(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556345
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】マイクロメカニカルアクチュエータ装置、及び、マイクロメカニカルアクチュエータ装置の傾動方法
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20190729BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
G02B26/10 C
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-514389(P2018-514389)
(86)(22)【出願日】2016年7月18日
(65)【公表番号】特表2018-530780(P2018-530780A)
(43)【公表日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】EP2016067018
(87)【国際公開番号】WO2017045806
(87)【国際公開日】20170323
【審査請求日】2018年3月16日
(31)【優先権主張番号】102015217935.4
(32)【優先日】2015年9月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン シュトイアー
(72)【発明者】
【氏名】ライナー シュトラウプ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ピンター
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク ンジカム ンジモンツィー
(72)【発明者】
【氏名】イェアク ムホー
【審査官】
佐藤 洋允
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/070610(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0228367(US,A1)
【文献】
特開2005−250076(JP,A)
【文献】
特開2004−110005(JP,A)
【文献】
特開2014−048327(JP,A)
【文献】
特開2003−255259(JP,A)
【文献】
特開2004−334966(JP,A)
【文献】
特開2011−203764(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0152106(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10−26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータ素子(112;312)を有する傾動装置(110;310)と、
第1のばね装置(120)と、
保持装置(122)と、
を備えているマイクロメカニカルアクチュエータ装置(100;200;300;400)であって、
前記傾動装置(110;310)は、前記第1のばね装置(120)を介して、第1の傾動軸(A)まわりに傾動可能であるように前記保持装置(122)に接続されており、
前記マイクロメカニカルアクチュエータ装置(100;200;300;400)は、
前記傾動装置(110;310)に配設されている少なくとも1つの電気的伝送路装置(150;250;350)と、
前記保持装置(122)に配置された永久磁石装置(130‐i;230‐i;430‐i)と、
をさらに備えており、
前記電気的伝送路装置(150;250;350)に電流(I)を流したときに、前記永久磁石装置(130‐i;230‐i;430‐i)は、前記傾動装置(110;310)を前記第1の傾動軸(A)まわりに前記保持装置(122)に対して傾動させることができるローレンツ力(31;32)を第1の磁界(11)内に発生させることができるように、当該第1の磁界(11)を発生させるように構成されており、
前記マイクロメカニカルアクチュエータ装置(100;200;300;400)は、
フレーム装置(144)と、
前記保持装置(122)を第2の傾動軸(B)まわりに傾動可能であるように前記フレーム装置(144)に接続する第2のばね装置(140‐i)と、
前記保持装置(122)を前記第2の傾動軸(B)まわりに前記フレーム装置(144)に対して傾動可能であるように前記永久磁石装置(130‐i;230‐i;430‐i)に作用する第2の磁界を発生させる電磁石装置(125,159)と、
をさらに備えている、マイクロメカニカルアクチュエータ装置(100;200;300;400)。
【請求項2】
前記第1のばね装置(120)は、第1のねじりばね(116‐1)を備えており、
前記電気的伝送路装置(150)を第1の電極に接続するための第1の電気導体路(156)が、前記第1のねじりばね(116‐1)に配設されている、
請求項1に記載のマイクロメカニカルアクチュエータ装置(100;200;300;400)。
【請求項3】
前記第1のばね装置(120)は、第2のねじりばね(116‐2)をさらに備えており、
前記電気的伝送路装置(150)を第2の電極に接続するための第2の電気導体路(158)が、前記第1のねじりばね(116‐1)及び/又は前記第2のねじりばね(116‐2)に配設されている、
請求項2に記載のマイクロメカニカルアクチュエータ装置(100;200;300;400)。
【請求項4】
前記第2のばね装置(140‐i)は、少なくとも1つの第3のねじりばね(140‐1,140‐2)を備えており、
