特許第6556483号(P6556483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556483
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】電極付き基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20190729BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20190729BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20190729BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20190729BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20190729BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20190729BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20190729BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   H01B5/14 B
   H01B5/14 A
   H01B13/00 503B
   H01B13/00 503D
   H05K3/38 E
   H05B33/02
   H05B33/14 A
   H05B33/26 Z
   H05B33/28
   H05B33/10
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-84512(P2015-84512)
(22)【出願日】2015年4月16日
(65)【公開番号】特開2016-207312(P2016-207312A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】玉井 仁
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 祐司
(72)【発明者】
【氏名】藤本 貴久
(72)【発明者】
【氏名】櫛崎 貴吉
【審査官】 井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/041217(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/034920(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/196354(WO,A1)
【文献】 特開2014−049245(JP,A)
【文献】 特開2011−171015(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/156489(WO,A1)
【文献】 特開2014−191934(JP,A)
【文献】 特開2014−026875(JP,A)
【文献】 特開2013−117816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/00− 5/16
H05K 3/10− 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルム基板と、
前記透明フィルム基板の第一面上に設けられ、金属線パターンからなる金属導電層と、
前記透明フィルム基板の第一面上および前記金属導電層上に設けられ、前記金属導電層と導通された透明導電層と、
前記透明フィルム基板と前記金属導電層との間に設けられ、前記透明フィルム基板および前記金属導電層と接する接着層とを備える電極付き基板であって、
前記接着層は、紫外線硬化性樹脂を含む紫外線硬化性コート剤を紫外線の照射によって硬化させた硬化物からなり、
前記金属導電層は、前記接着層に接するスパッタ膜または蒸着膜を含み、
前記金属線の断面形状は、透明フィルム基板側の下面の金属線の幅が表面側の上面の金属線の幅より大きいテーパー状である、電極付き基板。
【請求項2】
前記紫外線硬化性樹脂は、アルコキシシリル基を有するケイ素系樹脂である、請求項1に記載の電極付き基板。
【請求項3】
前記紫外線硬化性コート剤は、光重合開始剤をさらに含む、請求項1または2に記載の電極付き基板。
【請求項4】
前記光重合開始剤は、光塩基発生剤である、請求項3に記載の電極付き基板。
【請求項5】
前記金属線の断面形状は、上面の端部に、外方に向かって庇状に突出する突出部を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極付き基板。
【請求項6】
前記透明導電層が、前記金属線パターンの側面を覆っている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極付き基板。
【請求項7】
前記金属線は、幅が300μm以下であり、厚みが1μm以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の電極付き基板。
【請求項8】
前記接着層は、厚みが5μm以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の電極付き基板。
【請求項9】
前記接着層は、前記透明フィルム基板と前記透明導電層との間にも形成されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の電極付き基板。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載の電極付き基板を製造する方法であって、
透明フィルム基板の第一面上に、紫外線硬化性樹脂を含む紫外線硬化性コート剤を塗布する工程と、
前記紫外線硬化性コート剤を紫外線の照射によって硬化させることにより、接着層を形成する工程と、
