(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記薄膜封止構造が有する前記有機バリア層は、前記第1無機バリア層の前記上面に接し、かつ、離散的に分布する複数の中実部を有し、前記薄膜封止構造は、前記第1無機バリア層の前記上面および前記有機バリア層の前記複数の中実部の上面に接する第2無機バリア層をさらに有する、請求項1から4のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者の検討によると、薄膜封止構造を有するOLED表示装置は、局所的な外力によって、表示不良が発生するという問題があることがわかった。この問題は、OLED表示装置に、例えば、表示面を指で押すことによって、局所的な外力がかかったとき、有機EL素子を構成する複数の層の間(例えば、電極と有機層との間、および/または、有機層を構成する発光層と電荷輸送層との間)で層間剥離が生じるためと考えられる。例えば、タッチセンサ層を有するOLED表示装置においては、表示面を強い力で押すと、タッチセンサ層とOLED素子との間の粘着層が変形し、粘着層に凹部(薄い部分)が形成され、タッチセンサ層が受けた外力を粘着層が吸収/分散することができず、外力がOLED素子に直接的に伝わるためと考えられる。この表示不良は、表示領域内の周辺領域(「周辺表示領域」という。)において発生しやすいことがわかった。これは、OLED表示パネルを筺体のフレームに固定することによって、周辺領域が受ける外力の応力の影響が考えられる。
【0009】
この問題は、現在市販されている平坦化層を兼ねる比較的厚い有機バリア層を有する薄膜封止構造を有するOLED表示装置において発生しやすい。これは、平坦化層が比較的厚い薄膜封止構造を採用する場合、OLED装置全体の厚さを抑えるために、比較的薄い粘着層を用いることに加えて、周辺表示領域の端部からやや内側にかけての領域の平坦化層が表示領域内の中央表示領域に比べて厚くなりやすく、その結果として周辺表示領域近傍の粘着層がさらに薄くなることに起因していると考えられる。もちろん、特許文献1または2に記載の方法で製造された、偏在した樹脂(「中実部」ということがある。)で構成された有機バリア層を含む薄膜封止構造を有するOLED表示装置においても同様の問題が生じるおそれがある。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、外力による表示不良の発生が抑制された、薄膜封止構造を備える有機EL表示装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある実施形態による有機EL表示装置は、複数の画素を有する有機EL表示装置であって、基板と、前記基板に支持された複数の有機EL素子であって、それぞれが前記複数の画素のそれぞれに配置された複数の有機EL素子とを有する素子基板と、前記複数の画素を覆う薄膜封止構造とを有し、前記薄膜封止構造は、第1無機バリア層と、前記第1無機バリア層の上面または下面に接する有機バリア層とを有し、前記素子基板は、前記複数の画素のそれぞれを規定するバンク層と、前記複数の画素の間隙に配置された複数のスペーサとをさらに有し、前記複数のスペーサは、前記バンク層に覆われている。
【0012】
ある実施形態において、前記複数のスペーサは、前記複数の画素が配列された表示領域内の周辺表示領域において、前記表示領域内の中央表示領域よりも高い密度で配置されている。
【0013】
ある実施形態において、前記複数のスペーサの前記周辺表示領域における密度は、前記中央表示領域における密度の2倍以上である。
【0014】
ある実施形態において、前記複数のスペーサの高さは、前記バンク層の厚さよりも大きい。
【0015】
ある実施形態において、前記基板の法線方向から見たときの前記複数のスペーサの面積円相当径は5μm以上30μm以下である。
【0016】
ある実施形態において、前記薄膜封止構造が有する前記有機バリア層は、前記第1無機バリア層の前記上面に接し、かつ、離散的に分布する複数の中実部を有し、前記薄膜封止構造は、前記第1無機バリア層の前記上面および前記有機バリア層の前記複数の中実部の上面に接する第2無機バリア層をさらに有する。