前記電気的伝送路装置(150)を第1の電極に接続するための第1の電気導体路(156)、及び/又は、前記電気的伝送路装置(150)を第2の電極に接続するための第2の電気導体路(158)が、前記第3のねじりばね(140‐1,140‐2)に配設されている、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のマイクロメカニカルアクチュエータ装置(100;200;300;400)。
【請求項5】
前記永久磁石装置(130‐i;230‐i;430‐i)は、少なくとも1つの第1の永久磁石(130‐1,130‐3;230‐1,230‐3;430‐1,430‐3)及び少なくとも1つの第2の永久磁石(130‐2,130‐4;230‐2,230‐4;430‐2,430‐4)を有し、
前記少なくとも1つの第1の永久磁石(130‐1,130‐3;230‐1,230‐3;430‐1,430‐3)のN‐S磁極の向きは、前記第2の傾動軸(B)に対して平行に配置されており、及び、前記少なくとも1つの第2の永久磁石(130‐2,130‐4;230‐2,230‐4;430‐2,430‐4)のN‐S磁極の向きは、前記第2の傾動軸(B)に対して平行、かつ、前記少なくとも1つの第1の永久磁石(130‐1,130‐3;230‐1,230‐3;430‐1,430‐3)のN‐S磁極の向きとは逆向きに配置されており、
前記少なくとも1つの第1の永久磁石(130‐1,130‐3;230‐1,230‐3;430‐1,430‐3)と前記少なくとも1つの第2の永久磁石(130‐2,130‐4;230‐2,230‐4;430‐2,430‐4)とが、前記第2の傾動軸(B)を基準として軸方向において、前記電気的伝送路装置(150;250;350)からそれぞれ異なる距離に配置されている、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のマイクロメカニカルアクチュエータ装置(100;200;300)。
【請求項6】
前記永久磁石装置(430‐i)は、少なくとも1つの第1の永久磁石(430‐1,430‐3)及び少なくとも1つの第2の永久磁石(430‐2,430‐4)を有し、
前記少なくとも1つの第1の永久磁石(430‐1,430‐3)のN‐S磁極の向き及び前記少なくとも1つの第2の永久磁石(430‐2,430‐4)のN‐S磁極の向きは、前記第2の傾動軸(B)に対して垂直に配置されており、
前記少なくとも1つの第1の永久磁石(430‐1,430‐3)と前記少なくとも1つの第2の永久磁石(430‐2,430‐4)とが、前記第2の傾動軸(B)を基準として軸方向において、前記電気的伝送路装置(150;250;350)からそれぞれ異なる距離に配置されている、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のマイクロメカニカルアクチュエータ装置(400)。
【請求項7】
前記傾動装置(310)の前記アクチュエータ素子(312)は、金属面材として構成されており、
前記電気的伝送路装置(150;250;350)のうち前記ローレンツ力(31,32)が発生する区間は、前記金属面材によって実現されている、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のマイクロメカニカルアクチュエータ装置(300)。
【請求項8】
マイクロメカニカルアクチュエータ装置(100;200;300;400)の傾動方法であって、
前記マイクロメカニカルアクチュエータ装置(100;200;300;400)は、アクチュエータ素子(112;312)を有する傾動装置(110;310)と、第1のばね装置(120)と、保持装置(122)と、前記傾動装置(110;310)に配設されている少なくとも1つの電気的伝送路装置(150;250;350)と、前記保持装置(122)に配置された永久磁石装置(130‐i;230‐i;430‐i)と、を備えており、
前記傾動装置(110;310)は、前記第1のばね装置(120)を介して、第1の傾動軸(A)まわりに傾動可能であるように前記保持装置(122)に接続されている、
マイクロメカニカルアクチュエータ装置(100;200;300;400)の傾動方法において、
ローレンツ力(31,32)に基づいて前記マイクロメカニカルアクチュエータ装置(100;200;300;400)の前記傾動装置(110;310)及び/又は当該傾動装置(110:310)の前記アクチュエータ素子(112;312)を前記第1の傾動軸(A)に沿って傾動させるように、前記マイクロメカニカルアクチュエータ装置(100;200;300;400)の前記永久磁石装置(130‐i;230‐i;430‐i)によって発生した第1の磁界(11)内において、前記傾動装置(110;310)に配設されている前記電気的伝送路装置(150;250;350)に電流(I)を流すステップ(S01)と、
磁気的吸引及び反発に基づいて前記傾動装置(110;310)及び/又は前記アクチュエータ素子(112;312)を第2の傾動軸(B)に沿って傾動させるように、前記マイクロメカニカルアクチュエータ装置(100;200;300;400)の電磁石装置(125,129)によって前記永久磁石装置(130‐i;230‐i;430‐i)の領域に第2の磁界を発生させるステップ(S02)と、
を有する、傾動方法。
【請求項9】
前記傾動装置(110;310)の前記アクチュエータ素子(112;312)が前記第1の傾動軸(A)に沿って周期的な共振運動で傾動するように、前記電気的伝送路装置(150;250;350)に電流(I)を流し、
前記傾動装置(110;310)及び/又は前記アクチュエータ素子(112;312)が前記第2の傾動軸(B)に沿って傾動するように前記第2の磁界を発生させる、