前記接着層上に接してスパッタ法または蒸着法により金属薄膜を形成する工程と、
前記金属薄膜上に、レジストパターンを形成する工程と、
前記金属薄膜のレジストパターンに被覆されていない領域をエッチングによって除去して、金属線パターンを形成する工程と
前記透明フィルム基板の第一面上および前記金属線パターン上に、透明導電層を形成する工程とを有する、電極付き基板の製造方法。
【請求項11】
スパッタ法または蒸着法により前記金属薄膜を形成後、その上に、めっき法により金属薄膜を形成し、
めっき法により形成した金属薄膜上に前記レジストパターンを形成する、請求項10に記載の透明電極付き基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明フィルム基板上に透明導電層と金属導電層とを含む電極を備える電極付き基板、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明基板上に透明電極を備える透明電極付き基板は、フラットパネルディスプレイ(FPD)等の表示装置、発光素子、タッチパネル等の種々の分野において用いられている。透明電極には、一般的な金属電極と同様に低抵抗性等の電気特性が求められるのに加えて、高透過率であることが求められる。このような観点から、透明電極の材料として、インジウム・スズ複合酸化物(ITO)または、インジウム・亜鉛複合酸化物(IZO)等の酸化インジウムを主成分とする導電性酸化物が広く用いられている。
【0003】
導電性酸化物は金属に比べると比抵抗が大きいため、導電性酸化物からなる透明電極は、金属電極に比べて表面抵抗が大きくなる。そのため、透明電極は、面内の電位差が大きく、例えば、ディスプレイまたは照明装置の電極として使用した場合には、面内での表示ムラまたは輝度ムラを生じやすい。透明電極層の膜厚を大きくすれば表面抵抗を小さくできるが、光吸収が大きくなり透明性が失われる。また、透明電極層が透明フィルム基板の片面のみに形成される場合、透明電極層の膜厚が大きくなると、基板の表裏で応力差が生じ、基板の反りが生じやすくなる。
【0004】
透明電極層の表面抵抗を小さくする方法として、透明電極層とパターン状の金属補助電極とを組み合わせた電極が提案されている。例えば、特許文献1には、太陽電池用の電極として、透明電極層上にストライプ状またはメッシュ状の金属電極が設けられた構成が開示されている。また、特許文献2には、有機EL発光装置用の電極として、ストライプ状の金属補助電極パターン上に透明導電層を設けることにより、電極の表面抵抗を低減することが記載されている。
【0005】
このような金属補助電極を備える電極付き基板では、基板上に金属補助電極パターンを設け、金属補助電極非形成領域(開口部)に透明導電層を設けることにより、金属補助電極間が透明導電層により導通される。金属補助電極間を確実に導通し、表面抵抗を低減する観点からは、開口部に加えて、金属補助電極パターン上も含めた全面に透明導電層が形成されることが好ましい。
【0006】
上記のように、透明導電層に比べて金属電極は低抵抗であるため、メッシュ状またはストライプ状等のパターン金属補助電極を設けることにより、電極の表面抵抗を低減できる。また、光を透過させる必要のない部分(例えばTFT等の不透明素子が配置される部分)に金属補助電極を形成すれば、金属補助電極が形成されず透明導電層のみが形成されている領域(開口部)は透明であるため、高透過率と低表面抵抗とを両立できる。さらに、金属補助電極上に透明導電層を備える形態では、基板と透明導電層との間に金属補助電極が挟持されているため、金属補助電極から電極基板上に形成される素子等への金属のマイグレーションを抑制できるとの利点も有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−99574号公報
【特許文献2】特開2003−288994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような金属補助電極を備える電極付き基板において、透明基板としてフィルム基板を用いれば、フレキシブルデバイス等へも適用が可能となり、汎用性が高められる。また、フィルム基板を用いることにより、金属補助電極または透明導電層をロールトゥロール方式により形成できるため、電極付き基板の生産性を飛躍的に高めることができる。
【0009】
一方、金属電極を構成する銅等の金属は、樹脂材料との密着性が小さい。そのため、フィルム基板上に金属補助電極を形成すると、エッチングによる金属層のパターニング等の加工時に、透明フィルム基板から金属層の一部が剥がれてしまう場合がある。また、パターニング後の金属補助電極上に透明導電層を形成する場合、補助電極の端部付近に段差が存在するため、透明導電層のカバレッジ不良による線欠陥が生じやすく、表面抵抗増大の原因となる。カバレッジを改善するために透明導電層の厚みを大きくすると、電極基板の透明性が低下する。
【0010】
上記に鑑み、本発明は、金属導電層上の透明導電層のカバレッジが良好であり、光透過率が高くかつ表面抵抗が低い電極付きフィルム基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者が鋭意検討した結果、透明フィルム基板上に所定の接着層を介して金属導電層を設けることにより、金属導電層の剥がれを防止できるとともに、金属導電層上の透明導電層のカバレッジが良好となることが見出された。また、紫外線硬化性コート剤を紫外線の照射によって硬化させて接着層を形成することにより、電極付き基板の製造効率を向上できることを見出し、本発明に至った。
【0012】
本発明は、透明フィルム基板と、透明フィルム基板の第一面上に設けられた金属導電層と、透明フィルム基板の第一面上および金属導電層上に設けられた透明導電層と、透明フィルム基板と金属導電層との間に設けられた接着層とを備える電極付き基板に関する。金属導電層は、金属線パターンからなる。透明導電層は、金属導電層と導通されている。接着層は、透明フィルム基板および金属導電層と接している。接着層は、紫外線硬化性樹脂を含む紫外線硬化性コート剤を紫外線の照射によって硬化させた硬化物からなる。
