(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1モータからの出力が第1太陽歯車と少なくとも1つの第1遊星歯車と第1内歯歯車とを含む第1の遊星歯車機構により減速され、減速された出力が軸受により支持される回転部材及び第2内歯歯車を介して出力部に伝達され、
第2モータからの出力が第2太陽歯車と少なくとも1つの第2遊星歯車と前記第2内歯歯車とを含む第2遊星歯車機構を介して前記出力部に伝達されるように構成され、
前記回転部材は、前記少なくとも1つの第1遊星歯車における軸方向の端部を支持する第1軸受配置部と、前記少なくとも1つの第2遊星歯車における軸方向の端部を支持する第2軸受配置部と、を有し、前記第2軸受配置部には、前記少なくとも1つの第2遊星歯車の外歯が前記第2太陽歯車の外歯及び前記第2内歯歯車の内歯に噛み合いながら前記少なくとも1つの第2遊星歯車が前記第2内歯歯車に対して相対回転することができるように前記少なくとも1つの第2遊星歯車における前記軸方向の前記端部を支持する軸受が設けられている、電動アクチュエータ。
前記第1モータ及び前記回転部材の軸中心と、前記第2モータ及び前記第2太陽歯車の軸中心と、前記少なくとも1つの第2遊星歯車の公転の軸中心とが同軸に位置するように構成されている、請求項1に記載の電動アクチュエータ。
前記第1遊星歯車がその軸周りに回転不可能となった場合、前記第1モータへの電流の供給が断たれる一方で前記第2モータによって前記第2太陽歯車を回転させるように構成されている、請求項3に記載の電動アクチュエータ。
前記第1遊星歯車及び前記第2遊星歯車の一方がその軸周りに回転不可能となった場合、前記第1モータ及び前記第2モータのうち、回転不可能となった前記遊星歯車に対応する一方のモータへの電流の供給が断たれるとともに、前記第1モータ及び前記第2モータのうちの他方のモータによって対応する太陽歯車を回転させるように構成されている、請求項3に記載の電動アクチュエータ。
入力された駆動力が第1太陽歯車と少なくとも1つの第1遊星歯車と第1内歯歯車とを含む第1の遊星歯車機構により減速され、減速された出力が軸受により支持される回転部材及び第2の内歯歯車を介して出力部に伝達され、
前記駆動力とは別個に入力された駆動力が第2の太陽歯車と少なくとも1つの第2の遊星歯車と前記第2の内歯歯車とを介して出力部に伝達されるように構成され、
前記回転部材は、前記少なくとも1つの第1遊星歯車における軸方向の端部を支持する第1軸受配置部と、前記少なくとも1つの第2遊星歯車における軸方向の端部を支持する第2軸受配置部と、を有し、前記第2軸受配置部には、前記少なくとも1つの第2遊星歯車の外歯が前記第2太陽歯車の外歯及び前記第2内歯歯車の内歯に噛み合いながら前記少なくとも1つの第2遊星歯車が前記第2内歯歯車に対して相対回転することができるように前記少なくとも1つの第2遊星歯車における前記軸方向の前記端部を支持する軸受が設けられている、歯車機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ジャッキスクリューを用いたタイプの電動アクチュエータでは、ジャッキスクリューにおいて固着が生じた場合、固着状態を解除するには機械的な切り離しを行う必要があり、このため、切り離しに遅れ(例えば30m秒程度の遅れ)が生じることがある。したがって、航空機における主要な舵面においては利用されていない。
【0006】
また、クラッチ機構は、カップリング状態からデカップリング状態に機械的に切り離す機構であり、シェアピン機構は、ピン状の部材を物理的に破断させることによって固着状態を解除する機構であり、これらの機構は信頼性という点で必ずしも十分とは言えない。
【0007】
本発明の目的は、遊星歯車機構において固着が生じた場合であっても、引き続き出力部を回転させることができる信頼性に優れた電動アクチュエータ及び歯車機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電動アクチュエータは、第1モータからの出力が第1太陽歯車と少なくとも1つの第1遊星歯車と第1内歯歯車とを含む第1の遊星歯車機構により減速され、減速された出力が軸受により支持される回転部材及び第2内歯歯車を介して出力部に伝達され、第2モータからの出力が第2太陽歯車と少なくとも1つの第2遊星歯車と前記第2内歯歯車とを含む第2遊星歯車機構を介して前記出力部に伝達されるように構成され、前記回転部材は、前記少なくとも1つの第1遊星歯車における軸方向の端部を支持する
第1軸受配置部と、前記少なくとも1つの第2遊星歯車における軸方向の端部を支持する
第2軸受配置部と、を有
し、前記第2軸受配置部には、前記少なくとも1つの第2遊星歯車の外歯が前記第2太陽歯車の外歯及び前記第2内歯歯車の内歯に噛み合いながら前記少なくとも1つの第2遊星歯車が前記第2内歯歯車に対して相対回転することができるように前記少なくとも1つの第2遊星歯車における前記軸方向の前記端部を支持する軸受が設けられている。
【0009】
本発明では、固着(ジャミング)が生じることによって第2モータからの出力が出力部に伝達されない場合であっても、第1モータからの減速された出力が回転部材及び内歯歯車を介して出力部に伝達される。また、固着が生じることによって第1モータの出力が出力部に伝達されない場合であっても、第2モータからの出力が太陽歯車と遊星歯車と内歯歯車とを含む遊星歯車機構を介して出力部に伝達される。したがって、本発明では、固着が生じた場合であっても、引き続き出力部を回転させることができる。
【0010】
前記電動アクチュエータにおいて、前記第1モータ及び前記回転部材の軸中心と、前記第2モータ及び前記
第2太陽歯車の軸中心と、前記
少なくとも1つの第2遊星歯車の公転の軸中心とが同軸に位置するように構成されているのが好ましい。
【0011】
この構成では、電動アクチュエータにおいて、第1モータからの出力を出力部に伝達する経路と、第2モータからの出力を出力部に伝達する経路とを形成するに際して、これらの経路を形成する部材の軸中心が互いに同軸とされているので、電動アクチュエータの径方向の寸法をコンパクトにすることができる。したがって、この構成では、固着が生じた場合であっても引き続き出力部を回転させることができるという機能を確保しつつ、コンパクト化することができる。
【0012】
前記電動アクチュエータ
において、 前記第1太陽歯車は、前記第1モータによって回転
し、
前記少なくとも1つの第1遊星歯車は、前記第1太陽歯車に噛み合
い、
前記第1内歯歯車は、前記第1遊星歯車が噛み合う内歯を有し、回転が規制され、前記
第2太陽歯車は、前記第2モータによって回転
し、前記
少なくとも1つの第2遊星歯車は、前記第2太陽歯車に噛み合
い、前記
第2内歯歯車は、前記第2遊星歯車が噛み合う内歯を有
し、前記回転部材は、前記第1遊星歯車が前記第1太陽歯車の軸周りに公転するのに伴って回転するように構成されており、前記第2内歯歯車は、前記回転部材の回転に伴って回転するように構成されており、前記出力部は、前記第2遊星歯車が前記第2太陽歯車の軸周りに公転するのに伴って回転するように構成されているのが好ましい。
【0013】
この構成では、第1太陽歯車、第1遊星歯車及び第1内歯歯車を備える遊星歯車機構と、第2太陽歯車、第2遊星歯車、回転部材及び第2内歯歯車を備える遊星歯車機構とが設けられている。そして、第1内歯歯車の回転が規制されているとともに、第1内歯歯車の内歯に噛み合う第1遊星歯車の公転に伴って回転部材が回転するように構成され、回転部材の回転に伴って第2内歯歯車が回転するように構成されている。したがって、何れか一方の遊星歯車機構において固着(ジャミング)が生じて遊星歯車がその軸周りに回転不可能となった場合であっても、固着が生じてない遊星歯車機構に接続されたモータを用いて引き続き出力部を回転させることができる。また、何れか一方の遊星歯車機構において固着が生じた場合には、何れのモータも動作させなくても、出力部に作用する外力(例えば重力、風力など)に応じて出力部を自由に回転させることができる。したがって、本構成の電動アクチュエータは、信頼性に優れている。また、この構成では、固着が生じていない正常時には、いわゆる速度サミングによって出力部を高速で動作させることができる。具体的には次の通りである。
【0014】
固着によって第1遊星歯車がその軸周りに回転不可能となった場合、第1遊星歯車は、回転が規制された第1内歯歯車の内歯に噛み合っているので、第1太陽歯車の軸周りを公転することができなくなり、その結果、回転部材及び第2内歯歯車を回転させることができなくなる。その一方で、固着が生じていない第2遊星歯車は、第2太陽歯車の軸周りを公転することができるので、出力部は、この第2遊星歯車の公転に伴った回転が可能な状態を維持できる。すなわち、出力部は、第1遊星歯車の固着が生じた直後であってもこの固着に邪魔されずにタイムラグがほとんどない状態で引き続き回転することができる。
