特許第6556453号(P6556453)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556453
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】シャワーヘッド
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/28 20060101AFI20190729BHJP
   B05B 1/18 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   A47K3/28
   B05B1/18 101
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-2277(P2015-2277)
(22)【出願日】2015年1月8日
(65)【公開番号】特開2016-123808(P2016-123808A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】笠原 直之
(72)【発明者】
【氏名】国枝 秀樹
【審査官】 小林 俊久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−047268(JP,A)
【文献】 意匠登録第1493444(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/26 − 3/40
B05B 1/00 − 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
散水板に散水孔が形成されたシャワーヘッドにおいて、
前記散水板の外側面に前記散水孔の縁部から延びる溝を設け、
前記散水孔の出口には、当該散水孔の出口以外の部分の口径よりも口径が大きい大径部が形成されており、
前記溝は、前記大径部の口径より狭い幅で形成されたシャワーヘッド。
【請求項2】
散水板に散水孔が形成されたシャワーヘッドにおいて、
前記散水板の外側面に前記散水孔の縁部から延びる溝を設け
前記散水孔として大口径のものと小口径のものとを設け、大口径の散水孔のみに前記溝を連結したシャワーヘッド。
【請求項3】
前記溝は複数の散水孔間を連結した請求項1又は2に記載のシャワーヘッド。
【請求項4】
前記溝は環状をなす請求項に記載のシャワーヘッド。
【請求項5】
前記溝は一つの散水孔に対して複数設けた請求項1〜のうちのいずれか一項に記載のシャワーヘッド。
【請求項6】
前記散水孔として大口径のものと小口径のものとを設け、大口径の散水孔に前記溝を連結した請求項1に記載のシャワーヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、浴室で使用されるシャワーヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のシャワーヘッドにおいては、シャワー使用が終了すると、シャワーヘッドは浴室壁面のハンガーに斜め下向きに支持される。このとき、止水状態であるにも関わらず、散水孔の内部やシャワーヘッドの内部に溜まっている湯水が長時間にわたって少しずつ垂れ落ちる。このため、例えば、栓の閉め忘れやバルブ不良による水漏れではないにも関わらず閉め忘れや水漏れであると誤認されたりすることが多い。
【0003】
このような問題を解消するために、特許文献1〜3の技術が提案されている。
特許文献1の技術においては、シャワーヘッドの散水孔の内周面が粗面化されている。この粗面化により散水孔の内周面の表面積が拡大して、保水力が増すようになり、水の垂れ落ちが防止されるとしている。
【0004】
特許文献2の技術においては、シャワーヘッドの内側において、散水孔を覆うようにメッシュが配置され、そのメッシュがメッシュ押さえを用いて保持されている。このメッシュ内に水膜が形成されて、水のポタ落ちが防止され、水切れが向上されるとしている。
【0005】
特許文献3の技術においては、散水孔を有する散水板のシャワーヘッドの内側面に最下方の散水孔に連通する環状の排水溝が形成されている。そして、シャワーヘッドの内部の残水が排水溝によって最下方の散水孔に導かれ、その最下方の散水孔から外部に早く排出されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−265744号公報
【特許文献2】特開平9−85132号号公報
【特許文献3】特開2009−273701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1の構成においては、散水孔の内周面の粗面加工がショットピーニングによるサンドブラスト処理によって行なわれるため、散水孔が多数存在することも相俟って、その粗面加工に手間がかかる。
【0008】
