特許第6556449号(P6556449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6556449水素貯蔵システムのパージ制御装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556449
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】水素貯蔵システムのパージ制御装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20190729BHJP
   H01M 8/04186 20160101ALI20190729BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20190729BHJP
   H01M 8/0444 20160101ALI20190729BHJP
   H01M 8/0662 20160101ALI20190729BHJP
【FI】
   H01M8/04 J
   H01M8/04186
   H01M8/0438
   H01M8/0444
   H01M8/0662
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-263273(P2014-263273)
(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-130339(P2015-130339A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2017年9月21日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0166674
(32)【優先日】2013年12月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA MOTORS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沈 志 ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】金 亨 基
(72)【発明者】
【氏名】金 相 鉉
(72)【発明者】
【氏名】金 昌 浩
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0137007(US,A1)
【文献】 特開2010−177111(JP,A)
【文献】 特開2004−71307(JP,A)
【文献】 特開2008−218106(JP,A)
【文献】 特開2004−349215(JP,A)
【文献】 特開2009−123612(JP,A)
【文献】 特開2005−203143(JP,A)
【文献】 特開2004−232777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00− 8/2495
B60L 50/00−58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素タンク、前記水素タンク内に貯蔵されている水素の圧力を測定する圧力センサ、前記水素タンクから圧力レギュレーターを介して水素が供給される燃料電池スタック、前記水素タンク内の水素パージのためのパージ弁、及び前記パージ弁の開閉を制御して水素パージ周期を調節する制御器を備える水素貯蔵システムのパージ制御方法であって、
前記制御器が、
前記水素タンクへ水素充填をしたか否かを判断する段階と、
前記水素充填をしたか否かを判断する段階で水素充填が終了したと判断されると、前記圧力センサで測定された水素タンク内の圧力値に基づいて前記水素タンク内の水素純度値を算出する段階と、
前記算出された水素純度値に基づいて前記水素パージ周期を調節する段階と、
を有し、
前記水素純度値を算出する段階は、下記[数1]から前記水素タンク内の水素純度値を算出することを特徴とする水素貯蔵システムのパージ制御方法。
【数1】
(式中、A:水素タンク内の初期圧力、B:水素タンクの充填後の圧力、X1:充填前の水素濃度、X2:充填される水素濃度、X:充填後の水素濃度)
【請求項2】
前記水素充填をしたか否かを判断する段階は、
