特許第6556482号(P6556482)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556482
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】蓄電制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20190729BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20190729BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   H02J3/38 130
   H02J7/35 K
   H02J3/46
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-73088(P2015-73088)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-192883(P2016-192883A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2018年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 融
(72)【発明者】
【氏名】池田 洋二
【審査官】 辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−093972(JP,A)
【文献】 特開2004−135454(JP,A)
【文献】 特開2014−236568(JP,A)
【文献】 特開2009−303426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00−7/12
7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギー用電力変換装置と、
蓄電用電力変換装置と、
前記再生可能エネルギー用電力変換装置及び前記蓄電用電力変換装置とを電力系統に連系若しくは解列させる解列装置と、
前記解列装置及び前記再生可能エネルギー用電力変換装置及び前記蓄電用電力変換装置を制御する制御機器とを有し、
前記制御機器は、前記解列装置を解列した状態で再生可能エネルギー発電装置で発電した発電電力を前記再生可能エネルギー用電力変換装置を介して前記蓄電用電力変換装置に接続された蓄電池に充電し、前記解列装置を連系した状態で前記再生可能エネルギー発電装置からの電力若しくは前記蓄電池からの電力を前記再生可能エネルギー用電力変換装置または前記蓄電用電力変換装置を介して前記電力系統に供給し、
前記制御機器は、前記解列装置を連系した状態で、前記再生可能エネルギー発電装置からの発電電力を前記再生可能エネルギー用電力変換装置を介して前記蓄電用電力変換装置に接続された蓄電池に充電し、前記充電の充電電力を徐々に上げ前記発電電力と前記充電電力をほぼ同じにし、前記電力系統に供給する売電電力をほぼゼロにしたのちに前記解列装置を解列した状態に切リ換えることを特徴とする蓄電制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電制御システムであって、
前記制御機器は、前記解列装置を連系した状態から解列した状態に切リ換える際、もしくは解列した状態から連系した状態に切リ換える際、前記再生可能エネルギー用電力変換装置及び前記蓄電用電力変換装置を一時的に停止し、停止した状態で切リ換えることを特徴とする蓄電制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の蓄電制御システムであって、
前記再生可能エネルギー発電装置は太陽光発電パネルであって、前記再生可能エネルギー用電力変換装置は太陽光発電用電力変換装置であることを特徴とする蓄電制御システム。
【請求項4】
請求項に記載の蓄電制御システムであって、
前記蓄電用電力変換装置に接続される蓄電池をさらに備えることを特徴とする蓄電制御システム。
【請求項5】
請求項に記載の蓄電制御システムであって、
前記再生可能エネルギー用電力変換装置と前記蓄電用電力変換装置は一体であることを特徴とする蓄電制御システム。
【請求項6】
再生可能エネルギー発電システムと、蓄電システムと、該再生可能エネルギー発電システム及び蓄電システムとを電力系統に連系若しくは解列させる解列装置とを有した蓄電制御システムに用いる運転制御方法であって、