【0013】
一実施形態において、紫外線硬化性樹脂は、アルコキシシリル基を有するケイ素系樹脂である。紫外線硬化性コート剤は、光重合開始剤をさらに含むことが好ましい。一実施形態において、光重合開始剤は、光塩基発生剤である。
【0014】
金属線の断面形状は、透明フィルム基板側の金属線の幅が表面側の金属線の幅より大きいテーパー状であることが好ましい。
【0015】
金属線は、幅が300μm以下であることが好ましく、厚みが1μm以下であることが好ましい。
【0016】
接着層は、厚みが5μm以下であることが好ましい。
【0017】
接着層は、透明フィルム基板と透明導電層との間にも形成されていることが好ましい。
【0018】
本発明は、上記電極付き基板を製造する方法に関する。本発明の製造方法は、透明フィルム基板の第一面上に、紫外線硬化性樹脂を含む紫外線硬化性コート剤を塗布する工程と、紫外線硬化性コート剤を紫外線の照射によって硬化させることにより、接着層を形成する工程と、接着層上に、金属線パターンからなる金属導電層を形成する工程と、透明フィルム基板の第一面上および金属導電層上に、透明導電層を形成する工程とを有する。
【0019】
一実施形態において、金属導電層を形成する工程は、接着層上に、金属薄膜を形成する工程と、金属薄膜上に、レジストパターンを形成する工程と、金属薄膜のレジストパターンが被覆されていない領域をエッチングによって除去することにより、金属線パターンを形成する工程とを有する。このような形態は、いわゆるサブトラクティブ法に相当する。
【0020】
金属薄膜は、スパッタリング法、蒸着法およびめっき法からなる群より選択される少なくとも1種により形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、透明導電層と金属導電層とを組み合わせることによって、電極の光透過率を高く、かつ表面抵抗を低くすることができる。特に、透明フィルム基板上に接着層を形成し、接着層上に金属導電層を形成することによって、金属導電層の剥がれを防止でき、金属導電層上の透明導電層のカバレッジを向上できる。その結果、表面抵抗増大の発生等を抑えることができる。さらに、本発明では、紫外線硬化性コート剤を紫外線の照射によって硬化させて接着層を形成するため、電極付き基板の製造効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】電極付き基板の一実施形態を模式的に表す平面図である。
図2】電極付き基板の一実施形態を模式的に表す断面図である。
図3】金属線の他の例を模式的に示す断面図である。
図4】電極付き基板の製造工程の一実施形態を表す概念図である。
図5】実施例1の電極の断面を示すSEM写真である。
図6】比較例2の電極の断面を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[電極付き基板の構成]
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、電極付き基板の一実施形態を模式的に表す平面図である。図2は、図1のII−II線における断面を模式的に示している。図2に示すように、電極付き基板100は、透明フィルム基板10上に、電極20を備える。図2に示す例では、透明フィルム基板10上の全面に、接着層50が形成されている。後述するように、接着層50は、紫外線硬化性コート剤を紫外線の照射によって硬化させたものである。電極20は、複数の金属線(金属導電層)30と透明導電層40とを含む。透明導電層40は、金属導電層30上および接着層50上に形成されている。
【0024】
図1に示すように、複数の金属線30は、透明フィルム基板10上で、所定の導電性パターンを形成している。図1に示す例では、3本の金属線30がストライプ状に配置されることにより、導電性パターン351〜353を構成している。
【0025】
金属線30の幅または厚み、および隣接する金属線30の間隔等は、目的とする透明性(開口率)および表面抵抗が得られるように適宜設定される。開口率を大きくして電極付き基板の光透過率を高めるために、金属線30の幅(図2中、Lで表される長さ)は、300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。一方、金属線の断線を抑制し、低抵抗の電極付き基板を得るために、金属線30の幅Lは、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。特に、後述のサブトラクティブ法のように、ウェットエッチングによる金属線のパターニングが行われる場合、金属線30の幅Lは、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましい。図1に示すように、金属線30の幅が厚み方向で異なる場合、厚み方向における最大の幅を金属線30の幅Lとする。
【0026】
隣接する金属線30の間隔(図2中、Sで表される長さ)は、0.05mm以上10mm以下が好ましく、0.1mm以上6mm以下がより好ましい。金属線がストライプ状に形成される場合、金属線の幅Lと間隔Sの比率を調整することにより、電極付き基板の開口率を調整できる。
【0027】
透明導電層40によるカバレッジを良好とするために、金属線30の厚み(図2中、dで表される長さ)は、2μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、800nm以下がさらに好ましい。一方、表面抵抗の低い電極付き基板を得るために、金属線30の厚みdは、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましく、200nm以上がさらに好ましい。
【0028】
金属線30の断面形状は、特に限定されない。金属線上に透明導電層が形成されるため、金属線の断面形状が逆テーパー状、すなわち、金属線の底辺(透明フィルム基板側の幅)が上辺(表面側の幅)より小さいと、金属線の側面または底部付近に透明導電層を形成することが困難であるため、金属線の側面、特に底部付近での透明導電層の断線が生じやすくなり、表面抵抗が上昇する傾向がある。そのため、金属線上の透明導電層のカバレッジを考慮すると、金属線の断面は、矩形状のように、上辺と底辺とが等しいか、上辺よりも底辺が大きいことが好ましい。上辺よりも底辺が大きい断面形状としては、テーパー状、楕円形状等が挙げられる。
