(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6556302
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】ペースト状銀粒子組成物、金属製部材接合体の製造方法および多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 1/22 20060101AFI20190729BHJP
B22F 1/00 20060101ALI20190729BHJP
B22F 7/08 20060101ALI20190729BHJP
B22F 1/02 20060101ALI20190729BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20190729BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
H01B1/22 A
B22F1/00 K
B22F7/08 C
B22F1/02 B
H01B1/00 M
H01B1/22 D
H01B13/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2018-145782(P2018-145782)
(22)【出願日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年2月4日
(31)【優先権主張番号】特願2018-130612(P2018-130612)
(32)【優先日】2018年7月10日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000111199
【氏名又は名称】ニホンハンダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091579
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 芳譽
(72)【発明者】
【氏名】増田 涼子
(72)【発明者】
【氏名】小林 靖啓
【審査官】
和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−148104(JP,A)
【文献】
特開2004−241132(JP,A)
【文献】
特開平03−084038(JP,A)
【文献】
特開2016−119255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
B22F 1/00
B22F 1/02
B22F 7/08
H01B 1/00
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均粒径が0.01μm以上10μm以下である球状、涙滴状または粒状の加熱焼結性銀粒子であって,該加熱焼結性銀粒子の表面を被覆する極性基を有する有機物の被覆量が0.05〜5.0質量%である加熱焼結性銀粒子と、(B)揮発性分散媒と、(C)融点が40〜300℃である熱硬化性エポキシ樹脂粉末とからなるペースト状物であり、該熱硬化性エポキシ樹脂粉末(C)が、平均粒径0.1〜100μmであり、かつ、該焼結性銀粒子(A)100質量部に対し、0.01質量部以上5.0質量部未満であって、100℃以上300℃以下での加熱により、該揮発性分散媒が揮散し、該加熱焼結性銀粒子(A)同士が焼結し、該熱硬化性エポキシ樹脂粉末(C)が硬化して、多孔質の銀粒子焼結物とエポキシ樹脂硬化物の複合物となることを特徴とする、ペースト状銀粒子組成物。
【請求項2】
多孔質の銀粒子焼結物とエポキシ樹脂硬化物の複合物の体積抵抗率が1×10−5Ω・cm以下であり、かつ、熱伝導率が100W/m・K以上であることを特徴とする、請求項1に記載のペースト状銀粒子組成物。
【請求項3】
(A)平均粒径が0.01μm以上10μm以下である球状,涙滴状または粒状の加熱焼結性銀粒子であって,該加熱焼結性銀粒子の表面を被覆する極性基を有する有機物の被覆量が0.05〜5.0質量%である加熱焼結性銀粒子と、(B)揮発性分散媒と、(C)融点が40〜300℃である熱硬化性エポキシ樹脂粉末とからなり、該熱硬化性エポキシ樹脂粉末(C)が、平均粒径0.1〜100μmであり、かつ、該焼結性銀粒子(A)100質量部に対し、0.01質量部以上5.0質量部未満であるペースト状銀粒子組成物を、複数の金属製部材間に介在させ、100℃以上300℃以下で加熱して該揮発性分散媒を揮散させ、該加熱焼結性銀粒子(A)同士を焼結させ該熱硬化性エポキシ樹脂粉末(C)を硬化させて多孔質の銀粒子焼結物とエポキシ樹脂硬化物の複合物とすることにより、複数の金属製部材同士を接合させることを特徴とする、金属製部材接合体の製造方法。
【請求項4】
金属製部材の金属が銅、銀、金、白金、パラジウム、または、これら各金属の合金であることを特徴とする、請求項3に記載の金属製部材接合体の製造方法。
【請求項5】
多孔質の銀粒子焼結物とエポキシ樹脂硬化物の複合物の体積抵抗率が1×10−5Ω・cm以下であり、かつ、熱伝導率が100W/m・K以上であることを特徴とする、請求項3または請求項4に記載の金属製部材接合体の製造方法。
【請求項6】
金属製部材が金属製個所を有する、リードフレーム、回路基板または電子部品であることを特徴とする、請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載の金属製部材接合体の製造方法。
【請求項7】
(A)平均粒径が0.01μm以上10μm以下である球状,涙滴状または粒状の加熱焼結性銀粒子であって,該加熱焼結性銀粒子の表面を被覆する極性基を有する有機物の被覆量が0.05〜5.0質量%である加熱焼結性銀粒子と、(B)揮発性分散媒と、(C)融点が40〜300℃である熱硬化性エポキシ樹脂粉末とからなり、該熱硬化性エポキシ樹脂粉末(C)が、平均粒径0.1〜100μmであり、かつ、該焼結性銀粒子(A)100質量部に対し、0.01質量部以上5.0質量部未満であるペースト状銀粒子組成物を、100℃以上300℃以下で加熱して該揮発性分散媒を揮散させ、該加熱焼結性銀粒子(A)同士を焼結させ、該熱硬化性エポキシ樹脂粉末(C)を硬化させて多孔質の銀粒子焼結物とエポキシ樹脂硬化物の複合物とすることを特徴とする、多孔質の銀粒子焼結物とエポキシ樹脂硬化物の複合物の製造方法。
【請求項8】
多孔質の銀粒子焼結物とエポキシ樹脂硬化物の複合物の体積抵抗率が1×10−5Ω・cm以下であり、かつ、熱伝導率が100W/m・K以上であることを特徴とする、請求項7に記載の多孔質の銀粒子焼結物とエポキシ樹脂硬化物の複合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト状銀粒子組成物、金属製部材接合体の製造方法、および、多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の製造方法に関する。詳しくは、加熱焼結性銀粒子と揮発性分散媒と融点が40〜300℃である熱硬化性樹脂粉末からなるペースト状銀粒子組成物、複数の金属製部材間に該ペースト状銀粒子組成物を介在させ加熱して該揮発性分散媒を揮散させ、該加熱焼結性銀粒子同士を焼結させ、該熱硬化性樹脂粉末を硬化させる金属製部材接合体の製造方法、および、該ペースト状銀粒子組成物を加熱して該揮発性分散媒を揮散させ、該加熱焼結性銀粒子同士を焼結させ該熱硬化性樹脂粉末を硬化させる、多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銀、銅、ニッケルなどの金属粉末を液状熱硬化性樹脂組成物中に分散させてなる導電性・熱伝導性ペーストは、加熱により硬化して導電性・熱伝導性被膜が形成される。したがって、プリント回路基板上の導電性回路の形成、抵抗器やコンデンサ等の各種電子部品及び各種表示素子の電極の形成、電磁波シールド用導電性被膜の形成、コンデンサ、抵抗、ダイオード、メモリ、演算素子(CPU)等のチップ部品の基板への接着、太陽電池の電極の形成、特に、アモルファスシリコン半導体を用いているために、高温処理のできない太陽電池の電極の形成、積層セラミックコンデンサ、積層セラミックインダクタ、積層セラミックアクチュエータ等のチップ型セラミック電子部品の外部電極の形成等に使用されている。
【0003】
近年、チップ部品の高性能化により、チップ部品からの発熱量が増え、導電性(電気伝導性)はもとより、熱伝導性の向上が要求される。したがって、導電性・熱伝導性ペースト中の金属粒子の含有率を可能な限り増加することにより導電性、熱伝導性を向上しようとする。ところが、そうすると、該ペーストの粘度が上昇し、作業性が著しく低下するという問題がある。
例えば、特開2003−309352の従来技術の欄に、「この種の導電性接着剤としては、一般に、フレーク状銀粒子に、バインダとなる樹脂、溶剤、その他添加剤を混合してペースト状としたものが用いられている。そしてこの導電性接着剤を導体回路上に塗布し、その上に電子部品を搭載したのち、加熱などにより導電性接着剤を硬化させることによって実装が行われている。しかしながら、従来の導電性接着剤には、接続抵抗が比較的大きく、接続信頼性が低いという問題がある。これは、加熱硬化後の導電性接着剤中にバインダなどの添加剤が残留し、フレーク状銀粒子同士の接触が阻害されているためと考えられる。」と記載されている。
【0004】
このような問題を解決するため、特許文献1(特開2014−51590)では、「(A)球状の開放連通多孔体である銀粒子と、(B)樹脂及び/又は(C)分散剤とを含み、好ましくは(D)硬化剤、(E)フラックス剤及び(F)硬化促進剤から選ばれる少なくとも1種の物を含む、銀ペースト組成物及びその製造方法」が提案されている。
ところが、(A)球状の開放連通多孔体である銀粒子は無数の細孔が表面から内部まで連通しているので、(B)樹脂の配合量が微量ないし少量の場合は、細孔内に樹脂が浸透してしまい、銀粒子表面にとどまる量が少ないため、熱硬化性樹脂の配合により、接触している部材への接着性を飛躍的に向上する効果がないという問題がある。
【0005】
特許文献2(特開2014−194013)では、「(A)プレート型銀微粒子、(B)銀粉、及び(C)熱硬化性樹脂を含み、(A)成分の銀微粒子と(B)成分の銀粉の合計量を100質量部としたとき、(C)成分が1〜20質量部配合される熱硬化性樹脂組成物、および該樹脂組成物をダイアタッチペースト又は放熱部材接着用材料として使用して作製した半導体装置及び電気・電子部品」が提案されている。
ところが、(A)プレート状銀微粒子を必須成分にしているので、収納容器から熱硬化性樹脂組成物を連続的に吐出すると、吐出口手前にプレート状銀微粒子が次第に堆積して詰まりが発生するという問題がある。
【0006】
特許文献3(特開2010−65277)では、「(A)平均粒径が0.1μm〜50μmの加熱焼結性金属粒子と(B)揮発性分散媒とからなるペースト状金属粒子組成物を、複数の金属製部材間に介在させ、70℃以上400℃以下での加熱により、該揮発性分散媒を揮散させ該金属粒子同士の焼結物により金属製部材同士を接合させ、次いで硬化性液状樹脂組成物を該多孔質焼結物中に含浸して硬化させるという金属製部材接合体の製造方法」が提案されている。
しかしながら、この方法は、加熱焼結性金属粒子を含むペースト状金属粒子組成物を加熱して該焼結性金属粒子同士を焼結した後、液状の硬化性樹脂組成物を毛細管現象により含浸させるので、作業効率が低いという問題がある。
【0007】
特許文献4(特開2013−214733)では、低温焼結性銀微粒子および及び熱硬化型バインダを含み、該銀微粒子100質量部に対して、該熱硬化型バインダが2〜7質量部である、熱伝導性ペーストが提案されている。
しかしながら、該熱硬化型バインダが導電性、熱伝導性の著しく低い有機樹脂であるため、該銀微粒子の粒径が大きく、かつ、該銀微粒子に対する該熱硬化型バインダの比率が高いと、該熱伝導性ペーストの銀粒子焼結物の導電性、熱伝導性が低いという問題がある。