燃料ドア開閉検出センサにより燃料ドアの開放を感知する段階と、
前記燃料ドアの開放が感知されると、前記圧力センサにより前記水素タンク内の圧力をモニタリングする段階と、
前記燃料ドアの開放前後の前記水素タンク内の圧力変化が所定の基準値以上であれば充填開始であると判断する段階と、
前記燃料ドア開閉検出センサにより前記燃料ドアが閉鎖されたか否かを感知して、燃料ドアの閉鎖が感知されると、充填終了であると判断する段階と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の水素貯蔵システムのパージ制御方法。
【請求項3】
前記水素パージ周期を調節する段階は、所定の水素純度に対する基準値と、前記算出された水素純度値とを比較して、前記算出された水素純度値が前記基準値未満である場合、前記算出された水素純度値が前記水素純度に対する基準値以上の場合よりも水素パージを頻繁に行うように前記水素パージ周期を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の水素貯蔵システムのパージ制御方法。
【請求項4】
前記水素パージのためのパージ弁は、前記燃料電池スタックで生成される電荷量を基準として、前記生成された電荷量が所定の基準電荷量に到達すると、所定の時間だけ前記パージ弁を開放するように設定され、
前記基準電荷量は、前記算出された水素純度値が前記水素純度に対する基準値未満の場合と前記基準値以上の場合とに対してそれぞれ異なる値を持つように設定されるが、前記それぞれの場合における前記パージ弁の開放時間は同じであることを特徴とする請求項に記載の水素貯蔵システムのパージ制御方法。
【請求項5】
前記基準電荷量は、前記算出された水素純度値が前記水素純度に対する基準値未満であれば所定の第1基準電荷量に、前記算出された水素純度値が前記基準値以上であれば所定の第2基準電荷量に設定され、前記第2基準電荷量は前記第1基準電荷量に比べてより大きな値に設定され、前記パージ弁の開放時間は0.1秒〜1.0秒の範囲で選択された値に設定されることを特徴とする請求項に記載の水素貯蔵システムのパージ制御方法。
【請求項6】
前記水素パージ周期を調節する段階は、前記水素タンク内の水素純度値とパージ周期とをマッピングしたデータを含むパージ周期マップから前記水素パージ周期を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の水素貯蔵システムのパージ制御方法。
【請求項7】
前記パージ周期マップは、水素純度値が減少するにつれてパージ周期が短くなるように設定されることを特徴とする請求項に記載の水素貯蔵システムのパージ制御方法。
【請求項8】
前記パージ周期マップは、水素純度値が減少するにつれて前記パージ弁の開放時間が長くなるように設定されることを特徴とする請求項に記載の水素貯蔵システムのパージ制御方法。
【請求項9】
水素タンクと、
前記水素タンク内に貯蔵されている水素の圧力を測定する圧力センサと、
前記水素タンクから圧力レギュレーターを介して水素が供給される燃料電池スタックと、
前記水素タンク内の水素パージのためのパージ弁と、
前記パージ弁の開閉を制御して水素パージ周期を調節する制御器と、を含み、
前記制御器は、
前記水素タンクへ水素充填をしたか否かを判断し、
前記水素タンクへの水素充填が終了したと判断すると、前記圧力センサで測定された前記水素タンク内の圧力値に基づいて前記水素タンク内の水素純度値を算出し、前記算出された水素純度値に基づいて前記水素パージ周期を調節するように構成され
前記制御器は、前記圧力センサから入力された充填前後の圧力値を用いて下記[数1]から前記水素タンク内の水素純度値を算出することを特徴とする水素貯蔵システムのパージ制御装置。
【数1】
(式中、A:水素タンク内の初期圧力、B:水素タンクの充填後の圧力、X1:充填前の水素濃度、X2:充填される水素濃度、X:充填後の水素濃度)
【請求項10】
燃料ドア開閉がなされたか否かを検出するための燃料ドア開閉検出センサをさらに含み、
前記制御器は、
前記燃料ドア開閉検出センサにより前記燃料ドアの開放が感知された場合、前記圧力センサにより前記水素タンク内の圧力をモニタリングして前記燃料ドアの開放前後の前記水素タンク内の圧力変化が所定の基準値以上であれば充填開始であると判断し、
前記燃料ドア開閉検出センサにより前記燃料ドアの閉鎖が感知された場合、充填終了であると判断するように構成されることを特徴とする請求項に記載の水素貯蔵システムのパージ制御装置。