【0029】
中でも、金属線30の断面形状は、図2に示すように、上辺より底辺が大きいテーパー状が好ましい。金属線の断面形状がテーパー状であると、金属線の底部および側面への透明導電層のカバレッジが良好となる。その結果、電極の表面抵抗を低くすることができる。
【0030】
金属線の断面形状がテーパー状である場合、図3に示すように、金属線31の上面端部には、金属線31の外方に向かって庇状(オーバーハング状)に突出する突出部311が設けられていてもよい。このような突出部が金属線に設けられていると、金属線の側面および底部に加えて、金属線の上面端部への透明導電層のカバレッジも向上する。そのため、電極の表面抵抗をさらに低くすることができると考えられる。
【0031】
図1では、複数の金属線30がストライプ状に配置された導電性パターンが図示されているが、導電性パターンの形状は特に限定されるものではない。例えば、金属線が、正方形格子、菱型格子、ハニカム状等のメッシュパターンを形成していてもよい。
【0032】
[電極付き基板の製造方法]
以下、電極付き基板の製造工程の一実施形態を示しながら、電極付き基板を構成する各材料等について詳細に説明する。
【0033】
図4A図4Hは、電極付き基板の製造工程の一実施形態を模式的に示す概念図である。図4に示す形態は、透明フィルム基板10上に紫外線硬化性コート剤150を塗布する工程(図4A)、紫外線硬化性コート剤150を紫外線の照射によって硬化させ、接着層50を形成する工程(図4B)、接着層50上に金属薄膜130を形成する工程(図4C)、金属薄膜130上にレジスト層61を形成する工程(図4D)、レジストパターン63を形成する工程(図4E)、レジストパターン非形成部の金属薄膜130をエッチングによって除去し、金属線パターンを形成する工程(図4F)、レジストパターンを除去する工程(図4G)、接着層50上および金属導電層30上に透明導電層40を形成する工程(図4H)を有する。以上の工程により、金属導電層30および透明導電層40を含む電極20が形成された電極付き基板100が得られる。図4C図4Gに示すように金属導電層30を形成する工程は、プリント配線基板の製造技術におけるサブトラクティブ法と略同一の工程である。
【0034】
(透明フィルム基板)
透明フィルム基板10を構成する透明フィルムは、少なくとも可視光領域で無色透明であり、金属導電層および透明導電層の形成温度における耐熱性を有していれば、その材料は特に限定されない。透明フィルムの材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフテレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。中でも、ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0035】
透明フィルム基板10を構成する透明フィルムは、無延伸フィルムでも延伸フィルムでもよい。例えば、PET等のポリエステルフィルムは、二軸延伸により分子を配向させることにより、ヤング率等の機械的特性が向上するとともに、結晶化により耐熱性が向上する。一般に、延伸フィルムは、延伸による歪が分子鎖に残留するため、加熱された場合に熱収縮する性質を有している。このような熱収縮を低減させるために、延伸の条件調整や延伸後の加熱によって応力を緩和し、熱収縮率を0.2%程度あるいはそれ以下に低減させるとともに、熱収縮開始温度が高められた二軸延伸フィルム(低熱収縮フィルム)を用いてもよい。
【0036】
透明フィルム基板10は、透明フィルムの片面または両面にハードコート層等の機能性層が形成されたものであってもよい。透明フィルム基板に適度な耐久性と柔軟性を持たせるためには、ハードコート層等の機能性層の厚みは、1〜10μmが好ましく、3〜8μmがより好ましく、5〜8μmがさらに好ましい。
【0037】
透明フィルム基板10の厚みは特に限定されないが、10μm〜400μmが好ましく、20μm〜200μmがより好ましい。透明フィルム基板10の厚みが上記範囲内であれば、透明フィルム基板10が耐久性と適度な柔軟性とを有し得るため、ロールトゥロール方式により、透明フィルム基板10上に金属導電層および透明導電層等を生産性高く製膜することが可能である。
【0038】
光学特性を向上させるために、透明フィルム基板10上に光学調整層等を形成してもよい。例えば、屈折率の異なる層を透明フィルム基板上に積層させることにより、基板の反射率を低減したり、透過光および反射光の干渉を利用して特定波長の光を透過または反射させたりすることができる。
【0039】
(接着層)
透明フィルム基板10上には、接着層50が形成される。接着層50は、紫外線硬化性コート剤150を透明フィルム基板10上に塗布した後、紫外線の照射によって硬化させたものである。このような接着層を透明フィルム基板上に形成し、接着層上に金属導電層を形成することにより、金属導電層の剥がれを防止することができる。特に、接着層の材料として、紫外線硬化性コート剤を用いることにより、熱硬化型のコート剤を用いた場合に比べて短時間でコート剤を硬化させることができる。したがって、紫外線硬化性コート剤の塗布および硬化をロールトゥロール方式により容易に行うことができる。その結果、接着層の形成、金属薄膜の形成およびパターニング、ならびに透明導電層の形成といった一連の工程を連続的に行うことができるため、電極付き基板の製造効率を向上できる。
【0040】
接着層50を形成するための紫外線硬化性コート剤150は、紫外線硬化性樹脂を含み、光重合開始剤をさらに含むことが好ましい。
【0041】
