(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の通信装置、搬送補助具、および搬送システムを、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、実施形態に係る搬送システム1を模式的に示す図である。配達対象物Pは、荷主からエリア集積所、大規模集積所、大規模分配所、およびエリア分配所を介して届け先に届けられる。エリア集積所および大規模集積所は、配達対象物Pの集積所であり、例えば大規模集積所はエリア集積所より規模が大きい施設である。大規模分配所およびエリア分配所は、配達対象物Pの分配所であり、例えば大規模分配所はエリア分配所より規模が大きい施設である。大規模集積所、および大規模分配所のうち一方または双方は、ネットワークNWを介してマスター装置50と通信可能である。また、これに加えてエリア集積所、およびエリア分配所のうち一方または双方は、ネットワークNWを介してマスター装置50と通信してもよい。ネットワークNWは、例えば、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)、インターネット等を含む。
【0009】
図2は、荷主から配達対象物Pが受け取られる様子を示す図である。配達対象物Pは、例えば小包である。配達対象物Pには、予めRFID(Radio Frequency IDentifier)タグTG1が取り付けられている状態で係員Aに渡されてもよいし、係員AによってRFIDタグTG1が取り付けられてもよい。RFIDタグTG1は、通信によって自身の識別情報であるタグIDを送信する。
【0010】
ハンディターミナルHTは、バーコードやQRコード(登録商標)を読み取るコード読み取り部、文字を読み取る文字読み取り部(OCR(Optical Character Recognition)部)、あるいはOCR依頼をOCR処理装置に送信する依頼部、RFIDタグTG1と通信するタグ通信部、ユーザの入力操作を受け付ける入力部、セルラー網またはWi−Fi網を介してネットワークNWに接続するためのネットワーク通信部等を備える。ハンディターミナルHTから、これらの機能構成のうち一部が省略されてもよい。
【0011】
ハンディターミナルHTは、係員の操作に応じて、タグID、輸送情報(荷主、配達先)、配達対象物Pのサイズ、特性(割れ物、天地無用等)を、ネットワークNWを介して管理装置(不図示)に送信する。
【0012】
図3は、エリア集積所において配達対象物Pが係員Aの手によってボックス(搬送補助具)60に積載される様子を示す図である。ボックス60には、通信装置70が取り付けられる。通信装置70は、ボックス60に固定的に連結されて、通信機能付き搬送補助具を構成してもよいし、ボックス60に対して着脱可能であってもよい。また、通信装置70は、単にボックス60の任意の場所に載置されてもよい。
【0013】
図4は、エリア集積所においてボックス60がトラックTR(輸送用機器)に積み載せられる様子を示す図である。こうして、ボックス60は、大規模集積所に搬送される。
【0014】
図5は、大規模集積所および大規模分配所における配達物処理を説明するための図である。大規模集積所および大規模分配所には、ソータ10が設置される。ソータ10は、自動荷下ろし機20と、自動荷積機30とを有する。
【0015】
ソータ10は、ベルトコンベア等に載置された配達対象物Pを、宛先に応じた集積所に区分する。自動荷下ろし機20は、ボックスに積載された配達対象物Pを吸着、把持、または載置した状態で、ソータ10の区分機構に運搬する。自動荷積機30は、区分された配達対象物Pを吸着、把持、または載置した状態で、ボックス60に積載する。ボックス60は、ソータ10まで運ばれる際、および/またはソータ10から運び出される際に、後述する搬送装置90によって搬送される。実施形態の搬送システム1は、この搬送装置90の制御を補助するためのものである。
【0016】
図6は、搬送システム1の構成図である。搬送システム1は、マスター装置50と、中継装置80と、通信装置70が取り付けられたボックス60と、搬送装置90とを備える。なお、搬送システム1とは、マスター装置50およびボックス60を指すものであってもよいし、ボックス60および搬送装置90を指すものであってもよい。ソータ10と、マスター装置50と、中継装置80とは、ネットワークNWを介して通信する。中継装置80と通信装置70との間、および通信装置70と搬送装置90との間では無線通信が行われる。
