(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
針が挿入される被検体の部位を複数回スキャンすることにより、前記針の挿入開始前における前記部位の第1の投影データと前記針の挿入開始後における前記部位の第2の投影データとを収集するようデータ収集系を制御する第1の制御手段と、
前記第2の投影データから前記第1の投影データを減算して第3の投影データを得る減算手段と、
前記第1の投影データに基づく第1の画像と、前記第3の投影データに基づく第3の画像とを再構成する再構成手段と、
前記第3の画像において画素値が、メタルアーチファクトを表す画素値と金属を表す画素値との間の画素値である所定の閾値を超える画素によって構成される閾値処理済みの第3の画像を得る閾値処理手段と、
前記第1の画像に前記閾値処理済みの第3の画像を重ねて成る合成画像である第4の画像を表示するよう表示装置を制御する第2の制御手段と、を備えた放射線断層撮影装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、通常考える方法は、繰り返し撮像して得られる断層像にメタルアーチファクト低減処理を施し、処理済みの断層像を表示する方法である。
【0007】
しかしながら、メタルアーチファクト低減処理は、一般的に計算量が多く、処理の完了までに一定以上の時間を要する。
【0008】
そのため、当該方法は、処理に時間が掛かり過ぎてリアルタイム性が失われるため、穿刺には適用できない。
【0009】
このような事情により、放射線断層撮影装置による画像誘導下の穿刺の際に、リアルタイム性を保ちながらメタルアーチファクトが低減された断層像を表示することが可能な技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の観点の発明は、
針が挿入される被検体の部位を複数回スキャンすることにより、前記針の挿入開始前における前記部位の第1の投影データと前記針の挿入開始後における前記部位の第2の投影データとを収集するようデータ収集系を制御する第1の制御手段と、
前記第2の投影データから前記第1の投影データを減算して第3の投影データを得る減算手段と、
前記第1の投影データに基づく第1の画像と、前記第3の投影データに基づく第3の画像とを再構成する再構成手段と、
前記第3の画像において画素値が所定の閾値を超える画素によって構成される第4の画像を得る閾値処理手段と、
前記第1の画像に前記第4の画像を重ねて成る合成画像を表示するよう表示装置を制御する第2の制御手段と、を備えた放射線断層撮影装置を提供する。
【0011】
第2の観点の発明は、
前記閾値が、メタルアーチファクトを表す画素値と金属を表す画素値との間の画素値である、上記第1の観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0012】
第3の観点の発明は、
前記第1の制御手段が、前記針の挿入開始後に前記部位を連続的に複数回スキャンするよう前記データ収集系を制御し、
前記第2の制御手段が、前記第2の投影データが収集される度に前記合成画像を新たに表示するよう制御する、上記第1の観点または第2の観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0013】
第4の観点の発明は、
前記第1の制御手段が、前記針の挿入開始の前後に亘って前記部位を複数回繰り返しスキャンして前記投影データを順次収集するよう前記データ収集系を制御し、
該投影データの収集に応答して、該投影データまたは該投影データに基づく画像の時間的な変化において一定レベル(level)を超える変化が生じたか否かを判定する判定手段をさらに備えており、
前記第1の投影データが、前記一定レベルを超える変化が生じたと判定される前の時点に収集された投影データであり、
前記第2の投影データが、前記一定レベルを超える変化が生じたと判定された後の時点に収集された投影データである、上記第3の観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0014】
第5の観点の発明は、
前記再構成手段が、2次元逆投影処理により前記第1及び第3の画像を再構成する、上記第1の観点から第4の観点のいずれか一つの観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0015】
第6の観点の発明は、
針が挿入される被検体の部位をスキャンして得られた該部位の画像において、前記針の挿入が予定される経路を含む領域を設定する設定手段と、
前記針の挿入開始後に前記部位を複数回繰り返しスキャンすることにより投影データを順次得るようデータ収集系を制御する第1の制御手段と、
前記投影データまたは該投影データに基づく再構成画像と前記領域の位置情報とに基づいて、前記針によるメタルアーチファクトが低減された画像の生成を行う生成手段と、
該生成された画像を表示するよう表示装置を制御する第2の制御手段と、を備えた放射線断層撮影装置を提供する。
【0016】
第7の観点の発明は、
前記生成手段が、前記領域の位置情報に基づいて、前記投影データまたは該投影データに基づく再構成画像における前記針に対応する部分の探索を行う、上記第6の観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0017】
第8の観点の発明は、
互いに隣接する第1及び第2のスライス(slice)を含んでおり、針が前記第1のスライスを通って前記第2のスライスに到達するよう挿入される部位を、前記針の挿入開始の前後に亘って複数回繰り返しスキャンすることにより投影データを順次収集するようデータ収集系を制御する第1の制御手段と、
前記第1のスライスを注目スライスに設定する第1の設定手段と、
前記注目スライスの投影データまたは該投影データに基づく再構成画像を用いて前記針によるメタルアーチファクトが低減された画像の生成を行う生成手段と、
該生成された画像を表示するよう表示装置を制御する第2の制御手段と、
前記第1のスライスの投影データまたは該投影データに基づく再構成画像を用いて、前記針が前記第2のスライスに到達したか否かの判定を行う判定手段と、
前記判定手段により前記針が前記第2のスライスに到達したとの判定がなされた場合に、前記第2のスライスを前記注目スライスに設定する第2の設定手段と、を備えた放射線断層撮影装置を提供する。
【0018】
第9の観点の発明は、
前記針の挿入開始前における前記部位のスキャンにより得られた画像において、前記針の挿入が予定される経路を含む領域を設定する第3の設定手段をさらに備えており、
前記生成手段が、前記領域の位置情報に基づいて前記生成を行い、
前記判定手段が、前記領域の位置情報に基づいて前記判定を行う、上記第8の観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0019】
第10の観点の発明は、
前記生成手段が、前記注目スライスの投影データまたは該投影データに基づく再構成画像における前記領域に対応する範囲において前記針に対応する部分の探索を行い、
