(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】状態予測制御装置で実行される状態予測制御プログラムの構成を示す機能ブロック図
【
図4A】状態系列辞書に記憶された状態系列データの一例を示す図
【
図4B】状態系列辞書に記憶された状態系列データの更新の一例を示す図
【
図6A】照明に対して出力する制御パラメータの一例を示す図
【
図6B】ヒータに対して出力する制御パラメータの一例を示す図
【
図6C】加除湿器に対して出力する制御パラメータの一例を示す図
【
図6D】給水バルブに対して出力する制御パラメータの一例を示す図
【
図6E】施肥ノズルに対して出力する制御パラメータの一例を示す図
【
図7】本実施形態に係る状態予測制御装置を用いて作物の生育に関する状態予測制御を行う処理の流れを示すフローチャート
【
図8】本実施形態に係る状態予測制御装置を用いて作物の生育に関する状態予測制御を行う処理の流れを示すフローチャート
【
図9A】予測評価結果に基づき制御パラメータを変更する例を示す図
【
図9B】予測評価結果に基づき制御パラメータを変更する例を示す図
【
図10】作物の成長予測とそれに応じた制御パラメータの例を示す図
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、対象物として作物を定点撮影し、作物の成長観察、例えば作物の成長予測や異常監視、作物生育環境の状態予測や異常監視を行う場合を例に挙げて説明する。
【0012】
ここで、「対象物」とは、観測センサのそれぞれが出力したセンサ情報から直接観測されるものを意味する。例えば、観測センサとしてCMOSセンサが含まれる場合は、そのセンサ情報から直接観測されるものとして作物(又は生育状況)が対象物となる。同様に、温度センサの場合は対象物が温度であり、光量センサの場合は対象物が光量であり、水量センサの場合は対象物が水量である。
【0013】
また、以下の説明において、制御対象を植物の生育、制御パラメータを生育量、給水量、室温、湿度、光量、栄養素として説明する。また、栽培対象の生育(状態)から例えば発芽、成長、開花、結実、成熟を(状態)モードとして、それぞれのモードにおける目標値を目的情報とする。作物の例では、CMOSセンサにより観測される作物の画像、光量センサにより観測される光量、温度センサにより観測される温度、水量センサにより観測される水量が対象物となるので、これら対象物を観測し、変化を予測する。
【0014】
予測制御技術の特長として目的制御を行う。観測された値の変化速度、変化加速度だけではなく、目的に到達するための目標をたどるように制御する。
【0015】
図1に本実施形態に係る状態予測制御装置のハードウェア構成を示す。
図1に示すように本実施形態に係る状態予測制御装置10は、対象物の状態変化を予測する演算処理を司るCPU14、データ記憶装置としてのROM16、RAM18、ファイルユニット20(ファイルユニットは例えばHDDにより構成されてもよい)、及び外部インターフェース(I/F)22、モニタ24の各々がバス26を介して互いに接続され、コマンドやデータを授受可能に接続されたコンピュータとして構成される。
【0016】
ROM16には、処理ルーチン等のプログラムが予め記憶されている。なお、本実施形態に係る状態予測制御装置10には、以上の構成の他に、電源装置等、多数の電気系の構成要素が含まれているが、周知又は一般的なものであるため詳細な説明を省略する。
【0017】
外部I/F22には、状態予測制御装置10が制御対象とする対象物の状態情報を取得するための観測センサ30が接続される。観測センサ30として、例えばCMOSセンサ301、光量センサ302、温度センサ303、湿度センサ304、給水量センサ305、及び施肥量センサ306がある。
【0018】
また外部I/F22には、制御ユニット40が接続される。制御ユニットは、対象物が作物の生育の場合に、その作物の生育の状態変化に対して影響を与える環境を作り出す装置である。例えば制御ユニット40として、照明401、ヒータ402、加除湿器403、給水バルブ404、及び施肥ノズル405がある。
【0019】