【0015】
また、固着によって第2遊星歯車がその軸周りに回転不可能となった場合、第2遊星歯車は、それぞれの軸周りに回転しながら第2太陽歯車の軸周りを公転することはできなくなる。しかし、第2遊星歯車は、第2太陽歯車との噛み合い位置が変わらず且つ第2内歯歯車との噛み合い位置が変わらない状態を維持しながら、第2内歯歯車を引き連れて第2太陽歯車の軸周りを公転することはできる。したがって、出力部は、この公転に伴った回転が可能な状態を維持できる。すなわち、出力部は、第2遊星歯車の固着が生じた直後であってもこの固着に邪魔されずにタイムラグがほとんどない状態で引き続き回転することができる。
【0016】
また、何れの遊星歯車機構にも固着が生じていない正常時において、第1モータによって与えられる動力は、第1太陽歯車、第1遊星歯車、回転部材及び第2内歯歯車の順に伝達され、これにより、第2内歯歯車を回転させることができる。このとき、第2内歯歯車の内歯に噛み合う第2遊星歯車は、第2内歯歯車の回転に伴って第2内歯歯車に引き連れられて第2太陽歯車の軸周りを公転することになる。一方、第2モータによって与えられる動力は、第2太陽歯車及び第2遊星歯車の順に伝達され、これにより、第2遊星歯車をその軸周りに自転させながら第2太陽歯車の軸周りに公転させることができる。すなわち、第2遊星歯車は、第1モータによる第2内歯歯車の回転に伴った公転の速度と、第2モータによる公転の速度とが足し合わされた回転速度(いわゆる速度サミングされた回転速度)で回転することが可能になる。したがって、第2遊星歯車の公転に伴って回転するように構成された出力部は、速度サミングされた回転速度で回転することになるので、速度サミングされていない従来の構成に比べて出力部を高速で動作させることができる。
【0017】
上記のように何れか一方の遊星歯車機構において固着が生じた場合には、例えば以下のようにしてモータを制御することができる。
【0018】
例えば、前記電動アクチュエータにおいて、前記第1遊星歯車がその軸周りに回転不可能となった場合、前記第1モータへの電流の供給が断たれる一方で前記第2モータによって前記第2太陽歯車を回転させるように構成されていてもよい。
【0019】
この構成では、第1遊星歯車がその軸周りに回転不可能となった場合において、その時点の状況に適した位置に出力部を配置することができ、しかも、無駄な電力消費を抑制することができる。具体的には次の通りである。
【0020】
第1遊星歯車がその軸周りに回転不可能となった場合であっても、第2遊星歯車は、第2太陽歯車の回転に伴って第2太陽歯車の軸周りを公転することができる。したがって、第2モータによって第2太陽歯車を回転させることによって、第2遊星歯車は、第2太陽歯車の軸周りを公転することができる。よって、出力部はこの第2遊星歯車の公転に伴って回転することができる。これにより、その時点の状況に適した位置に出力部を配置することができる。また、第1遊星歯車がその軸周りに回転不可能となった場合、第1遊星歯車は、第1太陽歯車の軸周りを公転することができなくなるので、第1太陽歯車もその軸周りに回転することができない。仮に、第1モータに電流を供給しても第1太陽歯車は回転しない。したがって、第1モータへの電流の供給を断つことによって無駄な電力が消費されるのを抑制できる。
【0021】
また、前記電動アクチュエータにおいて、前記第1遊星歯車及び前記第2遊星歯車の一方がその軸周りに回転不可能となった場合、前記第1モータ及び前記第2モータのうち、回転不可能となった前記遊星歯車に対応する一方のモータへの電流の供給が断たれるとともに、前記第1モータ及び前記第2モータのうちの他方のモータによって対応する太陽歯車を回転させるように構成されていてもよい。
【0022】
この構成では、第1遊星歯車がその軸周りに回転不可能となった場合であっても、上述したように、第2モータによって第2太陽歯車を回転させることによって第2遊星歯車を第2太陽歯車の軸周りに公転させることができる。したがって、その時点の状況に適した位置に出力部を配置することができる。しかも、この場合には、第1モータへの電流の供給を断つことによって無駄な電力が消費されるのを抑制できる。
【0023】
また、この構成では、第2遊星歯車がその軸周りに回転不可能となった場合であっても、その時点の状況に適した位置に出力部を配置することができ、しかも、無駄な電力消費を抑制することができる。具体的には次の通りである。
【0024】
第2遊星歯車がその軸周りに回転不可能となった場合であっても、第2遊星歯車は、第2太陽歯車との噛み合い位置が変わらず且つ第2内歯歯車との噛み合い位置が変わらない状態を維持しながら第2太陽歯車の軸周りを公転することができる。このような公転を生じさせる動力伝達経路は2つ存在する。すなわち、1つ目の動力伝達経路では、第1モータによって与えられる動力が第1太陽歯車、第1遊星歯車、回転部材及び第2内歯歯車の順に伝達されて第2内歯歯車が回転し、この第2内歯歯車の回転に伴って第2遊星歯車が第2太陽歯車の軸周りを公転する。2つ目の動力伝達経路では、第2モータによって与えられる動力が第2太陽歯車に伝達されて第2太陽歯車が回転し、この第2太陽歯車の回転に伴って第2遊星歯車が第2太陽歯車の軸周りを公転する。
【0025】
したがって、第2遊星歯車がその軸周りに回転不可能となった場合であっても、第1モータによって第1太陽歯車を回転させることによって第2遊星歯車を公転させるか、第2モータによって第2太陽歯車を回転させることによって第2遊星歯車を公転させるか、第1モータ及び第2モータの両方によって第1太陽歯車及び第2太陽歯車を回転させることによって第2遊星歯車を公転させることができる。よって、出力部は第2遊星歯車の公転に伴って回転することができる。これにより、その時点の状況に適した位置に出力部を配置することができる。
【0026】
前記電動アクチュエータにおいて、前記第1モータ及び前記第2モータのうちの一方のモータは、前記出力部が何れか一方の方向に回転するように制御され、前記第1モータ及び前記第2モータのうちの他方のモータは、前記一方の方向とは反対方向に前記出力部に対して力が作用するように制御されてもよい。
【0027】
出力部が何れか一方の方向に回転するように一方のモータが制御される場合において、出力部又はこの出力部に接続される動作部材(例えば航空機の舵面稼働部)に対して、前記一方の方向に大きな外力(例えば気流などによる外力)が加わると、出力部に大きな負荷がかかることがある。そこで、この構成では、他方のモータは、前記一方の方向とは反対方向に出力部に対して力が作用するように制御されるので、出力部及び動作部材が外力によって過度に大きな回転速度で回転するのを抑制できる。これにより、出力部及び動作部材にかかる負荷を減少させることができる。
【0028】
前記電動アクチュエータは、前記第1内歯歯車及び前記回転部材を収容するケースを備え、前記第1内歯歯車は、前記ケースに対する回転が規制されており、前記回転部材は、前記軸受によって前記ケースに対して回転可能に支持されているのが好ましい。
【0029】
この構成では、第1内歯歯車がケースに対する回転が規制されるとともに回転部材が軸受によってケースに対して回転可能に支持されることにより、第1内歯歯車をケースに対して回転させない一方で、回転部材をケース及び第1内歯歯車に対して回転させることができる。
【0030】
前記電動アクチュエータにおいて、前記回転部材は、
前記少なくとも1つ
の第1遊星歯車が前記回転部材に結合されていることによって前記第1遊星歯車の公転に伴って回転するように構成され、前記出力部は、
前記少なくとも1つ
の第2遊星歯車が前記出力部に結合されていることによって前記第2遊星歯車の公転に伴って回転するように構成されているのが好ましい。
【0031】
この構成では、少なくとも1つの第1遊星歯車が回転部材に結合されていることによって第1遊星歯車の公転に伴って回転部材を回転させることができ、少なくとも1つの第2遊星歯車が出力部に結合されていることによって第2遊星歯車の公転に伴って出力部を回転させることができる。特に、第1遊星歯車が別の部材を介さずに回転部材に対して直接結合され、第2遊星歯車が別の部材を介さずに出力部に対して直接結合されている場合には、部品点数が増加して構造が複雑になるのを抑制できる。
【0032】
本発明の歯車機構は、入力された駆動力が第1太陽歯車と少なくとも1つの第1遊星歯車と第1内歯歯車とを含む第1の遊星歯車機構により減速され、減速された出力が軸受により支持される回転部材及び第2の内歯歯車を介して出力部に伝達され、前記駆動力とは別個に入力された駆動力が第2の太陽歯車と少なくとも1つの第2の遊星歯車と前記第2の内歯歯車とを介して出力部に伝達されるように構成され、前記回転部材は、前記少なくとも1つの第1遊星歯車における軸方向の端部を支持する