請求項8に記載の傾動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロメカニカルアクチュエータ装置、特にマイクロミラーと、マイクロメカニカルアクチュエータ装置の傾動方法、特にマイクロミラーの傾動方法とに関する。特に、本発明は、レーザスキャナにおいて使用することができるマイクロミラーと、レーザスキャナの一部としてのマイクロミラーの動作とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
多くの用途において、2つの互いに垂直な方向にレーザビームを偏向させることができるマイクロミラーが必要とされる。例えば、斯かるマイクロミラーは、レーザスキャナにおいて使用される。レーザスキャナは、投影すべき画像を、水平方向及び垂直方向に旋回可能なレーザビームによって画素の連続走査(「スキャン」)を行うことにより投影することができる装置である。通常は、水平方向におけるレーザビームの旋回は、垂直方向における旋回より低速で行われ、又は、その逆もまた行われる。高速な動きでレーザビームを旋回させることによって、通常は、投影すべき画像の1走査線が走査され、低速な動きでレーザビームを旋回させることによって、投影すべき画像の複数の走査線が走査される。レーザスキャナにおいては、しばしば、各マイクロミラーに入射したレーザビームを旋回させることができる次元が1次元のみとなるように、それぞれ1軸まわりのみで傾動させることができる2つのマイクロミラーを互いに前後に接続したものが使用されることが多い。
【0003】
国際公開第2012089387号(WO2012089387A1)には、マイクロミラーと、レーザスキャナを構成するように2つのマイクロミラーを互いに前後に接続した配置体とが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012089387号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
小さい技術的コストで製造することができる、効率的かつ省スペースの、異なる2つの傾動軸まわりで傾動可能なアクチュエータ装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の開示
本発明は、請求項1に記載の構成を有する装置と、請求項9の特徴を有する方法とを開示するものである。
【0007】
当該請求項によれば、本発明は、アクチュエータ素子を有する傾動装置と、第1のばね装置と、保持装置とを備えたアクチュエータ装置、特にマイクロミラーであって、傾動装置は第1のばね装置を介して第1の傾動軸まわりに傾動可能であるように保持装置に接続されており、当該アクチュエータ装置はさらに、傾動装置に配設されている少なくとも1つの電気的伝送路装置と、電気的伝送路装置に電流を流したときに、傾動装置特にアクチュエータ素子を第1の傾動軸まわりに保持装置に対して傾動させることができるローレンツ力を第1の磁界内に発生させることができるように、当該第1の磁界を発生させる永久磁石装置であって、保持装置に配置された永久磁石装置と、フレーム装置と、保持装置を第2の傾動軸まわりに傾動可能であるようにフレーム装置に接続する第2のばね装置と、保持装置を第2の傾動軸まわりにフレーム装置に対して傾動可能であるように永久磁石装置に作用する第2の磁界を発生させる電磁石装置と、を備えたアクチュエータ装置を実現するものである。フレーム装置に対する保持装置の傾動により、特にアクチュエータ素子が第2の傾動軸まわりで傾動することができる。
【0008】
「アクチュエータ素子」とは特に、所望の放射、特にレーザ光の、少なくとも一部、特に大部分を反射することができる素子をいう。斯かるアクチュエータ素子は、「ミラー素子」とも称し得る。例えば、ミラー素子は、複数の誘電体層として、金属層として、研磨された層等として、構成することができる。アクチュエータ素子としては、任意の他の作動対象の構成要素を設けることもできる。
【0009】
本発明はさらに、マイクロメカニカルアクチュエータ装置の傾動方法、特にマイクロミラーの傾動方法であって、ローレンツ力に基づいて傾動装置及び/又は傾動装置のアクチュエータ素子を第1の傾動軸に沿って傾動させるように、当該アクチュエータ装置の永久磁石装置によって発生した第1の磁界内において、アクチュエータ装置の当該傾動装置に配設されている電気的伝送路装置に電流を流すステップと、磁気的吸引及び反発に基づいて傾動装置及び/又はアクチュエータ素子を第2の傾動軸に沿って傾動させるように、アクチュエータ装置の電磁石装置によって永久磁石装置の領域に第2の磁界を発生させるステップと、を有する傾動方法を実現するものである。
【0010】
発明の利点
本発明の基礎となっている認識は、第1の傾動軸まわりでのアクチュエータ素子の傾動を実現するローレンツ力を発生させるために、マイクロメカニカルアクチュエータ装置の永久磁石装置を使用することができ、なおかつ、同一のアクチュエータ素子を第2の傾動軸まわりで傾動させるために、電磁石装置の制御可能に発生させることができる磁界内に当該永久磁石装置を配置することもできる、ということである。
【0011】
本発明においては、アクチュエータ素子に高いトルクを発生させることができ、これにより、必要なトルクを発生させるための所要面積を縮小することができる。これによってMEMSチップ面積の小型化を実現することができ、斯かる小型化により、1ウェーハあたりの本発明に係るアクチュエータ装置の数を増大させることができるという利点が奏される。アクチュエータ装置のチップ面積の小型化は特に、第2の傾動軸に対して垂直方向に、即ち、低速の傾動運動の軸(「低速軸」とも称し得る。)に対して垂直方向に、効果的である。この次元は、例えば、移動電話機に設けられる小型化されたプロジェクタ等の用途において重要なサイズである。というのも、移動電話機の厚さが特に薄いことが望まれるからである。本発明においては、このことにより、移動電話機、及び、例えばタブレット等の他の移動端末機器の薄い筐体寸法を可能な限り変えずに、レーザスキャナをプロジェクタとして使用及び組み込むことが可能になる。