【0017】
図7は、マスター装置50の構成図である。マスター装置50は、マスター側通信部52と、情報処理部54と、マスター側記憶部56とを備える。マスター側通信部52は、ソータ10、および中継装置80と通信する。情報処理部54は、ソータ10または中継装置80から取得した情報をマスター側記憶部56に記憶させる。また、情報処理部54は、マスター側記憶部56に記憶されている配達対象物Pの運送計画、その他の情報に基づいて、ボックス60の搬送制御を行う。
【0018】
マスター側記憶部56には、情報処理部54により処理された処理結果、ボックス情報一覧58、および配達対象物一覧59が記憶される。
図8は、ボックス情報一覧58および配達対象物一覧59として格納される情報の一例を示す図である。ボックス情報一覧58は、ボックス60の識別情報であるボックスIDに対し、ボックス60の状態、積載量、位置、通信装置70の識別情報等が対応付けられた情報である。また、ボックス情報一覧58のそれぞれのレコードには、配達対象物一覧59が対応付けられている。
【0019】
ボックス情報一覧58における「状態」とは、例えば、ボックス60が、搬送装置90に搬送されている状態、パレタイジング(積載)されている状態、デパレタイジング(荷下ろし)されている状態などのうち、いずれの状態であるかを示す情報である。
【0020】
ボックス情報一覧58における「積載量」とは、ボックス60に積載されている配達対象物Pの量を示す情報であり、例えば積載率や、積載している配達対象物Pの重さなどを示す情報である。ボックス情報一覧58における「位置」とは、ボックス60の位置を示す情報である。位置は、例えば座標点で示される。
【0021】
マスター装置50は、ボックス60の位置を、例えば、カメラCMによって撮像された画像に基づいて取得する。ボックス60の位置を撮像するカメラCMは、例えばボックス60が搬送される施設における天井や壁等に設置され、ボックス60に表示された識別情報とボックス60とを撮像する。マスター装置50は、撮像された画像に基づいてボックス60の位置を認識する。この場合、マスター装置50は、撮像された画像における文字認識や画像解析の機能を有する。なお、マスター装置50は、カメラによって撮像された画像からボックス60の状態や積載量を推定してもよい。マスター装置50は、ボックス60の位置を、ボックス60に取り付けられたGPS(Global Positioning System)受信機から取得してもよい。
【0022】
配達対象物一覧59は、配達対象物IDに、配達対象物Pの宛先等が対応付けられた一覧情報である。配達対象物一覧59は、図示しない配達対象物Pの管理システムから取得される。本実施形態では、この管理システムの態様について特に言及しないが、管理システムは、如何なる手法を用いて配達対象物一覧59に相当する情報を収集してもよい。例えば、管理システムは、ハンディターミナルHTに対して入力された情報、配達対象物Pがボックス60に積載された際に撮像された画像、配達対象物Pがボックス60に積載される場所において通信装置70と通信した結果などを総合して、配達対象物一覧59に相当する情報を収集する。
【0023】
ソータ10が、ボックス60に配達対象物Pを積載するごとに配達対象物一覧59に積載された配達対象物Pの情報が追加され、ボックス60から配達対象物Pが荷下ろしされるごとに、配達対象物一覧59から荷下ろしされた配達対象物Pの情報が削除される。
【0024】
中継装置80は、マスター装置50により送信された指示信号を、ボックス60に取り付けられた通信装置70に転送する。
【0025】
図9は、ボックス60に取り付けられる通信装置70の機能構成を説明するための図である。通信装置70は、アンテナ71と、通信部72と、動作指示解釈部73と、コール発信制御部74と、コール停止制御部75と、記憶部76とを備える。動作指示解釈部73と、コール発信制御部74と、コール停止制御部75とは、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ(不図示)が記憶部76に格納されたプログラムを実行することで機能するソフトウェア機能部である。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、各種インターフェース等のハードウェアを含んでもよい。記憶部76は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の記憶装置により実現される。