【0008】
特許文献5(特開2016−148104)では、加熱焼結性金属粒子と揮発性分散媒と少量の熱硬化性樹脂組成物からなり、該加熱焼結性金属粒子と該熱硬化性樹脂組成物の質量比率が98.5:1.5〜99.9:0.1であるペースト状物であり、加熱により、該揮発性分散媒が揮散し、該加熱焼結性金属粒子同士が焼結し該熱硬化性樹脂組成物が硬化して、導電性と熱伝導性に優れた多孔質金属粒子焼結物となるペースト状金属粒子組成物が提案されている。
しかしながら、用いる該熱硬化性樹脂組成物が液状の場合(例えば、液状のエポキシ樹脂と液状の硬化剤からなる液状の場合)は、硬化反応性が高いため、常温(例えば25℃)で長時間保管すると、該ペースト状金属粒子組成物中で該エポキシ樹脂と該硬化剤が反応して、経時的に粘度が増大しゲル化するという問題、経時的に該ペースト状金属粒子組成物の接着力が低下するという問題がある。そのために、高価な包摂型硬化剤を用いざるを得ないという問題がある。用いる該熱硬化性樹脂組成物が固形状や半固形状の場合、分散性不良のため、ペースト状金属粒子組成物が不均一になるという問題がある。
【0009】
【特許文献1】特開2014−51590号公報
【特許文献2】特開2014−194013号公報
【特許文献3】特開2010−65277号公報
【特許文献4】特開2013−214733号公報
【特許文献5】特開2016−148104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは上記の問題点を解決するため鋭意研究した結果、加熱焼結性銀粒子と揮発性分散媒からなるペースト状銀粒子組成物に、少量の、融点が40〜300℃である熱硬化性樹脂粉末を含有せしめたペースト状銀粒子組成物は、加熱前にあってはニードル吐出性と保存安定性が良好であり、しかも、加熱すると該加熱焼結性銀粒子同士が焼結し、該熱硬化性樹脂粉末が硬化して導電性と熱伝導性の優れた多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物となること、複数の金属製部材間に該ペースト状銀粒子組成物を介在させて加熱すると、高い導電性、熱伝導性を保持しつつ複数の金属製部材を強固に接合し、しかも、かくして得られた接合体は熱衝撃に対する耐久性が優れていることを見出して、本発明に到達した。
【0011】
本発明の目的は、加熱前においてはニードル吐出性と保存安定性が良好であり、加熱すると加熱焼結性銀粒子同士が焼結し、熱硬化性樹脂粉末が硬化して導電性と熱伝導性と熱衝撃に対する耐久性が優れた多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物となるペースト状銀粒子組成物、複数の金属製部材が強固に接合し、熱衝撃に対する耐久性が優れている金属製部材接合体の製造方法、および、導電性と熱伝導性と熱衝撃に対する耐久性が優れた多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1] (A)平均粒径が0.01μm以上10μm以下である球状、涙滴状または粒状の加熱焼結性銀粒子であって,該加熱焼結性銀粒子の表面を被覆する極性基を有する有機物の被覆量が0.05〜5.0質量%である加熱焼結性銀粒子と、(B)揮発性分散媒と、(C)融点が40〜300℃である熱硬化性
エポキシ樹脂粉末とからなるペースト状物であり、該熱硬化性
エポキシ樹脂粉末(C)が、平均粒径0.1〜100μmであり、かつ、該焼結性銀粒子(A)100質量部に対し、0.01質量部以上5.0質量部未満であって、100℃以上300℃以下での加熱により、該揮発性分散媒が揮散し、該加熱焼結性銀粒子(A)同士が焼結し、該熱硬化性
エポキシ樹脂粉末(C)が硬化して、多孔質の銀粒子焼結物と
エポキシ樹脂硬化物の複合物となることを特徴とする、ペースト状銀粒子組成物。
[2] 多孔質の銀粒子焼結物と
エポキシ樹脂硬化物の複合物の体積抵抗率が1×10
−5Ω・cm以下であり、かつ、熱伝導率が100W/m・K以上であることを特徴とする、[1]に記載のペースト状銀粒子組成物。
【0013】
[3] (A)平均粒径が0.01μm以上10μm以下である球状,涙滴状または粒状の加熱焼結性銀粒子であって,該加熱焼結性銀粒子の表面を被覆する極性基を有する有機物の被覆量が0.05〜5.0質量%である加熱焼結性銀粒子と、(B)揮発性分散媒と、(C)融点が40〜300℃である熱硬化性
エポキシ樹脂粉末とからなり、該熱硬化性
エポキシ樹脂粉末(C)が、平均粒径0.1〜100μmであり、かつ、該焼結性銀粒子(A)100質量部に対し、0.01質量部以上5.0質量部未満であるペースト状銀粒子組成物を、複数の金属製部材間に介在させ、100℃以上300℃以下で加熱して該揮発性分散媒を揮散させ、該加熱焼結性銀粒子(A)同士を焼結させ該熱硬化性
エポキシ樹脂粉末(C)を硬化させて多孔質の銀粒子焼結物と
エポキシ樹脂硬化物の複合物とすることにより、複数の金属製部材同士を接合させることを特徴とする、金属製部材接合体の製造方法。
[4] 金属製部材の金属が銅、銀、金、白金、パラジウム、または、これら各金属の合金であることを特徴とする、
[3]に記載の金属製部材接合体の製造方法。
[5] 多孔質の銀粒子焼結物と
エポキシ樹脂硬化物の複合物の体積抵抗率が1×10
−5Ω・cm以下であり、かつ、熱伝導率が100W/m・K以上であることを特徴とする、
[3]または[4]に記載の金属製部材接合体の製造方法。
[6] 金属製部材が金属製個所を有する、リードフレーム、回路基板または電子部品であることを特徴とする、
[3]〜[5]のいずれかに記載の金属製部材接合体の製造方法。
【0014】
[7] (A)平均粒径が0.01μm以上10μm以下である球状,涙滴状または粒状の加熱焼結性銀粒子であって,該加熱焼結性銀粒子の表面を被覆する極性基を有する有機物の被覆量が0.05〜5.0質量%である加熱焼結性銀粒子と、(B)揮発性分散媒と、(C)融点が40〜300℃である熱硬化性
エポキシ樹脂粉末とからなり、該熱硬化性
エポキシ樹脂粉末(C)が、平均粒径0.1〜100μmであり、かつ、該焼結性銀粒子(A)100質量部に対し、0.01質量部以上5.0質量部未満であるペースト状銀粒子組成物を、100℃以上300℃以下で加熱して該揮発性分散媒を揮散させ、該加熱焼結性銀粒子(A)同士を焼結させ、該熱硬化性
エポキシ樹脂粉末(C)を硬化させて多孔質の銀粒子焼結物と
エポキシ樹脂硬化物の複合物とすることを特徴とする、多孔質の銀粒子焼結物と
エポキシ樹脂硬化物の複合物の製造方法。
[8] 多孔質の銀粒子焼結物と
エポキシ樹脂硬化物の複合物の体積抵抗率が1×10
−5Ω・cm以下であり、かつ、熱伝導率が100W/m・K以上であることを特徴とする、
[7]に記載の多孔質の銀粒子焼結物と
エポキシ樹脂硬化物の複合物の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明のペースト状銀粒子組成物は、保存安定性とニードル吐出性が良好であり、加熱焼結性が優れており、加熱により加熱焼結性銀粒子(A)同士が焼結し、融点が40〜300℃である熱硬化性樹脂粉末(C)が硬化して、導電性と熱伝導性の優れた多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物となり、該多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物による金属製部材接合体は、熱衝撃に対する耐久性が優れている。
【0016】
本発明の金属製部材接合体の製造方法によると、金属製部材同士が極めて強固に接合しており、しかも熱衝撃に対する耐久性の優れた金属製部材接合体を確実に製造することができる。この金属製部材接合体は、金属系基板や金属製個所を有する電子部品、電子装置、電気部品、電気装置等における金属製部材として有用である。
【0017】
本発明の多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の製造方法によると、導電性と熱伝導性と熱衝撃に対する耐久性が優れた、多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物を確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例におけるせん断接着強さ測定用試験体Aの平面図である。銀基板1と銀チップ3とが、多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物により接合されている。
【
図3】実施例4における、ペースト状銀粒子組成物を200℃で1時間加熱して生成した、多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の断面写真である。周辺部が黒く中心部が白く大きいめの3個所は、エポキシ樹脂硬化物粒子であり、黒く中くらい大きさの約10箇所および多数の黒く小さい箇所は空隙またはエポキシ樹脂硬化物粒子である。
【
図4】実施例5における、ペースト状銀粒子組成物を200℃で1時間加熱して生成した、多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の断面写真である。中くらいから大きめの黒色部分がエポキシ樹脂硬化物粒子であり、多数の微小な黒色部分は空隙またはエポキシ樹脂硬化物粒子である。
【
図5】実施例6における、ペースト状銀粒子組成物を200℃で1時間加熱して生成した、多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の断面写真である。中くらいから大きめの黒色部分がエポキシ樹脂硬化物粒子であり、多数の微小な黒色部分は空隙またはエポキシ樹脂硬化物粒子である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のペースト状銀粒子組成物は、(A)平均粒径が0.01μm以上10μm以下である球状、涙滴状または粒状の加熱焼結性銀粒子であって,該加熱焼結性銀粒子の表面を被覆する極性基を有する有機物の被覆量が0.05〜5.0質量%である加熱焼結性銀粒子と、(B)揮発性分散媒と、(C)融点が40〜300℃である熱硬化性
エポキシ樹脂粉末とからなるペースト状物であり、該熱硬化性
エポキシ樹脂粉末(C)が、平均粒径0.1〜100μmであり、かつ、該焼結性銀粒子(A)100質量部に対し、0.01質量部以上5.0質量部未満であって、100℃以上300℃以下での加熱により、該揮発性分散媒が揮散し、該加熱焼結性銀粒子(A)同士が焼結し、該熱硬化性
エポキシ樹脂粉末(C)が硬化して、多孔質の銀粒子焼結物と
エポキシ樹脂硬化物の複合物となることを特徴とする。
【0020】
該加熱焼結性銀粒子(A)は、銀塩の湿式還元法により製造されたもの、すなわち、湿式還元法による加熱焼結性銀粒子であることが好ましい。
湿式還元法では、通常、硝酸銀水溶液とアンモニア水とを混合して反応させ銀アンミン錯体水溶液を得て、これとヒドロキノンと無水亜硫酸カリウムもしくはアンモニウムとゼラチンの水溶液を接触反応させて銀粉を還元析出させ、濾過し、残渣を水で洗浄し、加熱下乾燥させて調製する方法が例示される。あるいは、硝酸銀水溶液とアンモニア水とを混合して反応させ銀アンミン錯体水溶液を得て、これと有機還元剤(ヒドロキノン、アスコルビン酸、グルコース等)、特にはヒドロキノンの水溶液を接触反応させて銀粉を還元析出させ、濾過し、洗浄し、乾燥させて調製している。
濾過残渣はアンモニアとヒドロキノンと無水亜硫酸カリウムもしくはアンモニウムとゼラチンを含有しており、銀粒子表面にアンモニアとヒドロキノンと無水亜硫酸カリウムもしくはアンモニウムとゼラチンが付着しているため、通常、清浄な水で繰り返し洗浄している。あるいは、濾過残渣はアンモニアと有機還元剤、特にはヒドロキノンを含有しており、銀粒子表面にアンモニアと有機還元剤、特にはヒドロキノンが付着しているため、通常、清浄な水とメタノールで繰り返し洗浄して得ることができる。
