(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556350
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】ガスセンサによって測定ガス中のガス濃度を求めるための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/419 20060101AFI20190729BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
G01N27/419 327N
G01N27/416 331
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-521621(P2018-521621)
(86)(22)【出願日】2016年10月18日
(65)【公表番号】特表2018-532118(P2018-532118A)
(43)【公表日】2018年11月1日
(86)【国際出願番号】EP2016074971
(87)【国際公開番号】WO2017071989
(87)【国際公開日】20170504
【審査請求日】2018年6月26日
(31)【優先権主張番号】102015220991.1
(32)【優先日】2015年10月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン エルマー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ツァイン
(72)【発明者】
【氏名】アルブレヒト シュミット
【審査官】
黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2015/0267627(US,A1)
【文献】
特開2013−036852(JP,A)
【文献】
特表2009−529690(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0150760(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
F02D 21/04
F02D 21/08
F02D 29/00−29/06
F02D 43/00−45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスセンサ(100)によって測定ガス中のガス濃度を求めるための方法において、
前記測定ガス中のガス濃度が既知である内燃機関の第1の動作モードにおいて、それぞれ1つのガス濃度信号(Ii)と、それぞれ1つの圧力信号(pi)とからなる値対(Ii,pi)を多数検出し、
これらの値対(Ii,pi)を起点として、前記ガスセンサ(100)の補償パラメータ(k)及びスケール因子(madap)を求め、
続いて、前記内燃機関の第2の動作モードにおいて、前記内燃機関の当該第2の動作モードにおいて測定されたガス濃度信号(Inom)に基づいて、かつ、前記ガスセンサ(100)の前記補償パラメータ(k)及び前記スケール因子(madap)に基づいて、測定すべきガス濃度を求め、
前記第1の動作モードにおいて、前記補償パラメータ(k)及び前記スケール因子(madap)を最適化法によって以下のように決定し、即ち、それぞれのガス濃度信号(Ιi,pi)又はその逆数と、所定の関数(I(pi))又はその逆数との差の2乗の、全ての値対(Ιi,pi)にわたる合計が、最小値をとるように決定し、
前記所定の関数(I(pi))は、前記ガス濃度信号(Ιi)及び前記圧力信号(pi)に依存しており、前記補償パラメータ(k)及び前記スケール因子(madap)は、前記所定の関数(I(pi))のパラメータである、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記内燃機関の前記第1の動作モードにおいては、前記内燃機関の排気ガス再循環弁が閉鎖される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記内燃機関の前記第2の動作モードにおいて、前記ガス濃度を求めるために第2の所定の関数(I(pmeas))の値を計算し、
前記第2の所定の関数(I(pmeas))は、前記第2の動作モードにおいて測定された前記ガス濃度信号(Inom)と、前記第2の動作モードにおいて求められた圧力信号(pmeas)とに依存しており、
