特許第6556504号(P6556504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556504
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】物体搬送装置及びこれを用いた格納設備
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/32 20060101AFI20190729BHJP
   B65G 1/04 20060101ALI20190729BHJP
   E04H 6/20 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   E04H6/32
   B65G1/04 565
   E04H6/20 D
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-112926(P2015-112926)
(22)【出願日】2015年6月3日
(65)【公開番号】特開2016-223235(P2016-223235A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 右季
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−077275(JP,A)
【文献】 特開平05−201527(JP,A)
【文献】 実開昭62−186813(JP,U)
【文献】 特開平06−158904(JP,A)
【文献】 米国特許第05314285(US,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02798122(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00 − 6/44
B65G 1/04
B65G 47/52,47/56 − 47/62,47/66
B65G 47/64,47/68 − 47/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を収容する複数の区画を水平方向に沿って縦横に配列してなる平面に、前記物体を上面に載置して前記平面に沿って搬送する送りローラを複数配した送り機構を備え、
前記送りローラは、前記平面における前記区画の配列方向に対して斜めの角度の回転軸を各々有する全方向車輪として構成された物体搬送装置であって、
前記送り機構のうち少なくとも一部は、一基毎に独立した駆動装置を備え、各々が独立した向きや速さで回転するよう構成された二対の前記送りローラを対角線状に配置した送り兼旋回機構であり、
前記平面には、前記物体を上面に載置し且つ前記物体の移動を回転により許容する支持ローラが備えられ、該支持ローラの少なくとも一部が全方向車輪として構成されていることを特徴とする物体搬送装置。
【請求項2】
前記送り機構のうち少なくとも一部は、互いに対角線状に配置された二対の前記送りローラを備えており、
該二対の送りローラは、一対毎に平行又は一致する回転軸を有し、且つ該一対毎に備えられた駆動装置により、一対毎に同時に同じ向きに同じ速さで回転するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の物体搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の物体搬送装置を備えたことを特徴とする格納設備。
【請求項4】
車両を載置したパレットを前記送りローラによって搬送する駐車場であることを特徴とする請求項に記載の格納設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車場や倉庫等の格納設備において、物体を自動的に搬送するための物体搬送装置及びこれを用いた格納設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駐車場や倉庫等の格納設備には、車両等の荷を載置したパレットや、荷を収容したコンテナ等の物体を平面内で自動的に搬送する物体搬送装置を備えたものがある。
【0003】
図12はこうした機械式の格納設備の一例を示すもので、ここでは一般的な水平循環方式の立体駐車場を例示している。格納設備(駐車場)1には、複数階層にわたって設けられた平面2に長方形のパレット3が縦横にそれぞれ複数列配置されており、車両4を載せたパレット3を平面2に沿って搬送することができるようになっている。
【0004】
駐車場1の各階層を構成する平面2は、各々一枚のパレット3を配置可能な複数の区画2aが、水平面上に縦横に配列してなる。各平面2について、最低一箇所以上の区画2aはパレット3を収容しない空き区画5となっており、この空き区画5にパレット3を一枚ずつ縦送り又は横送りすることにより、平面2上でパレット3を移動させることができるようにしている。そして、昇降部6内に位置するパレット3を、図示しないリフトにより乗込面1aと各平面2との間で昇降させ、乗込面1aから出入りする車両4を各平面2との間で移動させるようになっている。乗込面1aにはターンテーブル7が備えられ、入庫時又は出庫時にこの上で車両4をパレット3ごと旋回させて向きを変更させることができるようになっている。
【0005】
上記したような物体搬送装置や格納設備に関連する技術文献としては、例えば、下記特許文献1や2がある。
【0006】
特許文献1には、平面上又はトレー(パレット)下面のいずれか一方に横方向レール及び縦方向レールを備え、他方に横方向車輪と縦方向車輪を備えて平面上にトレーを支持し、平面上に備えたトレー駆動装置によってトレーを走行させるトレー送り機構(物体搬送装置)が記載されている。トレー駆動装置は縦横に方向転換可能な送りローラ装置を備え、該送りローラ装置の駆動によりトレーを縦横に搬送するようになっている。
【0007】
特許文献2には、床面(平面)上に横方向の軸を持つ一対の縦送り兼ガイド双方向ローラと、縦方向の軸を持つ一対の横送り兼ガイド双方向ローラとを備え、それら二対の双方向ローラをパレットの下面に縦横に形成した溝形のレールにはめ込んで双方向ローラ上にパレットを載置し、前記縦送り兼ガイド双方向ローラ及び横送り兼ガイド双方向ローラの駆動によってパレットを縦横に送るパレットの搬送装置(物体搬送装置)が記載されている。縦送り兼ガイド双方向ローラと横送り兼ガイド双方向ローラにはオムニホイール(登録商標)等の商品名で呼ばれる機構が用いられており、縦送り兼ガイド双方向ローラと横送り兼ガイド双方向ローラの上でパレットが無理なく縦横に移動できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−96558号公報