前記判定手段が、前記第1のスライスの投影データまたは該投影データに基づく再構成画像における前記領域に対応する部分に基づいて前記判定を行う、上記第9の観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0020】
第11の観点の発明は、
前記生成手段が、事前に記憶された前記針の材質及び太さのうち少なくとも一つに係る情報を用いて前記生成を行う、上記第6の観点から第10の観点のいずれか一つの観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0021】
第12の観点の発明は、
コンピュータ(computer)を、上記第1の観点から第11の観点のいずれか一つの観点の放射線断層撮影装置における各手段として機能させるためのプログラム(program)を提供する。
【発明の効果】
【0022】
上記観点の発明によれば、針の挿入中の投影データから針の挿入前の投影データを減算し、その差分の投影データを基に針とメタルアーチファクトが主要成分となる画像を再構成し、これに画素値の閾値処理を行ってほぼ針のみの画像を生成し、これを針の挿入前の投影データを基に再構成した画像に重ね合せて表示するので、針の挿入の際にメタルアーチファクトが低減された画像を表示させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、発明の実施形態について説明する。なお、これにより発明は限定されない。
【0025】
図1は、本実施形態に係るX線CT装置(X-ray Computed Tomography system)のハードウェア(hardware)の構成を概略的に示す図である。
【0026】
図1に示すように、X線CT装置1は、ガントリ(gantry)2、撮影テーブル(imaging table)4、及び操作コンソール(console)6を備えている。なお、ガントリ2及び撮影テーブル4は、発明におけるデータ収集系の一例である。
【0027】
ガントリ2は、X線管21、アパーチャ(aperture)22、コリメータ装置(collimator device)23、X線検出器24、データ収集部25、回転部26、高電圧電源27、アパーチャ駆動装置28、回転駆動装置29、及びガントリ・テーブル制御部30を有している。
【0028】
X線管21及びX線検出器24は、空洞部2Bを挟み対向して配置されている。
【0029】
アパーチャ22は、X線管21と空洞部2Bとの間に配置されている。X線管21のX線焦点からX線検出器24に向けて放射されるX線をファンビーム(fan beam)やコーンビーム(cone beam)に成形する。
【0030】
コリメータ装置23は、空洞部2BとX線検出器24との間に配置されている。コリメータ装置23は、X線検出器24に入射する散乱線を除去する。
【0031】
X線検出器24は、X線管21から放射される扇状のX線ビームの広がり方向(チャネル(channel)方向という)および厚み方向(列方向という)に、2次元的に配列された複数のX線検出素子を有している。各X線検出素子は、空洞部2Bに配された被検体5の透過X線をそれぞれ検出し、その強度に応じた電気信号を出力する。被検体5は、例えば、人間や動物などの生体である。
【0032】
データ収集部25は、X線検出器24の各X線検出素子から出力される電気信号を受信し、X線データに変換して収集する。
【0033】
回転部26は、空洞部2Bの周りに回転可能に支持されている。回転部26には、X線管21、アパーチャ22、コリメータ装置23、X線検出器24、及びデータ収集部25が搭載されている。
【0034】
撮影テーブル4は、クレードル(cradle)41、クレードル駆動装置42を有している。被検体5は、クレードル41の上に載置される。クレードル駆動装置42は、クレードル41をガントリ2の空洞部2Bすなわち撮影空間に入れ出しする。
【0035】
高電圧電源27は、X線管21に高電圧及び電流を供給する。
【0036】
アパーチャ駆動装置28、アパーチャ22を駆動しその開口を変形させる。
【0037】
回転駆動装置29、回転部26を回転駆動する。
【0038】
ガントリ・テーブル制御部30は、ガントリ2内の各装置・各部、撮影テーブル4等を制御する。
【0039】
操作コンソール6は、操作者からの各種操作を受け付ける。操作コンソール6は、入力装置61、表示装置62、記憶装置63、及び演算処理装置64を有している。本例では、操作コンソール6は、コンピュータ(computer)により構成されている。
【0040】
なお、ここでは、
図1に示すように、被検体5の体軸方向、すなわち撮影テーブル4による被検体5の搬送方向をz方向とする。また、鉛直方向をy方向、y方向およびz方向に直交する水平方向をx方向とする。
【0041】
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態に係るX線CT装置の操作コンソールの機能ブロック図(block diagram)である。
【0042】
第1の実施形態に係るX線CT装置の操作コンソール6は、機能ブロックとして、スキャン制御部71、減算処理部72、平均化処理部73、画像再構成部74、閾値処理部75、及び表示制御部76を有している。
【0043】
なお、操作コンソール6は、演算処理装置64が所定のプログラム(program)を実行することにより各機能ブロックとして機能する。所定のプログラムは、例えば、記憶装置63または外部接続された記憶装置または記憶媒体に記憶されている。
【0044】
スキャン制御部71は、操作者の操作に応じて、スキャンが実施されるようガントリ・テーブル制御部30を制御する。
【0045】
図3は、第1の実施形態における被検体がスキャンされる様子を模式的に示す図である。本例では、
図3に示すように、クレードル41に載置された被検体5の所定の部位5aを含む撮影空間R1に対してスキャンが実施される。スキャンは、X線管21及びX線検出器14を被検体5の周りに回転させながら、X線管21のX線焦点から被検体5にX線を照射することにより行われる。スキャンを実施すると、X線検出器24におけるX線検出素子の配列構造に起因して、撮影空間をz軸方向にスライスして成る複数のスライスの各々について複数ビュー(view)の投影データが収集される。ここでは、1回のスキャン実施により、0.625mm厚のスライス24枚分の投影データが収集されるものとする。また本例では、この部位5aに病変部5cが含まれる場合を想定する。術者は、連続的なスキャンによってほぼリアルタイムに表示される部位5aの断層像を見ながら、部位5aの表面から病変部5cに達するまで生検針を挿入する穿刺を行う。
【0046】
スキャンは2種類のスキャンが行われる。一種類目は、穿刺を開始する前に行われる第1のスキャンである。二種類目は、穿刺を開始した後に複数回にわたって繰り返し連続的に行われる第2のスキャンである。ここでは、第1のスキャンで得られた投影データを第1の投影データと呼ぶことにする。また、第2のスキャンで得られた投影データを第2の投影データと呼ぶことにする。スキャンは、ビュー角度範囲を180度+X線ビームのファン角(fan angle)αとする、いわゆるハーフスキャン(half scan)とする。またスキャンは、スキャンを開始するビュー角度をすべて同じにして実施する。撮影空間内における部位5aの位置は、穿刺開始の前後で変化させないようにする。