【0017】
ある実施形態において、前記薄膜封止構造が有する前記有機バリア層は、前記第1無機バリア層の前記下面に接し、厚さが5μm以上の平坦化層を兼ねる。
【0018】
ある実施形態において、前記有機EL表示装置は、前記薄膜封止構造の上に設けられたタッチセンサ層をさらに有する。
【0019】
ある実施形態において、前記タッチセンサ層は、金属メッシュ層を有し、前記複数のスペーサの面積円相当径は前記金属メッシュ層の最小単位よりも小さい。
【0020】
ある実施形態において、前記基板は、フレキシブル基板である。
【0021】
ある実施形態において、前記周辺表示領域の幅は、前記表示領域の対応する方向の長さの5%以上15%以下である。
【0022】
ある実施形態において、前記周辺表示領域の幅方向に沿って配列されている画素の数は、50個以上200個以下である。
【0023】
本発明のある実施形態による、有機EL表示装置の製造方法は、上記のいずれかに記載の有機EL表示装置の製造方法であって、光硬化性樹脂を用いて前記複数のスペーサを形成する工程Aと、前記工程Aの後で、前記複数のスペーサを覆うように、液状の感光性樹脂材料を付与する工程と、前記感光性樹脂材料をフォトリソグラフィプロセスでパターニングすることによって前記バンク層を形成する工程とを包含する。
【0024】
ある実施形態において、前記感光性樹脂材料はアクリル樹脂またはポリアミド樹脂を含む。
【発明の効果】
【0025】
本発明の実施形態によると、外力による表示不良の発生が抑制された、薄膜封止構造を備える有機EL表示装置およびその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態による有機EL表示装置およびその製造方法を説明する。ここでは、タッチセンサ層を有するフレキシブルOLED表示装置を例に本発明の実施形態を説明するが、以下に例示する実施形態に限定されない。すなわち、本発明の実施形態による有機EL表示装置は、タッチセンサ層を有する必要はなく、また、フレキシブル基板に代えて、例えばガラス基板を有してもよい。
【0028】
図1(a)および(b)を参照して、本発明の実施形態によるOLED表示装置100の基本的な構成を説明する。
図1(a)は、本発明の実施形態によるOLED表示装置100のアクティブ領域の模式的な部分断面図であり、
図1(b)は、OLED3上に形成されたTFE構造10の部分断面図である。なお、アクティブ領域(
図2中のR1)は、表示領域ということもある。
【0029】
OLED表示装置100は、複数の画素を有し、画素ごとに少なくとも1つの有機EL素子(OLED)を有している。ここでは、簡単のために、1つのOLEDに対応する構造について説明する。
【0030】
図1(a)に示す様に、OLED表示装置100は、フレキシブル基板(以下、単に「基板」ということがある。)1と、基板1上に形成されたTFTを含む回路(バックプレーン)2と、回路2上に形成されたOLED3と、OLED3上に形成されたTFE構造10とを有している。OLED3は例えばトップエミッションタイプである。OLED3の最上部は、例えば、上部電極またはキャップ層(屈折率調整層)である。OLED表示装置100は、さらに、薄膜封止構造10の上に設けられた、接着層42と、接着層42を覆う無機絶縁層44と、無機絶縁層44の上に配置されたタッチセンサ層50とを有している。接着層42は例えば粘着層である。無機絶縁層44は省略してもよい。
【0031】
タッチセンサ層50の上にはオプショナルな偏光板4が配置されてもよい。偏光板4は、TFE構造10とタッチセンサ層50との間(例えば、接着層42とタッチセンサ層50との間)に配置してもよい。偏光板4は、円偏光板(直線偏光板とλ/4板との積層体)であり、よく知られているように、反射防止の役割を果たす。反射防止の観点からは、図示した様に、タッチセンサ層50の上に偏光板4を配置することが好ましい。
【0032】
