(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
目標を観測して閾値を超える信号を検出するセンサからの信号検出結果を入力し、前記信号検出結果、偽目標の信号検出確率、真目標の信号検出確率に基づいて評価値を算出する評価値算出部と、
前記評価値算出部で算出される評価値について、前記評価値の上側閾値と下側閾値とそれぞれ比較して判定を行う評価値判定部と、
前記信号検出結果に基づく信号検出回数と信号不検出回数をそれぞれの閾値と比較して判定を行う回数判定部と、
前記評価値判定部による判定の結果と前記回数判定部による判定の結果に基づいて総合的に判定を行い、その判定の結果として「目標検出」、「目標不検出」、「判定保留」のいずれかを選択する総合判定部と
を具備する目標検出装置。
目標を観測して閾値を超える信号を検出するセンサからの信号検出結果を入力し、前記信号検出結果、偽目標の信号検出確率、真目標の信号検出確率に基づいて評価値を算出する評価値算出部と、
前記評価値算出部で算出される評価値について、前記評価値の上側閾値と下側閾値とそれぞれ比較して判定を行う評価値判定部と、
前記信号検出結果に基づく信号検出回数と観測回数をそれぞれの閾値と比較して判定を行う回数判定部と、
前記評価値判定部による判定の結果と前記回数判定部による判定の結果に基づいて総合的に判定を行い、その判定の結果として「目標検出」、「目標不検出」、「判定保留」のいずれかを選択する総合判定部と
を具備する目標検出装置。
目標を観測して閾値を超える信号を検出するセンサからの信号検出結果を入力し、前記信号検出結果、偽目標の信号検出確率、真目標の信号検出確率に基づいて評価値を算出し、
前記評価値について、前記評価値の上側閾値と下側閾値とそれぞれ比較して判定を行い、
前記信号検出結果に基づく信号検出回数と信号不検出回数をそれぞれの閾値と比較して判定を行い、
前記評価値について判定を行った結果と前記信号検出回数と信号不検出回数について判定を行った結果に基づいて総合的に判定を行い、その判定の結果として「目標検出」、「目標不検出」、「判定保留」のいずれかを選択する目標検出方法。
目標を観測して閾値を超える信号を検出するセンサからの信号検出結果を入力し、前記信号検出結果、偽目標の信号検出確率、真目標の信号検出確率に基づいて評価値を算出し、
前記評価値について、前記評価値の上側閾値と下側閾値とそれぞれ比較して判定を行い、
前記信号検出結果に基づく信号検出回数と観測回数をそれぞれの閾値と比較して判定を行い、
前記評価値について判定を行った結果と前記観測回数について判定を行った結果に基づいて総合的に判定を行い、その判定の結果として「目標検出」、「目標不検出」、「判定保留」のいずれかを選択する目標検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
まず、本実施形態を説明するに先立ち、SPRTを用いた目標検出装置の基本構成について説明する。
【0011】
図5は、SPRTを用いた目標検出装置の基本構成を示すブロック図である。
図5に示す目標検出装置は、閾値算出部21、尤度比算出部22、判定部23を備える。
【0012】
上記閾値算出部21は、評価値である尤度比の上側閾値T
Uと下側閾値T
Lを算出する。上記尤度比算出部22は、目標を観測して閾値を超える信号を検出するセンサ(図示せず、例えばレーダ装置、ソナー装置等)からの信号検出結果として観測回数kにおける信号検出回数mを入力し、その信号検出結果に基づいて、観測k回目の尤度比ST(k)を算出する。上記判定部23は、閾値算出部21からの上側閾値T
Uと下側閾値T
L、尤度比算出部22からの尤度比ST(k)に基づいて、以下の(1)式により判定を行い、判定結果として「目標検出」、「目標不検出」、「判定保留」のいずれかを選択する。
【数1】
【0013】
図6は、
図5に示した目標検出装置の処理の流れの具体例を示すフローチャートである。同図に沿って、上記目標検出装置の処理の流れを説明する。
【0014】
上記閾値算出部21は、第一種の過誤率αと第二種の過誤率βに基づいて、尤度比に対する上側閾値T
Uと下側閾値T
Lを算出する(ステップS201)。上側閾値T
Uと下側閾値T
Lは、以下の(2)式で算出される。
【数2】
【0015】
上記尤度比算出部22は、偽目標の信号検出確率P
F、真目標の信号検出確率P