【特許文献2】特開2014−77275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したような機械式の格納設備においては、建造にかかるコストをできる限り低く抑えることは勿論、なるべく小さいスペースに多くの荷を格納する格納効率や、荷を短時間で格納し又は取り出す時間効率が一般に求められる。ここで、上記特許文献1に記載されたトレー送り機構の場合、トレーの移動方向を切り替えるには送りローラ機構の方向転換を行わなくてはならず、方向転換にかかる時間がロスとなって時間効率を阻害してしまう。また、送りローラ機構の方向転換の際にトレーとの間に発生する摩擦を軽減するために軸受が必要となり、材料コストが高くなる。
【0010】
上記特許文献2に記載されたパレットの搬送装置では、各一対の縦送り兼ガイド双方向ローラと横送り兼ガイド双方向ローラに、それぞれモータが必要となる。そして、パレットを縦方向に移動させている間は横送り兼ガイド双方向ローラのモータは動作せず、横方向に移動させている間は縦送り兼ガイド双方向ローラのモータは動作しない。すなわち、モータはそれぞれが縦方向あるいは横方向の駆動に専用のものとなっており、パレットの搬送に際し、動作しているモータの数は常に設置台数の半数を超えることはない。このため、設置台数に比して少ない数のモータで搬送を行わなくてはならず、大きな動力のモータを多数設置する必要があり、建造コストが高くなってしまう。
【0011】
また、荷を載置したパレットは、平面上を縦方向や横方向だけでなく、斜め方向にも移動可能となっていれば、場合によっては搬送にかかる時間が短くて済み、時間効率の面でより有利である。しかし、上記特許文献1、2のいずれにおいても、パレット(トレー)は斜め移動ができるようにはなっていない。
【0012】
本発明は、斯かる実情に鑑み、簡単な構成でコストを低減しながら搬送の時間効率を高め得る物体搬送装置及びこれを用いた格納設備を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、物体を収容する複数の区画を水平方向に沿って縦横に配列してなる平面に、前記物体を上面に載置して前記平面に沿って搬送する送りローラを複数配した送り機構を備え、
前記送りローラは、前記平面における前記区画の配列方向に対して斜めの角度の回転軸を各々有する全方向車輪として構成された物体搬送装置であって、
前記送り機構のうち少なくとも一部は、一基毎に独立した駆動装置を備え、各々が独立した向きや速さで回転するよう構成された二対の前記送りローラを対角線状に配置した送り兼旋回機構であり、
前記平面には、前記物体を上面に載置し且つ前記物体の移動を回転により許容する支持ローラが備えられ、該支持ローラの少なくとも一部が全方向車輪として構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
而して、このようにすれば、送りローラの駆動により該送りローラ上で前記物体を搬送することができ、前記物体の搬送方向を縦横に切り替えるにあたって、前記送りローラの向きを変更する必要がない。
【0015】
また、前記送り機構のうち少なくとも一部は、一基毎に独立した駆動装置を備え、各々が独立した向きや速さで回転するよう構成された二対の前記送りローラを対角線状に配置した送り兼旋回機構となっているので、駆動装置の駆動により、送り兼旋回機構上に載置した物体を旋回させることができる。
【0016】
更に、前記平面には、前記物体を上面に載置し且つ前記物体の移動を回転により許容する支持ローラが備えられているので、送り機構による物体の搬送をスムーズに行うことができ、しかも、前記支持ローラの少なくとも一部が全方向車輪として構成されているので、送り機構や送り兼旋回機構による物体の斜め方向の搬送や旋回をスムーズに行うこともできる。
【0017】
本発明の物体搬送装置において、前記送り機構のうち少なくとも一部は、互いに対角線状に配置された二対の前記送りローラを備えており、該二対の送りローラは、一対毎に平行又は一致する回転軸を有し、且つ該一対毎に備えられた駆動装置により、一対毎に同時に同じ向きに同じ速さで回転するよう構成されていることが好ましく、このようにすれば、駆動装置に必要とされる出力を小さくし、且つ駆動装置の設置台数を最低限とすることができる。
【0018】
また、本発明は、上記に記載の物体搬送装置を備えたことを特徴とする格納設備にかかるものである。
【0019】
本発明の格納設備は、車両を載置したパレットを前記送りローラによって搬送する駐車場として構成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の物体搬送装置及びこれを用いた格納設備によれば、簡単な構成でコストを低減しながら搬送の時間効率を高め得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に関連する参考例を示す平面図である。
図2】本参考例に用いられる全方向車輪の一例を示す斜視図である。
図3】本参考例における要部の構成の別の例を示す平面図である。
図4】本参考例における要部の構成のさらに別の例を示す平面図である。
図5】本参考例の動作を説明する概念図である。
図6】本参考例における物体搬送装置の配置の一例を示す平面図である。
図7】本発明の物体搬送装置の一実施例を示す平面図である。
図8】本実施例における要部の構成を示す平面図である。
図9】本実施例の動作を説明する概念図である。
図10】本実施例の動作を説明する概念図である。
図11】本実施例を適用した格納設備の一例を示す概念図である。
図12】格納設備の一種である立体駐車場の構成の一例を示す全体概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1図6は本発明に関連する参考例を示すものであって、図中、図12と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
【0024】
参考例の物体搬送装置は、図1に示す如く、格納設備1の平面2に沿って井桁状に敷設した支持構造(フレーム)8に、複数の支持ローラ9と、複数の送りローラ10を備えた送り機構11とを設けてなる。支持ローラ9と送りローラ10の上には、車両等の荷を載せたパレット3や、荷を載せない空のパレット3が支持される(以下では説明の都合上、パレット3に載せた荷は基本的に図示せず、荷を載置したパレット3と空のパレット3とを、搬送される物体として区別せず同等に扱う)。
【0025】
平面2は、一個の物体(一枚のパレット3)を収納する区画2aを水平方向に沿って縦横にそれぞれ複数列配列してなり、フレーム8は、一つの区画2aを一単位として構成されている。一つの区画2aを構成するフレーム8は、一対の縦フレーム8a,8aと一対の横フレーム8b,8bからなる矩形の枠8cの内側に、縦方向に渡した支持フレーム8dを備えてなる。
【0026】