紫外線硬化性樹脂は、紫外線の照射によって硬化するものであれば特に限定されず、例えば、アルコキシシリル基を有するケイ素系樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、またはアミノ樹脂等が挙げられる。中でも、アルコキシシリル基を有するケイ素系樹脂が好ましい。これらの紫外線硬化性樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
上記ケイ素系樹脂としては、例えば、1〜3個のアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤、4個のアルコキシシリル基を有するアルコキシシラン化合物等が挙げられ、一部が加水分解された構造であってもよい。アルコキシシリル基中のアルコキシ基としては、反応性、安定性等の点から、メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロピル基、(イソ)ブチル基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。シランカップリング剤に含まれるアルコキシシリル基以外の官能基としては、アミノ基、酸無水物基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、水酸基が好ましく、アミノ基、酸無水物基がより好ましい。
【0043】
シランカップリング剤の具体例としては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;2−(3,4− エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン;3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン等のサルファ―シラン;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等のイソシアネートシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
アルコキシシラン化合物の具体例としては、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。これらのアルコキシシラン化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
光重合開始剤としては、光酸発生剤、光塩基発生剤、光ラジカル発生剤が挙げられる。中でも、接着層上に製膜される金属の腐食を低減できる点から、光重合開始剤は、光塩基発生剤であることが好ましい。これらの光重合開始剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
光塩基発生剤は、特に限定されず、例えば、紫外線等の光照射により、ビグアニジウム、イミダゾール、ピリジン、ジアミンおよびこれらの誘導体を発生する化合物等が挙げられる。中でも、イミダゾール、ビグアニジウムを発生する化合物が好ましい。光塩基発生剤の具体例としては。9−アンスリルメチル−N,N−ジエチルカルバメート、(E)−1−[3−(2−ヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]ピペリジン、1−(アニソラキノン−2−イル)エチル イミダゾールカルボキシレート、2−ニトロフェニルメチル 4−メタクリロイルオキシピペリジン−1−カルボキシレート、1,2−ジイソプロピル−3−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]グアニジウム 2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオネート、1,2−ジシクロヘキシル−4,4,5,5−テトラメチルビグアニジウム n−ブチルトリフェニルボレート等が挙げられる。これらの光塩基発生剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
紫外線硬化性コート剤は、アルコキシシリル基を有するケイ素系樹脂および光重合開始剤を含むことが好ましく、アルコキシシリル基を有するケイ素系樹脂および光塩基発生剤を含むことがより好ましい。
【0048】
紫外線硬化性コート剤150中の光重合開始剤の含有量は特に限定されないが、例えば、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して0.5重量部以上10重量部以下が好ましい。
【0049】
短時間での硬化を可能とするために、紫外線硬化性コート剤150を硬化後の接着層50の厚みは、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。一方、透明フィルム基板10と金属導電層30との密着性を高めるために、接着層50の厚みは、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。
【0050】
接着層50は、透明フィルム基板10上の金属導電層30が形成される領域に形成されればよいが、製造効率を向上させる観点から、透明フィルム基板10上の金属導電層30が形成されない領域に形成されてもよく、透明フィルム基板10上の全面に形成されてもよい。
【0051】
(金属導電層)
接着層50上には、金属導電層30が形成される。以下、フォトリソグラフィ法により金属薄膜をパターニングすることによって金属導電層を形成する例について説明する。
【0052】
<金属薄膜の形成>
図4Cに示す例では、接着層50上に金属薄膜130が形成される。金属薄膜130は、スパッタリング法、蒸着法、めっき法等により形成されることが好ましい。めっき法により金属薄膜130を形成する場合、金属薄膜130は、無電解めっき法、電解めっき法のいずれでも形成され得るが、生産性の観点から、電解めっき法が好ましい。
【0053】
上述の方法を組み合わせて金属薄膜130を形成してもよい。例えば、スパッタリング法または蒸着法により金属薄膜130の第1層を形成した後、めっき法により金属薄膜130の第2層を形成してもよい。金属薄膜130の第1層を形成することにより、接着層50と金属薄膜130との密着性を向上でき、かつ、第2層をめっき法によって形成する際のシード層とすることができる。