【0012】
本発明に係るアクチュエータ装置は、特に高い駆動効率を示し、これにより、アクチュエータ装置を傾動させるための消費電力が小さくなる。
【0013】
本発明においては、高速運動の傾動軸(「高速軸」とも称し得る。)の駆動のためには、電気的伝送路装置の特殊な送電路及び/又はコイルを、傾動装置上及び/又は保持装置上に実現するだけでよい。このようにするために必要とされるプロセス工程は、他の実現手段と比較して特に少ない。特に、本来的に電気的接続又は位置検出のために必要とされる高導電性の面を、電気的伝送路装置のために使用することができる。このことによって生じる追加の技術的コストないしは追加のプロセス工程は、無い又は非常に僅かのみである。
【0014】
さらに、本発明においては、アクチュエータ装置の外側に固定される嵩の大きい永久磁石を要しない。このことによって、体積サイズが特に小さくなり、追加の組立工程及び接続工程は無い。さらに、アクチュエータ装置の落下強度も向上する。
【0015】
アクチュエータ装置の調達可能なトルクが高いことによって、ウェブによって実現することができる比較的剛性のねじりばねを使用することができる。このことによって、高い機械的過荷重耐性と、落下強度と、良好な可制御性と、ロバスト性とを達成することができる。
【0016】
従属請求項と、図面を参照した説明とから、有利な実施形態及び発展形態が明らかである。
【0017】
第1の有利な発展形態においては、第1のばね装置は、第1のねじりばねを備えている。電気的伝送路装置を第1の電極に接続するための第1の導体路が、この第1のねじりばねに配設されることが可能である。第1のばね装置は、さらに、第2のねじりばねも備えるものとすることができ、電気的伝送路装置を第2の電極に接続するための第2の導体路が、第1のねじりばね及び/又は第2のねじりばねに配設されている。このような構成によって、傾動装置における電気的伝送路装置の、特に効率的なコンタクトを達成することができる。
【0018】
他の有利な一発展形態においては、第2のばね装置は少なくとも第3のねじりばねを備えており、この第3のねじりばねに、電気的伝送路装置を少なくとも1つの電極、特に第1又は第2の電極に接続するための導体路、例えば、上述の第1又は第2の導体路が配設されている。
【0019】
他の有利な一発展形態においては、永久磁石装置は少なくとも1つの第1の永久磁石及び/又は少なくとも1つの第2の永久磁石を備えている。第1の永久磁石のN‐S磁極の向き及び/又は第2の永久磁石のN‐S磁極の向きは、有利には、第2の傾動軸に対して平行若しくは逆平行に、及び/又は、第1の傾動軸に対して垂直に配置されている。このことによって、電気的伝送路装置の領域において磁束線の特に有利な向きを達成することができる。有利には、永久磁石装置はさらに、第3及び/又は第4の永久磁石も備えており、これらの永久磁石のN‐S磁極の向きも同様に、有利には、第2の傾動軸に対して平行若しくは逆平行に、及び/又は、第1の傾動軸に対して垂直に配置されている。第3及び/又は第4の永久磁石は、特に第1の傾動軸を基準として、第1及び/又は第2の永久磁石に対して鏡像的に配置及び構成することができる。斯かる配置及び構成は、特に、電気的伝送路装置の、第1及び第2の永久磁石に配置された最近傍の区間における電流の方向が、当該電気的伝送路装置の、第3及び第4の永久磁石に配置された最近傍の区間における電流の方向と逆方向である場合に可能である。
【0020】
他の有利な一発展形態においては、永久磁石装置は少なくとも1つの第1の永久磁石及び/又は少なくとも1つの第2の永久磁石を備えている。第1の永久磁石のN‐S磁極の向き及び/又は第2の永久磁石のN‐S磁極の向きは、有利には、第2の傾動軸に対して垂直に配置されている。このことによっても、電気的伝送路装置の領域において磁束線の、特に有利な向きを達成することができる。有利には、永久磁石装置はさらに、第3及び/又は第4の永久磁石も備えており、これらの永久磁石のN‐S磁極の向きも同様に、有利には、第2の傾動軸に対して垂直に配置されている。第3及び/又は第4の永久磁石は、上述のように、第1及び/又は第2の永久磁石に対して鏡像的に構成及び配置することができる。
【0021】
他の有利な一発展形態においては、第2の傾動軸を基準として軸方向に、少なくとも2つの永久磁石、有利には、各2つの永久磁石を、電気的伝送路装置からそれぞれ異なる距離に、特に、電気的伝送路装置の、各2つの永久磁石が最近傍に存在する区間から異なる距離に配置する。このことによって、電気的伝送路装置の領域において、磁束線の配置をさらに改善することができる。少なくとも2つの永久磁石は、特に、上述の第1及び第2の永久磁石、及び/又は、上述の第3及び第4の永久磁石とすることができる。
【0022】
他の有利な一発展形態においては、傾動装置のアクチュエータ素子は、金属面材として構成されており、
電気的伝送路装置のうちローレンツ力が発生する区間は、この金属面材によって実現されている。斯かる構成により、金属面材を特に効率的に、多機能的に使用することができ、このことによって、アクチュエータ装置の製造に際しての所要リソースとコストとを削減することができる。
【0023】
本発明に係る方法の有利な一発展形態においては、特に高速軸まわりの高速の傾動を実現するため、傾動装置のアクチュエータ素子を第1の傾動軸まわりに周期的な共振運動で傾動させるように、電気的伝送路装置に電流を流す。低速軸まわりで低速の傾動を実現するため、傾動装置及び/又はアクチュエータ素子を第2の傾動軸まわりで準静的に傾動させるように、第2の磁界を発生させることができる。
【0024】
図面の簡単な説明