前記補償パラメータ(k)及び前記スケール因子(madap)は、前記第2の所定の関数(I(pmeas))のパラメータである、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記所定の関数(I(pi))と前記第2の所定の関数(I(pmeas))とは、同一である、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ガスセンサ(100)によって測定ガス中のガス濃度を求めるための方法において、
前記測定ガス中のガス濃度が既知である内燃機関の第1の動作モードにおいて、それぞれ1つのガス濃度信号(Ii)と、それぞれ1つの圧力信号(pi)とからなる値対(Ii,pi)を多数検出し、
これらの値対(Ii,pi)を起点として、前記ガスセンサ(100)の補償パラメータ(k)及びスケール因子(madap)を求め、
続いて、前記内燃機関の第2の動作モードにおいて、前記内燃機関の当該第2の動作モードにおいて測定されたガス濃度信号(Inom)に基づいて、かつ、前記ガスセンサ(100)の前記補償パラメータ(k)及び前記スケール因子(madap)に基づいて、測定すべきガス濃度を求め、
前記第1の動作モードにおいて、前記補償パラメータ(k)及び前記スケール因子(madap)を、
第1の方程式(G1):
(−A1・B2+A2・B1)・k3+(−A1・B2・p0+A2・B3−A3・B2+A4・B1)・k2+(−A3・B2・p0+A4・B3−A5・B2+A6・B1)・k+(−A5・B2・p0+A6・B3)=0
及び
第2の方程式(G2):
madap=−B2(k+p0)/(B1・k+B3)
の解として決定し、ここで、p0は、基準圧力(p0)であり、kは、前記補償パラメータ(k)であり、madapは、前記スケール因子(madap)であり、
前記ガス濃度信号(Ii)及び前記圧力信号(pi)は、係数(A1〜A6,B1〜B4)を介して間接的にのみに前記方程式に算入され、
前記係数(A1〜A6,B1〜B4)は、前記ガス濃度信号(Ii)及び前記圧力信号(pi)に依存している項の合計によって形成される、
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記内燃機関の前記第2の動作モードにおいて、前記ガス濃度を求めるために第2の所定の関数(I(pmeas))の値を計算し、
前記第2の所定の関数(I(pmeas))は、前記第2の動作モードにおいて測定された前記ガス濃度信号(Inom)と、前記第2の動作モードにおいて求められた圧力信号(pmeas)とに依存しており、
前記補償パラメータ(k)及び前記スケール因子(madap)は、前記第2の所定の関数(I(pmeas))のパラメータである、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記所定の関数(I(pi))と前記第2の所定の関数(I(pmeas))とは、同一である、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ガスセンサ(100)によって測定ガス中のガス濃度を求めるための方法において、
前記測定ガス中のガス濃度が既知である内燃機関の第1の動作モードにおいて、それぞれ1つのガス濃度信号(Ii)と、それぞれ1つの圧力信号(pi)とからなる値対(Ii,pi)を多数検出し、
これらの値対(Ii,pi)を起点として、前記ガスセンサ(100)の補償パラメータ(k)及びスケール因子(madap)を求め、
続いて、前記内燃機関の第2の動作モードにおいて、前記内燃機関の当該第2の動作モードにおいて測定されたガス濃度信号(Inom)に基づいて、かつ、前記ガスセンサ(100)の前記補償パラメータ(k)及び前記スケール因子(madap)に基づいて、測定すべきガス濃度を求め、
前記第1の動作モードにおいて、前記補償パラメータ(k)及び前記スケール因子(m
adap)を、前記値対(I
i,p
i)から以下の条件:
【数1】
に従って決定し、ここで、p
0は、基準圧力(p
0)であり、kは、補償パラメータ(k)であり、m
adapは、スケール因子(m
adap)であり、Nは、検出された値対(I
i,p
i)の個数である、
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
ガスセンサ(100)によって測定ガス中のガス濃度を求めるための方法において、
前記測定ガス中のガス濃度が既知である内燃機関の第1の動作モードにおいて、それぞれ1つのガス濃度信号(Ii)と、それぞれ1つの圧力信号(pi)とからなる値対(Ii,pi)を多数検出し、
これらの値対(Ii,pi)を起点として、前記ガスセンサ(100)の補償パラメータ(k)及びスケール因子(madap)を求め、