第1軸受配置部と、前記少なくとも1つの第2遊星歯車における軸方向の端部を支持する
第2軸受配置部と、を有
し、前記第2軸受配置部には、前記少なくとも1つの第2遊星歯車の外歯が前記第2太陽歯車の外歯及び前記第2内歯歯車の内歯に噛み合いながら前記少なくとも1つの第2遊星歯車が前記第2内歯歯車に対して相対回転することができるように前記少なくとも1つの第2遊星歯車における前記軸方向の前記端部を支持する軸受が設けられている。
【0033】
本発明では、固着が生じることによって、例えば遊星歯車がその軸周りに回転不可能となった場合であっても、入力された駆動力が回転部材及び内歯歯車を介して出力部に伝達される。また、固着が生じることによって前記駆動力が出力部に伝達されない場合であっても、前記駆動力とは別個に入力された駆動力が太陽歯車と遊星歯車と内歯歯車とを介して出力部に伝達される。したがって、本発明では、固着が生じた場合であっても、引き続き出力部を回転させることができる。また、本発明では、固着が生じていない正常時においては、別々に入力される2つの駆動力が2つの動力伝達経路を通じて伝達されることによって出力部を動作させることができる(2入力・1出力の減速機構)。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、固着が生じた場合であっても、引き続き出力部を回転させることができるので、信頼性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の一実施形態に係る電動アクチュエータ1について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電動アクチュエータ1における動力伝達図である。
【0037】
図1に示すように、電動アクチュエータ1は、第1モータ11と、第2モータ21と、歯車機構70と、出力部30と、ケース40とを備えている。第1モータ11、第2モータ21及び歯車機構70の一部又は全部は、ケース40内に収容されている。歯車機構70は、減速機構10と、遊星歯車機構20とを備えている。
【0038】
遊星歯車機構20は、太陽歯車22と、太陽歯車22に噛み合う1つ又は複数の遊星歯車23と、遊星歯車23に噛み合う内歯を有する内歯歯車24Aと、回転部材24Bとを含む。回転部材24Bは、軸受B8によって例えばケース40に対して回転可能に支持されている。内歯歯車24Aは、回転部材24Bの回転に伴って回転するように構成されている。本実施形態では、内歯歯車24Aと回転部材24Bとは同じ方向に一体的に回転する。
【0039】
内歯歯車24Aと回転部材24Bは、歯車部材24を構成している。この歯車部材24は、例えば後述する
図9に示すように、内歯歯車24Aと回転部材24Bとが一体に成形されたものであってもよく、内歯歯車24Aと回転部材24Bとが別々に成形され、これらが互いに連結されたものであってもよい。
【0040】
減速機構10は、第1モータ11からの出力を減速して回転部材24Bに伝達することによって回転部材24Bを回転させることができる。減速機構10は、例えば、遊星歯車機構を有する減速機、平歯車を組み合わせた歯車機構を有する減速機などを例示することができるが、これらに限られず、第1モータ11からの出力を減速して回転部材24Bに伝達できるものであればよい。後述する
図2〜
図11に示す電動アクチュエータ1の具体例では、減速機構10が遊星歯車機構である場合を例示している。
【0041】
出力部30は、遊星歯車23が太陽歯車22の軸周りに公転するのに伴って回転するように構成されている。
【0042】
電動アクチュエータ1では、第1モータ11からの出力が減速機構10において減速され、この減速された出力が回転部材24Bに伝達されることによって回転部材24Bが回転する。回転部材24Bが回転すると、この回転に連動して内歯歯車24Aが回転する。内歯歯車24Aが回転すると、この内歯歯車24Aの内歯に噛み合う遊星歯車23が太陽歯車22の軸A0周りに公転する。そして、遊星歯車23の公転の動作が出力部30に伝達されることによって出力部30が回転する。つまり、第1モータ11からの減速された出力が軸受B8により支持される回転部材24Bと、内歯歯車24Aとを介して出力部30に伝達される。
【0043】
また、電動アクチュエータ1では、第2モータ21からの出力が太陽歯車22に伝達されることによって太陽歯車22が軸A0周りに回転する。太陽歯車22が回転すると、この太陽歯車22と内歯歯車24Aの内歯とに噛み合う遊星歯車23が太陽歯車22の軸A0周りに公転する。そして、遊星歯車23の公転の動作が出力部30に伝達されることによって出力部30が回転する。つまり、第2モータ21からの出力が、太陽歯車22と、遊星歯車23と、内歯歯車24Aとを含む遊星歯車機構20を介して出力部30に伝達される。
【0044】
本実施形態では、例えば遊星歯車機構20において固着(ジャミング)が生じることによって第2モータ21からの出力が出力部30に伝達されない場合であっても、回転部材24Bは軸受B8によってケース40に対して回転可能に支持されているので、第1モータ11からの出力は、回転部材24B及びこれと一体の内歯歯車24Aを介して出力部30に伝達される。また、例えば減速機構10において固着が生じることによって第1モータ11の出力が出力部30に伝達されない場合であっても、第2モータ21からの出力が太陽歯車22と遊星歯車23と内歯歯車24Aとを含む遊星歯車機構20を介して出力部30に伝達される。したがって、本実施形態では、固着が生じた場合であっても、引き続き出力部30を回転させることができる。
【0045】
また、本実施形態では、電動アクチュエータ1は、第1モータ11の軸中心及び回転部材24Bの軸中心と、第2モータ21の軸中心、太陽歯車22の軸中心、及び遊星歯車23の公転の軸中心とが同軸(軸A0)に位置するように構成されている。この場合には、電動アクチュエータ1において、第1モータ11からの出力を出力部30に伝達する経路と、第2モータ21からの出力を出力部30に伝達する経路とを形成するに際して、電動アクチュエータ1の径方向の寸法をコンパクトにすることができる。したがって、本実施形態では、固着が生じた場合であっても引き続き出力部30を回転させることができるという機能を確保しつつ、コンパクト化することができる。
【0046】
以下、本実施形態の電動アクチュエータ1についてさらに具体的に説明するが、本発明の電動アクチュエータ1は、以下の具体例に限定されるものではない。
【0047】
[電動アクチュエータの全体構造]
図2、
図3及び
図4に示すように、本実施形態に係る電動アクチュエータ1は、ケース40と、減速機構10(第1の遊星歯車機構10)と、遊星歯車機構20(第2の遊星歯車機構20)と、第1モータ11と、第2モータ21と、出力部30と、コントローラ51とを備えている。
【0048】
図3に示すように、電動アクチュエータ1は、取付対象機器2に設けられる。取付対象機器2は、機器本体3と、動作部材4とを備える。電動アクチュエータ1は、動作部材4を機器本体3に対して相対移動させることができる。具体的には、例えばケース40が機器本体3に取り付けられるとともに、出力部30が動作部材4に取り付けられる。そして、出力部30がケース40に対して相対移動することによって動作部材4が機器本体3に対して相対移動する。
【0049】
本実施形態では、取付対象機器2は、飛行機、ヘリコプターなどの航空機であり、機器本体3は翼本体であり、動作部材4は舵面稼働部(動翼)である。動作部材4は、動作部材4の表面の少なくとも一部を構成する舵面5を有している。この場合、出力部30がケース40に対して相対移動することにより、翼本体(機器本体3)に対する舵面稼働部(動作部材4)の舵面5の角度を変えることができる。動作部材4は、電動アクチュエータ1の出力部30だけでなく、それ以外のところでも機体の構造部分と結合されていてもよい。
【0050】
本実施形態の電動アクチュエータ1は、第1の遊星歯車機構10と、第2の遊星歯車機構20とを備えているので、電動アクチュエータ1には2つの動力伝達経路が設けられている。電動アクチュエータ1では、何れか一方の遊星歯車機構において固着(ジャミング)が生じて遊星歯車がその軸周りに回転不可能となった場合であっても、タイムラグがほとんどない状態で引き続き出力部30を回転させることができるので、電動アクチュエータ1全体として固着状態になるのが防止できる。また、電動アクチュエータ1では、速度サミング式の遊星歯車機構(第2の遊星歯車機構20)を備えているので、固着が生じていない正常時には出力部30を高速で動作させることができる。遊星歯車機構10,20の詳細については後述する。