【0054】
上述の方法により金属薄膜を形成可能であれば、金属薄膜130の材料は特に限定されず、例えば、ニッケル、コバルト、モリブデン、アルミニウム、錫、銀、チタン、バナジウム、クロム、鉄、銅、タングステン等が挙げられる。これらの金属を2種類以上含む合金であってもよい。
【0055】
金属薄膜130の厚みは、50nm以上2μm以下が好ましく、100nm以上1μm以下がより好ましく、200nm以上800nm以下がさらに好ましい。
【0056】
<レジストパターンの形成>
金属薄膜130上には、レジストパターン63が形成される。レジストパターン63の形成方法は特に限定されない。一般には、図4Dに示すように、レジスト材料を塗布してレジスト層61を形成した後、露光・現像によりパターニングを行い、図4Eに示すようなレジストパターン63とする方法が挙げられる。レジストパターン63の形状や幅は、金属薄膜130が所望のパターン形状にパターニングされるように適宜設定される。レジストパターンが形成された領域の金属薄膜130が、最終的には金属導電層30となるため、レジストパターン63の幅は、300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。
【0057】
<エッチング>
レジストパターン非形成領域の金属薄膜130がエッチングにより除去され、図4Fに示すような金属線30にパターニングされる。エッチング液として、例えば、塩化第二鉄若しくは塩化第二銅等の酸化剤を含む溶液、酸系溶液、過酸系溶液、または酸/アミン系溶液等を、金属の種類に応じて用いることができる。
【0058】
上記のとおり、レジストパターンの形状または幅を調整することにより、金属薄膜を所望のパターン形状にパターニングすることができる。
【0059】
透明フィルム基板上に接着層を形成せず、透明フィルム基板上に金属薄膜を直接形成する場合、金属薄膜と透明フィルム基板との密着性が低いため、金属薄膜は透明フィルム基板から剥がれやすい。そのような状態でエッチングを行うと、金属薄膜と透明フィルム基板との間にエッチング液が入り込みやすく、金属線と透明フィルム基板との界面近傍、すなわち金属線の底辺付近のエッチングが進行しやすいため、断面形状が逆テーパー状になりやすい。これに対し、透明フィルム基板上に接着層を形成し、接着層上に金属薄膜を形成する場合、金属薄膜と透明フィルム基板との間にエッチング液が入り込むことを防止できるため、矩形状またはテーパー状等の断面形状を有する金属線を形成できる。特に、サブトラクティブ法では、表面(レジスト形成面)に近い側が優先的にエッチングされやすいため、断面テーパー状の金属線が形成されやすく、その上に形成される透明導電層のカバレッジが良好となる。また、レジスト層と金属薄膜との密着性が高い場合、レジストと金属薄膜との界面(レジスト形成面)の近傍はエッチングされ難いため、金属線の断面は、図3に示すような庇状の突出部311を有するテーパー状となりやすい。
【0060】
<レジストパターンの除去>
金属薄膜130をエッチングによりパターニングした後に、レジストパターン63が除去され、図4Gに示すように、接着層50上に、金属線パターンからなる金属導電層30が形成される。レジストパターンの除去方法は特に限定されない。一般には、剥離による除去が行われる。
【0061】
以上、プリント配線基板の製造技術におけるサブトラクティブ法と略同一の工程により金属導電層を形成する方法について説明したが、金属導電層を形成する方法は上記の方法に限定されるものではない。例えば、スパッタリング法または蒸着法により金属薄膜130の第1層を形成した後、めっき法により金属薄膜130の第2層を形成する場合、プリント配線基板の製造技術におけるセミアディティブ法と略同一の工程により金属導電層を形成してもよい。
【0062】
また、金属導電層を形成する際は、上述のようにフォトリソグラフィ法により金属薄膜130をパターニングしてもよいし、レーザースクライブ法により金属薄膜130をパターニングしてもよい。これらの中では、フォトリソグラフィ法により金属薄膜130をパターニングする方法が簡便であり、かつ上記のように断面テーパー形状の金属線が形成されやすいため好ましい。
【0063】
金属薄膜の形成、レジストパターンの形成(レジスト材料の塗布、露光・現像)、エッチング、およびレジストパターンの除去は、いずれも、フィルム基板を走行させながらロールトゥロール方式により行うことができる。透明フィルム基板上への接着層の形成およびフォトリソグラフィ法によるパターン金属導電層の形成をいずれもロールトゥロール方式により実施すれば、その後の透明導電層の製膜もロールトゥロール方式により実施できるため、電極付き基板の生産性を飛躍的に向上できる。
【0064】
(透明導電層)
図4Hに示す例では、金属導電層30と導通するように、接着層50上および金属導電層30上に透明導電層40が形成される。電極の表面抵抗を低くする観点および製造効率を向上させる観点から、透明導電層40は、透明フィルム基板10の第一面(接着層50が形成されている場合は接着層50)および金属導電層30を覆うように形成されることが好ましい。
【0065】
透明導電層40は、導電性酸化物を主成分とすることが好ましい。本明細書において、「主成分とする」とは、含有量が50重量%よりも多いことを意味し、70重量%以上が好ましく、85重量%以上がより好ましい。導電性酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化インジウム、若しくは酸化錫等を単独で、または複合酸化物として用いることができる。導電性、光学特性、および長期信頼性の観点から、インジウム系酸化物を主成分とするものが好ましく用いられる。この場合、透明導電層40中の酸化インジウムの含有量が87.5重量%以上99.0重量%以下であることが好ましく、90重量%以上95重量%以下であることがより好ましい。
【0066】