【0026】
通信部72は、中継装置80や、搬送装置90等の外部装置と通信するための通信インターフェースである。なお、アンテナ71および通信部72については、中継装置80と通信するためのものと、搬送装置90と通信するためのものとが別体でそれぞれ設けられてもよい。
【0027】
動作指示解釈部73は、マスター装置50や、搬送装置90等の外部装置から送信された信号を解釈して自装置の各部を制御する。コール発信制御部74は、通信部72により受信された指示信号の内容に基づいて、通信部72に、自装置が取り付けられたボックス60を搬送可能な搬送装置90に対して、自装置が取り付けられたボックス60の搬送を要求するコール信号(搬送要求信号)を送信させる。
【0028】
コール停止制御部75は、ソータ10や、搬送装置90等の外部装置から送信された信号に基づいて、通信部72に、コール信号の送信を停止させる。
【0029】
記憶部76には、ボックス情報77と、配達対象物情報78とが記憶される。ボックス情報77は、自装置が取り付けられたボックス60のボックスIDに、ボックス60の位置、行先、状態、搬送要求信号(コール信号)の送信状態、搬送装置との連結状態、および搬送装置IDが対応付けられた情報である。
【0030】
図10は、ボックス情報77として格納される情報の一例を示す図である。ボックス情報77における「位置」とは、ボックス60が存在する位置である。ボックス情報77における「行先」とは、ボックス60が配達対象物Pを積載するため、またはボックス60に積載された配達対象物Pを荷下ろしするために移動すべき目標位置である。位置、行先は、マスター装置50から取得される。動作指示解釈部73は、マスター装置50から取得したボックス60の位置、行先をボックス情報77として記憶部76に記憶させる。
【0031】
ボックス情報77における「状態」とは、ボックス60が移動中であるか、ボックス60が停止している状態であるか等を示す情報である。「コール信号」とは、コール信号の送信状態を示す情報である。「搬送装置との連結状態」とは、搬送装置90と連結している状態であるか否かを示す情報である。「搬送装置ID」とは、ボックス60に連結されている搬送装置90の識別情報である。搬送装置90との連結状態は搬送装置90との通信によって認識し、搬送装置90の識別情報は搬送装置90との通信によって取得する。
【0032】
また、ボックス情報77のそれぞれのレコードには、配達対象物情報78が対応付けられている。配達対象物情報78は、配達対象物IDと、ボックスBに積載されちる配達対象物Pの宛先等が対応付けられた情報一覧である。配達対象物情報78は、マスター装置50から取得される。動作指示解釈部73は、マスター装置50から取得した配達対象物の情報を配達対象物情報78として記憶部76に記憶させる。
【0033】
図11は、搬送装置90の機能構成を示す図である。搬送装置90は、例えば、ボックス60を積載した状態で、人の操作を必要とすることなくボックス60を目的地まで搬送するAGV(Automatic Guided Vehcle)である。搬送装置90は、例えば施設内の床に敷設された磁気テープや磁気棒の磁気を検出し、検出結果および設定された行先に基づいて行先まで走行する。なお、搬送装置90は、例えば搬送装置90が保有する地図情報と、加速度センサやジャイロセンサ等の検出結果とに基づいて、設定された行先に移動する装置であってもよい。また、搬送装置90は、フォークリフトであってもよいし、ボックス60と床との間からボックス60を持ち上げて搬送する台車型の装置であってもよい。また、天井に敷かれたレールに沿って移動し、天井側から延びる把持部がボックス60を把持して搬送する天井型搬送装置であってもよい。
【0034】
搬送装置90は、搬送側通信部92と、搬送側制御部94と、搬送駆動部96と、搬送側記憶部97とを備える。搬送側通信部92は、通信装置70および他の搬送装置90等と通信するための通信インターフェースである。
【0035】