基板1は、例えば厚さが15μmのポリイミドフィルムである。TFTを含む回路2の厚さは例えば4μmであり、OLED3の厚さは例えば1μmであり、TFE構造10の厚さは例えば1.5μm以下である。接着層42の厚さは例えば10μm以上30μm以下であり、25μm以下であることが好ましい。無機絶縁層44は例えばSiN層(例えばSi
3N
4層)である。SiN層の厚さは、例えば200nm以上1000nm以下である。
【0033】
図1(b)は、OLED3上に形成されたTFE構造10の部分断面図である。OLED3の直上に第1無機バリア層(例えばSiN層)12が形成されており、第1無機バリア層12の上に有機バリア層(例えばアクリル樹脂層)14が形成されており、有機バリア層14の上に第2無機バリア層(例えばSiN層)16が形成されている。
【0034】
有機バリア層14は、第1無機バリア層12の上面に接しかつ離散的に分布する複数の中実部を有する。「中実部」とは、有機バリア層14の内で、実際に有機膜(例えば、光硬化樹脂膜)が存在している部分を指す。逆に、有機膜が存在しない部分を非中実部という。中実部に包囲された非中実部を開口部ということもある。第2無機バリア層16は、第1無機バリア層12の上面および有機バリア層14の複数の中実部の上面に接する。すなわち、第2無機バリア層16は、有機バリア層14の非中実部において、第1無機バリア層12と直接接触している。
【0035】
TFE構造10は、OLED表示装置100のアクティブ領域(
図2中のアクティブ領域R1参照)を保護するように形成されている。また、有機バリア層14が有する非中実部は、少なくとも、アクティブ領域R1を包囲するように連続する部分を含み、アクティブ領域R1は、第1無機バリア層12と第2無機バリア層16とが直接接触している部分(以下、「無機バリア層接合部」という。)で完全に包囲されている。したがって、有機バリア層14の中実部が水分の経路となることがない。
【0036】
例えば、第1無機バリア層12および第2無機バリア層16は、例えば厚さが400nmのSiN層であり、有機バリア層14は例えば厚さが100nm未満のアクリル樹脂層である。
【0037】
第1無機バリア層12および第2無機バリア層16の厚さは、それぞれ独立に、例えば200nm以上1500nm以下であり、1000nm以下であることが好ましい。有機バリア層14の厚さは、例えば、10nm以上500nm未満であり、50nm以上300nm未満であることが好ましい。10nm未満であると、有機バリア層14の効果が十分に発揮されないことがあり、逆に、500nm以上になると、有機バリア層14による効果が飽和するのに対し、製造コストが増大する。
【0038】
ここで、有機バリア層14の厚さは、平坦部における厚さをいう。有機バリア層14を形成するために用いられる光硬化性樹脂の液膜は、平坦な(水平な)表面を形成するので、下地に凹部があると、その部分の液膜の厚さは大きくなる。また、液膜は、表面張力(毛細管現象を含む)によって曲面を形成するので、凸部の周辺の液膜の厚さが大きくなる。このような局所的に厚さが大きくなった部分は、500nmを超えてもよい。
【0039】
TFE構造10の厚さは400nm以上2μm未満であることが好ましく、400nm以上1.5μm未満であることがさらに好ましい。
【0040】
上述の比較的薄い有機バリア層を有するTFE構造10に代えて、厚さが5μm以上の平坦化層を兼ねる比較的厚い有機バリア層を第1無機バリア層の下面に接するように有するTFE構造を用いることもできる。もちろん、有機バリア層の下面に接する無機バリア層をさらに設けてもよい(すなわち、上記のTFE構造10における比較的薄い有機バリア層を比較的厚い有機バリア層に代えてもよい)。このとき、有機バリア層の厚さは、例えば一般的なインクジェット法を用いて形成するとき、5μm以上20μm以下であることが好ましい。インクジェット法では、厚さが5μm未満の均一な有機バリア層を形成することが難しい。一方、有機バリア層の厚さが20μmを超えると、高価な材料の消費量が増えるので、製造コストが高くなる。あるいは、インクジェット法で付与される有機材料を所定の位置にせき止めるための構造(ダム)を高くする必要が生じ、製造プロセスが複雑になる。
【0041】
