特許第6556316号(P6556316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6556316
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】工業炉及び工業炉の燃焼制御方法
(51)【国際特許分類】
   F23C 99/00 20060101AFI20190729BHJP
   F23L 15/02 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   F23C99/00 325
   F23L15/02ZAB
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-217116(P2018-217116)
(22)【出願日】2018年11月20日
【審査請求日】2018年11月20日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】河本 祐作
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−159613(JP,A)
【文献】 特開2007−263476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 99/00
F23L 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼用空気と燃料とを混合させて燃料を燃焼させる工業炉において、燃焼用空気供給管から炉内に供給される燃焼用空気に燃料を接触・混合させて燃料を燃焼させる接触混合式燃焼機構と、燃焼用空気供給管から炉内に供給される燃焼用空気から離れる方向に向けて前記の燃焼用空気と直接接触しないようにして炉内に燃料を供給し、この燃料を前記の接触混合式燃焼機構によって燃料を燃焼させた後の燃焼排ガス中に含まれる燃焼用空気と混合させて燃焼させる非接触式燃焼機構を設けると共に、この工業炉を制御する制御機構として、前記の接触混合式燃焼機構により、燃焼用空気供給管から供給された燃焼用空気と燃料とを混合させて燃料を燃焼させ、炉内温度を燃料の自燃温度まで上昇させた後、炉内におけるNOxの発生量が増加すると、接触混合式燃焼機構において供給する燃料の量を減少させる一方、前記の非接触式燃焼機構により、燃焼用空気供給管から炉内に供給される燃焼用空気から離れる方向に向けて前記の燃焼用空気と直接接触しないようにして炉内に燃料を供給し、この燃料を前記の接触混合式燃焼機構によって燃料を燃焼させた後の燃焼排ガス中に含まれる燃焼用空気と混合させて燃焼させる制御機構を設けたことを特徴とする工業炉。
【請求項2】
請求項1に記載の工業炉において、前記の接触混合式燃焼機構としては、燃焼用空気供給管を通して供給される燃焼用空気に第1燃料供給管から燃料を燃焼用空気供給管内に供給して、燃料を燃焼用空気供給管内で燃焼用空気と混合させて燃焼させる第1接触混合式燃焼機構と、燃焼用空気供給管から炉内に供給された燃焼用空気に向けて第2燃料供給管から燃料を供給し、燃料を炉内において燃焼用空気と接触するように混合させて燃料を燃焼させる第2接触混合式燃焼機構とが存在し、少なくとも前記の第2接触混合式燃焼機構が設けられていることを特徴とする工業炉。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の工業炉において、前記の非接触式燃焼機構は、燃焼用空気供給管から炉内に供給される燃焼用空気から離れる方向に向けて燃料を炉内に供給する第3燃料供給管を有し、この燃料を前記の接触混合式燃焼機構によって燃料を燃焼させた後の燃焼排ガス中に含まれる燃焼用空気と混合させて燃焼させることを特徴とする工業炉。
【請求項4】