尚、ここでは一対の縦フレーム8a,8aと一対の横フレーム8b,8bからなる枠8cをフレーム8の一単位とした場合を例示しているが、フレーム(支持構造)8の構成はこれに限定されない。例えば、枠8cをなす縦フレーム8aや横フレーム8bは、少なくとも一部が隣り合う区画2a同士の間で共有されていたり、省略されていたりしても良いし、逆にこれより多い数のフレームで構成されていても良い。あるいは、フレーム8は井桁状に構成されていなくても良い。さらには、支持構造8はフレームに限らず、例えば板状の部材で構成された床面や、フレームと床面の組み合わせ等であっても良い。平面2上に、支持ローラ9や送りローラ10を介し、搬送される物体としてのパレット3を支持できるようになっていれば良い。
【0027】
また、ここではパレット3を長方形状のものとして示しているが、パレット3の形状はこれに限定されない。例えば長方形以外の多角形や、円形等であっても良い。その他、載置される荷の形状や平面2の形状等の各種事情により、種々の形状を取り得る。
【0028】
あるいは、パレット3自体も、格納設備1の構成や用途によっては必ずしも必須ではない。本発明の物体搬送装置は駐車場に限らず、倉庫ほか各種の格納設備1に設置し得るし、搬送され格納される荷も車両とは限らない。そして、搬送される荷が例えば直方体状のコンテナのように、下面に平面を有する形状のものであれば、パレット3を省略し、搬送される荷そのものを直接物体搬送装置の上面に載置しても良い。
【0029】
支持フレーム8d上には、一つの区画2a毎に一基の送り機構11を備えている。各送り機構11はそれぞれ四基の送りローラ10(10a,10b,10c,10d)を備えており、該四基の送りローラ10a,10b,10c,10dは、矩形の枠8c内のそれぞれ右上、右下、左上、左下に、対称に配置されている。
【0030】
ここに示した送り機構11では、対角線をなす右上の送りローラ10aと左下の送りローラ10d、及び、右下の送りローラ10bと左上の送りローラ10cは、それぞれ回転軸が一致している。送りローラ10aと10dの回転軸と、送りローラ10bと10cの回転軸は、それぞれ区画2aの配列方向に対して斜めの角度を有している。ここに示した例では、区画2aの縦の配列方向に対し、一対の送りローラ10aと10dの回転軸、及び、一対の送りローラ10bと10cの回転軸がそれぞれなす角度θ,θが、いずれも45度となるように配置されており、送りローラ10aと10dの回転軸と、送りローラ10bと10cの回転軸は、互いに直交している。
【0031】
右上の送りローラ10aには、駆動装置としてモータ12aが備えられている。右上の送りローラ10aと左下の送りローラ10dは、該送りローラ10aと送りローラ10dの回転軸をなす動力伝達機構としてのシャフト13により連結されており、モータ12aの駆動をシャフト13を介して伝達することにより、送りローラ10aと10dを同時に同じ向きに同じ速さで回転させることができるようになっている。
【0032】
また、右下の送りローラ10bには、駆動装置としてモータ12bが備えられており、右下の送りローラ10bと左上の送りローラ10cは、三本のシャフト14a,14b,14cを備えた動力伝達機構14を介して連結されている。前記三本のシャフトのうち、シャフト14bは右下の送りローラ10bの回転軸をなし、シャフト14cは左上の送りローラ10cの回転軸をなしている。シャフト14bとシャフト14cは、動力伝達機構14の構成部品としてのスプロケット14d,14dとチェーン14eを介し、シャフト14aの両端にそれぞれ連結されている。このようにして、動力伝達機構14は、もう一方の動力伝達機構であるシャフト13を迂回して送りローラ10bと送りローラ10cを連結している。そして、モータ12bの駆動をシャフト14b,14a,14cを介して伝達することにより、送りローラ10bと10cを同時に同じ向きに同じ速さで回転させることができるようになっている。
【0033】
各送りローラ10(10a,10b,10c,10d)は、図2に示す如き全方向車輪10として構成されている。ここで言う「全方向車輪」とは、例えば上記特許文献2に記載のオムニホイール(登録商標)や、メカナムホイールといった名称で呼ばれる公知の機構の車輪を指すものとし、例えば図2に示す如く、ローラ10eの外周部に、周方向の軸を有する複数の小ローラ10fを備えてなる。ローラ10eの外周部において全方向車輪10と接する物体は、ローラ軸10gを中心としたローラ10eの回転によって全方向車輪10に対し軸方向と直交する方向に動くことができると同時に、小ローラ10fの回転により軸方向への動きも許容されるようになっている。
【0034】
図1に示す如く、フレーム8における各区画2a同士の間には、パレット3の平面2に沿った動きを許容しながらパレット3を支持する支持ローラ9が配置される。本参考例の場合、支持ローラ9は図2に示した送りローラ10のような全方向車輪ではない、一般的なローラとして構成されているが、全方向車輪として構成しても良い。あるいは、球体を備えてパレット3を支持しつつ、前記球体の転がりによってパレット3の動きを許容するような構成とすることもできる。ただし、一般的なローラとした方が、支持ローラ9の設置にかかるコストは低減できる。
【0035】
隣り合う区画2a,2a同士の間に配置された支持ローラ9は、それぞれ、隣接する区画2a,2aの配列方向と直交する方向の軸を有している。例えば、縦方向に並んだ区画2a,2aの間の支持ローラ9は横フレーム8bと平行な軸を有し、横方向に並んだ区画2a,2aの間の支持ローラ9は縦フレーム8aと平行な軸を有している。また、支持ローラ9は、昇降部6と、該昇降部6と隣接する平面2の区画2aとの間にも備えられている。支持ローラ9は、上記した送りローラ10とは異なり、モータ12a,12bのような駆動装置を持たないフリーローラとして構成される。
【0036】
尚、送り機構11における送りローラ10a,10b,10c,10dの配置やその他の構成は、図1に示した例に限定されない。各送りローラ10a,10b,10c,10dの回転軸の向きは縦方向に対して45度の角度でなくても良いし、対角線をなす送りローラ10aと10d、10bと10cの間で回転軸が一致している必要もなく、例えば、図3に示すように配置されていても良い。ここに示した送り機構11では、送りローラ10a,10d及び10b,10cの回転軸が縦方向に対してなす角度θ,θは45度より小さく、また、送りローラ10aと10dの間、及び10bと10cの間では、回転軸はそれぞれ互いに平行ではあるが、一致してはいない。
【0037】
図3の送り機構11において、動力伝達機構15は、送りローラ10aの回転軸をなすシャフト15aと、送りローラ10dの回転軸をなすシャフト15dとの間をシャフト15b,15cで連結してなる。シャフト15aとシャフト15bは、一対のスプロケット15e,15eとチェーン15fを介して互いに平行に連結されている。シャフト15bとシャフト15dは、シャフト15cの両端に、それぞれ一対のギヤ15g,15gを介して連結されている。シャフト15cは、シャフト15b,15dとそれぞれ直交している。
【0038】