【0047】
減算処理部72は、第2のスキャンによって第2の投影データが得られる度に、その得られた第2の投影データから第1の投影データを減算する処理を行って、その差分を表す第3の投影データを得る。したがって、第2のスキャンを実施する際に撮影空間のスライスに生検針が含まれている場合には、そのスライスに対応する第3の投影データは、その針の存在によるX線吸収の変化分を表す投影データになる。また、第2のスキャンを実施する際に撮影空間に生検針が含まれていない場合には、そのスライスに対応する第3の投影データは、ノイズ成分(noise component)を除いて0レベルのデータになる。減算処理は、同じビュー、列、チャネルのデータ間で行う。この減算処理は、各スライスについて同様に行う。
【0048】
平均化処理部73は、複数スライスに対応する複数の投影データが得られる度に、これらをz軸方向に平均化処理して、より厚みのある少ない枚数のスライスに対応する投影データを得る。ここでは、0.625mm×24枚のスライスに対応した24枚分の投影データに対して8枚分を1枚分にまとめる平均化処理を行い、5mm×3枚のスライスに対応した3枚分の投影データを得るものとする。平均化処理部73は、第1の投影データと第3の投影データとに対してこの平均化処理を行う。
【0049】
画像再構成部74は、平均化処理済みの投影データに基づいて画像再構成処理を行い、断層像を得る。画像再構成処理には、例えば、2次元逆投影処理を用いる。2次元逆投影処理は、現在主流の3次元逆投影処理よりも計算量が少なくてすむ。そのため、短時間に画像を再構成することができる。
【0050】
画像再構成部74は、第1のスキャンの実施によって第1の投影データが収集されたときに、その平均化処理済みの第1の投影データに基づいて画像再構成処理を行い、第1の断層像を得る。また、画像再構成部64は、上記の減算処理によって第3の投影データが収集されたときに、その平均化処理済みの第3の投影データに基づいて画像再構成処理を行い、第3の断層像を得る。画像再構成処理は、各スライスについて同様に行う。
【0051】
閾値処理部75は、第3の断層像において画素ごとに画素値(CT値)の閾値判定を行い、所定の閾値以下の画素値についてはその画素値を何も描写しない0レベルに変換する。つまり、所定の閾値を超えた画素値を有する画素だけを抽出し、抽出された画素から成る断層像を得る。この所定の閾値は、メタル(金属)を表す画素値よりも小さく、メタルアーチファクトを表す画素値よりも大きい値に設定する。これにより、第3の断層像にメタルで構成される生検針とそのメタルアーチファクトとが含まれている場合に、メタルアーチファクトが除去され、生検針だけが抽出された断層像を得ることができる。
【0052】
表示制御部76は、各スライスについて、第1の断層像に閾値処理済みの第3の断層像を重ねて成る合成断層像を得る。ここでは、この断層像を第4の断層像と呼ぶことにする。表示制御部76は、各スライスの第4の断層像を画面に表示するよう表示装置62を制御する。これにより、各スライスに生検針が含まれるような場合であっても、メタルアーチファクトが除去された断層像を表示させることができる。
【0053】
次に、第1の実施形態に係るX線CT装置における処理の流れについて説明する。
【0054】
図4は、第1の実施形態に係るX線CT装置における処理の流れを示すフロー図(flowchart)である。また、
図5は、第1の実施形態に係るメタルアーチファクトが低減された断層像を得る方法を説明するための図である。
【0055】
なおここでは、被検体5は既に撮影テーブル4のクレードル41に載置されて空洞部2Bに搬送され、部位5aは撮影空間R1に配置されているものとする。
【0056】
ステップ(step)S1では、穿刺開始前のスキャンを実施する。具体的には、穿刺が開始される前の段階で、操作者が入力装置61を用いて穿刺開始前のスキャンを実施するコマンド(command)の入力を行う。スキャン制御部71は、このコマンドの入力を検知して、穿刺開始前のスキャンを実施するようガントリ・テーブル制御部30に制御信号を送る。ガントリ・テーブル制御部30は、この制御信号を受けてガントリ2の各部及び撮影テーブル4を制御する。これにより、穿刺開始前のスキャンが実施される。穿刺開始前のスキャンの実施により、部位5aを含む撮影空間R1に対して24スライス分の第1の投影データが収集される。穿刺開始前のスキャンは基本的に1回だけ実施されるが、複数回実施されるようにしてもよい。複数回実施した場合には、その中の1つのスキャンにより得られた投影データを処理対象としてもよいし、複数回のスキャンにより得られた投影データをすべて加算しレベル調整して成る投影データを処理対象としてもよい。
【0057】
ステップS2では、穿刺開始後のスキャンを実施する。具体的には、穿刺が開始される直前の段階で、操作者が入力装置61を用いて穿刺開始後の連続的なスキャンを実施するコマンドの入力を行う。スキャン制御部71は、このコマンドの入力を検知して、穿刺開始後のスキャンを実施するようガントリ・テーブル制御部30に制御信号を送る。ガントリ・テーブル制御部30は、この制御信号を受けてガントリ2の各部及び撮影テーブル4を制御する。これにより、穿刺開始後のスキャンが実施される。穿刺開始後のスキャンの実施により、部位5aを含む撮影空間における24スライス分の第2の投影データが収集される。穿刺開始後のスキャンは基本的に複数回連続的に繰り返し実施され、投影データが順次得られる。
【0058】
ステップS3では、投影データの減算処理を行う。具体的には、減算処理部72が、24枚のスライスの各々について、第2の投影データから第1の投影データを減算する処理を行ってその差分を表す第3の投影データを得る。
【0059】
ステップS4では、投影データの平均化処理を行う。具体的には、平均化処理部73が、24枚のスライスに対応する第1の投影データに対し、z軸方向に平均化処理して、3枚のスライスSL11〜SL13についての平均化処理済みの第1の投影データP1を得る。この処理は1回目だけ行い、2回目以降は省略する。また、平均化処理部73は、24枚のスライスに対応する第3の投影データに対し、z軸方向に平均化処理して、3枚のスライスSL11〜SL13についての平均化処理済みの第3の投影データP3を得る。
【0060】
図5(a)左は、穿刺開始前のスキャンを行ったときの部位5aと3枚のスライスSL11〜SL13とを示している。
図5(a)中央は、この穿刺開始前のスキャンを行って得られる第1の投影データP1の一例として、スライスSL13、1ビュー分に対応するものを示している。投影データは、横軸をチャネル番号CH、縦軸をX線吸収量μとして表される。穿刺開始前のスキャンでは、図示の如く、生検針9はスライス内に存在しないので、第1の投影データP1には生検針9によるX線吸収の大きな領域は見られない。
【0061】
図5(b)左は、穿刺開始後のスキャンを行ったときの部位5aと3枚のスライスSL11〜SL13とを示している。また、
図5(b)中央は、この穿刺開始後のスキャンを行って得られる第2の投影データP2の一例として、スライスSL13、1ビュー分に対応する投影データを示している。穿刺開始後のスキャンでは、図示の如く、生検針9はスライス内に存在している可能性があるので、第2の投影データP2には生検針9によるX線吸収の高い領域が含まれることがある。