前記解列装置が解列しているときには前記蓄電システムに前記再生可能エネルギー発電システムで発電した発電電力を充電し、前記解列装置が連系しているときには前記再生可能エネルギー発電システムからの電力若しくは前記蓄電システムからの電力を前記電力系統に供給し
前記解列装置を連系した状態で、前記再生可能エネルギー発電システムで発電した発電電力を前記蓄電システムに充電し、前記充電の充電電力を徐々に上げ前記発電電力と前記充電電力をほぼ同じにし、前記電力系統に供給する売電電力をほぼゼロにしたのちに前記解列装置を解列した状態に切リ換えることを特徴とする運転制御方法
【請求項7】
請求項6に記載の運転制御方法であって、
前記解列装置を連系した状態から解列した状態に切リ換える際、もしくは解列した状態から連系した状態に切リ換える際、前記再生可能エネルギー発電システム及び前記蓄電システムを一時的に停止し、停止した状態で切リ換えることを特徴とする運転制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能エネルギーを利用した発電システムと蓄電システムを接続した蓄電制御システム及びその運転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、環境問題や発電設備停止時のリスクの低減等の理由で、再生可能エネルギーの導入が推奨されている。これらの再生可能エネルギーを利用した発電システムとして、各電力会社は、自社の系統に再生可能エネルギー発電設備を接続することで、再生可能エネルギーの電力を受け入れている。一方、再生可能エネルギーは出力変動するため、その出力変動緩和技術が求められている。
【0003】
従来の、蓄電池による再生可能エネルギーの出力変動緩和技術においては、電力計に追従し出力調整等を行うが、再生可能エネルギーの出力変動は予測できないため完全に出力変動を除去することはできない。また、再生可能エネルギーを利用した発電システムは、電力の需要と供給のバランスを保たなければ電気の安定供給に支障が生じることがあり、最悪、停電の可能性もあるため、発電出力が不安定な再生可能エネルギーを売電目的で導入するには制限がある。また、需給バランスを保つために発電所の発電出力を抑制できる余力には限界があり、例えば最も需要が少ない状況を基準として再生可能エネルギーの接続可能量を決めることとなる。また、需給バランスの厳しい時間帯は再生可能エネルギーの発電電力を抑制する対策をすることもある。
【0004】
本技術分野に関連する背景技術として、特開2014−113034号公報(特許文献1)がある。特許文献1には、再生可能エネルギーを利用した発電設備と、前記発電設備から供給される電力を充電する第一の蓄電池と、系統に電力を供給する第二の蓄電池と、前記第一の蓄電池と前記第二の蓄電池を切り替える接続切替装置と、前記接続切替装置を制御する制御装置と、を有する発電システムにおいて、前記発電設備の発電量予測と、前記系統のデマンド予測に基づき決定された切替タイミングに、前記制御装置が前記接続切替装置を切り替える制御をすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−113034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、発電電力を捨てずに有効活用する場合、発電設備の1日の発電電力量の2倍の電池容量が必要となり、設置スペースを圧迫し、さらに高コスト化となる課題がある。また、第一、第二の蓄電池の切り替えを系統への影響を軽減して実施する場合、出力を分散した上で細かく切り替える必要があり、接続切替装置が複雑になり、同様に高コスト化となる課題がある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、上記課題を解決し、簡単かつ低コストで系統の安定化を実現する再生可能エネルギーを利用した蓄電制御システム及びその運転制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、蓄電制御システムであって、再生可能エネルギー用電力変換装置と、蓄電用電力変換装置と、それらを電力系統に連系若しくは解列させる解列装置と、それらを制御する制御機器とを有し、制御機器は、解列装置を解列した状態で再生可能エネルギー発電装置で発電した発電電力を再生可能エネルギー用電力変換装置を介して蓄電用電力変換装置に接続された蓄電池に充電し、解列装置を連系した状態で再生可能エネルギー発電装置からの電力若しくは蓄電池からの電力を再生可能エネルギー用電力変換装置または蓄電用電力変換装置を介して電力系統に供給するように構成する。