請求項3に記載の工業炉において、前記の接触混合式燃焼機構から離れた第3燃料供給管の近傍における炉内に、燃焼排ガス中に含まれる酸素と一酸化炭素との少なくとも一方の濃度を検出する濃度センサーを設けたことを特徴とする工業炉。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の工業炉において、前記の燃焼用空気供給管を対になるように設けると共に、対になった各燃焼用空気供給管にそれぞれ蓄熱材を収容させた蓄熱部を設け、一方の燃焼用空気供給管を通して供給される燃焼用空気を前記の蓄熱部に収容された蓄熱材により加熱させる一方、他方の燃焼用空気供給管を通して炉内における燃焼排ガスを前記の蓄熱材を収容させた蓄熱部に導き、燃焼排ガスの熱を蓄熱部における蓄熱材に蓄熱させて排気させることを特徴とする工業炉。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の工業炉において、前記の接触混合式燃焼機構により、燃焼用空気供給管から供給された燃焼用空気と燃料とを混合させて燃料を燃焼させ、炉内温度を燃料の自燃温度まで上昇させた後、炉内におけるNOxの発生量が増加すると、接触混合式燃焼機構において供給する燃料の量を減少させる一方、前記の非接触式燃焼機構により、燃焼用空気供給管から炉内に供給される燃焼用空気から離れる方向に向けて前記の燃焼用空気と直接接触しないようにして炉内に燃料を供給し、この燃料を前記の接触混合式燃焼機構によって燃料を燃焼させた後の燃焼排ガス中に含まれる燃焼用空気と混合させて燃焼させることを特徴とする工業炉の燃焼制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の工業炉の燃焼制御方法において、前記の接触混合式燃焼機構として、前記の請求項2に記載の第1接触混合式燃焼機構と第2接触混合式燃焼機構とを設け、前記の第1接触混合式燃焼機構により、燃焼用空気供給管から供給された燃焼用空気と第1燃料供給管から供給された燃料とを混合させて燃料を燃焼させ、炉内温度を燃料の自燃温度まで上昇させて、第1接触混合式燃焼機構を停止させた後、前記の第2接触混合式燃焼機構により、燃焼用空気供給管から炉内に供給された燃焼用空気に向けて第2燃料供給管から燃料を供給し、燃料を炉内において燃焼用空気と接触するように混合させて燃料を燃焼させ、その後、第2接触混合式燃焼機構による燃焼によりNOxの発生量が増加すると、第2燃料供給管から供給させる燃料の量を減少させる一方、前記の非接触式燃焼機構により、燃焼用空気供給管から炉内に供給される燃焼用空気から離れる方向に向けて前記の燃焼用空気と直接接触しないようにして炉内に燃料を供給し、この燃料を前記の接触混合式燃焼機構によって燃料を燃焼させた後の燃焼排ガス中に含まれる燃焼用空気と混合させて燃焼させることを特徴とする工業炉の燃焼制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の工業炉の燃焼制御方法において、前記の請求項3に示した第3燃料供給管の近傍における炉内に、前記の接触混合式燃焼機構によって燃料を燃焼させた後の燃焼排ガス中に含まれる酸素と一酸化炭素との少なくとも一方の濃度を検出する濃度センサーを設け、前記の濃度センサーによって検出された酸素と一酸化炭素との少なくとも一方の濃度に基づいて、前記の第2燃料供給管から供給させる燃料の量と、前記の第3燃料供給管から供給させる燃料の量とを制御することを特徴とする工業炉の燃焼制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼用空気と燃料とを混合させて燃料を燃焼させる工業炉に関するものである。特に、燃焼用空気と燃料とを混合させて燃焼させるにあたり、燃焼時における火炎温度が高くなったりして、NOxの発生量が多くなるのを、従来の場合よりも一層抑制できるようにして、安全な環境条件が得られると共に、効率の良い燃焼が安定して行えるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、加熱炉等の工業炉においては、燃焼用空気と燃料とを混合させて燃料を燃焼させ、燃焼させる炉内において被処理物を加熱処理することが行われている。
【0003】
そして、このような工業炉においては、燃焼用空気と燃料とを混合させて燃料を燃焼させるにあたり、従来から、例えば、特許文献1や特許文献2等に示されるように、燃焼用空気供給管を通して供給される燃焼用空気と、燃料供給管を通して供給される燃料とを混合させ、このように燃焼用空気と混合された燃料を炉内において燃焼させるようにしたものや、燃焼用空気供給管から炉内に供給された燃焼用空気に向けて燃料供給管から燃料を供給し、炉内において供給された燃焼用空気と前記の燃料を接触させるように混合させて燃料を燃焼させるようにしたものが知られている。