なお、比較的厚い有機バリア層を有するTFE構造を有するOLED表示装置においては、上述した周辺表示領域における表示不良が発生しやすい。この理由は上述した様に、比較的薄い粘着層を用いることに加えて、周辺表示領域の端部からやや内側にかけての領域の平坦化層が表示領域内の中央表示領域に比べて厚くなりやすく、その結果として周辺表示領域近傍の粘着層がさらに薄くなることに起因していると考えられる。以下に、より具体的に説明する。
【0042】
インクジェット法を用いて形成された平坦化層を兼ねる比較的厚い有機バリア層の厚さは、中央表示領域に比べて周辺表示領域の方が大きくなりやすい。このような平坦化層の上に、完全に平坦なステージを用いてタッチパネル層を貼り付けると、周辺表示領域に平坦化層上に位置する粘着層が変形(薄層化)していると考えられる。粘着層が薄いと、タッチセンサ層が受けた外力を粘着層が吸収/分散することができず、外力がOLED素子に直接的に伝わるためと考えられる。さらに、OLED表示パネルを筺体のフレームに固定することによって、周辺表示領域の粘着層が、中央表示領域の粘着層よりも薄くなっていることも考えられる。
【0043】
次に、
図2を参照する。
図2は、本発明の実施形態によるOLED表示装置100の構造(TFE構造10以下)を模式的に示す平面図である。
【0044】
基板1上に形成されている回路2は、複数のTFT(不図示)と、それぞれが複数のTFT(不図示)のいずれかに接続された複数のゲートバスライン(不図示)および複数のソースバスライン(不図示)とを有している。回路2は、複数のOLED3を駆動するための公知の回路であってよい。複数のOLED3は、回路2が有する複数のTFTのいずれかに接続されている。OLED3も公知のOLEDであってよい。
【0045】
回路2は、さらに、複数のOLED3が配置されているアクティブ領域(
図2中の破線で囲まれた領域)R1の外側の周辺領域R2に配置された複数の端子24と、複数の端子24と複数のゲートバスラインまたは複数のソースバスラインのいずれかとを接続する複数の引出し配線22とを有している。複数のTFT、複数のゲートバスライン、複数のソースバスライン、複数の引出し配線22および複数の端子24を含む回路2全体を駆動回路層2ということがある。
【0046】
なお、
図2等において、駆動回路層2の構成要素として、引出し配線22および/または端子24だけを図示することがあるが、駆動回路層2は、引出し配線22および端子24を含む導電層だけでなく、さらなる1以上の導電層、1以上の絶縁層および1以上の半導体層を有している。また、基板1上に、駆動回路層2の下地膜として、絶縁膜(ベースコート)が形成されてもよい。
【0047】
TFE構造10は、アクティブ領域R1を保護するように形成されている。第1無機バリア層12および第2無機バリア層16は、例えば、SiN層であり、マスクを用いたプラズマCVD法で、アクティブ領域R1を覆うように所定の領域だけに選択的に形成される。ここでは、第1無機バリア層12および第2無機バリア層16は、それぞれ独立に、アクティブ領域R1の上および複数の引出し配線22のアクティブ領域R1側の部分の上に選択的に形成される。なお、信頼性の観点からは、第2無機バリア層16は、第1無機バリア層12と同じ(外縁が一致する)か、第1無機バリア層12の全体を覆うように形成されることが好ましい。アクティブ領域R1の周辺は、第1無機バリア層12と第2無機バリア層16とが直接接触する無機バリア層接合部によって包囲される。
【0048】
有機バリア層14は、例えば、上記特許文献1または2に記載の方法で形成され得る。例えば、チャンバー内で、蒸気または霧状の有機材料(例えばアクリルモノマー)を、室温以下の温度に維持された素子基板上に供給し、素子基板上で凝縮させ、液状になった有機材料の毛細管現象または表面張力によって、第1無機バリア層12の凸部の側面と平坦部との境界部に偏在させる。その後、有機材料に例えば紫外線を照射することによって、凸部の周辺の境界部に有機バリア層(例えばアクリル樹脂層)14の中実部を形成する。この方法によって形成される有機バリア層14は、平坦部には中実部が実質的に存在しない。有機バリア層の形成方法に関して、特許文献1および2の開示内容を参考のために本明細書に援用する。