【請求項11】
前記制御器は、所定の水素純度に対する基準値と、前記算出された水素純度値とを比較し、前記算出された水素純度値が前記水素純度に対する基準値未満である場合、前記算出された水素純度値が前記水素純度に対する基準値以上の場合よりも水素パージを頻繁に行うように前記水素パージ周期を調節することを特徴とする請求項9又は10に記載の水素貯蔵システムのパージ制御装置。
【請求項12】
前記制御器は、前記燃料電池スタックで生成される電荷量を基準として、前記生成された電荷量が所定の基準電荷量に到達すると、所定の時間だけ前記パージ弁を開放するように制御し、
前記基準電荷量は、前記算出された水素純度値が前記水素純度に対する基準値未満の場合と前記基準値以上の場合とに対してそれぞれ異なる値を持つように設定されるが、それぞれの場合における前記パージ弁の開放時間は同じであることを特徴とする請求項11に記載の水素貯蔵システムのパージ制御装置。
【請求項13】
前記基準電荷量は、前記算出された水素純度値が前記水素純度に対する基準値未満であれば所定の第1基準電荷量に、前記算出された水素純度値が前記基準値以上であれば所定の第2基準電荷量に設定され、前記第2基準電荷量は前記第1基準電荷量に比べてより大きな値に設定され、前記パージ弁の開放時間は0.1秒〜1.0秒の範囲で選択された値に設定されることを特徴とする請求項12に記載の水素貯蔵システムのパージ制御装置。
【請求項14】
前記制御器は、前記水素タンク内の水素純度値とパージ周期とをマッピングしたデータを含むパージ周期マップを含み、前記パージ周期マップから前記水素パージ周期を決定することを特徴とする請求項9又は10に記載の水素貯蔵システムのパージ制御装置。
【請求項15】
前記パージ周期マップは、水素純度値が減少するにつれてパージ周期が短くなるように設定されることを特徴とする請求項14に記載の水素貯蔵システムのパージ制御装置。
【請求項16】
前記パージ周期マップは、水素純度値が減少するにつれて前記パージ弁の開放時間が長くなるように設定されることを特徴とする請求項14に記載の水素貯蔵システムのパージ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素貯蔵システムのパージ制御装置及び方法に係り、より詳しくは、水素貯蔵システムの内部に残留する異質物を放出するように水素貯蔵システム内に設置されたパージ弁を用いて残留異質物を含んでいる気体をシステムの外部に放出する水素パージを制御するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素燃料電池自動車は、水素を燃料として水素と酸素を反応させて得た電荷を用いてモータを駆動して推力を発生させる車両である。
【0003】
水素燃料電池自動車には必ず水素貯蔵システムを搭載しなければならず、現在、最も商用性の高い700barの高圧水素貯蔵システムが世界的に使用されている。高圧水素貯蔵システムは、組み立て直後の内部環境は空気であり、これは燃料電池のスタックに対して致命的な成分を含んでいるため、空気雰囲気の内部を水素雰囲気に変える工程が必要である。タンク内部の気体を水素雰囲気に変えるためには高圧の充填/放出を繰り返すが、これは約6〜8時間がかかり、このような水素の充填/放出に求められる時間は絶対的な時間で、これを減らす方法は現在開発されていない。例えば特許文献1参照方。
【0004】
このような水素の充填/放出によって水素純度を向上させる作業の代わりに他の方法を用いるか、またはこのような水素純度の向上過程が排除可能であれば、全工程を短縮でき、それだけでなくコストダウンも図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−162812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記のような点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、水素貯蔵システム内の水素純度を一定水準に管理することなく、単に水素の充填を繰り返す過程により変化する水素純度からパージ制御を行うことで水素パージを効率的に制御でき、さらに水素純度の向上に必要とする工程を除外できる水素貯蔵システムのパージ制御装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するための、本発明の水素貯蔵システムのパージ制御方法の一実施例では、水素タンク内の水素純度を算出する段階と、算出した水素純度によって前記水素タンクの水素パージ周期を調節する段階と、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、前記水素純度を算出する段階の前に、水素充填をしたか否かを判断する段階をさらに含み、前記水素充填をしたか否かを判断する段階で充填が終了したと判断すると、前記水素純度算出段階を行うことを特徴とする。