D、センサからの信号検出結果である観測回数kと信号検出回数mに基づいて、観測k回目の尤度比ST(k)を算出する(ステップS202)。観測k回目の尤度比ST(k)は、以下の(3)式で算出される。
【数3】
【0016】
上記判定部23は、尤度比算出部22からの観測k回目の尤度比ST(k)と閾値算出部21からの上側閾値T
Uとを比較し(ステップS203)、尤度比ST(k)が上側閾値T
U以上の場合に判定結果を「目標検出」とする(ステップS204)。また、尤度比ST(k)が上側閾値T
Uよりも小さい場合には、尤度比ST(k)と閾値算出部21からの下側閾値T
Lとを比較し(ステップS205)、尤度比ST(k)が下側閾値T
L以下の場合に判定結果を「目標不検出」とする(ステップS206)。上記以外の場合(尤度比ST(k)が下側閾値T
Lよりも大きく、上側閾値T
Uよりも小さい場合)には、判定結果を「判定保留」とする(ステップS207)。そして、上記の判定結果を出力する(ステップS208)。判定部23で「判定保留」と判定された場合、観測k+1回目の信号検出結果に基づいて、ステップS201からの処理が繰り返される。
【0017】
ここで、上記構成による目標検出装置では、中間領域(偽目標と真目標のモデルを規定する二つの規定点間の領域)において、「目標検出」又は「目標不検出」の判定に要する平均観測回数が多くなる。
【0018】
そこで、以下に示す実施形態では、センサからの信号検出結果として観測回数kにおける信号検出回数mを入力し、信号検出結果、偽目標の信号検出確率P
F、真目標の信号検出確率P
Dに基づいて評価値として観測k回目の尤度比ST(k)を算出する。そして、その尤度比ST(k)の上側閾値T
Uと下側閾値T
Lに基づいて尤度比ST(k)についての判定を行うと共に、信号検出回数mと信号不検出回数n(第1の実施例)又は信号検出回数mと観測回数k(第2の実施例)に基づいて回数による判定を行い、これらの判定に基づいて、総合的に「目標検出」、「目標不検出」及び「判定保留」を判定する。このようにして、中間領域において、「目標検出」又は「目標不検出」の判定に要する平均観測回数を削減するようにしている。
【0019】
(実施形態)
以下、
図1及び
図2を参照して、本実施形態について説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る目標検出装置の構成を示すブロック図である。この目標検出装置は、尤度比閾値算出部11、尤度比算出部12、尤度比判定部13、回数閾値選定部14、回数判定部15、総合判定部16を備える。
【0021】
上記尤度比閾値算出部11は、第一種の過誤率αと第二種の過誤率βに基づいて、評価値である尤度比の上側閾値T
Uと下側閾値T
Lを算出する。上記尤度比算出部12は、センサからの信号検出結果として観測回数kにおける信号検出回数mを入力し、偽目標の信号検出確率P
F、真目標の信号検出確率P
D、センサからの信号検出結果である観測回数kと信号検出回数mに基づいて、評価値として観測k回目の尤度比ST(k)を算出する。上記尤度比判定部13は、尤度比閾値算出部11からの上側閾値T
Uと下側閾値T
L、尤度比算出部12からの尤度比ST(k)に基づいて、以下の(4)式((1)式と同じ)により判定を行い、尤度比判定結果として「目標検出」、「目標不検出」、「判定保留」のいずれかを選択する。
【数4】
【0022】
上記回数閾値選定部14は、信号検出回数閾値T
mと信号不検出回数閾値T
n(又は観測回数閾値T
k)を選定する。上記回数判定部15は、センサからの信号検出結果として観測回数kにおける信号検出回数mを入力し、観測回数kと信号検出回数mから信号不検出回数n(=k−m)を算出する。そして、上記回数閾値選定部14で選定された信号検出回数閾値T
mと信号不検出回数閾値T
nに基づいて、以下の(5)式により判定を行い、回数判定結果として「目標検出」、「目標不検出」、「判定保留」のいずれかを選択する。
【数5】
【0023】
上記総合判定部16は、尤度比判定部13からの尤度比判定結果と回数判定部15からの回数判定結果に基づいて、総合判定結果として「目標検出」、「目標不検出」、「判定保留」のいずれかを選択する。総合判定の具体例を表1に示す。
【表1】
【0024】
なお、上記表1に示す具体例では、尤度比判定部13からの尤度比判定結果と回数判定部15からの回数判定結果の一方が「目標検出」であり、他方が「目標不検出」の場合に総合判定結果を「目標検出」とする例を示したが、総合判定結果を「目標不検出」とするように構成することもできる。また、上記以外の対応関係に設定することもできる。
