特許第6556514号(P6556514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556514
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/36 20060101AFI20190729BHJP
   H01H 50/02 20060101ALI20190729BHJP
   H01H 50/38 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
   H01H50/36 M
   H01H50/02 T
   H01H50/38 H
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-123926(P2015-123926)
(22)【出願日】2015年6月19日
(65)【公開番号】特開2017-10719(P2017-10719A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】窪野 和男
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 洋一
【審査官】 太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−123607(JP,A)
【文献】 特開2000−260286(JP,A)
【文献】 実開昭58−031652(JP,U)
【文献】 特開平10−255633(JP,A)
【文献】 実開昭63−47555(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/00−50/92
H01H 45/00−45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
固定接点を有し、前記ベースに固定される固定接点端子と、
前記固定接点と接触する可動接点を有する可動接点バネと、
鉄芯の周囲に巻かれたコイルに電流を流すことにより磁界を発生させる電磁石と、
前記可動接点バネが接続され、前記電磁石に発生した磁力により動作する接極子と、
垂直部と水平部とを有し、前記水平部において前記鉄芯に接続される継鉄と、
前記水平部の前記鉄芯側とは反対側を覆う絶縁体により形成された、前記コイルを巻き付けるスプールとは別部品の底板部材と、
を有し、
前記垂直部は前記ベースに設けられた貫通孔から挿入されており、
前記底板部材には、前記水平部が前記水平部と平行に挿入される継鉄挿入部が設けられていることを特徴とする電磁継電器。
【請求項2】
前記鉄芯は、前記水平部に設けられた開口部にかしめにより接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項3】
前記底板部材前記水平部に接続した状態において、前記水平部の前記鉄芯が接続されている部分を覆うように接着剤が塗布されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁継電器。
【請求項4】
前記コイルと前記継鉄との間には絶縁カバーが設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電磁継電器。
【請求項5】
前記固定接点と前記可動接点とが離れる際に生じるアークを消弧する磁石が設けられており、
前記絶縁カバーには、前記磁石を覆う延設部が設けられており、
前記延設部は、前記磁石と前記固定接点及び前記可動接点の間、前記磁石と前記継鉄の間に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の電磁継電器。
【請求項6】
前記底板部材には、前記継鉄のコイル側を覆うバリア部が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電磁継電器。
【請求項7】
前記スプールと前記ベースとは一体に形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電磁継電器。
【請求項8】
ベースと、
固定接点を有し、前記ベースに固定される固定接点端子と、
前記固定接点と接触する可動接点を有する可動接点バネと、
鉄芯の周囲に巻かれたコイルに電流を流すことにより磁界を発生させる電磁石と、
前記可動接点バネが接続され、前記電磁石に発生した磁力により動作する接極子と、
垂直部と水平部とを有し、前記水平部において前記鉄芯に接続される継鉄と、
前記水平部の前記鉄芯側とは反対側を覆う絶縁体により形成された底板部材と、
