(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556498
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】ポンプ式注出器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/34 20060101AFI20190729BHJP
B05B 1/02 20060101ALI20190729BHJP
F04B 9/14 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
B65D47/34 200
B05B1/02 101
F04B9/14 B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-109501(P2015-109501)
(22)【出願日】2015年5月29日
(65)【公開番号】特開2016-222276(P2016-222276A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2017年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 博
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 剛
【審査官】
矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−149904(JP,A)
【文献】
実開平05−077049(JP,U)
【文献】
特開2002−326044(JP,A)
【文献】
特許第5246573(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44−35/54
B65D 39/00−55/16
F04B 9/00−15/08
B05B 1/00− 3/18
B05B 7/00− 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に保持され、該容器内の内容液を吸引して圧送するポンプと、圧送された内容液を通す内部通路を有し、押し下げ及び復元の繰り返しにより該ポンプを駆動させるノズルヘッドとを備えるポンプ式注出器において、
前記内部通路は、前記ポンプに通じる縦通路と、該縦通路に連結するとともに外界に向けて開口する横通路とを有するとともに、該縦通路と該横通路がつながる連結部には、該縦通路に向かって内側に突出する突起を有し、
前記横通路に、前記内部通路の開口から前記連結部に向けて延在して、該連結部側の入口から導入した内容液を該開口側の出口から注出させる注出部材が配置され、
前記注出部材は、前記突起に連係して該横通路からの抜け出しが阻止される凹部を有するポンプ式注出器。
【請求項2】
前記注出部材は、可撓性を有する樹脂製であって、成形後の初期状態に対して前記横通路に配置される状態では屈曲される請求項1に記載のポンプ式注出器。
【請求項3】
前記縦通路は、内側に向けて突出するとともに該縦通路に沿って延在する縦リブを有し、前記注出部材は、該縦リブに連係する切り欠き部を有する請求項1又は2に記載のポンプ式注出器。
【請求項4】
前記ポンプの下流側に、内容液を発泡させる発泡部材を備え、前記縦リブは、前記発泡部材の上端に当接する請求項3に記載のポンプ式注出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に充填した内容液を外界に向けて注出させるポンプ式注出器に関するものであり、特に、内容液を所定の形態で注出することができる注出部材を備えるポンプ式注出器に関する。
【背景技術】
【0002】
シャンプー、ボディソープ、ハンドソープ、洗顔料等の内容液を充填した容器においては、容器の口部に保持され、ノズルヘッドの押し下げ及び復元を繰り返すことによってポンプを駆動させて内容液を注出させるポンプ式注出器が多用されている。
【0003】
この種のポンプ式注出器は、ノズルヘッドの先端開口から内容液を直接注出させるものが一般的であるが、所定の形態(例えば複数に分かれるようにして注出させることや、通常よりも長い距離で注出させる等)で注出させるべく、ノズルヘッドの先端開口に注出部材(マウスピース)を取り付けたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3609486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでこのような注出器にあっては、注出部材がノズルヘッドから不用意に外れないようにするために、注出部材を抜け止め保持する機能を持たせる必要がある。特許文献1に記載のポンプ式注出器では、注出部材の外周面に凸部を設けるとともにノズルヘッドの通路の内側には凹部を設け、凸部が凹部に嵌まり込むことで注出部材が抜け止めされるようにしている。
【0006】
すなわち、ノズルヘッドの通路に設けた凹部はアンダーカットになるため、ノズルヘッドを成形する際の離型性を考慮する必要があった。
【0007】
本発明は、このような点を解決することを課題とするものであり、従来のノズルヘッドに設けていた凹部を利用することなく注出部材を抜け止め保持することができるポンプ式注出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、容器の口部に保持され、該容器内の内容液を吸引して圧送するポンプと、圧送された内容液を通す内部通路を有し、押し下げ及び復元の繰り返しにより該ポンプを駆動させるノズルヘッドとを備えるポンプ式注出器において、
