空注入プロセスにおいて、エポキシ樹脂を吸い込む(プロセス名:vacuum−assisted resin transfer molding(VARTM)、vacuum infusion)。それは、図1に示してある。このプロセスにおいて、ガラス繊維マットがずれるか、またはしわになるのを防ぐためには(それは、ガラス繊維マットが大きければ大きいほどますます大きな問題であるのだが)、ガラス繊維マットを一時的に望みの位置に保持することが望ましい。そのためには、ガラス繊維マットを周縁部で接着するか、またはスプレー接着剤を使用するかのいずれか一方である。周縁部接着は、手間がかかる上にマットの固定時に誤りが起きやすい。マットは、その周縁部でしか固定されていないので、型のさらに内側に位置する領域において、製品に対して不都合な影響を及ぼすマットのゆがみが起こりかねない。スプレー接着剤の塗布も同様に時間がかかる上に誤りが起きやすいが、その理由は、接着剤の配量は塗布者の役目だからである。そのため、接着層の一様な層厚は保証できない。その上、スプレー接着剤は、接着の前に蒸発させる必要がある、部分的には健康を損なうか、または刺激性の溶媒、例えば、スチレンまたはブタノンを大量に含有する。その上、スプレー接着剤により、コンポジット中に異物が一緒に導入されるため、硬化したガラス繊維エポキシコンポジットの性能は、スプレー接着剤の添加を伴わない純粋なエポキシコンポジットよりもいくぶん悪い。感圧接着テープは、貼付の点ではより容易であるかもしれないが、スプレー接着剤の場合と同様にコンポジット中に異物が残るため、部品の性能が同様に悪化するであろう。
【0003】
EP2229421B1(特許文献1)から、接着剤でコーティングされた繊維マット、いわゆる「プリプレグ」(「preimpregnated fibre(予備含浸繊維)」)が公知であり、それは、繊維強化エポキシドの製造に使用される。その発明の中核は、接着剤が部分架橋されていることであり、ただし、エポキシ樹脂に由来する部分エステルは、不飽和カルボン酸で置換されて、部分架橋される。接着剤は、注入プロセスのエポキシ樹脂中において膨潤可能および/または溶解可能である。
【0004】
プリプレグ、その製造および使用は、WO2013/107829A1(特許文献2)において詳細に記載されている。それは、反応性樹脂を含浸させた繊維性平面構築物である。保存性および輸送適性を確立するために、反応性樹脂を、通常は、初期ゲル化する、つまり、硬化反応を開始して、早い段階で停止させる(いわゆるB−ステージ)。その際、樹脂の明らかな粘度上昇が起こり、含浸させた構築物が取り扱いやすくなる。この種のプリプレグは、感圧接着性であるため、室温において積層し合うことができる。接着テープ同様に、プリプレグを積層可能または巻き取り可能にするために、通常は、剥離ライナーで被覆する。この現状技術の欠点は、硬化反応の進行を防ぐためには、初期ゲル化したプリプレグを冷却して保管する必要があることである。
【0005】
EP2229421B1(特許文献1)は、感圧接着剤が施与された繊維半製品を提供することにより、B−ステージのプリプレグの短い保存性の問題を解決する。その感圧接着剤は、ラジカルプロセスを介して部分架橋される。感圧接着剤は、繊維支持体上で接着に使用される。完成部品中では、繊維織物同様に部分架橋ポリマーも接着部位にとどまるため、架橋密度の不均質性が発生する。
【0006】
WO2012/026980A2(特許文献3)は、VARTMにおいて吸い込まれるエポキシ樹脂の流動特性に影響を及ぼすための、感圧接着性スプレー接着剤の使用を記載する。例としては、市販されている接着剤のNuTack(登録商標)E、NuTack(登録商標)Blu、NidaTack(登録商標)NTおよび3M(商標)Super77(商標)を挙げている。それらのスプレー接着剤は、繊維複合材の層間せん断強度を8%超低下させる。
【0007】
WO1997/003828A1(特許文献4)は、繊維強化発泡体を記載する。そこで記載されているように、繊維マットを固定するためには、発泡体に、例えば、感圧接着剤を付与することが可能である。問題であるのは、感圧接着剤が、妨害要素として、硬化した部品中に残ることであるが、その理由は、感圧接着剤は部品の強度に不都合に作用するからである。
【0008】
それゆえ、WO2013/060588A1(特許文献5)は、繊維マットを仮固定するために、VARTMプロセスで使用する樹脂と同じ樹脂または化学的に類似する樹脂を有する熱可塑性接着剤を使用することを提案する。その後にVARTMにおいてスチレン含有樹脂により溶解される不飽和のポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂が有利であると記載される。
【0009】
エポキシドをベースとした架橋性接着剤は、WO2013/060588A1(特許文献5)においては不利であると記載されるが、その理由は、積層体の特性に不都合に作用する下部構造を形成する傾向があるからである。しかしながら、高価な部品には、VARTMでは、好ましくはエポキシ樹脂を使用する。
【0010】