特許文献2の構成においては、メッシュやメッシュ押さえが必要であるため、部品点数が増えるだけではなく、シャワー使用時には、メッシュが水流に対する抵抗になって、ビーム状の勢いのあるシャワーを得にくくなる。従って、使用感に優れたシャワーとすることが困難になる。さらに、メッシュに保持された湯水が徐々に垂れ落ちることもあり、このような場合は前記の長時間にわたる垂れ落ちの問題点を解消できない。
【0009】
特許文献3の構成においては、残留水を最下方の散水孔に導く排水溝が設けられていても、最下方の散水孔が小径であれば、スムーズな排水は難しい。つまり、集められた残留水を最下方の散水孔から集中的に排出することになるため、その最下方の散水孔の口径を大きくしなければ、長時間の垂れ落ち状態が生じる結果となる。また、散水孔の大きさに制約があるため、快適なシャワーを得ることができないおそれがある。
【0010】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、簡単な構造により残留水を短時間でスムーズに排出できるシャワーヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明においては、散水板に散水孔が形成されたシャワーヘッドにおいて、前記散水板の外側面に前記散水孔の縁部から延びる溝を設け、前記散水孔の出口には、当該散水孔の出口以外の部分の口径よりも口径が大きい大径部が形成されており、前記溝は、前記大径部の口径より狭い幅で形成されたことを特徴とする。
【0012】
前記の構成においては、溝内の湯水によって散水孔内の残留水を引き出して、短時間でスムーズに排出させることができる。従って、シャワーヘッドの残留水が止水後に長時間にわたって垂れ落ちることを防止できる。そして、そのための構成は、溝を形成しただけであるから、部品点数が増えることはない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単な構造によって残留水をスムーズに排出できるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態のシャワーヘッドの斜視図。
図2】シャワーヘッドの縦断面図。
図3】散水板の正面図。
図4】散水孔の部分の断面図。
図5】溝を複数本にした変更例を示す正面図。
図6】溝の断面形状を変更した例を示す断面図。
図7】放射方向を向く溝を追加した変更例を示す正面図。
図8】放射方向を向く溝を有する変更例を示す一部正面図。
図9】ひとつの散水孔に複数の溝を形成した変更例を示す一部正面図。
図10】溝を深くした変更例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を具体化したシャワーヘッドの実施形態を図1図4に従って説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態のシャワーヘッド11は、給水ホース12の先端に連結される。そして、シャワーヘッド11は、止水状態の不使用時に把持部13の下部におけるジョイント3において浴室の壁面1のハンガー2に斜め下向き状態で支持される。
【0016】
図1図3に示すように、シャワーヘッド11の外殻を形成するハウジング14のヘッド部15の前部には散水板16が設けられており、この散水板16にはシャワー水を吐出するための大小の散水孔17,18が外周側の位置及び中心側の位置に透設されている。また、ハウジング14の内部には、その散水板16に対向して取り付けられた区画部材21と、ハウジング14の把持部13内に配置され、水,湯または湯水混合水(以下、これらを湯水と総称する)の流路を形成するインナパイプ22とを備えている。そして、給水ホース12からの湯水がインナパイプ22内を通って、散水板16と区画部材21との間に区画された放出室23内に供給され、さらに前記散水孔17,18からシャワーとして放出される。
【0017】
図1及び図3に示すように、外周側の散水孔17は口径が大きく、中心側の散水孔18は口径が小さく形成されている。なお、口径が大きい散水孔17に対応して散水板16の内側面にはこの大口径の散水孔17からのシャワーが円錐状に広がるようにした手段(図示しない)が設けられており、図4に示すように、散水孔17の出口には、シャワーの円錐状の広がりを許容するための大径部171が形成されている。また、小口径の散水孔18の最大径部は大口径の散水孔17の最小径部より小口径に形成されている。
【0018】
図3に示すように、大口径の散水孔17は散水板16の外周部において環状の領域に配置されている。これらの散水孔17どうしを連結するように、散水板16の外周部には環状をなす1条の溝19が形成されている。この溝19は、散水板16の大径部171の口径より狭い幅で、かつ図4に示すように、断面三角形状に形成されている。
【0019】