【0009】
また、前記水素純度測定段階では下記[数1]から水素タンク内の水素純度を決定することを特徴とする。
【数1】
(式中、A:水素タンク内の初期圧力、B:水素タンクの充填後の圧力、X1:充填前
の水素濃度、X2:充填される水素濃度、X:充填後の水素濃度)
【0010】
ここで、前記水素充填をしたか否かを判断する段階は、燃料ドア開放を感知する段階と、燃料ドアの開放時、タンク圧力をモニタリングする段階と、燃料ドア開放前後のタンク圧力変化が基準値以上であれば充填開始であると判断する段階と、燃料ドアを閉鎖したか否かを感知し、燃料ドアの閉鎖時に充填終了であると判断する段階と、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、前記パージ周期を調節する段階では、所定の水素純度に対する基準値と、算出した水素純度値とを比較し、既に算出した水素純度値が前記基準値未満であれば、前記水素純度値が前記基準値以上の場合よりも水素パージを頻繁に行うようにパージ周期を設定することを特徴とする。
【0012】
また、前記水素パージのためのパージ弁は、生成される電荷量を基準として、所定の基準電荷量に到達すると、所定の時間だけ弁を開放するように設定され、前記基準電荷量は、水素純度値が前記基準値未満の場合と前記基準値以上の場合に対してそれぞれ異なる値を持つように設定されるが、それぞれの場合における弁開放時間は同じであることを特徴とする。
【0013】
また、前記基準電荷量は、水素純度値が前記基準値未満であれば所定の第1基準電荷量に、前記水素純度値が前記基準値以上であれば所定の第2基準電荷量に設定され、前記第2基準電荷量は前記第1基準電荷量に比べてより大きな値に設定され、弁開放時間は0.1秒〜1.0秒の範囲で選択した値に設定されることを特徴とする。
【0014】
また、前記パージ周期を調節する段階では、水素タンク内の水素純度とパージ周期をマッピングしたデータを含むパージ周期マップからパージ周期を決定することを特徴とする。
【0015】
また、前記パージ周期マップは、水素純度が減少するにつれてパージ周期が短くなるように設定されることを特徴とする。
【0016】
また、前記パージ周期マップは、水素純度が減少するにつれてパージ弁の開放時間が長くなるように設定されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の水素貯蔵システムのパージ制御装置は、水素タンクと、前記水素タンク内の水素パージのためのパージ弁と、水素パージ周期を調節するための制御器と、を含み、前記制御器は、前記水素タンク内の水素純度を算出し、算出した水素純度によって水素タンクのパージ周期を調節するように構成されることを特徴とする。
【0018】
また、前記水素タンク内の圧力を測定する圧力センサをさらに含み、前記制御器は、前記圧力センサから入力された充填前後の圧力値を用いて下記[数1]から水素タンク内の水素純度を決定することを特徴とする。
【数1】
【0019】
また、燃料ドア開閉がなされたか否かを検出するための燃料ドア開閉検出センサをさらに含み、前記制御器では、燃料ドア開放を感知した場合は、タンク圧力をモニタリングして燃料ドア開放前後のタンク圧力変化が基準値以上であれば充填開始であると判断し、燃料ドアが閉鎖された場合は、充填終了である判断するように構成されることを特徴とする。
【0020】
また、前記制御器では、所定の水素純度に対する基準値と、算出した水素純度値とを比較し、既に算出した水素純度値が前記基準値未満であれば、前記水素純度値が前記基準値以上の場合よりも水素パージを頻繁に行うようにパージ周期を調節することを特徴とする。
【0021】