【0051】
第1モータ11及び第2モータ21のそれぞれは、電流が供給されることで回転方向の駆動力を発生させる駆動源として設けられた電動モータである。本実施形態では、第1モータ11及び第2モータ21の一方又は両方は、回転方向を反転可能(正逆回転可能)であり、コントローラ51からの指令に基づいてフィードバック制御が行われる。各モータは、ハウジング内に設けられた図略のステータ、ロータなどを備える。
【0052】
電動アクチュエータ1は、出力部30の位置を検知するための位置センサ61を備えている(
図11参照)。位置センサ61としては、例えば角度センサ(回転角センサ)などを用いることができる。角度センサは、回転する物体と回転しない物体との間の回転の差分を検出するセンサである。本実施形態では、角度センサは、例えば回転する出力部30とケース40などの回転しない物体との間の回転の差分を検出する。角度センサとしては、例えばレゾルバ、ロータリーエンコーダなどのセンサが挙げられるが、これらに限られない。
【0053】
図4に示すコントローラ51は、電動アクチュエータ1の動作を制御する。コントローラ51は、外部信号、位置センサ61などから入力される信号に基づいて、第1モータ11及び第2モータ21の回転を制御する。コントローラ51は、必ずしも電動アクチュエータ1に設けられていなくてもよく、例えば上位システム50に設けられていてもよい。
【0054】
上位システム50は、例えば取付対象機器2に設けられた制御システムを例示できるが、これに限られない。
図4に示す具体例では、上位システム50は、フライトコントロールシステム(FCS)を示しており、コントローラ51は、アクチュエータコントローラと、モータドライバと、フィードバックループとを有している。例えば位置センサ61(角度センサ)の指示値と、上位システム50からの指令値との差を用いてフィードバックループが構成されている。
【0055】
[ケース]
ケース40は、第1モータ11と、第2モータ21と、第1の遊星歯車機構10と、第2の遊星歯車機構20とが一体に連結された状態でこれらを保持する機能を有する。本実施形態では、ケース40は、電動アクチュエータ1の外面を構成している。
【0056】
図2及び
図5に示すように、本実施形態では、ケース40は、第1部分41と、第2部分42と、連結部材43,44とを含む。これらの部分は、第1モータ11と第2モータ21との間において、モータの軸方向に沿って並んでいる。第1部分41と第2部分42は、第1の遊星歯車機構10及び第2の遊星歯車機構20を収容するための収容空間を形成している。連結部材43は、第1モータ11と第1部分41との間に介在してこれらを連結しており、連結部材44は、第2モータ21と第2部分42との間に介在してこれらを連結している。本実施形態では、第1部分41と第2部分42は、単一の部材によって構成されているが、これに限られず、別々に成形された部材によって構成されていてもよい。また、連結部材43,44は省略することもでき、この場合には、第1部分41が第1モータ11に直接連結され、第2部分42が第2モータ21に直接連結される。
【0057】
第1部分41は、主として第1の遊星歯車機構10を収容する収容空間を区画する筒状の収容部41Aと、第1部分41を連結部材43に接続するためのフランジ部41Bとを備える。第1部分41には、後述する第1内歯歯車14の突出片14Bが配置される凹部41Cが形成されている。第2部分42は、主として第2の遊星歯車機構20を収容する筒状の収容部42Aと、第2部分42を連結部材44に接続するためのフランジ部42Bとを備える。
【0058】
第1部分41のフランジ部41Bには複数の挿通孔が設けられ、連結部材43にはこれらと対応する位置に複数の挿通孔が設けられている。これらの挿通孔に挿通されたボルトは、第1モータ11に設けられた雌ねじに螺合される。これにより、第1部分41が第1モータ11に連結される。同様に、第2部分42のフランジ部42Bには複数の挿通孔が設けられ、連結部材44にはこれらと対応する位置に複数の挿通孔が設けられている。これらの挿通孔に挿通されたボルトは、第2モータ21に設けられた雌ねじに螺合される。これにより、第2部分42が第2モータ21に連結される。
【0059】
ケース40には、電動アクチュエータ1を取付対象機器2の機器本体3に固定するための複数のブラケット(クレビス)45,46が設けられている。本実施形態では、複数のブラケット45,46は、ケース40の側面から同じ方向に突出しており、例えばボルトなどの固定部材が挿通される挿通孔を有している。
図3に示す具体例では、ブラケット45,46は機器本体3に設けられたブラケット3Aに固定される。なお、ケース40には単一のブラケットのみが設けられていてもよい。
【0060】
[遊星歯車機構]
第1の遊星歯車機構10は、第1モータ11の出力側に設けられた減速機構10であり、第2の遊星歯車機構20は、第2モータ21の出力側に設けられた減速機構20である。
図4〜
図11に示すように、第1の遊星歯車機構10は、第1太陽歯車12と、複数の第1遊星歯車13と、第1内歯歯車14(リングギア14)とを備える。第2の遊星歯車機構20は、第2太陽歯車22と、複数の第2遊星歯車23と、歯車部材24とを備える。歯車部材24は、第2内歯歯車24A(リングギア24A)と、回転部材24Bとを備える。
【0061】
図5、
図6及び
図11に示すように、本実施形態では、第1太陽歯車12、第2太陽歯車22、第1内歯歯車14、第2内歯歯車24A、回転部材24B及び出力部30のそれぞれの軸中心(軸A0)は、同軸に配置されている(同一線上に位置している)。また、本実施形態では、複数の第1遊星歯車13における公転の軸中心、及び複数の第2遊星歯車23における公転の軸中心は、軸A0と同軸に配置されている。
【0062】
図1、
図5及び
図6に示すように、本実施形態では、第1の遊星歯車機構10は、小歯車15とこれよりも径の大きな大歯車16を介して第1モータ11に接続されている。第2の遊星歯車機構20は、小歯車25とこれよりも径の大きな大歯車26を介して第2モータ21に接続されている。小歯車15と大歯車16は、第1モータ11の出力を減速して第1の遊星歯車機構10に伝える減速機構として機能する。また、小歯車25と大歯車26は、第2モータ21の出力を減速して第2の遊星歯車機構20に伝える減速機構として機能する。
【0063】
第1モータ11のシャフト11Sは、小歯車15に設けられた貫通孔15Cに挿通されている。シャフト11Sの外側面にはスプラインが形成されている。小歯車15に設けられた貫通孔15Cの内側面には溝が形成されており、これらのスプラインと溝とが噛み合う。小歯車15の外側面に形成された外歯15Gは、大歯車16の外側面に形成された外歯16Gと噛み合う。
【0064】
第2モータ21のシャフト21Sは、小歯車25に設けられた貫通孔25Aに挿通されている。シャフト21Sの外側面にはスプラインが形成されている。小歯車25に設けられた貫通孔25Aの内側面には溝が形成されており、これらのスプラインと溝とが噛み合う。小歯車25の外側面に形成された外歯25Gは、大歯車26の外側面に形成された外歯26Gと噛み合う。
【0065】
第1太陽歯車12は、その一端部が大歯車16の中心に形成された貫通孔に挿通され、大歯車16と一体化されている。これにより、大歯車16の回転に伴って第1太陽歯車12も回転する。したがって、第1モータ11のシャフト11Sの回転は、小歯車15及び大歯車16に伝達され、第1太陽歯車12に伝達される。すなわち、第1太陽歯車12は、第1モータ11によって回転する。
【0066】
第2太陽歯車22は、その一端部が大歯車26の中心に形成された貫通孔に挿通され、大歯車26と一体化されている。これにより、大歯車26の回転に伴って第2太陽歯車22も回転する。したがって、第2モータ21のシャフト21Sの回転は、小歯車25及び大歯車26に伝達され、第2太陽歯車22に伝達される。すなわち、第2太陽歯車22は、第2モータ21によって回転する。
【0067】
なお、第1の遊星歯車機構10側において小歯車15及び大歯車16を省略してもよく、この場合には、第1モータ11のシャフト11Sは第1太陽歯車12に直接接続される。同様に、第2の遊星歯車機構20側において小歯車25及び大歯車26を省略してもよく、この場合には、第2モータ21のシャフト21Sは第2太陽歯車22に直接接続される。
【0068】
図5及び
図11に示すように、複数の第1遊星歯車13のそれぞれは、自身の軸A1周りに自転し、且つ、第1太陽歯車12の軸A0周りを公転する。本実施形態では、第1の遊星歯車機構10は、2つの第1遊星歯車13を備えているが、これに限られず、3つ以上の第1遊星歯車13を備えていてもよい。各第1遊星歯車13の外周面に形成された外歯13Gは、第1太陽歯車12の外周面に形成された外歯12Gに噛み合う。