搬送側制御部94は、通信装置70により送信されたコール信号に応じて、通信装置70が取り付けられたボックス60の付近まで移動し、ボックス60と連結した状態でボックス60を行先に搬送するように搬送駆動部96を制御する。また、搬送側制御部94は、通信装置70から送信されたコール信号に応じて、他の搬送装置90と調停処理を実行し、調停処理の結果に応じて、コール信号に応じるか否かを決定する。調停処理とは、例えば、互いの位置関係を通信し合い、コール信号を送信した通信装置70(ボックス60)に最も近い搬送装置90が、コール信号に応じると決定する処理をいう。搬送駆動部96は、例えば車輪や、ローラ、ベルトコンベア等を駆動させる駆動部である。搬送駆動部96が駆動することで車輪等が回転し、搬送装置90が行先に移動する。
【0036】
搬送側記憶部97には、搬送装置情報98が格納される。搬送装置情報98は、搬送装置90の識別情報である搬送装置IDに対し、搬送装置90の位置、状態、コール信号の受信状態、および行先が対応付けられた情報である。
図12は、搬送装置情報98の一例を示す図である。搬送装置情報98は、例えば、搬送装置90同士で通信し合い、それぞれの情報を交換することで生成される。
【0037】
搬送装置情報98における「位置」とは、搬送装置90の位置を示す情報である。位置は、例えば座標点で示される。搬送装置情報98における「状態」とは、搬送装置90が、移動中である状態、ボックス60を搬送している状態、または待機中の状態のうちいずれの状態であるかを示す情報である。搬送装置情報98におけるコール信号の受信状態とは、通信装置70からコール信号を受信した状態であるかを示す情報である。搬送装置情報98における「行先」とは、搬送装置90が移動すべき目標位置である。
【0038】
図13は、搬送システム1により実行される処理の流れを示すシーケンス図である。
なお、本処理では、配達対象物Pをボックス60に積み込む処理について説明する。
【0039】
まず、マスター装置50が、ボックス情報一覧58に基づいて複数のボックス60のうちから所定のボックス60を選択し、選択したボックス60に取り付けられた通信装置70にボックス60の位置情報およびボックス60の行先を含む指示信号を送信する(ステップS100)。なお、マスター装置50は、指示信号と共にボックスIDや、その他の情報を送信してもよい。
【0040】
次に、ステップS100で選択されたボックス60に取り付けられた通信装置70が、送信された指示信号に基づいて、搬送装置90に対して、自己が取り付けられたボックスBを行先まで搬送することを要求するコール信号を生成し、コール信号を送信する(ステップS102)。
【0041】
次に、搬送装置90が、ステップS102で送信されたコール信号を受信し、受信したコール信号に基づいてコール信号を送信した通信装置70が取り付けられたボックス60と連結する(ステップS104)。ステップS104で搬送装置90と連結したボックス60の通信装置70は、搬送装置90と通信することで連結状態を認識し、コール信号を停止する(ステップS106)。コール信号を停止した後、搬送装置90は、ボックス60を行先まで搬送する。なお、ボックス60を行先まで搬送した搬送装置90は、ボックス60との連結を解消し、他の位置に戻ってもよいし、ボックス60に積載対象の配達対象物Pが積載されるまで待機していてもよい。
【0042】
次に、ソータ10が、行先に到着したボックス60を認識し、認識したボックス60に配達対象物Pを積み込む(ステップS108)。ソータ10は、例えば通信装置70と通信することでボックス60の識別情報を取得する。ソータ10は、マスター装置50から送信されたボックス60の識別情報および配達対象物Pの識別情報と、通信装置70と通信することで取得したボックス60の識別情報とを比較する。ソータ10は、マスター装置50から送信されたボックス60の識別情報と、通信装置70と通信することで取得したボックス60の識別情報とが一致する場合に、マスター装置50から取得した配達対象物Pの識別情報に対応する配達対象物Pをボックス60に積載する。
【0043】
次に、ソータ10は、搬送装置90により搬送されてきたボックス60に積載対象の配達対象物Pを積載した場合、マスター装置50に積載対象の配達対象物Pの積載が終了したことを示す完了信号を送信する(ステップS110)。ステップS110で完了信号を取得したマスター装置50は、ボックス60に積載対象の配達対象物Pが積載されたことを認識し、次の指示信号をボックス60に取り付けられた通信装置70に送信することができる。これにより本処理の1ルーチンは終了する。
【0044】