【0025】
(第1の実施例)
図2は、上記実施形態に係る目標検出装置の第1の実施例とする処理の流れを示すフローチャートである。同図に沿って、第1の実施例に係る目標検出装置の処理の流れを説明する。
【0026】
上記尤度比閾値算出部11は、第一種の過誤率αと第二種の過誤率βに基づいて、上側閾値T
Uと下側閾値T
Lを算出する(ステップS101)。上側閾値T
Uと下側閾値T
Lの概略値は、以下の(6)式で算出される。
【数6】
【0027】
上記尤度比算出部12は、偽目標の信号検出確率P
F、真目標の信号検出確率P
D、センサからの信号検出結果である観測回数kと信号検出回数mに基づいて、観測k回目の尤度比ST(k)を算出する(ステップS102)。観測k回目の尤度比ST(k)は、以下の(7)式で算出される。
【数7】
【0028】
また、観測k回目の尤度比ST(k)は、センサからの信号検出結果として観測k回目の信号検出の有無が入力できる場合や、観測k−1回目の信号検出結果と観測k回目の信号検出結果の差分に基づいて、以下の(8)式で算出するように構成することもできる。
【数8】
【0029】
ここで、偽目標の信号検出確率が観測毎に変化する場合には、観測k回目の尤度比ST(k)は、観測k回目の偽目標の信号検出確率P
F(k)を用いて、以下の(9)式で算出するように構成することもできる。
【数9】
【0030】
上記尤度比判定部13は、尤度比算出部12からの尤度比ST(k)と尤度比閾値算出部11からの上側閾値T
Uとを比較し(ステップS103)、尤度比ST(k)が上側閾値T
U以上の場合に尤度比判定結果を「目標検出」とする(ステップS104)。尤度比ST(k)が上側閾値T
Uよりも小さい場合には、尤度比ST(k)と尤度比閾値算出部11からの下側閾値T
Lとを比較し(ステップS105)、尤度比ST(k)が下側閾値T
L以下の場合に尤度比判定結果を「目標不検出」とする(ステップS106)。上記以外の場合(尤度比ST(k)が下側閾値T
Lよりも大きく、上側閾値T
Uよりも小さい場合)には、尤度比判定結果を「判定保留」とする(ステップS107)。
【0031】
上記回数閾値選定部14は、信号検出回数閾値T
mと信号不検出回数閾値T
nを選定する(ステップS108)。上記回数判定部15は、センサからの信号検出結果である信号検出回数mと信号検出回数閾値T
mとを比較し(ステップS109)、信号検出回数mが信号検出回数閾値T
m以上の場合に回数判定結果を「目標検出」とする(ステップS110)。信号検出回数mが信号検出回数閾値T
mよりも小さい場合には、観測回数kと信号検出回数mから算出された信号不検出回数n(=k−m)と信号不検出回数閾値T
nとを比較し(ステップS111)、信号不検出回数nが信号不検出回数閾値T
n以上の場合に回数判定結果を「目標不検出」とする(ステップS112)。上記以外の場合には、回数判定結果を「判定保留」とする(ステップS113)。
【0032】
上記総合判定部16は、尤度比判定部13からの尤度比判定結果と回数判定部15からの回数判定結果に基づいて、総合判定結果として「目標検出」、「目標不検出」、「判定保留」のいずれかを選択し(ステップS114)、選択された総合判定結果を出力する(ステップS115)。総合判定部16で「判定保留」と判定された場合には、観測k+1回目の信号検出結果に基づいて、ステップS101からの処理が繰り返される。
【0033】
(第2の実施例)
図3は、上記実施形態に係る目標検出装置の第2の実施例とする処理の流れを示すフローチャートである。
図3は、
図2のステップS108がS116に、S111がステップS117に変更されていることを除き、
図2と同じである。また、本実施例では、回数閾値算出部14において、信号不検出回数閾値T
nに代わって観測回数閾値T
kを算出するものとする。
【0034】
第2の実施例では、ステップS116で信号検出回数閾値T
mと共に観測回数閾値T
kを選定し、ステップS109において、信号検出回数mが信号検出回数閾値T
mよりも小さい場合に、センサからの信号検出結果である観測回数kと観測回数閾値T
kとを比較し(ステップS116)、観測回数kが観測回数閾値T