現状技術における主要な欠点は、周縁部での接着剤またはスプレー接着剤を用いた、手間のかかる繊維マットの固定である。確かに、一般的には、そのような注入プロセスにおいて繊維マット上で、例えば、発泡体を固定するための感圧接着剤が記載される。しかし、材料中に残るそれらの異物は、例えば、航空産業および宇宙航空産業といった要求の高い産業または回転翼の製造においては許容できない性能ロスを引き起こす。液体接着剤は、ある種の凝集力を必然的に伴う場合には感圧接着性になる。凝集力の上昇は、現状技術においては、例えば、繊維織物を用いて、および/またはUV誘導プレ架橋(EP2229421B1(特許文献1))によるか、または昇温により初めて接着性になる熱可塑性接着剤の使用(WO2013/060588A1(特許文献5))により達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】EP2229421B1
【特許文献2】WO2013/107829A1
【特許文献3】WO2012/026980A2
【特許文献4】WO1997/003828A1
【特許文献5】WO2013/060588A1
【特許文献6】米国特許第3,117,099号
【特許文献7】米国特許第3,018,262号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Donatas Satas「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology」(Satas & Associates、Warwick 1999年)
【非特許文献2】J.M.G.Cowie「Chemie und Physik der synthetischen Polymere」(Vieweg、Braunschweig)
【非特許文献3】B.Tieke「Makromolekulare Chemie」(VCH Weinheim、1997年)
【非特許文献4】J.Adhesion、1991年、第34巻、189〜200ページ
【非特許文献5】C.A.Dahlquist:Tack,adhesion,fundamentals and practice、McLaren and Sons Ltd.、London、1966年
【非特許文献6】Gerd Habenicht:Kleben − Grundlagen,Technologien,Anwendungen、第6版、Springer、2009年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
それゆえ、本発明の課題は、エポキシコンポジット製造において、硬化した部品の性能に相応の悪影響を及ぼすことなしに、繊維構築物を仮固定する可能性を提供することであったが、ただし、生成する最終固定用接着剤/仮固定用接着剤混合物の見かけ層間せん断強度の、純最終固定用接着剤の見かけ層間せん断強度からの相違が、8%未満、好ましくは7%未満、特に5%未満である。特に好ましくは、相違が3%未満である。その際、仮固定は、容易に可能であり、誤りの起きやすさがわずかであり、使用者に対してデザインの点でできる限り大きな自由を与えるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題は、本発明によると、仮固定のために接着テープを使用することによって解決され、詳細には、仮固定用接着剤が、第2の最終固定の過程で最終固定用接着剤中で溶解する未架橋感圧接着剤である冒頭に述べた種類の接着テープを使用することによって解決される。
【0015】
本出願の趣旨での溶解するとは、方法の節で記載する可溶性の測定方法に基づいて、仮固定用接着剤が、少なくとも部分的に最終固定用接着剤中において溶解する場合を意味する。この定義を満たさなかったのは、単に支持体から剥離して、光学的に視認可能に最終固定用接着剤中であちこち浮遊する接着剤である。
【0016】
驚くべきことに、現状技術で記載される、エポキシ系接着剤の欠点にもかかわらず、未架橋(それゆえ、より保存性があり、可溶性の)感圧接着剤を開発することができた。それは、二液型エポキシ接着剤に第2の成分(硬化剤)を添加しない、つまり、エポキシ接着剤が硬化剤フリーであることによるか、または例えばジシアンジアミドのような潜伏性硬化剤の使用により成功する。潜伏性硬化剤(および促進剤)を使用する場合、下部構造の形成を避けるためには、VARTMにおいて、まずはゆっくりと架橋反応が開始するように注意する。
【0017】
本出願の趣旨での未架橋とは、化学架橋に関し、方法の節で記載するゲル値測定方法により測定する。ゲル値が20%を下回るすべての感圧接着剤が、本出願の趣旨において未架橋である。
【0018】
本発明による接着テープの使用は、使用者が、接着剤を簡単に一様な塗布量で、接着させたいガラス繊維マット上に塗布することを可能にする。未架橋感圧接着剤であることから、固定には時間的制約がないが、その理由は、接着剤の硬化は起こらないからである。さらには、このようにして、ガラス繊維マットの再配置を問題なく可能にする接着剤の前提条件がもたらされる。最終固定用接着剤/仮固定用接着剤混合物を使用した場合の部品の見かけ層間せん断強度の、純最終固定用接着剤を使用した場合の部品の見かけ層間せん断強度からの相違が、わずかでしかないため、完成したコンポジット材料中での性能ロスを恐れる必要がない。その上、本発明による解決策は経済的でもあるが、その理由は、接着テープの使用により、望みの量の接着剤のみが塗布されるからであり、それに対して、スプレー接着剤を配量する際には、使用者が接着剤をあまり一様には塗布しない場合、配量が著しく変動することがある。その上、健康を損なうかまたは刺激性のある溶媒を必要とせず、使用者にとって好都合である。
【0019】
最終固定用接着剤中で溶解する未架橋転写式接着テープの使用は、使用者にとって最大限のデザイン自由度を可能にするが、その理由は、例えば、繊維織物といった支持体の形態での異物の導入が回避されるからである。