また、前記制御器は、スタックで生成される電荷量を基準として、生成された電荷量が所定の基準電荷量に到達すると、所定の時間だけ弁を開放するように制御し、前記基準電荷量は、水素純度値が前記基準値未満の場合と前記基準値以上の場合に対してそれぞれ異なる値を持つように設定されるが、それぞれの場合における弁開放時間は同じであることを特徴とする。
【0022】
また、前記基準電荷量は、水素純度値が前記基準値未満であれば所定の第1基準電荷量に、前記水素純度値が前記基準値以上であれば所定の第2基準電荷量に設定され、前記第2基準電荷量は前記第1基準電荷量に比べてより大きな値に設定され、弁開放時間は0.1秒〜1.0秒の範囲で選択した値に設定されることを特徴とする。
【0023】
また、前記制御器は水素システム内の水素純度とパージ周期をマッピングしたデータを含むパージ周期マップを含み、前記制御器は前記パージ周期マップから水素パージ周期を決定することを特徴とする。
【0024】
また、前記パージ周期マップは、水素純度が減少するにつれてパージ周期が短くなるように設定されることを特徴とする。
【0025】
また、前記パージ周期マップは、水素純度が減少するにつれてパージ弁の開放時間が長くなるように設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明による水素貯蔵システムのパージ制御装置及び方法では、水素貯蔵システム内の水素純度からパージ周期を算出してパージタイミングを決定できるため、最適の水素パージを実現することができる。
【0027】
また、従来の消費電流でパージタイミングを決定する方式によれば、タンクシステムの製作工程または初期走行過程で多くの時間及び高費用を要する水素純度を向上させるための工程が必要であったが、本発明によれば、このような水素純度向上工程を排除できるため、水素貯蔵システムの生産費用を低減し、製作時間を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の好ましい実施例による水素貯蔵システムのパージ制御装置の概略的な構成を示す図面である。
図2】本発明の好ましい実施例による水素貯蔵システムのパージ制御方法を概略的に示すフローチャートである。
図3】本発明による水素純度測定過程で充填終了を判断する過程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
水素貯蔵システム内部の水素純度は、水素の充填を繰り返すことによって、注入する水素の純度に収斂するようになり、水素の充填量に応じて水素の純度は決定される。
【0030】
水素パージは、水素タンク内に残留している異質物を排出させるために行われるが、水素タンク内の水素純度を用いて水素パージ間隔を調節することができる。
【0031】
したがって、本発明では、水素貯蔵システム内の水素純度を測定し、測定した水素純度によって可変的に水素パージを制御することにより、最適のパージタイミングが得られる水素貯蔵システムのパージ制御装置及び方法を提供することに特徴がある。
【0032】
以下、添付した図面を参照して本発明の好ましい一実施例による水素貯蔵システムのパージ制御装置及び方法を具体的に説明する。
【0033】
図1は、本発明の好ましい実施例による水素貯蔵システムのパージ制御装置の概略的な構成を示す図面である。
【0034】
図1の実施例では、水素タンク10、圧力センサ50、圧力レギュレーター20、燃料電池スタック30、及びパージ弁40を備えた一般的な水素貯蔵システムと共に、パージ周期を制御するための制御器60及び燃料ドア開閉を感知する燃料ドア開閉検出センサ70を含むように構成される。
【0035】
前記圧力センサ50は水素タンク10内に貯蔵されている水素の圧力をチェックし、圧力レギュレーターは高圧の水素を低圧に減圧して燃料電池スタック30に供給する。
一方、本実施例は、前記水素タンク10内の水素パージのためのパージ弁40及び水素パージ周期を調節するための制御器60を含むように構成される。
【0036】
ここで、前記制御器60は、前記水素タンク10内の水素純度を算出し、算出した水素純度により燃料電池システムのパージ頻度を調節するように構成される。
【0037】