【0021】
このようにして製造された該加熱焼結性銀粒子(A)は通常、球状、粒状または涙滴状であるが、ナノメートルサイズやそれ以下の微細な銀粒子の集合体である粒状の場合が多い。通常、この還元工程において、生成した銀粒子同士の凝集を防止するため、極性基を有する有機物を添加して、生成した銀粒子表面を被覆する。その場合、銀粒子表面を被覆した該有機物は、銀粒子表面に会合、吸着、イオン結合等により強く接合し、その後の洗浄によっても容易に除去されない。
なお、還元法で銀粒子を製造する工程において使用する還元剤等の有機物が、加熱焼結性銀粒子(A)中に微量残存する場合があるが、それらは極性基を有するので本発明における極性基を有する有機物に含まれる。
【0022】
該加熱焼結性銀粒子(A)の平均粒径は0.01μm以上10μm以下である。この平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により得られる体積基準の粒度分布における累積50%粒径、すなわち、メジアン径である。なお、該測定法が使用できない場合は、電子顕微鏡写真による粒子径から計算されるメジアン径または単純平均値であってもよい。平均粒径が10μmを越えると、該銀粒子の焼結性が低下するため小さい方が好ましく、特には5μm以下であることが好ましい。しかし、平均粒径が0.01μm未満であると表面活性が強いため、該銀粒子同士の凝集を防止するための被覆剤の量が多く必要となり、該銀粒子を加熱して焼結した場合、焼結物中の空孔率が必然的に大きくなり、多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の熱衝撃に対する耐久性が低下するという問題がある。また、ペースト状銀粒子組成物の保存安定性が低下し、加熱焼結時の接合強度が不均一になりやすいため、0.1μm以上であることが好ましく、0.7μm以上であることがより好ましい。なお、本発明の目的・効果に反しない範囲において、平均粒径が0.01μm未満および10μmを超える加熱焼結性銀粒子を少量ないし微量併用してもよい。
【0023】
該加熱焼結性銀粒子(A)は、大気中、空気中での加熱により焼結すれば良く、銀により表面がメッキされた金属(例えば、ニッケル、鉄、アルミニウム、スズ)粒子もしくは樹脂(例えば、エポキシ樹脂)粒子であってもよい。また、表面または内部の一部が酸化銀または過酸化銀であってもよい。該加熱焼結性銀粒子(A)中の銀は、純粋な銀が好ましいが、銀の合金(ただし、好ましくは銀含有量が90質量%以上)であってもよい。
【0024】
該加熱焼結性銀粒子(A)の形状は、本発明のペースト状銀粒子組成物中において、均一に分散しやすく微小吐出性、焼結性に優れる、球状、粒状または涙滴状であることが好ましい。これらの形状は、JIS Z 2500、ISO/DIS 3252等の公的文書に記載された客観的な分類により確認できる。なお、涙滴状銀粒子は、その形状の状況によっては、粒状または球状に分類される場合がある。
なお、本発明の目的・効果に反しない範囲において、フレーク(薄片)状・針状・角状・樹枝状・不規則形状・板状・極薄板状・六角板状・柱状・棒状・多孔状・繊維状・塊状・海綿状・けい角状・丸み状等の銀粒子を併用しても良く、また、銅、金、白金およびパラジウムからなる群から選択される金属粒子を併用してもよい。
【0025】
なお、該加熱焼結性銀粒子(A)は、表面から内部まで貫通または連通した微細な細孔(ただし、平均粒径の1%以下)を有していてもよい。このような微細な細孔があっても、それらの細孔の径に対し、本願のペースト状銀粒子組成物において少量または微量配合される、融点が40〜300℃である熱硬化性樹脂粉末(C)の平均粒径は、後記されるように0.1〜100μmと大きいため、該加熱焼結性銀粒子(A)の表面から内部まで貫通または連通した微細な細孔内部へ侵入することはほとんどなく、また該内部へ侵入したとしても、その量はごく微量にすぎないためである。
【0026】
該加熱焼結性銀粒子(A)は、該加熱焼結性銀粒子(A)同士の凝集を防ぎ、揮発性分散媒(B)への分散性を向上し、優れた加熱焼結性を得るために、表面が極性基を有する有機物、好ましくは、(a)脂肪酸またはそのアルカリ金属塩若しくはエステル、(b)酸性官能基および/または塩基性官能基を有する高分子分散剤、または、(c)含窒素有機化合物で被覆されている。なお、還元法で銀粒子を製造する工程において使用する還元剤等の極性基を有する有機物が、銀粒子(A)中に微量残存する場合があるが、本発明においては該有機物に含まれる。また、本発明における極性基を有する有機物は、銀粒子に会合、結合または吸着していることがあり得る。極性基を有する有機物は加熱焼結性銀粒子(A)を被覆できれば、常温で固体、半固体、液体のいずれでもよい。
【0027】
上記極性基として、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸塩基、カルボン酸エステル基、水酸基、アルコキシ基、アルキルエーテル基、リン酸基、酸性リン酸エステル基、ホスホン酸基が例示されるが、カルボキシル基、カルボン酸塩基、カルボン酸エステル基、水酸基であることが好ましい。
また、アミノ基、イミノ基(=NH)、アンモニウム塩基、塩基性窒素原子を有する複素環基が例示されるが、アミノ基であることが好ましい。
炭素原子含有極性基の炭素原子数は好ましくは1〜54であり、より好ましくは1〜18である。
【0028】
(a)脂肪酸またはそのアルカリ金属塩もしくはエステルにおける脂肪酸として、炭素原子数が3以上であるプロパン酸(プロピオン酸)、ブタン酸(酪酸)、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸(エナント酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸)、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、12−ヒドロキシオクタデカン酸(12−ヒドロキシオレイン酸)、エイコサン酸(アラキン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸(リグノセリン酸)、ヘキサコサン酸(セロチン酸)、オクタコサン酸(モンタン酸)等の1価の直鎖飽和脂肪酸;炭素原子数が14以上である2−ペンチルノナン酸、2−ヘキシルデカン酸、2−ヘプチルドデカン酸、イソオレイン酸等の1価の分枝飽和脂肪酸;ソルビン酸、マレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、イソオレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ガドレン酸、エルカ酸、セラコレイン酸等の1価の不飽和脂肪酸が例示される。これら例示した脂肪酸の炭素原子数は最大24であるが、これに限定されるものではなく、例えば54であってもよい。
【0029】
また、このような脂肪酸として、狭義の脂肪酸に限らず、広義の脂肪酸である、炭素原子数が2以上であるシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、オキシジ酢酸(ジグリコール酸)、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ジグリコール酸等の多価の脂肪族カルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の多価の芳香族カルボン酸が例示される。これら脂肪酸の炭素原子数の最大値は特に限定されるものではなく、例えば54であってもよい。
【0030】
脂肪酸のアルカリ金属塩として、ナトリウム塩とカリウム塩とリチウム塩が例示されるが、好ましくはナトリウム塩とカリウム塩である。
脂肪酸のエステルとして、アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル)、フェニルエステルが例示される。これらアルキルエステルのアルキル基は炭素原子数1〜6が好ましい。
【0031】
(b)酸性官能基および/または塩基性官能基を有する高分子分散剤は、高分子からなる分散剤であり、重量平均分子量は通常1,000以上である。重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(キャリア:テトラヒドロフラン)によって測定されるポリスチレン換算重量平均分子量である。
【0032】
酸性官能基として、カルボキシル基、酸無水物基、リン酸基、酸性リン酸エステル基、ホスホン酸基が例示されるが、カルボキシル基、リン酸基または酸性リン酸エステル基であることが好ましい。酸性リン酸エステル基は、一部のリン結合水酸基がアルコキシ化されたものである。アルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などの低級アルコキシ基が例示される。低級アルコキシ基の炭素原子数は好ましくは1〜8である。
また、塩基性官能基として、アミノ基、イミノ基(=NH)、アンモニウム塩基、塩基性窒素原子を有する複素環基が例示されるが、アミノ基、アンモニウム塩基(例えば、第3級アンモニウム塩基、第4級アンモニウム塩基)であることが好ましい。アミノ基は、第1級アミノ基(-NH
2)、第2級アミノ基(-NHR)、第3級アミノ基(-NRR')のいずれでもよい。前記RとR'はアルキル基、フェニル基、アラルキル基などであり、炭素原子数は好ましくは1〜8である。
【0033】
前記酸性官能基と塩基性官能基を有する高分子分散剤は、分子中の酸性官能基の一部を塩基性化合物により中和ないし塩化していてもよい。中和ないし塩化に用いる塩基性化合物として、たとえば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、アルキルアミン類、アマイドアミン類、アルカノールアミン類、モルホリン等の含窒素有機化合物が挙げられる。上記アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム等が挙げられ、アルキルアミン類の具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミンが挙げられる。アルキル基とアルキレン基の炭素原子数は1〜8が好ましい。
【0034】
また、分子中の塩基性官能基の一部を酸性化合物により中和ないし塩化していてもよい。中和ないし塩化に用いる酸性化合物として、たとえば、リン酸,部分アルキルエステル化リン酸(酸性リン酸エステル),カルボン酸(例えば、低級脂肪族モノカルボン酸,低級脂肪族ジカルボン酸)が挙げられる。これらカルボン酸の炭素原子数は1〜8が好ましい。酸性官能基の一部は、塩基性官能基との塩を形成していてもよい。
【0035】
酸性官能基および/または塩基性官能基を有する高分子分散剤の酸価は、5〜300mgKOH/gであることが好ましく、10〜200mgKOH/gであることがより好ましい。また、高分子分散剤のアミン価は、5〜300mgKOH/gであることが好ましく、10〜200mgKOH/gであることがより好ましい。
酸価とは、高分子分散剤固形分1gあたりの酸価を表し、JIS K 0070に準じ、電位差滴定法によって求めることができる。アミン価とは、高分子分散剤固形分1gあたりのアミン価を表し、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法によって求めたのち、水酸化カリウムの当量に換算した値をいう。
【0036】
高分子分散剤において酸性官能基と塩基性官能基の高分子本体への結合位置は、特に限定されず、主鎖であってもよく、側鎖であってもよく、主鎖および側鎖に位置していてもよい。酸性官能基と塩基性官能基は、高分子本体へ直接結合しても良く、連結基を介して結合してもよい。連結基として、エチレン基〜オクチレン基などの低級アルキレン基、フェニレン基、鎖中にエーテル結合を有する低中級アルキレン基、鎖中にカルボン酸エステル結合を有する低中級アルキレン基、鎖中にカルボン酸アミド結合を有する低中級アルキレン基が例示される。低級アルキレン基の炭素原子数は1〜8が好ましく、鎖中にエーテル結合などを有する低中級アルキレン基の合計炭素原子数は2〜12が好ましい。