前記内部通路は、前記ポンプに通じる縦通路と、該縦通路に連結するとともに外界に向けて開口する横通路とを有するとともに、該縦通路と該横通路
がつながる連結部に
は、該縦通路に向かって内側に突出する突起を有し、
前記横通路に、前記内部通路の開口から前記連結部に向けて延在して、該連結部側の入口から導入した内容液を該開口側の出口から注出させる注出部材が配置され、
前記注出部材は、前記突起に連係して該横通路からの抜け出しが阻止される凹部を有するポンプ式注出器である。
【0009】
前記注出部材は、可撓性を有する樹脂製であって、成形後の初期状態に対して前記横通路に配置される状態では屈曲されることが好ましい。
【0010】
前記縦通路は、内側に向けて突出するとともに該縦通路に沿って延在する縦リブを有し、前記注出部材は、該縦リブに連係する切り欠き部を有することが好ましい。
【0011】
前記ポンプの下流側に、内容液を発泡させる発泡部材を備え、前記縦リブは、前記発泡部材の上端に当接することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、ノズルヘッドにおける縦通路と横通路との連結部に突起を有し、横通路に配置される注出部材は、ノズルヘッドの開口から連結部に向けて延在するものであって、且つこの突起に連係する凹部を備えている。これにより、凸部が凹部に引っ掛かって注出部材を抜け止め保持することができる。また、ノズルヘッドを成形するにあたり、縦通路と横通路との連結部では、縦通路を形成するための金型部分と横通路を形成するための金型部分とが突き当たることになるが、突起はこの突き当て面に設けることができるので、この場合は突起がアンダーカットになることはなく、良好な離型性を得ることができる。
【0013】
注出部材を、可撓性を有する樹脂製とし、成形後の初期状態に対して横通路に配置される状態では屈曲されるようにする場合には、注出部材は付勢力をもって横通路に配置されることになる。すなわち、ノズルヘッドから注出部材を抜け出させる向きに力が及ぶ場合でも、注出部材と横通路との間には抵抗力が生じるため、注出部材の抜け出しがより確実に防止できるとともに、前記凸部と前記凹部との係合が確実に維持される。
【0014】
縦通路に、内側に向けて突出するとともにこの縦通路に沿って延在する縦リブを設け、注出部材に、縦リブに連係する切り欠き部を設ける場合は、ノズルヘッドに対して注出部材が縦リブに交差する方向にずれることを防止できる。
【0015】
ポンプの下流側に発泡部材を設ける場合は、内容液を発泡させることができるので、注出部材から注出させた内容液の形態が維持されやすくなる。また縦リブを、発泡部材の上端に当接させる場合は、縦リブに、発泡部材の抜け止め(位置決め)機能を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に従うポンプ式注出器の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】
図1に示すポンプ式注出器の平面図、及び注出部材を構成する注出ヘッドの正面図である。
【
図3】(a)は注出部材を構成する挿入部材の初期状態を示す、断面図、平面図、正面図、背面図であり、(b)は挿入部材が横通路に配置される際に屈曲する状態を示す断面図である。
【
図4】(a)は
図1におけるX部の部分拡大断面図であり、(b)は、(a)に示すY−Yに沿う断面図である。
【
図5】連結部に形成される突起について説明する部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明であるポンプ式注出器の一実施形態を詳細に説明する。なお、本明細書、特許請求の範囲、要約書において、「上」とは、後述するベースキャップに対してノズルヘッドが位置する側であり、「下」とはその反対側である。また、「前」とは、ノズルヘッドの中心軸線に対してノズルヘッドの開口が位置する側であり、「後」方向とはその反対側である。
【0018】
図1において、符号1は、図示を省略する容器の口部に装着されるベースキャップを示す。ベースキャップ1は、容器の口部を取り囲む円筒状の周壁1aと、周壁1aの上端から径方向内側に向けて延在するドーナツ状の天面壁1bと、天面壁1bの内周縁から起立する筒状壁1cとを備えている。また、周壁1aの内周面には、容器の口部に設けられた雄ねじ部に適合する雌ねじ部1dが設けられている。なお、ベースキャップ1を容器に保持するには、アンダーカット等、従来知られた他の係合手段を用いてもよい。
【0019】
図中、符号2は、ベースキャップ1によって容器の口部に吊下げ保持され、容器に充填した内容液を汲み上げるポンプを示す。本実施形態のポンプ2は、小径筒体3aと大径筒体3bとを直列状に配置した形態をなすシリンダー3に、内容液用ピストン4、ポペット5、ステム6、スプリング7、ボール弁8、空気用ピストン9、逆止弁10を組み込んだものであり、ステム6の押し下げ及び復帰によって、内容液と空気とをそれぞれ個別に吸引、加圧、圧送するものである。
【0020】
符号11は、ポンプ2から圧送された内容液及び空気を合流させて発泡させる発泡部材である。本実施形態の発泡部材11は、ステム6の上部に設けられている。また発泡部材11は、リング状となる本体部の一端部にメッシュを取り付けたメッシュリング12と、メッシュリング12を保持する(本実施形態では2つのメッシュリング12を保持する)ジェットリング13とにより構成されている。
【0021】