【0069】
複数の第2遊星歯車23のそれぞれは、自身の軸A2周りに自転し、且つ、第2太陽歯車22の軸A0周りを公転する。本実施形態では、第2の遊星歯車機構20は、2つの第2遊星歯車23を備えているが、これに限られず、3つ以上の第2遊星歯車23を備えていてもよい。各第2遊星歯車23の外周面に形成された外歯23Gは、第2太陽歯車22の外周面に形成された外歯22Gに噛み合う。
【0070】
図5、
図6及び
図8に示すように、第1内歯歯車14は、複数の第1遊星歯車13の外側に配置されている。本実施形態では、第1内歯歯車14は、複数の第1遊星歯車13の周りを囲む略円筒形状を有し、軸方向の両側が開口している。第1内歯歯車14の内周面には、複数の第1遊星歯車13の外歯13Gに噛み合う内歯14Gが形成されている。
【0071】
第1内歯歯車14は、ケース40に対する回転が規制されている。言い換えると、第1内歯歯車14は、ケース40に対して相対回転しない。第1内歯歯車14の回転を規制する手段としては、例えば
図5に示す手段を挙げることができるが、これに限られない。
【0072】
図5及び
図8に示す具体例では、第1内歯歯車14は、円筒形状の歯車本体14Aと、歯車本体14Aの側面から径方向外側に突出した突出片14Bとを備える。上述したように、ケース40の第1部分41には、第1内歯歯車14の突出片14Bが配置される凹部41Cが形成されている。凹部41Cは、突出片14Bの形状に沿った内側面を有する。突出片14Bが凹部41C内に配置されることにより、第1内歯歯車14の周方向の動きが規制されるので、第1内歯歯車14はケース40に対する回転が規制される。
【0073】
また、突出片14Bは貫通孔14Cを有している。小歯車15は、外歯15Gを有する本体部15Aと、軸方向に平行で本体部15Aから突出片14B側に延びる円柱状の延出部15Bとを有する。この延出部15Bは、突出片14Bの貫通孔14Cに挿通されている。小歯車15の貫通孔15Cには、上述したように第1モータ11のシャフト11Sが挿通されている。したがって、小歯車15の延出部15Bによって第1内歯歯車14の周方向の動きが規制されるので、第1内歯歯車14は、ケース40に対する回転が規制されている。
【0074】
図5、
図6及び
図9に示すように、本実施形態における歯車部材24は、第2内歯歯車24Aと回転部材24Bとが一体成形されたものである。したがって、第2内歯歯車24Aは、回転部材24Bの回転に伴って回転部材24Bと同じ方向に回転する。なお、第2内歯歯車24Aと回転部材24Bとは、一体成形されたものでなくてもよく、別々に成形された後、互いに連結されたものであってもよい。
【0075】
第2内歯歯車24Aは、複数の第2遊星歯車23と噛み合って複数の第2遊星歯車23に対して相対回転する。第2内歯歯車24Aは、複数の第2遊星歯車23の外側に配置されている。第2内歯歯車24Aは、複数の第2遊星歯車23の周りを囲む略円筒形状を有する。第2内歯歯車24Aにおける第1内歯歯車14側とは反対側は開口している。第2内歯歯車24Aの内周面には、複数の第2遊星歯車23の外歯に噛み合う内歯24Gが形成されている。
【0076】
回転部材24Bは、第2内歯歯車24Aと第1内歯歯車14との間に設けられている。回転部材24Bは、第2内歯歯車24Aから第1内歯歯車14側に延びる略円柱形状を有する。回転部材24Bは、複数の第1遊星歯車13の公転を第2内歯歯車24Aに伝達する機能を有する。
【0077】
回転部材24Bには、第1太陽歯車12の一端部12A、各第1遊星歯車13の一端部13A、第2太陽歯車22の一端部22A及び各第2遊星歯車23の一端部23Aが配置される。回転部材24Bは、軸受配置部241と、軸受配置部242と、軸受配置部243とを有する。
【0078】
軸受配置部241は、第1太陽歯車12及び第2太陽歯車22の軸A0上に設けられている。軸受配置部241には、第1太陽歯車12の一端部12Aを支持する軸受B1が配置されるとともに、第2太陽歯車22の一端部22Aを支持する軸受B2が配置される。本実施形態では、軸受配置部241は、回転部材24Bを軸A0方向に貫通する貫通孔によって構成されているが、これに限られず、軸受配置部241における軸受B1が配置される部分と、軸受配置部241における軸受B2が配置される部分とは連通していなくてもよい。
【0079】
第1太陽歯車12の他端部(第1太陽歯車12における大歯車16側の端部)には図略の軸受が設けられており、この軸受と軸受B1は、第1太陽歯車12をその軸A0周りに回転可能に支持している。第2太陽歯車22の他端部22B(第2太陽歯車22における大歯車26側の端部22B)には軸受B6が設けられており、この軸受B6と軸受B2は、第2太陽歯車22をその軸A0周りに回転可能に支持している。
【0080】
軸受配置部242は、複数の第1遊星歯車13のそれぞれの軸A1上に設けられており、対応する第1遊星歯車13の一端部13Aを支持する軸受B3が配置される。本実施形態では、軸受配置部242は、回転部材24Bにおける第1遊星歯車13側の端面から軸A1方向に凹む凹部によって構成されているが、これに限られない。
【0081】
各第1遊星歯車13の他端部(各第1遊星歯車13における大歯車16側の端部)には図略の軸受が設けられており、この軸受と軸受B3は、各第1遊星歯車13をその軸A1周りに自転可能に支持している。
【0082】
その一方で、軸受B3は、軸受配置部242(凹部242)に嵌合されており、回転部材24Bに対して回転部材24Bの周方向への移動が規制されている。したがって、複数の第1遊星歯車13が第1太陽歯車12の軸A0周りに公転すると、この公転に連動して回転部材24Bも軸A0周りに回転する。回転部材24Bは第2内歯歯車24Aと一体であるので、回転部材24Bが軸A0周りに回転すると第2内歯歯車24Aも軸A0周りに回転する。これにより、回転部材24Bは、複数の第1遊星歯車13の公転を第2内歯歯車24Aに伝達することができる。
【0083】
軸受配置部243は、複数の第2遊星歯車23のそれぞれの軸A2上に設けられており、対応する第2遊星歯車23の一端部23Aを支持する軸受B4が配置される。本実施形態では、軸受配置部243は、回転部材24Bにおける第2遊星歯車23側の端面から軸A2方向に凹む凹部によって構成されているが、これに限られない。
【0084】
図6に示すように、各第2遊星歯車23の一端部23A(具体的には、各第2遊星歯車23の一端部23Aが挿通された軸受B4)は、回転部材24Bに設けられた軸受B5によって回転部材24Bに対して回転可能なように支持されている。これにより、複数の第2遊星歯車23は、その外歯23Gが第
2太陽歯車22の外歯22G及び第2内歯歯車24の内歯24Gに噛み合いながら、第
2太陽歯車22の軸A0周りに公転することができるとともに、第2内歯歯車24に対して相対回転することができる。
【0085】
各第2遊星歯車23の他端部23B(各第2遊星歯車23における大歯車26側の端部23B)は、後述する出力部30に設けられた軸受B7(
図4参照)によって支持されている。すなわち、この軸受B7と軸受B4は、各第2遊星歯車23をその軸A2周りに自転可能に支持している。
【0086】
電動アクチュエータ1は、ケース40と第2内歯歯車24との間に設けられた軸受B8を備える。歯車部材24における回転部材24Bは、軸受B8によってケース40に対して回転可能に支持されている。歯車部材24における第2内歯歯車24A及び回転部材24Bは、複数の第1遊星歯車13が第1太陽歯車12の軸A0周りに公転するのに伴って同じ回転数で回転する。
【0087】
[出力部]
出力部30は、複数の第2遊星歯車23が第2太陽歯車22の軸周りに公転するのに伴って回転するように構成されている。
図4、
図5及び
図10に示す具体例では、出力部30は、ケース40内に配置された本体部30Aと、本体部30Aの外周面から径方向外側に延出する延出部30Bとを備える。延出部30Bの一部又は全部はケース40に設けられた溝G(
図2及び
図11参照)を通じてケース40外に突出している。ケース40の溝Gは、出力部30の回転範囲内においてケース40が延出部30Bの回転の邪魔にならないような範囲に設けられている。
【0088】
出力部30の本体部30Aは、第2内歯歯車24Aと大歯車26との間に配置されている。本実施形態では、本体部30Aは略円柱形状を有する。本体部30Aは、第2太陽歯車22の他端部22Bが挿通される貫通孔31を有する。
【0089】