【0037】
市販の酸性官能基および/または塩基性官能基を有する高分子分散剤として、SOLSPERSE24000(酸価:24mgKOH/g、アミン価:47mgKOH/g),SOLSPERSE32000(酸価:15mgKOH/g、アミン価:180mgKOH/g)(Lubrizol,Ltd.製)(SOLSPERSEは、リューブリゾル リミテッドの登録商標である)等が例示される。
【0038】
また、DISPERBYK-106(酸価:132mgKOH/g、アミン価:74mgKOH/g)、DISPERBYK-130(酸価:2mgKOH/g、アミン価:190mgKOH/g)、DISPERBYK-140(酸価:73mgKOH/g、アミン価:76mgKOH/g)、DISPERBYK-142(酸価:46mgKOH/g、アミン価:43mgKOH/g)、DISPERBYK-145(酸価:76mgKOH/g、アミン価:71mgKOH/g)、DISPERBYK-180(酸価:94mgKOH/g、アミン価:94mgKOH/g)、DISPERBYK-187(酸価:35mgKOH/g、アミン価:35mgKOH/g)、DISPERBYK-191(酸価:30mgKOH/g、アミン価:20mgKOH/g)、DISPERBYK-2001(酸価:19mgKOH/g、アミン価:29mgKOH/g)、DISPERBYK-2010(酸価:20mgKOH/g、アミン価:20mgKOH/g)、DISPERBYK-2020(酸価:37mgKOH/g、アミン価:36mgKOH/g)、DISPERBYK-2020N(酸価:36mgKOH/g、アミン価:36mgKOH/g)、DISPERBYK-2025(酸価:38mgKOH/g、アミン価:37mgKOH/g)、DISPERBYK-102(酸価:101mgKOH/g)、DISPERBYK-174(酸価:22mgKOH/g)、DISPERBYK-2096(酸価:40mgKOH/g)、DISPERBYK-2150(アミン価:57mgKOH/g)、などのディスパービックシリーズ品[ビックケミー・ジャパン株式会社販売品](DISPERBYKは、ビイク―ヘミー ゲゼルシヤフト ミツト ベシュレンクテル ハフツングの登録商標である)等が例示される。
【0039】
また、BYK-9076(酸価:38mgKOH/g、アミン価:44mgKOH/g)、BYK-9077(アミン価:48mgKOH/g)、ANTI-TERRA-U(酸価:24mgKOH/g、アミン価:19mgKOH/g)、ANTI-TERRA-U100(酸価:50mgKOH/g、アミン価:35mgKOH/g)、ANTI-TERRA-204(酸価:41mgKOH/g、アミン価:37mgKOH/g)、ANTI-TERRA-205(酸価:40mgKOH/g、アミン価:37mgKOH/g)、ANTI-TERRA-250(酸価:46mgKOH/g、アミン価:41mgKOH/g)などのビックシリーズ品、アンチテラシリーズ品[ビックケミー・ジャパン株式会社販売品](BYKおよびANTI-TERRAは、ビイク―ヘミー ゲゼルシヤフト ミツト ベシュレンクテル ハフツングの登録商標である)が例示される。
【0040】
また、ディスパロンDA−234(酸価:16mgKOH/g、アミン価:20mgKOH/g)、ディスパロンDA−325(酸価:14mgKOH/g、アミン価:20mgKOH/g)などのディスパロンシリーズ品[楠本化成株式会社製]ディスパロンは、楠本化成株式会社の登録商標である);アジスパーPB−821(酸価:17mgKOH/g、アミン価:10mgKOH/g)、アジスパーPB−822(酸価:14mgKOH/g、アミン価:17mgKOH/g)、アジスパーPB−881(酸価:17mgKOH/g、アミン価:17mgKOH/g)、アジスパーPN−411(酸価:6mgKOH/g、アジスパーPA−111(酸価:35mgKOH/g)、などのアジスパーシリーズ品[味の素ファインテクノ株式会社製]が例示される(アジスパーは、味の素株式会社の登録商標である)。
【0041】
(c)含窒素有機化合物は、1級、2級もしくは3級のアルキルアミン類、ジアミン類、トリアミン類、アルキルアミドアミン類、N-アルキルエタノールアミン類、N-アルキルモルホリン、その他の有機アミン化合物が例示される。含窒素有機化合物の炭素原子数は1〜54が好ましい。
【0042】
アルキルアミン類、ジアミン類、トリアミン類として、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等のアルキルアミン類;エチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N´−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N´−ジエチルエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、N,N´−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン等のジアミン類;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、N−アミノエチルピペラジン等のトリアミン類が例示される。
【0043】
該加熱焼結性銀粒子(A)を被覆する極性基を有する有機物の被覆量は、これら加熱焼結性銀粒子の0.05〜5.0質量%であり、より好ましくは0.1〜2質量%である。少なすぎると該銀粒子(A)が凝集しやすくなって保存安定性が低下し、ひいては加熱焼結時の接合強度が不均一になり、多すぎると該加熱焼結性銀粒子(A)の加熱焼結性が低下し、更には該焼結物における空隙が大きくなって該焼結物の熱衝撃に対する耐久性が低下する。
【0044】
極性基を有する有機物の被覆量は通常の方法で測定できる。例えば、該銀粒子(A)を該有機物の沸点、揮発温度または熱分解温度以上に加熱して重量減少を測定する熱重量分析、該銀粒子(A)を酸素気流中で加熱して該銀粒子(A)に付着していた有機物中の炭素を炭酸ガスに変え、赤外線吸収スペクトル法により定量分析する方法が例示される。後者の場合、該有機物中の炭素含有量が測定されるが、該有機物の構造、構成成分は、赤外線分析、質量分析等により確認できるので、該炭素量から容易に該有機物の量を算出できる。
【0045】
本発明のペースト状銀粒子組成物は、加熱焼結性銀粒子(A)と揮発性分散媒(B)と熱硬化性樹脂粉末(C)からなり、粉末状の該加熱焼結性銀粒子(A)と該熱硬化性樹脂粉末(C)が、該揮発性分散媒(B)の作用によりペースト化している。このようにペースト化することによりシリンダーやノズルから微小量の吐出や細い線状に吐出でき、またメタルマスクによる印刷塗布が容易であり、微小な面積でも作業性良く塗布が可能になる。
また、該揮発性分散媒(B)が非揮発性分散媒ではなく、揮発性分散媒を使用するのは、加熱により該加熱焼結性銀粒子(A)が焼結する際に分散媒が前もって揮散すると該加熱焼結性銀粒子(A)が焼結しやすく、その結果、導電性、熱伝導性、金属製部材への接着性が向上するからである。該揮発性分散媒(B)は、銀粒子表面を変質させず、その沸点は60℃以上であり、300℃以下であることが好ましい。沸点が60℃未満であるとペースト状銀粒子組成物を調製する作業中に該揮発性分散媒(B)が揮散しやすく、沸点が300℃より大であると、該加熱焼結性銀粒子(A)が焼結後も該揮発性分散媒(B)が残留しかねないからである。
【0046】
そのような揮発性分散媒(B)として、水;エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、ターピネオール等の揮発性一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール等の揮発性多価アルコール;低級n−パラフィン、低級イソパラフィン等の揮発性脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の揮発性芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイゾブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン)、2−オクタノン、イソホロン(3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン)、ジイブチルケトン(2,6−ジメチル−4−ヘプタノン)等の揮発性ケトン;酢酸エチル(エチルアセテート)、酢酸ブチルのような揮発性酢酸エステル;酪酸メチル、ヘキサン酸メチル、オクタン酸メチル、デカン酸メチルのような揮発性脂肪族カルボン酸エステル;テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、プロピレンブリコールモノメチルエーテル、メチルメトキシブタノール、ブチルカルビトール等の揮発性エーテル;低分子量の揮発性シリコーンオイルおよび揮発性有機変成シリコーンオイルが例示される。
【0047】
揮発性分散媒(B)は2種類以上を併用しても良く、揮発性分散媒同士の相溶性は問わない。また、本発明のペースト状銀粒子組成物は使用する際にペースト状であればよいので、該揮発性分散媒(B)は常温で固体状、例えば、ピロガロール、p−メチルベンジルアルコール、o−メチルベンジルアルコール、シル−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、ピナコールなどのアルコール類;ビフェニル、ナフタレン、デュレンなどの炭化水素類;ジベンゾイルメタン、カルコン、アセチルシクロヘキサンなどのケトン類;ラウリン酸、カプリン酸などの脂肪酸類を含有していてもよい。この際、融点、沸点、蒸気圧、粘度、誘電率、屈折率等が異なる、複数の揮発性分散媒を併用してもよい。なお、水は、本発明の加熱焼結性銀粒子(A)の表面を被覆する極性基を有する被覆剤が撥水性の場合は、好ましくない。
【0048】
該揮発性分散媒(B)の配合量は、該加熱焼結性銀粒子(A)と該熱硬化性樹脂粉末(C)をペースト状にするのに十分な量であり、該加熱焼結性銀粒子(A)と該熱硬化性樹脂粉末(C)の合計100質量部あたり、通常5〜25質量部であり、好ましくは8〜15質量部である。
【0049】
本発明のペースト状銀粒子組成物には、本発明の目的・効果に反しない限り、該加熱焼結性銀粒子(A)以外の卑金属系の金属粒子、非金属系粒子、金属酸化物、金属化合物、金属錯体、チクソ剤、安定剤、焼結促進剤等の添加物を少量ないし微量(例えば、10質量%以下)添加してもよい。
【0050】
本発明における、融点が40〜300℃である熱硬化性樹脂粉末(C)は、本発明のペースト状銀粒子組成物が加熱された際に溶融して硬化し、該加熱焼結性銀粒子(A)同士が加熱されて生成した脆い多孔質の銀粒子焼結物を補強して機械的強度を改善する効果がある。また、該熱硬化性樹脂粉末(C)は、本発明のペースト状銀粒子組成物を複数の金属製部材間に介在させ、加熱して生成した該多孔質の銀粒子焼結物により該金属製部材を接合する際に、接着剤として機能して、該多孔質の銀粒子焼結物と該金属製部材の接合を補強し、接合強度を大きくする作用効果があり、更には、該多孔質の銀粒子焼結物の熱衝撃に対する耐久性を向上する効果がある。
また、該熱硬化性樹脂粉末(C)が、該多孔質の銀粒子焼結物の高温エージング試験において、銀の結晶成長を抑制して多孔質体中の空隙の増大を抑制する場合には、高温エージング試験後の該接合強度の低下を抑制する効果がある。
【0051】