以下、図面の各概略図に示された実施例を参照して、本発明を詳細に説明する。以下においては、マイクロメカニカルアクチュエータ装置の例としてマイクロミラーに基づき、本発明に係るマイクロメカニカルアクチュエータ装置の発明の思想を説明する。しかし、ここで記載及び図示された実施形態、並びに、全ての変形態様は、他の任意のアクチュエータ装置にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係るマイクロミラーの複数の異なる方向から見た概略的な全体図及び細部図である。
【
図2】本発明の他の一実施形態に係るマイクロミラーの複数の異なる方向から見た概略的な全体図及び細部図である。
【
図3】本発明のさらに他の一実施形態に係るマイクロミラーの複数の異なる方向から見た概略的な全体図及び細部図である。
【
図4】本発明のさらに他の一実施形態に係るマイクロミラーの複数の異なる方向から見た概略的な全体図及び細部図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る、マイクロミラーの傾動方法を説明するための、概略的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
全図において、同等又は同機能の要素及び装置には、−別段の記載がない限り−同様の符号が付されている。方法の各ステップの番号は、概観し易くするためのものであり、特に、特定の時間的順序を含意するものではない。特に、方法の複数のステップを同時に実施することもできる。分かり易くするため、図面の各要素は、実寸の比率通りには示されていない。
【0027】
実施例の説明
図1Aは、本発明の一実施形態に係るマイクロミラー100の概略的な平面図である。マイクロミラー100は傾動装置110を備えており、これは、ミラー要素112と撓みばね114とを備えている。マイクロミラー100のミラー要素112は、例えば、金属表面部として基板上に実現されており、例えば、平面図において平坦なウェーハとなるように構成されている。ミラー要素112は、例えば、ミラー要素112の金属表面部の下方の基板と同一の基板から、2つの第1のウェブ118‐1,118‐2を介して、特にこれらのウェブのみを介して、撓みばね114に接続されている。
【0028】
撓みばね114は、
図1Aに示されているように、例えば、xy平面内において円環部として形成されており、ミラー要素112が静止状態で配置されているxy平面において、ミラー要素112を完全に包囲している。撓みばね114は、2つの第2のウェブ116‐1,116‐2を介して、特に第2のウェブ116‐1,116‐2のみを介して、保持装置122に接続されている。保持装置122も、円環部として構成されており、傾動装置110が静止状態のときに、xy平面においてミラー要素112と撓みばね114との双方を包囲する。少なくとも第2のウェブ116‐1,116‐2、及び、オプションとして第1のウェブ118‐1,118‐2も、マイクロミラー100の場合にはねじりばねとして構成されており、撓みばね114と共に第1のばね装置120を構成している。
【0029】
第2のウェブ116‐1,116‐2は、撓みばね114の2つの相対向する側に、マイクロミラー100の第1の傾動軸Aに沿って配置されている。第1のウェブ118‐1,118‐2は、ミラー要素112の2つの相対向する側に、マイクロミラー100の第2の傾動軸Bに沿って配置されている。第1の傾動軸Aは特に高速軸として用いられ、第2の傾動軸Bに対して垂直であり、この第2の傾動軸Bは、マイクロミラー100の低速軸として用いられる。第1のウェブ118‐1,118‐2を除いて、ミラー要素112には、マイクロミラー100の他の部分が設けられていない。第1のウェブ118‐1,118‐2及び第2のウェブ116‐1,116‐2を除いて、撓みばね114には、マイクロミラー100の他の部分が設けられていない。
【0030】
保持装置122には、第1乃至第4の永久磁石130‐1,130‐2,130‐3,130‐4(包括的に「130‐i」と称する。)が設けられており、各永久磁石130‐iのN極‐S極の向きが第2の傾動軸Bに対して平行又は逆平行に配置されるように、第1乃至第4の永久磁石130‐1,130‐2,130‐3,130‐4は配置されている。永久磁石130‐iを総合して、マイクロミラー100の永久磁石装置と称し得る。保持装置122の2つの相対向する側のうち一方の側に、第1の永久磁石130‐1と第2の永久磁石130‐2とが配置されている。当該2つの相対向する側のうち第2の側に、第3の永久磁石130‐3と第4の永久磁石130‐4とが配置されている。第1の永久磁石130‐1(ないしは第3の永久磁石130‐3)は、直交座標系においてx方向とy方向との双方に対して垂直なz方向において、第2の永久磁石130‐2の上方(ないしは第4の永久磁石130‐4の上方)に配置されている。
【0031】
第1の永久磁石130‐1と第3の永久磁石130‐3との間に、非磁性かつ磁化不可能な第1の舌片124‐1が配置されており、これは、保持装置122に固定的に結合されている。第2の永久磁石130‐2と第4の永久磁石130‐4との間に、非磁性かつ磁化不可能な第2の舌片124‐2が配置されており、これは、保持装置122に固定的に結合されている。第1の舌片124‐1は、ねじりばね140‐1を介してフレーム装置144に結合されている。第2の舌片124‐2は、ねじりばね140‐2を介してフレーム装置144に結合されている。フレーム装置144は、例えば、方形のフレームとして構成されており、これは、静止状態では、x方向とy方向とにおいて、保持装置122、撓みばね114及び/又はミラー要素112を包囲する。保持装置122は、舌片124‐1,124‐2及びねじりばね140‐1,140‐2のみを介して、フレーム装置144に結合されている。舌片124‐1,124‐2は、特に、保持装置122と同時に、同一の材料から作製することができる。