【発明の効果】
【0009】
簡単かつ低コストで系統の安定化を実現する再生可能エネルギーを利用した蓄電制御システム及びその運転制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施例における発電システムの全体構成図である。
図2】本実施例における快晴時の太陽光発電システムの制御なしの場合の1日の想定発電電力グラフである。
図3A】本実施例における蓄電制御システムの動作制御フローチャートである。
図3B】本実施例における蓄電制御システムの動作制御フローチャートである。
図4】本実施例における蓄電制御システムの売電モードでの運転制御状態を示す構成図である。
図5】本実施例における蓄電制御システムの充電モード予備動作での運転制御状態を示す構成図である。
図6】本実施例における蓄電制御システムの充電モードでの運転制御状態を示す構成図である。
図7】本実施例における蓄電制御システムの放電モードでの運転制御状態を示す構成図である。
図8】本実施例における蓄電制御システムの太陽光発電電力、売電電力、蓄電池充放電電力の一日の時刻との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本実施例における発電システムの全体構成図である。図1において、1は電力系統、2は変圧器、3は解列装置、4は再生可能エネルギーの一例としての太陽光発電パネル、5は太陽光発電用電力変換装置、6は蓄電池、7は蓄電用電力変換装置、8は制御機器である。また、太陽光発電パネル4と太陽光発電用電力変換装置5をまとめた9は太陽光発電システム、蓄電池6と蓄電用電力変換装置7をまとめた10は蓄電システムである。また、本実施例における、蓄電制御システム20は、電力系統1に接続される、解列装置3、制御機器8、太陽光発電用電力変換装置5、蓄電用電力変換装置7により構成する。ここで、電力変換装置とは、いわゆるパワーコンディショナであって、交流から直流或いは直流から交流に変換、または電圧を変更する装置である。また、解列装置3は、システムを連系もしくは解列させる装置であって、その代表的なものとしてはマグネットコンダクタがある。また、制御機器8は、PLC(Programmable Logic Controller)等の制御可能な機器である。
【0013】
解列装置3は、電力系統1と太陽光発電システム9及び蓄電システム10とを連系若しくは解列させる。
【0014】
制御機器8は、解列装置3の連系もしくは解列の制御と、太陽光発電システム9の発電、蓄電システム10の充放電の制御を行う。そして、制御機器8は、解列装置3が解列しているときは蓄電システム10に太陽光発電システム9で発電した電力を充電し、解列装置3が連系しているときは太陽光発電システム9からの電力若しくは蓄電システム10からの電力を電力系統1に供給するように制御する。
【0015】
また、制御機器8の制御のために、蓄電システム10の充放電電力値や、太陽光発電システム9の発電電力値を、例えば、蓄電用電力変換装置7や太陽光発電用電力変換装置5から得るか、それができない仕様ならば電力を計測する電力計で計測し、それらの電力値に応じて、上記制御を行う。
【0016】
次に、本実施例における蓄電制御システム20の具体的な動作制御について説明する。
【0017】
まず、前提として、快晴時の太陽光発電システムの、制御をしていない場合の1日の想定発電電力グラフを図2に示す。図2において、横軸は1日の時刻で縦軸が太陽光発電電力を示している。図2に示すように、朝の5時頃から日の出とともに太陽光パネルに太陽光が当たり、発電電力が増加し、昼の12時にピークを迎え、20時に日射がなくなり発電電力がゼロになるものとする。以下の説明では、日照時間は本グラフ準拠とし、太陽の日射の有無による太陽光システムの起動制御は常時働いているものとして、特に説明しない。
【0018】
図3A、3Bに、上記図2に従って太陽光発電システムが発電する際の本実施例における蓄電制御システムの動作制御のフローチャートを示す。図3Aにおいて、起動操作開始時、太陽光発電システムは系統と接続されており、蓄電池のSOC値は20%の状態とする。ここで、SOCとはState of Chargeの略であり、蓄電池の充電状況を示し、100%で満充電である。