一方、動力伝達機構16は、送りローラ10bの回転軸をなすシャフト16bと、送りローラ10cの回転軸をなすシャフト16cとの間をシャフト16aで連結してなり、シャフト16bとシャフト16cは、シャフト16aの両端に、それぞれ一対のギヤ16d,16dを介して連結されている。シャフト16aは、シャフト16b,16cとそれぞれ直交している。
【0039】
こうして、動力伝達機構15が動力伝達機構16を迂回するよう、送りローラ10aと送りローラ10dが動力伝達機構15によって、送りローラ10bと送りローラ10cが動力伝達機構16によって、それぞれ連結されている。そして、モータ12a,12bの駆動をそれぞれ動力伝達機構15,16を介して伝達することにより、送りローラ10aと10d、送りローラ10bと10cを、それぞれ同時に同じ向きに同じ速さで回転させることができるようになっている。
【0040】
また例えば、送り機構11は図4に示すような構成としても良い。図4に示した例では、各送りローラ10の軸が縦方向に対してなす角度θ,θは45度となっているが、送りローラ10a,10d及び10b,10cの間を連結する動力伝達機構17,18が、それぞれ両端において縦方向内側に90度折れ曲がった形となっている。
【0041】
動力伝達機構17は、送りローラ10aの回転軸をなすシャフト17aと送りローラ10dの回転軸をなすシャフト17dの間を、シャフト17bで連結しており、シャフト17bの両端は、それぞれ一対のギヤ17c,17cを介してシャフト17a,17dと連結されている。シャフト17bは、シャフト17a,17dとそれぞれ直交している。モータ12aはシャフト17bに取り付けられ、モータ12aの駆動により、送りローラ10aと10dを同時に同じ向きに同じ速さで回転させることができるようになっている。
【0042】
動力伝達機構18は、送りローラ10bの回転軸をなすシャフト18bと送りローラ10cの回転軸をなすシャフト18cの間を、シャフト18d,18a,18eで連結してなる。シャフト18bと18dの間、シャフト18cと18eの間は、それぞれ一対のギヤ18f,18fを介して連結され、シャフト18bと18d、シャフト18cと18eはそれぞれ直交している。シャフト18d,18eは、スプロケット18g,18gとチェーン18hを介し、シャフト18aの両端にそれぞれ連結されている。このようにして、動力伝達機構18は動力伝達機構17を迂回しつつ、送りローラ10bと10cを連結している。モータ12bはシャフト18dに取り付けられ、モータ12bの駆動により、送りローラ10bと10cを同時に同じ向きに同じ速さで回転させることができるようになっている。
【0043】
このような構成の動力伝達機構17,18により、図4に示した例では、図1に示した例と比較して、送りローラ10a,10b,10c,10dやモータ12a,12bが枠8cの縦方向に関してより内側に配置している。こうすることにより、区画2aあるいはパレット3(図1参照)の縦方向の幅が比較的小さい場合であっても、区画2a内に送りローラ10a,10b,10c,10dやモータ12a,12bを配置することができる。
【0044】
このように、送り機構11において、送りローラ10や駆動装置12a,12bは区画2aあるいはパレット3の形状や大きさ等により種々の配置を取り得、また、前記送りローラ10同士を連結する動力伝達機構も、送りローラ10や駆動装置12a,12bの配置によって種々の形態を取り得る。さらに、図1図3図4では、いずれも一基の送り機構11あたり、送りローラ10を四基(10a,10b,10c,10d)、駆動装置(モータ)を二基(12a,12b)ずつ備えたものを例示しているが、これら構成要素の数はこれに限定されない。例えば送りローラ10の数を増やし、駆動装置の数もこれに応じて増やしても良い。一基の駆動装置により駆動される送りローラ10の数も、図1図3図4に示した例では二基ずつとなっているが、これより多くても、少なくても良い。
【0045】
また、図1図3図4では、送りローラ10や駆動装置(モータ)12a,12bを備えた送り機構11は、一つの区画2aあたり一組備えた場合を例に説明しているが、一つの区画2aあたり一組以上の送り機構11を備えるようにしても良い。支持ローラ9の数やその配置も、上記図1に示したものに限定されない。支持ローラ9や送りローラ10によって、後述するようにパレット3が平面2に沿って適切に搬送されるよう配置されていれば良い。例えば図6に示す如く、横方向に隣接した区画2aの間には支持ローラ9を配置せず、代わりに送り機構11を増設するようにしても良い。
【0046】
次に、上記した本参考例の作動を説明する。本参考例の場合、格納設備(駐車場)1の全体構成は図12に示した従来例と同様であるので、従来例と共通する部分は図12の符号を用いて説明する。
【0047】
図12に示した従来例と同様、車両4は、昇降部6の乗込面1aに備えられたターンテーブル7上のパレット3に載置され、ターンテーブル7の旋回によって向きを変更された後、図示しないリフトにより昇降部6を格納先の平面2まで降ろされる。格納先の平面2に到着すると、パレット3は図示しないリフトに備えられた送り機構によって昇降部6から平面2に移され、さらに平面2内を格納先の区画2aまで搬送される。
【0048】
このとき、まずパレット3は図示しないリフトの送り機構により、昇降部6から隣接する区画2aに向かって縦方向に送られる。その後、図5に示す如く、隣接する区画2a同士の間を、送り機構11の作動により、縦方向又は横方向に一区画ずつ、平面2に沿って次々と搬送されていく。
【0049】
送り機構11によるパレット3の搬送動作について、図1を参照して説明する。送り機構11が図1の例のように構成されている場合、例えば図中下方向に向かってパレット3を搬送したい時には、パレット3の載置された送り機構11のモータ12aを作動させて送りローラ10a,10dをパレット3を図中右下に動かす方向に駆動すると同時に、モータ12bをモータ12aと同じ速さで作動させて、送りローラ10b,10cをパレット3を図中左下に動かす方向に駆動する。このとき、送りローラ10a,10dにとっては、パレット3は送りローラ10a,10dの駆動方向(図中右下)に移動しようとすると同時に、送りローラ10b,10cの駆動によって送りローラ10a,10dの駆動方向とは直交する方向(図中左下)にも移動しようとする。ここで、送りローラ10a,10dは図2に示す如き全方向車輪10として構成されているので、パレット3は送りローラ10a,10dの駆動によって図中右下に移動させられると同時に図中左下への動きも許容される。同様に、送りローラ10b,10cにとっては、パレット3は送りローラ10b,10cの駆動方向(図中左下)に移動しようとすると同時に、送りローラ10a,10dの駆動によって送りローラ10b,10cの駆動方向とは直交する方向(図中右下)にも移動しようとする。送りローラ10b,10cも全方向車輪として構成されているので、パレット3は送りローラ10b,10cの駆動によって図中左下に移動させられると同時に図中右下への動きも許容される。結果として、パレット3は送りローラ10a,10dの駆動方向のベクトル(図中右下)と、送りローラ10b,10cの駆動方向のベクトル(図中左下)とを合成した方向である図中下方向へと移動する。