【0020】
その際、感圧接着剤と呼ばれるのは、比較的弱い加圧下にすでに被接着基材との持続的な結合を可能にし、使用後には、実質的に糊残りなく被接着基材から再び剥離可能である接着剤である。感圧接着剤は、室温において持続的に感圧接着性に作用し、つまり、十分に低い粘性および高い初期接着性を有するため、わずかな加圧においてすでに、それぞれの接着基材の表面をぬらすことになる。対応する接着剤の接着性は、その接着特性に基づき、再剥離性は、その凝集特性に基づく。
【0021】
好ましくは、仮固定用接着剤が、少なくとも1つのポリマーおよび少なくとも1つの反応性樹脂を含有し、ただし、仮固定用接着剤が、100部のポリマーに対して少なくとも104部の少なくとも1つの反応性樹脂を含有し、任意選択で1つの接着樹脂を含有する。
【0022】
そのような仮固定用接着剤の使用により、生成する最終固定用接着剤/仮固定用接着剤混合物を使用した場合の部品の見かけ層間せん断強度(ILSS)が、純最終固定用接着剤を使用した場合の部品の見かけ層間せん断強度から、たとえそうだとしてもわずかにしか相違しないことが保証され得るが、その理由は、混合物が、圧倒的な部分では、純粋形態の最終固定用接着剤と同じ特性を有するからである。ILSSは、個々の材料層間の結束に作用するせん断力に対する材料の抵抗を表す尺度である。
【0023】
特に好ましくは、仮固定用接着剤の、その少なくとも1つのポリマーが、ポリマー連続相として存在する。
【0024】
「ポリマー連続相」とは、ポリマーが、その中に反応性樹脂が溶解および/または分散している連続相として存在することを意味する。このようにして、最高85%の反応性樹脂分率を有する感圧接着剤を実現できることが確認された。感圧接着性は、ポリマーが、驚くべきことに、その高いエポキシ分率にもかかわらず、感圧接着性に必要な凝集力をもたらす連続相を形成することにより得られる。
【0025】
好ましくは、反応性樹脂が、連続相中において少なくとも部分的に均質に溶解して存在する。このようにして、感圧接着性の系が生じる。特に有利な一実施形態においては、反応性樹脂が、ポリマー中に完全に均質に溶解して存在する。それからなるテープは、VARTMにおいて、特に良好に溶解する。
【0026】
その際、「均質に溶解」とは、走査型電子顕微鏡により、溶解した物質と溶解中の物質との間で、異なる相が識別できないということを意味する。
【0027】
特に好ましくは、仮固定用接着剤が、100部のポリマーおよび場合によっては接着樹脂に対して、少なくとも120部の反応性樹脂、好ましくは少なくとも200部の反応性樹脂、特に少なくとも300部の反応性樹脂を含有する。その際、「部」とは、重量部に関する。「100部のポリマーに対して少なくとも120部の反応性樹脂」という表現は、ポリマー100gに対して少なくとも120gが使用されることを意味する。接着樹脂も含有している場合、ポリマーの部と接着樹脂の部とが統合される。その際、記載は、1つを超える反応性樹脂を使用する場合は反応性樹脂の重量部の合計に対してであり、1つを超えるポリマーを使用する場合は、場合によっては接着樹脂の量または使用する接着樹脂の重量部の合計も加算した、使用するポリマーの重量部の合計に対してである。
【0028】
反応性樹脂としては、好ましくはエポキシ樹脂を使用する。VARTMでは、エポキシ樹脂を使用する。一方では、同一(反応性樹脂)は、同一反応性樹脂により容易に溶解し、他方では、仮固定用接着剤に由来する溶解したエポキシドは、共架橋し、それゆえ妨害要素ではないため、層間せん断強度への影響が、特にわずかに保たれる。その際、反応性樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、エポキシノボラック、エポキシクレゾールノボラック、またはエポキシ化ニトリルゴムをベースとした少なくとも1つのエポキシ樹脂が特に好ましい。
【0029】
特に好ましくは、最終固定用接着剤が、少なくとも1つのエポキシ樹脂をベースとして構成されており、仮固定用接着剤が、最終固定用接着剤の反応性樹脂と同一種の反応性樹脂を含有する。
【0030】
最終固定用接着剤にも、反応性樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、エポキシノボラック、エポキシクレゾールノボラック、またはエポキシ化ニトリルゴムをベースとした少なくとも1つのエポキシ樹脂が特に好ましい。
【0031】
「〜をベースとした」または「〜を基礎とした」とは、ここでは、接着剤の特性が、少なくとも著しく、それらの成分(いわゆる「主剤」)の基本的な特性によって決まるということを意味し、ただし、接着剤の特性が、組成物中における、改変性の助剤もしくは添加剤またはさらなるポリマーの使用によって付加的に影響を受けることが不可能ではないことは言うまでもない。このことは、特に、接着剤の総量に対する主剤の分率が、50重量%超であることを意味し得る。
【0032】
ポリマーは、1つのポリマーであってもよいが、さらには2つまたは複数の異なるポリマーの混合物であってもよい。その際、その少なくとも1つのポリマーは、特にエラストマーまたは熱可塑性樹脂であってもよい。
【0033】
ポリマーの例は、感圧接着剤の領域で通常使用されるようなエラストマーであり、例えば、Donatas Satas「Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology」(Satas & Associates、Warwick 1999年)(非特許文献1)に記載されている。