を有し、
前記底板部材には、前記水平部が前記水平部と平行に挿入される継鉄挿入部が設けられており、
前記コイルと前記継鉄との間には絶縁カバーが設けられており、
前記固定接点と前記可動接点とが離れる際に生じるアークを消弧する磁石が設けられており、
前記絶縁カバーには、前記磁石を覆う延設部が設けられており、
前記延設部は、前記磁石と前記固定接点及び前記可動接点の間、前記磁石と前記継鉄の間に設けられていることを特徴とする電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁継電器は、コイルに電流を流すことにより磁界を発生させて可動接点を動かして、可動接点を固定接点に接触させたり離したりすることにより電流のオンオフ制御を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−255633号公報
【特許文献2】特開2006−210289号公報
【特許文献3】特開平11−111143号公報
【特許文献4】特開2014−49315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プリント基板には、電子回路を形成する配線が形成されているため、配線が電磁継電器の導電性を有する部分と接触すると、電子回路が誤動作したり、動作に悪影響を及ぼす場合がある。よって、プリント基板に形成されている配線との接触を避けるために、電磁継電器に絶縁性を有する接着剤を塗布することにより絶縁部材が形成されている場合がある。
【0005】
しかしながら、絶縁部材を接着剤により形成した場合、接着剤の使用量が多くなり、また、工程数が増えるため、コスト上昇を招くといった問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施の形態の一観点によれば、ベースと、固定接点を有し、前記ベースに固定される固定接点端子と、前記固定接点と接触する可動接点を有する可動接点バネと、鉄芯の周囲に巻かれたコイルに電流を流すことにより磁界を発生させる電磁石と、前記可動接点バネが接続され、前記電磁石に発生した磁力により動作する接極子と、垂直部と水平部とを有し、前記水平部において前記鉄芯に接続される継鉄と、前記水平部の前記鉄芯側とは反対側を覆う絶縁体により形成された、前記コイルを巻き付けるスプールとは別部品の底板部材と、を有し、前記垂直部は前記ベースに設けられた貫通孔から挿入されており、前記底板部材には、前記水平部が前記水平部と平行に挿入される継鉄挿入部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
開示の電磁継電器によれば、プリント基板側に低コストで絶縁部材を形成することができ、信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態における電磁継電器の分解斜視図
図2】本実施の形態における電磁継電器の斜視図(1)
図3】ケース及び接極子の説明図
図4】可動接点バネ及び固定接点端子の説明図
図5】本実施の形態における電磁継電器の変形例1の説明図
図6】本実施の形態における電磁継電器の説明図(1)
図7】本実施の形態における電磁継電器の説明図(2)
図8】ベース及び一対のコイル端子の説明図
図9】継鉄と底板部材の説明図
図10】底板部材が設けられていない構造の電磁継電器の説明図
図11】本実施の形態における電磁継電器の斜視図(2)
図12】本実施の形態における電磁継電器の断面図
図13】ベースとスプールが接続されたものの斜視図
図14】本実施の形態における電磁継電器の接着剤塗布前後の説明図
図15】本実施の形態における電磁継電器の変形例2の斜視図
図16】本実施の形態における電磁継電器の変形例3の説明図
図17】本実施の形態における電磁継電器の変形例3の断面図
図18】本実施の形態における電磁継電器の変形例3の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0010】
図1は本実施の形態における電磁継電器の分解斜視図であり、図2は斜視図である。尚、電磁継電器は一般的にはリレーとも呼ばれている。
【0011】
本実施の形態における電磁継電器1は、直流高電圧に対応しており、例えば、電気自動車のバッテリープリチャージ(メインリレー接点への突入電流防止)用として使用することができる。尚、以下直流高電圧とは、IEC(International Electrotechnical Commission)において規定されている高電圧ではなく、例えば、一般的な自動車用バッテリーで使用される12VDCまたは24VDCを超える電圧を意味するものとする。