【0062】
図5(c)中央は、第2の投影データP2から第1の投影データP1を減算して得られる第3の投影データP3の一例として、スライスSL13、1ビュー分に対応するものを示している。スライスSL11〜SL13のいずれかに生検針9が存在している場合、そのスライスの第3の投影データP3には生検針9によるX線吸収の高い領域のみが含まれる。
【0063】
ステップS5では、画像再構成処理を行う。具体的には、画像再構成部74が、各スライスSL11〜SL13について、平均化処理済みの第1の投影データP1に基づいて画像再構成処理を行い、第1の断層像G1を得る。この処理は1回目だけ行い、2回目以降は省略する。
【0064】
図5(a)右は、第1の断層像G1の一例として、スライスSL13の第1の断層像を示している。この第1の断層像G1には、生検針9は含まれない。
【0065】
また、画像再構成部74が、各スライスSL11〜SL13について、平均化処理済みの第3の投影データP3に基づいて画像再構成処理を行い、第3の断層像G3を得る。
【0066】
図5(c)右は、第3の断層像G3の一例として、スライスSL13の第3の断層像を示している。スライス内に生検針9が存在している場合、この第3の断層像G3には、図示のように生検針9が現れることになる。ただし、第3の断層像G3には、除去しきれなかったメタルアーチファクトが含まれることがある。
【0067】
なお、
図5(b)右は、第2の投影データP2に基づいて画像再構成したときに得られる第2の断層像を示している。スライス内に生検針9が存在している場合、この第2の断層像G2には、図示のように生検針9だけでなく、メタルアーチファクトMAが現れることになる。
【0068】
ステップS6では、断層像の閾値処理を行う。具体的には、閾値処理部75が、各スライスSL11〜SL13について、第3の断層像G3において所定の閾値を超えた画素値を有する画素だけを抽出し、抽出された画素から成る断層像を得る。閾値は、例えば、メタルアーチファクトを表す画素値と金属(メタル)を表す画素値との間の画素値に設定する。これにより、第3の断層像に生検針と除去しきれなかったメタルアーチファクトとが含まれている場合に、そのメタルアーチファクトがさらに精度よく除去され、ほぼ生検針だけが抽出された、閾値処理済みの第3の断層像G3が得られる。
【0069】
ステップS7では、断層像を合成する。具体的には、表示制御部76が、各スライスSL11〜SL13について、第1の断層像G1に閾値処理済みの第3の断層像G3を重ねた合成断層像よとして第4の断層像G4を生成する。
【0070】
図5(d)は、第1の断層像G1に閾値処理済みの第3の断層像G3を重ねて得られる第4の断層像G4を模式的に示す図である。第4の断層像G4には、部位5aと生検針9とが含まれるが、メタルアーチファクトはほとんど含まれない。
【0071】
ステップS8では、合成された断層像を表示する。具体的には、表示制御部76が、各スライスSL11〜SL13について、合成断層像を表示する。これにより、各スライスに生検針が含まれるような場合であっても、メタルアーチファクトが除去された断層像を表示させることができる。
【0072】
ステップS9では、スキャンを終了するか判定する。具体的には、スキャン制御部71が、スキャン終了のコマンドが入力されているかなどを検知し、スキャンを終了するか否かを判定する。終了すると判定された場合には、スキャンを終了する。終了しないと判定された場合には、ステップS2に戻り、スキャンを継続する。
【0073】
このような第1の実施形態によれば、穿刺中の投影データから穿刺前の投影データを減算し、その差分の投影データを基に生検針とメタルアーチファクトが主要成分となる断層像を再構成し、これに画素値の閾値処理を行ってほぼ生検針のみの断層像を生成し、これを穿刺前の投影データを基に再構成した断層像に重ね合せて表示するので、穿刺の際にメタルアーチファクトが低減された断層像を表示させることができる。また、投影データや断層像において生検針やメタルアーチファクトに対応する情報を検出し、これを低減するための処理を行っていないので、計算量の大幅な増大を避けることができ、断層像の表示におけるリアルタイム性も保つこともできる。
【0074】
なお、第1の実施形態において、次のような変形例を考えることもできる。スキャン制御部71は、生検針の挿入が開始される前後に亘って部位5aを複数回連続的に繰り返しスキャンして各スライスに対応する投影データを順次得るよう、ガントリ・テーブル制御部30を制御する。上記第1の投影データは、得られた投影データまたはこの投影データに基づく画像の時間的な変化において一定レベルを超える変化が生じる前の直近の一定期間内に得られた投影データとする。また、第2の投影データは、得られた投影データまたはこの投影データに基づく画像の時間的な変化において上記一定レベルを超える変化が生じた後に得られた投影データとする。一定レベルを超える変化が生じたか否かの判定は、例えば、時間的に隣接する2つの投影データまたは画像の間で、各チャネルのデータ値や各画素値の差分を求め、これらの合計値あるいはその正規化した値がある閾値を超えるか否かで行う。このようにすることで、スライス内に生検針が入る直前の投影データを第1の投影データすることができ、結果的に通常の断層像に生検針の断層像を重ねた画像、すなわちメタルアーチファクトが低減された生検針を含む断層像を表示させることができる。
【0075】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係るX線CT装置は、ハードウェア的な構成は第1の実施形態と同じであるが、機能に異なる部分がある。
【0076】
図6は、第2の実施形態に係るX線CT装置の操作コンソールの機能ブロック図である。
【0077】
第2の実施形態に係るX線CT装置の操作コンソール6aは、機能ブロックとして、スキャン制御部81、平均化処理部82、画像再構成部83、穿刺ルート(route)領域設定部84、断層像生成部85、及び表示制御部86を有している。
【0078】
スキャン制御部81は、投影データを収集するためのスキャンが実施されるようガントリ・テーブル制御部を制御する。
【0079】
図7は、第2の実施形態における被検体がスキャンされる様子を模式的に示す図である。本例では、
図7に示すように、クレードル41に載置された被検体5の所定の部位5aを含む撮影空間R2に対してスキャンが実施される。スキャンは、X線管21及びX線検出器14を被検体5の周りに回転させながら、X線管21のX線焦点から被検体5にX線を照射することにより行われる。スキャンを実施すると、X線検出器24におけるX線検出素子の配列構造に起因して、撮影空間をz軸方向にスライスして成る複数のスライスの各々について複数ビューの投影データが収集される。ここでは、1回のスキャン実施により、0.625mm厚のスライス8枚分の投影データが収集されるものとする。また本例では、この部位5aに病変部5cが含まれる場合を想定する。術者は、連続的なスキャンによってほぼリアルタイムに表示される部位5aの断層像を見ながら、部位5aの表面から病変部5cに達するまで生検針を挿入する穿刺を行う。
