(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6556546
(24)【登録日】2019年7月19日
(45)【発行日】2019年8月7日
(54)【発明の名称】パイルで覆われた表装面にマークを取り付ける敷物の製造方法及びその方法により製造された敷物
(51)【国際特許分類】
B29C 65/04 20060101AFI20190729BHJP
A47G 27/02 20060101ALI20190729BHJP
B29C 65/08 20060101ALI20190729BHJP
【FI】
B29C65/04
A47G27/02 102
B29C65/08
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-152552(P2015-152552)
(22)【出願日】2015年7月31日
(65)【公開番号】特開2017-30237(P2017-30237A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149664
【氏名又は名称】株式会社大和
(72)【発明者】
【氏名】山田 耕平
【審査官】
関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−044730(JP,A)
【文献】
特開平04−002531(JP,A)
【文献】
特開昭59−227416(JP,A)
【文献】
特開昭62−273831(JP,A)
【文献】
特開昭59−173382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00−65/82
A47G 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイルで覆われた敷物表装面にマークが取り付けられた敷物の製造方法であって、
前記敷物表装面上のマーク取付位置周りのパイルを外側に向かって開いた状態に設け、この状態で前記敷物表装面上のマーク取付位置にマークを接合することを特徴とする敷物の製造方法。
【請求項2】
敷物表装面上のマーク取付位置にエアーを吹き付けることで、マーク取付位置周りのパイルを外側に向かって開いた状態に設けることを特徴とする請求項1に記載の敷物の製造方法。
【請求項3】
敷物表装面上のマーク取付位置周りのパイルが外側に向かって開いた状態で前記パイルを敷物表装面上に保持具によって押圧することを特徴とする請求項1又は2に記載の敷物の製造方法。
【請求項4】
敷物表装面上のマーク取付位置周りの形状に対応する内側形状を有すると共に、内側内面側又は下面側にエアーコンプレッサーに繋がるエアー噴出口を有するリング状保持具を用い、該保持具のエアー噴出口からエアーを敷物表装面上に吹き付けることによってマーク取付位置周りのパイルを外側に向かって開いた状態とし、この状態で該保持具を敷物表装面上に押し当てることによってマーク取付位置周りのパイルを外側に向かって開いた状態に保持することを特徴とする請求項1又2に記載の敷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイルで覆われた表装面にマークを取り付ける敷物の製造方法及びその方法により製造された敷物に関する。例えば敷物表装面のパイルが毛足が長く、傾斜していても、マーク周囲の下面側に傾斜したパイルの先端部分が入り込まないで、敷物表装面にマークを取り付けることができる敷物の製造方法及びその方法により製造された敷物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば毛足の長いパイルをタフトしたマット表装面にマークを取り付ける場合、特許文献1に記載の高周波装着機や特許文献2に記載の超音波要着機を用いて行なわれていた。
【0003】
特許文献1に記載の高周波装着機や特許文献2に記載の超音波要着機を用いて、マット表装面にマークを取り付ける場合、図
8に示すように、マット1のパイル2をタフトした表装面側のマーク取付位置X上にマーク3を配置し、この状態で
図12中矢印に示すように垂直方向からマーク3及びマット1を電極又はホーン(図示しない)側へ押圧して高周波や超音波を印可することでマーク3をマット1表装面に溶着して取り付けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平05−87374号
【特許文献1】特開平06−226853号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、図
9及び図
10に示すように、マット1表装面のパイル2の毛足が長く、しかもパイル2が加工方向に傾斜して倒れていると、パイル2の傾斜方向とは逆の方向のマーク3周囲の下面側に傾斜したパイル2の先端部分が入り込み、マーク3とマット1表装面の起立したパイル2との間に倒れたパイル2からなる平坦部分4が露出し、見栄えを悪くしていた。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、敷物表装面のパイルが毛足が長く、傾斜して倒れていても、マーク周囲の下面側に傾斜したパイルの先端部分が入り込まないで、敷物表装面にマークを取り付けることができる敷物の製造方法及びその方法により製造された敷物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する為、本発明は、パイルで覆われた敷物表装面にマークが取り付けられた敷物の製造方法であって、