【0012】
電磁継電器1は、直流高電圧の電力供給遮断時においては、固定接点と可動接点との間に発生するアークを確実に消弧することが求められている。また、一般的な直流高電圧に対応したリレーでは、負荷側の接続に極性の指定があるが、バッテリープリチャージ用リレーの場合、バッテリーの充電時及び放電時に電流の流れる方向が逆転するため、負荷側の接続の極性を指定しないことが求められている。従って、本実施の形態における電磁継電器1においては、可動接点と固定接点との間に流れる電流の向きにかかわらず、アークを消弧することが求められる。尚、本実施の形態における電磁継電器1の用途は、電気自動車に限定されるものではなく、電力の供給の制御がなされる様々な装置や設備に用いることができる。
【0013】
図1に示すように、電磁継電器1は、ケース10、磁気消弧用の永久磁石12、ヒンジバネ14、接極子16、可動接点バネ18、絶縁カバー20、固定接点端子22(22a、22b)、鉄芯24、スプール26、ベース28、コイル30、一対のコイル端子32(32a、32b)、継鉄34及び底板部材60を備えている。一対のコイル端子32(32a、32b)を介してコイル30に電流が供給されることにより、鉄芯24、スプール26及びコイル30により形成される電磁石31が励磁される。
【0014】
図3(a)に示すように、ケース10の内部には、永久磁石12が入れられる磁石ホルダー101が形成されている。磁石ホルダー101内に入れられた永久磁石12は、図2に示すように、固定接点端子22a、22bの間に設置される。尚、図2においては、ケース10の図示を省略している。
【0015】
図2においては、永久磁石12のN極を有する面は固定接点端子22b側に向けられており、永久磁石12のS極を有する面は固定接点端子22a側に向けられている。尚、N極を有する面とS極を有する面の位置が図2のものとは逆であってもよい。永久磁石12としては、例えば、残留磁束密度、保磁力及び耐熱性に優れているサマリウムコバルト磁石を用いてもよい。特に、アークの熱が永久磁石12に伝わるので、永久磁石12は、ネオジム磁石よりも耐熱性に優れているサマリウムコバルト磁石により形成されているものが好ましい。
【0016】
図1に示すように、ヒンジバネ14は、側面視で逆L字状に形成されており、接極子16の垂下部16bを下方向に付勢する水平部14aと、継鉄34の垂直部34bに固定される垂下部14bとを備えている。
【0017】
接極子16は、鉄等の磁性材料により形成されている。接極子16は、図3(b)に示すように、側面視で「く」の字の形状で形成されており、鉄芯24に吸着される平板部16aと、屈曲部16cを介して平板部16aから下方に延びる垂下部16bとを備えている。更に、図1及び図2に示すように、屈曲部16cの中央には、ヒンジバネ14の水平部14aが突出する貫通孔16dが形成されている。また、平板部16aには、継鉄34の突起部34cが嵌る切り欠き部16eが形成されている。垂下部16bには、可動接点バネ18を垂下部16bにかしめ固定するための突起16fが設けられている。
【0018】
接極子16は、継鉄34の突起部34cに嵌められた切り欠き部16eを支点として回動する。コイル30に電流が流れると、鉄芯24が平板部16aを吸着する。この際、ヒンジバネ14の水平部14aは垂下部16bと接触しており、垂下部16bから上方向に押される。コイル30の電流が切断されると、ヒンジバネ14の水平部14aの復元力により垂下部16bが押し下げられるため、平板部16aは鉄芯24から引き離される。ここで、接極子16において、鉄芯24または絶縁カバー20に対向する平板部16aの面を第1面とし、第1面の裏面を第2面とする。また、継鉄34または絶縁カバー20に対向する垂下部16bの面を第1面とし、第1面の裏面を第2面とする。
【0019】
図4(a)は、可動接点バネ18の正面図であり、図4(b)は、可動接点バネ18の側面図である。図4(c)は、固定接点端子22a及び22bの正面図であり、図4(d)は、固定接点端子22a及び22bの側面図である。
【0020】
可動接点バネ18は、導電性材料により形成されている。可動接点バネ18は、正面視で「コ」の字の形状で形成された板バネであり、一対の可動片、即ち、第1可動片18a及び第2可動片18bと、第1可動片18a及び第2可動片18bの上端を互いに連結する連結部18cとを備えている。
【0021】
第1可動片18a及び第2可動片18bは、中央より下端に近い位置18a0及び位置18b0において、各々折り曲げられている。第1可動片18aの位置18a0より下の部分を下部18a1とし、位置a0より上の部分を上部18a2とする。同様に、第2可動片18bの位置18b0より下の部分を下部18b1とし、位置b0より上の部分を上部18b2とする。