【0050】
同様に、送りローラ10a,10dはパレット3を図中右下に動かす方向に駆動すると同時に、送りローラ10b,10cはパレット3を図中右上に動かす方向に駆動すれば、パレット3は右方向に移動する。送りローラ10a,10dはパレット3を図中左上に動かす方向に駆動すると同時に、送りローラ10b,10cはパレット3を図中左下に動かす方向に駆動すれば、パレット3は左方向に移動する。送りローラ10a,10dはパレット3を図中左上に動かす方向に駆動すると同時に、送りローラ10b,10cはパレット3を図中右上に動かす方向に駆動すれば、パレット3は上方向に移動する。
【0051】
ここで、送りローラ10が図1図3又は図4に示したような配置となっている場合、送りローラ10a,10dの中心軸が縦方向に対してなす角度θと、10b,10cの中心軸が縦方向に対してなす角度θは等しい。したがって、上記したような縦横方向の搬送においては、モータ12aと12bを等しい速さで駆動させれば、区画2a間でパレット3を正しく上下左右に移動させることができる。
【0052】
尚、図1図4に示した例では、前記角度θとθは共に45度であるので、パレット3の縦方向の搬送速度と横方向の搬送速度は、モータ12aと12bの駆動速度が同じであれば等しくなる。図3に示した例では、上記角度θとθは45度より小さいので、モータ12aと12bの駆動速度を同じとした場合、縦方向の搬送と比較して横方向の搬送の速度が大きくなる。
【0053】
平面2での搬送中、パレット3は、該パレット3の下面に位置する送りローラ10や支持ローラ9によって支持されながら移動する。上記したように、支持ローラ9は隣り合った区画2a,2a同士の並び方向に直交する回転軸を有しているので、パレット3が区画2aの間を縦横に移動する限り、その移動は支持ローラ9の回転によって許容され、パレット3は支持ローラ9の上面で支持されながらスムーズに移動することができる。
【0054】
区画2a,2a間におけるパレット3の移動が進むと、それまでパレット3を支持し搬送していた送り機構11の送りローラ10の上面からパレット3の一端が離れていくことになるが、その際にはパレット3の他端が別の送り機構11の送りローラ10の上面に到達している。従って、上で説明したような送りローラ10の駆動を送り機構11同士で順次引き継ぐことにより、パレット3の搬送をスムーズに続行することができる。
【0055】
尚、図6に示したような配置の場合、図中左右方向中央には、支持ローラ9の代わりに送り機構11が備えられた形となっている。パレット3の搬送に際しては、これらの送り機構11が支持ローラ9に代わってパレット3を支持すると共に、搬送するよう動作することで、安定した搬送を行うことができる。
【0056】
このように、本参考例においては、平面2に配置された送り機構11に各四基ずつ備えた送りローラ10の駆動によってパレット3を搬送するが、その際、縦横いずれの方向の搬送においても四基の送りローラ10を駆動する駆動装置(モータ)12a,12bが協働して駆動するようになっているので、縦方向あるいは横方向にそれぞれ専用の駆動装置を備える場合と比較して、各駆動装置(モータ)12a,12bを出力の小さなものとすることができる。また、各送り機構11には対角線をなす各一対の送りローラ同士(10aと10d及び10bと10c)を連結する動力伝達機構13,14,15,16,17,18を備えて動力を伝達させ、各送りローラ10を一対毎に駆動するようにしているので、各送りローラ10毎にそれぞれ駆動装置を取り付ける場合と比較して駆動装置の設置台数を削減できる。さらに、搬送方向の切り替えにあたって送りローラ10の向きを変える必要がなく、モータ12a,12bの回転方向を切り替えるだけで良いので、搬送方向の切り替えが短時間で済む。
【0057】
以上のように、上記本参考例においては、物体(パレット3、及び荷としての車両4を載置したパレット3)を収容する複数の区画2aを水平方向に沿って縦横に配列してなる平面2に、前記物体を上面に載置して平面2に沿って搬送する送りローラ10を複数配した送り機構11を備え、送りローラ10は、平面2における区画2aの配列方向に対して斜めの角度の回転軸を各々有する全方向車輪10として構成されているので、送りローラ10の駆動により該送りローラ10上で前記物体を搬送することができ、前記物体の搬送方向を縦横に切り替えるにあたって、送りローラ10の向きを変更する必要がない。
【0058】
また、本参考例において、送り機構11のうち少なくとも一部は、互いに対角線状に配置された二対の送りローラ10a,10d及び10b,10cを備えており、該二対の送りローラ10a,10d及び10b,10cは、一対毎に平行又は一致する回転軸を有し、且つ該一対毎に備えられた駆動装置(モータ)12a,12bにより、一対毎に同時に同じ向きに同じ速さで回転するよう構成されているので、駆動装置12a,12bに必要とされる出力を小さくし、且つ駆動装置12a,12bの設置台数を最低限とすることができる。
【0059】
また、本参考例においては、平面2に、前記物体を上面に載置し且つ前記物体の移動を回転により許容する支持ローラ9を備えているので、送り機構11による物体の搬送をスムーズに行うことができる。
【0060】
したがって、上記本参考例によれば、簡単な構成でコストを低減しながら搬送の時間効率を高め得る。
【0061】
図7図11は本発明の一実施例を示すものであって、図中、図1図6図12と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
【0062】
実施例の場合、図7に示す如く、格納設備(駐車場)1の平面2を構成する区画2aのうち一部の送り機構が、パレット3を搬送する機能に加え、旋回させる機能を備えた送り兼旋回機構19として構成されている。
【0063】
送り機構(送り兼旋回機構)19は、図8に示す如く、四基の送りローラ10a,10b,10c,10dの配置に関しては上記した送り機構11と同様であるが(図1参照)、送りローラ10同士の間に動力伝達機構を備えておらず、各送りローラ10が一基毎に独立した駆動装置としてのモータ12a,12b,12c,12dを備えている。これによって、各送りローラ10同士が、互いに独立に駆動されるようになっている点が送り機構11とは異なっている。
【0064】
実施例では、例えば図7に示す如く、駐車場1の各平面2のうち、昇降部6と縦方向に隣接した区画2aと、該区画2aと縦方向に隣接した区画2aとに、送り機構11に代えて送り兼旋回機構19が備えられ、その他の区画2aには送り機構11が備えられている。
【0065】
また、本実施例の場合、支持ローラとして通常のローラではなく、送りローラ10と同様の構成を有する全方向車輪20を備えている(図2参照)。この支持ローラとしての全方向車輪20は、各区画2a同士の間、及び区画2aと昇降部6との間に、回転軸が縦方向に対し斜めの角度を有する向きに配置されている。