出力部30とケース40との間には軸受B9,B10が設けられている。これらの軸受B9,B10は、ケース40に対して回転可能なように出力部30の本体部30Aを支持している。一方の軸受B9は、出力部30における軸A0方向の第2内歯歯車24A側に設けられており、他方の軸受B10は、出力部30における軸A0方向の大歯車26側に設けられている。本実施形態では、軸受B9及び軸受B10は玉軸受であるが、これに限られない。
【0090】
出力部30の本体部30Aは、軸A0方向の中央付近に大径部36を有し、大径部36よりも第2内歯歯車24側に小径部37を有し、大径部36よりも大歯車26側に小径部38を有している。大径部36の外径は、小径部37,38のそれぞれの外径よりも大きい。なお、本体部30Aは、軸A0方向において一定の外径を有していてもよい。
【0091】
軸受B9は小径部37に設けられており、軸受B10は小径部38に設けられている。軸受B9と大径部36との間には軸A0方向に隙間が設けられており、この隙間にはスペーサー33が配置されている。同様に、軸受B10と大径部36との間には軸A0方向に隙間が設けられており、この隙間にはスペーサー34が配置されている。
【0092】
本実施形態では、延出部30Bは平板状であるがこれに限られず、例えば棒状などの他の形状を有していてもよい。延出部30Bにおけるケース40外に位置する部分には、取付対象機器2の動作部材4を固定するための貫通孔35が設けられている。貫通孔35には、例えば図略のボルトなどが挿通され、そのボルトが動作部材4に螺合される。なお、本実施形態では、延出部30Bは、大径部36の外周面の一部から径方向外側に延出しているが、これに限られず、本体部30Aの外周面から延出していればよい。
【0093】
出力部30の本体部30Aには、各第2遊星歯車23の他端部23Bが配置される。本体部30Aは、軸受配置部32を有する。軸受配置部32は、複数の第2遊星歯車23のそれぞれの軸A2上に設けられており、対応する第2遊星歯車23の他端部23Bを支持する軸受B7が配置される。本実施形態では、軸受配置部32は、本体部30Aにおける第2内歯歯車24側の端面から軸A2方向に凹む凹部によって構成されている。
【0094】
上述したように、各第2遊星歯車23の一端部23Aは、歯車部材24における回転部材24Bに設けられた軸受B4によって支持されている。軸受B4と軸受B7は、各第2遊星歯車23をその軸A2周りに自転可能に支持している。
【0095】
[動作]
次に、
図6及び
図11を参照して本実施形態に係る電動アクチュエータ1の動作について説明する。
【0096】
(正常時の動作)
電動アクチュエータ1では、コントローラ51からの指令によって第1モータ11が作動すると、シャフト11Sに固定された小歯車15が回転し、小歯車15の外歯15Gに噛み合う外歯16Gを有する大歯車16が回転する。大歯車16が回転すると、この大歯車16に固定された第1太陽歯車12がその軸A0周りに回転し、第1太陽歯車12の外歯12Gに噛み合う外歯13Gを有する複数の第1遊星歯車13は、その軸A1周りに自転する。ここで、第1内歯歯車14は、ケース40に対して固定されており、ケース40に対して回転しないので、複数の第1遊星歯車13は、その軸A1周りに自転しながら、第1内歯歯車14の内歯14Gに噛み合いながら第1太陽歯車12の軸A0周りを公転する。
【0097】
複数の第1遊星歯車13が第1太陽歯車12の軸A0周りに公転すると、複数の第1遊星歯車13のそれぞれの一端部13Aが連結された歯車部材24における回転部材24Bは、軸A0周りに、複数の第1遊星歯車13の回転数と同じ回転数で同じ回転方向に回転する。したがって、回転部材24Bと一体の第2内歯歯車24Aも軸A0周りに同じ回転数で同じ回転方向D1に回転する。
【0098】
このような軸A0周りの第2内歯歯車24Aの回転は、第2内歯歯車24Aの内歯24Gに噛み合う外歯23Gを有する複数の第2遊星歯車23を同じ回転方向D1に回転させる。
【0099】
一方、コントローラ51からの指令によって第2モータ21が作動すると、シャフト21Sに固定された小歯車25が回転し、小歯車25の外歯25Gに噛み合う外歯26Gを有する大歯車26が回転する。大歯車26が回転すると、この大歯車26に固定された第2太陽歯車22がその軸A0周りに回転し、第2太陽歯車22の外歯22Gに噛み合う外歯23Gを有する複数の第2遊星歯車23は、その軸A2周りに自転しながら、第2内歯歯車24Aの内歯24Gに噛み合いながら第2太陽歯車22の軸A0周りを回転方向D2に公転する。
【0100】
ここで、第1モータ11によって第2内歯歯車24Aが回転する回転方向D1と、第2モータ21によって複数の第2遊星歯車23が軸A0周りに回転する回転方向D2とが同じ方向である場合には、第1モータ11による回転速度(回転数)と、第2モータ21による回転速度(回転数)とが足し合わされ、これらの回転速度がいわゆる速度サミングされる。このように速度サミングされることによって、出力部30は、速度サミングされない従来の場合に比べて高速で回転することができる。なお、速度サミングされる本実施形態において回転のトルクは足し合わされない。
【0101】
一方、第1モータ11によって第2内歯歯車24Aが回転する回転方向D1と、第2モータ21によって複数の第2遊星歯車23が軸A0周りに回転する回転方向D2とが互いに反対方向である場合には、上記のように速度サミングされない。この場合には、一方が他方の回転のブレーキをかけるように作用する。この場合の具体例としては、例えば
図14に示す高負荷時の制御例を挙げることができるが、その制御例に限られるものではない。
【0102】
出力部30が所定の位置まで回転したことが位置センサ61によって検知され、その信号が位置センサ61からコントローラ51に入力されると、コントローラ51の指令で第1モータ11及び第2モータ21が停止する。これにより、動作部材4が所望の位置に配置される。
【0103】
(異常時の動作)
次に、第1遊星歯車13及び第2遊星歯車23の何れかの遊星歯車がその軸周りに回転不可能となった場合の動作について説明する。
【0104】
第1遊星歯車13がその軸A1周りに回転不可能となった場合、複数の第1遊星歯車13のそれぞれの外歯13Gは、回転が規制された第1内歯歯車14の内歯14Gに噛み合っているので、第1太陽歯車12の軸A0周りを公転することができなくなり、その結果、歯車部材24(回転部材24B及び第2内歯歯車24A)を回転させることができなくなる。その一方で、複数の第2遊星歯車23は、第2太陽歯車22の軸A0周りを公転することができるので、出力部30は、この公転に伴った回転が可能な状態を維持できる。すなわち、出力部30は、第1遊星歯車13の固着が生じた直後であってもこの固着に邪魔されずにタイムラグがほとんどない状態で引き続き回転することができる。
【0105】
また、第2遊星歯車23がその軸A2周りに回転不可能となった場合、複数の第2遊星歯車23は、それぞれの軸A2周りに回転しながら第2太陽歯車22の軸A0周りを公転することはできなくなる。しかし、複数の第2遊星歯車23は、第2太陽歯車22の外歯22Gとの噛み合い位置が変わらず且つ第2内歯歯車24Aの内歯24Gとの噛み合い位置が変わらない状態を維持しながら第2内歯歯車24A(歯車部材24)を引き連れて第2太陽歯車22の軸A0周りを公転することはできる。したがって、出力部30は、この公転に伴った回転が可能な状態を維持できる。すなわち、出力部30は、第2遊星歯車23の固着が生じた直後であってもこの固着に邪魔されずにタイムラグがほとんどない状態で引き続き回転することができる。
【0106】
(異常時の制御例1)
上記のように何れか一方の遊星歯車機構において固着が生じた場合には、例えば以下のようにしてモータを制御することができる。
【0107】
図12は、実施形態に係る電動アクチュエータ1の制御例1を示すフローチャートである。制御例1では、第1遊星歯車13及び第2遊星歯車23の何れか一方がその軸周りに回転不可能となった場合、コントローラ51は、第1モータ11及び第2モータ21への電流の供給を断つように電源などを制御する。
【0108】
図12に示すように、何れの遊星歯車機構にも固着が生じていない正常時には、コントローラ51は、外部信号、位置センサ61などから入力される信号に基づいて、第1モータ11及び第2モータ21に電流を供給して第1モータ11及び第2モータ21の回転を制御する(ステップS1)。
【0109】
そして、コントローラ51は、何れかの遊星歯車機構において固着が発生したことを示す信号(例えば位置センサ61から入力される信号、電流値を示す信号など)を受けると(ステップS2においてYes)、第1モータ11及び第2モータ21への電流の供給を停止する(ステップS3)。一方、コントローラ51は、何れかの遊星歯車機構において固着が発生したことを示す信号を受けていない場合には(ステップS2においてNo)、第1モータ11及び第2モータ21の制御を継続する(ステップS1)。