【0022】
第1可動片18aの下部18a1には、耐アーク性に優れた材料により形成された可動接点36aが取り付けられている。同様に、第2可動片18bの下部18b1には、耐アーク性に優れた材料による可動接点36bが取り付けられている。第1可動片18a及び第2可動片18bは、可動接点36a及び36bが、各々接触する固定接点38a及び38bから離れるように、下部18a1及び下部18b1が各々折り曲げられている。
【0023】
連結部18cには、垂下部16bに設けられた突起16fに嵌められる貫通孔18eが形成されている。突起16fが貫通孔18eに嵌められてかしめられることにより、可動接点バネ18が垂下部16bの第1面に固定される。
【0024】
固定接点端子22a及び22bは、ベース28に設けられた不図示の貫通孔に上方から圧入され、ベース28に固定される。固定接点端子22a及び22bは、側面視でクランク状に曲げられている。固定接点端子22a及び22bの各々は、上部22e、下部22d及び上部22eと下部22dとを連結する傾斜部22fを備えている。上部22e、傾斜部22f及び下部22dは一体形成されている。固定接点端子22a及び22bは、下部22dにおいてベース28に固定される。上部22eは下部22dよりも可動接点バネ18及び絶縁カバー20から離れるように曲げられている。固定接点端子22a及び22bの上部22eには、耐アーク性に優れた材料により形成された固定接点38a及び38bが各々取り付けられている。固定接点端子22a及び22bの下部22dには、不図示の電源等に接続される2股端子22cが設けられている。
【0025】
図1に示される絶縁カバー20は、樹脂材料により形成されており、絶縁カバー20の天井部20eには、鉄芯24の頭部24aが露出する貫通孔20aが形成されている。絶縁カバー20の底部には、絶縁カバー20をベース28に固定するために突起状の固定部20b(第1の固定部)及び20c(第2の固定部)が形成されている。固定部20bはベース28の一端に係合し、固定部20cはベース28の不図示の孔に挿入される。また、樹脂材料により形成されたバックストップ20dが絶縁カバー20と一体形成されている。バックストップ20dは、コイル30に電流が流れない場合、即ち電磁石31がオフの場合に、可動接点バネ18と当接する。バックストップ20dにより、可動接点バネ18と継鉄34のような金属部品との衝突音の発生を抑制することができるため、電磁継電器1の動作音を低減することができる。
【0026】
鉄芯24は、スプール26の頭部26bに形成された貫通孔26aに挿入される。スプール26にはコイル30を形成する電線が巻かれており、ベース28と一体形成されている。電磁石31はコイル30に流れる電流のオン・オフに応じて、接極子16の平板部16aを引きつけたり、または接極子16の平板部16aの引きつけられている状態を解除する。これにより、固定接点端子22a及び22bに対する可動接点バネ18の開閉動作が行われる。ベース28には一対のコイル端子32が圧入され、一対のコイル端子32には、コイル30を形成している電線が絡げられる。
【0027】
継鉄34は磁性材料により形成されている。継鉄34は、側面視でL字状に形成されており、ベース28に固定される水平部34aと、水平部34aに対して垂直に立設される垂直部34bとを備えている。垂直部34bは、ベース28の下方から、ベース28の不図示の貫通孔及び絶縁カバー20の不図示の貫通孔に圧入され、図2に示すように、垂直部34bの上部の両端に設けられた突起部34cが絶縁カバー20の天井部20eから突出する。
【0028】
尚、永久磁石12の磁束の方向を安定させ、漏れ磁束を減らすために、図5(a)に示すように、2枚の板状の継鉄40a、40bを設けてもよい。この場合、継鉄40aは永久磁石12の一方の磁極面と対向し、永久磁石12と継鉄40aとにより固定接点端子22aを挟むように設置される。また、継鉄40bは永久磁石12の他方の磁極面と対向し、永久磁石12と継鉄40bとにより固定接点端子22bを挟むように設置される。
【0029】
また、永久磁石12の磁束の方向を安定させ、漏れ磁束を減らすために、図5(b)に示すようにコの字状の継鉄39を設置してもよい。この場合、継鉄39は、永久磁石12の各々の磁極面に対向し、かつ、永久磁石12及び固定接点端子22a、22bを取り囲むように設置される。
【0030】