透明導電層40は、ドープ不純物を含有してもよい。このようなドープ不純物としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化タングステン、または酸化セリウム等が挙げられる。これらの中では、酸化錫が好ましい。すなわち、透明導電層40は、酸化インジウム錫(ITO)を主成分とすることがより好ましい。透明導電層40中のドープ不純物の含有量は、2.5重量%以上12.5重量%以下であることが好ましく、3.0重量%以上10.0重量%以下であることがより好ましい。
【0067】
透明フィルム基板10(接着層50が形成されている場合は接着層50)上の透明導電層40の膜厚は、10nm以上300nm以下が好ましく、20nm以上200nm以下がより好ましく、30nm以上150nm以下がさらに好ましい。透明導電層40の膜厚が上記範囲であれば、金属線上の透明電極層のカバレッジを良好にでき、金属線端部の段差部分での断線を抑制できるとともに、開口部における透明性も確保できる。金属導電層30上にも透明導電層40が形成されている場合、金属導電層30上の透明導電層40の膜厚は、上記膜厚と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0068】
透明導電層40の形成方法は、生産性の観点から、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法では、マグネトロンスパッタリング法が特に好ましい。スパッタリングに用いる電源は特に限定されず、ターゲットの材料に合わせて直流電源、交流電源等を適宜選択できる。
【0069】
以上、透明フィルム基板10の一方の面上に電極20が設けられる例を中心に説明したが、透明フィルム基板10の両面に同様の電極が形成されてもよい。その場合、透明フィルム基板と金属導電層との間には、接着層が形成されていることが好ましい。
【0070】
[電極付き基板の特性および用途]
本発明の電極付き基板は、光線透過率が60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。金属線の幅L、ライン/スペース(L/S)、またはパターンの開口率を調整することにより、光線透過率を上記範囲とすることができる。
【0071】
本発明の電極付き基板は、フラットパネルディスプレイ(FPD)等の表示装置、発光素子等の電極として使用できる。例えば、液晶ディスプレイの駆動用TFT電極若しくは選択用TFT電極、有機ELディスプレイ若しくは有機EL照明の駆動用TFT電極若しくは選択用TFT電極、またはプラズマディスプレイのアドレス電極若しくは表示電極等として用いられる。中でも、液晶ディスプレイ用、有機ELディスプレイ用または有機EL照明用の電極として好ましく用いられる。
【0072】
本発明の電極付き基板では、透明導電層と金属導電層とを組み合わせることによって、電極の表面抵抗を低く、かつ、光透過率を高くすることができる。特に、接着層上に金属導電層を形成することによって、金属導電層の剥がれを防止でき、金属導電層上の透明導電層のカバレッジを向上できる。その結果、表面抵抗増大の発生等を抑えることができる。さらに、本発明では、紫外線硬化性コート剤を紫外線の照射によって硬化させて接着層を形成するため、電極付き基板の製造効率を高めることができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
各実施例および比較例における金属導電層および透明導電層の膜厚は、電極付き基板の断面の透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた。
【0075】
以下の各工程は、ロールトゥロール方式により実施された。各工程の前後に、純水による洗浄・リンスと乾燥とを実施した。
【0076】
[実施例1]
(第1工程:接着層50の形成)
ロールトゥロールコーター(スリットコーティング方式)を用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(フィルム厚み:125μm)上に紫外線硬化性コート剤を塗布した。紫外線硬化性コート剤として、アミノシラン(商品名SilQuest_A−1110(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、MOMENTIVE社製)100重量部に対して、光塩基発生剤(商品名WPBG−266(1,2−ジイソプロピル−3−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]グアニジウム 2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオネート、和光純薬工業社製)2重量部、希釈溶剤(酢酸エチル)400重量部を添加したものを用いた。紫外線硬化性コート剤を80℃で1分間乾燥させた後、紫外線を照射し(積算光量1000mJ/cm)、紫外線硬化性コート剤をUV硬化させることにより、膜厚1μmの接着層を形成した。UV硬化後、23℃で1時間静置した。
【0077】
(第2工程:金属導電層30の形成)
<金属薄膜130の形成>
接着層が形成されたPETフィルムをスパッタリング装置内にセットした。銅をターゲットとして用い、アルゴンガスを装置内に導入しながら、製膜室内圧力0.2Pa、基板温度0℃、パワー密度12kWの条件でスパッタリング製膜を行い、膜厚600nmの銅層を形成した。
【0078】
<金属薄膜130のパターニング>
金属薄膜(銅層)をフォトリソグラフィ法によりパターニングした。具体的には、金属薄膜上に、ポジ型レジスト(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、商品名:AZ−6112)を乾燥後の膜厚が1μmになるように塗布、乾燥した。その後、フォトマスクを用いて積算光量50mJ/cmで露光を行い、現像液(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、商品名:AZ400Kの25%希釈液)に浸漬することで現像を行った。純水でリンスを行い、金属薄膜上にレジストパターンを形成した。エッチング液として、酸化第二鉄水溶液を用いて、銅層のエッチングを行った。純水でリンスを行った後、剥離液(商品名:AZ400K)でレジストの剥離を行い、純水でリンスした後、乾燥した。以上のパターニングにより、銅配線(幅:100μm、厚み:0.6μm、間隔:5mm)からなる金属導電層を形成した。