本明細書でパージ頻度を調節するということは、検出された水素純度によって可変的に水素パージを行うことを意味し、単にパージ頻度を異なるようにすることに限定しない。すなわち、パージ頻度を異なるようにすること以外に、水素パージのためのパージ弁の弁開放時間を異なるようにするなど、パージされるガス量を調節できるものであれば、パージ頻度を異なるようにすることに限定されず、様々な形態に行われることは当業者であれば容易に理解できるであろう。
【0038】
したがって、本発明による水素貯蔵システムのパージ制御装置及び方法は、パージ頻度を調節することに限定することなく、ほぼ同様の効果を導き出す様々な実施例を含む概念として解釈しなければならない。
【0039】
また、前記燃料ドア開閉検出センサ70は、燃料ドアを開閉したか否かを制御器60に伝達し、制御器60は燃料ドア開閉に関する情報及び水素タンク内の圧力変化から充填が終了したか否かを判断する。
【0040】
したがって、前記制御器60では、充填前後の圧力変化及び充填前の水素濃度などの情報から現在の水素純度を計算する。
【0041】
さらに、前記制御器60では、計算した水素純度からパージ弁40のパージ頻度を制御する。
【0042】
このような水素純度計算及びパージ制御については、以下の水素貯蔵システムのパージ制御方法に関する説明で詳細に説明する。
【0043】
図2は、本発明の好ましい実施例による水素貯蔵システムのパージ制御方法を概略的に示すフローチャートである。
【0044】
図2に示すように、本発明の好ましい実施例による水素貯蔵システムのパージ制御方法は、水素純度をモニタリングし(S110)、検出した水素純度値からパージ頻度を調節(S130)することに技術的特徴がある。
【0045】
具体的には、本実施例では、水素タンク内の水素純度をモニタリングし(S110)、モニタリングされた水素純度値と水素純度に対して所定の基準値(T)と比較(S120)する段階を含む。
【0046】
このような水素純度基準値を設定する実施例では、前記基準値によって分けられる2つの水素純度範囲ごとに相異なる水素パージ頻度を持つように構成される。
【0047】
したがって、本実施例では、前記基準値とモニタリングした現在の水素純度値との比較結果に応じて水素パージ頻度が決定される(S130)。すなわち、基準値との比較結果に応じて基準値に基づいてモニタリング前後の水素純度値が属する範囲が変わる場合にのみ水素パージ頻度が変更される。
【0048】
図2の実施例は、水素純度基準値未満の水素純度を有する水素タンクに基づいて示した図面である。
【0049】
したがって、水素純度基準値との比較段階(S120)で、モニタリングされた水素純度値が水素純度基準値以上(Yes)であれば、パージ制御基準状態が変更されると判断して水素パージ頻度を調節する。
【0050】
また、その反対に、水素純度基準値との比較段階(S120)で、モニタリングされた水素純度値が水素純度基準値未満であれば、同じ状態が維持されることになるため、パージ頻度を調節する必要がなく、そのため、水素純度をモニタリングする段階(S110)に戻る。
【0051】
一方、図面に示していないが、その反対の場合、すなわち、水素タンク内の水素純度が水素純度基準値以上であれば、水素純度値未満となる場合にだけ水素パージ頻度を調節し、水素純度値以上となる場合は水素パージ頻度を維持するようになる。
【0052】
図2の水素純度をモニタリングする段階では下記のような[数1]から水素純度を算出する。
【数1】
(式中、A:水素タンク内の初期圧力、B:水素タンクの充填後の圧力、X1:充填前の水素濃度、X2:充填される水素濃度、X:充填後の水素濃度)
【0053】
前記[数1]で算出する充填後の濃度(X)が水素タンク内の水素純度値となる。
【0054】
したがって、本実施例による水素貯蔵システムのパージ制御方法では、圧力センサで充填前後の圧力(A、B)を検出し、検出した充填前後の圧力値及び充填前のシステム内の水素濃度及び充填する水素濃度から水素タンク内の水素純度値を算出する。
【0055】
一方、水素純度の変化は水素充填時に発生するが、このような水素純度算出過程で充填前後の圧力を検出する過程が必要であるため、本発明の好ましい実施例では、水素貯蔵システムに水素が充填されたか否かを判断する過程をさらに含むように構成する。
【0056】
このような水素充填をしたか否かは図3に示すように燃料ドア開閉がなされたか否かから判断する。
【0057】