図6(a)は、電磁継電器1に流れる電流の向きを模式的に示す図であり、固定接点と可動接点とが離れている状態を示している。図6(b)は固定接点端子22a側から見た場合のアーク消弧を示す図であり、図6(c)は固定接点端子22b側から見た場合のアーク消弧を示す図である。図6においては、電流の流れる向きは矢印で示している。
【0031】
本実施の形態における電磁継電器では、固定接点端子22a及び22bのうちのいずれか一方が不電源に接続されており、他方が負荷側に接続されている。コイル30に電流が流れると、鉄芯24が平板部16aを吸着し、切り欠き部16eを支点として接極子16が回動する。接極子16の回動に伴って垂下部16bが回動し、可動接点36a及び36bは、各々に対応する固定接点38a及び38bに接触する。固定接点端子22bに電源からの電圧が印加されている状態で、可動接点36a及び36bと固定接点38a及び38bとが接触すると、電流は、図6(a)に示すように、固定接点端子22b、固定接点38b、可動接点36b、第2可動片18b、連結部18c、第1可動片18a、可動接点36a、固定接点38a、固定接点端子22aの順に流れる。そして、コイル30に流れる電流が遮断されると、ヒンジバネ14の復元力によって接極子16が図6(b)に示されるように反時計方向に回動する。接極子16の回動によって、可動接点36a及び36bは各々固定接点38a及び38bから離れ始めるが、可動接点36aと固定接点38aとの間を流れる電流、及び、可動接点36bと固定接点38bとの間を流れる電流は完全には遮断されず、固定接点38aと可動接点36aとの間、及び固定接点38bと可動接点36bとの間にアークが発生する。
【0032】
図6に示す電磁継電器1では、磁界の向きは固定接点端子22aから固定接点端子22bに向かう奥行き方向である。従って、図6(b)に示すように、可動接点36aと固定接点38aとの間に発生するアークは、ローレンツ力により、図6(b)の矢印Aで示すように、下方向の空間に引き伸ばされて消弧する。一方、図6(c)に示すように、可動接点36bと固定接点38bとの間に発生するアークは、ローレンツ力により、図6(c)の矢印Bで示すように、上方向の空間に引き伸ばされて消弧する。
【0033】
図7(a)は、電磁継電器1に流れる電流の向きを模式的に示す図であり、図7(b)は固定接点端子22a側から見た場合のアーク消弧を示す図であり、図7(c)は固定接点端子22b側から見た場合のアーク消弧を示す図である。図7では、図6に示す場合とは逆向きに電流が流れている場合を示し、電流の流れる向きは矢印で示している。
【0034】
固定接点端子22aに電源からの電圧が印加されている状態で、可動接点36a及び36bと固定接点38a及び38bとが接触すると、電流は、図7(a)に示すように、固定接点端子22a、固定接点38a、可動接点36a、第1可動片18a、連結部18c、第2可動片18b、可動接点36b、固定接点38b、固定接点端子22bの順に流れる。コイル30に流れる電流が遮断されると、可動接点36aと固定接点38aとの間を流れる電流、及び、可動接点36bと固定接点38bとの間を流れる電流は完全には遮断されず、固定接点38a及び38bと可動接点36a及び36bとの間にアークが発生する。
【0035】
図7に示す電磁継電器1でも、磁界の向きは固定接点端子22aから固定接点端子22bに向かう奥行き方向である。従って、可動接点36aと固定接点38aとの間に発生するアークは、ローレンツ力により、図7(b)の矢印Cで示すように、上方向の空間に引き伸ばされて消弧する。一方、可動接点36bと固定接点38bとの間に発生するアークは、ローレンツ力により、図7(c)の矢印Dで示すように、下方向の空間に引き伸ばされて消弧する。
【0036】
従って、図6及び図7より、本実施の形態における電磁継電器1は、可動接点36aと固定接点38aとの間を流れる電流、及び、可動接点36bと固定接点38bとの間を流れる電流の向きに関わらず、可動接点36aと固定接点38aとの間に発生するアーク、及び、可動接点36bと固定接点38bとの間に発生するアークを同時に、かつ、各々反対方向の空間に各々引き伸ばして消弧することができる。
【0037】
また、可動接点バネ18が取り付けられている接極子16の支点(切り欠き部16e)が可動接点36a及び38bと固定接点38a及び38bの上側に設置され、固定接点端子22a及び22bの下部22dが可動接点36a及び36bと固定接点38a及び38bの下側に配置されている。従って、可動接点36aと固定接点38a、あるいは可動接点36bと固定接点38bとの間に流れる電流の向きに応じて、可動接点36aと固定接点38aとの間及び可動接点36bと固定接点38bとの間に発生するアークを上方向に引き伸ばしても、下方向に引き伸ばしても、アークを引き伸ばす空間が確保されている。