【0034】
それは、例えば、アクリレートおよび/またはメタクリレート、ポリウレタン、天然ゴム、合成ゴム、例えば、ブチルゴム、(イソ)ブチルゴム、ニトリルゴム、またはブタジエンゴム、不飽和もしくは部分水素化もしくは完全水素化ポリジエンブロック(ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(イソ)ブチレン、それらからなるコポリマー、ならびにさらなる、当業者に公知のエラストマーブロック)からなるエラストマーブロックを有するスチレンブロックコポリマー、ポリオレフィン、フルオロポリマー、および/またはシリコーンをベースとしたエラストマーである。
【0035】
本発明の趣旨で特に好ましいのは、ゴムまたは合成ゴムまたはそれらから生成されたブレンドである。それらが、仮固定用接着剤の基材として使用される場合、天然ゴムは、必要とされる純度レベルおよび粘度レベルに応じて、基本的には入手可能なあらゆる品質、例えば、Crepe型、RSS型、ADS型、TSR型またはCV型から選択可能であり、合成ゴムは、ランダム共重合されたスチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(XIIR)、アクリレートゴム(ACM)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)またはポリウレタンの群、および/またはそれらのブレンドから選択可能である。
【0036】
その少なくとも1つのポリマーとしては、当業者には公知のあらゆる種類の熱可塑性樹脂も使用可能であり、それらは、例えば、J.M.G.Cowie「Chemie und Physik der synthetischen Polymere」(Vieweg、Braunschweig)(非特許文献2)およびB.Tieke「Makromolekulare Chemie」(VCH Weinheim、1997年)(非特許文献3)といった教科書で挙げられている。それらは、例えば、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(スチレン)、ポリ(オキシメチレン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(カーボネート)、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリ(ウレタン)、ポリ(尿素)、アクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ(アミド)(PA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、ポリ(スルホン)(PSU)、ポリ(エーテルスルホン)(PES)である。ポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)およびポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)もポリマーとして同じく可能であるが、本発明の趣旨では好ましくない。
【0037】
ポリマー成分の選択は、選択したエポキシ系に依存する。極性エポキシド(アルコールとエピクロロヒドリンとの反応によりしばしば製造される、例えば、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとからの反応生成物)を使用する場合、特に、極性ポリマーが好ましい。それらは、アクリルニトリルブタジエンゴムのようなエラストマー同様に、熱可塑性樹脂、例えば、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(カーボネート)、ポリ(フェニレンオキシド)、ポリ(ウレタン)、ポリ(尿素)、ポリ(アミド)(PA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、ポリ(スルホン)(PSU)、ポリ(エーテルスルホン)(PES)も含む。
【0038】
非極性エポキシド、例えば、ジシクロペンタジエンジエポキシドには、より非極性のポリマーが好ましい。それらは、例えば、ポリ(スチレン)、不飽和もしくは部分水素化もしくは完全水素化ポリジエンブロック(ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(イソ)ブチレン、それらからなるコポリマー、ならびにさらなる、当業者に公知のエラストマーブロック)からなるエラストマーブロックを有するスチレンブロックコポリマー、または熱可塑性ポリオレフィン、フルオロポリマー、および/またはシリコーンである。
【0039】
エポキシ含有量が特に高い仮固定用接着剤を得るには、本来は感圧接着性でない、つまり室温においてダルキスト基準を満たさないすべてのポリマーが特に適切である(J.Adhesion、1991年、第34巻、189〜200ページ(非特許文献4)またはC.A.Dahlquist:Tack,adhesion,fundamentals and practice、McLaren and Sons Ltd.、London、1966年(非特許文献5)を参照)。このことは、ポリマー成分同様に、使用されるような、ポリマーと接着樹脂とからなる混合物にも当てはまる。つまり、ポリマー、および場合によっては接着樹脂それ自体は、感圧接着性ではないものの、結果として生じる、本発明による接着テープの仮固定用接着剤は感圧接着性である。