【0004】
ここで、燃焼用空気供給管を通して供給される燃焼用空気に燃料供給管から燃料を供給し、燃焼用空気と燃料とを混合させて燃料を燃焼させるようにした場合には、燃焼用空気と燃料とが速やかに混合されて燃焼されるため、一般に、燃焼時における火炎の温度が高くなり、炉内の温度を速やかに上昇できる一方、このような状態で燃焼を続けると、NOxの発生量が多くなるという問題があった。
【0005】
また、燃焼用空気供給管から炉内に供給された燃焼用空気に向けて燃料供給管から燃料を供給し、燃料を炉内において燃焼用空気と接触するように混合させて燃料を燃焼させるようにした場合、燃料が燃焼用空気と徐々に接触しながら燃焼されるようになり、前記のように燃焼用空気供給管を通して供給される燃焼用空気と燃料供給管から供給された燃料とを直ぐに混合させて燃焼させる場合に比べて、NOxの発生量を少なくすることができるようになる。
【0006】
しかし、近年においては、NOxによる大気汚染や人体への悪影響を十分に抑制して、安全な環境条件が得られるようにするため、NOxの発生量をさらに減少させることが要望されるようになり、燃焼時におけるNOxの発生量をさらに減少させる工業炉が要望されるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3031908号公報
【特許文献2】特許第5171065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、燃焼用空気と燃料とを混合させて燃料を燃焼させる工業炉における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0009】
すなわち、本発明における工業炉においては、燃焼用空気と燃料とを混合させて燃焼させるにあたり、燃焼時における火炎温度等が高くなって、炉内温度が上昇してNOxの発生量が増加するのを、従来の場合よりも一層抑制できるようにして、安全な環境条件が得られると共に、効率の良い燃焼が安定して行えるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る工業炉においては、前記のような課題を解決するため、燃焼用空気と燃料とを混合させて燃料を燃焼させる工業炉において、燃焼用空気供給管から炉内に供給される燃焼用空気に燃料を接触・混合させて燃料を燃焼させる接触混合式燃焼機構と、燃焼用空気供給管から炉内に供給される燃焼用空気から離れる方向に向けて前記の燃焼用空気と直接接触しないようにして炉内に燃料を供給し、この燃料を前記の接触混合式燃焼機構によって燃料を燃焼させた後の燃焼排ガス中に含まれる燃焼用空気と混合させて燃焼させる非接触式燃焼機構を設けると共に、この工業炉を制御する制御機構として、前記の接触混合式燃焼機構により、燃焼用空気供給管から供給された燃焼用空気と燃料とを混合させて燃料を燃焼させ、炉内温度を燃料の自燃温度まで上昇させた後、炉内におけるNOxの発生量が増加すると、接触混合式燃焼機構において供給する燃料の量を減少させる一方、前記の非接触式燃焼機構により、燃焼用空気供給管から炉内に供給される燃焼用空気から離れる方向に向けて前記の燃焼用空気と直接接触しないようにして炉内に燃料を供給し、この燃料を前記の接触混合式燃焼機構によって燃料を燃焼させた後の燃焼排ガス中に含まれる燃焼用空気と混合させて燃焼させる制御機構を設けたことを特徴としている。
【0011】
ここで、本発明に係る工業炉において、前記の接触混合式燃焼機構としては、燃焼用空気供給管を通して供給される燃焼用空気に第1燃料供給管から燃料を燃焼用空気供給管内に供給して、燃料を燃焼用空気供給管内で燃焼用空気と混合させて燃焼させる第1接触混合式燃焼機構と、燃焼用空気供給管から炉内に供給された燃焼用空気に向けて第2燃料供給管から燃料を供給し、燃料を炉内において燃焼用空気と接触するように混合させて燃料を燃焼させる第2接触混合式燃焼機構とを設けることができるが、少なくとも前記の第2接触混合式燃焼機構を設けることが好ましい。
【0012】