該熱硬化性樹脂粉末(C)は、融点が40〜300℃であるので、融点より低い温度では粉末状である。しかし、融点より少々低い温度に保持すると軟化することがあるので、好ましくは、各融点よりも少なくとも15℃低い温度では粉末状である。例えば、融点が40℃の場合は、少なくとも25℃では粉末状である。なお、調達容易性、製造容易性の点で、融点は40〜200℃であることが好ましく、40〜100℃であることがより好ましく、特には40〜80℃であることが好ましい。
また、本発明のペースト状銀粒子組成物の加熱温度は100℃以上300℃以下であるから、その時の加熱温度において該熱硬化性樹脂粉末(C)は溶融することが好ましい。該熱硬化性樹脂粉末(C)が溶融してから硬化するまでの時間は限定されないが、本発明のペースト状銀粒子組成物の加熱が終了するまでに硬化することが好ましい。
【0052】
該熱硬化性樹脂粉末(C)は、平均粒径が0.1〜100μmであり、本発明のペースト状銀粒子組成物のニードルやノズル等の微細な吐出口からの吐出性の点で、50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。この平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により得られる体積基準の粒度分布における累積50%粒径、すなわち、メジアン径である。なお、該測定法が使用できない場合は、電子顕微鏡写真による粒子径から計算されるメジアン径または単純平均値であってもよい。
平均粒径の調整は、所定の開口径を有する金網、あるいは、機械的な分級器等により容易におこなうことができる。金網の場合、例えば、300メッシュの金網を通過させることで略50μm以上の粗大粒子を除外でき、1000メッシュの金網を通過させることで略15μm以上の粗大粒子を除外できる。分級器は、ジェット式を含め多くの種類が市販されている。なお、該熱硬化性樹脂粉末(C)の形状は限定されない。破砕状、粒状、球状、不定形状が例示される。
【0053】
このような融点が40〜300℃である熱硬化性樹脂粉末(C)として、熱硬化性エポキシ樹脂粉末、熱硬化性フェノール樹脂粉末、熱硬化性ノボラック樹脂粉末、熱硬化性ポリウレタン樹脂粉末、熱硬化性アルキド樹脂粉末、熱硬化性アクリル樹脂粉末、熱硬化性ポリエステル樹脂粉末、熱硬化性シリコン樹脂粉末、熱硬化性ポリアミック酸型ポリイミド樹脂粉末、熱硬化性ビスマレイミド樹脂粉末、および、それら樹脂の変性樹脂粉末が例示される。これら熱硬化性樹脂粉末は、耐熱性の点で、熱硬化性芳香族系樹脂粉末が好ましい。
これら熱硬化性樹脂粉末(C)は、通常、硬化剤を含むが、それ自体が熱硬化性である場合は、硬化剤を含まなくてもよい。
該熱硬化性樹脂粉末(C)は、該揮発性分散媒(B)への溶解性が低く、しかもそれ自身が加熱により溶融し、かつ、良好な接着性を有する点で、熱硬化性エポキシ樹脂粉末であることが好ましい。
このような融点を有する熱硬化性エポキシ樹脂粉末として、熱硬化性エポキシ樹脂粉体塗料が例示される。熱硬化性エポキシ樹脂粉体塗料は多数市販されており、液状の硬化性エポキシ樹脂組成物では困難な、常温(例えば25℃)における保存安定性が優れるという特徴がある。
【0054】
該熱硬化性エポキシ樹脂粉体塗料は、エポキシ樹脂、硬化剤、安定剤、シリカ等の無機フィラー、顔料等を含むが、エポキシ樹脂と硬化剤は必須成分であり、他は任意成分である。
該エポキシ樹脂は、通常、1分子中に少なくともエポキシ基を2個以上有する、多官能性エポキシ樹脂であり、エポキシ基はグリシジル基や2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基の一部として含まれる。
該硬化剤は、アミン、イミダゾール、酸無水物等であり、該安定剤は、反応抑制剤、耐熱安定剤、酸化防止剤等であり、該無機フィラーは、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム等の微粉末であり、該顔料は、ベンガラ、酸化チタン等の着色剤である。なお、1官能性あるいは多官能性の反応性稀釈剤を含有してもよい。
【0055】
このような多官能性エポキシ樹脂は多数市販されており、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂などの芳香族系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、N,N,N',N'−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等が例示される。耐熱性の点で、芳香族系エポキシ樹脂が好ましい。
【0056】
また、このような硬化剤は、脂肪族ポリアミン、ポリアミノアミド(ポリアミド樹脂)、脂環族ジアミン、芳香族ジアミン、イミダゾール、3級アミン)、酸無水物化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジシアンジアミド、ルイス酸錯化合物等が例示される。なお、これらの硬化剤はエポキシ樹脂の硬化を促進する効果を併せ持っていてもよい。硬化剤量は該熱硬化性エポキシ樹脂粉末を加熱硬化させるのに十分な量である。硬化剤の種類によって該熱硬化性エポキシ樹脂粉末を加熱硬化させるのに十分な量は異なるので、一律に規定しにくいが、該熱硬化性エポキシ樹脂粉末の2〜15質量%である。
【0057】
本発明のペースト状銀粒子組成物の保管中に該熱硬化性エポキシ樹脂粉末の硬化反応を抑制するため、該硬化剤は潜在型硬化剤を用いることが好ましい。潜在型硬化剤として、該揮発性分散媒(B)に溶解しにくい、常温で粉末状の硬化剤、熱により溶融する樹脂等のカプセルに硬化剤を含侵もしくは閉じ込めたカプセル型硬化剤、硬化剤を主剤の一部もしくはエポキシ基を有する化合物と予め付加反応させたアダクト型硬化剤、硬化剤を分子内部や分子集合体の内部に有する空洞内に取り込んだ包接型硬化剤等が例示される。
【0058】
包接型硬化剤は、例えば、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2− エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾールを、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、5−ニトロイソフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸等により包接した硬化剤が例示される。
【0059】
本発明における熱硬化性樹脂粉末(C)は、加熱して硬化した硬化物のガラス転移温度(Tg)が80℃以上であることが好ましい。
【0060】
本発明のペースト状銀粒子組成物において、該熱硬化性樹脂粉末(C)の比率は、該加熱焼結性銀粒子(A)100質量部に対し、0.01質量部以上5.0質量部未満であり、0.1質量部以上3質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上1.5質量部以下であることが特に好ましい。この該熱硬化性樹脂粉末(C)の比率が、0.01質量部未満であると、該熱硬化性樹脂粉末(C)を添加する効果が乏しく、5.0質量部以上であると、該ペースト状銀粒子組成物の加熱生成物である多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の導電性、熱伝導性が低下する。
【0061】
本発明のペースト状銀粒子組成物は、該加熱焼結性銀粒子(A)と該揮発性分散媒(B)と該熱硬化性樹脂粉末(C)を、例えば遊星式ミキサーにて均一なペースト状になるまで撹拌混合することにより、容易に製造することができる。この際、該加熱焼結性銀粒子(A)と該揮発性分散媒(B)と該硬化性樹脂粉末(C)を同時に遊星式ミキサーに投入して混合してもよく、まず、該揮発性分散媒(B)と該熱硬化性樹脂粉末(C)を遊星式ミキサーに投入して混合し、次いで該加熱焼結性銀粒子(A)を遊星式ミキサーに投入して混合してもよい。なお、該ペースト状銀粒子組成物は、混入した粗大異物を除去するため、100〜1000メッシュのフィルターでろ過することが好ましい。
【0062】
本発明の金属製部材接合体の製造方法は、(A)平均粒径が0.01μm以上10μm以下である球状,涙滴状または粒状の加熱焼結性銀粒子であって,該加熱焼結性銀粒子の表面を被覆する極性基を有する有機物の被覆量が0.05〜5.0質量%である加熱焼結性銀粒子と、(B)揮発性分散媒と、(C)融点が40〜300℃である熱硬化性
エポキシ樹脂粉末とからな
り、該熱硬化性
エポキシ樹脂粉末(C)が、平均粒径0.1〜100μmであり、かつ、該焼結性銀粒子(A)100質量部に対し、0.01質量部以上5.0質量部未満であるペースト状銀粒子組成物を、複数の金属製部材間に介在させ、100℃以上300℃以下で加熱して該揮発性分散媒を揮散させ、該加熱焼結性銀粒子(A)同士を焼結させ該熱硬化性
エポキシ樹脂粉末(C)を硬化させて多孔質の銀粒子焼結物と
エポキシ樹脂硬化物の複合物とすることにより、複数の金属製部材同士を接合させることを特徴とする。
【0063】
本発明の多孔質の銀粒子焼結物と
エポキシ樹脂硬化物の複合物の製造方法は、(A)平均粒径が0.01μm以上10μm以下である球状,涙滴状または粒状の加熱焼結性銀粒子であって,該加熱焼結性銀粒子の表面を被覆する極性基を有する有機物の被覆量が0.05〜5.0質量%である加熱焼結性銀粒子と、(B)揮発性分散媒と、(C)融点が40〜300℃である熱硬化性
エポキシ樹脂粉末とから
なり、該熱硬化性
エポキシ樹脂粉末(C)が、平均粒径0.1〜100μmであり、かつ、該焼結性銀粒子(A)100質量部に対し、0.01質量部以上5.0質量部未満であるペースト状銀粒子組成物を、100℃以上300℃以下で加熱して該揮発性分散媒を揮散させ、該加熱焼結性銀粒子(A)同士を焼結させ、該熱硬化性
エポキシ樹脂粉末(C)を硬化させて多孔質の銀粒子焼結物と
エポキシ樹脂硬化物の複合物とすることを特徴とする。
【0064】
金属製部材接合体の製造方法で使用する金属製部材は、本発明のペースト状銀粒子組成物を加熱して生成した多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物により接合される被接合体である。金属製部材の材質は、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、スズ、アルミニウム、および、これら各金属の合金が例示されるが、導電性、接合性の点で、金、銀、銅、白金、パラジウムまたはこれら各金属の合金が好ましく、これらの金属でメッキされたものであってもよい。金属製部材として具体的には、全体または一部が金属で形成された、リードフレーム、プリント基板、放熱板等の金属系基板、および、半導体素子、チップ部品等の電子部品が例示される。
【0065】
該金属製部材接合体の製造方法では、ペースト状銀粒子組成物を加熱する際の雰囲気は、該加熱焼結性銀粒子の焼結性の点で、充分量の酸素ガスを含む大気、空気等の酸化性ガスが好ましい。該金属製部材が銅または銅合金のように酸化されやすい材質の場合には、水素ガスを含む還元性ガスが好ましく、水素ガス5〜25体積%と窒素ガス95〜75体積%からなるフォーミングガスと称される還元性ガスが特に好ましい。また、充分量の酸素を含む大気、空気等の酸化性ガス中で加熱して後、水素を含むガス中で加熱して還元してもよい。
【0066】
複数の金属製部材間に介在するペースト状銀粒子組成物は、加熱焼結性銀粒子(A)の焼結温度以上の温度に加熱されることにより、揮発性分散媒(B)が揮散して、該加熱焼結性銀粒子(A)同士が焼結し、該熱硬化性樹脂粉末(C)が硬化して、導電性と熱伝導性が優れた多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物となり金属製部材同士を強固に接合する。この際、該熱硬化性樹脂粉末(C)は、該加熱焼結性銀粒子(A)に比べて配合量が少ないので、該銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の導電性と熱伝導性を損なうことがなく、金属製部材同士の接合強度を著しく向上させる。