【0066】
尚、このように支持ローラ20を全方向車輪として構成する場合、支持ローラ20の設置の向きや位置は、ここに例示した構成に限定されない。例えば、上記参考例図1参照)と同様、縦方向又は横方向に回転軸を有する向きに設置されていても良いし、また、区画2a,2a同士の間以外の場所に設置されていても良い。支持ローラ20や送りローラ10によって、後述するようにパレット3が支持ローラ20及び送りローラ10上を適切に搬送されるように配置されていれば良い。上記参考例の支持ローラ9について説明したのと同様に、支持ローラ20は、球体を備えてパレット3を支持しつつ、前記球体の転がりによってパレット3の動きを許容するような構成とすることも可能である。
【0067】
送り機構11や支持ローラ20、送り兼旋回機構19の配置も、ここに図示した例に限定されない。例えば上記参考例において図6で説明したのと同様、横方向に隣接した区画2aの間には支持ローラ20(図7参照)を配置せず、代わりに送り機構11や送り兼旋回機構19(図7参照)を増設し、一つの区画2aあたり一組以上の送り機構11や送り兼旋回機構19(図7参照)を備えるようにしても良い。
【0068】
次に、上記した本実施例の作動を説明する。本実施例においても、物体搬送装置や格納設備1の構成は図1図6に示した参考例と概ね共通し、図12に示した従来例とも共通する部分があるので、それらの共通部分については図1図6図12の符号を用いて説明する。
【0069】
実施例では、支持ローラ20を全方向車輪として構成しているので、区画2a,2a同士の間でパレット3を斜め方向に移動させることが可能となっている。例えば図9に示す如く、左下に位置する区画2aから、右上の区画2aに向かってパレット3を搬送する場合を考える。ここで、上記参考例において説明したのと同じように、例えば左下の区画2aに位置するパレット3を横方向に搬送して右下の区画2aに移動させてから、縦方向に搬送して右上の区画2aまで移動させるといったように、縦横方向の搬送によってパレット3を移動させることは勿論可能であるが、区画2aの空きに十分な余裕があれば(すなわちこの場合、移動にあたって右上の区画2aのほか、右下と左上の区画2aにもパレット3が位置しておらず、空き区画5(図12参照)となっていれば)、左下の区画2a(Aの位置)から右上の区画2a(Cの位置)に向かってパレット3を斜め方向に一直線に移動させることができる。
【0070】
ここに示した例では、各区画2aに配置された送り機構11は、上記参考例において説明した送り機構11(図1参照)と同様の構成となっており、各送りローラ10の回転軸が縦方向に対して45度の角度を有している。このような送り機構11により、パレット3をAの位置からCの位置に向かって斜め方向に移動させる場合には、まず左下の区画2aの送り機構11のうち、右上と左下に位置する送りローラ10a,10dはパレット3を右下に動かす向きに小さい速度で駆動させ、右下と左上に位置する送りローラ10b,10cはパレット3を右上に動かす向きに大きい速度で駆動させる。すると、パレット3の移動方向は、送りローラ10a,10dの駆動速度のベクトルと、送りローラ10b,10cの駆動速度のベクトルを合成したベクトルの方向となり、パレット3はAの位置からCの位置に向かって動き始める。
【0071】
パレット3の移動がある程度進むと、左下の区画2aの送り機構11はパレット3の下面から離れていき、パレット3は他の区画2aの送り機構11の上面へと到達する。例えば、Bの位置では、パレット3の下面に位置するのは左下の区画2aの送りローラ10aと10c、及び、左上の区画2aの送りローラ10bと10cである。このようにパレット3の位置が複数の送り機構11にまたがっている場合は、パレット3を載置している各送り機構11の送りローラ10を同時に、上記と同様に動作させれば良い。このように、パレット3の通過する経路上にある送り機構11を順次動作させることにより、パレット3は斜め方向に一直線に搬送され、縦横方向に搬送する場合と比較して移動時間が短時間で済むこととなる。
【0072】
ここで、本実施例の場合、各区画2aの間に備えた支持ローラ20は全方向車輪として構成されており(図2参照)、上面に載置したパレット3の移動をその向きにかかわらず許容する。したがって、支持ローラ20は斜め方向に搬送されるパレット3をその動きを妨げることなく支持し、パレット3の斜め方向の移動をスムーズに行わせることができる。
【0073】
尚、ここで示した斜め方向の移動はあくまで一例であり、例えばパレット3を横に一区画、縦に三区画分、斜めに移動させたいときや、あるいはパレット3ないし区画2aの縦横比がこれとは異なる場合等、移動させたい方向が図9で説明したのと違う場合には、各送りローラ10の回転速度や回転方向を適宜調整し、それらのベクトルの合成としてのパレット3の移動方向を制御すれば良いことは言うまでもない。また、場合によっては、パレット3を目的の区画2aまで搬送するにあたり、斜め方向の移動と縦横方向の移動を組み合わせても良いことも勿論である。例えば、図9において左下の区画2aから右上の区画2aへパレット3を搬送したい場合、左下の区画2aにおいて、送り機構11の右上と左下の送りローラ10a,10dを駆動させず、右下と左上の送りローラ10b,10cの駆動によってパレット3を右上に動かすと、パレット3は縦方向に対して45度の角度で右上の方向に移動する。その後、左上の区画2aや右上の区画2aの送り機構11を作動させてパレット3を右方向に移動させれば、パレット3を右上の区画2aに移動させることができる。この場合も、縦横方向の動きのみによって搬送する場合と比較すれば、搬送にかかる時間は短時間で済む。
【0074】
また、送り機構11が図3図4に示したような構成となっている場合も、上記に準じた動作によって斜め方向の搬送が可能である。例えば、図3に示した送り機構11の場合、各送りローラ10が縦方向に対してなす角度θ,θが45度とはなっていないが、ここで、区画2aの縦方向の長さをa、横方向の長さをbとした場合に、以下の数式
[数1]
tanθ=tanθ=a/b
により定義される大きさに角度θ,θを設定しておけば、右下及び左上の送りローラ10b,10cのみを駆動させるだけで左下の区画2aから右上の区画2aへとパレット3を一直線に搬送することができ、斜め方向の移動に際して駆動の制御が簡単である。尚、これ以外の角度で、例えばパレット3を横に一区画、縦に三区画分、斜めに移動させたいときなどには、右上及び左下の送りローラ10a,10dと、右下及び左上の送りローラ10b,10cを適宜その駆動速度を調整しながら協働させれば良いことは、図1図9に示した送り機構11の場合と同様である。
【0075】
また、図4に示した送り機構11の場合、各送りローラ10が縦方向に対してなす角度θ,θは45度であるが、図1と比較して各送りローラ10の回転軸の角度が90度ずつずれている。このような送り機構11で、例えば上に説明したのと同様に左下の区画2aから右上の区画2aへとパレット3を斜め方向に搬送したいときには、図9に示したのとは逆に、左下の区画2aに位置する送り機構11のうち、送りローラ10a,10dをパレット3を右上に搬送する向きに大きい速度で駆動させ、送りローラ10b,10cをパレット3を右下に搬送する向きに小さい速度で駆動させれば良い。