また、本発明における前記の工業炉において、前記の非接触式燃焼機構としては、燃焼用空気供給管から炉内に供給される燃焼用空気から離れる方向に向けて燃料を炉内に供給する第3燃料供給管を有し、この第3燃料供給管から供給された燃料を、前記の燃焼用空気供給管から炉内に供給される燃焼用空気と直接接触しないようにして、前記の接触混合式燃焼機構によって燃料を燃焼させた後の燃焼排ガス中に含まれる燃焼用空気と混合させて燃焼させるようにしたものを用いることができる。
【0013】
また、前記の工業炉においては、前記の接触混合式燃焼機構から離れた非接触式燃焼機構に設けた第3燃料供給管の近傍における炉内に、燃焼排ガス中に含まれる酸素と一酸化炭素との少なくとも一方の濃度を検出する濃度センサーを設けるようにすることができる。
【0014】
また、本発明における前記の工業炉においては、前記の燃焼用空気供給管を対になるように設けると共に、対になった各燃焼用空気供給管にそれぞれ蓄熱材を収容させた蓄熱部を設け、一方の燃焼用空気供給管を通して供給される燃焼用空気を前記の蓄熱部に収容された蓄熱材により加熱させる一方、他方の燃焼用空気供給管を通して炉内における燃焼排ガスを前記の蓄熱材を収容させた蓄熱部に導き、燃焼排ガスの熱を蓄熱部における蓄熱材に蓄熱させて排気させるようにすることができる。このようにすると、燃料を燃焼させた後の燃焼排ガスの熱を蓄熱させた蓄熱部を通して、燃焼用空気供給管を通して供給される燃焼用空気を加熱させることができ、燃焼排ガスの熱を有効に利用できるようになる。
【0015】
ここで、本発明における前記の工業炉においては、工業炉を制御する制御機構を設け、この制御機構を用いて、前記の接触混合式燃焼機構により、燃焼用空気供給管から供給された燃焼用空気と燃料とを混合させて燃料を燃焼させ、炉内温度を燃料の自燃温度まで上昇させた後、炉内におけるNOxの発生量が増加すると、接触混合式燃焼機構において供給する燃料の量を減少させる一方、前記の非接触式燃焼機構により、燃焼用空気供給管から炉内に供給される燃焼用空気から離れる方向に向けて炉内に燃料を供給し、この燃料を前記の接触混合式燃焼機構によって燃料を燃焼させた後の燃焼排ガス中に含まれる燃焼用空気と混合させて燃焼させるようにする。
【0016】
このようにすると、接触混合式燃焼機構によって供給された燃料が多く燃焼されて、NOxの発生量が増加するのを抑制することができると共に、前記の接触混合式燃焼機構によって燃料を燃焼させた後の燃焼排ガス中に含まれる燃焼用空気を非接触式燃焼機構により燃焼用空気供給管から炉内に供給される燃焼用空気から離れる方向に向けて炉内に供給させた燃料によって燃焼させることができ、燃焼用空気供給管から供給された燃焼用空気を有効に利用して、燃料を効率よく燃焼できるようになる。
【0017】
また、本発明における前記の工業炉において、前記の接触混合式燃焼機構として、前記の第1接触混合式燃焼機構と第2接触混合式燃焼機構とを設け、前記の第1接触混合式燃焼機構により、燃焼用空気供給管から供給された燃焼用空気と第1燃料供給管から供給された燃料とを混合させて燃料を燃焼させ、炉内温度を燃料の自燃温度まで上昇させて、第1接触混合式燃焼機構を停止させた後、前記の第2接触混合式燃焼機構により、燃焼用空気供給管から炉内に供給された燃焼用空気に向けて第2燃料供給管から燃料を供給し、燃料を炉内において燃焼用空気と接触するように混合させて燃料を燃焼させ、その後、第2接触混合式燃焼機構による燃焼によりNOxの発生量が増加すると、第2燃料供給管から供給させる燃料の量を減少させる一方、前記の非接触式燃焼機構により、燃焼用空気供給管から炉内に供給され燃焼用空気と直接接触しないように、前記の燃焼用空気から離れる方向に向けて第3燃料供給管から炉内に燃料を供給し、この燃料を前記の接触混合式燃焼機構によって燃料を燃焼させた後の燃焼排ガス中に含まれる燃焼用空気と混合させて燃焼させるようにすることが好ましい。
【0018】
このようにすると、前記の第1接触混合式燃焼機構により、燃焼用空気供給管から供給された燃焼用空気と第1燃料供給管から供給された燃料とを混合させて燃料を燃焼させ、炉内温度を燃料の自燃温度まで速やかに上昇させることができる。そして、炉内温度を燃料の自燃温度まで上昇させた後、第1接触混合式燃焼機構を停止させ、前記の第2接触混合式燃焼機構により、燃焼用空気供給管から炉内に供給された燃焼用空気に向けて第2燃料供給管から燃料を供給し、燃料を炉内において燃焼用空気と接触するように混合させて燃料を燃焼させるようにすると、第1接触混合式燃焼機構によって燃料を燃焼させる場合に比べて、燃料の燃焼が緩慢になって、炉内温度が急激に上昇よるのが抑制されるようになり、NOxの発生量が増加するのが抑制される。