【0067】
これらの際の加熱温度は、該揮発性分散媒(B)が揮散し、該加熱焼結性銀粒子(A)同士が焼結し、該熱硬化性樹脂粉末(C)が硬化する温度であればよく、通常100℃以上であり、150℃以上がより好ましい。しかし、400℃を越えると該揮発性分散媒(B)が突沸的に蒸発して、該加熱焼結性銀粒子(A)同士が焼結して生成した多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の形状に悪影響を与える可能性があるため、300℃以下であり、好ましくは250℃以下である。
【0068】
このようにして製造された、該加熱焼結性銀粒子(A)同士が焼結し、該熱硬化性樹脂粉末(C)が硬化して生成した銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物、および、複数の金属製部材間で該加熱焼結性銀粒子(A)同士が焼結し、該熱硬化性樹脂粉末(C)が硬化して生成した銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物は、数多くの微細な空孔や空隙、連続した空隙、すなわち、細孔を有しており、多孔質である。
なお、熱硬化性樹脂粉末(C)の硬化物が透明の場合や、薄くまたは微細に分散している場合は、多孔質の銀粒子焼結物の細孔内に存在しても電子顕微鏡写真に写らないため空隙率の測定・算出が不可能である。
【0069】
該多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物中の細孔の断面形状や大きさは、種々様々で、その断面形状は、略円形、略楕円形、略長方形、略三角形、不規則形状などである。
また、焼結前の加熱焼結性銀粒子(A)間の隙間が主に細孔になるので、各細孔の最長径は、通常、0.1〜5μm程度である。
【0070】
該熱硬化性樹脂粉末(C)は、該加熱焼結性銀粒子(A)に比べて配合量が少ないにもかかわらず、接合体の接着強さが大きいことからすると、該熱硬化性樹脂粉末(C)の多くは多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の細孔中で、あるいは、金属製部材との界面で、薄く硬化していると推測される。また、該加熱焼結性銀粒子(A)の比重(密度)は10.53であり、該熱硬化性樹脂粉末(C)の比重(密度)の約6倍〜10倍であるので、質量単位で該熱硬化性樹脂粉末(C)の配合量が少なくても、実質的に該複合物の特性を決める体積比でみると、該熱硬化性樹脂粉末(C)の配合量が少ないとは言えない。そのため、本発明のペースト状銀粒子組成物を加熱して生成するのは、単なる多孔質銀粒子焼結物ではなく、多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物となるのである。
【0071】
また、本発明のペースト状銀粒子組成物中の該加熱焼結性銀粒子(A)は、高い導電性と熱伝導性を有するため、該加熱焼結性銀粒子(A)の多孔質焼結物も導電性と熱伝導性に優れる。具体的には、導電性の程度を示す体積抵抗率は、1×10
−5Ω・cm以下であることが好ましく、熱伝導性の程度を示す熱伝導率は、100W/m・K以上であることが好ましい。
【0072】
本発明のペースト状銀粒子組成物を複数の金属製部材間の接合に用いた場合、該加熱焼結性銀粒子(A)同士の焼結物と樹脂硬化物の複合物は、焼結時に接触していた金属製部材、例えば金メッキ基板、金合金メッキ基板、銀基板、銀メッキ金属基板、銀合金基板、銀合金メッキ基板、銅基板、銅メッキ基板、銅合金基板、銅合金メッキ基板、白金メッキ基板、白金合金基板、白金合金メッキ基板、パラジウムメッキ基板、パラジウム合金基板、パラジウム合金メッキ基板等の金属系基板や電気絶縁性基板上の前記した電極等金属部分へ強固に接着する。更に、該熱硬化性樹脂粉末(C)は接合強度を向上する効果があるので接着強さは著しく大きくなり、更に、該金属製部材間における該焼結物は熱衝撃に対する耐久性が優れる。このため、本発明の製造方法による金属製部材接合体は、金属系基板や金属個所を有する電子部品、電子装置、電気部品、電気装置等における金属製部材接合体として有用である。
【0073】
そのような接合として、金属製個所を有する、コンデンサ、抵抗等のチップ部品、発光ダイオード、レーザーダイオード、メモリ、IC、IGBT、CPU等とリードフレームもしくは回路基板との接合、金属製個所を有する、高発熱の半導体素子と冷却板との接合が例示される。
【実施例】
【0074】
本発明の実施例と比較例を掲げる。実施例と比較例中、部とあるのは質量部を意味し、平均粒径は前記の通りメジアン径を意味する。実施例と比較例中での加熱は、実験室に設置された強制循環式オーブン内での加熱であり、強制循環式オーブン内の雰囲気は、断りがない限りは大気である。熱硬化性樹脂粉末(C)の比重および融点、粉末であることの確認および硬化物のガラス転移温度の測定、加熱焼結性銀粒子の被覆剤量、ペースト状銀粒子組成物のニードル吐出性兼保存安定性、多孔質の銀粒子焼結物の空隙率、加熱して生成した多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の体積抵抗率、熱伝導率、加熱して接合した接合体の接着強さの測定および冷熱サイクル試験は、以下の方法により行った。測定は、断りがない限りは大気中で室温(約25℃)での測定である。
実施例と比較例中の加熱焼結性銀粒子および熱硬化性樹脂粉末は、銀粒子メーカー品、樹脂粉末メーカー品である。なお、該熱硬化性樹脂粉末は、適宜メッシュ状の金網により分級して平均粒径を調整した。また、実施例2の、平均粒径が0.7μmである球状の銀粒子は、特願昭53−29716(特開昭54−121270)の実施例に準じて自ら作成したものであり、実施例3および実施例4中の、平均粒径が1.2μmである粒状の銀粒子は、自社出願である特願2012−201391(特開2014−55332)の実施例に準じて自ら作製したものである。
【0075】
[熱硬化性樹脂粉末(C)の比重および融点]
熱硬化性樹脂粉末(C)の比重および融点は、該樹脂粉末メーカーの測定値ないし製品資料記載の特性値である。参考例の熱硬化性液状エポキシ樹脂組成物の硬化物の比重は、電子比重計(日本計器株式会社製EW−300SG)により測定した。
[熱硬化性樹脂粉末(C)が、粉末であることの確認]
目視で粉末状であることを観察して行った。
[熱硬化性樹脂粉末(C)の硬化物のガラス転移温度(Tg)]
熱硬化性樹脂粉末(C)のガラス転移温度は、該樹脂粉末メーカーの測定値ないし製品資料記載の特性値である。参考例の熱硬化性液状エポキシ樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度は、以下の方法で測定した。熱機械分析装置(株式会社島津製作所製TMA−60)を用い、大気雰囲気で該硬化物を昇温速度10℃/分にて室温(約25℃)から400℃まで昇温して得た膨張曲線において、変曲点を示す温度をガラス転移温度とした。
【0076】
[加熱焼結性銀粒子の被覆剤量]
示差熱熱重量同時測定装置(島津製作所株式会社製DTG−60AH型)を用い、大気雰囲気で加熱焼結性銀粒子を昇温速度10℃/分にて室温(約25℃)から500℃まで昇温して、加熱焼結性銀粒子の減量率を被覆剤量として算出した。
【0077】
[ペースト状銀粒子組成物のニードル吐出性兼保存安定性]
3mlシリンジ(EFD,Inc.社製)にペースト状銀粒子組成物を1ml充填し、25℃で3日間静置した。次いで、該シリンジの先端に、内径0.14mmであり長さが13mmの金属ニードル(武蔵エンジニアリング株式会社製)を取り付け、1秒間隔で圧力200kPaの加圧有りと加圧なしを繰り返して吐出し、全量吐出するまでに、該金属ニードル内で詰まりが発生するか否かを調べた。全量吐出しても詰まりが発生しなかった場合は、詰まりなし(ニードル吐出性良好)、保存安定性良好と判断した。全量吐出する前に詰まりが発生した場合は、詰まりあり(ニードル吐出性不良)、保存安定性不良と判断した。
【0078】
[多孔質の銀粒子焼結物の空隙率]
ポリテトラフルオロエチレン樹脂板上に15mm角の開口部を有する厚さ1mmのステンレス製のマスクを置き、ペースト状銀粒子組成物を印刷塗布した。
【0079】
これを、実験室内の熱風循環式オーブン内で、所定の温度で1時間加熱して取り出し、ペースト状銀粒子組成物中の加熱焼結性銀粒子(A)を焼結した。
【0080】
得られた多孔質の銀粒子焼結物をポリテトラフルオロエチレン樹脂板からはずして空隙率測定用試験体とした。
得られた板状の試験体を自動精密切断装置(日本電子株式会社製、商品名アイソメット)により削り出し、得られた断面を走査型電子顕微鏡で撮影し、その画像を均質な印刷用紙に印刷して多孔質の銀粒子焼結物の固体部分と空間部分を切り分け、各々の質量を測定して空間部分の占める割合を空隙率として%で示した。
【0081】
[多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の体積抵抗率]
幅50mm×長さ50mm×厚さ2.0mmのガラス板上に、幅10mm×長さ10mmの開口部を有する2mm厚のメタルマスクを用いて、ペースト状銀粒子組成物を塗布し、実験室内の所定の温度の強制循環式オーブン内で所定の1時間加熱して板状の多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物とした。
ガラス板からはがした該銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物について、JIS K 7194に準じた方法により体積抵抗率(単位;Ω・cm)を測定した。
【0082】
[多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の熱伝導率]
幅50mm×長さ50mm×厚さ2.0mmのガラス板上に、幅10mm×長さ10mmの開口部を有する2mm厚のメタルマスクを用いて、ペースト状銀粒子組成物を塗布し、実験室内の所定の温度の強制循環式オーブン内で所定の1時間加熱して板状の多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物とした。
ガラス板からはがした該多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物について、レーザーフラッシュ法により熱伝導率(単位;W/m・K)を測定した。
【0083】
[接合体の接着強さ]
幅25mm×長さ70mm×厚さ1.0mmの銀基板(銀純度99.99%)上に、10mmの間隔をおいて4つの幅2.5mm×長さ2.5mmの開口部を有する100μm厚のメタルマスクを用いてペースト状銀粒子組成物を塗布し、その上に幅2.5mm×長さ2.5mm×厚さ0.5mmの銀チップ(銀純度99.99%)を搭載後、実験室内の所定の温度の強制循環式オーブン内で1時間加熱して接合した。
【0084】
かくして得られた接着強さ測定用試験体の幅2.5mm×長さ2.5mm×厚さ0.5mmの銀チップの側面を接着強さ試験機により速度23mm/分で押圧し、接合部がせん断破壊したときの荷重をもって接着強さ(単位;MPa)とした。
なお、接合体の接着強さは、ペースト状銀粒子組成物の調製直後のものと、調製後25℃で3日間静置した後のものについて測定した。
【0085】
[接合体の冷熱サイクル試験]
25mm×25mm×厚さ1.0mmの銀メッキ銅基板(銀純度99.9%)上に、幅2.5mm×長さ2.5mmの開口部を有する100μm厚のメタルマスクを用いてペースト状銀粒子組成物を塗布し、その上に幅2.5mm×長さ2.5mm×厚さ0.5mmの銀チップ(銀純度99.99%)を搭載後、実験室内の所定の温度の強制循環式オーブン内で1時間加熱して接合した。
【0086】
かくして得られた冷熱サイクル試験用試験体を、大気雰囲気で、−55℃で30分間放置と+125℃で30分間放置を1サイクルとする冷熱サイクル試験を500サイクル行った後、同様にして接合体の接着強さを測定した。