【0032】
傾動装置110の撓みばね114上には、電流を流すための電気的伝送路装置150が、ミラー要素112まわりに略完全に閉じた円で配設されている。電気的伝送路装置150をそれぞれ第1の電極と第2の電極とに接続する第1の導体路156及び第2の導体路158は、双方とも、同一のウェブ116‐1に配設されており、第1及び第2の導体路156,158は、第1のウェブ116‐1まで保持装置122に配設されている。電気的伝送路装置150、及び/又は、第1及び第2の導体路156,158は、それぞれ、金属層によって、及び/又は、撓みばね114、保持装置122、舌片124‐1,124‐2、ねじりばね140‐1,140‐2及び/又はフレーム装置144の基板のドープされた領域によって、実現することができる。
【0033】
図1Bは、電気的伝送路装置150に電流Iが時計回りに流されたときの永久磁石130‐iの細部を、発生する力と共に示す概略的な平面図である。第2及び第4の永久磁石130‐2,130‐4は、
図1Bにおいては、第1及び第2の永久磁石130‐1,130‐3と区別し易くするため、y方向においてずらして示されているが、このことは、有利には適用されない。第1の永久磁石130‐1のN磁極130‐1Nは、伝送路装置150の方に向けられて、同様に伝送路装置150の方を向いた第2の永久磁石130‐2のS磁極130‐2Sより、伝送路装置150に近い場所に配置されている。電気的伝送路装置150の他方の側において、第3の永久磁石130‐3のS磁極130‐3Sは、伝送路装置150の方に向けられて、同様に伝送路装置150の方を向いた第4の永久磁石130‐4のN磁極130‐4Nより、伝送路装置150に近い場所に配置されている。
【0034】
第1の永久磁石130‐1のS磁極130‐1Sの端部と第2の永久磁石130‐2のN磁極130‐2Nの端部とは、第2の傾動軸Bの軸方向に、即ち、x方向に、互いに揃えることができる。第3の永久磁石130‐3のN磁極130‐3Nの端部と第4の永久磁石130‐4のS磁極130‐4Sの端部とは、第2の傾動軸Bの軸方向に、互いに揃えることができる。
【0035】
図1Bには、さらに、伝送路装置150に供給された電流Iと第1乃至第4の永久磁石130‐iの磁束線11との協働によって、第1のローレンツ力31と第2のローレンツ力32とが発生することが示されている。第1のローレンツ力31は、伝送路装置150の、第1の永久磁石130‐1から最近傍に位置する区間において発生し、当該伝送路装置150が配置された撓みばね114と共に伝送路装置150に作用しており、この第1のローレンツ力31の向きは、負のz方向となっている。第2のローレンツ力32は、伝送路装置150の、第3の永久磁石130‐3から最近傍に位置する区間において発生し、伝送路150と撓みばね114とに作用しており、この第2のローレンツ力32の向きは、正のz方向となっている。第1のローレンツ力31と第2のローレンツ力32とが組み合わさってミラー要素112の傾動を引き起こし、構成に応じて第1のばね装置120の変形、即ち、撓みばね114及び/又はねじりばねとしての第2のウェブ116‐1,116‐2の変形を伴う。よって、ミラー要素112には、負のy方向に角運動量が印加されることとなる。電流Iが逆の電流方向で供給されると、例えば、第1の極と第2の極との極性が入れ替わり、これに応じて、ミラー要素112に正のy方向に角運動量が印加される。
【0036】
図1Cは、
図1Bに示された要素及び力の概略的な側面図である。
図1Cにおいては、永久磁石130‐iをずらした配置は、伝送路装置150に電流Iが流れる領域において、第1の磁界11の正及び負のx方向の特に大きな成分を発生させるために用いられることが明らかである。
【0037】
図1Aにおいては、さらに、マイクロミラー100の第1の電磁石125及び第2の電磁石127が示されている。
図1Dから明らかであるように、第1の電磁石125は、U字形の磁束誘導板129を有している。磁束誘導板129は、横棒126‐3の両端をそれぞれ腕部126‐1、126‐2に結合したものから成る。コイル131の通電によって、腕部126‐1がN磁極として、腕部126‐2がS磁極として機能し、又は、その逆にも機能するように、通電可能なコイル131が横棒126‐3に巻回されている。
図1Dにさらに示されているように、第1及び第3の永久磁石130‐1,130‐3は、第1の永久磁石130‐1のS磁極130‐3Sと第3の永久磁石130‐3のN磁極130‐3Nとが、y方向において腕部126‐1,126‐2の間に、かつ、x方向とz方向とにおいて腕部126‐1,126‐2と横一列に配置されるように、配置されている。
【0038】
このようにして、コイル131の通電により、電磁石125によって第2の磁界が発生し得る。この第2の磁界においては、ねじりばね140‐1によってフレーム装置144に対して回転可能に配置されている永久磁石130‐1,130‐3が、エネルギー的には、好適な向きになっている。その結果として、舌片124‐1,124‐2を介して永久磁石130‐1,130‐3に固定的に結合された保持装置122は、ねじりばね140‐1において、第2の傾動軸Bに沿って傾動する。第2の電磁石127は、第1の傾動軸Aを基準として、第1の電磁石125に対して鏡像対称となるように配置されかつ構成されている。コイル131が通電されると、それと同時に、腕部128‐1,128‐2を有する第2の電磁石127のコイルも通電されて、保持装置122は、ねじりばね140‐2においても、第2の傾動軸Bに沿って傾動し、各ねじりばね140‐1,140‐2において傾動が同一の回転方向での、即ち、それぞれ正又は負のx方向での角運動量で生じる。
【0039】