具体的には、このような水素充填をしたか否かを判断する段階は、燃料ドア開閉を感知し(S210)、燃料ドアの開放時(S220)にタンク圧力をモニタリングする段階(S230)を含む。ここで、タンク圧力をモニタリングする理由は、ドア開放後に充填しない場合を排除するためである。したがって、モニタリングしたタンク圧力が所定の基準値以上であれば、充填開始であると判断する(S240、S250)。充填が終了し、燃料ドアを閉鎖すると、充填が完全に終了したと判断する(S260、S270)。
【0058】
充填終了であると判断した場合、パージ弁の開閉を制御する制御器に充填前後の水素タンク内の圧力値などが入力され、上述した過程によって現在システム内の水素純度を計算する。
【0059】
本実施例では、上述した水素純度計算過程から算出した水素純度値と、所定の水素純度に対する基準値とを比較し、その比較結果に応じて水素パージ頻度、好ましくは水素パージ周期を制御するように構成される。
【0060】
このようなパージ周期制御は、水素純度を考慮して、既に算出した水素純度値が前記基準値未満であれば、前記水素純度値が前記基準値以上の場合よりも水素パージを頻繁に行うようにパージ周期を制御する。
【0061】
ここで、パージ周期の制御は、燃料電池スタック30から生成される電荷量を基準として、生成された電荷量が所定の基準電荷量に到達すると、所定のパージ弁の開放時間だけ弁を開放するように設定する。
【0062】
特に、本発明による水素貯蔵システムのパージ制御方法では、算出した水素純度値が前記基準値未満の場合と前記水素純度値が前記基準値以上の場合についてそれぞれ異なる時間だけ水素パージが行われるように構成する。
【0063】
そのために前記基準電荷量は、水素純度値が前記基準値未満の場合と前記基準値以上の場合についてそれぞれ異なる値を持つように設定するが、それぞれの場合における弁開放時間は同じであることが好ましい。
【0064】
前記基準電荷量は、水素純度値が前記基準値未満の場合は第1基準電荷量が設定され、前記水素純度値が前記基準値以上の場合は前記第1基準電荷量とは異なる第2基準電荷量が設定される。このように基準電荷量を相異なるように設定する場合は、弁開放時間が0.1(s)〜1.0(s)の範囲で選択する。
【0065】
したがって、水素純度が基準値未満の場合はスタック内で生成された電荷が第1基準電荷量に到達するごとに弁を所定の弁開放時間だけ開放し、水素純度が基準値以上の場合はスタック内で生成された電荷が第2基準電荷量に到達するごとに弁を所定の弁開放時間だけ開放する。ここで、第2基準電荷量は第1基準電荷量よりも大きな値に設定しなければならない。
【0066】
このようなパージ周期の制御は、パージ弁の弁開放時間を異なるようにするなどの他の実施例を含んでもいいことは上述の通りである。
【0067】
一方、本発明のまた他の実施例では、パージ周期を制御するためのマップによってパージ周期を制御するように構成する。
【0068】
このようなパージ周期マップは、水素純度の減少によりパージ周期が短くなるか、または水素純度の減少によりパージ弁の開放時間が長くなるように設定する。
【0069】
したがって、このようなパージ周期マップには様々な基準電荷値と弁開放時間を含んで構成する。
【0070】
以上、説明したように、本発明による水素貯蔵システムのパージ制御装置及び方法では、水素純度をモニタリングし、モニタリングされた水素純度値からパージ弁のパージ周期などを制御し、これによって一定水準の水素純度を維持する必要がないため、水素タンクの製作または初期運転などのような状況で水素純度を向上させるための工程を排除することができる。
【0071】
本発明は、好ましい実施例を参照して説明したが、該当技術分野の熟練した当業者であれば、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で本発明の要素を修正及び変更できることを理解できるであろう。また、本発明の必須領域を逸脱しない範囲内で特殊な状況や材料を変更してもよい。したがって、本発明は、好ましい実施例の詳細な説明に制限されず、技術的範囲内であらゆる実施例を含むことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、水素貯蔵システムのパージ制御装置及び方法の分野に適用できる。
【符号の説明】
【0073】
10 水素タンク
20 圧力レギュレーター
30 燃料電池スタック
40 パージ弁
50 圧力センサ
60 制御器
70 燃料ドア開閉検出センサ
図1
図2
図3