図2は、状態予測制御装置10で実行される状態予測制御プログラムの構成を示す機能ブロック図である。
【0020】
状態予測制御装置10は、センサ情報取得部14a、対象物識別部14b、状態予測部14c、予測評価部14d、制御部14e、及びマッチング部14fを含む。上記各構成要素は、ROM16やファイルユニット20に記憶された機能を実現するプログラムをCPU14がRAM18にロードして実行することにより構成される。
【0021】
また、ファイルユニット20には、目的目標辞書201、状態予測を行う対象物の種類に応じたモデルを規定するモデル情報辞書202、モデルの時間経過に伴う複数の状態変化の系列を規定した状態系列辞書203、及び制御パラメータ辞書204を含む。目的目標辞書201には、目的目標辞書データを記憶する目的目標辞書記憶部201a及び目的目標辞書データを編集する目的目標辞書編集部201bを含む。また、状態系列辞書203には、状態系列辞書データを記憶する状態系列辞書記憶部203a及び状態系列辞書データを編集する状態系列辞書編集部203bを含む。ここでいう編集には、辞書データの更新及び削除の双方を含む。
【0022】
(目的目標辞書)
図3に目的目標辞書例を示す。目的目標辞書では、対象物の種類とその目的、及びその目的を達成するためのパラメータが記憶される。例えば
図3の例では対象物「きゅうり」に対して、目的1としてきゅうりの促成栽培、それを実現するための目標パラメータとして、生育過程を示す種まき、定植、収穫の3つのフェーズと各フェーズの時間が規定されている。
図3では収穫時期が「1月」「2月」の目標パラメータが規定されている。
【0023】
目的目標辞書は、CMOSセンサで観測される作物の収穫効率(収益を大きく、原価を小さく)をある前提条件(生育開始時期、収穫時期、品種、等)の下でできるだけ大きくという目的がある。この目的に対して、CMOSセンサで観測される作物の生育状況も目標(値)が絞られる。目的に対応する目標は過去の生育記録データを辞書化したものであり、これが目的目標辞書である。目的目標辞書は、目的(値)に対して目標(値)をテーブル化したデータとして与えられてもよい。
【0024】
対象物の目的、目標があらかじめ与えられているか、対象物の評価基準が与えられて対象物の観測などで得られる観測値から計算などで目的値、目標値を得てそれを辞書化してもよい。もしくは、対象物の観測などで得られる観測値に対して外部から評価点が与えられて最も高い評価点が与えられた観測値を目的値、目標値として辞書化したり、対象物の評価基準が与えられて対象物の観測などで得られる観測値から計算などで目的値、目標値を得て最も高い評価基準となった観測値を目的値、目標値として辞書化してもよい。
【0025】
作物の生育が目的(値)に向かって目標(値)をたどるためには、光量、温度、水量について適切な目標値がある。光量、温度、水量の適切な目標値は、当該作物の収穫効率をできるだけ大きくすることを目的とすると絞られる。作物の育成における光量、温度、水量の目的(値)は作物の収穫効率をできるだけ大きくすることであるので、この目的に対応する目標は過去の作物育成時の記録データを辞書化したものとなる。これが、光量、温度、水量の目的、目標辞書である。
【0026】
目的(値)に対して光量、温度、水量の目標(値)をテーブル化する。ある前提条件から収穫効率をできるだけ大きくする目的に至る、光量、温度、水量の経路(目標(値)の組)は1通りではないと考えられる。光量、温度、水量の組合せになるので、経路も何通りにも増えると考えられるが、これも過去の生育記録データを辞書化することで何通りも自然に記録されることとなる。同等の目標(値)を記録した場合には計数して頻度データとなる。目的、目標辞書を検索した場合の予測値は頻度データにより確率付で出力する。作物の生育の経路と光量、温度、水量の経路は対応付けられた組となる。
【0027】
(状態系列辞書)
図4に状態系列辞書に記憶された状態系列データの一例を示す。