【0080】
平均化処理部82は、撮影空間における複数のスライスについての投影データあるいは断層像をz軸方向に平均化して、より厚くより少ない数のスライスの投影データあるいは断層像を得る処理を行う。ここでは、0.625mm厚のスライス8枚分を5mm厚のスライス1枚にまとめる。
【0081】
画像再構成部83は、投影データに基づいて断層像を再構成する処理を行う。
【0082】
穿刺ルート領域設定部84は、穿刺時における生検針の挿入予定経路を穿刺ルートとして設定する処理を行う。
【0083】
断層像生成部85は、限定的なメタルアーチファクト低減処理を含む断層像生成処理を行う。
【0084】
表示制御部86は、断層像等を画面に表示するよう表示装置62を制御する処理を行う。
【0085】
次に、第2の実施形態に係るX線CT装置における処理の流れについて説明する。
【0086】
図8は、第2の実施形態に係るX線CT装置における処理の流れを示すフロー図である。また、
図9は、穿刺ルート領域の設定について説明するための図である。
【0087】
ステップA1では、穿刺開始前のスキャンを実施する。具体的には、穿刺が開始される前の段階で、操作者が入力装置61を用いて穿刺開始前のスキャンを実施するコマンドの入力を行う。スキャン制御部81は、このコマンドの入力を検知して、穿刺開始前のスキャンを実施するようガントリ・テーブル制御部30に制御信号を送る。ガントリ・テーブル制御部30は、この制御信号を受けてガントリ2の各部及び撮影テーブル4を制御する。これにより、穿刺開始前のスキャンが実施される。穿刺開始前のスキャンの実施により、部位5aを含む撮影空間R2に対して8スライス分の第1の投影データP1が収集される。
【0088】
ステップA2では、投影データの平均化処理を行う。具体的には、平均化処理部82が、8枚のスライスに対応する第1の投影データ対し、z軸方向に平均化処理して、1枚のスライスSL21に対応する平均化処理済みの第1の投影データP1を得る。
【0089】
図9(a)は、穿刺開始前のスキャンを行ったときの部位5aと1枚のスライスSL21とを示している。穿刺開始前のスキャンでは、図示の如く、生検針9はスライス内に存在しないので、第1の投影データP1には生検針9によるX線吸収の大きな領域はない。
【0090】
ステップA3では、画像再構成処理を行う。具体的には、画像再構成部83が、スライスSL21の平均化処理済みの第1の投影データに基づいて画像再構成処理を行い、第1の断層像G1を得る。
【0091】
ステップA4では、断層像を表示する。具体的には、表示制御部86が、ステップA3で再構成されたスライスSL21の第1の断層像G1を画面に表示するよう表示装置62を制御する。
【0092】
図9(b)は、第1の断層像G1の表示例を示している。第1の断層像G1は、病変部5cを含む部位5aのSL21に対応した断層像となる。
【0093】
ステップA5では、穿刺ルート領域を設定する。具体的には、操作者が、表示された第1の断層像上で生検針の挿入が予定される経路すなわちルートを指定する。このルートの指定は、例えば、
図9(c)に示すように、入力装置61を用いて、穿刺の目標である病変部5cの中心位置K11と生検針9を挿入する部位5aの表皮の位置K12とを指定し、K11を起点にK12を通ってスライスSL21の境界まで伸びる線分J1を指定する。そして、
図9(d)に示すように、穿刺ルート領域設定部84は、指定された線分J1を穿刺ルートとして設定し、その線分J1を含む局所領域Q1を穿刺ルート領域として設定する。
【0094】
ステップA6では、穿刺開始後のスキャンを実施する。具体的には、穿刺が開始される直前の段階で、操作者が入力装置61を用いて穿刺開始後の連続的なスキャンを実施するコマンドの入力を行う。スキャン制御部81は、このコマンドの入力を検知して、穿刺開始後のスキャンを実施するようガントリ・テーブル制御部30に制御信号を送る。ガントリ・テーブル制御部30は、この制御信号を受けてガントリ2の各部及び撮影テーブル4を制御する。これにより、穿刺開始後のスキャンが実施される。穿刺開始後のスキャンの実施により、部位5aを含む撮影空間における8スライス分の第2の投影データが収集される。穿刺開始後のスキャンは基本的に複数回連続的に繰り返し実施される。
【0095】
ステップA7では、投影データの平均化処理を行う。具体的には、平均化処理部82が、8枚のスライスに対応する第2の投影データ対し、z軸方向に平均化処理して、1枚のスライスSL21に対応する平均化処理済みの第2の投影データを得る。
【0096】
ステップA8では、限定的メタルアーチファクト低減付き断層像生成処理を行う。具体的には、断層像生成部85が、ステップA5で設定された穿刺ルート領域に基づいて、生検針(メタル;金属)が穿刺ルート領域にのみ挿入されることを前提とした、メタルアーチファクト低減付き断層像生成処理を行う。
【0097】
例えば、メタルアーチファクト低減付き断層像生成処理として、次のような処理を想定する。スライスSL21に対応する第2の投影データにおいて、ビューごとに、生検針による高X線吸収を示すデータ領域を探索し、検出された場合には、そのデータ領域をその近傍のデータまたはそれに近いデータで埋め合わせる、あるいはフィッティング(fitting)する補正をする。このような処理を行って補正処理済み投影データを得る。次に、ビューごとに、スライスSL21に対応する第2の投影データから補正処理済み投影データを減算して、減算処理済み投影データを得る。スライスSL21に生検針が含まれている場合には、補正処理済み投影データは、生検針がなかったときに相当する投影データとなり、また、減算処理済み投影データは、生検針による高X線吸収を示すデータのみが抽出された投影データとなる。そして、補正処理済み投影データに基づいて再構成された断層像に、減算処理済み投影データに基づいて再構成された断層像を重ねて合成断層像を得る。これにより、スライスSL21に生検針が含まれていない場合には、通常の断層像が得られ、生検針が含まれている場合には、メタルアーチファクトが低減された生検針を含む断層像を得ることができる。
【0098】
ここで、上記のメタルアーチファクト低減付き断層像生成処理において、投影データ上で生検針による高X線吸収を示すデータ領域を探索する範囲を、穿刺ルート領域をX線焦点から投影した領域に対応する範囲に限定する。このようにすることで、投影データの全範囲を探索する必要がなくなり、計算量を低減して、メタルアーチファクト低減付き断層像生成処理に要する時間を短縮することができる。なお、投影データ上で生検針による高X線吸収を示すデータ領域を探索する際には、穿刺ルート領域だけでなく、生検針の材質や太さの情報を利用するようにしてもよい。生検針の材質が分かれば、生検針のX線吸収量が推定できるので、投影データのプロファイル(profile)上で生検針による高X線吸収を示すデータの高さを推定することができ、検出精度が向上する。また、生検針の太さが分かれば、投影データのプロファイル上で生検針による高X線吸収を示すデータ領域の幅を推定することができ、検出精度が向上する。生検針の材質や太さは、操作者が直接入力するか、予めX線CT装置の記憶装置に候補を商品名や商品番号と対応付けて記憶させておき、操作者がその中から選択して決定するようにしてもよい。生検針の材質としては、例えば、ステンレス合金(stainless steal)、タングステン合金(tungsten steal)などが考えられる。また、生検針の太さ(直径)としては、1mm、2mm、3mmなどが考えられる。