前記敷物表装面上のマーク取付位置周りのパイルを外側に向かって開いた状態に設け、この状態で前記敷物表装面上のマーク取付位置にマークを接合することを特徴とする敷物の製造方法をその要旨とした。
【0008】
請求項2に記載の発明は、敷物表装面上のマーク取付位置にエアーを吹き付けることで、マーク取付位置周りのパイルを外側に向かって開いた状態に設けることを特徴とする請求項1に記載の敷物の製造方法をその要旨とした。
【0009】
請求項3に記載の発明は、敷物表装面上のマーク取付位置周りのパイルが外側に向かって開いた状態で前記パイルを敷物表装面上に保持具によって押圧することを特徴とする請求項1又は2に記載の敷物の製造方法をその要旨とした。
【0010】
請求項4に記載の発明は、敷物表装面上のマーク取付位置周りの形状に対応する内側形状を有すると共に、内側内面側又は下面側にエアーコンプレッサーに繋がるエアー噴出口を有するリング状保持具を用い、該保持具のエアー噴出口からエアーを敷物表装面上に吹き付けることによってマーク取付位置周りのパイルを外側に向かって開いた状態とし、この状態で該保持具を敷物表装面上に押し当てることによってマーク取付位置周りのパイルを外側に向かって開いた状態に保持することを特徴とする請求項1又2に記載の敷物の製造方法をその要旨とした。
【0011】
(削除)
【0012】
(削除)
【0013】
(削除)
【発明の効果】
【0014】
本発明の敷物の製造方法にあっては、敷物表装面上のマーク取付位置周りのパイルを外側に向かって開いた状態に設け、この状態で前記敷物表装面上のマーク取付位置にマークを接合するようにしたので、敷物表装面のパイルが毛足が長く、傾斜して倒れていても、マーク周囲の下面側に傾斜したパイルの先端部分が入り込まないで、敷物表装面にマークを取り付けることができる。
【0015】
(削除)
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の敷物の製造方法によって製造された敷物を示す拡大断面図。
【
図2】敷物表装面のマーク取付位置上にマークを取り付ける際に使用するリング状の保持具を示す拡大断面図並びに拡大背面面。
【
図3】敷物表装面のマーク取付位置上に保持具を配置した状態を示す拡大断面図。
【
図4】リング状の保持具のエアー噴出口からエアーを噴出させて敷物表装面上のマーク取付位置周りのパイルを外側に向かって放射状に開いた状態とした拡大断面図。
【
図5】敷物表装面上のマーク取付位置周りの外側に向かって放射状に開いた状態のパイルを敷物表装面上に保持具によって押圧している状態を示す拡大断面図。
【
図6】保持具を水平方向及び昇降動させる移動装置を示す模式図。
【
図7】保持具のリング状の開口を通してマークを敷物表装面上のマーク取付位置に配置している状態を示す拡大断面図。
【
図8】従来の敷物の製造方法において、敷物表装面上のマーク取付位置にマークを配置した状態を示す拡大断面図。
【
図9】従来の敷物の製造方法において、溶着手段によりマークを敷物表装面に溶着する工程を示す拡大断面図。
【
図10】従来の敷物の製造方法において、溶着手段によりマークを敷物表装面に溶着する工程を示す拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の敷物の製造方法及びその製造方法によって製造された敷物を図面に従って説明する。本発明は、
図1に示すように、パイル12で覆われた敷物表装面にマーク13が取り付けられた敷物11の製造方法である。特には、敷物表装面のパイルが毛足が長く、加工方向に斜めに倒れていても、マーク周囲の下面側に傾斜したパイルの先端部分が入り込まないで、敷物表装面にマークを取り付けることができる製造方法である。
【0018】
本発明の製造方法に用いる敷物11は、パイルで覆われた敷物表装面を有するものであり、パイルをタフトした敷物のほかに、段通、絨毯、モケットなどのパイル織物からなる敷物も含まれる。特にはパイル12の毛足が長く、大きく傾斜している敷物11に効果的である。その理由は、パイル12の毛足が長ければ長い程、パイル12の傾斜が深ければ深いほど、段落0005で詳述したマーク周囲の下面側に傾斜したパイルの先端部分が入り込み、マークと敷物表装面の起立したパイルとの間に倒れたパイル糸からなる平坦部分が露出し、見栄えを悪くするといった問題が発生し易くなるからである。
【0019】
本発明の製造方法に用いるマーク13についても特に限定されない。敷物表装面に溶着するマークとしては、ネーム、記号、図柄、刺繍などの模様が施された表装面と、裏層とからなるものを挙げることができる。裏層としては、高周波やマイクロ波などで溶着する場合には、ポリエステル、塩化ビニル、アクリル、ナイロンなどの双極性を有する合成樹脂からなるものが好ましく、超音波を用いて加熱溶着する場合には、熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0020】