【0019】
また、前記の第2接触混合式燃焼機構により、燃焼用空気供給管から炉内に供給された燃焼用空気に向けて第2燃料供給管から燃料を供給し、燃料を炉内において燃焼用空気と接触するように混合させて燃料を燃焼させた場合においても、炉内温度が上昇してNOxの発生量が増加すると、前記のように第2燃料供給管から供給する燃料の量を減少させる一方、前記の非接触式燃焼機構により、燃焼用空気供給管から炉内に供給され燃焼用空気と直接接触しないように、前記の燃焼用空気から離れる方向に向けて第3燃料供給管から炉内に燃料を供給し、この燃料を前記の接触混合式燃焼機構によって燃料を燃焼させた後の燃焼排ガス中に含まれる燃焼用空気と混合させて燃焼させることにより、炉内温度が上昇するのが抑制されて維持されるようになり、NOxの発生が抑制されると共に、燃焼排ガス中に含まれる燃焼用空気が有効に利用されて、効率の良い燃焼が行えるようになる。
【0020】
また、本発明における前記の工業炉において、前記のように第2接触混合式燃焼機構による燃焼によりNOxの発生量が増加すると、第2燃料供給管から供給させる燃料の量を減少させる一方、前記の非接触式燃焼機構により、燃焼用空気供給管から炉内に供給され燃焼用空気と直接接触しないように、前記の燃焼用空気から離れる方向に向けて第3燃料供給管から炉内に燃料を供給し、この燃料を燃焼排ガス中に含まれる燃焼用空気と混合させて燃焼させるにあたり、前記の第3燃料供給管の近傍における炉内に、燃焼排ガス中に含まれる酸素と一酸化炭素との少なくとも一方の濃度を検出する濃度センサーを設け、前記の濃度センサーによって検出された酸素と一酸化炭素との少なくとも一方の濃度に基づいて、前記の第2燃料供給管から供給させる燃料の量と、前記の第3燃料供給管から供給する燃料の量とを制御することが好ましい。
【0021】
ここで、前記の濃度センサーによって検出された酸素濃度が所定値まで低下したり、一酸化炭素濃度が所定値以上になると、第3燃料供給管から供給された燃料が適切に燃焼されなくなって過剰に存在した状態になり、この燃料が爆発したりする危険性があるため、この場合には、第3燃料供給管から供給する燃料の量を減少させると共に、第2燃料供給管から供給させる燃料の量を増加させるようにする。このようにして、第3燃料供給管から供給させる燃料の量と、第2燃料供給管から供給させる燃料の量とを制御させると、燃焼によりNOxの発生を抑制させると共に、安全な燃焼が行えるようになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明における工業炉においては、燃焼用空気供給管から炉内に供給される燃焼用空気に燃料を接触・混合させて燃料を燃焼させる接触混合式燃焼機構と、燃焼用空気供給管から炉内に供給される燃焼用空気から離れる方向に向けて炉内に燃料を供給し、この燃料を前記の接触混合式燃焼機構によって燃料を燃焼させた後の燃焼排ガス中に含まれる燃焼用空気と混合させて燃焼させる非接触式燃焼機構を設けると共に、この工業炉を制御する制御機構を設け、この制御機構を用いて、前記の接触混合式燃焼機構により、燃焼用空気供給管から供給された燃焼用空気と燃料とを混合させて燃料を燃焼させ、炉内温度を燃料の自燃温度まで上昇させるようにし、炉内におけるNOxの発生量が増加すると、接触混合式燃焼機構において供給する燃料の量を減少させる一方、前記の非接触式燃焼機構により、燃焼用空気供給管から炉内に供給される燃焼用空気と直接接触しないように、前記の燃焼用空気から離れる方向に向けて第3燃料供給管から炉内に燃料を供給し、この燃料を前記の接触混合式燃焼機構によって燃料を燃焼させた後の燃焼排ガス中に含まれる燃焼用空気と混合させて燃焼させるようにした。
【0023】