【0076】
尚、本実施例では、平面2内の一部の区画2aにおいて送り機構11の代わりに送り兼旋回機構19を備えているが、この送り兼旋回機構19によっても、送り機構11と同じようにパレット3を搬送することができる。送り兼旋回機構19は、送り機構11とは異なり動力伝達機構を備えておらず、送りローラ10同士の間で動力を伝達するようにはなっていないが、対角線をなして配置された送りローラ10に備えられた各モータ12aと12d、及びモータ12bと12cの間でそれぞれ動きを同調させれば、上記送り機構11と同様に縦横及び斜め方向の搬送を行うことができる。
【0077】
また、ここでは一つの区画2aにつき一基の送り機構11又は送り兼旋回機構19を備えた配置を例に説明したが、上記参考例図6で説明したのと同様に、送り機構11又は送り兼旋回機構19の区画2aに対する設置台数はこれより多いこともあり得る。こういった場合、パレット3が上面に載置された複数の送り機構11又は送り兼旋回機構19を上記と同様に動作させることで、同じようにパレット3の搬送を行うことができる。
【0078】
さらに、本実施例においては、上記したような送り機構11や送り兼旋回機構19による搬送に加え、一部の区画2aに備えられた送り兼旋回機構19の動作により、パレット3を旋回させることができるようになっている。図8を参照して説明すると、図中右上の送りローラ10aを、上面に載置されたパレット3を右下に移動させる方向に駆動し、右下の送りローラ10bを、パレット3を左下に移動させる方向に駆動し、左下の送りローラ10dを、パレット3を左上に移動させる方向に駆動し、左上の送りローラ10cを、パレット3を右上に移動させる方向に駆動すると、送りローラ10a,10b,10c,10dの上のパレット3は時計回りに旋回する。逆に、右上の送りローラ10aを、パレット3を左上に移動させる方向に駆動し、右下の送りローラ10bを、パレット3を右上に移動させる方向に駆動し、左下の送りローラ10dを、パレット3を右下に移動させる方向に駆動し、左上の送りローラ10cを、パレット3を左下に移動させる方向に駆動すると、送りローラ10a,10b,10c,10dの上のパレット3は反時計回りに旋回する。このように、送り兼旋回機構19では、各送りローラ10を互いに独立に駆動させることができるので、対角線をなす送りローラ10同士(10aと10d、10bと10c)をそれぞれ互いに反対方向に駆動させることにより、パレット3を旋回させることができるようになっている。
【0079】
パレット3を旋回するこのような動きは、例えば、上記したような送り兼旋回機構19を昇降部6(図7参照)のリフトに設置してリフト内で実行しても良いが(図示せず)、本実施例の場合、図7に仮想線で示す如く、昇降部6に隣接する区画2aに設置した送り兼旋回機構19で実行するようにしている。このとき、旋回に伴い、パレット3の端部は、パレット3の旋回を駆動する送り兼旋回機構19の設置された区画2aの外側にまで達するが、この区画2aの周囲に備えられた支持ローラ20は全方向車輪として構成されているため、この支持ローラ20上にパレット3が到達しても、支持ローラ20がパレット3の旋回を妨げることはない。また、旋回を駆動する送り兼旋回機構19の設置された区画2aに隣接する区画2aにも、同様の送り兼旋回機構19を備えており、該送り兼旋回機構19の各送りローラ10は互いに独立に駆動する全方向車輪として構成されているので、この送りローラ10が上記したパレット3の旋回を妨げることもない。パレット3の旋回の際には、隣接する複数の区画2aで送り兼旋回機構19の送りローラ10を動作させ、パレット3の旋回を複数の送り兼旋回機構19で協働して実行しても良い。
【0080】
尚、ここでは上記したように、送り兼旋回機構19は昇降部6と縦方向に隣接する二つの区画2aに備えられ、約三つの区画2a分のスペースの中で上記回転動作を行うようにしているが、これは、本実施例に示す如きパレット3の形状では、該パレット3を旋回させるために、パレット3三枚分の面積が最低限必要とされるからである。パレット3の形状や区画2a等の配置がこれと異なっていれば、上記回転動作に必要な面積ないし区画2aの数がここで示したのとは異なる場合もあり、その際には送り兼旋回機構19を備えるべき区画2aの数やその配置は様々に変わり得る。
【0081】
このように、本実施例の格納設備(駐車場)1では、昇降部6や平面2内でパレット3を旋回させることができる。このため、上記従来例や参考例図12図1参照)と異なり、入出庫の際に乗込面でパレット3を旋回させる必要がなく、入出庫時の時間を節約することができる。例えば、図12に示した従来例の場合には、車両4の入庫にあたり、車両4を乗込面1aのターンテーブル7で旋回させてから昇降部6や格納先の平面2に送り込むが、ここで、複数の車両4を連続して入庫したい場合、車両4を旋回させてから昇降部6や格納先の平面2に送り込むことになってしまい、一台ごとに旋回の時間がかかる。これに対し、本実施例のようにパレット3を乗込面以外の場所で旋回させるようになっていれば、例えば一台の車両を乗込面から入庫させた後、旋回させないまま昇降部6や格納先の平面2に送り込み、その車両を昇降部6や平面2で旋回させている間に次の車両を入庫させるといった運用ができる。このようにして、入出庫にかかる待ち時間を短縮できる。
【0082】
他にも、平面2内でパレット3の旋回と移動を同時に実行することにより、さらに時間効率を向上させることも可能である。例えば、図10では、縦方向に隣接した三つの区画2aに上記送り兼旋回機構19(図10中には図示せず)を備えた例を示しているが、このように配置した場合において、三つの区画2aに備えた三基の送り兼旋回機構19を協働させることにより、例えば図中にA〜Gで示されているような経路でパレット3を順次動かすことができる。図中上に位置する区画2a(Aの位置)から、図中下に位置する区画2a(Gの位置)までパレット3が移動する間にパレット3が旋回し、パレット3の向きが逆転している。このようにパレット3の搬送中に同時に旋回を行うようにすれば、旋回にかかる時間を省くことができる。
【0083】
送り兼旋回機構19の設置により平面2上でパレット3を旋回可能とすることは、格納設備(駐車場)1におけるレイアウト上の自由度の向上にも繋がる。すなわち、パレット3の旋回には、パレット3の形状によっては大きなスペース(ここに示した例では区画2a三つ分)が必要となるが、本実施例のように平面2に送り兼旋回機構19を備え、平面2上でパレット3を旋回するようにすれば、乗込面1a(図12参照)や昇降部6のスペースが狭くてもパレット3を旋回させることができるので、格納設備(駐車場)1の設置にあたって乗込面1aや昇降部6に大きなスペースが確保できなくても支障がない。