次に、本発明の製造方法において、パイルで覆われた敷物表装面にマークを取り付ける接合手段としては、高周波、超音波、マイクロ波などの溶着手段のほか、接着手段などを用いることができる。
【0021】
本発明の製造方法では、敷物表装面上のマーク取付位置周りのパイルを外側に向かって開いた状態に設け、この状態で前記敷物表装面上のマーク取付位置にマークを接合することで特徴づけられたものである。敷物表装面上のマーク取付位置周りのパイルを外側に向かって開いた状態とは、例えば
図4に示すように敷物表装面上のマーク取付位置X周りのパイル12を外側に向かって放射状に開いた状態とする形態を挙げることができ、敷物表装面上のマーク取付位置X周りのパイル12だけではなく、マーク取付位置X部分のパイル12も同様に外側に向かって開いた状態とすることもできる。また、
図3に示すように、敷物11表装面上のパイル12が一方方向に傾斜して倒れている場合には、敷物表装面上のマーク取付位置X周りのうち、傾斜している側のパイル12は、もともと外側に向かって開いた状態となっていることから、マーク取付位置X周りのうち、傾斜方向とは反対側のパイル12のみを外側に向かって開いた状態とするだけでよい。尚、敷物表装面のマーク取付位置Xは、マットの種類により様々であり、特に限定されない。
【0022】
このように敷物表装面上のマーク取付位置X周りのパイル12を外側に向かって開いた状態とすることで、敷物表装面のマーク取付位置上にマークを配置したときに、マーク周囲の下面側に傾斜したパイルの先端部分が入り込むことがなく、敷物表装面に見栄え良くマークを取り付けることができる。
【0023】
敷物表装面上のマーク取付位置X周りのパイル12を外側に向かって開いた状態とするため、図示の例では、
図2に示すリング状保持具15を用いた。この保持具15は、リング状をなすエアーノズルであり、その下面側(敷物のパイル面側に配される)にエアーが噴出する複数のエアー噴出口15aが設けられたものである。尚、エアー噴出口は図示のように孔状ではなく、保持具の形状に沿ったリング状のスリット形態であってもよい。
【0024】
また、図示の保持具15は、例えば
図6に示すように、敷物11のマーク取付位置X上を水平移動可能とし、さらに敷物11のマーク取付位置X上で昇降動できるように、テーブル20にクランプ部21で固定される一対の基台18と、各基台18上に立設する上下動する昇降シリンダー16と水平方向に伸縮動する水平シリンダー17と、各水平シリンダー17から伸びて、先端に保持具15を保持するアーム部19とを有する移動装置を備えることもできる。尚、移動装置の構造は自由であり、1つの基台を備え、その基台の可動部から伸びる1つのアームで保持具を移動可能に支えるようにすることもできる。
【0025】
まず、
図3に示すように、敷物11の表装面上のマーク取付位置X上に保持具15を配置する。次いで、
図4に示すように、保持具15のエアー噴出口15aからエアーを噴出させて、敷物11の表装面上に噴出させる。これにより、敷物11の表装面上のマーク取付位置X周りのパイル12は、エアーの力で外側に向かって開いた状態となる。この後、
図5に示すように、保持具15をそのまま下降させ、パイル12を敷物11の表装面上に保持具15によって押圧する。
【0026】
この状態で
図7に示すように、マーク13を保持具15の開口を利用して敷物11の表装面上のマーク取付位置上に配置し、敷物11の表装面上のマーク取付位置Xにマーク13を接合することでマーク13の取付が完了する。
図7は、円形の電極22と同じく円形のアース23を備える高周波溶着を接合手段として用いた。この例の場合、保持具15がステンレスなどの金属製を想定しており、アース23の外周に約1mm〜3mmの間隔をおいて保持具を受けるリング状の樹脂製の受け具を配置している。樹脂製の受け具を配置することで、金属製の保持具15を用いたことにより、高周波溶着に悪影響を与えることがなくなる。
【0031】
このような工程を経ることにより、敷物表装面のパイル12が毛足が長く、傾斜していても、図
9及び図
10に示すようにマーク3周囲の下面側に傾斜したパイル2の先端部分が入り込み、マーク3と敷物表装面の起立したパイル2との間に倒れたパイル2からなる平坦部分4が造られることがなく、
図1に示すように、周囲が起立したパイル12で覆われて美しい仕上がりでマーク13の取り付けがなされることになる。
【0032】
本発明は、上記記載や図面の記載に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲内で自由に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、パイルで覆われた敷物表装面を有する敷物、例えば室内に敷設されるカーペット、コンピュータのオペレーション用チェアマット、部屋の出入り口に敷設される床面用マット、玄関マット、エレベータ内やエレベータホールの開閉扉前に敷設される床面用マット、あるいは自動車や電車、飛行機などの室内に敷設される床マットなどの敷物に適用される。
【符号の説明】
【0034】
敷物 ・・・11
パイル ・・・12
マーク ・・・13
保持具 ・・・15
エアー噴出口 ・・・15a
マーク取付位置 ・・・X