【0038】
図8(a)は、ベース28及びコイル端子32の概略構造図であり、図8(b)は、一対のコイル端子32がベース28に圧入された状態を示す図である。図8(c)は、ベース28の背面図であり、図8(d)は、コイル端子32bを示す図である。尚、ベース28のコイル端子32が圧入される側を背面とする。
【0039】
図8(c)に示されるように、コイル端子32aは、ベース28の背面に設けられたT字状の孔28cに圧入され、コイル端子32bは、ベース28の背面に設けられたT字状の孔28dに圧入される。
【0040】
図8(a)に示すように、コイル端子32aは、一枚の金属板を折り曲げることにより形成されている。コイル端子32aは、自身の垂直方向の移動を規制する第1水平部50a及び第2水平部51aと、自身の水平方向の移動を規制する垂直部52aとを備えている。第1水平部50a及び第2水平部51aは垂直部52aの上部から水平方向に互いに逆向きに形成されている。また、第1水平部50a及び第2水平部51aは長手方向にずらされて設けられている。
【0041】
コイル端子32aは、垂直部52aから鉛直下方に延出する、電源と接続する脚部53aと、第2水平部51aの一端から斜め方向に立設されるコイル絡げ部54aと、コイル30の巻き位置を規定する突起部55aとを備えている。
【0042】
また、コイル端子32aと同様に、図8(d)に示されるように、コイル端子32bは、自身の垂直方向の移動を規制する第1水平部50b及び第2水平部51bと、自身の水平方向の移動を規制する垂直部52bと、垂直部52bから鉛直下方に延出し電源と接続する脚部53bと、第2水平部51bの一端から斜め方向に立設されるコイル絡げ部54bと、コイル30の巻き位置を規定する突起部55bとを備えている。
【0043】
図8(b)に示すように、コイル端子32a及び32bがベース28に圧入された状態ではコイル絡げ部54a及び54bはベース28から露出している。コイル絡げ部54aの先端56a及びコイル絡げ部54bの先端56bは、ベース28の上面28eよりも低い位置に配置されることが好ましい。コイル絡げ部54aの先端56a及びコイル絡げ部54bの先端56bをベース28の上面28eよりも低い位置に配置することで、コイル絡げ部54a及び54bを気にすることなく、コイル30を形成する電線をスプール26に巻くことができる。
【0044】
コイル絡げ部54a及び54bはコイル端子32a及び32bの水平部分から鋭角に立設しているので、コイル30のスプール26への巻きつけに必要な空間を確保できる。また、図示のように立設しているコイル端子32a及び32bによれば、電線を巻くときのコイル絡げ部の曲げ戻しが不要であり、曲げ戻し時に生じる可能性のあるコイル30の緩みや断線を回避することができる。
【0045】
本実施の形態における電磁継電器1では、図9に示すように、継鉄34の水平部34aを覆う底板部材60が継鉄34に接続されている。底板部材60は樹脂材料等の絶縁体により形成されており、水平部34aの図示下面側、つまり電磁継電器が搭載される基板側を覆う底板部60aと、2つの継鉄挿入部60bとを有している。継鉄挿入部60bはそれぞれ底板部60aの基板側とは反対側の面に設けられている。継鉄34の水平部34aを平行に継鉄挿入部60bに入れることにより、水平部34aに底板部材60が取り付けられ、水平部34aの基板側の殆どが底板部材60により覆われる。
【0046】
継鉄34の水平部34aに絶縁性の底板部材60を取り付けることにより、継鉄34と基板との絶縁を容易にとることができる。継鉄34の基板側に露出している部分がある場合、基板との絶縁のために露出部分を接着剤で覆う必要があるが、本実施の形態では、水平部34aを底板部材60に取り付けることで、底板部材60により継鉄34と基板との絶縁をとることができ、製造工程を簡略化することができる。
【0047】
また、継鉄34の水平部34aは、2つの継鉄挿入部60bに、水平部34aと平行な方向より入れられているため、水平部34aは底板部材60から垂直方向に抜けることはない。よって、電磁継電器1を基板に設置する際に、電磁継電器1の基板に設置される側を上にしても、底板部材60から水平部34aが外れることはない。
【0048】
また、本実施の形態においては、後述するように、用いる接着剤の量を減らすことができ、信頼性を向上させることができる。
【0049】