この結果、本発明における工業炉においては、接触混合式燃焼機構によって供給された燃料が多く燃焼されて、NOxの発生量が増加するのを抑制することができると共に、燃焼排ガス中に含まれる燃焼用空気を非接触式燃焼機構により供給させた燃料によって無駄なく燃焼させることができ、燃焼用空気供給管から供給された燃焼用空気を有効に利用して燃料を効率よく燃焼できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る工業炉において、炉の対向する一対の炉壁に、それぞれ燃焼用空気供給管に蓄熱材を収容させた蓄熱部を設けた一対の蓄熱式の燃焼機構として、燃焼用空気供給管から炉内に供給される燃焼用空気に燃料を接触・混合させて燃料を燃焼させる第1及び第2の接触混合式燃焼機構と、燃焼用空気供給管から炉内に供給された燃焼用空気と直接接触しないようにして炉内に燃料を供給し、この燃料を燃焼排ガス中に含まれる燃焼用空気と混合させて燃焼させる非接触式燃焼機構を設けた状態を示した概略断面図である。
図2】前記の実施形態に係る工業炉において、第1及び第2の接触混合式燃焼機構と非接触式燃焼機構とを用いて前記の燃焼用空気供給管から供給された燃焼空気と燃料とを燃焼させる状態を示し、(A)は第1接触混合式燃焼機構において、燃焼用空気供給管を通して供給される燃焼用空気に対して、第1燃料供給管から燃料を直接混合させるように供給して燃焼させる状態を示した部分概略断面図、(B)は前記の第1燃料供給管から燃料を供給するのを停止させ、第2接触混合式燃焼機構において、燃焼用空気供給管を通して供給される燃焼用空気に向けて第2燃料供給管から燃料を供給し、この燃料を炉内において燃焼用空気と接触するように混合させて燃焼させる状態を示した状態を示した部分概略断面図、(C)は前記の第2接触混合式燃焼機構と前記の非接触式燃焼機構とを組み合わせてNOxの発生を抑制しながら、燃料を燃焼させる状態を示した部分概略断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施形態に係る工業炉を、添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る工業炉は、下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0026】
この実施形態における工業炉においては、図1に示すように、炉10の対向する一対の炉壁11に、それぞれ燃焼用空気供給管20を対になるように設けると共に、対になった各燃焼用空気供給管20にそれぞれ蓄熱材21aを収容させた蓄熱部21を設け、一方の燃焼用空気供給管20を通して炉10内に供給させる燃焼用空気A1を前記の蓄熱部21に収容されて蓄熱された蓄熱材21aにより加熱させる一方、炉10内において燃料F(F1〜F3)を燃焼させた後の燃焼排ガスA2を、他方の燃焼用空気供給管20を通して前記の蓄熱部21に導き、この燃焼排ガスA2の熱をこの蓄熱部21に収容された蓄熱材21aに蓄熱させて燃焼用空気供給管20から排気させるようにしている。
【0027】
そして、この実施形態の工業炉においては、前記の各燃焼用空気供給管20に対して、それぞれ燃焼用空気供給管20を通して供給される燃焼用空気A1に第1燃料供給管31から燃料F1を供給して、燃料F1を燃焼用空気A1と混合させて燃焼させる第1接触混合式燃焼機構と、燃焼用空気供給管20から炉10内に供給された燃焼用空気A1に向けて第2燃料供給管32から燃料F2を供給し、この燃料F2を炉10内において燃焼用空気A1と接触するように混合させて燃料F2を燃焼させる第2接触混合式燃焼機構と、燃焼用空気供給管20から炉10内に供給される燃焼用空気A1から離れる方向に向けて、前記の燃焼用空気A1と直接接触しないように第3燃料供給管33から燃料F3を炉10内に供給し、この燃料F3を前記の第1接触混合式燃焼機構や第2接触混合式燃焼機構により炉10内において燃料F1,F2が燃焼された後の燃焼排ガスA2中に含まれる燃焼用空気A1と混合させて燃焼させる非接触式燃焼機構を設けている。

【0028】
また、この実施形態においては、前記の第1燃料供給管31に対して燃料F1の供給・停止などを調整する第1バルブ31aを設け、前記の第2燃料供給管32に対して燃料F2の供給・停止などを調整する第2バルブ32aを設け、前記の第3燃料供給管33に対して燃料F3の供給・停止などを調整する第3バルブ33aを設けている。
【0029】