次に、以上のように構成されたシャワーヘッド11の作用を説明する。
シャワー使用に際しては、散水孔17,18から湯水がシャワーとして散水される。そして、シャワー終了後、シャワーが止水されて、シャワーヘッド11が、図2に示すように、浴室の壁面1のハンガー2上に斜め下向き状態で支持される。
【0020】
このとき、散水孔17,18内及び放出室23内には湯水が残留されることが多い。そして、このときには、溝19内の湯水が、大きな口径の散水孔17内の残留水を引き出しながら外部に流れ落ち、あるいは溝19に沿って急速に流れ下り、その溝19の下端から外部に流れ落ちる。すなわち、溝19内の上部側及び下部側の湯水は、一部が溝19の上部側から散水孔17内の湯水及び放出室23内の湯水を引き出しながら溝19外に流れ落ちる。残りの一部は、散水孔17内の湯水及び放出室23内の湯水を引き出しながら溝19に沿って下側に流れ下り、溝19の下端部から溝19外に流れ落ちる。
【0021】
従って、上側の散水孔17内の残留水はもちろん、下側の散水孔17内の残留水も、さらに放出室23内の残留水も急速かつスムーズに外側に引き出されて外部に流れ落ちる。よって、短時間のうちに散水孔17内及びヘッド部15内の湯水が排出され、長時間にわたって垂れ落ちる状態を回避できる。
【0022】
小口径の散水孔18内の残留水は、その散水孔18が小口径であるために、散水孔18内に保持される。
従って、本実施形態においては、以下の効果がある。
【0023】
(1)溝19内の湯水によって散水孔17内及び放出室23内の残留水を引き出して、スムーズに排出させることができる。従って、シャワーヘッド11内の残留水が止水後に長時間にわたって垂れ落ちることを防止できる。このため、栓の閉め忘れ等の誤認が生じることを防止できる。
【0024】
(2)そのための構成は、散水板16の外側面に散水孔17の縁部から延びる溝19を形成しただけであるから、特許文献1とは異なり、ショットピーニングのような特殊な加工は不要である。また、特許文献2とは異なり、メッシュのような部品は不要であって、部品点数が増えることはない。また、従って、製造が容易で、構成が簡単である。さらに、特許文献3とは異なり、散水孔17からの排水をスムーズにするために、散水孔17の口径を無闇に大きくしたりする必要はない。
【0025】
(3)溝19が散水孔17間を連結するように形成されているため、1条の溝19内の湯水が各散水孔17内の湯水を引き出しながら溝19の下部側に移動できるため、散水孔17の湯水の引き出しが効果的に行なわれる。
【0026】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様で具体化されてもよい。
図5に示すように、散水孔17間の溝19を2条にして、それらを同心状に配置すること。このようにすれば、2条の溝19を介して残留水がさらにスムーズに排出される。なお、溝19は、3条以上であってもよい。
【0027】
・溝19の幅を散水孔17の最大径と同じにすること。あるいは最大径を越える幅にすること。
図6に示すように、溝19を半円形あるいは半楕円形等の断面形状にすること。つまり、溝19をその底部にコーナが形成されない形状とすること。このようにすれば、残留水がさらにスムーズに排出される。あるいは、図示しないが、溝19の断面形状を四角形にすること。このように、溝19の断面形状を四角形にすれば、溝19の断面積が大きくなって、残留水がスムーズに排出される。
【0028】
図7に示すように、環状の溝19に加えて、各散水孔17から延びる短い溝20を形成すること。この場合、溝20は上下方向に延びてもよいし、散水板16の放射方向に延びてもよい。また、2点鎖線で示すように、溝20を散水板16の外周まで延長してもよい。このようにすれば、残留水の排出がさらにスムーズになる。溝20の断面形状は、前記のように、三角形、四角形、半円形、半楕円形等のいずれでもよい。
【0029】
図8に示すように、環状の溝19に代えて、各散水孔17から延びる短い溝20を形成すること。この場合、溝20は上下方向あるいは散水板16の放射方向に延びるようにするとよい。
【0030】
図9に示すように、各散水孔17から延びる短い溝20を複数形成すること。
・大径の散水孔17の開口部の大径部171を形成しないようにすること。
図10に示すように、溝19(あるいは溝20)を散水孔17に達する深さに形成すること。このように構成すれば、残留水が溝19(あるいは溝20)を介してスムーズにさらに排出される。この図10の場合及び前記図9の場合も、溝19、20の断面形状は、前記のように、三角形、四角形、半円形、半楕円形等のいずれでもよい。
【符号の説明】
【0031】
11…シャワーヘッド、16…散水板、17…散水孔、18…散水孔、19…溝、20…溝。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10