底板部材60が用いられていない例について、図10に基づき説明する。この場合、継鉄34が電磁継電器の下面で露出しているため、基板と電磁継電器との絶縁を確保するためには、図10に示すように、電磁継電器の基板側の継鉄34の全面を含む領域を覆うように接着剤910を塗布する必要がある。このように、電磁継電器の基板側の全面に接着剤を塗布する場合は使用する接着剤の量が多くなるため、コストアップを招く。また、硬化した接着剤が硬いと、耐候性が低下し、割れ等が発生する場合がある。
【0050】
本実施の形態においては、継鉄34の水平部34aが底板部材60により略覆われているため、接着剤の量を減らすことができ、コストダウンを図ることができるとともに、耐候性を向上させることができる。
【0051】
尚、本実施の形態では、最初に、継鉄34に底板部材60を取り付けた後、鉄芯24の突起部24bを水平部34aに設けられた穴34dに嵌めてかしめることにより、継鉄34に鉄芯24が接続される。このため、図9(b)に示されるように、底板部材60は、水平部34aに接続した際に穴34dが覆われないような形状に形成されている。
【0052】
図11は、ケース10及び絶縁カバー20が設置されていない状態の電磁継電器の斜視図であり、図12は、絶縁カバー20が設置されていない状態の電磁継電器の断面図である。尚、図11は、便宜上、細部において一部、図1図10と相違している部分がある。
【0053】
本実施の形態においては、図13に示すベース28に設けられた開口部28aに、底板部材60が接続された継鉄34の垂直部34bを入れることにより、ベース28に継鉄34を設置することができる。尚、図13(a)、(b)は、スプール26とベース28とが接続されている状態の電磁継電器を異なる方向から見たものである。尚、図11に図示するように、底板部材60は電磁継電器の底面を覆うようにして、電磁継電器底面に配置される。
【0054】
この後、更に図1に示される部品を組み立てることにより、電磁継電器1を作製することができる。
【0055】
図14(a)は、接着剤が塗布される前の状態の電磁継電器を示し、図14(b)は、接着剤70が塗布され硬化した状態の電磁継電器を示す。図14(b)に示されるように、本実施の形態においては、電磁継電器1の基板側の、底板部材60が配置されている領域を除く領域に接着剤70が塗布される。接着剤70は、継鉄34の水平部34aの、鉄芯24がかしめられている部分に塗布される。
【0056】
このため、本実施の形態における電磁継電器1は、図10の例と比べて継鉄34を絶縁するための接着剤が塗布される面積が狭い。よって、本実施の形態では、使用する接着剤の量を減らすことができ、コストダウンを図ることができるとともに、耐候性を向上させることができる。尚、接着剤70としてはエポキシ樹脂等を用いることができるが、より軟質なウレタン樹脂等を用いることによりより一層耐候性を向上させることができる。
【0057】
上記では、ケース10に永久磁石12を入れる磁石ホルダー101が設けられている構造のものについて説明したが、図15に示すように、絶縁カバー20に形成された絶縁カバー延設部20fにより永久磁石12を囲む構造のものであってもよい。絶縁カバー延設部20fは永久磁石12をコの字状に囲むものであって、永久磁石12と、固定接点38a及び可動接点36a、固定接点38b及び可動接点36b、継鉄34との間に位置するように形成されている。尚、図15は、この構造の電磁継電器においてケース10が外された状態の斜視図である。尚、図15は、便宜上、細部において一部、図1図10と相違している部分がある。
【0058】
また、本実施の形態は、図16から図18に示すように、継鉄34のコイル30側の面に、底板部材60に一体的に設けられているバリア部62を設けてもよい。バリア部62も絶縁体で形成されているため、継鉄34とコイル30とをより確実に絶縁することができる。尚、図16は、継鉄34にバリア部62が接続されているものの斜視図であり、図17は、この構造の電磁継電器の断面図であり、図18は、ケース10が外された状態の斜視図である。図18は、便宜上、細部において一部、図1図10と相違している部分がある。
【0059】
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0060】
1 電磁継電器
10 ケース
12 永久磁石
14 ヒンジバネ
16 接極子
18 可動接点バネ
20 絶縁カバー
22、22a、22b 固定接点端子
24 鉄芯
26 スプール
28 ベース
30 コイル
32、32a、32b コイル端子
34 継鉄
36a、36b 可動接点
38a、38b 固定接点
60 底板部材
70 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18