また、前記の第3燃料供給管33の近傍における炉10内における酸素や一酸化炭素の濃度を検出する濃度センサー41を設け、この濃度センサー41によって検出された酸素や一酸化炭素の濃度の検出結果を制御装置40に出力するようにしている。そして、このように濃度センサー41から出力された酸素や一酸化炭素の濃度の検出結果に基づいて、前記の制御装置40により、前記の第2燃料供給管32における第2バルブ32aや、第3燃料供給管33における第3バルブ33aを制御し、第2燃料供給管32を通して炉10内に供給する燃料F2の量や、第3燃料供給管33を通して炉10内に供給する燃料F3の量を調整するようにしている。
【0030】
次に、この実施形態における工業炉において、前記の燃焼用空気供給管20から燃焼用空気A1を供給させて、燃料F(F1〜F3)を燃焼させる場合について具体的に説明する。
【0031】
先ず、燃焼用空気供給管20から燃焼用空気A1を供給させて燃料F(F1〜F3)を燃焼させるにあたり、炉10内の温度が、燃料Fが自燃する温度に達していない場合には、図2(A)に示すように、前記の第2バルブ32a及び第3バルブ33aを閉じた状態で、前記の第1バルブ31aだけを開け、前記の第1接触混合式燃焼機構により、前記の蓄熱材21aが収容された蓄熱部21を通して燃焼用空気供給管20に供給された燃焼用空気A1に前記の第1燃料供給管31を通して燃料F1を供給して、前記の燃焼用空気A1と燃料F1とを混合させ、パイロットバーナー(図示せず)等により、燃焼用空気A1と燃料F1とを混合させたものを着火させて燃焼させ、前記の一対の燃焼用空気供給管20において、このような操作を交互に繰り返して行い、炉10内の温度を燃料F1が自燃される温度まで加熱させる。
【0032】
そして、このように炉10内の温度を燃料F1が自燃される温度まで加熱させた後は、図2(B)に示すように、前記の第1バルブ31aを閉じると共に、前記の第3バルブ33aを閉じた状態で、第2バルブ32aだけを開けて、前記の第2接触混合式燃焼機構により、前記のように燃焼用空気供給管20から炉10内に供給された燃焼用空気A1に向けて第2燃料供給管32から燃料F2を供給し、この燃料F2を炉10内において燃焼用空気A1と接触するように混合させて燃焼させ、このような動作を、前記の一対の燃焼用空気供給管20において交互に繰り返して行って炉10内を所定温度まで加熱させるようにする。
【0033】
ここで、このように炉10内を所定温度まで加熱させた場合において、燃焼温度の上昇等により炉10内におけるNOxの発生量が増加して、燃焼排ガスA2に含まれるNOxの量が所定量になったことをNOxセンサー(図示せず)によって検知すると、炉10内におけるNOxの発生を抑制するため、前記の第3燃料供給管33の近傍に設けた濃度センサー41により、第3燃料供給管33の近傍における炉10内に存在する燃焼排ガスA2中に含まれる酸素や一酸化炭素の濃度を検出し、その結果を、前記の制御装置40に出力させる。
【0034】
そして、図2(C)に示すように、前記の濃度センサー41によって検出された第3燃料供給管33の近傍における炉10内に存在する燃焼排ガスA2中に含まれる酸素や一酸化炭素の濃度の結果に基づいて、前記の制御装置40により、前記の閉じた状態にある第3バルブ33aを適当量開けて、第3燃料供給管33を通して適当量の燃料F3を炉10内に供給させると共に、前記の第2バルブ32aの開き状態を制御し、第2燃料供給管32から炉10内に供給する燃料F2の量を調整させて、第3燃料供給管33を通して供給される燃料F3の量と第2燃料供給管32から炉10内に供給する燃料F2の量との合計量(F3+F2)が、第3燃料供給管33を通して燃料F3を供給する前における第2燃料供給管32から炉10内に供給されていた燃料F2の量と同量になるようにし、炉10内における全体の燃焼容量が同量になるようにしている。
【0035】