図3の状態系列データは、対象物の時間軸方向に沿った状態変化のパターンを規定したデータであって、時刻tn(n=1〜9)時点における状態ωm(m=1〜6)を並べたデータである。そして、時刻tnにおいて一つの状態ωmを選択し、次の時刻、例えば時刻tn+1に推移したときの状態ωm+1に遷移することが、状態の変化を表し、この状態遷移を示すデータが状態系列となる。本実施形態では、作物の成長に伴う状態変化(形状が変化することから形状変化と称してもよい)の系列を規定した有限状態系列を適用し、初期状態の作物の形状をモデル化した有限状態系列からなるモデルを用意する。
【0028】
その際、作物や作物の生育環境に目的属性と目標パラメータを対応させる辞書を用意して、状態系列の探索に用いることができる。作物自体の目的の例として、発芽、生育、着花、開花、結実、枯れ死、などがあり、目標パラメータの例として茎の高さ、葉の大きさ、枚数、葉の色、葉の間隔、花の数、実の大きさ、形などがある。目的属性、目標パラメータを有限状態系列の探索に用いることにより、例えば蕾や実が観測されない時点から開花や結実状態を予測した有限状態系列の探索が可能になる。
【0029】
また生育環境の例として、作物の生育温度を適度に保つためのヒータや温度を観測する温度計、作物に給水する給水器や、作物に光を与える照明などがある。外部から作物の育成計画として作物の生育予定や、生育環境の温度、給水、照明の制御情報が目的属性及び目的パラメータとして与えられていれば、それらも有限状態系列の探索に用いて作物の生育予測を行うと共に、ヒータの温度センサや給水器の給水センサや照明の照度センサの予測値として用い、観測値との偏差を検出したら、観測値に合うように作物や生育環境の有限状態系列を逆探索することで、温度、給水、照明などの過不足情報や制御へのフィードバック情報として出力したり、温度、給水、照明の各センサの異常検知として出力したり、病虫害の可能性情報として出力してもよい。
【0030】
(モデル辞書)
図5にモデル辞書データの一例を示す。モデル辞書には、センサ種類とそのセンサから出力されるセンサ情報に基づいて決定される対象物が規定されている。
図5は対象物を規定したモデル辞書であり、例えばCMOSセンサからの出力により定義される対象物として作物が定義されている。
【0031】
(制御パラメータ)
図6に制御パラメータ辞書の一例を示す。
図6Aは照明401に対して出力する制御パラメータ、
図6Bはヒータ402に対して出力する制御パラメータ、
図6Cは加除湿器403に対して出力する制御パラメータ、
図6Dは給水バルブ404に対して出力する制御パラメータ、
図6Eは施肥ノズル405に対して出力する制御パラメータの例である。制御パラメータ辞書は、後述する期待値及び観測値の差分に、観測値から制御後の値を関連付けたデータとして与えられる。
【0032】
次に、本実施形態の状態予測制御装置10で実行される対象物の状態予測制御処理について説明する。
図7及び
図8は、本実施形態に係る状態予測制御装置を用いて作物の生育に関する状態予測制御を行う処理の流れを示すフローチャートである。
【0033】
センサ情報取得部14aは、観測センサ30の其々から各センサの時刻t1におけるセンサ情報(以下「第1センサ情報」という)を取り込み(S100)、対象物識別部14bに出力する。
【0034】
対象物識別部14bは、モデル情報辞書202を検索して各センサの第1センサ情報から対象物を識別する(S101)。モデル情報辞書202には、センサ種類と対象物とを関係付けたモデル情報、例えばセンサ種類が「CMOSセンサ」であれば対象物が「作物」と規定したデータが予め記憶されているものとする。そして、対象物識別部14bは、CMOSセンサから第1センサ情報を取得した場合には、モデル情報辞書202を参照して、CMOSセンサから第1センサ情報を取得すると対象物が作物であると認識する。
【0035】
対象物識別部14bは、モデル情報辞書にはない、新たな対象物情報があると認識した場合には、モデル辞書に新たな対象物情報の追加・更新処理を行う。
【0036】
対象物識別部14bは、実空間内における対象物の状態予測制御処理を実行する領域(予測探索窓という)を設定する(S102)。本実施形態では、一定間隔で対象物を観測する時間として定義された予測探索窓を設定する(
図10の符号61参照)。本例では、上記一定間隔を予め決めた間隔、例えば、作物の成長比較が行える時間間隔例として1週間と定めておく。