【0019】
まず、起動操作開始にあたって、S01で設定項目の設定を行う。すなわち、(1)充電モード開始時刻、(2)充電モード終了時刻、(3)放電モード開始時刻、(4)放電モード終了時刻、(5)充電開始SOC値[%]、(6)放電電力〔kW〕、(7)充電モード予備動作開始時刻を設定する。次に、S02で、運転開始の操作を行う。この時の本実施例における蓄電制御システムは、図4に示すように、制御機器8が起動し、解列装置3は、電力系統1と太陽光発電システム9及び蓄電システム10とを連系した状態で、太陽光発電システム9は運転状態、蓄電システム10は停止状態となっている。この運転制御動作を以降運転制御Aと称する。なお、ここで、太陽光発電システム9は運転状態、蓄電システム10は停止状態としたが、実際の制御は、太陽光発電システム9内の太陽光発電用電力変換装置5が運転状態で、蓄電システム10内の蓄電用電力変換装置7が停止状態となっている。以降、太陽光発電システム9および蓄電システム10の運転、停止状態はシステムとして運転、停止しているとして説明するが、太陽光発電システム9内の太陽光発電用電力変換装置5および蓄電システム10内の蓄電用電力変換装置7が運転、停止していると置き換えても良い。
【0020】
したがって、図4に示す運転制御Aでは、太陽光発電システム9で発電した電力を電力系統1に供給可能な状態となっている。S03で太陽光発電システム9は5時から発電可能な電圧となり、S04で発電開始となり同時に売電開始となる。このように、運転制御Aは、売電モードでの運転制御状態である。
【0021】
次に、S05で、起動操作開始にあたって設定した(7)充電モード予備動作開始時刻の8時になると、S06で蓄電システムが連系運転で充電を開始する。この時の本実施例における蓄電制御システムは、図5に示すように、太陽光発電システム9で発電した電力が電力系統1に供給可能な状態となっているのに加え、蓄電システム10も充電可能な状態となっている。ここで、連系運転とは、商用系統電力と系統連系しているシステムにおいて、システムが系統に接続され、運転している状態であって、今回の場合は、太陽光発電システム9で発電した電力を蓄電システム10で充電する運転となっている。この運転制御動作を以降運転制御Bと称する。そして、S07で、充電電力を徐々に上げ、発電電力と充電電力を同じ値にし、売電電力をほぼ0kWにする。これは、充電により系統へ逆潮流している電力を0kWにする制御により、解列時の逆潮流電力の急な変動を抑制可能とするためである。そして、次のS08で充電モード開始時刻に到達し、その後充電モードに切換える。このように、系統に影響の無い状態で切り替えるための動作が充電モード予備動作であり、(7)充電モード予備動作開始時刻はその動作を開始するための時刻である。今回、(1)充電モード開始時刻9時に対して、1時間前の8時に(7)充電モード予備動作開始時刻を設定したが、この時間は任意であり、例えば数分でも可能である。なお、発電を中止せずに売電電力を0kWにするには発電電力=充電電力とする必要があり、売電電力の計測が必要となる。そのために、太陽光発電用電力変換装置5から発電電力情報を得るか、または、発電電力を計測する電力計を設置する必要がある。以上のように、運転制御Bは、充電モード予備動作での運転制御状態である。
【0022】
S08で充電モード開始時刻に到達すると、S09で太陽光発電システムの発電を停止し、S10で蓄電システムの停止し、S11で解列装置3を用いて蓄電システム10と太陽光発電システム9を系統1から解列する。S11で太陽光発電システム及び蓄電システムを系統1から解列するのは、解列して充電している間、一切逆潮流させず、自立運転モードにて自律的に発電電力を全量充電することを目的としているためである。また、S09、S10で太陽光発電システム及び蓄電システムを一時的に停止する理由は、本システムはUPS(無停電電源装置)では無いので連系から自立への移行をするためには一度システムを停止する必要があるためである。
【0023】