【0040】
特に有利なポリマーは、ポリ(アミド)、ポリウレタン、ニトリルブタジエンゴム、ポリ(尿素)、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、ポリ(スルホン)(PSU)、およびポリ(エーテルスルホン)(PES)である。これらのポリマーは、反応性樹脂の分率が非常に高い感圧接着剤を可能にし、それは、完成部品にとって特に有利であるが、その理由は、非架橋性ポリマーの分率が特に低いからである。その際、ニトリルゴムは、本発明にとって特に適切である。
【0041】
ポリウレタンを使用する場合、そのポリウレタンが部分結晶性であり、DSC測定において、少なくとも5J/g、好ましくは20J/g、特に好ましくは40J/gという融解エンタルピーに相応する融解ピークまたは結晶化ピークを有する場合に、それらのポリウレタンは、未硬化状態での良好な接着力のために特に有利であると判明した。
【0042】
ポリマー混合物のポリマーは、いくつかの例を挙げるのみであるが、直鎖状、分岐状、星状の、またはグラフト化された構造であってもよく、ホモポリマーとして、ランダムコポリマーとして、交互ポリマーとして、またはブロックコポリマーとして構成されていてもよい。「ランダムコポリマー」という名称は、本発明の趣旨では、重合に使用されるコモノマーが純粋にランダムに取り込まれているようなコポリマーのみならず、コモノマー組成における勾配および/またはポリマー鎖中の個々のコモノマー種の局所濃縮が起こるようなコポリマーも含有する。個々のポリマーブロックは、コポリマーブロック(ランダムまたは交互)として構成されていてもよい。
【0043】
本発明には接着樹脂を使用してもよいが、本発明の仮固定用接着剤には、接着樹脂がなくてもよい。接着樹脂を添加しなくても、接着剤の望みの感圧接着性は達成される。仮固定用接着剤が、最終固定用接着剤に化学的にできるだけ類似しており、後者が通常は接着樹脂を含有しないことが望ましいため、仮固定用接着剤が、接着樹脂を含有しないことが好ましい。
【0044】
架橋性成分とも呼ばれる反応性樹脂としては、例えば、Gerd Habenicht:Kleben − Grundlagen,Technologien,Anwendungen、第6版、Springer、2009年(非特許文献6)に記載されているように、感圧接着剤または反応性接着剤の分野の当業者には公知のすべての、増成反応において架橋する高分子を形成する反応性成分を原則的には使用できる。
【0045】
架橋性成分の構成および化学構造は、特に、適用する温度、使用する触媒等々の種類に関して、ポリマー相の実質的な損傷および/または分解をもたらさない条件下において増成反応が実施可能である限り決定的ではなく、ただし、架橋性成分は、好ましくは、エラストマー相と少なくとも部分的に混合可能である。
【0046】
本発明の組成物中において有用であるエポキシ含有材料またはエポキシ樹脂は、少なくとも1つのオキシラン環を有する、開環反応により重合可能である任意の有機化合物である。一般的にエポキシドと呼ばれるそのような材料は、単量体エポキシド同様に重合体エポキシドも含み、脂肪族、脂環式、または芳香族であってもよい。これらの材料は、一般的には、分子当たり平均して少なくとも2つのエポキシ基を有し、好ましくは分子当たり2つを超えるエポキシ基を有する。分子当たりのエポキシ基の「平均的」数は、存在するエポキシ分子の総数で割った、エポキシ含有材料中のエポキシ基の数として定義される。重合体エポキシドは、末端エポキシ基を有する直鎖状ポリマー(例えば、ポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、骨格オキシラン単位を有するポリマー(例えば、ポリブタジエンポリエポキシド)、およびエポキシ側基を有するポリマー(例えば、グリシジルメタクリレートポリマーまたはグリシジルメタクリレートコポリマー)を含む。エポキシ含有材料の分子量は、58からおよそ100,000g/mol以上を変動し得る。異なるエポキシ含有材料からなる混合物も、本発明のホットメルト組成物中において使用可能である。有用なエポキシ含有材料は、シクロヘキセンオキシド基、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、およびビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペートによって例証されるエポキシシクロヘキサンカルボキシレートを含有するようなものを含む。この種の有用なエポキシドの詳細な一覧については、米国特許第3,117,099号(特許文献6)の参照を指示し得る。
【0047】
本発明の適用において特に有用であるさらなるエポキシ含有材料は、グリシジルエーテルモノマーを含む。例は、多価フェノールと過剰のクロロヒドリン、例えば、エピクロロヒドリンとの反応によって得られる、多価フェノールのグリシジルエーテル(例えば、2,2−ビス−(2,3−エポキシプロポキシフェノール)プロパンのジグリシジルエーテル)である。本発明の適用において使用できる、この型のエポキシドのさらなる例は、米国特許第3,018,262号(特許文献7)に記載されている。
【0048】