ここで、前記の濃度センサー41によって検出された第3燃料供給管33の近傍における炉10内に存在する燃焼排ガスA2中に含まれる酸素濃度が少なくなったり、一酸化炭素の濃度が多くなったりした場合には、前記の制御装置40により、前記の第3燃料供給管33を通して供給させる燃料F3を減少させて、燃料F3により爆発が生じたり、燃料F3が燃焼排ガスA2と一緒に外部に排出されたりするのを防止する一方、燃料F3を減少させた分だけ、前記の第2燃料供給管32から供給する燃料F2の量を増加させるようにする。逆に、前記の濃度センサー41によって検出された第3燃料供給管33の近傍の炉10内における燃焼排ガスA2中に含まれる酸素濃度が多くなったり、一酸化炭素の濃度が少なくなったりした場合には、前記の制御装置40により、前記の第3燃料供給管33を通して供給させる燃料F3を増加させて、燃焼後のガス中に含まれる酸素を十分に燃焼させるようにする一方、燃料F3を増加させた分だけ、前記の第2燃料供給管32から供給する燃料F2の量を減少させるようにする。
【0036】
このようにすると、前記の第2接触混合式燃焼機構によって供給された燃料F2が多く燃焼されて、NOxの発生量が増加するのを抑制することができると共に、燃焼排ガスA2中に含まれる燃焼用空気A1を、非接触式燃焼機構の第3燃料供給管33を通して供給させた燃料F3によって燃焼させることができ、燃焼用空気供給管20から供給された燃焼用空気A1を有効に利用して燃料Fを効率よく燃焼させることができるようになる。
【0037】
なお、この実施形態の工業炉においては、接触混合式燃焼機構として、燃焼用空気供給管20を通して供給される燃焼用空気A1に第1燃料供給管31から燃料F1を供給して、燃料F1を燃焼用空気A1と混合させて燃焼させる第1接触混合式燃焼機構と、燃焼用空気供給管20から炉10内に供給された燃焼用空気A1に向けて第2燃料供給管32から燃料F2を供給し、この燃料F2を炉10内において燃焼用空気A1と接触するように混合させて燃料F2を燃焼させる第2接触混合式燃焼機構との2つの接触混合式燃焼機構を設けるようにしたが、例えば、前記の燃焼用空気供給管20から炉10内に供給された燃焼用空気A1に向けて第2燃料供給管32から燃料F2を供給させる近傍にパイロットバーナー(図示せず)を設け、この第2燃料供給管32から供給された燃料F2を燃焼用空気A1と混合させた状態で着火させて燃焼させるようにし、前記の第1接触混合式燃焼機構を設けないようにすることも可能である。
【0038】
また、この実施形態の工業炉においては、炉10において対向する一対の炉壁11に、それぞれ対になった燃焼用空気供給管20を1つだけ設け、一対の蓄熱式燃焼機構を設けるようにしただけであるが、図示していないが、各炉壁11に対して複数対の蓄熱式燃焼機構を設けるようにすることもできる。
【0039】
さらに、この実施形態の工業炉においては、対になった燃焼用空気供給管20にそれぞれ蓄熱材21aを収容させた蓄熱部21を設け、一方の燃焼用空気供給管20を通して炉10内に供給させる燃焼用空気A1を前記の蓄熱部21に収容されて蓄熱された蓄熱材21aにより加熱させる一方、炉10内において燃料F(F1〜F3)を燃焼させた後の燃焼排ガスA2を、他方の燃焼用空気供給管20を通して前記の蓄熱部21に導き、この燃焼排ガスA2の熱をこの蓄熱部21に収容された蓄熱材21aに蓄熱させる蓄熱式燃焼機構を設けるようにしたが、蓄熱部21を設けていない一般的な燃焼機構を用いたようにすることもできる。
【符号の説明】
【0040】
10 :炉
11 :炉壁
20 :燃焼用空気供給管
21 :蓄熱部
21a :蓄熱材
31 :第1燃料供給管
31a :第1バルブ
32 :第2燃料供給管
32a :第2バルブ
33 :第3燃料供給管
33a :第3バルブ
40 :制御装置
41 :濃度センサー
A1 :燃焼用空気
A2 :燃焼排ガス
F(F1〜F3) :燃料
【要約】
【課題】 燃焼用空気と燃料とを混合させて燃焼させる工業炉において、燃焼時におけるNOxの発生を十分に抑制し、安全な環境条件が得られると共に、効率の良い燃焼が安定して行えるようにする。
【解決手段】 燃焼用空気A1と燃料Fとを混合させて燃料Fを燃焼させる工業炉において、燃焼用空気供給管20から炉10内に供給される燃焼用空気A1に、第1燃料供給管31、第2燃料供給管32から燃料F1,F2を接触・混合させて燃料F1,F2を燃焼させる第1、第2接触混合式燃焼機構と、燃焼用空気供給管20から炉10内に供給された燃焼用空気A1と直接接触しないようにして炉10内に第3燃料供給管33から燃料F3を供給し、この燃料F3を燃焼排ガスA2中に含まれる燃焼用空気A1と混合させて燃焼させる非接触式燃焼機構とを設けた。
【選択図】 図2
図1
図2