そして、S12で蓄電システム10が自立運転で起動され、図3BのS13で太陽光発電システム9の発電を再開し、同時に、蓄電システム10に発電電力が流入し充電される。ここで、自立運転とは、商用系統電力と系統連系しているシステムにおいて、システムを系統から解列し、需要家負荷(本件の場合は太陽光発電システム)をシステムで直接運転している状態である。この時の本実施例における蓄電制御システムは、図6に示すように、解列装置3は、電力系統1と太陽光発電システム9及び蓄電システム10とを解列し、太陽光発電システム9の発電電力が蓄電システム10に流入し充電される状態となっている。この運転制御動作を以降運転制御Cと称する。S14では、現在の蓄電システムのSOC値が、100[%]に到達しているかをチェックし100[%]に到達するまで充電を継続する。このように、運転制御Cは、充電モードでの運転制御状態である。
【0024】
次に、S15で充電モード終了時刻に到達すると、S16で太陽光発電システムの発電を停止し、S17で蓄電システムの停止し、S18で解列装置3を用いて蓄電システム10と太陽光発電システム9を系統1に接続する。S16、S17で太陽光発電システム及び蓄電システムを一時的に停止する理由は、太陽光発電システムの連系先を蓄電システムから系統1に切り替えることを目的としているためである。
【0025】
そして、S19で太陽光発電システムは発電を再開し、売電を再開する。この時、蓄電システムは停止を継続する。この時の本実施例における蓄電制御システムは、図4に示した、運転制御A動作であり、売電モードでの運転制御状態である。そして、S20で日射が無くなり、太陽光システムの発電が停止し、S21で放電モード開始時刻に到達する。
【0026】
S22では、現在の蓄電システムのSOC値が、設定した(5)充電開始SOC値[%]よりも高いかどうかを判断し、高くない場合は、放電せず、S03に戻る。これは、充電開始SOC値、今回の設定値は20%、を下回るということは、十分な電力を売電できないということなので、放電を行わないこととしている。
【0027】
設定した(5)充電開始SOC値[%]よりも高い場合は、S23で蓄電システム10が連系運転を行い、設定した(6)放電電力〔kW〕で放電を開始する。この時の本実施例における蓄電制御システムは、図7に示すように、解列装置3は、電力系統1と太陽光発電システム9及び蓄電システム10とが連系しており、太陽光発電システム9は停止状態で、蓄電システム10が連系運転で放電される状態となっている。この運転制御動作を以降運転制御Dと称する。このように、運転制御Dは、放電モードでの運転制御状態である。S24では、現在の蓄電システムのSOC値が、設定した(5)充電開始SOC値[%]に到達しているかをチェックし、到達するまで放電を継続する。これは、本動作例では、十分な電力を売電することと、蓄電システムのSOCを充電開始SOC値まで放電して低減させ、次の充電時刻の太陽光発電電力の全てを充電できる蓄電池容量を確保するためである。充電開始SOC値に到達する前に、放電終了時刻に到達した場合は、放電指令値を上げるか、放電時刻を伸ばす必要がある。よって、本フローチャートには示されていないが、放電終了時刻到達時に、畜電池SOCが放電開始SOC値より高い場合に放電を継続する制御を追加しても良い。
【0028】
そして、S25で放電モード終了時刻に到達すると、S26で蓄電システムを停止して、放電モードを終了し、S03へ戻る。
【0029】
なお、上位制御のシステムにカレンダー機能を導入し、季節による需給バランスの違いに対応した設定を可能としてもよい。
【0030】
また、(8)放電開始SOC値〔%〕を設け、S15での充電モード終了時刻時点で畜電池のSOCが(8)放電開始SOC値未満の場合に、(8)放電開始SOC値の値まで畜電池への充電を継続し、夜間の売電電力量を可能な限り確保する制御としてもよい。
【0031】
以上、本実施例における蓄電制御システムの動作制御のフローチャートを説明したが、一日の時刻と電力量との関係について以下説明する。図8は、太陽光発電電力、売電電力、蓄電池充放電電力のそれぞれの一日の時刻との関係を示した図である。
【0032】
図8(A)は、太陽光発電電力と時刻との関係を示しており、104が図3Aで起動操作開始にあたって設定した(4)放電モード終了時刻、107が(7)充電モード予備動作開始時刻、101が(1)充電モード開始時刻、102が(2)充電モード終了時刻、103が(3)放電モード開始時刻、106が(6)放電電力を示している。そして、Aが図3Aで説明した売電モードの運転制御Aを示しており、Bが売電モード予備動作の運転制御Bを示しており、Cが充電モードの運転制御Cを示しており、Dが放電モードの運転制御Dを示している。
【0033】