電磁石125,127は、フレーム装置144に取り付けることができる。例えば、電流Iを伝送路装置150に供給するためのボード、及び/又は、電磁石125,127の電気的コイルに通電するためのボードに、電磁石125,127及びフレーム装置144の双方を接続することができる。
【0040】
図2Aから
図2Dまでは、本発明の他の一実施形態に係るマイクロミラー200を示している。マイクロミラー200はマイクロミラー100の一変形態様であり、マイクロミラー200がマイクロミラー100と相違する点は、マイクロミラー100の伝送路装置150に代えて、電気的伝送路装置250がマイクロミラー200の傾動装置110と保持装置122とに配設されていること、及び、これに伴って、マイクロミラー100の永久磁石130‐iに代えて、マイクロミラー200の第1乃至第4の永久磁石230‐iの別の配置が使用されていることである。
【0041】
図2Aは、マイクロミラー200の概略的な平面図である。
図2Bは、電気的伝送路装置250に電流Iが正のy方向に流されたときの永久磁石230‐i及びミラー要素112の細部を、発生する力と共に示す概略的な平面図である。
図2Cは、
図2Bに示された要素及び力の概略的な側面図である。
図2Dは、第1の電磁石125間における第1及び第2の永久磁石
230‐1,230‐2の配置を示す概略図である。
【0042】
伝送路装置250は、撓みばね114上において、第1の傾動軸Aについて鏡像対称的に配設されていることにより、電流Iが第1の傾動軸Aに対して鏡像対称的に流れることができるようにされている。伝送路装置250は、2つの第2のウェブのうちねじりばねとして構成された第1のウェブ116‐1を介して第1の電極に接続されており、かつ、当該2つの第2のウェブのうちねじりばねとして構成された第2のウェブ116‐2を介して、第2の電極に接続されている。
【0043】
第1及び第3の永久磁石130‐1,130‐3と同様に、保持装置122上に正のz方向に配置されている第1及び第3の各永久磁石230‐1,230‐3は、そのN極230‐1N,230‐3Nを、ミラー要素112の方向に向けて配置されている。保持装置122の下方に負のz方向に配置されている第2及び第4の各永久磁石230‐2,230‐4は、そのS極230‐2S,230‐4Sを、ミラー要素112の方向に向けて配置されている。第2の永久磁石230‐2のS極230‐2Sは、x方向において、第1の永久磁石230‐1のN極230‐1Nよりも伝送路装置250に近い場所に配置されている。第4の永久磁石230‐4のS極230‐4Sは、x方向において、第3の永久磁石230‐3のN極230‐3Nよりも伝送路装置250に近い場所に配置されている。
【0044】
ミラー要素112とは反対側の磁極230‐1S,230‐2Nは、x方向において揃えて配置することができる。ミラー要素112とは反対側の磁極230‐3S,230‐4Nは、x方向において揃えて配置することができる。特に、第1及び第2の永久磁石230‐1,230‐2の配置及び構成は、第1の傾動軸Aを基準として第3及び第4の永久磁石230‐3,230‐4の配置及び構成に対して鏡像対称的となっている。
図2Dにおいては、第1及び第2の永久磁石230‐1,230‐2は、第1及び第2の永久磁石130‐1,130‐1と同様に、第1の電磁石125の腕部126‐1、126‐2を基準として配置されている。
【0045】
図3Aから
図3Dまでは、本発明の他の一実施形態に係るマイクロミラー300を示している。マイクロミラー300は、マイクロミラー200の一変形態様であり、マイクロミラー300がマイクロミラー200と相違する点は、マイクロミラー100の傾動装置110に代えてマイクロミラー300の傾動装置310を使用すること、及び、マイクロミラー200の伝送路装置250に代えて電気的伝送路装置350が配設されていることである。
【0046】
図3Aは、マイクロミラー300の概略的な平面図である。
図3Bは、電気的伝送路装置350に電流Iが正のy方向に流されたときの永久磁石230‐i及びミラー要素312の細部を、発生する力と共に示す概略的な平面図である。
図3Cは、
図3Bに示された要素及び力の概略的な側面図である。第1の電磁石125間における第1及び第2の永久磁石230‐1,230‐2の配置は、
図2Dに示されているように行われる。
【0047】
マイクロミラー300においては、傾動装置310は、ねじりばねとして機能する第2のウェブ116‐1,116‐2を介してミラー要素312を保持装置122に接続したものから成る。マイクロミラー300においては、マイクロミラー200の場合のように撓みばね114に対称的に配設する代わりに、マイクロミラー300のミラー要素312として機能する金属表面部に直接コンタクトし、この金属表面部は、電気的伝送路装置350の一部として機能する。よって、供給された電流Iは、ウェブ116‐1の方向からウェブ116‐2の方向に、又はその逆方向に、ミラー要素312の金属表面部全体にわたって、又は金属表面部の一部の離隔した部分にわたって流れる。マイクロミラー300においても、伝送路装置350に従って電流Iが第1の傾動軸Aに対して鏡像対称的に流れるので、マイクロミラー300の永久磁石230‐iの構成及び配置は、マイクロミラー200の永久磁石230‐iの構成及び配置と同一となっている。
【0048】
図4Aから
図4Dまでは、本発明のさらに他の一実施形態に係るマイクロミラー400を示している。マイクロミラー400はマイクロミラー100の一変形態様であり、マイクロミラー400がマイクロミラー100と相違する点は、マイクロミラー400の永久磁石430‐iの構成及び配置である。
【0049】
図4Aは、マイクロミラー400の概略的な平面図である。
図4Bは、電気的伝送路装置150に電流が時計回りに流されたときの永久磁石430‐i及びミラー要素112の細部を、発生する力と共に示す概略的な平面図である。