本発明において使用できる市販されているエポキシ含有材料は多数ある。特に、容易に入手できるエポキシドは、オクタデシレンオキシド、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド、ビニルシクロヘキセンオキシド、グリシドール、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(例えば、市販名EPON 828、EPON 1004およびEPON 1001FでShell Chemical Co.から、ならびに市販名DER−332およびDER−334でDow Chemical Co.から入手可能なもの)、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(例えば、Ciba−GeigyのARALDITE GY281)、ビニルシクロヘキセンジオキシド(例えば、Union Carbide Corp.のERL 4206)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(例えば、Union Carbide Corp.のERL−4221)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサンメタジオキサン(例えば、Union Carbide Corp.のERL−4234)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート(例えば、Union Carbide Corp.のERL−4299)、ジペンテンジオキシド(例えば、Union Carbide Corp.のERL−4269)、エポキシ化ポリブタジエン(例えば、FMC Corp.のOXIRON 2001)、シリコーン樹脂含有エポキシ官能基、エポキシシラン(例えば、ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランおよびガンマ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、Union Carbideから市販されている)、難燃性エポキシ樹脂(例えば、DER−542、臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂、Dow Chemical Co.から入手可能)、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(例えば、Ciba−GeigyのARALDITE RD−2)、ビスフェノールA−エピクロロヒドリンベースの水素化エポキシ樹脂(例えば、Shell Chemical Co.のEPONEX 1510)およびフェノールホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジルエーテル(例えば、Dow Chemical Co.のDEN−431およびDEN−438)を含む。
【0049】
好ましくは、仮固定用接着剤の反応性樹脂が、最終固定用接着剤と同様にエポキシド主剤を有する。仮固定用接着剤と最終固定用接着剤とが化学的に類似していれば類似しているほど、ILSSの相違がますますわずかになる。その際、「類似している」とは、例えば、最終固定用接着剤においてビスフェノールAベースのエポキシドを使用する場合、仮固定用接着剤組成物中においても、ビスフェノールAベースの反応性樹脂を使用するということを意味する。それらの反応性樹脂は、まったく同じであってもよいか、または分子量の点でわずかに異なってもよい。
【0050】
それゆえ、仮固定用接着剤の反応性樹脂が、最終固定用接着剤の反応性樹脂と同一であると特に好ましい。
【0051】
本発明による接着テープの仮固定用接着剤は、硬化剤または開始剤を含有してもよい。しかしながら、最終固定用接着剤が硬化剤または開始剤を含有しているため、それは必要ではない。もっとも、前記のように、好ましくは仮固定用接着剤が硬化剤フリーである。その上、本発明による接着テープの仮固定用接着剤は、さらに促進剤を含有してもよい。しかしながら、それも、硬化剤の場合と同様に二義的であるが、その理由は、反応性樹脂の架橋反応の調整は、最終固定用接着剤を介して行われるからである。
【0052】
任意選択で、仮固定用接着剤が、さらなる添加剤、レオロジー修飾剤、発泡剤、充填物、または接着促進剤を含有してもよい。
【0053】
本発明による接着テープは、未硬化状態の接着剤の、鋼への接着力が少なくとも1N/cmである場合に特に適切である。それにより、優れた感圧接着特性が与えられている。
【0054】
「接着テープ」という一般的な表現は、片面または両面に(感圧)接着剤が付与されている支持体材料を含む。好ましくは、支持体が、複合材料の繊維織物と同じまたは少なくとも非常に類似する材料からなり、それにより、複合材料の特性を変化させない。起伏をできるだけ最低限に抑えるためには、支持体が、できる限り小さい厚さを有することが望ましい。
【0055】
しかしながら、特に、本発明の趣旨での「接着テープ」という表現は、いわゆる「転写式接着テープ」、つまり支持体のない接着テープを含む。転写式接着テープの場合、接着剤は、むしろ、貼付前は、剥離層が付与されているおよび/または抗接着特性を有する可撓性ライナー間に塗布されている。貼付には、規則的にまず1つのライナーを除去し、接着剤を貼り付けてから第2のライナーを除去する。そのようにして、接着剤は、2つの表面を結合するために直接に使用できる。そのような支持体のない転写式接着テープは、本発明によると特に好ましい。本発明によるそのような、感圧接着性で支持体のない転写式接着テープにより、配置および配量の点で非常に正確な接着が可能になる。
【0056】