【0110】
この制御例1では、第1モータ11及び第2モータ21への電流の供給が断たれることにより、第1モータ11及び第2モータ21が自由に回転可能な状態となる。そして、固着によって第1遊星歯車13がその軸A1周りに回転不可能となった場合であっても、第2モータ21への電流の供給が断たれることによって第2太陽歯車22が自由に回転することが可能になるので、複数の第2遊星歯車23は、第2太陽歯車22の回転に伴って第2太陽歯車22の軸A0周りを公転することができる。したがって、出力部30はこの公転に伴って回転することができる。
【0111】
一方、固着によって第2遊星歯車23がその軸A2周りに回転不可能となった場合であっても、複数の第2遊星歯車23は、第2太陽歯車22の外歯22Gとの噛み合い位置が変わらず且つ第2内歯歯車24Aの内歯24Gとの噛み合い位置が変わらない状態を維持しながら第2太陽歯車22の軸A0周りを公転することはできる。したがって、出力部30はこの公転に伴って回転することができる。
【0112】
よって、第1遊星歯車13及び第2遊星歯車23の何れか一方がその軸周りに回転不可能となった場合に第1モータ11及び第2モータ21への電流の供給が断たれることにより、出力部30は、例えば重力、風力など外力に逆らうことなくその外力によって自由に回転可能となり、また、手動操作によって自由に回転可能となる。これにより、その時点の状況に適さない位置に出力部30が配置され続けることを防ぐことができる。また、制御例1では、外力によって出力部30を自由に回転させるので、第1モータ11及び第2モータ21への電流の供給を断つことによって無駄な電力が消費されるのを抑制できる。
【0113】
(異常時の制御例2)
図13は、実施形態に係る電動アクチュエータ1の制御例2を示すフローチャートである。制御例2では、第1遊星歯車13がその軸A1周りに回転不可能となった場合、コントローラ51は、第1モータ11への電流の供給を断つ一方で第2モータ21によって第2太陽歯車22を回転させるように電源、モータなどを制御する。この制御例2では、第1遊星歯車13がその軸A1周りに回転不可能となった場合において、その時点の状況に適した位置に出力部30を配置することができ、しかも、無駄な電力消費を抑制することができる。
【0114】
図13に示すように、何れの遊星歯車機構にも固着が生じていない正常時には、コントローラ51は、外部信号、位置センサ61などから入力される信号に基づいて、第1モータ11及び第2モータ21に電流を供給して第1モータ11及び第2モータ21の回転を制御する(ステップS11)。
【0115】
そして、コントローラ51は、第1の遊星歯車機構10において固着が発生したことを示す信号を受けると(ステップS12においてYes)、第1モータ11への電流の供給を停止し、第2モータ21の制御を継続する(ステップS13)。
【0116】
第1の遊星歯車機構10において固着が発生し、第1遊星歯車13がその軸A1周りに回転不可能となった場合であっても、複数の第2遊星歯車23は、第2太陽歯車22の回転に伴って第2太陽歯車22の軸A0周りを公転することができる。したがって、第2モータ21によって第2太陽歯車22を回転させることによって、複数の第2遊星歯車23は、第2太陽歯車22の軸A0周りを公転することができる。よって、出力部30はこの公転に伴って回転することができる。これにより、その時点の状況に適した位置に出力部30を配置することができる。また、第1遊星歯車13がその軸A1周りに回転不可能となった場合、複数の第1遊星歯車13は、第1太陽歯車12の軸A0周りを公転することができなくなるので、第1太陽歯車12もその軸A0周りに回転することができない。仮に、第1モータ11に電流を供給しても第1太陽歯車12は回転しない。したがって、第1モータ11への電流の供給を断つことによって無駄な電力が消費されるのを抑制できる。
【0117】
一方、コントローラ51は、第1の遊星歯車機構10において固着が発生したことを示す信号を受けていない場合には(ステップS12においてNo)、ステップS14の制御に進む。
【0118】
コントローラ51は、第2の遊星歯車機構20において固着が発生したことを示す信号を受けると(ステップS14においてYes)、第1モータ11及び第2モータ21の少なくとも一方の制御を継続する(ステップS15)。
【0119】
第2の遊星歯車機構20において固着が発生し、第2遊星歯車23がその軸A2周りに回転不可能となった場合であっても、複数の第2遊星歯車23は、第2太陽歯車22の外歯22Gとの噛み合い位置が変わらず且つ第2内歯歯車24Aの内歯24Gとの噛み合い位置が変わらない状態を維持しながら第2太陽歯車22の軸A0周りを公転することができる。このような公転を生じさせる動力伝達経路は2つ存在する。すなわち、1つ目の動力伝達経路では、第1モータ11によって与えられる動力が第1太陽歯車12、複数の第1遊星歯車13、回転部材24B及び第2内歯歯車24Aの順に伝達されて第2内歯歯車24Aが回転し、この第2内歯歯車24Aの回転に伴って複数の第2遊星歯車23が第2太陽歯車22の軸A0周りを公転する。2つ目の動力伝達経路では、第2モータ21によって与えられる動力が第2太陽歯車22に伝達されて第2太陽歯車22が回転し、この第2太陽歯車22の回転に伴って複数の第2遊星歯車23が第2太陽歯車22の軸A0周りを公転する。
【0120】
したがって、第2遊星歯車23がその軸A2周りに回転不可能となった場合であっても、第1モータ11によって第1太陽歯車12を回転させることによって複数の第2遊星歯車23を公転させるか、第2モータ21によって第2太陽歯車22を回転させることによって複数の第2遊星歯車23を公転させるか、第1モータ11及び第2モータ21の両方によって第1太陽歯車12及び第2太陽歯車22を回転させることによって複数の第2遊星歯車23を公転させることができる。よって、出力部30は複数の第2遊星歯車23の公転に伴って回転することができる。これにより、その時点の状況に適した位置に出力部30を配置することができる。
【0121】
一方、コントローラ51は、第2の遊星歯車機構20において固着が発生したことを示す信号を受けていない場合には(ステップS14においてNo)、第1モータ11及び第2モータ21の制御を継続する(ステップS11)。
【0122】
(高負荷時の制御例)
図14は、実施形態に係る電動アクチュエータ1の制御例3を示すフローチャートである。制御例3では、電動アクチュエータ1において、第1モータ11及び第2モータ21のうちの一方のモータは、出力部30が何れか一方の方向に回転するように制御され、第1モータ11及び第2モータ21のうちの他方のモータは、一方の方向とは反対方向に出力部30に対して力が作用するように制御される。
【0123】
図14に示すように、出力部30が何れか一方の方向に回転するようにモータが制御される場合において、コントローラ51は、出力部30又はこの出力部30に接続される動作部材4に対して、一方の方向に予め定められた基準値よりも大きな外力(例えば気流などによる外力)が加わったことを示す信号を受けると(ステップS21においてYes)、コントローラ51は、出力部30が一方の方向に回転するように第1モータ11及び第2モータ21のうちの一方のモータを制御し、他方のモータを、前記一方の方向とは反対方向に出力部30に対して力が作用するように負荷抑制制御を行う(ステップS22)。
【0124】
このように制御例3では、一方のモータは、出力部30が前記一方の方向に回転するように制御され、他方のモータは、前記一方の方向とは反対方向に出力部30に対して力が作用するように制御される。すなわち、一方のモータには、出力部30が前記一方の方向に回転するように出力部30に対して力が作用するように通電され、他方のモータには、出力部30に対して反対の力(反力)が作用するように通電される。これにより、出力部30及び動作部材4が外力によって過度に大きな回転速度で回転するのを抑制できるので、出力部30及び動作部材4にかかる負荷を減少させることができる。
【0125】
[実施形態のまとめ]
本実施形態では、電動アクチュエータ1において、第1太陽歯車12、複数の第1遊星歯車13及び第1内歯歯車14を備える第1の遊星歯車機構10と、第2太陽歯車22、複数の第2遊星歯車23、回転部材24B及び第2内歯歯車24Aを備える第2の遊星歯車機構20とが設けられている。そして、第1内歯歯車14の回転が規制されているとともに第1内歯歯車14の内歯に噛み合う複数の第1遊星歯車13の公転に伴って回転部材24B及び第2内歯歯車24Aが回転するように構成されている。したがって、何れか一方の遊星歯車機構において固着が生じて遊星歯車がその軸周りに回転不可能となった場合であっても、タイムラグがほとんどない状態で引き続き出力部30を回転させることができるので信頼性に優れている。また、本実施形態では、固着が生じていない正常時には、いわゆる速度サミングによって出力部30を高速で動作させることができる。