【0037】
対象物識別部14bは、予測探索窓の中で第1センサ情報により対象物を観測して対象物の状態を特定する(S103)。例えば予測探索窓として定義された時間に含まれる第1時刻t1において、CMOSセンサから出力された第1センサ情報を基に、第1時刻t1における作物の状態(形状)を特定する。また、第1時刻t1において水量センサから出力された第1センサ情報を基に、第1時刻t1における水分量を特定する。その他、観測センサ30に含まれる各センサを基に特定される対象物の第1時刻t1における状態を特定する。
【0038】
センサ情報取得部14aは、予測探索窓内に含まれ、かつ第1時刻よりも後の第2時刻t2において、観測センサ30に含まれる各センサのセンサ情報(以下「第2センサ情報」という)を取り込む(S104)。
【0039】
そして、対象物識別部14bは、ステップS103と同様に、第2センサ情報から対象物の状態を特定する(S105)。
【0040】
更に、状態予測部14cは、各対象物について、S103で特定した第1時刻における状態とS106で特定した第2時刻t2における状態との変化量を算出し、各対象物の第1時刻から第2時刻までの対象物の状態変化を算出する(S106)。
【0041】
状態予測部14cは、特定された対象物に対して目的目標辞書201を検索して、対象物の目的属性、目標パラメータを選択する(S107)。
【0042】
状態予測部14cは、対象物と、その状態と、対象物の目的属性及び目標パラメータを基に、有限状態系列を到達確率から検索する(S108)。より詳しくは、状態予測部14cは、観測値と目標値の有限状態系列のノード間の差の二乗和値を計算し、有限状態系列の中で二乗和値が最も小さいノードを検索する。
【0043】
状態予測部14cは、対象物に検索時点で到達確率の高い選択した系列又は複数の系列をあてはめる(S109)。ここでいう「対象物への系列又は複数の系列のあてはめ」とは、上で絞り込んだ系列を対象物の状態系列と決定することを意味する。あてはめた系列のノードの値を目標値とする。
【0044】
状態予測部14cは、対象物の変化ベクトルを選択した系列に重畳する(S110)。対象物を観測して、先にあてはめた状態系列のノードに対する対象物の各センサ情報の値の観測時点の差分値と、次に観測した時点のあてはめた状態系列のノートに対する差分値と差分値の変化分値を求める。これを対象物の変化ベクトルとする。更に次の観測時点の予測値は、次に観測する時点のあてはめた状態系列のノードに上で求めた変化ベクトルすなわち差分値と差分値の変化分値を重畳した値とする。
【0045】
状態予測部14cは、探索された状態系列頻度を更新する(S111)。対象の状態系列全体の頻度のうち、目的、目標に到達するあてはめられた状態系列の頻度を到達確率とする。また対象が新たな状態系列を持った場合は、新たな状態系列を追加する更新を行う。新たな状態系列の頻度の初期値は1である。
【0046】
状態予測部14cは、状態予測を出力する(S112)。状態予測部14cは、ステップS114において、対象物の変化ベクトルの重畳により求めた、次に観測する時点のあてはめた状態系列のノードに上で求めた変化ベクトルすなわち差分値と差分値の変化分値を重畳した値を予測値として出力する。
【0047】
予測評価部14dは、出力された予測値、即ち状態予測の結果を評価する(S113)。状態予測の評価は、ノードから目的、目標への到達確率を評価関数として計算することにより行う。
【0048】
本実施形態では4種類のデータ、即ち、(1)センサ値の差分値(目標値−観測値、目標値−予測値、期待値−観測値)、(2)センサ値の差分値の増減(1つ前の観測時点と今回の観測時点)に対応する符号付き値、(3)予測値、観測値、期待値からの各ノードからの目的、目標値への到達確率、(4)予測値、観測値、期待値からの各ノードからの目的、目標値への到達確率の増減(1つ前の観測時点と今回の観測時点)に対応する符号付き値、を出力する。このうち、本ステップでは、(3)、(4)を出力する。
【0049】