k以上の場合に回数判定結果を「目標不検出」とする(ステップS112)。上記以外の場合には、回数判定結果を「判定保留」とする(ステップS113)。
【0035】
また、
図4は、上記第2の実施例の処理の流れの変形例を示すフローチャートである。
図4は、
図3のステップS117がステップS118に変更され、ステップS109と順番が入れ替えられていることを除き、
図3と同じである。
【0036】
この変形例では、観測回数kと観測回数閾値T
kとを比較し(ステップS118)、観測回数kが観測回数閾値T
kよりも小さい場合に回数判定結果を「判定保留」とする(ステップS113)。観測回数kが観測回数閾値T
k以上の場合には、信号検出回数mと信号検出回数閾値T
mとを比較し(ステップS110)、信号検出回数mが信号検出回数閾値T
m以上の場合に回数判定結果を「目標検出」とし(ステップS110)、上記以外の場合には、回数判定結果を「目標不検出」とする(ステップS112)。
【0037】
なお、上記の各実施例では、評価値として尤度比を用いる例を示したが、SPRT(逐次確率比検定)の名前の通り、評価値として確率比を用いることができる。
【0038】
また、目標検出装置の基本構成に示したように、それぞれの値を対数変換した対数尤度比(や対数確率比)を用いて処理を行うように構成することができる。この場合、上側閾値T
Uと下側閾値T
Lの概略値は、以下の(10)式で算出される。
【数10】
【0039】
対応する観測k回目の尤度比ST(k)は、以下の(11)式で算出される。
【数11】
【0040】
更に、センサからの信号検出結果を入力する代わりに、特許文献1に記載された相関手段や仮目標登録更新手段で処理された信号検出結果を入力するように構成することができる。これにより、誤警報環境下、複数目標環境下、及びこれらの複合環境下において、誤りの少ない信号検出結果を入力して、判定を行うことができる。逆に、センサからの信号検出結果として観測k回目の信号検出の有無のみ入力できる場合、観測回数と信号検出回数の各々をカウントする回数計数手段を構成に追加することができる。
【0041】
また、上記の処理は、1回の信号検出結果が入力される度に処理を行う逐次処理の他に、複数回(例えば、観測k回目から観測k+2回目までの3回分)の信号検出結果を纏めて処理を行うミニバッチ処理によって実施するように構成することができる。更に、ミニバッチ処理では、複数回の信号検出結果を用いて、評価値として尤度比を算出し、算出された尤度比について、判定を行うように構成することができる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係る目標検出装置によれば、センサからの信号検出結果を入力し、信号検出結果、偽目標の信号検出確率P
F、真目標の信号検出確率P
Dに基づいて評価値として観測k回目の尤度比ST(k)を算出する。そして、その尤度比ST(k)の上側閾値T
Uと下側閾値T
Lに基づいて尤度比ST(k)についての判定を行うと共に、信号検出回数mと信号不検出回数n又は信号検出回数mと観測回数kに基づいて回数による判定を行い、これらの判定に基づいて、総合的に「目標検出」、「目標不検出」及び「判定保留」を判定する。このようにしたことで、中間領域において、「目標検出」又は「目標不検出」の判定に要する平均観測回数を削減することができる。なお、中間領域において、「目標検出」又は「目標不検出」の判定に要する平均観測回数を削減する代わりに、第1種の過誤率αや第2種の過誤率βを低く抑えるようにすることもできる。また、本実施形態に係る目標検出装置によれば、回数による判定を行うため、「目標検出」又は「目標不検出」の判定に要する観測回数の最大値をコントロールすることができる。その結果、「目標検出」又は「目標不検出」の判定に非常に多くの観測回数を要するケースの発生を防止することができる。
【0043】
なお、上記実施形態に係る目標検出処理は、尤度比閾値算出部11、尤度比算出部12、尤度比判定部13、回数閾値選定部14、回数判定部15、総合判定部16それぞれの処理機能をコンピュータに実行させるプログラムとして構成することができる。
【0044】
上記実施形態は、いずれもレーダ装置、ソナー装置等のセンサからの信号検出結果に基づいて、目標を検出する目標検出装置に適用可能である。
【0045】
その他、本実施形態は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。