2つのライナーによってではなく唯一の両面剥離性のライナーにより作用する接着テープも可能である。その場合、接着テープウェブは、その上面では、両面剥離性のライナーの一方の面で被覆されており、その下面は、両面剥離性のライナーの裏面、特に、ベールまたはロール上の隣接する一巻きによって被覆されている。
【0057】
前記のように、コンポジット中に支持体がとどまる複合材料の製造時に使用する場合は、使用する繊維材料に対して支持体ができるだけ類似するか、またはその繊維材料と一致することが望ましい。その際、できる限り小さい支持体厚さが好ましい。
【0058】
転写式接着テープとしてか、または平面構築物上にコーティングされた状態かのいずれか一方で存在する感圧接着剤の厚さは、好ましくは1μmから100μmの間、さらに好ましくは5μmから50μmの間、特に好ましくはおよそ10μmから30μmの間である。
【0059】
回転翼を製造する際に使用する場合、好ましい層厚は10μmから30μmである。その際、仮固定用接着剤中に含有されているエポキシドが少なければ少ないほど、層厚をますます小さく選択するが、その理由は、接着剤中のエポキシド分率がより低いと、ILSSに対する不都合な作用がより大きいからである。それに対して、仮固定用接着剤が、より高いエポキシド含有量を有する場合は、ILSSに対する不都合な作用はわずかにしか存在しないか、またはほとんど存在せず、さらに層厚が厚い仮固定用接着剤を使用することも可能である。
【0060】
本発明は、さらに、コンポジット製造において繊維構築物を仮固定するための、本発明による接着テープの使用にも関する。典型的な適用範囲は、自動車産業、航空機建造およびボート建造、ならびに風力発電所用の回転翼である。特に、風力発電所用の回転翼の場合、寸法が非常に大きい繊維マットを型中で仮固定する必要があり、それは、ゆがみおよび起伏を容易に起こすため、多大な困難をもたらす。本発明による接着テープにより、簡単かつ低価格に仮固定が可能になり、その仮固定が、完成製品の品質の点で、言うに値する損失を引き起こすことはない。
【0061】
特に好ましくは、本発明による接着テープが、真空樹脂注入プロセスにおける繊維構築物の仮固定に使用され、ただし、真空樹脂注入プロセス用の樹脂は、エポキシ樹脂の群から選択される。エポキシ樹脂は、真空樹脂注入プロセスのために特に有利であるが、その理由は、エポキシ樹脂を使用した場合の完成部品は、ILSSに関して、特に優れた特性を有するからである。
【0062】
最終的には、本発明は、次の工程、
− 本発明による、仮固定用接着剤を含有する接着テープを用いた、型中での繊維構築物の仮固定、および繊維構築物相互の仮固定、
− 最終固定用接着剤中において接着テープの仮固定用接着剤が溶解する中での最終固定用接着剤の注入、ならびに
− 最終固定用接着剤の硬化
を含む、繊維構築物と最終固定用接着剤とからなるコンポジットを製造するための方法に関する。
【0063】
好ましくは、真空注入プロセスとも呼ばれる樹脂注入プロセスにより、最終固定用接着剤の注入を行う。その際、ガラス繊維マットを広面積に望みの型中に敷いてから、真空下にエポキシ樹脂を吸い込む。
【0064】
本発明による接着テープを用いた仮固定は、一方ではガラス繊維マットの型に対する、他方ではガラス繊維マット相互の、非常に容易、正確、修正可能な一時的固定を可能にする。接着テープを用いた仮固定は、スプレー接着剤を用いた従来の固定と比べて多数の利点を有する。つまり、使用者に健康上の損害をもたらすであろう、蒸発させる必要があるか、または蒸発し得る溶媒が存在しない。常に、指定された量が塗布され、接着剤のどの量をどの領域に塗布するかが、使用者の器用さおよび正確さには依存しないため、配量が容易になる。その上、溶媒が蒸発する必要がないため、乾燥時間が要らず、製造における著しい時間の節約をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】真空注入プロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】

測定法
ゲル値測定
そのためには、接着テープサンプルを20cmの切片に打ち抜き、ポリエチレンスパンボンド不織布(目付け量がおよそ55g/cmである、Du Pont社のTyvek)製の袋の中に密閉した。サンプルを3日間、室温において振とうさせながらブタノンで抽出した。ブタノンは毎日交換した。抽出を行った後、サンプルを110℃において乾燥させた。ゲル分率を、示差秤量により測定し、ただし、スパンボンド不織布および支持体の抽出損失を考慮した。抽出前および抽出後のサンプル重量の差から、ゲル値を、ブタノンで抽出できないポリマーの重量分率の百分率データとして算定する。
【0067】
最終固定用接着剤中での感圧接着剤の可溶性
最終固定用接着剤として、Momentive社のEpon Resin 828(ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応生成物)を選択した。
【0068】
250mLのガラス容器中において、マグネチックスターラを使って撹拌しながら、Epon Resin 828を40℃±1℃に加熱した。試験をするために、試験対象の感圧接着剤を、エッチングしたPET上に積層し、撹拌したEpon Resin 828中で24時間溶解した。評価は、次の基準に従って光学的に行った。
溶解:PET上には接着テープの残りがもはや存在しない
部分的に溶解:PET支持体の一部が、もはや接着剤で覆われていない
膨潤:接着テープの層厚が増大したが、PET支持体はなおも完全に接着剤で覆われている