なお、接合体の接着強さは、ペースト状銀粒子組成物の調製直後のものと、調製後25℃で3日間静置した後のものについて測定した。
【0087】
[参考例]
[熱硬化性液状エポキシ樹脂組成物の調製]
遊星式ミキサー中で、三菱化学株式会社製多官能タイプエポキシ樹脂(商品名:jER152、粘度1.5Pa・s(52℃)、エポキシ当量177g)97部、硬化剤として三菱化学株式会社製の2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール3部を均一に混合することにより、25℃で液状の熱硬化性エポキシ樹脂組成物を調製した。このエポキシ樹脂組成物を200℃で1時間加熱して生成した硬化物の比重は1.12、ガラス転移温度は178℃である。
【0088】
[実施例1]
遊星式ミキサー内で、硝酸銀の湿式還元法で製造され,平均粒径が1.2μmであり,表面がオレイン酸で被覆された(オレイン酸量は0.5質量%である)粒状の加熱焼結性銀粒子100.0部、揮発性分散媒としてオクタンジオール(協和発酵ケミカル株式会社製)12.0部、および、融点が45℃である熱硬化性エポキシ樹脂粉末(ペルノックス株式会社製PCE−300、平均粒径18μm、硬化後の比重1.62、Tg90℃)1.0部を均一に混合してペースト状銀粒子組成物を調製した。
【0089】
このペースト状銀粒子組成物のニードル吐出性を試験し、ペースト状銀粒子組成物を200℃で1時間加熱して生成した多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物について、体積抵抗率、熱伝導率およびペースト状銀粒子組成物の調製直後に作成した接合体と調製後25℃で3日間静置した後に作成した接合体の冷熱サイクル試験をしたところ、
ニードル吐出性と保存安定性は良好であり、該多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の体積抵抗率は低く、熱伝導率は高かった。また、ペースト状銀粒子組成物の調製直後と調製後25℃で3日間静置した後に作成した接合体の接着強さは大きく、冷熱サイクル試験後の該接合体の接着強さも大きかった。なお、該多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物は、該加熱焼結性銀粒子の焼結物99.5部(比重10.53)と該熱硬化性エポキシ樹脂粉末の硬化物1.0部(比重1.62)からなり、その体積比が、93.9%:6.1%の複合物である。
以上の結果を表1にまとめて示した。このペースト状銀粒子組成物は、保存安定性が良好であり、ニードル吐出性が良好であり、多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の導電性、熱伝導性が高く、複数の銀製部材を極めて強固に接合して、しかも熱衝撃に対する耐久性が高いことがわかる。
【0090】
[実施例2]
遊星式ミキサー内で、硝酸銀の湿式還元法で製造され,平均粒径が0.7μmであり,表面がステアリン酸で被覆された(ステアリン酸量は1.0質量%である)球状の加熱焼結性銀粒子100.0部、揮発性分散媒としてオクタンジオール(協和発酵ケミカル株式会社製)16.0部、および、融点が50℃である熱硬化性エポキシ樹脂粉末(ペルノックス株式会社製PCE−60、平均粒径18μm、硬化後の比重1.65、Tgは100℃)1.5部を均一に混合してペースト状銀粒子組成物を調製した。
【0091】
このペースト状銀粒子組成物のニードル吐出性を試験し、ペースト状銀粒子組成物を200℃で1時間加熱して生成した多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物について、体積抵抗率、熱伝導率およびペースト状銀粒子組成物の調製直後に作成した接合体と調製後25℃で3日間静置した後に作成した接合体の冷熱サイクル試験をしたところ、
ニードル吐出性と保存安定性は良好であり、該多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の体積抵抗率は低く、熱伝導率は高かった。また、ペースト状銀粒子組成物の調製直後と調製後25℃で3日間静置した後に作成した接合体の接着強さは大きく、冷熱サイクル試験後の該接合体の接着強さも大きかった。なお、該多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物は、該加熱焼結性銀粒子の焼結物99.0部(比重10.53)と該熱硬化性エポキシ樹脂粉末の硬化物1.5部(比重1.65)からなり、その体積比が、91.2%:8.8%の複合物である。
以上の結果を表1にまとめて示した。このペースト状銀粒子組成物は、保存安定性が良好であり、ニードル吐出性が良好であり、多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の導電性、熱伝導性が高く、複数の銀製部材を極めて強固に接合して、しかも熱衝撃に対する耐久性が高いことがわかる。
【0092】
[実施例3]
遊星式ミキサー内で、硝酸銀の湿式還元法で製造され,平均粒径が1.2μmであり,表面がDISPERBYK−2020で被覆された(DISPERBYK−2020量は0.3質量%である)粒状の加熱焼結性銀粒子100.0部、揮発性分散媒としてα−ターピネオール(関東化学株式会社製)12.0部、および、融点が42℃である熱硬化性エポキシ樹脂粉末(ペルノックス株式会社製PCE−330、平均粒径18μm、硬化後の比重1.68、Tg94℃)0.8部を均一に混合してペースト状銀粒子組成物を調製した。
【0093】
このペースト状銀粒子組成物のニードル吐出性を試験し、ペースト状銀粒子組成物を200℃で1時間加熱して生成した多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物について、体積抵抗率、熱伝導率およびペースト状銀粒子組成物の調製直後に作成した接合体と調製後25℃で3日間静置した後に作成した接合体の冷熱サイクル試験をしたところ、
ニードル吐出性と保存安定性は良好であり、該多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の体積抵抗率は低く、熱伝導率は高かった。また、ペースト状銀粒子組成物の調製直後と調製後25℃で3日間静置した後に作成した接合体の接着強さは大きく、冷熱サイクル試験後の該接合体の接着強さも大きかった。なお、該多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物は、該加熱焼結性銀粒子の焼結物99.7部(比重10.53)と該熱硬化性エポキシ樹脂粉末の硬化物0.8部(比重1.68)からなり、その体積比が、95.2%:4.8%の複合物である。
以上の結果を表1にまとめて示した。このペースト状銀粒子組成物は、保存安定性が良好であり、ニードル吐出性が良好であり、多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の導電性、熱伝導性が高く、複数の銀製部材を極めて強固に接合して、しかも熱衝撃に対する耐久性が高いことがわかる。
【0094】
[実施例4]
遊星式ミキサー内で、硝酸銀の湿式還元法で製造され,平均粒径が1.2μmであり,表面が1,2−プロパンジアミンで被覆された(1,2−プロパンジアミン量は0.2質量%である)粒状の加熱焼結性銀粒子100.0部、揮発性分散媒としてα−ターピネオール(関東化学株式会社製)12.0部、および、融点が42℃である熱硬化性エポキシ樹脂粉末(ペルノックス株式会社製PCE−330、平均粒径9μm、硬化後の比重1.68、Tg94℃)0.8部を均一に混合してペースト状銀粒子組成物を調製した。
【0095】
このペースト状銀粒子組成物のニードル吐出性を試験し、および、ペースト状銀粒子組成物を200℃で1時間加熱して生成した多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物について、体積抵抗率、熱伝導率およびペースト状銀粒子組成物の調製直後に作成した接合体と調製後25℃で3日間静置した後に作成した接合体の冷熱サイクル試験をしたところ、
ニードル吐出性と保存安定性は良好であり、該多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の体積抵抗率は低く、熱伝導率は高かった。また、ペースト状銀粒子組成物の調製直後と調製後25℃で3日間静置した後に作成した接合体の接着強さは大きく、冷熱サイクル試験後の該接合体の接着強さも大きかった。なお、該多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物は、該加熱焼結性銀粒子の焼結物99.8部(比重10.53)と該熱硬化性エポキシ樹脂粉末の硬化物0.8部(比重1.68)からなり、その体積比が、95.2%:4.8%の複合物である。
以上の結果を表2にまとめて示した。このペースト状銀粒子組成物は、保存安定性が良好であり、ニードル吐出性が良好であり、多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の導電性、熱伝導性が高く、複数の銀製部材を極めて強固に接合して、しかも熱衝撃に対する耐久性が高いことがわかる。
【0096】
[実施例5]
遊星式ミキサー内で、硝酸銀の湿式還元法で製造され,平均粒径が1.2μmであり,表面がオレイン酸で被覆された(オレイン酸量は0.5質量%である)粒状の加熱焼結性銀粒子100.0部、揮発性分散媒としてオクタンジオール(協和発酵ケミカル株式会社製)12.0部、および、融点が45℃である熱硬化性エポキシ樹脂粉末(ペルノックス株式会社製PCE−300、平均粒径18μm、硬化後の比重1.62、Tg90℃)0.2部を均一に混合してペースト状銀粒子組成物を調製した。
【0097】
このペースト状銀粒子組成物のニードル吐出性を試験し、ペースト状銀粒子組成物を200℃で1時間加熱して生成した多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物について、体積抵抗率、熱伝導率およびペースト状銀粒子組成物の調製直後に作成した接合体と調製後25℃で3日間静置した後に作成した接合体の冷熱サイクル試験をしたところ、
ニードル吐出性と保存安定性は良好であり、該多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の体積抵抗率は低く、熱伝導率は高かった。また、ペースト状銀粒子組成物の調製直後と調製後25℃で3日間静置した後に作成した接合体の接着強さは大きく、冷熱サイクル試験後の該接合体の接着強さも大きかった。なお、該多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物は、該加熱焼結性銀粒子の焼結物99.5部(比重10.53)と該熱硬化性エポキシ樹脂粉末の硬化物0.2部(比重1.62)からなり、その体積比が、98.7%:1.3%の複合物である。
以上の結果を表2にまとめて示した。このペースト状銀粒子組成物は、保存安定性が良好であり、ニードル吐出性が良好であり、多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の導電性、熱伝導性が高く、複数の銀製部材を極めて強固に接合して、しかも熱衝撃に対する耐久性が高いことがわかる。
【0098】
[実施例6]
遊星式ミキサー内で、硝酸銀の湿式還元法で製造され,平均粒径が1.2μmであり,表面がオレイン酸で被覆された(オレイン酸量は0.5質量%である)粒状の加熱焼結性銀粒子100.0部、揮発性分散媒としてオクタンジオール(協和発酵ケミカル株式会社製)12.0部、および、融点が45℃である熱硬化性エポキシ樹脂粉末(ペルノックス株式会社製PCE−300、平均粒径18μm、硬化後の比重1.62、Tg90℃)2.5部を均一に混合してペースト状銀粒子組成物を調製した。