【0049】
有機バリア層14はまた、樹脂層の最初の厚さを調整する(例えば、100nm未満とする)、および/または、一旦形成した樹脂層をアッシング処理することによって、形成することもできる。アッシング処置は、例えば、N
2O、O
2およびO
3の内の少なくとも1種のガスを用いたプラズマアッシングによって行われ得る。
【0050】
また、ここでは、比較的薄い有機バリア層14を有するTFE構造10を形成する方法を説明したが、上述した様に、例えばインクジェット法を用いて、厚さが5μm以上の平坦化層を兼ねる比較的厚い有機バリア層を有するTFE構造を形成してもよい。
【0051】
本発明の実施形態によるOLED表示装置100において、
図3〜
図7を参照して後述するように、素子基板は、複数の画素のそれぞれを規定するバンク層(「PDL(Pixel Defining Layer)」と呼ばれることもある。)と、複数の画素の間隙に配置された複数のスペーサとを有している。複数のスペーサは、バンク層に覆われている。バンク層は、2以上のスペーサを覆う様に形成され、表示領域R1の全面に連続した層として形成されてもよい。複数の画素の間隙に配置された複数のスペーサは、複数の画素のそれぞれを規定するバンク層に覆われている(
図3参照)。
【0052】
さらに、ある実施形態において、複数のスペーサは、複数の画素が配列された表示領域R1内の周辺表示領域R1pにおいて、表示領域R1内の中央表示領域R1cよりも高い密度で配置されている。
図2に示す様に、周辺表示領域R1pの幅は、表示領域R1の対応する方向の長さの5%以上15%以下であることが好ましい。すなわち、水平方向における周辺表示領域R1pの幅は、水平方向における表示領域R1の長さの5%以上15%以下であることが好ましく、垂直方向における周辺表示領域R1pの幅は、垂直方向における表示領域R1の長さの5%以上15%以下であることが好ましい。あるいは、周辺表示領域R1pの幅方向に沿って配列されている画素の数は、水平方向および垂直方向のいずれにおいても、50個以上200個以下であることが好ましい。周辺表示領域R1pの幅方向に沿って配列されている画素の数は、表示装置の解像度によって変わり得る。例えば、WQHDの解像度(2560画素×1440画素)を有する表示装置の短辺方向の場合、表示領域R1の外縁から72画素から216画素の範囲が周辺表示領域R1pとなる。
【0053】
図3に、本発明の実施形態によるOLED表示装置100の画素(R、G、B)およびスペーサ31の配置の例を示す。
図3(a)は中央表示領域R1c、
図3(b)は周辺表示領域R1pにおける画素およびスペーサ31の配置の例を示している。
【0054】
本明細書では、
図3に示す様に、各原色(例えば、赤、緑、青)を表示する単位を画素と呼ぶ。複数の原色画素で構成されるカラー表示単位をカラー表示画素という。カラー表示画素は、例えば、R、G、Bの3つの画素(ストライプ配列)、または、R、G、G、Bの4画素(ダイヤモンドペンタイル)で構成される。なお、本明細書における「画素」をサブ画素とし、「カラー表示画素」を画素とする定義も知られている。
【0055】
図3(a)および(b)に示す例では、画素配列は、ダイヤモンドペンタイル配列であり、R画素とB画素とがG画素を取り囲む様に配列されている。なお、B画素とG画素とがR画素を取り囲むように配列されたダイヤモンドペンタイル配列も知られている。
【0056】
ダイヤモンドペンタイル配列の場合、スペーサ31は以下のように配置することが好ましい。スペーサ31の面積は、R、G、Bの3つの画素のうち、最も小さな画素(
図3(a)、(b)の場合はG画素)の面積の50%〜100%程度が好ましい。配置場所は、相対的に大きな2つの画素(
図3(a)、(b)の場合はR画素およびB画素)のそれぞれに近い箇所(すなわちこれら2つの画素の間)に設置されることが好ましい。
【0057】
スペーサ31の配置密度は、
図3(a)では、4画素に1つのスペーサ31が配置されているのに対し、
図3(b)では、2画素に1つのスペーサ31が配置されている。すなわち、周辺表示領域R1pにおけるスペーサ31の配置密度(