溶解せず:PET支持体はなおも完全に接着剤で覆われている
【0069】
分子量:
数平均分子量Mおよび重量平均分子量Mの分子量測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を利用して行った。溶離液としては、0.1体積%のトリフルオロ酢酸を含むTHF(テトラヒドロフラン)を使用した。測定は、25℃において行った。プレカラムとして、PSS−SDV、5μ、10Å、ID8.0mmx50mmを使用した。フラクション化には、PSS−SDVカラム、5μ、10ならびに10および10、それぞれID8.0mmx300mmを使用した。サンプル濃度は、4g/lであり、流量は、1分当たり1.0mlだった。ポリスチレンスタンダードに対して測定した。
【0070】
見かけ層間せん断強度(ILSS):
サンプルを試験するために、Inovaの100kNサーボ油圧試験システムを、データ処理にはHBM(Hottinger Baldwin Messtechnik)のMGC Plusを使用した。測定頻度は、20Hzだった。
【0071】
実験には、EN ISO 14130に準拠する実験装置を使用した(図3)。その実験構成により、見かけ層間せん断強度を測定する。その構成は、三点曲げ試験の構成に原則的に類似する。しかしながら、層間剥離を引き起こすために非常に小さいサンプルを使用する。
【0072】
使用した原料:
Breon N41H80 Zeon Chemicals(ロンドン、UK)の、アクリルニトリル分率が41%のニトリルブタジエンゴム
Desmomelt 530 おおかた直鎖状のヒドロキシポリウレタン。Desmomelt 530は、Bayer MaterialScience社の、熱可塑性が非常に低い、著しく結晶化する弾性ポリウレタン。
Epon Resin 828 Momentive社の、エポキシド当たりの重量が185〜192g/eqである二官能性ビスフェノールA/エピクロロヒドリン液状エポキシド。
PolyDis PD3611 Schill+Seilacher「Struktol」社の、エラストマー含有量が40%およびエポキシド当たりの重量が550g/eqである、ビスフェノールF−ジグリシジルエーテルベースのニトリルゴム修飾エポキシ樹脂
PolyDis PD3691 Schill+Seilacher「Struktol」社の、エラストマー含有量が5%およびエポキシド当たりの重量が205g/eqである、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテルベースのニトリルゴム修飾エポキシ樹脂
ブタノン 溶媒
【0073】
【表1】
【0074】
対応する原料をブタノンに溶解したか、または混錬機中のBreonに溶媒を加えて予め溶解した。固体含有量は、40%から50%の間であった。
シリコーン処理したPET上の実験室塗抹標本(Laborausstrich)を製造し、溶媒を蒸発させた。
【0075】
感圧接着性固定剤を、対照(固定剤なし)および2つの競合製品(スプレー接着剤Aerofix 2および3M 11095)と比較した。サンプルは、4層のガラス繊維層を有し、各層の間には固定剤を貼り付けた。スプレー接着剤の量は、10から15g/mだった。感圧接着性テープは、20μmから30μmの間の厚さだった。
【0076】
サンプルプレートを、VARTM(vacuum−assisted resin transfer moulding)を利用して製造した。Saertex社の、812g/mの二軸性スクリム(Biaxgelege)(バッチ番号1012299)を使用した。Momentiveのエポキシ系RIM 135(バッチ番号SG1CO197)および硬化剤RIM137(バッチ番号SG1BO364)を、40℃において2mbarの絶対圧をかけて、プレートに積層した。続いて、サンプルをカットし、焼きなまし炉中において10時間、70℃の温度において焼き戻した。
【0077】
溶解試験の結果:
【0078】
【表2】
【0079】
ゲル値
【0080】
【表3】
【0081】
サンプル形状および試験
ILSS試験に関しては、EN ISO 14130に準拠すると、サンプルおよびその形状は、積層体の厚さに依存する。試験片は、長さとして厚さの10倍および幅として厚さの5倍を有する。支点(荷重点(Druckfinne))の間隔も同様に、厚さの5倍に対応する。試験規格EN ISO 14130によると、算出された試験結果は絶対値ではないということを指摘する必要がある。それゆえ、測定した量の定義には、「見かけ層間せん断強度」という名称を使用する。
【0082】
測定値:
【0083】
【表4】
【0084】
デルタ(ILSS):接着剤なしで繊維マットを固定した対照と比較した、ILSSの百分率での変化。
R:固定接着剤を使用していない対照部品。
市販のスプレー接着剤SK1(Cytec社のAerofix 2)、SK2(3M社のAdjustable Composite Positioning System11095)
【0085】
本発明による仮固定用接着剤K1からK5は、比較例と比べて、ILSSの明らかによりわずかな相違を有することが分かる。その際、エポキシ分率が高ければ高いほど、相違はますますわずかになる(K5と比べたK1、K3対K4を参照)。さらに、ポリマー成分としてニトリルゴムを使用すると、ポリウレタンを使用するよりも優れた結果をもたらすことが分かる(K1対K3を参照)。現状技術の対照スプレー接着剤(SK1およびSK2)と比べた相違は著しい。
図1