【0099】
このペースト状銀粒子組成物のニードル吐出性を試験し、ペースト状銀粒子組成物を200℃で1時間加熱して生成した多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物について、体積抵抗率、熱伝導率およびペースト状銀粒子組成物の調製直後に作成した接合体と調製後25℃で3日間静置した後に作成した接合体の冷熱サイクル試験をしたところ、
ニードル吐出性と保存安定性は良好であり、該多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の体積抵抗率は低く、熱伝導率は高かった。また、ペースト状銀粒子組成物の調製直後と調製後25℃で3日間静置した後に作成した接合体の接着強さは大きく、冷熱サイクル試験後の該接合体の接着強さも大きかった。なお、該多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物は、該加熱焼結性銀粒子の焼結物99.5部(比重10.53)と該熱硬化性エポキシ樹脂粉末の硬化物2.5部(比重1.62)からなり、その体積比が、86.0%:14.0%の複合物である。
以上の結果を表2にまとめて示した。このペースト状銀粒子組成物は、保存安定性が良好であり、ニードル吐出性が良好であり、多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の導電性、熱伝導性が高く、複数の銀製部材を極めて強固に接合して、しかも熱衝撃に対する耐久性が高いことがわかる
【0100】
[比較例1]
実施例1において、融点が45℃である熱硬化性エポキシ樹脂粉末(ペルノックス株式会社製PCE−300、平均粒径18μm、硬化後の比重1.62、Tg90℃)を配合しない以外は同様にしてペースト状銀粒子組成物を調製した。
【0101】
このペースト状銀粒子組成物のニードル吐出を試験し、ペースト状銀粒子組成物を200℃で1時間加熱して生成した該加熱焼結性銀粒子の多孔質焼結物について、空隙率、体積抵抗率、熱伝導率およびペースト状銀粒子組成物の調製直後に作成した接合体と調製後25℃で3日間静置した後に作成した接合体について接着強さを測定し、接合体の冷熱サイクル試験をしたところ、
ニードル吐出性と保存安定性は良好であり、多孔質銀粒子焼結物の体積抵抗率は低く、熱伝導率は高かったが、接合体の接着強さは小さく、冷熱サイクル試験後の該接合体の接着強さも小さかった。
以上の結果を表3にまとめて示した。このペースト状銀粒子組成物は、保存安定性が良好であり、ニードル吐出性が良好であり、多孔質銀粒子焼結物の導電性、熱伝導性は高いものの、複数の銀製部材を極めて強固に接合できず、しかも熱衝撃に対する耐久性が乏しいことがわかる。
【0102】
[比較例2]
実施例1において、融点が45℃である熱硬化性エポキシ樹脂粉末(ペルノックス株式会社製PCE−300、平均粒径18μm、硬化後の比重1.62、Tg90℃)1.0部の代わりに、参考例で調製した25℃で液状の熱硬化性液状エポキシ樹脂組成物(硬化後の比重1.12)1.0部を用いた以外は同様にしてペースト状銀粒子組成物を調製した。
【0103】
このペースト状銀粒子組成物のニードル吐出性を試験し、ペースト状銀粒子組成物を200℃で1時間加熱して生成した多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物について、体積抵抗率、熱伝導率およびペースト状銀粒子組成物の調製直後に作成した接合体と調製後25℃で3日間静置した後に作成した接合体について接着強さを測定し、接合体の冷熱サイクル試験をしたところ、ニードル吐出では詰まりが発生し、保存安定性が不良であった。該多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の体積抵抗率は低く、熱伝導率は高く、ペースト状銀粒子組成物の調製直後の接合体の接着強さは大きいが、調製後25℃で3日間静置した後に作成した接合体の接着強さは小さかった。なお、該多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物は、該加熱焼結性銀粒子の焼結物99.5部(比重10.53)と該熱硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物1.0部(比重1.12)からなり、その体積比が、91.4%:8.6%の複合物である。
以上の結果を表3にまとめて示した。このペースト状銀粒子組成物は、ニードル吐出が不可能であり、保存安定性が不良であった。多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の導電性、熱伝導性は高いものの、ペースト状銀粒子組成物の調製後、経時的に接着強さが低下して複数の銀製部材を極めて強固に接合できず、しかも熱衝撃に対する耐久性が乏しいことがわかる。
【0104】
[比較例3]
実施例1において、融点が45℃である熱硬化性エポキシ樹脂粉末(ペルノックス株式会社製PCE−300、平均粒径18μm、硬化後のTgは90℃)1.0部の代わりに、参考例で調製した25℃で液状の熱硬化性液状エポキシ樹脂組成物(硬化後の比重1.12)5.5部を用いた以外は同様にしてペースト状銀粒子組成物を調製した。
【0105】
このペースト状銀粒子組成物のニードル吐出性を試験し、ペースト状銀粒子組成物を200℃で1時間加熱して生成した多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物について、体積抵抗率、熱伝導率およびペースト状銀粒子組成物の調製直後に作成した接合体と調製後25℃で3日間静置した後に作成した接合体について接着強さを測定し、接合体の冷熱サイクル試験をしたところ、
ニードル吐出では詰まりが発生し、保存安定性が不良であった、ペースト状銀粒子組成物の調製直後の接合体の接着強さは大きく、調製後25℃で3日間静置した後に作成した接合体の接着強さも大きかったが、該多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の体積抵抗率は高く、熱伝導率は低くかった。なお、該多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物は、該加熱焼結性銀粒子の焼結物99.5部(比重10.53)と該熱硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物5.5部(比重1.12)からなり、その体積比が、65.8%:34.2%の複合物である。
以上の結果を表3にまとめて示した。このペースト状銀粒子組成物は、ニードル吐出が不可能であり、保存安定性が不良であり、多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の接着強さは大きいものの、導電性、熱伝導性は低いことがわかる。
【0106】
[比較例4]
遊星式ミキサー内で、硝酸銀の湿式還元法で製造され,平均粒径が1.2μmであり,表面がオレイン酸で被覆された(オレイン酸量は0.5質量%である)粒状の加熱焼結性銀粒子100.0部、揮発性分散媒としてオクタンジオール(協和発酵ケミカル株式会社製)20.0部、および、融点が42℃である熱硬化性エポキシ樹脂粉末(ペルノックス株式会社製PCE−330、平均粒径110μm、硬化後の比重1.68、Tg94℃)5.5部を均一に混合してペースト状銀粒子組成物を調製した。
【0107】
このペースト状銀粒子組成物のニードル吐出性を試験し、ペースト状銀粒子組成物を200℃で1時間加熱して生成した多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物について、体積抵抗率、熱伝導率およびペースト状銀粒子組成物の調製直後に作成した接合体と調製後25℃で3日間静置した後に作成した接合体について接着強さを測定し、接合体の冷熱サイクル試験をしたところ、
ニードル吐出では詰まりが発生し、保存安定性が不良であった。また、ペースト状銀粒子組成物の調製直後の接合体の接着強さは大きく、調製後25℃で3日間静置した後に作成した接合体の接着強さも大きかったが、該多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の体積抵抗率が高く、熱伝導率は低くかった。なお、該多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物は、該加熱焼結性銀粒子の焼結物99.5部(比重10.53)と該熱硬化性エポキシ樹脂粉末の硬化物5.5部(比重1.68)からなり、その体積比が、74.3%:25.7%の複合物である。
以上の結果を表4にまとめて示した。このペースト状銀粒子組成物は、ニードル吐出が不可能であり、保存安定性が不良であり、多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の接着強さは大きいものの、導電性、熱伝導性は低いことがわかる。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
注:比較例1の空隙率は該焼結物の空隙率である。
【0111】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明のペースト状銀粒子組成物は、保存安定性とニードル吐出性が良好であり、加熱により加熱焼結性銀粒子が焼結し、かつ、融点が40〜300℃である熱硬化性樹脂組粉末が溶融して硬化し、高い導電性、熱伝導性を有する多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物となり、金属製部材同士を極めて強固に接合することができるので、複数の金属製部材同士の接合材として有用であり、特には、コンデンサ、抵抗等のチップ部品と回路基板との接合、発光ダイオード、レーザーダイオード、メモリ、IC、IGBT、CPU等の半導体素子とリードフレームもしくは回路基板との接合、高発熱のCPUチップと冷却板との接合などに有用である。
本発明の金属製部材接合体の製造方法による金属製部材接合体は、金属系基板や金属製個所を有する電子部品、電子装置、電気部品、電気装置などにおける金属製部材として有用である。
本発明の多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の製造方法による該複合物は、複数の金属製部材同士間の接合層として有用であり、回路基板上に形成される導電性の配線回路の形成に有用である。
【符号の説明】
【0113】
A せん断接着強さ測定用試験体
1 銀基板
2 ペースト状銀粒子組成物(加熱焼結後は、多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物)
3 銀チップ
【要約】 (修正有)
【課題】保存安定性が良好であり、加熱により導電性の優れた多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物となり、複数の金属製部材を強固に接合できるペースト状銀粒子組成物、金属製部材接合体の製造方法及び多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物の製造方法の提供。
【解決手段】(A)平均粒径が0.01μm以上10μm以下、球状、涙滴状または粒状、極性基を有する有機物の被覆量が0.05〜5.0質量%である加熱焼結性銀粒子と(B)揮発性分散媒と(C)融点が40〜300℃である熱硬化性樹脂粉末とからなる、ペースト状銀粒子組成物。該ペースト状銀粒子組成物を、複数の金属製部材間に介在させ、加熱して該揮発性分散媒を揮散させ、多孔質の銀粒子焼結物と樹脂硬化物の複合物とする。該ペースト状銀粒子組成物を加熱して該揮発性分散媒を揮散させ、該加熱焼結性銀粒子(A)同士を焼結させ、該熱硬化性樹脂粉末(C)を硬化させる。
【選択図】
図3