続いて、前記内燃機関の第2の動作モードにおいて、前記内燃機関の当該第2の動作モードにおいて測定されたガス濃度信号(Inom)に基づいて、かつ、前記ガスセンサ(100)の前記補償パラメータ(k)及び前記スケール因子(madap)に基づいて、測定すべきガス濃度を求め、
前記第1の動作モードにおいて、前記補償パラメータ(k)及び前記スケール因子(m
adap)を、
第1の方程式(G1):
(−A
1・B
2+A
2・B
1)・k
3+(−A
1・B
2・p
0+A
2・B
3−A
3・B
2+A
4・B
1)・k
2+(−A
3・B
2・p
0+A
4・B
3−A
5・B
2+A
6・B
1)・k+(−A
5・B
2・p
0+A
6・B
3)=0
及び
第2の方程式(G2):
m
adap=−B
2(k+p
0)/(B
1・k+B
3)
の解として決定し、ここで、p
0は、基準圧力(p
0)であり、kは、補償パラメータ(k)であり、m
adapは、スケール因子(m
adap)であり
、係数(A
1〜A
6,B
1〜B
4)は、以下の式:
【数2】
に従って計算される、
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記第1の方程式(G1)を、ニュートン法によって数値的に解く、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記内燃機関の前記第2の動作モードにおいて、前記ガス濃度を求めるために変数I(p
meas)を、以下の式:
【数3】
に従って計算し、ここで、I
nomは、第2の動作モードにおいて求められたガス濃度信号(I
nom)であり、p
0は、基準圧力(p
0)であり、kは、補償パラメータ(k)であり、m
adapは、スケール因子(m
adap)である、
請求項
8,9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記内燃機関の前記第1の動作モードにおいては、前記内燃機関の排気ガス再循環弁が閉鎖される、
請求項5乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記内燃機関の前記第2の動作モードにおいて、前記排気ガス再循環弁の下流にある前記内燃機関の吸気管内におけるガス濃度を求める、
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法のステップを実行するために構成されている、コンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラムが記憶されている、電子記憶媒体。
【請求項16】
請求項15に記載の電子記憶媒体を含む、電子制御ユニット。
【請求項17】
請求項5乃至7,9乃至10のいずれか一項に記載の方法のステップを実行するために構成されているコンピュータプログラムが記憶されている電子記憶媒体を含む、電子制御ユニットにおいて、
前記制御ユニットに、前記係数(A1〜A6,B1〜B4)が記憶されている、
ことを特徴とする、電子制御ユニット。
【請求項18】
前記電子記憶媒体に、前記係数(A1〜A6,B1〜B4)が記憶されている、
請求項17に記載の電子制御ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ガスセンサは、従来技術から既に知られており、また、ガスセンサによって測定ガス中のガス濃度を求めるための動作方法であって、ガスセンサによって提供される信号の、測定ガス中の絶対圧力に対する依存性を補償するという動作方法も公知である。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102006011837号明細書(DE102006011837A1)からは、ガスセンサによって測定ガス中のガス濃度を求めるための方法であって、測定ガス中のガス濃度が既知である内燃機関の第1の動作モードが存在する場合に、ガス濃度信号及び圧力信号が検出されるという方法が公知である。同文献においては、さらに、これらの信号を起点として、ガスセンサの補償パラメータを求めることも提案されている。さらに、このようにして求められた補償パラメータを、その後に、内燃機関の少なくとも1つの第2の動作モードにおいてガス濃度を求めるために考慮することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102006011837号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の開示