【0126】
固着によって第1遊星歯車13がその軸周りに回転不可能となった場合、複数の第1遊星歯車13は、回転が規制された第1内歯歯車14の内歯に噛み合っているので、第1太陽歯車12の軸周りを公転することができなくなり、その結果、回転部材24B及び第2内歯歯車24Aを回転させることができなくなる。その一方で、固着が生じていない複数の第2遊星歯車23は、第2太陽歯車22の軸周りを公転することができるので、出力部30は、この公転に伴った回転が可能な状態を維持できる。すなわち、出力部30は、第1遊星歯車13の固着が生じた直後であってもこの固着に邪魔されずにタイムラグがほとんどない状態で引き続き回転することができる。
【0127】
また、固着によって第2遊星歯車23がその軸周りに回転不可能となった場合、複数の第2遊星歯車23は、それぞれの軸周りに回転しながら第2太陽歯車22の軸周りを公転することはできなくなる。しかし、複数の第2遊星歯車23は、第2太陽歯車22との噛み合い位置が変わらず且つ第2内歯歯車24Aとの噛み合い位置が変わらない状態を維持しながら、第2内歯歯車24Aを引き連れて第2太陽歯車22の軸周りを公転することはできる。したがって、出力部30は、この公転に伴った回転が可能な状態を維持できる。すなわち、出力部30は、第2遊星歯車23の固着が生じた直後であってもこの固着に邪魔されずにタイムラグがほとんどない状態で引き続き回転することができる。
【0128】
また、何れの遊星歯車機構にも固着が生じていない正常時において、第1モータ11によって与えられる動力は、第1太陽歯車12、複数の第1遊星歯車13、回転部材24B及び第2内歯歯車24Aの順に伝達され、これにより、第2内歯歯車24Aを回転させることができる。このとき、第2内歯歯車24Aの内歯24Gに噛み合う複数の第2遊星歯車23は、第2内歯歯車24Aの回転に伴って第2内歯歯車24Aに引き連れられて第2太陽歯車22の軸A0周りを公転することになる。一方、第2モータ21によって与えられる動力は、第2太陽歯車22及び複数の第2遊星歯車23の順に伝達され、これにより、複数の第2遊星歯車23のそれぞれをその軸周りに自転させながら第2太陽歯車22の軸A0周りに公転させることができる。すなわち、複数の第2遊星歯車23は、第1モータ11による第2内歯歯車24Aの回転に伴った公転の速度と、第2モータ21による公転の速度とが足し合わされた回転速度(いわゆる速度サミングされた回転速度)で回転することが可能になる。したがって、複数の第2遊星歯車23の公転に伴って回転するように構成された出力部30は、速度サミングされた回転速度で回転することになるので、速度サミングされていない従来の構成に比べて出力部30を高速で動作させることができる。
【0129】
本実施形態では、速度サミング式の遊星歯車機構を用いることにより動力伝達経路を2つ設けることができる。これにより、2つの経路のうち一系統が固着しても、もう一方を自在状態にすることにより全体として固着状態を解除することができる。また、固着していない側のモータにより動作部材4を制御することもできる。2つのモータによって駆動される構成であるので、1つのモータによって駆動される構成である場合に比べて、モータの直径を小さくすることができる。これにより、扁平な翼形状であってもモータの容積が干渉せずに電動アクチュエータ1を収容することができる。
【0130】
また、本実施形態では、何れかの遊星歯車機構に固着が生じ、正常側のモータにおける定格の出力を上回る外部負荷(電気的な容量を上回る負荷)を受けた場合には、即座に且つ自動的に負荷の方向に出力部30がバックドライブされるので、電動アクチュエータ1及びこれが接続された機器に係る負荷を抑制できる。一方、ジャッキスクリューを用いたタイプの電動アクチュエータでは、ジャッキスクリューにおいて固着が生じた場合、固着状態を解除するには機械的な切り離しを行う必要があり、このため、切り離しに遅れ(例えば30m秒程度の遅れ)が生じ、即座にバックドライブされない場合がある。
【0131】
また、本実施形態では、従来のようにクラッチ機構やシェアピン機構などを必要としないので、その分、軽量化を図ることができる。
【0132】
また、本実施形態では、電動アクチュエータ1は、第1内歯歯車14及び回転部材24Bを収容するケース40と、ケース40と回転部材24Bとの間に設けられた軸受B8と、を備え、第1内歯歯車14は、ケース40に対する回転が規制されており、回転部材24Bは、軸受B8によってケース40に対して回転可能に支持されている。このように本実施形態では、第1内歯歯車14がケース40に対する回転が規制されるとともに回転部材24Bが軸受B8によってケース40に対して回転可能に支持されることにより、第1内歯歯車14をケース40に対して回転させない一方で、回転部材24Bをケース40及び第1内歯歯車14に対して回転させることができる。
【0133】
また、本実施形態では、第2内歯歯車24は、複数の第1遊星歯車13の全てが回転部材24Bに結合されていることによって複数の第1遊星歯車13の公転に伴って回転するように構成され、出力部30は、複数の第2遊星歯車23の全てが出力部30に結合されていることによって複数の第2遊星歯車23の公転に伴って回転するように構成されている。したがって、本実施形態では、複数の第1遊星歯車13の公転に伴って第2内歯歯車24Aを回転させることができ、複数の第2遊星歯車23の公転に伴って出力部30を回転させることができる。特に、本実施形態では、第1遊星歯車13が別の部材を介さずに回転部材24Bに対して直接結合され、第2遊星歯車23が別の部材を介さずに出力部30に対して直接結合されているので、部品点数が増加して構造が複雑になるのを抑制できる。
【0134】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
【0135】
前記実施形態では、機器本体3は航空機の翼本体であり、動作部材4が舵面稼働部(動翼)である場合を例示したが、これに限られない。例えば、機器本体3が航空機の機体であって動作部材4が機体に設けられた出入口を開閉可能なドアなどであってもよい。
【0136】
前記実施形態では、電動アクチュエータ1を取り付ける取付対象機器2が航空機である場合を例示したが、これに限られない。電動アクチュエータ1は、船舶、陸上車両などの他の取付対象機器2に取り付けられてもよい。
【0137】
前記実施形態では、複数の第1遊星歯車13の全てが回転部材24Bに結合されていることによって回転部材24Bが複数の第1遊星歯車13の公転に伴って回転するように構成されていたが、これに限られない。回転部材24Bは、少なくとも1つの第1遊星歯車13が回転部材24Bに結合されていることによって第1遊星歯車13の公転に伴って回転するように構成されていてもよい。
【0138】
前記実施形態では、複数の第2遊星歯車23の全てが出力部30に結合されていることによって出力部30が複数の第2遊星歯車23の公転に伴って回転するように構成されていたが、これに限られない。出力部30は、少なくとも1つの第2遊星歯車23が出力部30に結合されていることによって第2遊星歯車23の公転に伴って回転するように構成されていてもよい。
【0139】
前記実施形態では、第1の遊星歯車機構10が複数の第1遊星歯車13を備えている場合を例示したが、これに限られない。第1の遊星歯車機構10は、1つの第1遊星歯車13のみを備えていてもよい。
【0140】
前記実施形態では、第2の遊星歯車機構20が複数の第2遊星歯車23を備えている場合を例示したが、これに限られない。第2の遊星歯車機構20は、1つの第2遊星歯車23のみを備えていてもよい。
【0141】
前記実施形態では、電動アクチュエータは、第1モータと第2モータとを備えていたが、これに限られず、第1モータと第2モータとは電動アクチュエータに含まれていなくてもよい。すなわち、電動アクチュエータは、外部のモータを利用するものであってもよい。この場合、電動アクチュエータは、外部の第1モータからの減速された出力が軸受により支持される回転部材及び内歯歯車を介して出力部に伝達され、外部の第2モータからの出力が太陽歯車と遊星歯車と前記内歯歯車とを含む遊星歯車機構を介して前記出力部に伝達されるように構成される。言い換えると、この場合の電動アクチュエータは、入力された駆動力が軸受により支持される回転部材及び内歯歯車を介して出力部に伝達され、前記駆動力とは別個に入力された駆動力が太陽歯車と遊星歯車と前記内歯歯車とを介して出力部に伝達されるように構成される。