【0079】
(第3工程:透明導電層40の形成)
接着層および金属導電層上に、以下のように透明導電層を製膜した。まず、酸化インジウム錫(酸化錫含有量:10重量%)をターゲットとして用い、酸素とアルゴンとの混合ガスを装置内に導入しながら、酸素分圧2×10−4Pa、製膜室内圧力0.2Pa、基板温度0℃、パワー密度4kWの条件でスパッタリング製膜を行い、膜厚2nmのITO層を形成した。次に、酸化インジウム錫(酸化錫含有量7重量%)をターゲットとして用い、酸素とアルゴンの混合ガスを装置内に導入しながら、酸素分圧2×10−3Pa、製膜室内圧力0.2Pa、基板温度0℃、パワー密度12kWの条件でスパッタリング製膜を行った。以上により、接着層上の膜厚が100nmの透明導電層を形成し、金属導電層および透明導電層を含む電極を形成した。
【0080】
図5は、実施例1の電極の断面を示すSEM写真である。実施例1において、銅配線の断面形状はテーパー状であり、底辺が100μm、上辺が86μmであった。また、銅配線の厚みは600nmであった。図5では、銅配線の上面端部に庇状の突出部(図5中、Aで示す部分)が形成されていることも確認できる。
【0081】
(シート抵抗)
渦電流式抵抗測定装置(商品名:EC−80、ナプソン株式会社製)を用いて、金属導電層および透明導電層を含む電極のシート抵抗を測定したところ、シート抵抗は1.2Ω/□であった。
【0082】
(光線透過率)
全光線透過率測定装置(商品名:NDH7000、日本電色社製)を用いて、金属導電層および透明導電層を含む電極が形成された領域の光線透過率を測定したところ、光線透過率は82%であった。
【0083】
JIS K 5600に準じた方法により、金属導電層および透明導電層を含む電極のPETフィルムへの碁盤目密着性を評価した。具体的には、電極が形成されている側のPETフィルム表面を、1mm間隔の縦横10区分の碁盤目状にカッターで切り、粘着性テープを貼った後に剥がし、升目の剥がれの程度で密着性を評価した。剥がれの表記方法としては、100個の碁盤目の剥がれが全くない場合を100/100と表記し、90個が残り10個が剥がれた場合を90/100、100個の碁盤目のすべてが剥がれた場合は0/100と表記した。実施例1では、碁盤目密着性は90/100であり、良好であった。
【0084】
[実施例2]
第2工程において、スパッタリング法により膜厚200nmの銅層を製膜した後、電解めっき法により膜厚400nmの銅層を製膜した以外は、実施例1と同様の方法で電極付き基板を作製した。得られた電極付き基板は、シート抵抗が1.6Ω/□、光線透過率が81%、碁盤目密着性が95/100であった。
【0085】
[実施例3]
第3工程において、膜厚50nmの透明導電層を形成した以外は、実施例1と同様の方法で電極付き基板を作製した。得られた電極付き基板は、シート抵抗が2.7Ω/□、光線透過率が83%、碁盤目密着性が100/100であった。
【0086】
[実施例4]
第2工程において、ニッケル/銅合金(Ni/Cu=40/60)をターゲットとして用い、スパッタリング法により膜厚200nmのニッケル/銅層を製膜した以外は、実施例2と同様の方法で電極付き基板を作製した。得られた電極付き基板は、シート抵抗が3.3Ω/□、光線透過率が65%、碁盤目密着性が100/100であった。
【0087】
[実施例5]
第1工程において、紫外線硬化性コート剤に含まれるアミノシランを商品名SilQuest_A−1120(N−(2−アミノエチル)−3―アミノプロピルトリメトキシシラン)、MOMENTIVE社製)に変更した以外は、実施例4と同様の方法で電極付き基板を作製した。電極付き基板は、シート抵抗が3.4Ω/□、光線透過率が64%、碁盤目密着性が90/100であった。
【0088】
[比較例1]
第1工程を実施しない以外は、実施例1と同様の方法で電極付き基板を作製した。電極付き基板は、シート抵抗が1.6Ω/□、光線透過率が80%、碁盤目密着性が0/100であった。
【0089】
[比較例2]
比較例2では、第1工程を実施せず、第2工程において、スパッタリング法により膜厚200nmの銅層を製膜した(電解めっき法による銅層の製膜は実施しなかった)。さらに、エッチング液として酸/アミン系水溶液を用いた。それ以外は、実施例1と同様の方法で電極付き基板を作製した。電極付き基板は、シート抵抗が12Ω/□、光線透過率が80%、碁盤目密着性が0/100であった。
【0090】
図6は、比較例2の電極の断面を示すSEM写真である。比較例2において、銅配線の断面形状は逆テーパー状であった。図6では、金属導電層の側面上に形成された透明導電層の膜厚が小さいこと(図6中、Aで示す部分)、および、基板上に形成された透明導電層の一部が断線していること(図6中、Bで示す部分)が確認できる。
【0091】
【表1】
【0092】
表1より、PETフィルム上に接着層を形成し、その上に金属導電層を形成した実施例1〜5では、シート抵抗が低く、光線透過率が高いことに加え、碁盤目密着性が良好であることが確認された。
【0093】
一方、接着層を形成せず、PETフィルム上に金属導電層を形成した比較例1および比較例2では、碁盤目密着性が不良であることが確認された。碁盤目密着性が低い比較例1および比較例2では、電極付き基板に応力がかかった際、銅配線がPETフィルムから剥離しやすいと考えられる。さらに、エッチング液として酸/アミン系水溶液を用いた比較例2では、エッチング液として酸化第二鉄水溶液を用いた比較例1と比べて、シート抵抗が高いことも確認された。
【符号の説明】
【0094】
10 透明フィルム基板
20 電極
30,31 金属導電層(金属線)
40 透明導電層
50 接着層
61 レジスト層
63 レジストパターン
100 電極付き基板
130 金属薄膜
150 紫外線硬化性コート剤

図1
図2
図3
図4
図5
図6