【0099】
また例えば、メタルアーチファクト低減付き断層像生成処理として、次のような処理を想定する。スライスSL21に対応する第2の投影データに基づいて、断層像を再構成する。次に、この断層像において、画素値(CT値)を基に、生検針による高X線吸収を示す画像領域を探索し、検出された場合には、その画像領域の位置や形状に基づいてメタルアーチファクトを検出して低減する補正をする。これにより、スライスSL21に生検針が含まれていない場合には、通常の断層像が得られ、生検針が含まれている場合には、メタルアーチファクトが低減された生検針を含む断層像を得ることができる。
【0100】
ここで、上記のメタルアーチファクト低減付き断層像生成処理において、断層像上で生検針による高X線吸収を示す画像領域を探索する範囲を、穿刺ルート領域に対応する範囲に限定する。このようにすることで、画像領域の全範囲を探索する必要がなくなり、計算量を低減して、メタルアーチファクト低減付き断層像生成処理に要する時間を短縮することができる。なお、断層像上で生検針による高X線吸収を示す画像領域を探索する際には、穿刺ルート領域だけでなく、生検針の材質や太さの情報を利用するようにしてもよい。生検針の材質が分かれば、生検針のX線吸収量が推定できるので、断層像上で生検針による高X線吸収を示す画素の画素値の大きさを推定することができ、検出精度が向上する。また、生検針の太さが分かれば、断層像上で生検針による高X線吸収を示す画像領域のサイズ(径)を推定することができ、検出精度が向上する。
【0101】
ステップA9では、断層像を表示する。具体的には、表示制御部86が、ステップA8で得られた断層像を画面に表示するよう、表示装置62を制御する。断層像が既に表示されている場合には、更新する形で表示する。
【0102】
ステップA10では、スキャンを終了するか判定する。具体的には、スキャン制御部81が、スキャン終了のコマンドが入力されているかなどを検知し、スキャンを終了するか否かを判定する。終了すると判定された場合には、スキャンを終了する。終了しないと判定された場合には、ステップA6に戻り、スキャンを継続する。
【0103】
このような第2の実施形態によれば、穿刺ルート領域を設定することで、メタルアーチファクト低減付き断層像生成処理において、例えば高X線吸収領域の探索範囲を絞り込むなど、処理内容を減縮することができ、上記時間をさらに短縮することができる。
【0104】
(第3の実施形態)
図10は、第3の実施形態に係るX線CT装置の操作コンソールの機能ブロック図である。
【0105】
第3の実施形態に係るX線CT装置の操作コンソール6bは、機能ブロックとして、スキャン制御部91、平均化処理部92、画像再構成部93、穿刺ルート領域設定部94、注目スライス設定部95、差分判定部96、断層像生成部97、針位置判定部98、及び表示制御部99を有している。
【0106】
スキャン制御部91は、投影データを収集するためのスキャンが実施されるようガントリ・テーブル制御部を制御する。
【0107】
図11は、第3の実施形態における被検体がスキャンされる様子を模式的に示す図である。本例では、
図11に示すように、クレードル41に載置された被検体5の所定の部位5aを含む撮影空間R3に対してスキャンが実施される。スキャンは、X線管21及びX線検出器14を被検体5の周りに回転させながら、X線管21のX線焦点から被検体5にX線を照射することにより行われる。スキャンを実施すると、X線検出器24におけるX線検出素子の配列構造に起因して、撮影空間をz軸方向にスライスして成る複数のスライスの各々について複数ビューの投影データが収集される。ここでは、1回のスキャン実施により、0.625mm厚のスライス24枚分の投影データが収集されるものとする。また本例では、この部位5aに病変部5cが含まれる場合を想定する。術者は、連続的なスキャンによってほぼリアルタイムに表示される部位5aの断層像を見ながら、部位5aの表面から病変部5cに達するまで生検針を挿入する穿刺を行う。
【0108】
平均化処理部92は、撮影空間における複数のスライスについての投影データあるいは断層像をz軸方向に平均化して、より厚くより少ない数のスライスの投影データあるいは断層像を得る処理を行う。
【0109】
画像再構成部93は、投影データに基づいて断層像を再構成する処理を行う。
【0110】
穿刺ルート領域設定部94は、穿刺時における生検針の挿入予定経路を穿刺ルートとして設定する処理を行う。
【0111】
注目スライス設定部95は、断層像生成処理などを行う対象となる注目スライスを設定する処理を行う。
【0112】
差分判定部96は、穿刺ルート領域において生検針の動きがあったか否かを時系列的なデータ間の差分より判定する処理を行う。
【0113】
断層像生成部97は、限定的なメタルアーチファクト低減処理を含む断層像生成処理を行う。
【0114】
針位置判定部98は、穿刺ルート領域の注目スライス部分内の画像を基に、生検針の先端が穿刺ルート領域の注目スライス部分内にあるか否かを判定する処理を行う。
【0115】
表示制御部99は、断層像等を画面に表示するよう表示装置62を制御する処理を行う。
【0116】
次に、第3の実施形態に係るX線CT装置における処理の流れについて説明する。
【0117】
図12は、第3の実施形態に係るX線CT装置における処理の流れを示すフロー図である。
【0118】
ステップB1では、穿刺開始前のスキャンを実施する。具体的には、穿刺が開始される前の段階で、操作者が入力装置61を用いて穿刺開始前のスキャンを実施するコマンドの入力を行う。スキャン制御部91は、このコマンドの入力を検知して、穿刺開始前のスキャンを実施するようガントリ・テーブル制御部30に制御信号を送る。ガントリ・テーブル制御部30は、この制御信号を受けてガントリ2の各部及び撮影テーブル4を制御する。これにより、穿刺開始前のスキャンが実施される。穿刺開始前のスキャンの実施により、部位5aを含む撮影空間R3に対して24スライス分の第1の投影データが収集される。
【0119】
ステップB2では、画像再構成処理を行う。具体的には、画像再構成部93が、24スライスについて、第1の投影データに基づいて画像再構成処理を行い、第1の断層像を得る。
【0120】
ステップB3では、平均化処理を行う。具体的には、平均化処理部92が、24枚のスライスに対応する第1の断層像に対し、z軸方向に平均化処理して、3枚のスライスSL31〜SL33に対応する第1の断層像を得る。また、平均化処理部92は、24スライスについて、第1の投影データをz軸方向に平均化処理して、3枚のスライスSL31〜SL33に対応する第1の投影データを得る。
【0121】
ステップB4では、断層像及び投影像を表示する。具体的には、表示制御部99が、ステップB3で得られた各スライスSL31〜SL33の第1の断層像と、ステップB2で得られた24スライスの第1の断層像をx軸方向に投影した投影像とを表示するよう、表示装置62を制御する。