図3(b))は、中央表示領域R1cにおけるスペーサ31の配置密度(
図3(a))の2倍である。このように、本発明の実施形態によるOLED表示装置100では、スペーサ31は周辺表示領域R1pにおいて、中央表示領域R1cよりも高い密度で配置されている。周辺表示領域R1pおよび中央表示領域R1cのそれぞれにおけるスペーサ31の配置密度は、画素の精細度や表示装置の用途等に応じて適宜設定されるが、典型的には、スペーサ31の周辺表示領域R1pにおける密度は、中央表示領域R1cにおける密度の2倍以上であることが好ましい。
【0058】
中央表示領域R1cにおけるスペーサ31の配置密度は、1つのカラー表示画素に1つ、あるいは、それよりも少なくてもよい。すなわち、2以上のカラー表示画素に対して、1つのスペーサ31を配置してもよい。このような場合には、周辺表示領域R1pにおけるスペーサ31の配置密度が、中央表示領域R1cにおけるスペーサ31の配置密度の4倍以上となることもある。
【0059】
スペーサ31の直径(基板法線方向から見たときの面積円相当径)は、5μm以上30μm以下であることが好ましい。スペーサ31の直径は、隣接する画素間の距離より小さいことが好ましく、さらに、バンク層33による画素の規定に影響しない大きさで形成することが好ましい。また、スペーサ31は局所的な外力に対する耐性を確保するために、少なくとも5μm以上の直径を有することが好ましく、高さに対する直径の比(アスペクト比、高さ:直径)は1:2程度が好ましい。
【0060】
基板法線方向からみたときのスペーサ31の形状は、
図3に示したように、円形であってもよいし、これに限られず、任意の形状であってよい。ただし、基板法線を対称軸としたとき、4回回転以上の対称性を有することが好ましく、正四角形、正六角形、正八角形および円形が好ましい。
【0061】
図3に示した画素配列は、ダイヤモンドペンタイル配列であるが、本発明の実施形態による有機EL表示装置の画素配列は特に限定されない。例えば、ダイヤモンド配列、ストライプ配列、あるいはジグザグ配列など、公知の画素配列に適用できる。
【0063】
図4は、OLED表示装置100の
図3中の破線IV−IV’に沿った模式的な断面図である。
図4では、基板1上に形成された回路(バックプレーン)に含まれるTFT2Tと、回路上に形成されたOLED3とを示している。
【0064】
TFT2Tとして、高精細の中小型用OLED表示装置では、移動度が高い、低温ポリシリコン(「LTPS」と略称する。)TFTまたは酸化物TFT(例えば、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)、O(酸素)を含む4元系(In−Ga−Zn−O系)酸化物TFT)が好適に用いられる。LTPS−TFTおよびIn−Ga−Zn−O系TFTの構造および製造方法はよく知られているので、以下では簡単な説明に留める。
【0065】
TFT2TはOLED表示装置100の回路2に含まれ得る。LTPS−TFT2Tは、トップゲート型のTFTである。
【0066】
TFT2Tは、基板(例えばポリイミドフィルム)1上に形成されている。
図4では図示を省略したが、基板1上には無機絶縁体で形成されたベースコートを形成することが好ましい。
【0067】
TFT2Tは、基板1またはベースコート上に形成されたポリシリコン層2seと、ポリシリコン層2se上に形成されたゲート絶縁層2giと、ゲート絶縁層2gi上に形成されたゲート電極2gと、ゲート電極2g上に形成された層間絶縁層2iと、層間絶縁層2i上に形成されたソース電極2ssおよびドレイン電極2sdとを有している。ソース電極2ssおよびドレイン電極2sdは、層間絶縁層2iおよびゲート絶縁層2giに形成されたコンタクトホール内で、ポリシリコン層2seのソース領域およびドレイン領域にそれぞれ接続されている。
【0068】
ゲート電極2gはゲートバスラインと同じゲートメタル層に含まれ、ソース電極2ssおよびドレイン電極2sdはソースバスラインと同じソースメタル層に含まれる。ゲートメタル層およびソースメタル層を用いて、引出し配線および端子が形成され得る。