図14は、通信装置70が実行する処理の流れを示すフローチャートを示す図である。まず、通信装置70の通信部72が、マスター装置50からボックス60の位置情報およびボックス60の行先を含む指示信号を受信するまで待機する(ステップS150)。
【0045】
ボックス60の位置情報および行先を受信すると、動作指示解釈部73が、受信した指示信号に基づいて、搬送装置90に対して自己をステップS150で受信した行先まで搬送することを要求するコール信号を生成する(ステップS152)。
【0046】
次に、コール発信制御部74が、ステップS152で生成されたコール信号を搬送装置90に対して送信するように通信部72を制御する(ステップS154)。次に、コール停止制御部75は、搬送装置90から、ボックス60と搬送装置90とが連結されたことを示す信号を受信したか否かを判定する(ステップS156)。ボックス60と搬送装置90とが連結されたことを示す信号を受信すると、コール停止制御部75は、コール信号の送信を停止させるように通信部72を制御する(ステップS158)。
【0047】
なお、コール信号は、複数の搬送装置90に対して送信されてもよい。複数の搬送装置90は、コール信号を受信した場合、搬送装置90間で通信を行うことで他の搬送装置90の位置や、状態を認識する。例えばコール信号を受信した搬送装置90のうちで、待機状態であり、コール信号を送信した通信装置70に最も近い搬送装置70がコール信号に応じる。そして、搬送装置90は、コール信号を送信した通信装置70が取り付けられたボックス60と連結し、ボックス60を行先まで搬送する。また、複数の搬送装置90は、コール信号を受信した場合、予め設定された優先度や、外部から与えられた優先度に基づいて、コール信号に応じてもよい。
【0048】
搬送装置90によりボックス60が行先まで搬送された場合、通信装置70は、ソータ10と通信し、マスター装置50から次の指示がされるまで待機する(ステップS160)。これにより本フローチャートの処理は終了する。
【0049】
図15は、通信装置70が取り付けられたボックス60が搬送装置90に搬送される様子を模式的に示す図である。ボックス60は、例えば空状態でボックス60の待機場所に配置される。ボックス60に取り付けられた通信装置70は、マスター装置50から指示信号を受信すると、コール信号を搬送装置90に送信する。搬送装置90は、コール信号に応じて待機場所に配置されたボックス60と連結し、ボックス60を行先まで搬送する。行先に到着したボックス60は、ソータ10に認識される。ソータ10の自動荷積機30は、積載対象の配達対象物Pをボックス60に積載する。積載が終了した場合、ボックス60に取り付けられた通信装置70は待機状態となる。待機状態において、通信装置70は、更にマスター装置50から指示信号を受信すると、次の行先に搬送することを要求するコール信号を送信し、上述した処理を繰り返す。例えばマスター装置50は、ボックス60に積載対象の配達対象物Pをすべて積載した場合、トラックTRに積載されるボックス60が配置されるゲートを行先とする。
【0050】
例えばマスター装置50が、ボックス60を特定して、搬送装置90に対して、ボックス60の所に移動してボックス60を搬送することを要求する搬送要求信号を、直接、搬送装置90に送信する場合、マスター装置50は複数の搬送装置90やボックス60の位置を認識し、認識した結果に基づいて最適なボックス60と搬送装置90との組み合わせを選択する処理等を実行する必要がある。この結果、マスター装置の処理は、複雑となったり、処理負荷が過大となったりする場合がある。また、搬送システム1を構成する機器や、通信に不具合が発生した場合、搬送システム1全体に不具合の影響を及ぼす場合がある。これに対して本実施形態では、マスター装置50は、通信装置70に、ボックス60の位置情報、および行先を含む指示信号を送信する。そして、通信装置70が、コール信号を送信して行先に搬送するように搬送装置90に要求することでボックス60を所望の位置に移動させることができる。これによりマスター装置50の制御を簡易にすると共に、処理負荷を軽減させることができる。また、通信装置70と搬送装置90との通信に不具合が発生した場合であっても搬送システム1全体への影響が軽減される。この結果、搬送システム1の処理負荷を分散化させることができる。
【0051】