【0084】
また、例えば図11に示す如く、平面2内に柱やその他の障害物があっても、パレット3を旋回させて向きを変更することで対応が可能な場合もある。ここに示した例では、昇降部6から平面2に移動させたパレット3を、送り兼旋回機構19によって旋回させて向きを横向きから縦向きに変えることにより、柱の奥のスペース(図中下方)にまで搬送し、格納することができるようになっている。
【0085】
送り兼旋回機構19の設置には、安全面やコスト面においても利点がある。乗込面に設置したターンテーブルで旋回を行う場合(図12参照)、該ターンテーブルの上や周辺で運転者が車両を操作することになるので、運転者がターンテーブルを誤動作させるなどした場合に事故に繋がる可能性も考えられる。これに対し、本実施例では乗込面以外の場所にパレット3を旋回させる機構を設置しているので、運転者がいない場所でパレット3の旋回を行うことができ、パレット3の旋回に伴う事故を未然に防止することができる。加えて、本実施例の送り兼旋回機構19のような機構でパレット3を旋回させるようにすれば、旋回にあたりターンテーブルのような特別な機構を必要としないので、ターンテーブルの設置にかかるコストを削減することもできる。
【0086】
尚、本実施例においては、平面2を構成する区画2aのうち一部にのみ送り兼旋回機構19を備え、残りの区画2aには送り機構11を備えるようにしているが、全ての区画2aに送り兼旋回機構19を備えるようにしても良く、そのようにすれば平面2内のどの区画2aでも上記した旋回動作が実行できることになり、さらなる時間効率の向上に繋がり得る。ただし、各送りローラ10を個別に駆動させる必要のある送り兼旋回機構19では送り機構11と比較して多数の駆動装置を必要とするため、本実施例のように、送り兼旋回機構19はパレット3の旋回を行う一部の区画2aのみに設置し、残りの区画2aには送り機構11を備えるようにした方が、建造等にかかるコストは低くなる。
【0087】
このように、本実施例においては、上記参考例と同様の利点(駆動装置の出力が比較的小さくて済むことや、搬送方向の縦横の切り替えに時間がかからないこと)に加え、駆動装置12a,12b,12c,12dの回転速度を調節することでパレット3を平面2内で斜め方向に搬送できることや、ターンテーブルを不要として乗込面以外の場所でパレット3を旋回できるといった利点がある。
【0088】
尚、このように、上記参考例では平面内において物体(パレット3)の斜め方向の移動はできない構成とし、且つパレット3の旋回は平面2ではなく乗込面1a(図12参照)のターンテーブル7で行う構成とする一方、本実施例においては、パレット3の平面2内における斜め方向の移動、及び平面2内における旋回の両方を実行可能な構成としているが、本発明を実施するにあたっては、上記各実施例で説明した構成を適宜組み合わせ、平面2内における斜め方向の移動又は旋回については、いずれか一方のみを実行可能な構成としても良いことは言うまでもない。
【0089】
すなわち、パレット3を平面2内において斜め方向に移動させるには、平面2内に必ず一定数以上の空き区画5(図12参照)が必要となるし、支持ローラについても、全方向車輪20のように斜め方向の移動を許容する構成のものにする必要がある。言い換えると、パレット3の斜め方向の移動を前提として格納設備1を構成すれば、時間効率を向上させることができる代わりに格納効率や建造コストの面における利点がある程度制限されてしまうことは避けられない。これについては、実際に格納設備を建造するにあたり、時間効率や格納効率、建造コストのいずれを重視するかを個別に検討し、上記参考例実施例において説明した各構成を適宜取捨選択すれば良い。また、昇降部6や平面2内に送り兼旋回機構19を備えて昇降部6や平面内2でパレット3を旋回可能とする構成についても、上記時間効率や格納効率、建造コスト等に加え、格納設備1の設置空間の形状等、各種の事情を考慮して送り兼旋回機構19の設置台数や設置位置等を決定すれば良い。
【0090】
以上のように、上記本実施例においては、物体(パレット3、及び荷としての車両4を載置したパレット3)を収容する複数の区画2aを水平方向に沿って縦横に配列してなる平面2に、前記物体を上面に載置して平面2に沿って搬送する送りローラ10を複数配した送り機構11を備え、送りローラ10は、平面2における区画2aの配列方向に対して斜めの角度の回転軸を各々有する全方向車輪10として構成されているので、送りローラ10の駆動により該送りローラ10上で前記物体を搬送することができ、前記物体の搬送方向を縦横に切り替えるにあたって、送りローラ10の向きを変更する必要がない。
【0091】
また、本実施例において、送り機構11のうち少なくとも一部は、互いに対角線状に配置された二対の送りローラ10a,10d及び10b,10cを備えており、該二対の送りローラ10a,10d及び10b,10cは、一対毎に平行又は一致する回転軸を有し、且つ該一対毎に備えられた駆動装置(モータ)12a,12bにより、一対毎に同時に同じ向きに同じ速さで回転するよう構成されているので、駆動装置12a,12bに必要とされる出力を小さくし、且つ駆動装置12a,12bの設置台数を最低限とすることができる。
【0092】
また、本実施例において、前記送り機構のうち少なくとも一部は、一基毎に独立した駆動装置(モータ)12a,12b,12c,12dを備え、各々が独立した向きや速さで回転するよう構成された二対の前記送りローラ10a,10d及び10b,10cを対角線状に配置した送り兼旋回機構19であるので、駆動装置(モータ)12a,12b,12c,12dの駆動により、送り兼旋回機構19上に載置した物体を旋回させることができる。
【0093】
また、本実施例においては、平面2に、前記物体を上面に載置し且つ前記物体の移動を回転により許容する支持ローラ20を備えているので、送り機構11や送り兼旋回機構19による物体の搬送をスムーズに行うことができる。
【0094】
また、本実施例においては、支持ローラ20の少なくとも一部が全方向車輪20として構成されているので、送り機構11や送り兼旋回機構19による物体の斜め方向の搬送や旋回をスムーズに行うことができる。
【0095】
したがって、上記本実施例によれば、簡単な構成でコストを低減しながら搬送の時間効率を高め得る。
【0096】
尚、本発明の物体搬送装置及びこれを用いた格納設備は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0097】
1 駐車場(格納設備)
2 平面
2a 区画
3 パレット(物体)
4 車両(荷)
9 支持ローラ
10 送りローラ(全方向車輪)
11 送り機構
12a 駆動装置(モータ)
12b 駆動装置(モータ)
12c 駆動装置(モータ)
12d 駆動装置(モータ)
19 送り兼旋回機構(送り機構)
20 支持ローラ(全方向車輪)
図1
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