【0069】
これらを覆う平坦化層(例えば有機樹脂層)2ipの上にOLED3が形成されている。OLED3は、下部電極32と、下部電極32上に形成された有機層34と、有機層34上に形成された上部電極36とを含む。ここでは、下部電極32および上部電極36は、例えば、それぞれ陽極および陰極を構成する。上部電極36は、表示領域の複数の画素全体にわたって形成されている共通の電極である。一方、下部電極(画素電極)32は画素ごとに形成されている。
【0070】
下部電極32は平坦化層2ip上に形成されており、平坦化層2ipに形成されたスルーホール内で、ドレイン電極2sdに接続されている。
【0071】
バンク層33は、下部電極32と有機層34との間に、下部電極32の周辺部分を覆う様に形成されている。下部電極32と有機層34との間にバンク層33が存在すると、下部電極32から有機層34に正孔が注入されない。従って、バンク層33が存在する領域は画素として機能しないので、バンク層33が画素の外縁を規定する。
【0072】
複数の画素の間隙に複数のスペーサ31aが配置されており、複数のスペーサ31aは、バンク層33に覆われている。ここで例示するスペーサ31aは、基板1の法線を含む面における断面形状がおおむね半球状である。
【0073】
スペーサ31aの高さhs1は、例えば、2μm以上4μm以下である。バンク層33の厚さhb1は、例えば1μm以上4μm以下である。スペーサ31aの高さhs1は、バンク層33の厚さhb1よりも大きいことが好ましい。
【0074】
スペーサ31aの高さhs1とバンク層33の厚さhb1との和は、4μm以上8μm以下であることが好ましい。hs1とhb1との和がこれよりも小さいと、十分な耐外力性が得られないことがあり、hs1とhb1との和がこれよりも大きいと、蒸着マスクと素子基板との間隙が大きくなるので、蒸着パターンの精度が低下するおそれがある。なお、指向性の高い蒸着法を採用すれば、hs1とhb1との和が8μm超の場合でも、蒸着パターンの精度を向上させることができる。
【0075】
このような構成を採用すると、離散的に配置されたスペーサ31aの上に厚さがhb1のさらなるスペーサを形成するよりも、厚さ(高さ)の制御を正確にできるという利点が得られる。さらには、外力に対する耐性が高いという利点が得られる。
【0076】
スペーサ31aは、光硬化性樹脂、例えば、紫外線硬化性アクリル樹脂で形成することが好ましい。光硬化性樹脂を用いると高い寸法精度を得ることができる。
【0077】
バンク層33は、スペーサ31aを覆うように、液状の感光性樹脂材料を付与し、その後、感光性樹脂材料をフォトリソグラフィプロセスでパターニングすることに形成される。感光性樹脂材料は、アクリル樹脂またはポリアミド樹脂を含むことが好ましい。ポリイミドを用いることもできる。
【0078】
スペーサ31aに対する感光性樹脂材料の濡れ性や粘度を制御することによって、1μm以上4μm以下の厚さを有するバンク層33を形成することができる。
【0079】
本発明の実施形態によるOLED表示装置は種々に改変され得る。例えば、OLED表示装置の画素がストライプ配列を有する場合、例えば、OLED表示装置は、
図5に示す様な断面構造を有し得る。
図5は、
図4に対応し、ストライプ配列の画素を有するOLED表示装置の模式的な断面図である。バンク層33は、例えば、画素配列に沿って、ストライプ状に複数のスペーサ31を覆うバンク層(ストライプ状)33を有してもよい。
【0080】
スペーサ31の断面形状は、上記で例示した略半球状に限られず、適宜変更され得る。例えば、
図6、7に示す様に、スペーサ31bの様に、台形の断面形状を有してもよい。
図6は、
図4に対応し、スペーサ31bが台形の断面形状を有するOLED表示装置の模式的な断面図であり、
図7は、
図6に対応し、ストライプ配列の画素を有するOLED表示装置の模式的な断面図である。
【0081】
本発明の実施形態によるOLED表示装置100が有するタッチセンサ層50は、公知のタッチセンサ層であってよい。例えば、抵抗膜方式や投影型静電容量方式のタッチセンサ層であってよい。
図8および