【0122】
図13(a)は、投影像Gxの表示例を示している。投影像Gxは、穿刺開始前のスキャンを行ったときの部位5aにおける3枚のスライスSL31〜SL33の第1の断層像をx軸方向に投影した画像である。穿刺開始前のスキャンでは、生検針9はスライス内に存在しないので、投影像Gxに生検針9は含まれない。
【0123】
なお、ステップB3で得られた投影像の代わりに、事前にスカウトスキャンを行って得られた、x軸方向に投影したスカウト像を画面に表示するようにしてもよい。
【0124】
ステップB5では、穿刺ルート領域を設定する。
【0125】
図13(b)は、穿刺ルート及び穿刺ルート領域の設定例を示している。具体的には、操作者が、表示された投影像上で生検針の挿入が予定される穿刺ルートを指定する。穿刺ルートは、
図13(b)に示すように、スライスSL32に含まれる病変部5cの中心位置K21を起点に、スライスSL33に含まれる部位5aの表面の位置K22を通って投影像Gxの境界までの線分J2で表される直線ルートを想定する。このルートの指定は、例えば、入力装置61を用いて、穿刺の目標である病変部5cの中心位置K21と生検針9を挿入する部位5aの表皮の位置K22とを指定することにより行われる。穿刺ルート領域設定部94は、指定された線分J2を穿刺ルートとして設定し、その線分J2を含む局所領域Q2を穿刺ルート領域として設定する。
【0126】
図13(b)下は、スライスSL31〜SL33の第1の断層像G1をそれぞれ示している。本例では、
図13(b)に示すように、穿刺ルート領域Q2は、スライスSL31部分とスライスSL32部分とに分かれる。
【0127】
ステップB6では、注目スライスを設定する。具体的には、注目スライス設定部95が、設定された穿刺ルートに基づいて、生検針が挿入される部位5aの表面の位置が含まれるスライスを注目スライスISLに設定する。本例では、スライスSL31を注目スライスに設定する。
【0128】
ステップB7では、穿刺開始後のスキャンを実施する。
【0129】
具体的には、穿刺が開始される直前の段階で、操作者が入力装置61を用いて穿刺開始後の連続的なスキャンを実施するコマンドの入力を行う。スキャン制御部91は、このコマンドの入力を検知して、穿刺開始後のスキャンを実施するようガントリ・テーブル制御部30に制御信号を送る。ガントリ・テーブル制御部30は、この制御信号を受けてガントリ2の各部及び撮影テーブル4を制御する。これにより、穿刺開始後のスキャンが実施される。穿刺開始後のスキャンの実施により、部位5aを含む撮影空間における24スライス分の第2の投影データが収集される。穿刺開始後のスキャンは基本的に複数回連続的に繰り返し実施される。
【0130】
ステップB8では、投影データの平均化処理を行う。具体的には、平均化処理部92が、24枚のスライスに対応する第2の投影データに対し、z軸方向に平均化処理して、3枚のスライスSL31〜SL33に対応する平均化処理済みの第2の投影データを得る。
【0131】
ステップB9では、画像再構成処理を行う。具体的には、画像再構成部93が、各スライスSL31〜SL33について、第2の投影データに基づいて画像再構成処理を行い、第2の断層像を得る。
【0132】
ステップB10では、差分判定処理を行う。具体的には、差分判定部96が、ステップB9で得られた注目スライスISLの第2の断層像における穿刺ルート領域の注目スライス部分に対応する画像と、前回表示された同じスライスの断層像における同じ部分の画像とを比較し、その差分が一定レベル以上であるか否かを判定する。つまり、穿刺ルート領域のうち注目スライス部分において生検針の有意な動きがあったか否かを判定する。判定は、例えば、穿刺ルート領域の注目スライス部分に対応する画像において、生検針を表すと考えられる画素を画素値の閾値処理により特定し、その画素の数の増減分を求め、これが一定数以上である場合に、生検針の有意な動きがあったと判定する。なお、この差分判定処理は、本例では画像上で行っているが、投影データ上で行うこともできる。
【0133】
ステップB11では、限定的メタルアーチファクト低減付き断層像生成処理を行う。具体的には、断層像生成部97が、ステップB5で設定された穿刺ルート領域に基づいて、生検針(メタル;金属)が穿刺ルート領域にのみ挿入されることを前提とした、メタルアーチファクト低減付き断層像生成処理を行う。
【0134】
例えば、メタルアーチファクト低減付き断層像生成処理として、次のような処理を想定する。注目スライスISLに対応する第2の投影データにおいて、ビューごとに、生検針による高X線吸収を示すデータ領域を探索し、検出された場合には、そのデータ領域をその近傍のデータまたはそれに近いデータで埋め合わせる、あるいはフィッティングする補正をする。このような処理を行って補正処理済み投影データを得る。次に、ビューごとに、注目スライスISLに対応する第2の投影データから補正処理済み投影データを減算して、減算処理済み投影データを得る。注目スライスISLに生検針が含まれている場合には、補正処理済み投影データは、生検針がなかったときに相当する投影データとなり、また、減算処理済み投影データは、生検針による高X線吸収を示すデータのみが抽出された投影データとなる。そして、補正処理済み投影データに基づいて再構成された断層像に、減算処理済み投影データに基づいて再構成された断層像を重ねて合成断層像を得る。これにより、注目スライスISLに生検針が含まれていない場合には、通常の断層像が得られ、生検針が含まれている場合には、メタルアーチファクトが低減された生検針を含む断層像を得ることができる。
【0135】
ここで、上記のメタルアーチファクト低減付き断層像生成処理において、投影データ上で生検針による高X線吸収を示すデータ領域を探索する範囲を、穿刺ルート領域のうちの注目スライス部分をX線焦点から投影した領域に対応する範囲に限定する。このようにすることで、投影データの全範囲を探索する必要がなくなり、計算量を低減して、メタルアーチファクト低減付き断層像生成処理に要する時間を短縮することができる。なお、投影データ上で生検針による高X線吸収を示すデータ領域を探索する際には、穿刺ルート領域だけでなく、生検針の材質や太さの情報を利用するようにしてもよい。生検針の材質が分かれば、生検針のX線吸収量が推定できるので、投影データのプロファイル上で生検針による高X線吸収を示すデータの高さを推定することができ、検出精度が向上する。また、生検針の太さが分かれば、投影データのプロファイル上で生検針による高X線吸収を示すデータ領域の幅を推定することができ、検出精度が向上する。生検針の材質や太さは、操作者が直接入力するか、予めX線CT装置の記憶装置に候補を商品名や商品番号と対応付けて記憶させておき、操作者がその中から選択して決定するようにしてもよい。
【0136】
また例えば、メタルアーチファクト低減付き断層像生成処理として、次のような処理を想定する。注目スライスISLに対応する第2の投影データに基づいて、断層像を再構成する。次に、この断層像において、画素値(CT値)を基に、生検針による高X線吸収を示す画像領域を探索し、検出された場合には、その画像領域の位置や形状に基づいてメタルアーチファクトを検出して低減する補正をする。これにより、注目スライスISLに生検針が含まれていない場合には、通常の断層像が得られ、生検針が含まれている場合には、メタルアーチファクトが低減された生検針を含む断層像を得ることができる。