図8(A)に示したように、放電モード終了時刻104になると蓄電制御システムは売電モードの運転制御A状態となり、日の出とともに太陽光パネルに太陽光が当たり太陽光発電電力が増加する。そして、充電モード開始時刻101になると、前記したように、系統1から太陽光発電システムを解列する際に太陽光発電システムを一時的に停止するので、太陽光発電電力が一時的にゼロとなる。そして、系統1から太陽光発電システムを解列した後に太陽光発電システムを動作再開して太陽光発電電力が増加する。充電モードの運転制御Cの状態では太陽光発電電力がピークを迎えるがこれら電力は、売電禁止時間に相当するので、系統へは行かず、蓄電システム10で充電される。そして、充電モード終了時刻102になると、前記したように、太陽光発電システムを系統1に連系する際に太陽光発電システムを一時的に停止するので、太陽光発電電力が一時的にゼロとなる。そして、太陽光発電システムを系統1に連系した後に太陽光発電システムを動作再開して太陽光発電電力が増加する。その後、日射がなくなり発電電力がゼロになる。
【0034】
図8(B)は、売電電力と時刻との関係を示しており、放電モード終了時刻104になると蓄電制御システムは売電モードとなるので、売電電力は太陽光発電電力の増加と共に増加する。そして、充電モード予備動作開始時刻107になると、前記したように、蓄電システムが連系運転で充電を開始するので、売電電力は徐々に減少しほぼゼロとなる。これは、後の充電モードのために蓄電システム10と太陽光発電システム9を系統1から解列する際の逆潮流電力の急な変動を抑制可能とするためである。そして、充電モード開始時刻101になると、蓄電システム10と太陽光発電システム9は系統1から解列されるので、売電電力はゼロとなる。そして、充電モード終了時刻102になると、太陽光発電システムが系統1に連系されるので太陽光発電電力に対応した売電電力となる。放電モード開始時刻103になると、前記したように、蓄電制御システムは放電モードとなり、蓄電システム10で蓄積された電力が放電されるので売電電力は増加する。
【0035】
図8(C)は、蓄電池充放電電力と時刻との関係を示している。放電モード終了時刻104になると蓄電制御システムは売電モードとなり、蓄電システムは停止しているので、蓄電池充放電電力はゼロである。そして、充電モード予備動作開始時刻107になると、前記したように、蓄電システムが連系運転で充電を開始するので、充電電力が増加し、太陽光発電電力と等しくなる値まで増加する。この時、売電電力はゼロとなる。そして、充電モード開始時刻101になると、蓄電システム10は系統1から解列され、充電モードとなり、太陽光発電電力が蓄電システム10で充電される。そして、充電モード終了時刻102になると、蓄電制御システムは売電モードとなり、蓄電システムは停止し蓄電池充放電電力はゼロとなる。放電モード開始時刻103になると、蓄電制御システムは放電モードとなり、蓄電システム10で蓄積された電力が放電されるので放電電力は増加する。
【0036】
以上のように、本実施例は、太陽光発電システムの導入と、売電の時間帯設定により系統安定化を実現するシステム構成及び制御について説明した。本実施例によれば、太陽光発電システムと蓄電システムを系統から切り離す構造上、解列している間は、太陽光発電電力変動による逆潮流を完全に防止することが可能となる。よって、電力の需給バランスを維持するのが厳しく売電可能な時間帯が限られている地域においても、太陽光発電システムの導入が可能となる。
【0037】
また、充電により系統へ逆潮流している電力をゼロにする制御により、解列時の逆潮流電力の急な変動が抑制可能となる。これにより、解列による系統への影響を防ぐことができる。
【0038】
また、太陽光発電を中止するのは運転切替時の一時のみで、逆潮流電力の変動抑制の制御の間は太陽光発電電力を畜電池に充電することで電力の有効活用が可能となる。
【0039】
また、従来に比べて、太陽光発電電力を捨てずに有効活用する場合、売電ができない時間の発電設備の1日の発電電力量と、ほぼ同量の設置電池容量でシステム構築が可能となる。これにより、省スペース化、低コスト化が可能となる。
【0040】
また、従来に比べて、2つの太陽光発電システムと蓄電システムを交互に切り替えて運転するのではなく、2つのシステムをまとめて系統から切り離すので、解列装置が単純となり、低コスト化、簡易制御が可能となる。
【0041】