図9を参照して、OLED表示装置100に好適に用いられるタッチセンサ層50Aおよびタッチセンサ層50Bの構造を説明する。
【0082】
図8(a)は、タッチセンサ層50Aの模式的な平面図であり、
図8(b)はタッチセンサ層50Aを含む部分の断面図である。タッチセンサ層50Aは、接着層42上に形成された無機絶縁層44上に形成されている。接着層42は例えば粘着層である。
【0083】
タッチセンサ層50Aは、X方向に延びる複数のX電極52Aと、X方向に直交するY方向に延びる複数のY電極54Aとを有している。X電極52AおよびY電極54Aはいずれも金属メッシュで形成されている。金属メッシュの最小単位は、例えば、35μm×35μmの正方形であり、これらが複数集まって、例えば3mm×3mmの正方形の単位電極を構成しており、単位電極は配線によってそれぞれ、X方向またはY方向に接続されている。配線が交差する部分は、例えば無機絶縁層(SiN層)で互いに絶縁されている(不図示)。金属メッシュは例えばTi層とAl層との積層構造、または、Ti層/Al層/Ti層の積層構造を有している。
【0084】
図9(a)は、タッチセンサ層50Bの模式的な平面図であり、
図9(b)はタッチセンサ層50Bを含む部分の断面図である。タッチセンサ層50Bは、接着層42上に形成された無機絶縁層44上に形成されている。タッチセンサ層50Bが有するX電極52BおよびY電極54Bは、いずれも透明導電層(例えばITO層)で形成されており、無機絶縁層(例えばSiN層)53Bで互いに絶縁されている。光の透過率の観点からは、タッチセンサ層50Aの方が有利である。
【0085】
例示したように、タッチセンサ層が金属メッシュ層を有するとき、複数のスペーサ31の面積円相当径は金属メッシュ層の最小単位よりも小さいことが好ましい。このような構成を採用することによって、タッチセンサの感度低下を抑制し、および/または、誤動作も抑制することができる。
【0086】
OLED表示装置100のように粘着層42で接着されたタッチセンサ層50を指で押圧すると、比較的柔軟性に富む粘着層42が変形し、タッチセンサ層50の電極が薄くなった粘着層42を介してOLED3の上部に対して局所的な強い外力を与え、有機EL素子を構成する複数の層の間(例えば、電極と有機層との間、および/または、有機層を構成する発光層と電荷輸送層との間)で層間剥離を生じさせることがある。本発明による実施形態のOLED表示装置は、上述のような構造のスペーサ31およびそれを覆うバンク層33を有するので、このような層間剥離を効果的に抑制、防止することができる。
【0087】
また、粘着層のように柔軟性を有しない接着層42で接着されている場合であっても、接着層42を介して、OLED3にかかる外力をスペーサ31が分散することができる。スペーサ31は、例えば、外力によって塑性変形(座屈)することによって、外力を吸収することができる。
【0088】
なお、フレキシブルなOLED表示装置100は、支持基板(例えばガラス基板)上に例えばポリイミド膜を形成し、支持基板上のポリイミド膜を基板1として形成される。ここで例示したタッチセンサ層50Aまたは50Bを有するOLED表示装置は、タッチセンサ層50Aまたは50Bを形成した後、支持基板からポリイミド膜を剥離することによって得ることができる。
【0089】
例えば、タッチセンサ層50Aまたは50Bおよび無機絶縁層44が形成されたタッチセンサ部材に、粘着層42を設け、これをTFE構造10が形成された素子基板に貼り付け、その後、支持基板からポリイミド膜を剥離する。
有機EL表示装置(100)は、複数の画素を有する有機EL表示装置であって、基板と、基板に支持された複数の有機EL素子(3)であって、それぞれが複数の画素のそれぞれに配置された複数の有機EL素子とを有する素子基板(1)と、複数の画素を覆う薄膜封止構造(10)とを有し、薄膜封止構造は、第1無機バリア層(12)と、第1無機バリア層の上面または下面に接する有機バリア層(14)とを有し、素子基板は、複数の画素のそれぞれを規定するバンク層(33)と、複数の画素の間隙に配置された複数のスペーサ(31)とをさらに有し、複数のスペーサ(31)はバンク層(33)に覆われている。