【0137】
ここで、上記のメタルアーチファクト低減付き断層像生成処理において、注目スライスISLの断層像上で生検針による高X線吸収を示す画像領域を探索する範囲を、穿刺ルート領域のうちの注目スライス部分に対応する範囲に限定する。このようにすることで、画像領域の全範囲を探索する必要がなくなり、計算量を低減して、メタルアーチファクト低減付き断層像生成処理に要する時間を短縮することができる。なお、断層像上で生検針による高X線吸収を示す画像領域を探索する際には、穿刺ルート領域だけでなく、生検針の材質や太さの情報を利用するようにしてもよい。生検針の材質が分かれば、生検針のX線吸収量が推定できるので、断層像上で生検針による高X線吸収を示す画素の画素値の大きさを推定することができ、検出精度が向上する。また、生検針の太さが分かれば、断層像上で生検針による高X線吸収を示す画像領域のサイズ(径)を推定することができ、検出精度が向上する。
【0138】
ステップB12では、断層像を表示する。具体的には、表示制御部99が、ステップB11で得られた注目スライスの断層像を画面に表示するよう、表示装置62を制御する。断層像が既に表示されている場合には、更新する形で表示する。
【0139】
ステップB13では、生検針の位置を判定する。具体的には、針位置判定部98が、ステップB11で得られた注目スライスISLの断層像において、生検針の先端の位置が穿刺ルート領域の注目スライス部分内にあるか否かを判定する。生検針の先端の位置が穿刺ルート領域の注目スライス部分内にあると判定された場合には、ステップB14に進む。生検針の先端の位置が穿刺ルート領域の注目スライス部分内にないと判定された場合には、ステップB15に進む。
【0140】
ステップB14では、注目スライスを維持する。具体的には、注目スライス設定部95が、現在の注目スライスISLをそのまま維持する設定を行う。そして、ステップB16に進む。
【0141】
ステップB15では、注目スライスを変更する。具体的には、注目スライス設定部95が、現在の注目スライスISLから病原部5cに近づく隣のスライスを新たな注目スライスISLに設定する。そして、ステップB16に進む。
【0142】
ステップB16では、スキャンを終了するか判定する。具体的には、スキャン制御部91が、スキャン終了のコマンドが入力されているかなどを検知し、スキャンを終了するか否かを判定する。終了すると判定された場合には、スキャンを終了する。終了しないと判定された場合には、ステップB7に戻り、スキャンを継続する。
【0143】
ここで、当該フローによる一実施例について簡単に説明する。
【0144】
図14〜
図16は、穿刺開始後の第1〜第3の各時点でのスライスSL31〜SL33と生検針9との位置関係と、各時点で行われたスキャンによって得られるスライスSL31〜SL33の断層像とを示している。
【0145】
第1の時点では、
図14に示すように、前回表示された断層像が得られたスキャン実施時点と比較して、生検針9の先端がスライスSL33の外から内に移動してきた状態を想定する。ステップB7で24スライスに対するスキャンが実施され、ステップB8で投影データの平均化により3枚のスライスSL31〜SL33にまとめられ、ステップB9でこれら各スライスの断層像が再構成される。この場合、ステップB10の差分判定において、注目スライスISLであるスライスSL33に対し、前回表示された断層像と第1の時点に対応した断層像G2との間で穿刺ルート領域Q2の画像の差分が一定レベル以上であると判定される。そのため、ステップB11にて、スライスSL33について、限定的メタルアーチファクト低減付きの断層像生成処理が実行され、ステップB12で当該断層像の表示が更新される。また、ステップB13にて、生検針9の位置は注目スライスであるスライスSL33内にあると判定される。よって、ステップB14にて、注目スライスISLはまだスライスSL33を維持する。
【0146】
次に、第2の時点では、
図15に示すように、前回表示された断層像が得られたスキャン実施時点と比較して、生検針9の先端が部位5aの中に挿入され、生検針9の先端がスライスSL33とスライスSL32との間の境界に到達した状態を想定する。ステップB7で24スライスに対するスキャンが実施され、ステップB8で投影データの平均化により3枚のスライスSL31〜SL33にまとめられ、ステップB9でこれら各スライスの断層像が再構成される。この場合、ステップB10の差分判定において、注目スライスISLであるスライスSL33に対し、前回表示された断層像と第2の時点に対応した断層像G2との間で穿刺ルート領域Q2の画像の差分が一定レベル以上であると判定される。そのため、ステップB11にて、スライスSL33について、限定的メタルアーチファクト低減付きの断層像生成処理が実行され、ステップB12で当該断層像の表示が更新される。また、ステップB13にて、生検針9の位置は注目スライスISLであるスライスSL33とスライスSL32との境界に達していると判定される。よって、ステップB15にて、注目スライスISLは隣のスライスSL32に移行する。
【0147】
次いで、第3の時点では、
図16に示すように、前回表示された断層像が得られたスキャン実施時点と比較して、生検針9の先端がスライスSL33からSL32内に移動した状態を想定する。ステップB7で24スライスに対するスキャンが実施され、ステップB8で投影データの平均化により3枚のスライスSL31〜SL33にまとめられ、ステップB9でこれら各スライスの断層像が再構成される。この場合、ステップB10の差分判定において、注目スライスISLであるスライスSL32に対し、前回表示された断層像と第3の時点に対応した断層像G2との間で穿刺ルート領域Q2の画像の差分が一定レベル以上であると判定される。そのため、ステップB11にて、スライスSL32について、限定的メタルアーチファクト低減付きの断層像生成処理が実行され、ステップB12で当該断層像の表示が更新される。また、ステップB13にて、生検針9の位置は、注目スライスであるスライスSL32内に位置していると判定される。よって、ステップB14にて、注目スライスISLはスライスSL32を維持する。
【0148】
このような第3の実施形態によれば、メタルアーチファクト低減付き断層像生成処理の対象を、複数スライスのうち更新が必要な一つのスライスに絞り込むことができ、アーチファクトが低減された断層像の生成・表示に要する時間を短縮することができる。また、穿刺ルート領域を設定することで、メタルアーチファクト低減付き断層像生成処理において、例えば高X線吸収領域の探索範囲を絞り込むなど、処理内容を減縮することができ、上記時間をさらに短縮することができる。
【0149】
なお、発明は、上記実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能である。
【0150】
また、コンピュータを上記X線CT装置における制御や処理を行う各手段として機能させるためのプログラムやこれを記録した記録媒体もまた、発明の実施形態の一例である。