符号14は、ノズルヘッドである。ノズルヘッド14は、発泡部材11を取り囲んでステム6に連結する内筒14aと、ステム6を押し下げる際に押圧部となる天壁14bと、天壁14bに連結するとともに横方向に向けて延在するノズル14cとを備えている。また、ノズルヘッド14の内部には、内筒14aの内側に形成される縦通路T1と、ノズル14cの内側に形成され、一端が縦通路T1に連結して他端が外界に向けて開口する横通路T2とで構成される内部通路Tが設けられている。また、内筒14aの内面における後方には、縦通路T1に沿って延在する縦リブ14dが設けられている。ここで縦リブ14dは、メッシュリング12の一部に被さるようにジェットリング13の上端に当接しており、メッシュリング12及びジェットリング13の抜け出しを防止している。
【0022】
図4、
図5に示すように、縦通路T1と横通路T2とがつながる連結部T3には、天壁14bから内側に突出する突起14eが設けられている。本実施形態の突起14eは、
図5に示すように、縦通路T1を形成するための金型部分M1と横通路T2を形成するための金型部分M2との突き当て面に形成されるようにしている。これにより、突起14eがアンダーカットになることはないので、良好な離型性を得ることができる。
【0023】
また
図1に示すようにノズルヘッド14は、内筒14aを取り囲む外筒14fを備えている。更に本実施形態では、外筒14fの下端に装着され、ベースキャップ1の筒状壁1cとの隙間を減らす環状部材15を設けている。
【0024】
横通路T2には、注出部材16が配置されている。本実施形態の注出部材16は、ノズル14cの開口から連結部T3に向けて延在する挿入部材17と、挿入部材17の前方に取り付けられる注出ヘッド18とで構成されている。
【0025】
挿入部材17は、
図3(a)に示すように矩形状をなす基部17aと、基部17aの後端から斜め上方向に伸びるとともに、基部17aよりも小さな矩形状になる環状壁17bと、環状壁17bの後端から環状壁17bの延在する向きと同じ向きで延在し、下側を開口させた、断面コ字状の管状壁17cとを備えている。また基部17aの外周面には、外側に向けて突出する凸部17dが設けられていて、管状壁17cの後端側上面には、溝状の凹部17eが設けられている。なお凹部17eは、管状壁17cを貫く貫通孔であってもよい。更に、管状壁17cの後端中央部には、切り欠き部17fが設けられている。なお、
図3(a)は、成形後の初期状態での挿入部材17を示している。
【0026】
挿入部材17は、可撓性を有する樹脂製であって、
図3(b)に仮想線で示す初期状態に対し、横通路T2に配置される状態では、同図に実線で示すように下向きに屈曲させている。
【0027】
注出ヘッド18は、
図1、
図2に示すように、挿入部材17の基部17aを取り囲む矩形状の外壁18aと、外壁18aの前端に設けられた頂壁18bと、頂壁18bから前方に向けて延在する円筒状の注出筒18c(本実施形態では総計3つを一列に並べている)を備えている。また外壁18aの内周面には、凸部17dに連係する爪部18dを設けている。
【0028】
このような挿入部材17及び注出ヘッド18で構成される注出部材16を横通路T2に配置した際、
図4(a)に示すように凹部17eは突起14eに連係するので、注出部材16はノズルヘッド14に対して抜け止め保持される。この時、挿入部材17は初期状態から屈曲していて、その復元力で挿入部材17の一部がノズルヘッド14に当接している。本実施形態では、管状壁17cが断面コ字状であるため(上部の壁だけでなく両側部にも壁があるため)、管状壁17cのコシが強くなることからより高い復元力で挿入部材17をノズルヘッド14に当接させることができる。このため、ノズルヘッド14から挿入部材17を抜け出させる向きに力が及ぶ場合でも、ノズルヘッド14と挿入部材17との間には抵抗力が生じるため、挿入部材17の抜け出しがより確実に防止できる。しかも、挿入部材17の復元力は上方向に作用するため、突起14eに対する凹部17eの掛かりがより確実になり、挿入部材17の抜け出しが更に確実に防止できる。なお、挿入部材17の環状壁17bは、ノズル14cの内面に密に当接しているので、ここから内容液が漏れ出すことはない。
【0029】
本発明に従うポンプ式注出器は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に従う範囲で種々の変更が可能である。例えば上述した実施形態では発泡部材を設けたが、これを設けずに内容液を直接注出させるようにしてもよい。また注出ヘッドに設けた注出筒の数、配置、穴径等は、所期する注出形態に合わせて適宜変更してもよい。そしてポンプは、上述した態様のものに限られず、従来知られた他の態様のポンプを用いてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1:ベースキャップ
1a:周壁
1b:天面壁
1c:筒状壁
1d:雌ねじ部
2:ポンプ
3:シリンダー
3a:小径筒体
3b:大径筒体
4:内容液用ピストン
5:ポペット
6:ステム
7:スプリング
8:ボール弁
9:空気用ピストン
10:逆止弁
11:発泡部材
12:メッシュリング
13:ジェットリング
14:ノズルヘッド
14a:内筒
14b:天壁
14c:ノズル
14d:縦リブ
14e:突起
14f:外筒
15:環状部材
16:注出部材
17:挿入部材
17a:基部
17b:環状壁
17c:管状壁
17d:凸部
17e:凹部
17f:切り欠き部
18:注出ヘッド
18a:外壁
18b:頂壁
18c:注出筒
18d:爪部
M1:縦通路を形成する金型部分
M2:横通路を形成する金型部分
T:内部通路
T1:縦通路
T2:横通路
T3:連結部