予測評価部14dは、目標に近づく状態系列の検索を行う(S114)。具体的には、予測評価部14dは、あてはめ時点のノードからの目的、目標への到達確率と予測値の最近傍ノードからの目的、目標への到達確率を比較する。到達確率が減少している場合は、予測値の最近傍ノードよりも到達確率が高いノード検索する。到達確率が増加している場合は検索は行わない。
【0050】
マッチング部14fは第2センサ情報が示す観測値と、状態予測部14cが出力した予測情報との比較を行い、その比較結果を予測評価部14dに出力する。予測評価部14dは、この比較結果を基に、評価情報/期待値を出力する(S115)。上記比較結果としては、例えば観測値と予測値の差分値が用いられる。
【0051】
予測評価部14dは、ステップS118で検索された予測値の最近傍ノードよりも目的、目標への到達確率が高いノードの値を期待値として出力する。ステップS115において目的、目標への到達確率が増加している場合は、予測評価部14dは、予測値の最近傍ノードを期待値として出力する。
【0052】
予測評価部14dは、評価情報として、下記の値を出力する。
(1)センサ値の差分値(目標値−観測値、目標値−予測値、期待値−観測値)
・観測値が目標値とずれて差分を生じていたら、その差分を評価値として出力
・予測値が目標値とずれて差分を生じていたら、その差分を評価値として出力
・観測値が期待値とずれて差分を生じていたら、その差分を評価値として出力
(2)センサ値の差分値の増減(1つ前の観測時点と今回の観測時点)に対応する符号付き値
・観測値が目標値とずれて差分を生じていて、その差分が増加していたら、望ましくない方向の評価としてマイナス値を出力
・観測値が目標値とずれて差分を生じていて、差分が減少していたら望ましい方向の評価としてプラス値を出力
・予測値が目標値とずれて差分を生じていて、差分が増加していたら望ましくない方向の評価としてマイナス値を出力
・予測値が目標値とずれて差分を生じていて、差分が減少していたら望ましい方向の評価としてプラス値を出力
・観測値が期待値とずれて差分を生じていて、差分が増加していたら望ましくない方向の評価としてマイナス値を出力
・観測値が期待値とずれて差分を生じていて、差分が減少していたら望ましい方向の評価としてプラス値を出力
【0053】
制御部14eは、制御情報を出力する(S116)。制御部14eは、ステップS116で出力された観測値及び期待値の差分からなる評価値を基に、制御パラメータ辞書204を参照し、各対象物に対する制御情報を出力する。例えば光量の期待値と観測値との差分が「800〜1199以上」であり、第2センサ情報から得られる観測時の照明電圧が3であれば、
図6Aより制御後の照明電圧の値として0とする制御情報を出力する。
【0054】
図4、
図9A、
図9B,
図10を参照して状態系列の検索について説明する。第1センサ情報から第1時刻t1の状態ω1(これは実際に観測された状態なので観測状態である)が得られているとする。なお、目標とする状態値を目標値、予測した状態値を予測値、観測された状態値を観測値、期待する状態値を期待値と称する。
図9A、
図9Bは、予測評価結果に基づき制御パラメータを変更する例を示す図である。また
図10は、作物の成長予測とそれに応じた制御パラメータの例を示す図である。
【0055】
状態予測部14cは、時刻t2において状態ω3が観測されたとする。この場合、第1時刻t1の状態ω1(これは観測された状態なので観測状態である)と第2時刻t2の状態ω3(これは観測された状態なので観測状態である)を結ぶ経路を求め、これを延長して第3時刻t3における状態はω6であると予測される(状態系列辞書の確率探索による)。
【0056】
一方、目的目標辞書201には、作物に対して第1時刻t1の状態ω2(これは目標とする状態なので目標状態である)、第2時刻t2の状態ω3(これは目標とする状態なので目標状態である)を結ぶ目標経路が設定されているとする。
【0057】
この場合第2時刻t2において状態ω3(これは目標状態である)に対して状態ω6(この状態は予測状態である)となり大幅に乖離した徒長が観測された。
【0058】
そこで制御部14eは、目標値に近づけるため(徒長を防止するため)、状態系列辞書を確率探索してt3時に最も目標値に近づく光量と温度及び成長の期待値をt2時期待値として出力する。