本発明によれば、ガスセンサによって測定ガス中のガス濃度を求めるための方法であって、前記測定ガス中のガス濃度が既知である内燃機関の第1の動作モードにおいて、それぞれ1つのガス濃度信号と、それぞれ1つの圧力信号とからなる値対を多数検出し、これらの値対を起点として、前記ガスセンサの補償パラメータ及びスケール因子を求め、続いて、前記内燃機関の第2の動作モードにおいて、前記内燃機関の当該第2の動作モードにおいて測定されたガス濃度信号に基づいて、前記ガスセンサの前記補償パラメータ及び前記スケール因子を考慮して、測定すべきガス濃度を求める方法が提案される。
【0005】
本願の文脈における「多数」とは、3以上、それどころか特に5以上の自然数である。本方法は、多くの個数の値対を用いて実施されることが好ましく、従って、本願の文脈における「多数」を、特に10以上の自然数とすることも可能である。
【0006】
本発明による解決策は、従来から公知の解決策よりも有利である。なぜならば、第1の動作モードにおいて検出された値対に基づいて、補正パラメータの他に、ガスセンサのスケール因子も、同時に求められるので、第2の動作モードにおいて、その後に測定されたガス濃度信号に基づいて、実際のガス濃度をより正確に求めることが可能となるからである。
【0007】
補償パラメータ及びスケール因子は、特に、ガスセンサの信号(ガス濃度信号も)、例えば、ガスセンサによって供給される電流、又は、ガスセンサによって供給される電圧から、又は、これらに比例する変数、例えば、このようにして算出された擬似的なガス濃度から、実際のガス濃度を推定するために利用される変数である。これらの変数は、所与のガス濃度を有する測定ガス中において、個々のガスセンサが受けている製造ばらつき及び/又は経年劣化過程に応じて、それぞれ個々のガスセンサごとにわずかに異なることがある。
【0008】
好ましい発展形態においては、第1の動作モード及び第2の動作モードで測定されるガス濃度信号は、排気ガス再循環弁の下流にある内燃機関の吸気管内で測定ガスに曝されているガスセンサによって求めることができる。この場合、内燃機関の排気ガス再循環弁は、第1の動作モードにおいては、好ましくは閉鎖され、従って、ガスセンサは、この動作モードにおいては、求めるべきガス濃度の割合が周囲空気と同じ、即ち、通常は20.95%である測定ガスに曝されている。
【0009】
好ましくは、補償パラメータ及びスケール因子は、最適化法によって、例えばフィット法によって決定される。最適化法は、このために特に、それぞれのガス濃度信号と所定の関数との差の2乗の、全ての値対にわたる合計を最小化し、前記所定の関数は、前記ガス濃度信号及び前記圧力信号に依存しており、前記補償パラメータ及び前記スケール因子は、前記所定の関数のパラメータである。
【0010】
特に、決定は、以下の条件:
【数1】
に従って実施され、ここで、p
0は、基準圧力であり、kは、補償パラメータであり、m
adapは、スケール因子であり、I
iは、ガス濃度信号であり、p
iは、圧力信号であり、Nは、検出された値対の個数である。
【0011】
所定の関数及びガス濃度信号の代わりに、これらの変数の逆数を使用することも可能である。
【0012】
基準圧力は、1013mbarの標準圧力によって供給され得る。しかしながら、基準圧力とは異なる圧力を使用することも可能であり、このことは、第2の動作モードにおいてガス濃度の決定が同じ基準圧力に基づいて実施される限り、最終的には方法全体に対して実質的な影響を及ぼさない。
【0013】
上述した最小化問題は、それぞれのガス濃度信号と所定の関数との差の2乗の、全ての値対にわたる合計の導関数を、補償パラメータに従ってゼロに設定すると共に、当該合計の導関数を、スケール因子に従ってゼロに設定することによって解くことができる。これに代えて、それぞれのガス濃度信号の逆数と、所定の関数の逆数との差の2乗にわたる合計を形成し、当該合計の導関数を、補償パラメータに従ってゼロに設定すると共に、当該合計の導関数を、スケール因子に従ってゼロに設定することも可能である。
【0014】
その後、同一の変形によって、特に以下の式:
(−A
1・B
2+A
2・B
1)・k
3+(−A
1・B
2・p
0+A
2・B
3−A
3・B
2+A
4・B
1)・k
2+(−A
3・B
2・p
0+A
4・B
3−A
5・B
2+A
6・B
1)・k+(−A
5・B
2・p
0+A
6・B
3)=0
及び以下の式:
m
adap=−B
2(k+p
0)/(B
1・k+B
3)
が得られ、ここで、p
0は、基準圧力であり、kは、補償パラメータであり、m
adapは、スケール因子であり、前記係数は、特に以下の式:
【数2】
に従って計算される。
【0015】
3次方程式から補償パラメータを数値的に、例えばニュートン法によって高速に解くことができる。その後、このようにして求められた補償パラメータを用いてスケール因子を決定することができる。
【0016】