図4Cは、
図4Bに示された要素及び力の概略的な側面図である。
図4Dは、第1の電磁石125間における第1及び第2の永久磁石430‐1,430‐2の配置を示す概略図である。
【0050】
マイクロミラー400においては、電流Iが供給されずコイルが通電されない静止状態では、永久磁石430‐iの磁気的なNS軸は第1の傾動軸A及び第2の傾動軸Bの双方に対して垂直に配置されている。第1の永久磁石430‐1は、x方向において、第2の永久磁石430‐2よりミラー要素112に近い場所に配置されており、かつ、第3の永久磁石430‐3は、x方向において、第4の永久磁石430‐4よりミラー要素112に近い場所に配置されており、永久磁石430‐iの、ミラー要素112とは反対側の端部は、対ごとにx方向において揃えて配置することができる。
【0051】
第1の永久磁石430‐1のN極430‐1Nは、第2の永久磁石430‐2とは反対側にあり、第1の永久磁石430‐1のS極430‐1Sは、第2の永久磁石430‐2側に配置されている。第2の永久磁石430‐2のN極430‐2Nは、第1の永久磁石430‐1側にあり、第2の永久磁石430‐2のS極430‐2Sは、第1の永久磁石430‐1とは反対側に配置されている。第1の永久磁石430‐1と第2の永久磁石430‐2とは、第1及び第2の永久磁石130‐1,130‐2,230‐1,230‐2と同様、舌片124‐1の互いに反対側の外側面に配置されている。
【0052】
第3の永久磁石430‐3のN極430‐3Nは、第4の永久磁石430‐4側にあり、第3の永久磁石430‐3のS極430‐3Sは、第4の永久磁石430‐4とは反対側に配置されている。第4の永久磁石430‐4のN極430‐4Nは、第3の永久磁石430‐3とは反対側にあり、第4の永久磁石430‐4のS極430‐4Sは、第3の永久磁石430‐3側に配置されている。第3の永久磁石430‐3と第4の永久磁石430‐4とは、第3及び第4の永久磁石130‐3,130‐4,230‐3,230‐4と同様、舌片124‐2の互いに反対側の外側部に配置されている。
【0053】
斯かる構成によって、
図4Dに示されているように、第1及び第2の永久磁石430‐1,430‐2の各N極430‐1N,430‐2N及び各S極430‐1S,430‐2Sはいずれも、第1の電磁石125の磁束誘導板129の腕部126‐1,126‐2間に配置されることとなり、しかもそれぞれ、永久磁石430‐iの、ミラー要素112とは反対側の端部に配置されることとなる。第2の電磁石127並びに第3及び第4の永久磁石430‐3,430‐4についても、同様のことが当てはまる。
【0054】
図5は、本発明の一実施形態に係る方法を説明するための概略的なフローチャートである。
図5の方法は、本発明に係るマイクロミラーと共に、特にマイクロミラー100;200,300;400と共に実施することができ、本発明に係るマイクロミラーの、ここで記載されている全ての発展形態及び改良形態に合わせて適宜調整することができ、また、その逆も成り立つ。
【0055】
ステップS01においては、ローレンツ力31,32に基づいて傾動装置110;310のミラー要素112;312を第1の傾動軸Aに沿って傾動させるように、当該マイクロミラー100;200;300;400の永久磁石装置130‐i,230‐i;430‐iによって発生した第1の磁界11内において、マイクロミラーの当該傾動装置112;312に配設されている電気的伝送路装置150;250;350に電流Iを、特に交流電流を流す。
【0056】
ステップS02において、特に第1の傾動軸Aに対して垂直に配置された第2の傾動軸Bに沿って磁気的吸引及び反発に基づいて傾動装置110;310を傾動させるように、マイクロミラー100;200;300;400の電磁石装置125,127によって永久磁石装置130‐i,230‐i,430‐iの領域に第2の磁界を発生させる。
【0057】
有利には、傾動装置110;310のミラー要素112;312が第1の傾動軸Aに沿って周期的な共振運動で傾動するように、電気的伝送路装置150;250;350に電流を流す。有利には、傾動装置110;310が第2の傾動軸Bに沿って準静的に傾動するように第2の磁界を発生させる。
【0058】
上記においては、有利な実施例に基づいて本発明を説明したが、本発明は、これらの実施例に限定されることはなく、多様な形態に変更することが可能である。特に本発明の基本から逸脱することなく、本発明は、多くの態様で変更又は修正することができる。例えば、マイクロミラー100;200;300;400の全ての永久磁石のN極‐S極の向きを、マイクロミラー100;200;300;400においてそれぞれ示されているのとちょうど逆方向にすることもできる。
【0059】
例えば、撓みばね114を、同一形状であるが剛性の部材として構成して、第1のばね装置120を第2のウェブ116‐1,116‐2のみから構成することも可能である。第1のウェブ118‐1,118‐2をちょうど2つ設けるのではなく、例えば、ウェブを1つだけ設けること、又は、3つ以上のウェブを設けることも可能である。撓みばね114、保持装置122及び/又はミラー要素112:312を円(環)形とする代わりに、他の形状、例えば方形を用いることもできる。
【0060】
概観し易くするため、伝送路装置150;250;350は、図中においては、単層の配線パターンとして示されている。しかし、伝送路装置150;250;350を2層又は3層構成とすること、例えば、ヘリカル形とすることもでき、特に永久磁石130‐i;230‐i;430‐iにおいて、伝送路装置150;250;350の最近傍の区間に2つ以上の伝送路をz方向において互いに重ねて配置することにより、生成されるローレンツ力31,32をこれに応じて、より強くすることができる。