【0059】
制御部14eは、第3時刻t3に光量の観測値が期待値に近づかず、成長の観測値も期待値と乖離があることから代わりの経路を探索し、光量は変化しない予測でt4時に最も目標値に近づく温度及び成長の期待値をt3時期待値として出力する。
【0060】
第2時刻t2の予測値が徒長予測である場合、作物の成長を遅らせるように制御パラメータを調整する必要がある。そこで制御部14eは、目標値に近づけるため(徒長を防止するため)、状態系列辞書を確率探索してt3時に最も目標値に近づく光量と温度及び成長の期待値をt2時期待値として出力する。その結果、
図9A及び
図10の光量センサ情報に示すように、徒長防止のため光量と温度を下げた期待値を出力光量と温度の予測値は期待値とは別に従前の方法で出力する。
【0061】
制御パラメータが光量を調整しようとしたにも関らず、t3時に光量の観測値が期待値に近づかず、成長の観測値も期待値と乖離がある場合は、代わりの経路を探索し、光量は変化しない予測でt4時に最も目標値に近づく温度及び成長の期待値をt3時期待値として出力する。その結果、
図9B、
図10に示すように、光量の観測値が期待値に近づかないことから徒長を防止する代わりの経路を探索し温度を更に下げる期待値を出力する。
【0062】
状態予測部14cは、対象物と目的・目標辞書の到達確率を更新する(S117)。
図4Bに状態系列辞書の状態系列データの更新例を示す。状態系列辞書は各状態は状態系列頻度カウンタと状態カウンタを持ち、状態遷移が観測される毎に状態予測部14cが状態系列頻度カウンタと状態カウンタを更新する。下記に状態遷移確率の更新例を示す。
例: ωn → ωn+1 状態遷移観測時
状態系列頻度カウンタ ωn →ωn+1 カウントアップ
状態カウンタ ωn+1 カウントアップ
【0063】
状態系列辞書は状態遷移確率データを持ち、状態系列頻度から、状態遷移確率p(ωn→ωn+1)を下式(1)により求め、状態遷移確率を更新する。
p(ωn→ωn+1)=ωn→ωn+1カウント/ωnカウンタ・・・(1)
【0064】
これにより、状態遷移の観測結果を用いて目的・目標辞書の状態遷移確率を更新し、状態予測の精度をより向上させることができる。
【0065】
本実施形態によれば、観測対象物の状態を予測し、その状態予測を目標値に近づけるための評価情報を得ることができる。よって、この評価情報を基に、観測対象物の将来の状態が目標値に近づけるように観測対象物の状態に影響を与える要因を変更することができる。
【0066】
更に本実施形態では、制御部を用いて観測対象物の状態予測が目標値に近づくように、制御パラメータを変更させることができる。
【0067】
また、状態系列辞書編集部及び目的目標辞書編集部により、状態系列辞書や目的目標辞書を実際に得られた観測対象物のデータを基に更新するので、状態予測精度を向上させることが期待できる。
【0068】
上記実施形態は本発明を限定する意図ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない様々な変更態様は、本発明の技術的範囲に属するものである。
【0069】
例えば上記ステップS111において、状態系列辞書編集部は、着目する状態に更新フラグをつけて、目的・目標に達することが確定したら対応する頻度フラグを加算することにより状態遷移確率を更新する。これを受けてステップS117において、目的・目標辞書編集部は、目的・目標到達確率を更新してもよい。その際、目的・目標に達しないことが確定したら対応する頻度フラグを加算することにより状態遷移確率と目的・目標到達確率を更新する。更に、異常ケースであることが判明したら異常状態遷移フラグを付け、対応する頻度フラグを加算することにより状態遷移確率を更新してもよい。
【0070】
更に状態系列辞書編集部は、第2時刻の予想状態が変化速度/加速度から状態系列辞書に記憶されていない状態であった場合、及び観測状態が状態系列辞書に記憶されていない状態であった場合は、更新フラグと新状態であることを示すフラグと対応する新たな頻度フラグを登録して状態系列辞書記憶の更新を行ってもよい。