本方法は、電子記憶媒体を含む電子制御ユニットを用いて実施することができる。逐次的に値対が検出される内燃機関の第1の動作モードにおいて、係数だけ、例えば最大で10個の相異なる係数だけ、特に上で定義された係数だけを電子記憶媒体に記憶し、これらの係数を逐次的に、特に合計形成によって更新することが、非常に有利に可能となる。特に、補償パラメータ及びスケール因子を決定するために、非常に多数の値対、例えば30個より多い値対を考慮すべき場合には、このようして、本方法の実施中に電子記憶媒体に格納すべきデータが大幅に減少することとなる。
【0017】
基本的に、非常に多数の値対を考慮することができる。値対は、さらなる制限なしに連続的に検出されるので、短期間で1000以上もの値対を考慮することができる。係数は、新しい値対に基づいて加算されるべき被加数によって逐次的に適合されるので、以前の値対の影響が、事前に設定可能な時定数によっていわば連続的に忘れられるように、本方法を実施することができる。
【0018】
有利には、検出された値対は、例えば500mbarから2000mbarまで、又は、それどころか2500mbarまで達する、関数に関連した範囲全体における圧力信号を考慮する。
【0019】
内燃機関の第2の動作モードにおいて、ガス濃度を求めるために、特に変数I(p
meas)を計算することができ、前記変数I(p
meas)は、第2の動作モードにおいて測定されたガス濃度信号と、第2の動作モードにおいて求められた圧力信号とに依存しており、補償パラメータ及びスケール因子は、前記変数I(p
meas)のパラメータであり、前記変数I(p
meas)は、特に第1の動作モードに関連して既に上述した所定の関数に従って、特に以下の式:
【数3】
に従って計算され、ここで、I
nomは、第2のモードにおいて求められたガス濃度信号であり、p
0は、既に上述した基準圧力であり、kは、補償パラメータであり、m
adapは、スケール因子であり、p
measは、第2の動作モードにおいて求められた圧力信号である。
【0020】
第2の動作モードにおいて求められる圧力信号は、ガスセンサの場所又はガスセンサの近傍における圧力を検出することができるガスセンサ又は別のセンサの出力信号とすることができる。
【0021】
しかしながら、第2の動作モードにおいて求められる圧力信号を、例えば、電子制御ユニットによって、排気ガス・空気モデルを用いて求められる変数とすることも可能である。
本発明は、本発明に係る方法のステップを実行するために構成されているコンピュータプログラムにも関する。また、本発明は、本発明に係るコンピュータプログラムが記憶されている電子記憶媒体にも関する。さらに、本発明は、本発明に係る電子記憶媒体を含む電子制御ユニットにも関する。
【0022】
図面
本発明の実施例を図面に示し、以下の記載においてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】本発明に基づいて求められた値対を示す図である。
【
図3】本発明に基づいて求められた別の値対を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施例
図1は、ガス混合物中のガス成分の濃度を決定するためのガスセンサ100と、これに対応する制御装置200とを一例として示す。ガスセンサは、本実施例においては、広帯域ラムダプローブとして構成されている。広帯域ラムダプローブは、下側領域にヒータ160と、中間領域にネルンストセル140と、上側領域にポンプセル120とを実質的に含む。ポンプセル120は、中心領域に開口部105を有し、この開口部105を通って排気ガス10がポンプセル120の測定空間130に到達する。測定空間130の外側の端部には電極135,145が配置されており、上側電極135は、ポンプセルに対応付けられていて内側ポンプ電極(IPE)135を形成し、下側電極145は、ネルンストセル140に対応付けられていてネルンスト電極(NE)145を形成する。ポンプセル120の、排気ガスに面した側には保護層110が設けられており、保護層110の内部には外側ポンプ電極(APE)125が配置されている。外側ポンプ電極125と測定空間130の内側ポンプ電極135との間には固体電解質が延在しており、電極125,135にポンプ電圧が印加されると、この固体電解質を通って酸素を測定空間130に輸送することができ、又は、測定空間130から排出することができる。
【0025】
ポンプセル120には、基準ガス空間150を有するネルンストセル140を形成する別の固体が隣接している。基準ガス空間150には、ポンプセルの方向に基準電極(RE)155が設けられている。ポンプセル120の測定空間130において基準電極155とネルンスト電極145との間に発生する電圧は、ネルンスト電圧に相当する。セラミックのさらなる経過において、下側領域にヒータ160が配置されている。