なお、本実施形態では、一例として配達対象物Pがボックス60に積載される場面について説明したが、ボックス60に積載された配達対象物Pがボックス60から荷下ろしされる場面についても通信装置70が取り付けられたボックス60を適用してもよい。この場合、マスター装置50は、例えば大規模分配所においてボックス60に積載された配達対象物Pが自動荷下ろし機20によって荷下ろしされる位置または空のボックス60が待機する待機場所を行先として指示する。また、エリア集積所またはエリア分配所においても、本実施形態の通信装置70が適用されてもよい。
【0052】
以上説明した第1の実施形態によれば、ボックス60に取り付けられた通信装置70が、マスター装置50から取得した指示信号に基づいて、コール信号を搬送装置90に送信することで自装置が取り付けられたボックス60を行先まで搬送するように要求する。この結果、システムの処理負荷を分散化させることができる。
【0053】
また、本実施形態では、一例としてマスター装置50がボックス60の位置情報を通信装置70に送信するものとしたが、ボックス60または通信装置70がGPS等の位置情報特定装置から位置情報を取得し、自装置の位置を保持してもよい。また、ボックス60または通信装置70が位置情報特定装置から取得した位置情報をマスター装置50に送信してもよい。
【0054】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、ボックス60に取り付けられた通信装置70は、コール信号を表示装置110Aおよび110Bに送信し、表示装置110Aおよび110Bにコール信号に対応する情報を表示させる。
【0055】
図16は、第2の実施形態の搬送システム1Aの機能構成図である。第2の実施形態の搬送システム1Aは、表示装置110Aおよび表示装置110Bを備える。以下、表示装置110Aおよび表示装置110Bを区別しない場合は、単に表示装置110という。
【0056】
通信装置70は、マスター装置50から指示信号を取得すると、指示信号に基づいてコール信号を生成し、コール信号を表示装置110に送信する。
【0057】
表示装置110は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electroluminescence)等の表示装置である。表示装置110は、例えば配達対象物Pをボックス60に積載する係員等が注視しやすい場所に設置される。表示装置110Aおよび表示装置110Bは、それぞれ通信装置70の通信部72から送信された信号を受信するアンテナ110Aおよび110Bを備える。表示装置110は、通信装置70からコール信号を受信するとコール信号に対応した情報を表示させる。
図17は、表示装置110に表示されるコール信号に対応した表示の一例を示す図である。表示装置110は、コール信号に応じてボックスID、現在地、および行先を対応づけて表示する。
【0058】
なお、第2の実施形態では、コール信号に対応した情報を出力する装置は表示装置であるものとして説明したが、表示装置に代えて、音声出力装置や、振動出力装置等のように人間が五感によって認識することができるように情報を出力する装置であってもよい。
【0059】
以上説明した第2の実施形態によれば、表示装置110が、通信装置70から送信されたコール信号に応じて、ボックス60の行先を表示する。この結果、第2の実施形態では、より簡易な構成で利用者の利便性を向上させることができる。
【0060】
なお、第1の実施形態と第2の実施形態を組み合わせて実施してもよい。例えば、マスター装置50は、表示装置110にコール信号を送信することを指示する指示信号と、搬送装置90にコール信号を送信することを指示する指示信号とを選択し、選択結果を含んだ指示信号を通信装置70に送信してもよい。通信装置70は、選択結果を含んだ指示信号に応じて搬送装置90または表示装置110にコール信号を送信する。
【0061】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、配達対象物が積載される搬送補助具に取り付けられる通信装置であって、外部装置と通信する通信部と、前記通信部により前記外部装置から受信された指示信号の内容に基づいて、自装置が取り付けられた前記搬送補助具を搬送可能な搬送装置に対して、自装置が取り付けられた前記搬送補助具の搬送を要求する搬送要求信号を、前記通信部に送信させる搬送要求制御部とを持つことにより、システムの処理負荷を分散化させることができる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。