なお、上記実施例の説明では、快晴時の太陽光発電システムを例に説明したが、雨天時には、太陽光発電システムは発電をせず、従って充電もせず、現在の蓄電システムのSOCに応じて放電を実施する。
【0042】
また、上記実施例の説明では、太陽光発電システムを例に説明したが、他の再生可能エネルギーの発電システムであってもよい。例えば、太陽熱発電、海洋発電、風力発電等がある。よって、上記実施例での、太陽光発電を再生可能エネルギー発電と読み替え、太陽光パネルを再生可能エネルギー発電装置と読み替え、例えば、太陽光発電システムを再生可能エネルギー発電システムとしてもよい。
【0043】
以上のように、本実施例は、蓄電制御システムであって、再生可能エネルギー用電力変換装置と、蓄電用電力変換装置と、再生可能エネルギー用電力変換装置及び蓄電用電力変換装置とを電力系統に連系若しくは解列させる解列装置と、解列装置及び再生可能エネルギー用電力変換装置及び蓄電用電力変換装置を制御する制御機器とを有し、制御機器は、解列装置を解列した状態で再生可能エネルギー発電装置で発電した発電電力を再生可能エネルギー用電力変換装置を介して蓄電用電力変換装置に接続された蓄電池に充電し、解列装置を連系した状態で再生可能エネルギー発電装置からの電力若しくは蓄電池からの電力を再生可能エネルギー用電力変換装置または蓄電用電力変換装置を介して電力系統に供給するように構成する。
【0044】
また、蓄電制御システムにおいて、制御機器は、解列装置を連系した状態で、再生可能エネルギー発電装置からの発電電力を再生可能エネルギー用電力変換装置を介して蓄電用電力変換装置に接続された蓄電池に充電し、充電の充電電力を徐々に上げ発電電力と充電電力をほぼ同じにし、電力系統に供給する売電電力をほぼゼロにしたのちに解列装置を解列した状態に切リ換えるように構成する。
【0045】
また、蓄電制御システムにおいて、制御機器は、解列装置を連系した状態から解列した状態に切リ換える際、もしくは解列した状態から連系した状態に切リ換える際、再生可能エネルギー用電力変換装置及び蓄電用電力変換装置を一時的に停止し、停止した状態で切リ換えるように構成する。
【0046】
また、再生可能エネルギー発電システムと、蓄電システムと、該再生可能エネルギー発電システム及び蓄電システムとを電力系統に連系若しくは解列させる解列装置とを有した蓄電制御システムに用いる運転制御方法であって、解列装置が解列しているときには蓄電システムに再生可能エネルギー発電システムで発電した発電電力を充電し、解列装置が連系しているときには再生可能エネルギー発電システムからの電力若しくは蓄電システムからの電力を電力系統に供給するように構成する。
【0047】
また、運転制御方法において、解列装置を連系した状態で、再生可能エネルギー発電システムで発電した発電電力を蓄電システムに充電し、充電の充電電力を徐々に上げ発電電力と充電電力をほぼ同じにし、電力系統に供給する売電電力をほぼゼロにしたのちに解列装置を解列した状態に切リ換えるように構成する。
【0048】
また、運転制御方法において、解列装置を連系した状態から解列した状態に切リ換える際、もしくは解列した状態から連系した状態に切リ換える際、再生可能エネルギー発電システム及び蓄電システムを一時的に停止し、停止した状態で切リ換えるように構成する。
【0049】
これにより、簡単かつ低コストで系統の安定化を実現する再生可能エネルギーを利用した蓄電制御システム及びその運転制御方法を提供することができる。また、売電の時間帯設定により系統安定化を実現することができる。
【0050】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、太陽光発電用電力変換装置5と蓄電用電力変換装置7は一体でもよく、太陽光発電用と蓄電用を兼ねるようにしてもよい。また、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0051】
1:電力系統、2:変圧器、3:解列装置、4:太陽光発電パネル、5:太陽光発電用電力変換装置、6:蓄電池、7:蓄電用電力変換装置、8:制御機器、9:太陽光発電システム、10:蓄電システム、20:蓄電制御システム、101:充電モード開始時刻、102:充電モード終了時刻、103:放電モード開始時刻、104:放電モード終了時刻、106:放電電力、107:充電モード予備動作開始時刻
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8