【0026】
ネルンストセル140の基準ガス空間150内には、酸素基準ガスが保持される。ポンプ電極125及び135を介して流れるポンプ電流によって、測定空間において、測定空間130における「λ=1」の濃度に相当する酸素濃度が調整される。
【0027】
この電流の制御とネルンスト電圧の評価とを、制御部又は制御装置200が引き受けている。この場合、演算増幅器220は、基準電極155に印加されるネルンスト電圧を測定し、この電圧と、典型的には約450mVである基準電圧U_Refとを比較する。偏差がある場合には、演算増幅器220が抵抗210及びポンプ電極125,135を介してポンプセル120にポンプ電流を印加する。
【0028】
もちろん、本発明に係る方法を、他のガスセンサ100を用いて実施することも可能であり、その場合に特に重要なのは、ガスセンサ100が、測定ガスの絶対圧力に対する依存性を有するガス濃度信号を供給するということだけであり、このことは、例えば、ポンプセルとして動作可能なただ1つの電気化学セルのみを有する広帯域ラムダプローブの場合にも当てはまっており、また、一般的に3つの電気化学セルを有するNOxセンサの場合にも当てはまっている。
【0029】
図1のガスセンサ100においては、閉鎖された排気ガス再循環弁の下流にある内燃機関の吸気管内において、即ち、酸素含有率20.95%の周囲空気中において、絶対圧力950mbarから1900mbarまでの範囲の区間で、それぞれの絶対圧力の値p
iと、対応するガス濃度信号I
iとからなる28個の値対I
i,p
iが求められる。これらの値対は、
図2に示されている。あるいは、500mbarから2500mbarまで達する範囲において値対を求めることも可能であろう。
【0030】
これらの値対I
i,p
iに基づいて、まず始めに逐次的に係数A
1〜A
6,B
1〜B
4が、以下の合計式:
【数4】
に従って、値対の検出と共に漸進的に形成された。ここで、p
0は、基準圧力であり、例えば1013mbarの標準圧力である。係数A
1〜A
6,B
1〜B
4は、この目的のために電子制御ユニットの電子記憶媒体に格納され、値対I
i,p
iが増えるごとに段階的に、それぞれの項の総和によって修正された。これに対して、省リソースな方法においては、値対I
i,p
iの永続的な記憶は、実施されなかった。
【0031】
続いて、係数A
1〜A
6,B
1〜B
4から補償パラメータkが決定された。このために、
補償パラメータkのための以下の3次方程式:
(−A
1・B
2+A
2・B
1)・k
3+(−A
1・B
2・p
0+A
2・B
3−A
3・B
2+A
4・B
1)・k
2+(−A
3・B
2・p
0+A
4・B
3−A
5・B
2+A
6・B
1)・k+(−A
5・B
2・p
0+A
6・B
3)=0
が、ニュートン法によって解かれた。続いて、スケール因子m
adapが、次の式:m
adap=−B
2(k+p
0)/(B
1・k+B
3)に従って計算された。
【0032】
この関連において、補償パラメータk及びスケール因子m
adapを求めるためのメモリスペース割り当てが、このために使用される値対I
i,p
iの個数とは無関係であるということが、非常に有利であるとして強調されるべきである。
【0033】
続いて、内燃機関の第2の運転モードにおいて、引き続き同じガスセンサを用いてガス濃度信号I
nomが求められた。その間、排気ガス再循環弁は、非固定的な所定の方法によって、内燃機関の動作からの要求に応じて開放され、部分的に開放及び閉鎖された。
【0034】
ラムダプローブに曝された測定ガス中、即ち、内燃機関に供給される空気中の酸素濃度は、相応に変動した。さらに、第2の動作モードにおいてガスセンサの場所で圧力センサによって求められた圧力信号p
measが変動した。
【0035】
第2の動作モードにおいて測定されたガス濃度信号I
nomを起点として、以下の式:
【数5】
によって、実際の酸素濃度が常に高い精度で決定された。
【0036】
図3は、本発明に基づいて求められた値対I
i,p
iの別の実施例を示しており、これらの値対を用いても本方法を同様に実施することが可能である。値対I
i,p
iの個数は、
図2と比較して格段に多い。しかしながら、実際の酸素濃度を決定するために必要な計算量は、格段に多い値対I
i,p
iを用いても、最大でも値対の個数に比例して増加するに過ぎない。従って、計算量は、容易に、値対I
i,p
iが発生すると共に段階的に達成され得る。それどころか、制御装置において必要なメモリスペースは変わらないままである。